(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0017】
[1.装置構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態のエンジンの制御装置は、
図1に示す車載ガソリンエンジン10(以下、単にエンジン10と呼ぶ)に適用される。このエンジン10は、ポート噴射と筒内噴射とを併用する燃料噴射システムと、排気圧を利用した過給システムとを備えた4ストロークサイクルエンジンである。
図1では、多気筒のエンジン10に設けられた複数のシリンダ(気筒)20のうちの一つを示す。シリンダ20にはピストン19が摺動自在に内装され、ピストン19の往復運動がコネクティングロッドを介してクランクシャフト21の回転運動に変換される。
【0018】
各シリンダ20の頂面には吸気ポート17及び排気ポート18が設けられる。吸気ポート17の開口には吸気弁27が設けられ、排気ポート18の開口には排気弁28が設けられる。吸気ポート17と排気ポート18との間には、点火プラグ22がその先端を燃焼室側に突出させた状態で設けられる。点火プラグ22での着火のタイミングは、後述するエンジン制御装置1で制御される。
【0019】
吸気弁27及び排気弁28の上端部はそれぞれ、可変動弁機構40内のロッカアーム35,37に接続され、ロッカアーム35,37の揺動に応じて個別に上下方向に往復駆動される。また、各ロッカアーム35,37の他端には、カムシャフトに軸支されたカム36,38が設けられる。カム36,38の形状(カムプロファイル)に応じて、ロッカアーム35,37の揺動パターンが定められる。吸気弁27及び排気弁28のバルブリフト量,バルブタイミングは、可変動弁機構40を介してエンジン制御装置1で制御される。
【0020】
[1−2.燃料噴射系]
シリンダ20への燃料供給用のインジェクタとして、シリンダ20内に直接的に燃料を噴射する筒内噴射弁(直噴インジェクタ)11と、吸気ポート17内に燃料を噴射するポート噴射弁(ポート噴射インジェクタ)12とが設けられる。二種類の燃料噴射形態がエンジン10の運転状態に応じて使い分けられ、又は組み合わされて、シリンダ20内での燃料混合気の濃度分布を均質にした状態で燃焼させる均質燃焼と、高濃度の混合気が点火プラグ22の近傍に層状に偏った状態で燃焼させる成層燃焼とが実施される。
【0021】
ポート噴射は主に均質燃焼時に利用され、成層燃焼時には主に筒内噴射が利用される。ただし、筒内噴射弁11からの燃料噴射時であっても、均質燃焼を実現可能である。筒内噴射による均質燃焼では、シリンダ20内での燃料蒸発時に潜熱が吸収されて体積効率が上昇しやすい。また、燃焼温度が低下するため、ノッキングが発生しにくい。
【0022】
筒内噴射弁11から噴射された燃料は、例えばシリンダ20内に形成される層状の空気流に乗って点火プラグ22の近傍に誘導され、吸入空気中に不均一に分布する。一方、ポート噴射弁12から噴射された燃料は、例えば吸気ポート17内で霧化し、吸入空気とよく混ざった状態でシリンダ20内に導入される。
【0023】
これらの二種類の噴射弁11,12は、エンジン10に設けられる図示しない他の気筒にも設けられる。筒内噴射弁11及びポート噴射弁12から噴射される燃料量及びその噴射時期は、エンジン制御装置1で制御される。例えば、エンジン制御装置1から各噴射弁11,12に制御パルス信号が伝達され、その制御パルス信号の大きさに対応する期間だけ、各噴射弁11,12の噴射口が開放される。これにより、燃料噴射量は制御パルス信号の大きさ(駆動パルス幅)に応じた量となり、噴射開始時刻は制御パルス信号が伝達された時刻に対応したものとなる。
【0024】
筒内噴射弁11は、高圧燃料供給路13Aを介して高圧ポンプ14Aに接続される。一方、ポート噴射弁12は、低圧燃料供給路13Bを介して低圧ポンプ14Bに接続される。筒内噴射弁11には、ポート噴射弁12よりも高圧の燃料が供給される。高圧ポンプ14A及び低圧ポンプ14Bはともに、燃料を圧送するための機械式の流量可変型ポンプである。これらのポンプ14A,14Bは、エンジン10や電動機などから駆動力の供給を受けて作動し、燃料タンク15内の燃料を各供給路13A,13Bに吐出する。なお、各ポンプ14A,14Bから吐出される燃料量及び燃圧は、エンジン制御装置1で制御される。
【0025】
[1−3.動弁系]
エンジン10には、ロッカアーム35,37又はカム36,38の動作を制御する可変動弁機構40が設けられる。可変動弁機構40は、吸気弁27及び排気弁28のそれぞれについて、最大バルブリフト量及びバルブタイミングを個別に、又は、連動させつつ変更するための機構である。この可変動弁機構40には、ロッカアーム35,37の揺動量及び揺動のタイミングを変化させるための機構として、バルブリフト量調整機構41とバルブタイミング調整機構42とが設けられる。
【0026】
バルブリフト量調整機構41は、吸気弁27や排気弁28の最大バルブリフト量を連続的に変更する機構であり、カム36,38からロッカアーム35,37に伝達される揺動の大きさを変更する機能を持つ。ロッカアーム35,37の揺動の大きさを変更するための具体的な構造は任意とする。バルブリフト量に対応する制御用パラメータは、制御角θ
VVLと呼ばれる。バルブリフト量調整機構41は、制御角θ
VVLが大きいほどバルブリフト量を増大させる特性を持つ。この制御角θ
VVLは、エンジン制御装置1のバルブ制御部5で演算され、バルブリフト量調整機構41に伝達される。
【0027】
バルブタイミング調整機構42は、吸気弁27や排気弁28の開閉時期(バルブタイミング)を変更する機構であり、ロッカアーム35,37に揺動を生じさせるカム36,38又はカムシャフトの回転位相を変更する機能を持つ。なお、カム36,38又はカムシャフトの回転位相を変更することで、クランクシャフト21の回転位相に対するロッカアーム35,37の揺動のタイミングを連続的にずらすことが可能となる。
【0028】
バルブタイミングに対応する制御用のパラメータは、位相角θ
VVTと呼ばれる。この位相角θ
VVTは、基準となるカムシャフトの位相に対するカム36,38の位相がどの程度進角又は遅角しているかを示す量であり、吸気弁27,排気弁28のそれぞれの開弁時期,閉弁時期に対応する。また、位相角θ
VVTは、エンジン制御装置1のバルブ制御部5で演算され、バルブタイミング調整機構42に伝達される。バルブタイミング調整機構42は、カム36,38のそれぞれの位相角θ
VVTを調整することでバルブタイミングを任意に制御する。
【0029】
[1−4.吸排気系]
エンジン10の吸排気系には、排気圧を利用してシリンダ20内に吸気を過給するターボチャージャ(過給機)30が設けられる。ターボチャージャ30は、吸気ポート17の上流側に接続された吸気通路24と、排気ポート18の下流側に接続された排気通路29との両方に跨って介装される。ターボチャージャ30のタービン30Aは、排気通路29内の排気圧で回転し、その回転力を吸気通路24側のコンプレッサ30Bに伝達する。これを受けてコンプレッサ30Bは、吸気通路24内の空気を下流側へと圧縮しながら送給し、各シリンダ20への過給を行う。ターボチャージャ30による過給操作は、エンジン制御装置1で制御される。
【0030】
吸気通路24上におけるコンプレッサ30Bよりも下流側にはインタークーラ39が設けられ、圧縮された空気が冷却される。また、コンプレッサ30Bよりも上流側にはエアフィルタ33が設けられ、外部から取り込まれる空気が濾過される。さらに、コンプレッサ30Bの上流側,下流側の吸気通路24を接続するように、吸気バイパス通路25が設けられるとともに、吸気バイパス通路25上にバイパスバルブ26が介装される。吸気バイパス通路25を流れる空気量は、バイパスバルブ26の開度に応じて調節される。バイパスバルブ26は、例えば車両の急減速時に開放方向に制御され、コンプレッサ30Bから送給される過給圧を再び上流側へと逃がすように機能する。なお、バイパスバルブ26の開度はエンジン制御装置1で制御される。
【0031】
インタークーラ39の下流側にはスロットルボディが接続され、さらにその下流側にはインマニ(インテークマニホールド)が接続される。スロットルボディの内部には、電子制御式のスロットルバルブ16が設けられる。インマニへと流れる空気量は、スロットルバルブ16の開度(スロットル開度)に応じて調節される。スロットル開度は、エンジン制御装置1によって制御される。
【0032】
インマニには、各シリンダ20へと流れる空気を一時的に蓄えるためのサージタンク23が設けられる。サージタンク23よりも下流側のインマニは、各シリンダ20の吸気ポート17に向かって分岐するように形成され、サージタンク23はその分岐点に位置する。サージタンク23は、各シリンダ20で発生しうる吸気脈動や吸気干渉を緩和するように機能する。
【0033】
排気通路29上におけるタービン30Aよりも下流側には、触媒装置43が介装される。この触媒装置43は、例えば排気中に含まれるPM(Particulate Matter,粒子状物質)や窒素酸化物(NOx),一酸化炭素(CO),炭化水素(HC)等の成分を浄化,分解,除去する機能を持つ。また、タービン30Aよりも上流側には、各シリンダ20の排気ポート18に向かって分岐形成されたエキマニ(エキゾーストマニホールド)が接続される。
【0034】
タービン30Aの上流側,下流側の排気通路29を接続するように排気バイパス通路31が設けられるとともに、排気バイパス通路31上に電子制御式のウェイストゲートバルブ32が介装される。ウェイストゲートバルブ32は、タービン30A側に流入する排気流量を制御して過給圧を変化させる過給圧調節弁である。このウェイストゲートバルブ32にはアクチュエータ32bが併設され、弁体32aの位置(すなわち開度)が電気的に制御される。アクチュエータ32bの動作はエンジン制御装置1で制御される。
【0035】
[1−5.検出系]
クランクシャフト21近傍には、その回転速度Ne(単位時間あたりの回転数)を検出するエンジン回転速度センサ44が設けられる。また、車両の任意の位置には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度A
PS)を検出するアクセルポジションセンサ45が設けられる。アクセル開度A
PSは、運転者の加速要求や発進意思に対応するパラメータであり、言い換えるとエンジン10の負荷P(エンジン10に対する出力要求)に相関するパラメータである。
【0036】
吸気通路24内には、吸気流量Qを検出するエアフローセンサ46が設けられる。吸気流量Qは、エアフィルタ33を通過した実際の空気の流量に対応するパラメータである。また、サージタンク23内には、インマニ圧センサ47及び吸気温センサ48が設けられる。インマニ圧センサ47はサージタンク23内の圧力をインマニ圧として検出し、吸気温センサ48はサージタンク23内の吸気温度を検出する。各種センサ44〜48で検出された各種情報は、エンジン制御装置1に伝達される。
【0037】
[1−6.制御系]
上記のエンジン10を搭載する車両には、エンジン制御装置1が設けられる。エンジン制御装置1は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車両に設けられた車載ネットワークの通信ラインに接続される。
【0038】
エンジン制御装置1は、エンジン10に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを総合的に制御する電子制御装置であり、エンジン10の各シリンダ20に対して供給される空気量や燃料噴射量,各シリンダ20の点火時期,過給圧等を制御するものである。エンジン制御装置1の入力ポートには、前述の各種センサ44〜48が接続される。入力情報は、アクセル開度A
PS,吸気流量Q,インマニ圧,吸気温度,エンジン回転速度Ne等である。
【0039】
エンジン制御装置1の具体的な制御対象としては、筒内噴射弁11及びポート噴射弁12から噴射される燃料噴射量とその噴射時期,点火プラグ22による点火時期,吸気弁27及び排気弁28のバルブリフト量及びバルブタイミング,ターボチャージャ30の作動状態,スロットルバルブ16の開度,バイパスバルブ26の開度,ウェイストゲートバルブ32の開度等が挙げられる。本実施形態では、噴射領域制御と過給制御とバルブオーバーラップ期間制御の三種類の制御について説明する。
【0040】
[2.制御の概要]
[2−1.噴射領域制御]
噴射領域制御とは、エンジン10の運転状態やエンジン10に要求される出力の大きさに応じて燃料噴射方式を使い分ける制御である。ここでは、例えばエンジン回転速度Neやエンジン負荷P,空気量,充填効率Ec(目標充填効率,実充填効率など),アクセル開度A
PS等に基づき、ポート噴射のみを実施する「MPIモード」と、ポート噴射と筒内噴射とを併用して燃料噴射を実施する「DI+MPIモード」との何れか一方が選択される。
【0041】
図3は、排気弁28及び吸気弁27の開閉時期と、エンジン10の運転状態に応じて選択される燃料噴射モード及びそのモードでの燃料噴射時期とを示した概略図である。図中のハッチ付きの長方形はポート噴射弁12から燃料噴射されている状態(燃料噴射時期)に対応し、白抜きの長方形は筒内噴射弁11から燃料噴射されている状態(燃料噴射時期)に対応する。つまり、図中の長方形の左端が燃料噴射開始時刻,右端が燃料噴射終了時刻にそれぞれ対応する。
【0042】
MPIモードは、エンジン10が低負荷のときに選択される噴射モードである。MPIモードでは、筒内噴射弁11からの燃料噴射が禁止され、要求される出力を得るために噴射すべき燃料の全てがポート噴射弁12から噴射される。MPIモードにおけるポート噴射弁12からの燃料噴射時期は予め設定されており、MPIモードが選択されると予め設定された噴射時期に燃料が噴射される。ここでは、ポート噴射弁12からの燃料噴射時期は、排気行程に設定されている。
【0043】
なお、ポート噴射の燃料噴射時期は排気行程に限られず、排気行程前の膨張行程後半から開始されるように設定されていてもよいし、吸気行程中に設定されていてもよい。ポート噴射を実施することにより、低負荷運転状態では、ポート噴射による気化の良さが活かされ、混合気の均質性が高められるため排気性能向上に繋がる。以下、ポート噴射弁12から噴射される燃料量のことを、ポート噴射量F
Pとも呼ぶ。
【0044】
DI+MPIモードは、エンジン10の運転状態が低負荷でないとき(MPIモードでないとき)に選択される噴射モードである。DI+MPIモードでは、要求される出力を得るために噴射すべき燃料が筒内噴射弁11及びポート噴射弁12から所定の割合Rで噴射される。つまり、同一の燃焼サイクル内で筒内噴射弁11とポート噴射弁12とがともに作動し、筒内噴射及びポート噴射の両方が実施される。
【0045】
筒内噴射を実施すると、燃料の気化潜熱によって吸気の温度及び燃焼室内の温度が低減される。これは、吸気冷却効果と呼ばれ、この効果によりノッキングに対して有利になるため圧縮比が高められる。圧縮比が高められると体積効率が増大するため、エンジン出力を高めることができ、燃費向上に繋がる。つまり、DI+MPIモードでは、筒内噴射によるメリットとポート噴射によるメリットとを得ることが可能となる。以下、筒内噴射弁11から噴射される燃料量のことを、筒内噴射量F
Dとも呼ぶ。
【0046】
筒内噴射量F
Dに対するポート噴射量F
Pの割合R(=F
P/F
D)は予め設定されており、DI+MPIモードではこの割合Rで筒内噴射弁11及びポート噴射弁12からそれぞれ燃料が噴射される。筒内噴射量F
Dに対するポート噴射量F
Pの割合Rは0<R≦1の値に設定されている。つまり、筒内噴射弁11から噴射される燃料の方がポート噴射弁12から噴射される燃料よりも多い。なお、割合Rの代わりに、一回の燃焼サイクル内で噴射する全ての燃料量(後述の総燃料量F
T)に対する筒内噴射量F
Dの割合R1(=F
D/F
T)と、総燃料量F
Tに対するポート噴射量F
Pの割合R2(=F
P/F
T)とが予め設定されていてもよい。この場合、R1≧R2であり、R=R1+R2となる。
【0047】
さらにDI+MPIモードは、エンジン10の運転状態に応じて、筒内噴射弁11からの燃料噴射が吸気行程でのみ実施される第一のDI+MPIモード〔以下、DI(吸)+MPIモードという〕と、吸気行程と圧縮行程の二回に分けて実施される第二のDI+MPIモード〔以下、DI(吸,圧)+MPIモードという〕との二種類に分けられる。エンジン10の運転状態が中負荷のとき又は高負荷かつ高回転のときはDI(吸)+MPIモードが選択され、高負荷かつ低中回転のときはDI(吸,圧)+MPIモードが選択される。すなわち、エンジン10の運転状態が高負荷の場合は、低回転側からDI(吸,圧)+MPIモード,DI(吸)+MPIモードの二つのモードが回転速度Neに応じて選択される。
【0048】
DI(吸)+MPIモードが選択される中負荷運転状態では、高負荷時に比べて要求される出力が小さいため、噴射すべき総燃料量F
Tが高負荷時よりも少ない。また、筒内噴射を圧縮行程で実施した場合、スモークが発生する可能性が生じうる。そのため、中負荷運転状態では、筒内噴射を吸気行程でのみ実施することで、出力を確保しながらスモークの発生を抑制する。
【0049】
また、DI(吸)+MPIモードが選択される高負荷かつ高回転のときも、筒内噴射を吸気行程でのみ実施することで、スモークの発生を抑制するとともに、筒内噴射弁11から噴射された燃料の霧化時間を確保する。DI(吸)+MPIモードにおける、筒内噴射弁11による吸気行程での燃料噴射時期と、ポート噴射弁12による燃料噴射時期とは予め設定されている。そのため、DI(吸)+MPIモードが選択されると、後述のポート噴射時期変更部3eで変更されない限り、予め設定された噴射時期に燃料が噴射される。なお、この場合のポート噴射時期は、例えば膨張行程の後半から排気行程にかけて実施されるように設定される。これにより、混合気形成時間が確保され均質性が向上し、排気性能が向上する。
【0050】
一方、DI(吸,圧)+MPIモードが選択される高負荷かつ低中回転のときは、筒内噴射を吸気行程と圧縮行程の二回に分けて実施することで最大の吸気冷却効果を得ることができる。さらに圧縮行程において燃料を噴射することで燃焼が改善され、ノッキングも改善される。また、ここでもポート噴射が排気行程に設定されており、これにより予混合量が増し、排気性能を向上させることができる。なお、三回に分割して燃料を噴射することで、各行程で噴射される燃料量が他の運転状態の場合と比較して少なくなるため、吸気ポート17から流入した吸気(混合気)が直接的に排気ポート18側へと通り抜けるいわゆる吹き抜けの発生やスモークの発生が抑制される。
【0051】
DI(吸,圧)+MPIモードにおける、筒内噴射弁11による吸気行程及び圧縮行程での燃料噴射時期と、ポート噴射弁12による燃料噴射時期とは予め設定されている。そのため、DI(吸,圧)+MPIモードが選択されると、後述のポート噴射時期変更部3eで変更されない限り、予め設定された噴射時期に燃料が噴射される。
【0052】
DI(吸,圧)+MPIモードが選択された場合は、噴射すべき筒内噴射量F
Dが吸気行程で噴射される燃料量F
DI(以下、吸気噴射量F
DIという)と圧縮行程で噴射される燃料量F
DC(以下、圧縮噴射量F
DCという)とに分割され、それぞれの行程で噴射される。吸気噴射量F
DIに対する圧縮噴射量F
DCの割合W(=F
DC/F
DI)は予め設定されており、DI(吸,圧)+MPIモードでは、この割合Wで筒内噴射量F
Dが分けられる。吸気噴射量F
DIに対する圧縮噴射量F
DCの割合Wは0<W<1の値に設定されている。つまり、筒内噴射弁11からは吸気行程でより多くの燃料が噴射され、圧縮行程で残りの燃料が噴射される。なお、割合Wの代わりに、筒内噴射量F
Dに対する吸気噴射量F
DIの割合W1(=F
DI/F
D)と、筒内噴射量F
Dに対する圧縮噴射量F
DCの割合W2(=F
DC/F
D)とが予め設定されていてもよい。この場合、W1>W2であり、W=W1+W2となる。
【0053】
[2−2.過給制御]
過給制御とは、エンジン10の運転状態やエンジン10に要求される出力の大きさに応じてターボチャージャ30の作動状態(オン/オフ状態やその作動量等)を定める制御である。ここでは、例えばエンジン回転速度Neやエンジン10に作用する負荷P,空気量,充填効率Ec(目標充填効率,実充填効率など),アクセル開度A
PS等に基づき、ウェイストゲートバルブ32の開度が制御されることで、過給制御が行われる。
【0054】
典型的な過給制御の手法としては、エンジン10に要求される負荷が所定負荷P
Sよりも大きい場合にウェイストゲートバルブ32が閉弁されて、ターボチャージャ30がオン状態となり、過給によりシリンダ20内に導入される吸気量が増大し、エンジン出力が増大する。反対に、エンジン10に要求される負荷が所定負荷P
S以下の場合はウェイストゲートバルブ32が開弁されて、排気バイパス通路31を排気が流通する。これにより、ターボチャージャ30のタービン出力が低下し、又はターボチャージャ30がオフ状態となる。
【0055】
[2−3.バルブオーバーラップ期間制御]
バルブオーバーラップ期間制御とは、吸気の体積効率やエンジン出力の向上と、混合気の吹き抜けとを考慮して、最適なバルブオーバーラップ期間とする制御である。バルブオーバーラップ期間は、吸気弁27の開弁期間と排気弁28の開弁期間とが重複した期間であり、この期間を大きくすることで高い掃気効果が得られ、吸気の体積効率を高めることができ、ひいてはエンジン出力の向上に繋がる。一方、バルブオーバーラップ期間中は、吸気弁27と排気弁28とが共に開弁状態であるため、ポート噴射弁12から噴射した燃料を含む混合気の吹き抜けが発生しやすくなる。特に過給制御によりターボチャージャ30がオン状態にされている場合は、吹き抜けが増大するおそれがある。
【0056】
バルブオーバーラップ期間は、例えばエンジン10の運転状態やエンジン10に要求される出力の大きさに応じて設定される。ここでは、エンジン10の負荷Pが後述の第一負荷P
1以上の運転状態の場合にバルブオーバーラップ期間が設定され、負荷Pが大きくなるほどバルブオーバーラップ期間が大きくされる。この第一負荷P
1は、ポート噴射開始時刻t
Pを遅角させるための閾値であり、エンジン10の負荷Pが第一負荷P
1以上の運転状態ではポート噴射開始時刻t
Pが遅角方向に制御される。つまり、後述のポート噴射時期変更部3eによりポート噴射時期が予め設定されたものよりも遅角された場合は、バルブオーバーラップ期間が設定されたものよりも大きくなるように変更される。
【0057】
また、バルブオーバーラップ期間が延長される時間の長さは、ポート噴射時期の遅角量に対応する長さに設定される。例えば、ポート噴射時期の遅角量が大きいほど、バルブオーバーラップ期間が長く設定され、掃気効果の向上が図られる。エンジン10の負荷Pが第一負荷P
1以上の運転状態では、バルブオーバーラップ期間が延長される代わりにポート噴射時期が遅角されるため、吹き抜けが抑制され、エンジン出力や排気性能の低下を招くことなく掃気効果を向上させることが可能となる。可変動弁機構40は、実際のバルブオーバーラップ期間がここで設定又は変更されたバルブオーバーラップ期間となるように制御される。
【0058】
[3.制御構成]
図1に示すように、上記の制御を実施するための要素として、エンジン制御装置1には、エンジン負荷算出部2,噴射制御部3,過給制御部4,バルブ制御部5が設けられる。バルブ制御部5には、バルブオーバーラップ変更部5aが設けられる。また、
図2に示すように、噴射制御部3には、総燃料量算出部3a,噴射モード選択部3b,噴射量設定部3d,ポート噴射時期変更部3e及び噴射制御信号出力部3fが設けられる。これらの各要素は電子回路(ハードウェア)によって実現してもよく、ソフトウェアとしてプログラミングされたものとしてもよいし、あるいはこれらの機能のうちの一部をハードウェアとして設け、他部をソフトウェアとしたものであってもよい。
【0059】
[3−1.エンジン負荷算出部]
エンジン負荷算出部2は、エンジン10の負荷Pの大きさを算出するものである。ここでいう負荷Pとは、エンジン10に対して抵抗を及ぼす力,仕事率(エンジン出力,馬力),仕事(エネルギ)等を意味する。典型的には、エンジン10に要求されるエンジン出力やこれに相関するパラメータが負荷Pとして取り扱われる。
【0060】
負荷Pは、例えばシリンダ20に導入された空気量に基づいて算出される。あるいは、吸気流量,排気流量等に基づいて算出される。その他、吸気圧や排気圧,車速V,回転速度Ne,アクセル開度A
PS,外部負荷装置の作動状態等に基づいて負荷Pを算出してもよい。本実施形態では、吸気流量Qと回転速度Neとに基づいて充填効率Ec又は体積効率Evが算出され、これらの値に基づいて負荷Pの大きさが算出される。ここで算出された負荷Pの値は、噴射制御部3,過給制御部4及びバルブ制御部5に伝達される。
【0061】
[3−2.噴射領域制御部]
噴射制御部(噴射制御手段)3は、筒内噴射弁11による燃料噴射及びポート噴射弁12による燃料噴射を制御して、噴射領域制御を実施するものである。
総燃料量算出部3aは、エンジン10の回転速度Neと、エンジン負荷算出部2で算出された負荷Pとに基づいて、要求される出力を得るために一回の燃焼サイクルで噴射すべき燃料量を総燃料量F
Tとして算出するものである。例えば、エンジン10の負荷P,回転速度Neを引数とした燃料噴射量マップを予め噴射制御部3に記憶しておき、このマップを用いてトータルの燃料噴射量(すなわち総燃料量F
T)を算出する。ここで算出された総燃料量F
Tは、噴射量設定部3dに伝達される。
【0062】
噴射モード選択部3bは、エンジン10の運転状態に基づいて、上記のMPIモード及びDI+MPIモードの何れか一方の燃料噴射モードを選択するものである。噴射制御部3には、エンジン10の運転状態と燃料噴射モードとの対応関係が規定されたマップ,演算式等が記録される。このようなマップ,演算式等に基づいて、燃料噴射モードが選択される。
【0063】
本実施形態では、
図4に示すような噴射モードマップが予め噴射制御部3に記憶されている。この噴射モードマップは、縦軸に負荷P,横軸に回転速度Neをとる座標平面上の領域として、それぞれの燃料噴射モードが設定されている。具体的には、負荷Pが所定の第一負荷(第一所定値)P
1未満の低負荷運転状態ではMPIモード領域が設定されている。ここで、第一負荷P
1は予め設定された一定値であり、ターボチャージャ30による過給が実施されるか否かの判断閾値となる所定負荷P
Sと略同等かやや小さい値である。つまり、MPIモード領域では、ターボチャージャ30による過給は実施されない。
【0064】
また、負荷Pが第一負荷P
1以上かつ所定の第二負荷(第二所定値)P
2未満の中負荷運転状態ではDI(吸)+MPIモード領域が設定されている。ここで、第二負荷P
2は予め設定された一定値であり、第一負荷P
1よりも大きな値であって全負荷の略80%の値である。
【0065】
また、負荷Pが第二負荷P
2以上の高負荷運転状態では、回転速度Neの低い方から順に、DI(吸,圧)+MPIモード領域,DI(吸)+MPIモード領域の二つの領域が設定されている。ここでは説明を簡略化すべく、回転速度Neが所定回転速度Ne
0未満の範囲をDI(吸,圧)+MPIモード領域とし、回転速度Neが所定回転速度Ne
0以上の範囲をDI(吸)+MPIモード領域とする。ここで、所定回転速度Ne
0は予め設定された0よりも大きくエンジン10の最高回転速度未満の一定値であり、比較的高い値に設定されている。つまり、回転速度Neが所定回転速度Ne
0未満の運転状態は低回転域又は中回転域に該当し、所定回転速度Ne
0以上の運転状態は高回転域に該当する。
【0066】
MPIモード領域,DI(吸)+MPIモード領域,DI(吸,圧)+MPIモード領域はそれぞれ、MPIモード,DI(吸)+MPIモード,DI(吸,圧)+MPIモードが選択される領域である。噴射モード選択部3bは、
図4の噴射モードマップに回転速度Ne及び負荷Pを適用して燃料噴射モードを選択する。選択された燃料噴射モードは、噴射量設定部3dとバルブ制御部5とに伝達される。
【0067】
噴射量設定部3dは、噴射モード選択部3bで選択された燃料噴射モードに応じて、筒内噴射弁11からの筒内噴射量F
D(吸気噴射量F
DI及び圧縮噴射量F
DC)とポート噴射弁12からのポート噴射量F
Pとを設定するものである。噴射量設定部3dは、この設定に際して、総燃料量算出部3aで算出された総燃料量F
Tと、予め設定されている割合R及び割合Wとを用いる。ここで設定された吸気噴射量F
DI,圧縮噴射量F
DC及びポート噴射量F
Pは、噴射制御信号出力部3fに伝達される。
【0068】
MPIモードが選択されている場合には、ポート噴射弁12のみが使用されるため、噴射量設定部3dは、筒内噴射量F
Dを0と設定し、総燃料量F
Tをポート噴射量F
Pとして設定する。
DI(吸)+MPIモードが選択されている場合は、噴射量設定部3dは、総燃料量F
Tを予め設定された割合Rに基づいて筒内噴射量F
Dとポート噴射量F
Pとに分け、ポート噴射量F
Pを設定する。さらに、筒内噴射量F
Dを吸気噴射量F
DIとして設定するとともに、圧縮噴射量F
DCを0と設定する。
【0069】
DI(吸,圧)+MPIモードが選択されている場合は、噴射量設定部3dは、総燃料量F
Tを予め設定された割合Rに基づいて筒内噴射量F
Dとポート噴射量F
Pとに分け、ポート噴射量F
Pを設定する。さらに、筒内噴射量F
Dを予め設定された割合Wに基づいて吸気噴射量F
DIと圧縮噴射量F
DCとに分け、それぞれの噴射量F
DI,F
DCを設定する。
【0070】
ポート噴射時期変更部3eは、負荷Pが第一負荷P
1以上の運転状態(すなわち、中負荷又は高負荷運転状態)の場合に、ポート噴射弁12による燃料噴射開始時刻t
P(以下、ポート噴射開始時刻t
Pという)を負荷Pに応じて変更するものである。噴射制御部3には、エンジン10の負荷Pとポート噴射開始時刻t
Pとの対応関係が規定されたマップ,演算式等が記録される。このようなマップ,演算式等に基づいて、ポート噴射開始時刻t
Pが変更される。ポート噴射開始時刻t
Pが変更されると、ポート噴射弁12により燃料噴射している期間(燃料噴射時期)が変更される。
【0071】
本実施形態では、
図5に示すようなポート噴射開始時刻変更マップが予め噴射制御部3に記憶されている。ポート噴射開始時刻変更マップは、縦軸にクランクシャフト21の回転角(CA),横軸に負荷Pをとったものであり、負荷Pに対するポート噴射開始時刻t
Pが設定されている。具体的には、
図5に示すように、負荷Pが第一負荷P
1程度又は第一負荷P
1よりも小さい場合は、ポート噴射開始時刻t
Pが排気行程開始時に設定されている。また、負荷Pが第一負荷P
1から大きくなるほど、ポート噴射開始時刻t
Pが第一負荷P
1でのポート噴射開始時刻t
Pに対して徐々に遅角するように設定されている。
【0072】
つまり、ポート噴射開始時刻t
Pは、予め膨張行程から排気行程に移行した時点(排気行程開始時)に設定されており、負荷Pが比較的小さい場合はこの時点においてポート噴射弁12から燃料が噴射される。一方、負荷Pが増大し、ポート噴射開始時刻t
Pが最も遅角されたときは排気行程後半に設定され、排気行程中又は排気行程から吸気行程にかけてポート噴射弁12から燃料が噴射される。ポート噴射時期変更部3eは、
図5のポート噴射開始時刻変更マップに負荷Pを適用して、負荷Pに応じたポート噴射開始時刻t
Pを設定する。
【0073】
負荷Pが第一負荷P
1よりも大きい場合、すなわち中負荷又は高負荷運転状態では、ターボチャージャ30によって吸気が過給されているため、バルブオーバーラップ期間中に吹き抜けが発生しやすく、特に過給圧が高いほど吹き抜けが増大しやすい。吹き抜けが発生すると、ポート噴射弁12により供給された燃料はシリンダ20内を通過して排気通路29側へと流出してしまうため、燃料不足によるエンジン出力の低下や、HCが排気系に流出することによる排気性能の低下を招く。
【0074】
そのため、
図4に白抜き矢印で示すように、負荷Pが第一負荷P
1よりも大きくなるほど、言い換えると過給圧が高くなるほど、ポート噴射弁12による燃料噴射時期(MPI噴射時期)を遅角することで、吹き抜けの発生を抑制する。ポート噴射時期変更部3eによりポート噴射開始時刻t
Pが変更された場合は、変更されたポート噴射開始時刻t
Pが噴射制御信号出力部3fに伝達される。
【0075】
噴射制御信号出力部3fは、噴射モード選択部3bで選択された燃料噴射モードに則り、噴射量設定部3dで設定された燃料噴射量が確保されるとともに所定の燃料噴射時期となるように、筒内噴射弁11,ポート噴射弁12に制御信号を出力するものである。これらの制御信号を受けた筒内噴射弁11,ポート噴射弁12は、制御信号に応じた時刻及び開弁期間で駆動される。これにより、所望の筒内噴射量F
D(吸気噴射量F
DI及び圧縮噴射量F
DC),ポート噴射量F
Pが、所定の燃料噴射開始時期において噴射される。なお、ポート噴射時期変更部3eによりポート噴射開始時刻t
Pが変更された場合は、変更後のポート噴射開始時刻t
Pにポート噴射が実施される。
【0076】
[3−3.過給制御部]
過給制御部4は、上記の過給制御を実施するものである。すなわち、過給制御部4は、エンジン10に要求される負荷Pが所定負荷P
Sよりも大きい場合に過給が必要であると判定し、アクチュエータ32bを制御してウェイストゲートバルブ32を閉弁状態とする。これにより、ターボチャージャ30がオン状態となり、過給によりシリンダ20内に導入される吸気量が増大する。
【0077】
また、過給制御部4は、エンジン10に要求される負荷Pが所定負荷P
S以下の場合は過給が不要であると判定し、アクチュエータ32bを制御してウェイストゲートバルブ32を開弁状態とする。これにより、排気バイパス通路31を排気が流通するため、ターボチャージャ30のタービン出力が低下し、又はターボチャージャ30がオフ状態となる。
【0078】
なお、過給を実施するか否かの条件は、要求される負荷Pと所定負荷P
Sとを比較するものに限られない。例えば、燃料噴射モードを選択するための条件とは別個に設定されるものとしてもよいし、
図4に示すマップ上の所定領域として定義してもよい。また、ウェイストゲートバルブ32の開閉制御に加え、開度制御を実施してもよい。
【0079】
[3−4.バルブ制御部]
バルブ制御部(可変動弁制御手段)5は、可変動弁機構40の動作を制御して、上記のバルブオーバーラップ期間制御を実施するものである。バルブ制御部5は、エンジン10の運転状態(回転速度Neや負荷P等)やエンジン10に要求される出力の大きさに応じてバルブオーバーラップ期間を設定する。ここでは少なくとも、エンジン10の負荷Pが第一負荷P
1以上の運転状態の場合にバルブオーバーラップ期間が設けられる。
【0080】
バルブオーバーラップ変更部5aは、負荷Pが大きくなるほど設定されたバルブオーバーラップ期間を大きくする(延長する)。ここでは、バルブオーバーラップ変更部5aは、ポート噴射時期変更部3eによりポート噴射時期が遅角された場合にバルブオーバーラップ期間を延長する。バルブオーバーラップ期間の延長量は、例えばエンジン回転速度Neや負荷P等に基づいて設定される。
【0081】
バルブ制御部5は、設定又は変更されたバルブオーバーラップ期間となるように、吸気弁27,排気弁28のそれぞれの制御角θ
VVL,位相角θ
VVTを設定する。そして、これらの制御角θ
VVL,位相角θ
VVTの情報を可変動弁機構40のバルブリフト量調整機構41,バルブタイミング調整機構42に伝達することで、最適なバルブオーバーラップ期間とする。
【0082】
[4.フローチャート]
図6〜
図8は、噴射領域制御,過給制御及びバルブオーバーラップ期間制御の各手順を説明するためのフローチャートである。これらのフローは、エンジン制御装置1において所定の演算周期で繰り返し実施される。
【0083】
まず、噴射領域制御について説明する。
図6に示すように、ステップS10では、各種センサ44〜48で検出された各種情報がエンジン制御装置1に入力される。また、ステップS20では、エンジン負荷算出部2において、吸気流量Q,回転速度Ne等に基づいてエンジン10の負荷Pが算出される。続くステップS30では、総燃料量算出部3aにおいて総燃料量F
Tが算出される。
【0084】
ステップS40では、噴射モード選択部3bにおいて、エンジン10の運転状態に基づいて燃料噴射モードが選択される。燃料噴射モードの選択では、例えば
図4に示すようなマップ上で、その時点の回転速度Ne及び負荷Pがどの領域内にあるかが判断される。ステップS50では、負荷Pが第一負荷P
1以上であるか否かが判定される。負荷Pが第一負荷P
1以上の中負荷又は高負荷時であれば、ステップS60へ進み、回転速度Neが所定回転速度Ne
0未満であるか否かが判定される。回転速度Neが所定回転速度Ne
0未満の場合は、ステップS70に進む。
【0085】
ステップS70では、ポート噴射時期変更部3eにおいて、予め設定されたポート噴射開始時刻t
Pが負荷Pに応じて遅角され、ステップS80へ進む。一方、ステップS50又はステップS60の判定が不成立の場合は、ステップS80へ進む。
【0086】
ステップS80では、噴射量設定部3dにおいて、燃料噴射モードに応じて、筒内噴射弁11から噴射される吸気噴射量F
DI,圧縮噴射量F
DCが設定されるとともにポート噴射弁12から噴射されるポート噴射量F
Pが設定される。そして、ステップS90では、噴射制御信号出力部3fにおいて、ステップS80で設定された燃料噴射量が確保されるとともに、予め設定された又はステップS70で変更された燃料噴射時期で燃料が噴射されるように、筒内噴射弁11,ポート噴射弁12に対して制御信号が出力される。
【0087】
次に、過給制御について説明する。
図7に示すように、ステップX10では、各種センサ44〜48で検出された各種情報がエンジン制御装置1に入力される。また、ステップX20では、エンジン負荷算出部2において、吸気流量Q,回転速度Ne等に基づいてエンジン10の負荷Pが算出される。続くステップX30では、過給制御部4において負荷Pが所定負荷P
Sよりも大きいか否かが判定される。
【0088】
負荷Pが所定負荷P
Sよりも大きい場合は、ステップX40においてウェイストゲートバルブ32(WGV)が閉弁され、ターボチャージャ30がオン状態とされる。一方、負荷Pが所定負荷P
S以下の場合は、ステップX50においてウェイストゲートバルブ32(WGV)が開弁され、ターボチャージャ30がオフ状態とされる。
【0089】
最後に、バルブオーバーラップ期間制御について説明する。
図8に示すように、ステップY10では、各種センサ44〜48で検出された各種情報がエンジン制御装置1に入力される。また、ステップY20では、エンジン負荷算出部2において、吸気流量Q,回転速度Ne等に基づいてエンジン10の負荷Pが算出される。続くステップY25では、負荷Pが第一負荷P
1以上であるか否かが判定され、第一負荷P
1以上である場合はステップY30においてバルブ制御部5によりバルブオーバーラップ期間(VOL)が設定される。一方、第一負荷P
1未満の場合はこのフローをリターンする。
【0090】
ステップY40では、
図6のステップS70においてポート噴射時期が遅角されているか否かが判定される。ポート噴射時期が遅角されている場合はステップY50に進み、ステップY30で設定されたバルブオーバーラップ期間が延長されて、ステップY60へ進む。一方、ポート噴射時期が遅角されていない場合はステップY60へ進む。ステップY60では、設定又は変更されたバルブオーバーラップ期間に対応する吸気弁27,排気弁28のそれぞれの制御角θ
VVL,位相角θ
VVTが設定される。そして、ステップY70では、これらの制御角θ
VVL,位相角θ
VVTの情報が出力される。
【0091】
[5.作用,効果]
(1)上記のエンジン制御装置1では、負荷Pが第一負荷P
1以上の運転状態において、筒内噴射とポート噴射とが実施される。そのため、吸気冷却効果によりノッキングが発生しにくくなり圧縮比を高めることができる。これにより、体積効率が向上し、高いエンジン出力を得ることができる。また、均質性の高い混合気が得られ、排気性能を向上させることができる。
【0092】
さらに、負荷Pが第一負荷P
1よりも大きい第二所定値P
2以上の運転状態では、ポート噴射時期が第二所定値P
2未満の運転状態でのポー噴射時期に対して遅角されるため、バルブオーバーラップ期間中にポート噴射弁12から供給された燃料を含む混合気の吹き抜けの発生を抑制することができる。そのため、吹き抜けに伴う燃料不足によるエンジン出力の低下や、HCが排気系に流出することによる排気性能の低下を抑制することができる。これにより、バルブオーバーラップ期間を大きくすることも可能となり、高い掃気効果を得ることができる。
【0093】
したがって、上記のエンジン制御装置1によれば、バルブオーバーラップ期間中の吹き抜けの発生を抑制しながら、筒内噴射によるメリット(すなわち吸気冷却効果による高出力確保)とポート噴射によるメリット(すなわち排気性能の向上)とを最大限に活かすことができ、高出力の確保と良好な排気性能の確保とを両立することができる。
【0094】
(2)また、上記のエンジン制御装置1では、負荷Pが大きいほどバルブオーバーラップ期間が大きくされる。これにより、より高い掃気効果が得られ、吸気の体積効率を高めることができ、エンジン出力を向上させることができる。特にターボチャージャ30と組み合わされることで、掃気効果をより高めることができ、体積効率もより高くなる。また、負荷Pが大きいほど、ポート噴射時期の遅角量が増大されるため、バルブオーバーラップ期間中の吹き抜けをより効果的に抑制することができる。
【0095】
(3)また、上記のエンジン制御装置1では、負荷Pが第一負荷P
1未満の運転状態(すなわち低負荷運転状態)においてポート噴射のみが実施されるため、気化の良さを活かして均質性を高めることができ、HCの排出を低減して排気性能を向上させることができる。また、この場合は筒内噴射弁11による燃料噴射が実施されないため、シリンダ20内に付着する炭素(C)の量を低減することができる。また、同時に筒内噴射用の高圧ポンプ14Aの燃料圧送も停止させるので、フリクションを低減させることができる。
【0096】
(4)上記のエンジン制御装置1では、負荷Pが第二負荷P
2以上の運転状態(すなわち高負荷運転状態)では、筒内噴射を吸気行程と圧縮行程とに分けて実施するため、燃料の気化潜熱によって吸気の温度及び燃焼室内の温度を低減することができ(吸気冷却効果を得ることができ)、この効果によってノッキングに対して有利になるため圧縮比を高めることができる。特に、吸気行程と圧縮工程の二回に分けて燃料を噴射することで、最大の吸気冷却効果を得ることが可能である。圧縮比を高めることで体積効率が増大するため、エンジン出力を高めることができ、燃費を向上させることができる。さらに圧縮行程において燃料を噴射することで燃焼が改善されるため、ノッキングを改善することもできる。
【0097】
(5)なお、回転速度Neが所定回転速度Ne
0以上の高回転域では、筒内噴射弁11で燃料を噴射できる時間が短く、圧縮行程において筒内噴射を実施するとスモークが発生する可能性がある。これに対し、上記のエンジン制御装置1では、高回転域のときは筒内噴射を吸気行程でのみ実施するため、スモークの発生を抑制することができる。また、吸気行程では筒内噴射を実施するため、吸気冷却効果を得ることができ、ノッキングに有利である点や体積効率向上による出力向上の効果を得ることができる。さらに、ポート噴射を少なくとも排気行程において実施するため、出力に必要な燃料を噴射することができるとともに、混合気の均質性を高めることができる。
【0098】
[6.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上記実施形態で説明した燃料噴射モードは一例であって、
図4に示すマップのものに限られない。上記実施形態では、負荷P及び回転速度Neに応じて燃料噴射モードが設定されているが、回転速度Neにかかわらず負荷Pのみに応じて燃料噴射モードを設定してもよい。例えば、
図4に示すマップの高負荷領域において回転速度Neが所定回転速度Ne
0以上であっても、所定回転速度Ne
0未満と同様のモード、すなわちDI(吸,圧)+MPIモードとしてもよい。また、低負荷運転状態において、DI+MPIモードとしてもよい。
【0099】
また、ポート噴射弁12による燃料噴射時期の遅角量は、
図6に示すように徐々に増大するものに限られず、高負荷運転状態でのポート噴射時期が中負荷状態でのポート噴射時期に対して遅角されていればよい。
また、DI+MPIモードを二種類に分けずに、筒内噴射を吸気行程でのみ実施するようにしてもよいし、吸気行程と圧縮行程とに分割して実施するようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、ポート噴射時期が遅角されている場合にバルブオーバーラップ期間が延長される場合を説明したが、ポート噴射時期の遅角にかかわらず、負荷Pに応じてバルブオーバーラップ期間を延長してもよいし、あるいはバルブオーバーラップ期間を一定値としてもよい。少なくとも、負荷Pが第一負荷P
1以上の場合にバルブオーバーラップ期間が設けられればよい。
【0101】
また、上記の可変動弁機構40は、バルブリフト量調整機構41とバルブタイミング調整機構42とを有しているが、吸気弁27及び排気弁28の少なくとも一方のバルブタイミングを変更する機構を有し、バルブオーバーラップ期間を設けることができる構成であればよい。
・ また、上記実施形態では、エンジン10の負荷P及び回転速度Neを引数としたマップを用いて、燃料噴射モードを設定するものを例示したが、燃料噴射モード設定に係るマップ,演算式の設定はこれに限定されない。少なくとも、エンジンの負荷Pに相関するパラメータ、又は、回転速度Neに相関するパラメータを用いることで、燃料噴射モードを設定することが可能である。