(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セル間をバスバーで接続する場合にはバスバーの一端を第1のセルの電極端子とねじ締結するとともにバスバーの他端を第2のセルの電極端子とねじ締結することから、爪付きワッシャが1つのセルにつき2つ必要となり、緩み防止のための機構として複雑になる。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成にてバスバーを電極端子に締結するボルトまたはナットの緩みを防止することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する蓄電装置は、電極端子が本体部から突出するセルを複数並設して構成した蓄電モジュールと、隣接する前記セルの電極端子同士を電気的に接続する平板状のバスバーと、前記電極端子に螺入されて前記バスバーを前記電極端子に締結するボルトまたはナットと、を有する蓄電装置であって、前記バスバーにおける前記電極端子との接続部において少なくとも前記ボルトの頭部の外側またはナットの外側に薄肉部を形成して当該薄肉部において折り曲げて前記ボルトの頭部またはナットに接触させてなることを要旨とする。
【0007】
これによれば、バスバーにおける少なくともボルトの頭部の外側またはナットの外側に形成した薄肉部において折り曲げられてボルトの頭部またはナットに接触させてボルトまたはナットの緩みが防止される。これにより、簡単な構成にてバスバーを電極端子に締結するボルトまたはナットの緩みを防止することができる。
【0008】
上記蓄電装置において、前記薄肉部は、溝の底面部により構成されているとよい。
上記蓄電装置において、前記溝の溝幅を、前記ボルトの頭部またはナットにおける最大半径と最小半径の差分としているとよい。
【0009】
これによれば、ボルトまたはナットの締付位置によらず対応することができる。
上記蓄電装置において、前記溝は直線的に延び、溝の延設方向と前記バスバーの延設方向とでなす角度を30〜60°の範囲としているとよい。
【0010】
上記蓄電装置において、前記溝の延設方向と前記バスバーの延設方向とでなす角度を45°としているとよい。
これによれば、折り曲げる距離を最も短くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構成にてバスバーを電極端子に締結するボルトまたはナットの緩みを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、車載用リチウムイオン二次電池に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
なお、図面において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0014】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、複数の電池セルC1〜C9を並設して構成した蓄電モジュールとしての電池モジュール20と、電池セル間を電気的に接続する平板状のバスバー30と、六角ボルト40,41を有している。各電池セルC1〜C9は角型電池セルであり、電池セルC1〜C9の本体部21が薄い四角箱型をなしている。本体部21は、シート状の正極とシート状の負極とセパレータとを積層して構成される電極組立体が、電槽(缶)の内部に収容され、構成されている。電池セルC1〜C9の本体部21はY方向において並設して配置され、隣接する電池セルの本体部21は側面が接触する状態で固定されている。
【0015】
各電池セルC1〜C9は、本体部21の上面から正極用の電極端子22と負極用の電極端子23が上方に突出している。
図1において、電池セルC1は、本体部21において左側に正極用の電極端子22が配置され、右側に負極用の電極端子23が配置されている。電池セルC2は、本体部21において左側に負極用の電極端子23が配置され、右側に正極用の電極端子22が配置されている。以下、電池セルC3は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が、電池セルC4は本体部21の左側に負極用の電極端子23が右側に正極用の電極端子22が、電池セルC5は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が配置されている。電池セルC6は本体部21の左側に負極用の電極端子23が右側に正極用の電極端子22が、電池セルC7は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が配置されている。電池セルC8は本体部21の左側に負極用の電極端子23が右側に正極用の電極端子22が、電池セルC9は本体部21の左側に正極用の電極端子22が右側に負極用の電極端子23が配置されている。
【0016】
電池セルC1〜C9は、本体部21の上面において台座(ナット)24を電極端子22,23が貫通する状態で配置されている。
バスバー30は、Y方向に延びている。バスバー30は隣接する電池セルの電極端子22,23に締結されている。即ち、バスバー30の一端側においてバスバー30の上側から六角ボルト40がバスバー30を貫通して電極端子22に螺入され、六角ボルト40によりバスバー30が電池セルの電極端子22に締結されている。バスバー30の他端側においてバスバー30の上側から六角ボルト41がバスバー30を貫通して電極端子23に螺入され、六角ボルト41によりバスバー30が電池セルの電極端子23に締結されている。
【0017】
このようにして、セル間接続用導電部材としてのバスバー30により隣接する電池セルの電極端子同士を電気的に接続して、各電池セルC1〜C9が直列接続されている。
バスバー30と電極端子22,23との接続構造について
図2,3,4,5,6を用いて詳しく説明する。
【0018】
図4に示すように、バスバー30は直線的に延びる銅製の帯板よりなり、長辺方向であるY方向において両端部には円形の貫通孔31が形成されている。なお、
図4等において便宜上バスバー30の片側の先端部のみ図示するが、他方の先端部においても同様な構成となっている。貫通孔31に六角ボルト40,41のねじ部が通る。このように、バスバー30は、両方の端部が電極端子22,23との接続部となっている。
【0019】
図2(b)に示すように、電池セルC1〜C9は、本体部21の天板50に貫通孔51が形成されている。
電極端子22,23は同一構成をなしている。
図2に示すように、電極端子22,23の本体部52は立設する柱状をなし、下端には鍔部53を有する。
図2に示すように、電極端子22,23の本体部52が、電池セルC1〜C9の本体部21の内部から天板50の貫通孔51を通して天板50から上方に突出している。電極端子22,23の本体部52の外周面と天板50の貫通孔51との間には絶縁樹脂カラー54およびシール材55が配置され、絶縁樹脂カラー54およびシール材55により電極端子22,23と天板50とは絶縁されている。電極端子22,23の本体部52の外周面は雄ねじが形成され、電極端子22,23の本体部52における天板50から上方に突出している部位に台座(ナット)24が螺入されている。この台座(ナット)24により電極端子22,23が天板50に締結固定されている。電極端子22,23の本体部52の上面にバスバー30が配置されている。
【0020】
図2に示すように、電極端子22,23の本体部52の上面中央には上面に開口する雌ねじ穴56が形成され、雌ねじ穴56は下方に延びている。雌ねじ穴56に対し、バスバー30を貫通するボルト40,41のねじ部が螺入されている。
【0021】
バスバー30における端部、即ち、電流経路となる部位よりも先端側において、六角ボルト40,41の緩み止めのための折曲部34,35が形成されている。詳しく説明する。バスバー30における電極端子との接続部においてバスバー30の先端側の角部における六角ボルト40,41の頭部45の外側が上方に折り曲げられ、三角形の折曲部34,35が六角ボルト40,41の頭部45に接触している。
図5に示すように、バスバー30には案内用の溝32,33が設けられ、この溝32,33の底面部においては薄肉部が形成されている。この薄肉部で折り曲げやすくなっている。詳しくは、
図5に示すように、帯板状のバスバー30の下面に、断面矩形の溝32,33が形成されている。溝32,33は、バスバー30の先端側の両方の角部に形成されている。溝32,33は、バスバー30の先端面におけるX方向で中央部分を始端として、直線的に、かつ、帯板状のバスバー30の延設方向(Y軸)とでなす角度θ1,θ2が45°となるように延びている。そして、六角ボルト40,41の頭部45の外側に形成した薄肉部(溝32,33の底面部)において折り曲げて六角ボルト40,41の頭部45に接触させている。
【0022】
図6に示すように、六角ボルト40,41の頭部45における最外周の円および最内周の円を一点鎖線で示し、最外周の円の半径をr1で、また、最内周の円の半径をr2で示す。ここで、溝32,33は、六角ボルト40,41の頭部45の最大半径r1と最小半径r2の差分Δrを溝幅Wsとしている。溝32,33が最大半径r1と最小半径r2に接していることで、六角ボルト40,41がどの位置にきても折り曲げることができる。断面矩形の溝32,33は切削加工により形成されている。また、溝32,33の深さは、板状のバスバーにおける電流経路となる部位の厚さの半分程度である。
【0023】
図5の状態から
図4に示すように、溝32,33を案内溝としてバスバー30の先端側の両角部を上方に折り曲げることができる。具体的には、
図3に示すように、六角ボルト40,41を電極端子22,23の雌ねじ穴56に螺入してねじ込んでバスバー30を締結した後において、
図2に示すように、バスバー30の先端側の角部が折り曲げられて三角形の折曲部34,35が六角ボルト40,41の頭部45に接触している。この折曲部34,35により振動等による六角ボルト40,41の緩みが防止されている。
【0024】
次に、電池セル間の接続方法、即ち、リチウムイオン二次電池10の電極端子22,23へのバスバー30の組付け工程について説明する。
図3に示すように、絶縁樹脂カラー54およびシール材55により電極端子22,23と天板50とを絶縁した状態で電極端子22,23の本体部52における天板50から上方に突出している部位に台座(ナット)24を螺入して台座(ナット)24により電極端子22,23を天板50に締結する。
【0025】
引き続き、電極端子22,23の上面にバスバー30を配置する。このとき、バスバー30は
図5に示すように先端側の角部は折り曲げる前の状態である。そして、六角ボルト40,41をバスバー30の貫通孔31を通して電極端子22,23の雌ねじ穴56に螺入する。これにより、バスバー30が電極端子22,23に固定される。
【0026】
その後、
図4および
図2に示すように、バスバー30の先端側の両側の角部を上側に折り曲げて六角ボルト40,41の頭部45の側面に当接させる。これにより六角ボルト40,41の緩みを防止できることになる。
【0027】
次に、作用について説明する。
図4,5に示すように、ねじ締結構造のバスバー30において、締結後の振動等による六角ボルト40,41の緩みを防止するために、バスバー30の先端側の角部を溝32,33に沿って45°付近で折り曲げて折曲部34,35を六角ボルト40,41の頭部45に接触させる。
【0028】
また、バスバー30は純銅あるいは純アルミもしくは純鉄素材を用いる。そのため、ビッカース硬さHVが100以下であり、安易に曲げることができる。また、バスバー30の長辺(帯板状のバスバー30の延設方向)と溝32,33とでなす角度θ1,θ2は、45°が望ましい。これにより、曲げる距離が最も短く簡単に曲がる。なお、角度θ1,θ2は、30°〜60°の範囲であると好ましい。
【0029】
以上のごとく本実施形態では安価な製造方法で、電池セル間の接続部位における六角ボルト40,41の緩みを防止することができる。詳しくは、電動式産業車両や自動車搭載時の振動や温度の上下に起因する六角ボルト40,41の緩みを防止することができる。その結果、電極端子とバスバーとの間の接続抵抗が上昇しない。さらに、バスバー30と接触する電極端子22,23などの寸法を変更することなく、平板状のバスバー30と電極端子22,23との接触面積を維持できる。その結果、電極端子とバスバーの接続抵抗が増加することが回避され、電池出力電圧や電力供給容量等の諸特性を向上させることができる。
【0030】
ちなみに、バスバーが単なる長方形の板であったならば、大電流を流すために板厚が厚く、電池モジュールとして固定された後でバスバーを折り曲げる作業が困難であるが、本実施形態ではバスバー30の一部を薄肉化して当該部位で折り曲げて六角ボルト40,41の頭部45に接触することにより、容易に六角ボルトの緩み止め対策を講じることができる。
【0031】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)蓄電装置としてのリチウムイオン二次電池10の構成として、バスバー30における電極端子との接続部において少なくとも六角ボルト40,41の頭部45の外側に薄肉部を形成して当該薄肉部において折り曲げて六角ボルト40,41の頭部45に接触させた。よって、簡単な構成にてバスバーを電極端子に締結する六角ボルト40,41の緩みを防止することができる。
【0032】
(2)薄肉部は、溝32,33の底面部により構成したので、容易に薄肉部を形成することができる。
(3)溝32,33の溝幅Wsを、六角ボルト40,41の頭部45における最大半径r1と最小半径r2の差分Δrとしたので、六角ボルト40,41の締付位置によらず対応することができる。即ち、少なくとも折り線において薄くなっており、ボルトの頭部の締め付け終了時の回転位置によらずに容易にバスバーの角部を曲げてボルトの頭部に接触させることができる。
【0033】
(4)溝32,33は直線的に延び、溝32,33の延設方向とバスバー30の延設方向とでなす角度を30〜60°の範囲とした。特に、溝32,33の延設方向とバスバー30の延設方向とでなす角度を45°とした。よって、折り曲げる距離を最も短くすることができる。
【0034】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
・バスバー30の一端の両方の角部を折り曲げたが、片側だけでもよい。具体的には、
図2(a)において、締付方向が時計回りである順ねじの場合、折曲部35のみを用いてもよい。
【0035】
・
図7に示すように、六角ボルト40,41の頭部45における緩み防止のためにバスバー30が接触する箇所は、点接触ではなく面接触でもよく、
図7のように順ねじの場合、符号Cで示したナット面で接触させる。ここで、六角ボルト40,41の頭部45における一つの辺の全長のうち全てが接触していてもよいが、
図7に示すように半分程度接触していてもよい。この場合、溝32,33の延設方向に平行になるように折り曲げるのではなく溝の延設方向に対して斜めに折り曲げることになる。
【0036】
・
図8に示すように、バスバー30における案内溝36は、帯板状のバスバー30における短辺(
図8のX方向)と平行であってもよい。
・溝の形状は問わない。例えば、
図3(b)では溝の断面形状として角が直角であったが、これに限ることなく、
図9(a)に示すように、バスバー30における溝形状は、U字形状でもよい。このU字溝はプレス加工でバスバーに対し溝形成部を押しつぶすようにして形成することができる。さらに、
図9(b)に示すように、溝の断面形状として先端面が斜状となった溝の形状でもよく、この場合、溝はスクラッチ加工で形成することができる。
【0037】
・帯板状のバスバー30における曲げ部である角部は、
図10に示すように、面取りした形状でもよい。具体的には、
図10に示す45°面取りであるC面形状でも、丸み面取りであるR面形状でもよい。
【0038】
・バスバー30において溝を形成したが、
図11に示すように、溝ではなく曲げる領域37,38の全体が他の曲げない部位よりも薄く形成してもよい。つまり、折り曲げる部位全体の板厚が薄くてもよい。バスバー30の先端側の角部は電流が流れる部位ではないので薄くても電気特性に影響を及ぼすことはない。また、
図12に示すように薄肉にする部位における境界での隅部の形状も直角でなく斜状部を有する形状としてもよい。
【0039】
・
図2等ではバスバー30の締結のためにボルト40,41を用いたが、
図13に示すようにバスバー30の締結のためにナット60を用いてもよい。
つまり、
図13に示すように、電池セルC1〜C9は、本体部21の天板50から雄ねじの電極端子61が突出し、天板50の上面において台座(ナット)62が電極端子61を貫通する状態で配置されている。電池セルの電極端子61がバスバー30を貫通するとともにバスバー30の上側から六角ナット60が螺入され、六角ナット60によりバスバー30が電池セルの電極端子61に締結されている。この構造においてバスバー30の一部を折り曲げて六角ナット60の緩みを防止してもよい。つまり、バスバー30における電極端子61との接続部において少なくともナット60の外側に溝32,33の底面部よりなる薄肉部を形成して当該薄肉部において折り曲げてナット60に接触させる。
【0040】
この場合においても、溝32,33の溝幅Wsをナット60における最大半径と最小半径の差分とするとよく、ナット60がどの位置にきても折り曲げることができる。また、溝32,33は直線的に延び、溝32,33の延設方向とバスバー30の延設方向とでなす角度を30〜60°の範囲とするとよく、特に、溝32,33の延設方向とバスバー30の延設方向とでなす角度を45°とすると曲げる距離が最も短くでき最も簡単に曲げることができる。
【0041】
・蓄電装置はリチウムイオン二次電池であったが、これに限定されることなく、他にも例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、キャパシタ等であってもよい。
・蓄電装置(リチウムイオン二次電池10)を搭載する車両は問わない。例えば、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車、産業車両等に搭載するとよい。
【0042】
・車載用以外の蓄電装置に適用してもよい。