(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015600
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6555 20140101AFI20161013BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20161013BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20161013BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20161013BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M2/10 E
H01M2/10 S
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-181377(P2013-181377)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2015-50057(P2015-50057A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/031613(WO,A1)
【文献】
特開2012−248299(JP,A)
【文献】
特開2012−160338(JP,A)
【文献】
特開平08−111244(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/084937(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/061869(WO,A1)
【文献】
特開2011−228165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M2/10、
10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の電池セルを有する電池体と、
前記電池体を前記電池セルの並設方向から挟持するエンドプレートと、
前記電池セルを制御する電子部品を有する回路装置と、
前記電池体に直接的又は間接的に固定された固定部材と、を備え、
前記固定部材によって鉛直方向に立設された立設部材に固定される電池モジュールであって、
前記エンドプレートは、前記立設部材と熱的に結合され、
前記回路装置は、前記エンドプレートに接合されるとともに該エンドプレートと熱的に結合されることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
並設された複数の電池セルと前記電池セル間に設けられる伝熱プレートとを有する電池体と、
前記電池セルを制御する電子部品を有する回路装置と、
前記電池体に直接的又は間接的に固定された固定部材と、を備え、
前記固定部材によって鉛直方向に立設された立設部材に固定される電池モジュールであって、
前記電池セルと前記立設部材とは、前記伝熱プレートを介して熱的に結合され、
前記回路装置は、前記伝熱プレートに接合されるとともに当該伝熱プレートと熱的に結合されることを特徴とする電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置を有する電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
回路装置を有する電池モジュールとしては、特許文献1に記載の二次電池装置が知られている。特許文献1に記載の二次電池装置は、複数の電池積層アッセンブリを備えている。電池積層アッセンブリは、床板と、床板から立設された背面板と、床板上に固定されたベース板とを有している。ベース板上には、電池モジュールが載置されている。また、二次電池装置は、電池積層アッセンブリを制御する制御基板ユニット(回路装置)を備えている。制御基板ユニットは、ベース基板と、ベース基板に実装された複数の電子部品を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−54353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ベース基板に実装された電子部品が発した熱をベース基板を介して放熱するために、ベース基板に放熱板を設けるとともに、この放熱板を背面板に固定して、電子部品が発した熱を放熱板から背面板に放熱する場合がある。このような場合、二次電池装置に振動が加わり、電池モジュールが上下動すると、放熱板は、背面板に固定され、電池モジュールとともに上下動できないことから、放熱板に電池モジュールの荷重が加わり、放熱板が背面板から外れるおそれがある。そして、放熱板が背面板から外れると、ベース基板の熱を放熱できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、回路装置の熱を適切に放熱することができる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電池モジュールは、並設された複数の電池セルを有する電池体と、前記電池体を前記電池セルの並設方向から挟持するエンドプレートと、前記電池セルを制御する電子部品を有する回路装置と、前記電池体に直接的又は間接的に固定された固定部材と、を備え、前記固定部材によって鉛直方向に立設された立設部材に固定される電池モジュールであって、前記エンドプレートは、前記立設部材と熱的に結合され、前記回路装置は、前記エンドプレートに接合されるとともに該エンドプレートと熱的に結合されることを要旨とする。
【0007】
これによれば、電子部品が発熱すると、この熱はエンドプレートから立設部材に放熱される。電池モジュールが鉛直方向に上下動すると、回路装置は、電池モジュール(エンドプレート)と一体となって上下動する。回路装置と一体となって上下動するエンドプレートと回路装置を熱的に結合することで、電池モジュールが上下動してもエンドプレートと回路装置との熱的な結合状態が維持されやすく、回路装置の熱を適切に放熱することができる。
【0008】
上記課題を解決する電池モジュールは、並設された複数の電池セルと前記電池セル間に設けられる伝熱プレートとを有する電池体と、前記電池セルを制御する電子部品を有する回路装置と、前記電池体に直接的又は間接的に固定された固定部材と、を備え、前記固定部材によって鉛直方向に立設された立設部材に固定される電池モジュールであって、前記電池セルと前記立設部材とは、前記伝熱プレートを介して熱的に結合され、前記回路装置は、前記伝熱プレートに接合されるとともに当該伝熱プレートと熱的に結合されることを要旨とする。
【0009】
これによれば、電子部品が発熱すると、この熱は伝熱プレートから立設部材に放熱される。回路装置をエンドプレートに接合する場合と同様に、電池モジュールが鉛直方向に上下動しても、電池モジュールと回路装置が一体となって上下動することから、伝熱プレートと回路装置との熱的な結合状態が維持されやすく、回路装置の熱を適切に放熱することができる。また、電池セルの熱を立設部材に放熱する伝熱プレートを回路装置の熱を放熱するための部材として兼用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路装置の熱を適切に放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】実施形態の電池モジュールの一部を破断して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、電池モジュールを具体化した一実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、電池パック10は、筐体11に複数の電池モジュール21が収容されている。筐体11は、有底四角筒状の本体15と、本体15の開口部を閉塞する天板14とからなる。本体15は、底板12と、底板12の周縁から立設する立設部材としての側壁13とからなる。側壁13は、鉛直方向に立設している。
【0013】
図2に示すように、側壁13には、電池モジュール21が固定されている。電池モジュール21は、電池体30を有している。本実施形態において、電池体30は、電池セル22(例えば、リチウムイオン二次電池や、ニッケル水素蓄電池などの二次電池)と、伝熱プレート23と、電池セル22を保持する電池ホルダ24とからなる。電池セル22と伝熱プレート23は、交互に並設されている。電池体30において、電池セル22の並設方向の一端には、伝熱プレート23が位置し、電池セル22の並設方向の他端には電池セル22が位置している。伝熱プレート23は、筐体11の側壁13に接触している。
【0014】
電池モジュール21は、電池体30における電池セル22の並設方向の一端に設けられた伝熱プレート23と電池セル22の並設方向に隣り合って設けられた第1のエンドプレート31を有している。また、電池モジュール21は、電池体30における電池セル22の並設方向の他端に設けられた電池セル22と電池セル22の並設方向に隣り合って設けられる第2のエンドプレート32を有している。したがって、電池体30は、電池セル22の並設方向からエンドプレート31,32に挟持されている。エンドプレート31,32は、側壁13と接することで、側壁13と熱的に結合されている。
【0015】
各エンドプレート31,32には、固定部材としてのブラケット33が固定されている。ブラケット33は、板材をL字状に折り曲げて形成されており、エンドプレート31,32に固定される第1の固定部34と、側壁13に固定される第2の固定部35とからなる。第1の固定部34は、溶接やボルト締結などによってエンドプレート31,32に固定されている。第2の固定部35は、溶接やボルト締結などによって側壁13に固定されている。これにより、ブラケット33によって、電池モジュール21が側壁13に固定され、エンドプレート31,32と側壁13とは、ブラケット33を介して熱的に結合されている。ブラケット33は、エンドプレート31,32に固定されることで、電池体30に間接的に固定されている。
【0016】
図3に示すように、電池モジュール21は、電池ホルダ24に支持される載置板41を有している。載置板41は、電池セル22の一面(本実施形態では、電池セル22の接続端子が設けられた面)と対向して配置されている。
【0017】
図4に示すように、載置板41には、回路装置51が搭載されている。回路装置51は、載置板41における第1のエンドプレート31側の端部に寄って設けられている。回路装置51は、金属製の放熱板52を有している。放熱板52には、回路基板54が載置されている。回路基板54には、電池セル22を制御する電子部品53(例えば、FETリレー、抵抗、コンデンサ、半導体素子など)が実装されている。放熱板52は、板材をL字状に折り曲げて形成されており、平板状の載置部55の一辺から平板状の放熱部56が立設されている。放熱部56は、載置板41における第1のエンドプレート31側の縁から若干突出するように載置板41に載置されている。なお、載置板41には、図示しない他の回路装置や、電池ECUなども載置されている。
【0018】
放熱板52の放熱部56と、第1のエンドプレート31には、平板状の金属板61が固定されている。この金属板61によって、第1のエンドプレート31と放熱板52が熱的に結合されている。すなわち、回路装置51が第1のエンドプレート31に接合されるとともに第1のエンドプレート31に熱的に結合されている。金属板61は、溶接や、ボルト締結などによって放熱部56及び第1のエンドプレート31に固定される。
【0019】
次に、本実施形態の電池モジュール21の作用について説明する。
電池モジュール21は、例えば、車両に搭載され、車両を駆動するためのモータの電力源として用いられる。電池セル22の充放電制御を行うことで電子部品53が発熱する。電子部品53が発した熱は、回路基板54から放熱板52に伝導し、放熱板52から金属板61に伝導される。そして、金属板61に伝導した熱は、第1のエンドプレート31に伝導される。第1のエンドプレート31に伝導した熱は、第1のエンドプレート31から側壁13に伝導される。また、第1のエンドプレート31に伝導した熱は、ブラケット33を介して側壁13に伝導される。すなわち、ブラケット33は、第1のエンドプレート31に伝導した熱を側壁13に伝導させる伝熱経路として機能している。
【0020】
車両の走行に伴い、電池パック10が振動すると、これに伴い電池モジュール21が上下動する。電池モジュール21が上下動すると、回路装置51は、電池モジュール21と一体となって上下動するため、金属板61が第1のエンドプレート31から外れにくい。
【0021】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)放熱板52と、電池モジュール21の第1のエンドプレート31とを固定している。放熱板52を側壁13に固定する場合には、電池モジュール21が上下動すると放熱板52に電池モジュール21の荷重が加わり、放熱板52が側壁13から外れやすい。放熱板52を、電池モジュール21の第1のエンドプレート31に固定することで、放熱板52は電池モジュール21と一体に動くため、放熱板52と第1のエンドプレート31の熱的な結合状態が維持されやすく、回路装置51の熱を適切に放熱することができる。
【0022】
(2)第1のエンドプレート31と回路装置51を熱的に結合している。電池体30においては、電池セル22の並設方向の両端の電池セル22を最短距離で結ぶ線分の中心に近いほど熱が篭りやすく、温度が上昇しやすい。電池体30においては、各電池セル22の温度差を小さくすることで、劣化を抑制することができるため、熱が篭りやすい電池セル22と熱的に結合された伝熱プレート23に放熱を行うと、電池体30の劣化を促進するおそれがある。電池セル22の並設方向の両端に設けられたエンドプレート31,32と回路装置51とを熱的に結合することで、電池セル22の温度差が大きくなることを抑制しつつ、回路装置51の放熱を行うことができる。
【0023】
(3)エンドプレート31,32のうち、伝熱プレート23と隣り合う第1のエンドプレート31と回路装置51とを熱的に結合している。第2のエンドプレート32に放熱を行う場合、第2のエンドプレート32に伝導した熱が電池セル22に伝わりやすく、電池セル22の温度が上昇しやすい。第1のエンドプレート31に放熱する場合には、第1のエンドプレート31と電池セル22との間に伝熱プレート23が設けられているため、第2のエンドプレート32に放熱する場合に比べて、電池セル22への熱の影響を抑制することができる。
【0024】
(4)回路装置51は、放熱板52を有している。放熱板52は、金属製であり、熱伝導性に優れるため、電子部品53の発した熱が伝導しやすい。そして、この放熱板52を金属板61によって第1のエンドプレート31と熱的に結合することで、放熱効率を向上させることができる。
【0025】
なお、実施形態は、以下のように変更してもよい。
○
図4に破線で示すように、実施形態において、第1のエンドプレート31に代えて、回路装置51を伝熱プレート23と熱的に結合してもよい。例えば、載置板41に金属板61を貫通させて伝熱プレート23に金属板61を接触させてもよい。この場合、伝熱プレート23によって、電池セル22及び回路装置51の熱を側壁13に放熱することができる。すなわち、伝熱プレート23を回路装置51の熱を放熱する部材として兼用することができる。なお、この場合、エンドプレート31,32は設けられていなくてもよく、例えば、電池セル22及び伝熱プレート23を拘束する金属のバンドで電池セル22と伝熱プレート23が拘束されていてもよい。また、回路装置51を第1のエンドプレート31と伝熱プレート23の両方に熱的に結合してもよい。
【0026】
○ 回路基板54を第1のエンドプレート31に熱的に結合してもよい。この場合、電子部品53から回路基板54に伝導した熱は、回路基板54から第1のエンドプレート31に伝導する。この場合、回路装置51は、放熱板52を有していなくてもよい。
【0027】
○ 第1のエンドプレート31上に、回路基板54を固定してもよい。
○ 回路装置51は、第2のエンドプレート32、すなわち、電池セル22と隣り合うエンドプレート32に熱的に結合されていてもよい。
【0028】
○ 電池セル22及び伝熱プレート23は、電池ホルダ24に保持されていなくてもよい。すなわち、電池モジュール21は、電池ホルダ24を有していなくてもよい。
○ 電池体30は、電池セル22のみから構成されていてもよい。また、電池体30は、電池セル22と伝熱プレート23とから構成されていてもよい。
【0029】
○ 立設部材は、筐体11の側壁13以外でもよい。例えば、産業車両に搭載されるカウンタウェイトを立設部材としてもよい。
○ 第1のエンドプレート31に伝導した熱を側壁13に放熱させたが、ブラケット33から側壁13に熱を伝導させず、第1のエンドプレート31を、熱を蓄える熱マスとして機能させてもよい。
【0030】
○ 電池モジュール21は単数であってもよい。
○ 電池モジュール21同士の間に緩衝材が設けられていてもよいし、電池モジュール21同士の間は隙間が形成されていてもよい。
【0031】
○ 固定部材は、立設部材(側壁13)に固定できるものであれば、どのようなものでもよい。例えば、エンドプレート31,32の固定部材であってもよい。また、伝熱プレート23にボルトが螺合される螺合穴を設けて、側壁13を貫通したボルトが、伝熱プレート23に螺合されるようにしてもよい。この場合、ボルトが固定部材となる。
【0032】
○ 固定部材(ブラケット33)は、電池体30に直接的に固定されていてもよい。
次に、上記実施形態及び変形例から把握することができる技術的思想について以下に追記する。
【0033】
(イ)前記回路装置は、前記電子部品が実装された回路基板の熱を放熱する放熱板を有し、前記放熱板と前記エンドプレートを熱的に結合する金属板を有することを特徴とする請求項1に記載の電池モジュール。
【0034】
(ロ)前記電池セルと交互に並設される伝熱プレートを備え、前記回路装置は前記伝熱プレートと隣り合う前記エンドプレートと熱的に結合されることを特徴とする請求項1又は技術的思想(イ)に記載の電池モジュール。
【符号の説明】
【0035】
10…電池パック、13…側壁、21…電池モジュール、22…電池セル、23…伝熱プレート、30…電池体、31…第1のエンドプレート、32…第2のエンドプレート、51…回路装置、53…電子部品、54…回路基板。