特許第6015644号(P6015644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015644
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】チップ一体開孔ビット
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   B28D1/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-264084(P2013-264084)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-120262(P2015-120262A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】507096124
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】竹崎 博
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−273439(JP,A)
【文献】 特表2007−503322(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0265080(US,A1)
【文献】 特開2008−126339(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0120240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
C21B 7/12
B25D 17/02
E21B 10/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空ロッドの先端に取り付けるものであり、開放底面側の内部に、前記中空ロッドのネジと組み合うネジが形成されている中空筒状の中間ジョイントと、
該中間ジョイントに組み合わせる台金を有し、
該台金の表面から突出する硬質チップを台金と一体となるように形成することで、台金と硬質チップの材質を同質のものとしたことを特徴とする、チップ一体開孔ビット。
【請求項2】
中空ロッドの先端に取り付ける中空筒状の中間ジョイントと、
該中間ジョイントに組み合わせる台金と、
該台金の中央に形成された角形開孔に嵌め込む上面ジョイントを有し、
前記中間ジョイントの上面側には、中空ネジが突出しており、
前記上面ジョイントの下面側には、中空ネジに組み合うネジ孔が形成されており、
前記台金の表面から突出する硬質チップを台金と一体となるように形成することで、台金と硬質チップの材質を同質のものとしたことを特徴とする、チップ一体開孔ビット。
【請求項3】
台金と硬質チップを、鋳造により一体形成したことを特徴とする、請求項1または2に記載のチップ一体開孔ビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鉱炉下部の溶銑の排出口である出銑孔の開口等に使用するチップ一体開孔ビットに関する。
【背景技術】
【0002】
出銑孔の開口等に使用するビットとして、特許文献1に記載の超硬工具が知られている。
該超硬工具は、鋼製の台金に設けた雌ねじ付きのチップ穴に硬質チップを嵌めこみ、その上から前記雌ねじに螺合する雄ねじを外周部に備えた押えリングを螺着して前記硬質チップを押圧固定したものである。
該超硬工具によれば、硬質チップをねじ付きの押えリングでチップ穴の内部に機械的に押圧固定しているので、硬質チップをロウ付けしたものと比較すると、高温状態である出銑孔等における使用に適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の超硬工具であっても、台金と硬質チップの材質が異なるため、異質の素材間における熱の影響の相違によって、溶鉱炉等の使い捨てを前提とする1600℃程度の高温となる特殊な使用条件下においては、穿孔の際に問題が起きることがあった。
また、複数の硬質チップを個々に台金に固定しなければならない点では、ロウ付け等をする場合と同等の手間がかかるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0005】
第1に、
中空ロッドの先端に取り付けるものであり、開放底面側の内部に、前記中空ロッドのネジと組み合うネジが形成されている中空筒状の中間ジョイントと、
該中間ジョイントに組み合わせる台金を有し、
該台金の表面から突出する硬質チップを台金と一体となるように形成することで、台金と硬質チップの材質を同質のものとしたことを特徴とする、チップ一体開孔ビット。
第2に
中空ロッドの先端に取り付ける中空筒状の中間ジョイントと、
該中間ジョイントに組み合わせる台金と、
該台金の中央に形成された角形開孔に嵌め込む上面ジョイントを有し、
前記中間ジョイントの上面側には、中空ネジが突出しており、
前記上面ジョイントの下面側には、中空ネジに組み合うネジ孔が形成されており、
前記台金の表面から突出する硬質チップを台金と一体となるように形成することで、台金と硬質チップの材質を同質のものとしたことを特徴とする、チップ一体開孔ビット。
第3に、
台金と硬質チップを、鋳造により一体形成したことを特徴とする、上記第1または第2に記載のチップ一体開孔ビット。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、台金と硬質チップの材質を同質のものとしたため、溶鉱炉等の特殊な使用条件下における穿孔の際でも、素材が異なることに起因する問題が起きることがない。
また、本発明によれば、台金と硬質チップを一体のものとして形成するので、複数の硬質チップを個々に台金にロウ付け等をする場合と比較して、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る3ピースタイプのチップ一体開孔ビットの使用状態の斜視図である。
図2図1に示すチップ一体開孔ビットの要部の分解斜視図である。
図3】本発明に係る3ピースタイプのチップ一体開孔ビットの六面図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は平面図、(E)は底面図、(F)は背面図を示す。
図4図3中の(A)におけるB−B線断面図である。
図5図3中の(A)におけるA−A線断面図である。
図6】硬質チップの断面図であり、(A)は平面チップの断面図、(B)は境界チップの断面図、(C)は傾斜面チップの断面図である。
図7】本発明に係る2ピースタイプのチップ一体開孔ビットの使用状態の斜視図である。
図8図7に示すチップ一体開孔ビットの要部の分解斜視図である。
図9】本発明に係る2ピースタイプのチップ一体開孔ビットの六面図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は平面図、(E)は底面図、(F)は背面図を示す。
図10図9中の(A)におけるD−D線断面図である。
図11図9中の(A)におけるC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明の範囲は以下の形態に限定されることがない。
【0009】
図1〜6を参照しながら、本発明に係る3ピースタイプのチップ一体開孔ビット(以下、開孔ビットという。)について説明する。
【0010】
本発明に係る3ピースタイプの開孔ビットは、図1に示すように、中空ロッド1の先端に取り付けるものであり、中空筒状の中間ジョイント2と、該中間ジョイント2と組み合う台金3と、該台金3に組み合う上面ジョイント4とから形成されている。
【0011】
図4及び5に示すように、中空ロッド1の先端部にはネジが形成されている。
他方、中間ジョイント2には、開放底面側の内部に、中空ロッド1のネジと組み合う左ネジが形成されている。
【0012】
図1に示す中間ジョイント2は、詳細を図2に示すように、上面側において、中心軸上に位置する中空ネジ21と、該中空ネジ21の周囲の対角位置の4カ所に、内部へ貫通する貫通孔22を有している。
前記中空ネジ21は、中空筒状の外側面にネジ切りしたもので、中間ジョイント2の上面側から突出するように形成されている。
【0013】
台金3は、図2に示すように、全体が十字状で、側面の対角位置に4つの溝部が各々形成されている。
該台金3は、平面である上面中央部に長方形状の角形開孔31を有し、対角位置関係にある2つの溝部に、内部へ貫通する溝部開孔32を各々有している。
角形開孔31は、上面側から内部に向けて段階的に狭くなるように、2つの異なるサイズで形成されている。
【0014】
台金3の上面側の表面は、図2に示すように、中央に位置する平面部と、該平面部の端部に連続して外周側に向けて下向きに傾斜する傾斜面部とを有している。
平面部には、角形開孔31の長辺側に、2つの平面硬質チップ33が突出するように形成されている。
平面部の外側に位置する4つの傾斜面部の各々には、傾斜面硬質チップ34が、傾斜面から垂直方向に突出するように形成されている。
平面部と傾斜面部との境界には、2つの境界硬質チップ35が突出するように形成されている。
【0015】
図6を参照すると、平面硬質チップ33は(A)で、傾斜面硬質チップ34は(C)で、境界硬質チップ35は(B)で示されている。
【0016】
これらの硬質チップは、高クロム鋳鉄を用いて鋳造により台金3と一体成形することで、台金3と硬質チップの材質を同質のものとすることができる。
【0017】
上面ジョイント4は、図2に示すように、台金3の中央に形成された角形開孔31に嵌め込むことが可能なように、角形開孔31の形状に合致して2段階の大きさで形成されたものであり、上面から底面側に向けて傾斜して貫通する傾斜貫通孔41を有している。
該上面ジョイント4の下面側の内部には、図4及び図5に示すように、中間ジョイント2の中空ネジ21に組み合うネジ孔が形成されている。
なお、上面ジョイント4の下面側の内部に形成されるネジ孔と、中間ジョイント2の中空ネジ21に組み合うネジ孔は、図4に示すように、上面ジョイント4側を雌ネジとし、中間ジョイント2側を雄ネジとする以外に、図示は省略するが、上面ジョイント4側を雄ネジとし、中間ジョイント2側を雌ネジとすることもできる。
【0018】
上記の3ピースタイプのチップ一体開孔ビットを使用する際には、図2を参照すると、まず、上面ジョイント4を台金3の角形開孔31に嵌め込む。
嵌め込んだ後に、上面ジョイント4の内部底面側に形成されたネジと、中間ジョイント2の中空ネジ21とを組み合わせる。
すなわち、台金3に嵌め込んだ上面ジョイント4の下側に、中間ジョイント2の中空ネジ21を差し入れ、中間ジョイント2を回して締めつける。
すると、中間ジョイント2と上面ジョイント4とを台金3に組み合わせることができ、3ピースタイプの開孔ビットが組み立てられる。
最後に、組み立てた開孔ビットを、中空ロッド1の先端にねじ込みことで、準備が完了する。
【0019】
次に、図7〜11を参照しながら、本発明に係る2ピースタイプのチップ一体開孔ビット(以下、開孔ビットという。)について説明する。
本発明に係る2ピースタイプの開孔ビットは、図7に示すように、中空ロッド1の先端に取り付けるものであり、中空筒状の中間ジョイント5と、該中間ジョイント5と組み合う台金6とから形成されている。
【0020】
図10及び11に示すように、中空ロッド1の先端部にはネジが形成されている。
他方、中間ジョイント5には、開放底面側の内部に、中空ロッド1のネジと組み合う左ネジが形成されている。
【0021】
該中間ジョイント5は、図8に示すように、上面側において、中心軸上に位置し内部へ貫通する中心貫通孔51と、該中心貫通孔51の周囲の対角位置の4カ所に、内部へ貫通する貫通孔52を有している。
【0022】
台金6は、図8に示すように、全体が十字状で、側面の対角位置に4つの溝部が各々形成されている。
該台金6は、上面に形成された平面部に、内部に傾斜して貫通する上面傾斜貫通孔61を有し、対角位置関係にある2つの溝部に、内部へ貫通する溝部開孔62を各々有している。
【0023】
台金6の上面側の表面は、図8に示すように、中央に位置する平面部と、該平面部の端部に連続して外周側に向けて下向きに傾斜する傾斜面部とを有している。
平面部には、2つの平面硬質チップ63が突出するように形成されている。
平面部の外側に位置する4つの傾斜面部の各々には、傾斜面硬質チップ64が、傾斜面から垂直方向に突出するように形成されている。
平面部と傾斜面部との境界には、2つの境界硬質チップ65が突出するように形成されている。
【0024】
これらの硬質チップは、高クロム鋳鉄を用いて鋳造により台金6と一体成形することで、台金6と硬質チップの材質を同質のものとすることができる。
【0025】
上記の2ピースタイプのチップ一体開孔ビットを使用する際には、図を参照すると、台金6を中間ジョイント5を組み合わせる。
そして、接触部分を溶接加工することで、2ピースタイプの開孔ビットが組み立てられる。
なお、接触部分は、ロウ付け加工により接合することができるし、溶接加工及びロウ付け加工により接合することもできる。
最後に、組み立てた開孔ビットを、中空ロッド1の先端にねじ込みことで、準備が完了する。
【0026】
上記で説明した本発明に係る2ピースタイプ及び3ピースタイプの開孔ビットは、いずれもネジ加工が困難であるクロム鋳鉄によるパーツに対しては、ネジ加工をすることなく、開孔ビットを組み立てることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 中空ロッド
2 中間ジョイント
21 中空ネジ
22 貫通孔
3 台金
31 角形開孔
32 溝部開孔
33 平面硬質チップ
34 傾斜面硬質チップ
35 境界硬質チップ
4 上面ジョイント
41 傾斜貫通孔
5 中間ジョイント
51 中心貫通孔
52 貫通孔
6 台金
61 上面傾斜貫通孔
62 溝部開孔
63 平面硬質チップ
64 傾斜面硬質チップ
65 境界硬質チップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2011−149192号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11