特許第6015654号(P6015654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6015654分離膜モジュールの滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法、および膜分離型連続発酵装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015654
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】分離膜モジュールの滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法、および膜分離型連続発酵装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20161013BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20161013BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20161013BHJP
   C12P 7/56 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B01D65/02 500
   A61L2/07
   C12M1/00 D
   C12P7/56
【請求項の数】9
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-516876(P2013-516876)
(86)(22)【出願日】2013年3月1日
(86)【国際出願番号】JP2013055711
(87)【国際公開番号】WO2013137027
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-60694(P2012-60694)
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】武内 紀浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 敦
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−237213(JP,A)
【文献】 特開平9−220445(JP,A)
【文献】 特開平8−164328(JP,A)
【文献】 特開平2−207826(JP,A)
【文献】 特開昭62−53655(JP,A)
【文献】 特開昭61−242604(JP,A)
【文献】 特開昭59−25750(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058983(WO,A1)
【文献】 特開2013−128470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
A61L 2/07
C12M 1/00
C12P 7/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離膜モジュールを水蒸気により滅菌する方法であって、
前記分離膜モジュールの2次側に、分離膜のうちろ過に供される部分で囲まれた空間における充填率が70%以上となるように、大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給工程と、
前記液体供給工程において前記分離膜モジュールの2次側に供給された液体の充填率が70%以上となるよう2次側を封止する液体封入工程と、
分離膜モジュールの2次側を封止したまま、前記分離膜モジュールの1次側に水蒸気を供給することで、前記分離膜モジュールを滅菌する滅菌工程と、
を含むことを特徴とする分離膜モジュールの滅菌方法。
【請求項2】
前記液体供給工程は、前記滅菌工程の前に行われ、かつ、前記分離膜モジュールの1次側から2次側へ前記分離膜を介して前記液体を通液、または2次側に直接前記液体を供給するとともに、該2次側から1次側に前記分離膜を介して前記液体を通液することを含み、
前記滅菌方法は、前記液体封入工程後、前記滅菌工程の前に、前記分離膜モジュールの1次側の液体を排出する排出工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の分離膜モジュールの滅菌方法。
【請求項3】
前記液体供給工程で前記分離膜モジュールに供給される液体は水であることを特徴とする
請求項1または2に記載の分離膜モジュールの滅菌方法。
【請求項4】
前記滅菌工程後、前記分離膜モジュールの2次側に封入した液体を排出するとともに、該2次側に、前記供給工程で供給された液体と同種類または異なる液体を供給して分離膜モジュールを冷却する冷却工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜モジュールの滅菌方法。
【請求項5】
前記滅菌工程後、前記分離膜モジュールの2次側に封入した液体を排出する排出工程と、
前記分離膜モジュールの2次側に洗浄液を供給し、かつ前記分離膜モジュールの2次側から前記洗浄液を排出することで、該2次側内部を濯ぐとともに、前記分離膜モジュールを冷却する冷却工程と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜モジュールの滅菌方法。
【請求項6】
前記昇温工程前に、前記分離膜モジュール内に温水を供給して予熱する予熱工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜モジュールの滅菌方法。
【請求項7】
前記滅菌工程は、前記分離膜の2次側から1次側へ液体を通液しながら、前記分離膜の1次側へ水蒸気を供給することを含む請求項1〜6のいずれかに記載の分離膜モジュールの滅菌方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の滅菌方法により前記分離膜モジュールを滅菌する蒸気滅菌工程と、
発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、
前記蒸気滅菌工程後の前記分離膜モジュールにより前記発酵液から濾過液として化学品を回収する膜分離工程と、
を含むことを特徴とする連続発酵による化学品の製造方法。
【請求項9】
発酵原料を微生物によって発酵培養することにより、該発酵原料を、化学品を含有する発酵液に変換する発酵槽と、
前記発酵液から化学品を分離する分離膜モジュールと、
前記発酵槽から前記分離膜モジュールに発酵液を送液する発酵液循環部と、
前記発酵槽および前記分離膜モジュールに水蒸気を供給する蒸気供給部と、
前記分離膜モジュールの2次側に大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給部と、
前記蒸気供給手段の稼働中に、前記分離膜モジュールの2次側であって、分離膜のうちろ過に供される部分で囲まれた空間における前記液体の充填率が70%以上となるように、前記分離膜モジュールの2次側を封止する封止部と、を備えることを特徴とする膜分離型連続発酵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵液等に含まれる化学品を得るために、発酵液から微生物を濾過する場合などに使用する分離膜モジュールの滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法、および膜分離型連続発酵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物や培養細胞の培養を伴う物質生産方法である発酵法は、大きく(1)回分発酵法(Batch発酵法)および流加発酵法(Fed−Batch発酵法)と、(2)連続発酵法とに分類することができる。
【0003】
上記(1)の回分発酵法および流加発酵法は、設備的には簡素であり、短時間で培養が終了し雑菌汚染による被害が少ないという利点がある。しかしながら、時間経過と共に発酵培養液中の化学品濃度が高くなり、浸透圧あるいは化学品阻害等の影響により生産性および収率が低下してくる。そのため、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持することが困難である。
【0004】
また、上記(2)の連続発酵法は、発酵槽内で目的化学品が高濃度に蓄積することを回避することによって、長時間にわたって高収率かつ高生産性を維持できるという特徴がある。この連続発酵法については、L−グルタミン酸やL−リジンの発酵についての連続培養法が開示されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この例では、発酵培養液に原料の連続的な供給を行うと共に、微生物や培養細胞を含んだ発酵培養液を抜き出すために、発酵培養液中の微生物や培養細胞が希釈されることから、生産効率の向上は限定されたものであった。
【0005】
そこで、連続発酵法において、微生物や培養細胞を分離膜で濾過し、濾液から化学品を回収すると同時に濃縮液中の微生物や培養細胞を発酵培養液に保持または還流させることにより、発酵培養液中の微生物や培養細胞濃度を高く維持する方法が提案されている。例えば、分離膜として有機高分子からなる平膜を用いた連続発酵装置において、連続発酵する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
この様な連続発酵では、雑菌混入(コンタミネーション)を防いだ状態で純粋培養を行うことが好ましい。発酵培養液を濾過する際に分離膜モジュール等から雑菌が混入すると、発酵効率の低下、発酵槽内での発泡等により化学品の製造が効率的に行えなくなる。そのため、雑菌混入を防ぐために、発酵前に発酵槽や周辺設備、そして分離膜を滅菌する必要がある。
【0007】
滅菌の方法としては、火炎滅菌、乾熱滅菌、煮沸滅菌、蒸気滅菌、紫外線滅菌、ガンマ線滅菌、ガス滅菌等の方法が挙げられるが、分離膜孔中の水分が無くなり、分離膜が乾燥してしまうと分離機能がなくなってしまうことに留意する必要がある。薬剤で殺菌する方法もあるが、殺菌後の薬剤の処理または分離膜モジュールへの薬剤の残留の問題がある。さらに薬剤耐性のある微生物が残る懸念がある。
【0008】
また、分離膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などの形状のものがあり、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式がある。特に中空糸膜モジュールは単位装置あたりの膜面積が大きく、工業的にも有用な構造と考えられるが、構造としては複雑なものである。
【0009】
複雑な構造の分離膜を乾燥させずに滅菌するには、分離膜モジュール内に所定温度の水蒸気を供給して滅菌する蒸気滅菌(一般的には121℃、15分間から20分間)が適している。
【0010】
この蒸気滅菌を生産スケールの発酵槽などの設備で行う場合、一般的には、発酵槽や周辺設備に、所定温度・圧力の蒸気、例えば125℃の飽和水蒸気を供給し、一般的な蒸気滅菌の温度である121℃まで各設備を昇温し、滅菌温度を所定時間保持して(20分以上)、蒸気滅菌を行っている。
【0011】
蒸気滅菌の方法として、蒸気滅菌時に中空糸膜の外側(1次側)に水蒸気を通気して、またはさらに中空糸膜の内側(2次側)に水蒸気を通気させ、蒸気滅菌をする方法が提案されている(特許文献2)。特許文献2では、該蒸気滅菌方法による中空糸膜モジュールの長期運転時の模擬試験として、中空糸膜モジュール内への水の注入と水蒸気の注入とを繰り返し行ないリーク評価を行なっているが、分離膜モジュールの2次側に水を封入して蒸気滅菌するものではない。
【0012】
一方、蒸気滅菌後、装置をそのまま冷却すると、水蒸気が凝縮することにより装置内が負圧となり雑菌混入の懸念が生じる。
【0013】
これに対して、半透膜モジュールの蒸気滅菌後、原水側から熱水を導入し、濾過装置内が負圧になることを防止する技術や(特許文献3参照)、膜モジュールの蒸気滅菌後、原水を常温のままで濾過処理時よりも低い線速度で通液してモジュールを冷却する技術が提案されている(特許文献4参照)。
【0014】
また、蒸気滅菌後、原液側(1次側)である中空糸膜内側から空気を供給し、透過側(2次側)である中空糸膜の外側に空気の一部を膜透過させて、透過側の空間を満たした後、原液側より水を供給してモジュールの温度を下げる中空糸膜モジュールの蒸気滅菌方法が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−252367号公報
【特許文献2】特開平2−207826号公報
【特許文献3】特開昭61−242605号公報
【特許文献4】特開平8−164328号公報
【特許文献5】特公平8−4726号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Toshihiko Hirao et al., Appl. Microbiol. Biotechnol.,32,269−273(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、発酵槽や周辺配管などを蒸気滅菌する場合、水蒸気の供給温度は、最も温度が上がりにくい場所(コールドスポット)でも、所定の蒸気滅菌の温度以上になるように設定される。また、水蒸気の供給時間は、最も温度が上がりにくい場所が、所定の蒸気滅菌の温度以上に昇温してから、所定の蒸気滅菌の時間以上滅菌するように設定する。通常、保温などで放熱対策を講じるが、供給する水蒸気の温度は121℃以上とされる。
【0018】
しかしながら、水蒸気の供給温度が高く、かつ供給時間が長くなると、高温の水蒸気との長時間の接触により、分離膜モジュールの各部材が劣化する懸念がある。例えば、中空糸膜モジュールでは、中空糸膜とモジュール容器を固定するため、一般にウレタン系やエポキシ系のポッティング剤を使用している。このポッティング剤は、繰り返し行われる蒸気滅菌により劣化して、ポッティング剤と中空糸膜、またはポッティング剤とモジュール容器の剥離が発生する懸念がある。中空糸膜モジュールの場合、ポッティング剤として伸度の大きいウレタン系の樹脂を使用することがあるが、ウレタン樹脂は120℃を超えると劣化が進行し、一般的な蒸気滅菌の処理温度である121℃以上の水蒸気と長時間接触した場合、ポッティング剤が劣化し、リークが発生する懸念がある。
【0019】
また、水蒸気は、圧力損失の少ない空間に流れやすいため、例えば中空糸膜が過度に密に集まっているなど、分離膜が過度に密になっている部分には、水蒸気は流れにくい懸念がある。蒸気滅菌時は、飽和水蒸気圧で高温に保持するが、分離膜が過度に密になっている部分は、主に伝熱で昇温していくため、蒸気滅菌条件まで昇温するのに多くの時間を要する。分離膜形状が密なものは、膜面積が大きくとれるメリットがある反面、過度に密になっていると蒸気滅菌時、水蒸気の通気が十分行き渡らずに滅菌温度まで昇温できずに滅菌不良となるか、または確実に昇温、滅菌するには長時間を要するといった問題を有していた。
【0020】
さらに、長時間の蒸気滅菌を行うと、蒸気滅菌中に分離膜孔中の水分が、飽和水蒸気との接触で、平衡状態となり、徐々に少なくなり、分離膜の乾燥が増加する懸念があった。また、分離膜モジュールを放冷する際、分離膜モジュール内部の温度は一様ではないことが多く、まだ高温の分離膜モジュールの筐体などの部材に、分離膜が接触して乾燥する懸念があった。中空糸膜中の水分が気化した場合、その後濾過処理をするためには分離膜孔中の気相を液相に再度置換する必要がある。親水性の分離膜ならば、水に濡れるために置換は容易であるが、耐薬品性や耐熱性などの必要な性能を具備する分離膜は、疎水性物質をベースにした分離膜が多く、分離膜孔中の気相を液相に置換するには、例えば一旦、疎水性膜に親和性のある液体で置換した後、水に置換する必要がある。
【0021】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、短い時間で、確実に分離膜モジュールを滅菌し、かつ分離膜の乾燥を抑制できる分離膜モジュールの滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法、および膜分離型連続発酵装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の分離膜モジュールの滅菌方法は、分離膜モジュールを水蒸気により滅菌する方法であって、前記分離膜モジュールの2次側に、分離膜のうちろ過に供される部分で囲まれた空間における充填率が70%以上となるように、大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給工程と、前記液体供給工程において前記分離膜モジュールの2次側に供給された液体の充填率が70%以上となるよう2次側を封止する液体封止工程と、分離膜モジュールの2次側を封止したまま、前記分離膜モジュールの1次側に水蒸気を供給することで、前記分離膜モジュールを滅菌する滅菌工程と、を含む。
【0023】
また、本発明の連続発酵による化学品の製造方法は、前記滅菌方法により前記分離膜モジュールを滅菌する蒸気滅菌工程と、発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液へと変換する発酵工程と、前記蒸気滅菌工程後の前記分離膜モジュールにより前記発酵液から濾過液として化学品を回収する膜分離工程と、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の膜分離型連続発酵装置は、発酵原料を微生物によって発酵培養することにより、該発酵原料を、化学品を含有する発酵液に変換する発酵槽と、前記発酵液から化学品を分離する分離膜モジュールと、前記発酵槽から前記分離膜モジュールに発酵液を送液する発酵液循環部と、前記発酵槽および前記分離膜モジュールに水蒸気を供給する蒸気供給部と、前記分離膜モジュールの2次側に大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給部と、前記蒸気供給手段の稼働中に、前記分離膜モジュールの2次側であって、分離膜のうちろ過に供される部分で囲まれた空間における前記液体の充填率が70%以上となるように、前記分離膜モジュールの2次側を封止する封止部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分離膜モジュールの2次側に大気圧下で80℃以上の液体を封入した後、1次側に水蒸気を供給することにより、分離膜モジュールが所定の滅菌温度まで昇温するのに要する時間を大幅に短縮できるため、ポッティング剤等の熱による劣化を抑制することが可能となり、かつ分離膜の乾燥も抑制することができる。さらに、冷却等に空気を使用しないため、分離膜の破損や透過水量の低下を抑制することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施の形態1にかかる分離膜モジュールの滅菌用装置の概略図である。
図2図2は、本発明の実施の形態1にかかる蒸気滅菌処理を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる分離膜モジュールの滅菌用装置の概略図である。
図4図4は、本発明の実施の形態1の変形例2にかかる分離膜モジュールの滅菌用装置の概略図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置の概略図である。
図6図6は、本発明の実施の形態2にかかる滅菌処理を説明するフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施の形態2の変形例1にかかる膜分離型連続発酵装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態にかかる分離膜モジュールの滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法、および膜分離型連続発酵装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る分離膜モジュールの滅菌方法について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる分離膜モジュールの滅菌用装置の概略図である。滅菌用装置100は、分離膜モジュール2の1次側に水蒸気を供給する蒸気供給部20と、分離膜モジュール2の2次側に大気圧下での沸点が80℃以上の液体を供給する液体供給部40と、を備える。分離膜モジュール2には、処理対象である原液を供給する、循環バルブ17および配管23が1次側に接続されるとともに、分離膜で濾過された濾過液を分離膜モジュール2外に排出する濾過液排出ライン24が2次側に接続されている。濾過液排出ライン24には、濾過ポンプ11および濾過バルブ13が設置され、濾過バルブ13を開とし、濾過ポンプ11により吸引することにより1次側から2次側に濾過される。2次側に濾過されなかった原液は、配管25を介してクロスフローされる。
【0029】
蒸気供給部20は、供給バルブ19および配管34を介して、分離膜モジュール2の1次側に接続される。蒸気供給部20から分離膜モジュール2の1次側に供給された所定温度の水蒸気は、排出ライン33および排出バルブ32を介して分離膜モジュール2の系外に排出される。また、液体供給部40から、分離膜モジュール2の1次側に供給された液体は、分離膜を介して2次側に供給される。液体の2次側への濾過は、濾過ポンプ11により吸引しながら行うことが好ましい。分離膜モジュール2の1次側に供給された液体は、クロスフローのための配管25を介して分離膜モジュール2の系外に排出される。なお、以下、分離膜モジュール2内の、処理対象である原液と接する側を1次側と呼び、処理後の濾過液と接する側を2次側と呼ぶ。
【0030】
分離膜モジュール2は、分離膜と該分離膜を収容する容器とを備える。本実施の形態1に使用される分離膜は、有機膜、無機膜を問わない。分離膜の洗浄に逆圧洗浄や薬液浸漬による洗浄などを行うため、分離膜は、これらに対する耐久性を有することが好ましい。分離膜の形状は、平膜、中空糸膜、スパイラル式などいずれの形状のものも採用することができる。中でも、中空糸膜モジュールが好ましく、中空糸膜モジュールであれば、外圧式、内圧式のいずれの形状のものも採用することができる。
【0031】
本実施の形態1に使用される分離膜として、分離性能及び透水性能、さらには耐汚れ性の観点から、有機高分子化合物を好適に使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。
【0032】
溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が、化学的強度(特に耐薬品性)と物理的強度を併せ有する特徴をもつためより好ましく用いられる。
【0033】
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体を用いても構わない。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
【0034】
実施の形態1に使用される分離膜の平均細孔径は、使用する目的や状況に応じて適宜決定することができるが、ある程度小さい方が好ましく、通常は0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。中空糸膜の平均細孔径が0.01μm未満であると、糖や蛋白質などの成分やその凝集体などの膜汚れ成分が細孔を閉塞して、安定運転ができなくなる。透水性能とのバランスを考慮した場合、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.03μm以上である。また、1μmを超える場合、膜表面の平滑性と膜面の流れによる剪断力や、逆洗やエアースクラビングなどの物理洗浄による細孔からの汚れの成分の剥離が不十分となり、安定運転ができなくなる。
【0035】
また、平均細孔径が微生物または培養細胞の大きさに近づくと、これらが直接細孔を塞いでしまう場合がある。さらに発酵液中の微生物または培養細胞の一部が死滅することにより細胞の破砕物が生成する場合があり、これらの破砕物によって細孔の閉塞を回避するために、平均細孔径は0.4μm以下が好ましく、0.2μm以下が好適である。
【0036】
ここで、分離膜の平均細孔径は、倍率10,000倍以上の走査型電子顕微鏡観察で観察される複数の細孔の直径を測定し、平均することにより求めることができる。10個以上、好ましくは20個以上の細孔を無作為に選び、それら細孔の直径を測定し、数平均して求めることが好ましい。細孔が円状でない場合などは画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円、すなわち等価円を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることも好ましく採用できる。
【0037】
分離膜モジュール2を使用した濾過処理を行う際、雑菌等による装置内および/または濾過液の汚染を防止するために、濾過処理前に分離膜モジュール2の蒸気滅菌処理を行うことが好ましい。
【0038】
実施の形態1において、蒸気供給部20から分離膜モジュール2の1次側に水蒸気を供給する前に、液体供給部40により分離膜モジュール2の2次側に液体が封入されることが好ましく、さらに、液体が封入された状態が維持されながら、蒸気供給部20から水蒸気が供給されることが好ましい。
蒸気滅菌に際し、分離膜モジュール2の2次側に、高い沸点を示す液体、例えば、大気圧下での沸点が80℃以上の液体を封入することにより、封入された液体が、分離膜モジュール2の1次側に供給された水蒸気から分離膜を介して、分離膜モジュール2の各部に熱伝導することにより、液体を封入しない場合よりも分離膜モジュール2の所定の滅菌温度までの昇温時間を短縮することができる。その結果、分離膜モジュール2への熱負荷を軽減することができる。
一般に液体は、気体よりも熱伝導率が高い(例えば、水の熱伝導率は、空気の熱伝導率および水蒸気の熱伝導率よりも大きい。)ので、分離膜モジュール2の2次側に液体を供給し、封止した後、水蒸気を供給することにより、2次側に空気または水蒸気が存在する場合に比べて、分離膜モジュール2の昇温速度が早くなる。また、封入する液体の熱容量が小さい方が昇温には有利であり、分離膜モジュール2内部の熱伝導は熱容量の大小も影響すると考えられる。
【0039】
また、特に膜孔の径が大きい場合や水蒸気と親和性のある素材の膜の場合などにおいて、水蒸気が1次側から2次側へ分離膜を通過することが可能な場合がある。よって、水蒸気による加熱の前に液体を2次側にあらかじめ封入しておくと、加圧された水蒸気を1次側に供給したときに、一部の加圧された1次側の水蒸気が2次側に通過すること、液体が2次側から1次側に分離膜を通過すること、または、2次側の液体の温度が高くなり蒸発することなどにより、2次側に水蒸気が入り込む余地ができる。その結果、膜の2次側において、水蒸気と液体とが入れ替わることができる。こうして、2次側からも水蒸気により膜を加熱することができる。
2次側に液体を封入しないで、水蒸気を通気する場合、長時間の蒸気滅菌を行うと、分離膜孔中の水分が、蒸気滅菌中に飽和水蒸気と接触することで、平衡状態となる。その結果、分離膜孔中の水分が徐々に少なくなり、分離膜が乾燥する懸念があった。また、水蒸気の通気は中空糸膜を一様に透過するとは限らないので、水蒸気を通気する前に中空糸膜の2次側に存在していた空気の一部が残り、空気がロックされた状態(すなわちエアロックが生じた状態)で滞留する懸念があった。
【0040】
一方、2次側に液体が封入されておらず、その状態で2次側が封止されている場合、水蒸気が分離膜を通って2次側に移動するためには、2次側の空気が1次側に移動する必要がある。しかしながら、空気は、バブルポイント以上の圧力がかからないと分離膜を通過することができない。ここで、蒸気滅菌時に分離膜の1次側にかかる圧力は、膜の材質によるが、特に疎水性の分離膜では、バブルポイント未満であることが多い。例えば、通常の蒸気滅菌では、圧力条件は、121℃程度での飽和水蒸気圧なので、0.13MPa程度である。この場合、空気は分離膜を通ることができず、中空糸膜の2次側には、空気がロックされた状態(すなわちエアロックが生じた状態)で滞留する。また、1次側が加圧された状態であるため、2次側の空気は、1次側の圧力以上でないと、2次側に透過できない。従って、液体が封入されていないと、中空糸膜を2次側から加熱することは困難である。
【0041】
ここで、本発明において、「封入」とは、液体が入っている空間を、その液体がその空間から流出しないように封止することを意味する。また、「封止」とは、所定の空間を外部の空間から隔てることを意味する。「外部の空間から隔てる」とは、「外部の空間から切り離す」と言い換えることができる。「封止」は、特に、分離膜モジュールにおいて分離膜の2次側の空間から液体が流出する経路を閉じることを意味する。
【0042】
封止する具体的な手段としては、分離膜モジュールに接続され、分離膜の2次側から液体が流出する経路上のバルブを閉めること、弁を閉じることなどが挙げられる。具体的には、分離膜モジュール2に接続されたライン24および26上に設けられたバルブ13および27が、液体を通さないように閉じられた状態が、「封止された」状態である。また、封止するために必要であれば、バルブ14および22も閉じられる。ただし、後述するように、逆圧濾過しながら蒸気滅菌する場合には、バルブ22は開けられる。
【0043】
上述したように、分離膜および操作条件によっては、液体が分離膜を通る可能性があるが、このように液体が分離膜を通過することは、「流出」には該当しない。つまり、液体が分離膜を通過しても、「封止された」状態に含まれる。
【0044】
なお、「封入」および「封止」とは、分離膜を介する以外の流出を一切除外する意味ではない。すなわち、上述したように、封入された液体による滅菌効率の向上の効果が得られるものであれば、液体の流出を排除するものではない。蒸気滅菌開始後からの充填率の低下は許容される。
また、逆圧濾過すること、つまり2次側に液体を供給し、2次側から1次側に分離膜を介して液体を通過させることも、本発明の「封入」および「封止」に該当する。詳細は後述する。
【0045】
一般的な蒸気滅菌の滅菌温度は121℃であるため、封入する液体が気化することによる分離膜モジュール2への影響を小さくするために、封入する液体の大気圧下での沸点は80℃以上であることが好ましい。滅菌温度を121℃より低くして滅菌する場合には、大気圧下での沸点が80℃以下の液体も封入液体として選択可能である。
【0046】
分離膜モジュール2の2次側に供給される液体は、例えば、イオン交換水、逆浸透膜透過水、蒸留水等の水や、アルコール類が好適に使用される。アルコール類としては、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ヘプタノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールに加え、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等が例示される。また、シリコーンオイルや、界面活性剤を添加した水も使用することができる。さらに、水に電解質を溶解したものであっても良く、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加したものあってもよい。ただし、分解物が発生するなどして、分離膜やモジュール部材等に悪影響することのないことを確認しておくことが好ましい。封入液体残存時の濾過液への混入等を考慮すると、封入液体としては、添加物のない水が好適である。
【0047】
封入する液体は、分離膜との親和性が高い方が分離膜モジュール2の2次側への液体の封入が容易となる。したがって、分離膜が親水性の場合には、親水性の液体を選択し、疎水性の分離膜には疎水性の液体を選択することが好ましい。あるいは、疎水性の分離膜を使用する場合であっても、封入に使用する親水性の液体と相溶性があり、かつ疎水性分離膜とも親和性が高いグリセリン等に疎水性分離膜を浸漬処理することにより、親水性の液体、例えば水を封入する液体として選択することができる。または、グリセリン等に疎水性分離膜を浸漬し、その後疎水性分離膜に付着したグリセリン等を一旦アルコールに置換することにより、疎水性分離膜の封入液体として水を選択することが可能となる。
【0048】
封入する液体の温度は、蒸気滅菌時に所定の温度まで昇温することができれば、滅菌を行うことができるため、特に規定されない。蒸気滅菌温度との温度差が小さい方が、蒸気滅菌温度までの昇温時間が短くなるが、分離膜の二次側に封入した封入液体は、供給する水蒸気によりすぐ昇温するので、昇温時間としては大きな差異が無い。
【0049】
液体を分離膜の2次側に封入する方法は、特に限定されないが、液体が水の場合を例に以下の通り述べる。
分離膜モジュール2の1次側に封入する液体である水を通液し、分離膜モジュール2の1次側を水で満たした後に、分離膜モジュール2の1次側に圧をかけて、または2次側から吸引して、1次側から2次側にろ過をして、2次側を水で満たした後、排出バルブ27および濾過バルブ13を閉止して、2次側を水で封入する。
分離膜モジュール2の1次側から2次側にろ過により水を供給する場合、ろ過の時間が短いと、分離膜の2次側が十分水で封入されない懸念があるため、一定時間以上ろ過をすることが好ましい。
例えば、有効長が1mの中空糸膜モジュールでは、中空糸膜の1次側を水で満たした後、0.2m/dのろ過流束で、15分以上ろ過をすると、中空糸膜のろ過部分の2次側容積に対し、90%以上を水で満たすことができる。
【0050】
さらに、2次側を封入する際のろ過の流束は、早く封入でき作業時間が短くなるため、また分離膜の孔中の空気などを押し出しやすいため、大きい方が好ましい。例えば、2次側に液体を封入するときのろ過の流束は、0.1m/d以上であることが好ましく、0.2m/d以上であることがより好ましい。
【0051】
分離膜モジュール2の2次側への水の封入は、分離膜のろ過部分の2次側容積の大部分をできるだけ水で封入することが好ましいが、分離膜のろ過抵抗が小さい部分からろ過が進行するため、空気などの気体が2次側に残る可能性がある。より多くの部分を水で封入しようとすると、2次側への水の通液時間または通液量が多くなる課題がある。多くの部分について水で封入されていれば、分離膜全体としては、昇温時間も速くなり、膜の乾燥も抑制することができるため好ましい。分離膜モジュール2の2次側への水の封入量は、分離膜のろ過部分の2次側容積に対し、70%以上であることが好ましい。70%未満であると、部分的に膜の乾燥が発生するなどの懸念がある。
【0052】
なお、2次側容積とは、分離膜の有効膜面積部分についての、分離膜の2次側の容積である。例えば、分離膜モジュール2として中空糸膜モジュールを使用する場合、分離膜モジュール2内に中空糸膜を固定するため、ポッティング剤なる接着剤で固定をするが、ポッティング層中の中空糸膜は、まわりがポッティング剤となるので、ろ過には寄与せず、有効膜面積には入らない。そのため、2次側容積にもカウントしない。
【0053】
2次側容積は、具体的には、例えば外圧式中空糸膜であれば、中空糸膜の内径の値と有効膜面積部分の中空糸膜長さから、計算することができる。外圧式中空糸膜は一般に断面積は円形であるが、三角や四角といった形状でも容易な計算で算出することができる。または、分離膜の2次側に水を一旦封入し、その水を排出して計量することでも良い。この場合は、一緒に排出される部分の水の容積を差し引き、有効膜面積部分の容積を算出することができる。
【0054】
分離膜の2次側への水の封入量は、分離膜モジュール2への水の供給を中止し、バルブ操作により水を封入した後、一旦、分離膜モジュール2の1次側の水を排出して、その後、2次側の水を排出することで計量することができる。
例えば、分離膜の1次側から2次側にろ過をした後、2次側に設置したバルブを閉止して、2次側に水を封入する。その後、分離膜の1次側の水を排出してから、2次側に設置したバルブを開けて、必要に応じ2次側を空気で加圧するなどして、2次側に封入した水を排出し、計量する。この場合、2次側の送液ラインなどを満たしていた水も含まれることになるが、事前に送液ラインの水量を計量しておけば、中空糸膜の2次側の水量を求めることができる。
または、分離膜の1次側から観察を行い、水の封入した部分と気体が残っている部分の長さを測定することで、水の封入率を求めることができる。分離膜の全体について観察できることが望ましいが、目視できない部分もあるので、部分的に観察して代表させることでも良い。
【0055】
または、2次側に水を封入する前に分離膜モジュール2の質量を事前に計量しておき、2次側に水を封入し、1次側の水を排出した後、分離膜モジュール2の質量を計量して、2次側に封入した水量を求めることもできる。この場合も、2次側の送液ラインなどを満たしていた水も含まれることになるが、事前に送液ラインの水量を計量しておけば、中空糸膜の2次側の水量を求めることができる。
【0056】
なお、分離膜の1次側全体を水で満たす前に、1次側に圧を加えるか、2次側を吸引することにより、2次側に水を供給することができるが、分離膜全体でろ過をする方が、2次側への水の封入が早く進むので、1次側全体を水で満たした後、1次側から2次側に水をろ過する方が好ましい。
【0057】
以上の様に分離膜モジュール2の2次側に封入した水について、封止した状態を維持したまま、蒸気滅菌を行うことが好ましい。
分離膜モジュール2の1次側に水蒸気を通気して蒸気滅菌する場合、1次側に水を満たした状態で水蒸気を通気すると、局所的に液体の水と水蒸気が急激な熱交換をして、1次側に存在する水が蒸発したり、水蒸気が凝縮するなどして、分離膜が振動し、分離膜モジュール2の分離膜や部材が破損する懸念がある。そのため、分離膜モジュール2の1次側に水蒸気を通気して滅菌する場合は、分離膜モジュール2の1次側に液体の水が少ないことが好ましい。
ところが、分離膜モジュール2の1次側に液体の水がなく、1次側における圧力が2次側における圧力より小さい場合は、2次側に封入した水が1次側へ逆流する可能性がある。そのため、封入の方法は特に限定されないが、例えば、2次側の送液ラインに設けた排出バルブ27等の閉止に加え、1次側の圧力が2次側の圧力より低下しないようにして、2次側の水の封入量が70%以上に保持されることが必要である。
【0058】
実施の形態1において、蒸気供給部20は分離膜モジュール2の1次側に水蒸気を供給する。分離膜モジュール2に供給する水蒸気の温度は、滅菌対象物の特性により決定される滅菌温度に設定すれば良く、特に、一般的な蒸気滅菌の滅菌温度と同様の121℃以上であることが好ましい。供給する水蒸気として、イオン交換水、逆浸透膜処理水、蒸留水、またはそれと同程度の清浄性を有する水を用いることが好ましい。水蒸気用の水は、イオン交換水、逆浸透膜処理水、蒸留水などを予め滅菌し、その後に所定の水蒸気としてもよく、イオン交換水、逆浸透膜処理水、蒸留水などを予め所定の温度の水蒸気とし、その後に滅菌フィルター等を通して滅菌処理するようにしてもよい。
【0059】
分離膜モジュール2の滅菌は、分離膜モジュールを所定温度に昇温し、その温度を所定時間維持することで実行される。一般的に、滅菌は、121℃以上に昇温し、15分〜20分間保持することで行われることが好ましい。具体的には、分離膜モジュール2に121℃以上の水蒸気を15〜20分間供給し続けることにより滅菌を行うことが特に好ましい。つまり、滅菌工程は、温度を上げる昇温工程と、その温度を維持する温度維持工程とを含みうる。
滅菌時に分離膜モジュールの温度が適切な値まで向上しているかどうかは、以下のようにして判断することができる。
例えば、事前に蒸気滅菌時の発酵槽1の温度と分離膜モジュール2の温度の相関関係を確認しておくことにより、滅菌時に、発酵槽の温度を確認することで、間接的に分離膜モジュールの温度を推定することができる。
また、分離膜モジュールの分離膜の中に熱電対を挿入し、滅菌時に温度を測定することで、分離膜モジュール2の温度を確認することもできる。
もしくは、事前に分離膜モジュール2の筐体表面温度と分離膜モジュール2の内部温度との相関関係を確認しておく。滅菌時には、分離膜モジュールの筐体の表面温度を、表面温度計などで測定することで、分離膜モジュール2の内部温度を推定することができる。こうして、所定の蒸気滅菌温度に到達しているか確認することができる。
なお、蒸気滅菌の温度および時間等の諸条件が適切かどうかは、その条件下で滅菌ができているかを事前に確認することで、判断できる。この事前確認は、次のようにして行うことができる。すなわち、分離膜モジュール2における温度が上昇しにくい箇所(例えば分離膜の間などの狭い場所)に、なんらかの微生物を配置した後、蒸気滅菌を行う。その後、例えば栄養源を含む培地を分離膜モジュールに供給し、微生物が増殖するか確認を行うことで、適切に滅菌できているか確認することができる。
【0060】
また、蒸気滅菌する際、分離膜モジュールの各部材などへの熱負荷を低減するため、分離膜モジュール2を予熱しても良い。
例えば、封入する液体を供給する液体供給ライン31等を介して分離膜モジュール2に温水を供給することで、分離膜モジュール2を予熱することができる。温水は、原液を供給する配管23等を介して供給しても良い。分離膜モジュール2に供給する温水の温度は、40〜100℃未満であることが好ましい。温水供給による予熱により、一般的な蒸気滅菌の滅菌温度である121℃以上まで、水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温する際に、昇温時間を短くすることができる。供給する温水の温度は、より好ましくは、80〜100℃未満である。温水の供給温度を徐々に上げてもよく、例えば、20℃で温水の供給を開始し、徐々に温水の温度を80℃程度まで昇温しても良い。
【0061】
また、複雑な形状の分離膜モジュール2内では水蒸気が行き渡りにくい部分が存在するが、該形状の分離膜モジュール2において、温水で予熱をすることで、予熱後に水蒸気を供給してからの昇温時間を短くすることができる。
分離膜モジュール2の部材に急激な温度変化に対して耐久性が低いものを含む場合は、供給する温水の温度を徐々に上げて温水を供給することが好ましい。
温水は逆浸透膜を透過させた水や蒸留水、イオン交換水をヒーター等で加熱したものを用いる。滅菌に使用することから、フィルターを透過させてフィルター滅菌する等、滅菌してから使用することが好ましい。なお、フィルターは市販の滅菌用フィルターを使用することができ、捕捉径が0.2μm程度のものが好ましい。
【0062】
温水として使用する水はタンク等に貯蔵しておき、分離膜モジュール2に送液しても良い。この場合、タンクで所定の温度に加熱しておくこともできる。また分離膜モジュール2の送液時に、途中に熱交換器を設けて、加熱することもできる。熱交換器には、プレート式、チューブ式、スパイラル式、二重管式等の一般的な熱交換器を用いることもできる。
【0063】
また、滅菌工程(昇温工程および温度維持工程)、および滅菌後の冷却工程において、分離膜モジュール2の2次側に水を供給し、供給された水を2次側から1次側に通液しても良い。滅菌工程や滅菌後の冷却工程において、2次側から1次側に水を通液しながら、1次側に水蒸気を供給すると、分離膜の乾燥を抑制することができる。
また、滅菌後の冷却工程において、2次側から1次側に温水を供給してもよい。2次側から1次側に温水を供給することにより、高温となったポッティング層を徐々に冷却できるため、急激な冷却によるヒートショックを抑制でき、ポッティング層の劣化を抑制することができる。
分離膜モジュール2の2次側に供給された水は、分離膜モジュール2の1次側に透過され、排出ライン33および排出バルブ32を介して分離膜モジュール2から排出される。
分離膜モジュールの様式によっては、2次側に保持している水を直接排出することもできる。この場合は、2次側に直結している排出ライン26、排出バルブ27にて排出を行う。
【0064】
滅菌工程において、2次側から1次側に水を通液しながら、1次側に水蒸気を供給する場合、分離膜モジュール2の滅菌工程中、所定の滅菌温度を保持するように、2次側から1次側に供給する水の温度および流量を制御することが好ましい。供給する水の温度が低く流量が多いと、分離膜モジュール2の2次側から1次側へ透過する水により、分離膜モジュール2の分離膜近傍の温度が、所定の滅菌温度より低下する可能性がある。したがって、使用する分離膜モジュール2について、事前に水の供給温度および供給量と、供給する蒸気温度および蒸気供給量と、ならびに分離膜モジュール2の温度の関係を確認しておくことが好ましい。特に分離膜モジュール2に供給する水の流束については、0.001〜1m/dが好ましく、0.01〜0.1m/dがさらに好ましい。例えば、温度が121℃以上という条件で、125℃の水蒸気を供給する場合、この程度の流束であれば、分離膜に供給されおよび分離膜中を通液する間に、所定の蒸気滅菌温度まで昇温されるため、蒸気滅菌温度の保持に悪影響する懸念は無い。
また、水の供給は間欠、または連続で供給することができるが、分離膜の乾燥防止と滅菌時の温度の安定性とを考慮すると、連続で供給することが好ましい。
【0065】
次に、図2を参照して、実施の形態1にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法を説明する。図2は、実施の形態1にかかる分離膜モジュール2の滅菌処理を説明するフローチャートである。
【0066】
実施の形態1にかかる滅菌処理では、まず、分離膜モジュール2の1次側に液体供給部40により液体を供給し、2次側に通液する(ステップS1)。液体は、排出バルブ27、供給バルブ19、排液バルブ32、濾過バルブ13および循環バルブ17を閉、液体供給バルブ22を開とした状態で、液体供給ポンプ21により液体供給ライン31を介して分離膜モジュール2の1次側に供給される。分離膜モジュール2の1次側を液体で満たした後、1次側から2次側に液体を通液する。液体の通液は、濾過バルブ13を開とした後、濾過ポンプ11により2次側から吸引して、2次側が封入液体で満たされるまで行なうことが好ましい。封入される液体が分離膜のうち2次側のろ過に供される部分で囲まれた空間、すなわち濾過部分の2次側容積に対して70%以上封入できる条件、例えば、液体供給部40による液体の供給量や、濾過の流束等は事前に確認しておく。液体供給部40により供給される液体の温度は、常温でも加温されたものであってもよい。
【0067】
分離膜モジュール2の濾過部分の2次側容積に対して70%以上液体が供給された後、2次側を封止することにより、2次側に液体を封入する(ステップS2)。2次側の液体の封入は、濾過バルブ13の閉止により行なう。濾過バルブ13の閉止をした後、封入液体供給ポンプ21を停止して、分離膜モジュール2への液体の供給を停止する。
【0068】
分離膜モジュール2の2次側を液体で封入した後(濾過バルブ13は閉止のまま)、蒸気供給部20により水蒸気を分離膜モジュール2の1次側に供給して、分離膜モジュール2を所定の滅菌温度まで昇温する(ステップS3)。水蒸気供給の際、循環バルブ17および液体供給バルブ22を閉、供給バルブ19および排出バルブ32を開とし、配管34を介して水蒸気を分離膜モジュール2の1次側に供給する。蒸気供給部20による水蒸気の供給は、排出ライン33から水蒸気を排出しながら、分離膜モジュール2が所定の滅菌温度に昇温するまで継続される。なお、1次側に満たされた液体は排出ライン33から排出される。
ここで、液体の水が多量にあるところに、水蒸気を通気すると、水蒸気と液体の水の接触により、急激な温度変化が発生し、ハンマリングが発生するため、1次側の水は水蒸気通気前に、排出しても良い。
なお、蒸気滅菌で所定の温度になるように、滅菌空間を飽和水蒸気圧以上に保つ必要があることから、排出ライン33には、設定の圧を保持しながら水蒸気の凝縮水(ドレン)のみを排出できる様に、スチームトラップなどを設けることができる。
また、分離膜モジュール2と他の装置とを同時に蒸気滅菌しても良いし、クロスフローの配管25の途中のバルブを閉止することで、分離膜モジュール2を単独で蒸気滅菌することもできる。
【0069】
蒸気供給部20による水蒸気の供給により分離膜モジュール2が所定の滅菌温度に昇温した後、分離膜モジュール2を所定の滅菌温度で所定時間滅菌する(ステップS4)。水蒸気を用いた滅菌においては、通常は滅菌温度が121℃、滅菌時間が15分から20分であるが、分離膜モジュール2に要求される滅菌のレベルなどに応じて、滅菌温度および滅菌時間を適宜変更してもよい。また、分離膜モジュール2の温度を保持しやすくするために、分離膜モジュール2の各部分の放熱分を補う量の水蒸気を供給する。滅菌用装置100の各部を保温することにより、水蒸気の供給を減らすことも好ましい。
ステップS3による昇温と、ステップS4による温度維持とを合わせて、滅菌工程と見なすことができる。
【0070】
滅菌処理後、分離膜モジュール2の1次側の水蒸気および2次側に封入された液体を排出して滅菌処理を終了する(ステップS5)。1次側の水蒸気および2次側に封入された液体の排出は、排出ライン26および33を介して行なえばよい。分離膜モジュール2を放冷して1次側の水蒸気の圧力を低下させても良いし、圧縮空気や冷却水を供給して冷却しても良い。また、2次側に封入した液体は、特に水の場合は、分離膜の乾燥防止のため、封入したままでも良い。
なお、蒸気滅菌後は、蒸気滅菌の対象物の内部が陰圧状態になると、外気などから未滅菌物が混入(吸入)する懸念があることから、できるだけ陰圧状態を避けることが好ましい。そのため、蒸気滅菌後に滅菌水や滅菌空気などを供給して、蒸気滅菌の対象物を陽圧にすることが好ましい。
【0071】
本実施の形態1によれば、分離膜モジュールの2次側に高沸点の液体を封入した後、1次側に水蒸気を供給することにより、2次側に封入した液体が分離膜を介して分離膜モジュール2の各部に熱伝導するため、分離膜モジュール2が所定の滅菌温度まで昇温するのに要する時間を大幅に短縮できる。また、特に膜孔が大きい分離膜を滅菌する場合、2次側に液体を封入した状態で滅菌するため、水蒸気が分離膜の1次側から2次側へ通過することもあり、1次側から2次側への水蒸気の通気により、2次側にも水蒸気が行き渡るため、2次側からも水蒸気で加熱でき、所定の滅菌温度まで昇温するのに要する時間を大幅に短縮できる。これにより、ポッティング剤等の熱による劣化を抑制することが可能となり、分離膜モジュール2の交換頻度を低減できる。
【0072】
なお、分離膜の2次側への液体の封入は、2次側に直接行ってもよい。図3は、本発明の実施の形態1の変形例1にかかる分離膜モジュールの滅菌用装置の概略図である。変形例1にかかる滅菌用装置100Aは、液体供給部40は分離膜モジュール2の2次側に接続される。滅菌用装置100Aは、排出ライン26に液体供給部40が接続され、排出バルブ27を閉止した状態で、液体供給部40から分離膜モジュール2の2次側へ直接液体を供給する。ここで、2次側に空気がある場合、エアロックで液体の封入が妨げられる懸念があるため、濾過バルブ13は開とする。
液体供給部40により、2次側に供給された液体の充填率、すなわち2次側のろ過に供される部分で囲まれた空間への液体の充填率が70%以上となった後、濾過バルブ13および液体供給バルブ22を閉止することにより、2次側に液体が封入される。あるいは、2次側に液体を満たした後、分離膜の2次側から1次側へ液体を逆圧濾過してもよい。分離膜の2次側から1次側へ液体を濾過した後、分離膜モジュール2の2次側の液体供給バルブ22等を閉止すれば、2次側に液体を封入した状態となる。
【0073】
逆圧濾過後の滅菌工程では、2次側に供給された液体が流出しないように、2次側からの液体の流出経路、例えば、図3の濾過バルブ13、排出バルブ27および液体供給バルブ22は閉じられる。なお、滅菌工程において、濾過バルブ13および排出バルブ27を閉じ、液体供給バルブ22を開いた状態、すなわち液体を2次側に供給しながら滅菌工程を行なってもよい。
【0074】
また、封入液体として水以外の溶媒を使用する場合、図4に示すような滅菌用装置を使用することが好ましい。図4は、本発明の実施の形態1の変形例2にかかる分離膜モジュールの滅菌用装置の概略図である。滅菌用装置100Bは、分離膜モジュール2の2次側に洗浄液を供給する分離膜洗浄装置18を備える。
【0075】
分離膜洗浄装置18は、洗浄液槽と、洗浄液供給ポンプ12と、洗浄液バルブ14とを備える。分離膜洗浄装置18は、洗浄液供給ポンプ12を駆動することにより、洗浄液槽から分離膜モジュール2の2次側に、洗浄液供給ライン29を介して洗浄液を供給する。実施の形態1の変形例2では、実施の形態1にかかる滅菌処理において、2次側に封入された液体の排出後(ステップS5)、分離膜洗浄装置18により分離膜モジュール2の2次側に洗浄液を供給する。洗浄液の供給の際、排出バルブ27および濾過バルブ13を閉、洗浄液バルブ14を開として、2次側を洗浄液で満たした後、排出バルブ32等の1次側のバルブを開として、2次側から1次側にも洗浄液を通液する。供給した洗浄液により分離膜モジュール2の1次側および2次側に残存する液体を洗浄することができる。なお、分離膜洗浄装置18を1次側に接続して、洗浄液を1次側から2次側に供給してもよい。例えば、分離膜モジュール2の1次側に洗浄液を供給し、分離膜の2次側に濾過をすることで洗浄しても良い。
【0076】
洗浄液は、水が好適に使用できるが、分離膜モジュール2の逆圧洗浄に使用するアルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加した水であってもよい。
【0077】
変形例2において、封入液体として水以外の溶媒を使用する場合、排出ライン26と液体供給部40とを接続することにより、封入液体を再利用してもよい。また、滅菌工程において、濾過バルブ13および排出バルブ27を閉じ、洗浄液バルブ14を開いた状態、すなわち洗浄液を2次側に供給しながら滅菌工程を行なってもよい。
【0078】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について図5を参照して説明する。図5は、本発明の実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置の概略図である。
【0079】
膜分離型連続発酵装置200は、発酵原料を微生物の発酵培養により化学品を含有する発酵液への変換を行う発酵槽1と、発酵液から化学品を分離する分離膜モジュール2と、分離膜モジュール2に発酵液を供給する循環ポンプ8と、蒸気滅菌用の水蒸気を供給する蒸気供給部20と、分離膜モジュール2の2次側に封入液体を供給する液体供給部40と、各部を制御する制御装置50と、を備える。
【0080】
発酵槽1内には、原料供給ポンプ9により原料及び微生物または培養細胞が投入される。発酵工程は発酵槽1内で進行する。膜分離型連続発酵装置200は、撹拌装置4および気体供給装置15を備える。撹拌装置4は発酵槽1内の発酵液を撹拌する。また、気体供給装置15は、必要とする気体を供給することができる。このとき、供給された気体を回収し、リサイクルして再び気体供給装置15で供給することができる。
【0081】
膜分離型連続発酵装置200は、pHセンサー・制御装置5および中和剤供給ポンプ10を備える。pHセンサー・制御装置5は培養液のpHを検出し、その結果に応じて、培養液が設定範囲内のpHを示すように、中和剤供給ポンプ10を制御する。中和剤供給ポンプ10は、酸性水溶液の槽及びアルカリ性水溶液の槽に接続されており、いずれかの水溶液を発酵槽1に添加することによって培養液のpHを調節する。培養液のpHが一定範囲内に保たれることで、生産性の高い発酵生産を行うことができる。中和剤、つまり酸性水溶液およびアルカリ性水溶液は、pH調整液に該当する。
【0082】
循環ポンプ8は、装置内の培養液、つまり発酵液を、発酵槽1から分離膜モジュール2に送液し、クロスフローにより未濾過の発酵液を、分離膜モジュール2から発酵槽1に循環する。循環ポンプ8は、循環バルブ17、配管23を介して、発酵液を分離膜モジュール2に送液し、分離膜モジュール2で濾過されなかった未濾過の発酵液を、配管25を介して、発酵槽1に循環させる。発酵生産物である化学品を含む発酵液は、分離膜モジュール2によって濾過されることで微生物と発酵生産物である化学品に分離され、装置系から濾過液として取り出される。また、分離された微生物は、装置系内にとどまるので、装置系内の微生物濃度が高く維持される。その結果、生産性の高い発酵生産を可能としている。
【0083】
分離膜モジュール2は、循環ポンプ8を介して発酵槽1に接続されている。分離膜モジュール2による濾過は、濾過ポンプ11により吸引しながら行うことが好ましい。分離膜モジュール2により濾過された濾液は、濾過液排出ライン24から濾過バルブ13を介して排出・回収される。膜分離型連続発酵装置200は、分離膜モジュール2の分離膜の差圧を検出する差圧センサー・制御装置7を備えることができる。差圧センサー・制御装置7により、分離膜モジュール2の分離膜の差圧を検出しながら、分離膜モジュール2の分離膜の差圧が一定の範囲内の値を示すように、濾過ポンプ11を制御することで、安定したろ過を行うことができる。あるいは、濾過ポンプ11による吸引を行うことなく、循環ポンプ8による圧力のみによって、特別な動力を使用することなく濾過を行うことも可能である。また、循環ポンプ8の出力を調整することで、発酵槽1から分離膜モジュール2へ送られる発酵液量を適当に調整することができる。
【0084】
発酵槽1は、温度制御装置3を備えることができる。温度制御装置3は、温度検出する温度センサーと、加熱部および/または冷却部と、制御部とを備える。温度制御装置3は、温度センサーによって発酵槽1内の温度を検出し、検出結果に応じて、温度が一定の範囲内の値を示すように制御部によって加熱部および/または冷却部を制御して、発酵槽1内の温度を制御する。こうして、発酵槽1の温度が一定に維持されることで、微生物濃度が高く維持される。
また、蒸気滅菌時の発酵槽1の温度と分離膜モジュール2の温度の相関を事前に確認しておくことにより、蒸気滅菌時に、発酵槽の温度を確認することで、間接的に分離膜モジュールの温度を推定することもできる。
【0085】
また、発酵槽1には直接又は間接的に水を添加することができる。水供給部は、発酵槽1に直接的に水を供給し、具体的には水供給ポンプ16で構成される。間接的な水の供給は、原料の供給およびpH調整液の添加等を含む。膜分離型連続発酵装置200に添加される物質は、コンタミによる汚染を防止し、発酵を効率よく行うため、滅菌されていることが好ましい。例えば、培地は、培地原料を混合後に加熱されることで滅菌されてもよい。また、培地、pH調整液および発酵槽に添加される水は、必要に応じて、滅菌用フィルターを通すなどして無菌化されてもよい。
【0086】
レベルセンサー・制御装置6は、発酵槽1内の液面の高さを検知するセンサーと、制御装置とを備える。制御装置は、このセンサーの検知結果に基づいて、原料供給ポンプ9、水供給ポンプ16等を制御することによって、発酵槽1内に流入する液量を制御することで、発酵槽1内の液面の高さを一定の範囲内に維持する。
【0087】
分離膜洗浄装置18は、洗浄液槽と、洗浄液供給ポンプ12と、洗浄液バルブ14とを備える。分離膜洗浄装置18は、洗浄液供給ポンプ12を駆動することにより、洗浄液槽から分離膜モジュール2の2次側に洗浄液を供給して逆圧洗浄を行う。ここで、逆圧洗浄とは、分離膜の2次側である濾過液側から、1次側である発酵液側へ洗浄液を送ることにより、分離膜表面に堆積した汚れ物質を除去する方法である。分離膜モジュール2の2次側に供給された洗浄液は、分離膜を透過して1次側に濾過される。洗浄液が分離膜モジュール2に供給されることで、分離膜の洗浄が実行される。逆圧洗浄を行う場合、分離膜モジュール2と濾過ポンプ11との間に配置される濾過バルブ13を閉とし、分離膜モジュール2における濾過が停止した状態で、洗浄液を分離膜モジュール2に供給する。逆圧洗浄を行う際は、循環ポンプ8を運転しても、または停止してもよい。循環ポンプ8を運転しながら逆圧洗浄を行う場合は、洗浄液供給ポンプ12の圧力を循環ポンプ8と分離膜差圧の和の圧力より高く設定すればよい。
【0088】
逆圧洗浄に用いられる洗浄液には、発酵を大きく阻害しない範囲で、アルカリ、酸、酸化剤または還元剤を添加することができる。ここで、アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。酸の例としては、シュウ酸、クエン酸、塩酸、硝酸などを挙げることができる。また酸化剤の例としては、次亜塩素酸塩、過酸化水素などを挙げることができる。還元剤の例としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどの無機系還元剤などを挙げることができる。
【0089】
微生物または培養細胞の発酵液を分離膜モジュール2中の分離膜で濾過処理する際の膜間差圧は、微生物および培養細胞、並びに培地成分が容易に目詰まりしない条件であればよい。例えば、膜間差圧を0.1kPa以上20kPa以下の範囲にして濾過処理することができる。膜間差圧は、好ましくは0.1kPa以上10kPa以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1kPa以上5kPa以下の範囲である。上記膜間差圧の範囲内であれば、微生物(特に原核生物)および培地成分の目詰まり、並びに透過水量の低下を抑制することで、連続発酵運転に不具合を生じることを効果的に抑制することができる。
【0090】
蒸気供給部20は、発酵槽1、分離膜モジュール2および周辺配管に、供給バルブ19を介して水蒸気を供給する。供給バルブ19により膜分離型連続発酵装置200の各部に水蒸気を供給し、所定の蒸気滅菌条件により装置の滅菌を行う。蒸気滅菌後、気体供給バルブ30を介して圧縮空気を膜分離型連続発酵装置200に供給して、発酵槽1内等から水蒸気を排出し、冷却することもできる。
【0091】
次に、図6を参照して、実施の形態2にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法を説明する。図6は、実施の形態2にかかる分離膜モジュール2の滅菌処理を説明するフローチャートである。
【0092】
実施の形態2にかかる分離膜モジュール2の滅菌方法では、実施の形態1と同様に、まず、分離膜モジュール2の1次側に液体供給部40により2次側に封入する液体を供給し、2次側に通液する(ステップS11)。液体は、排出バルブ27、循環バルブ17、濾過バルブ13及び洗浄液バルブ14を閉、封入液体供給バルブ22を開とし、封入液体供給ポンプ21により液体供給ライン31を介して分離膜モジュール2の1次側を液体で満たした後、濾過バルブ13を開とし、濾過ポンプ11を運転することにより濾過を行い、分離膜モジュール2の2次側に液体を通液する。封入する液体が、分離膜のうち2次側のろ過に供される部分で囲まれた空間、すなわち濾過部分の2次側容積に対して70%以上満たされるまで2次側へのろ過を行なう。なお2次側容積に対して70%以上満たされるまでの時間は、事前に試験を行い確認しておくことが好ましい。
【0093】
分離膜モジュール2の濾過部分の2次側容積に対して70%以上液体が供給された後、2次側を封止することにより、2次側に液体を封入する(ステップS12)。液体供給ポンプ21、洗浄液供給ポンプ12および濾過ポンプ11を停止して、分離膜モジュール2への液体の供給を停止するとともに、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14および封入液体供給バルブ22、排出バルブ27を閉止して、分離膜モジュール2の2次側に液体を封入する。
【0094】
分離膜モジュール2の2次側に液体を封入後、蒸気供給部20により分離膜モジュール2の1次側および発酵槽1等の膜分離型連続発酵装置200の各部に水蒸気を供給して、分離膜モジュール2を含む膜分離型連続発酵装置200の各部を所定の滅菌温度まで昇温する(ステップS13)。分離膜モジュール2の1次側や配管23等の水を、排出バルブ32を開け、排出ライン33から排出した後、供給バルブ19、循環バルブ17を開とし、蒸気供給部20から、発酵槽1、および分離膜モジュール2等へ水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温する。
ここで、膜分離型連続発酵装置200を蒸気滅菌する際に発生する凝縮水(ドレン)は、例えば、排出バルブ32を開とし、排出ライン33から排出しても良い。この時、水蒸気の圧を一定に保持するため、排出ライン33には、スチームトラップなどを設けても良い。
【0095】
昇温工程後、分離膜モジュール2を含む膜分離型連続発酵装置200の各部を所定の滅菌温度で所定時間滅菌する(ステップS14)。発酵槽1や配管23、25なども同時に蒸気滅菌する場合、水蒸気の供給温度は、最も温度が上がりにくい場所でも、所定の蒸気滅菌の温度以上になるように設定する。また、水蒸気の供給時間は、最も温度が上がりにくい場所にて、所定の蒸気滅菌の温度以上に昇温してから、所定の蒸気滅菌の時間以上になるように設定する。通常、保温などで放熱対策を講じるが、供給する水蒸気の温度は121℃以上とすることが好ましい。
【0096】
滅菌処理を終了後、気体供給バルブ30を開として、分離膜モジュール2の1次側を含む膜分離型連続発酵装置200の各部に圧縮空気を供給して膜分離型連続発酵装置200を冷却する(ステップS15)。気体の供給を行なわずに自然放冷しても良いが、耐熱性が十分でない部材を使用している場合、使用ライフが短くなること、部分的に放冷が進み、一部が減圧サイドになることを防ぐため、圧縮空気を供給して放冷することが好ましい。圧縮空気による膜分離型連続発酵装置200の冷却の際、分離膜モジュール2の2次側に液体が封入された状態でブローを行っても良い。2次側に液体が封入されていない状態で圧縮空気によりブローを行うと、分離膜の細孔が乾燥するため、濾過処理を行うために、液体による分離膜の細孔の置換処理が必要となる場合がある。実施の形態2では、2次側に液体を封入した状態で圧縮空気のブローによる冷却処理を行うことで、分離膜の細孔の乾燥を抑制することができる。
【0097】
分離膜モジュール2の冷却後、必要に応じて、2次側に封入した液体を排出して滅菌処理を終了する(ステップS16)。
【0098】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に、分離膜モジュール2の2次側に高沸点の液体を封入した後1次側に水蒸気を供給するため、2次側に封入した液体が水蒸気から分離膜を介して分離膜モジュール2の各部に熱伝導する。したがって、分離膜モジュール2が所定の滅菌温度まで昇温するのに要する時間を大幅に短縮でき、ポッティング剤等の熱による劣化を抑制することが可能となる。また、特に膜孔が大きい分離膜を滅菌する場合、2次側に液体が封入された状態で滅菌するため、水蒸気が分離膜の1次側から2次側へ通過することもあり、1次側から2次側への水蒸気が通気により、2次側にも水蒸気が行き渡るため、2次側からも水蒸気で加熱でき、所定の滅菌温度まで昇温するのに要する時間を大幅に短縮できる。
【0099】
また、実施の形態2では、2次側に液体を封入した状態で、滅菌処理後に圧縮空気を供給し陰圧にならない様にして膜分離型連続発酵装置200の放冷を行うことで、分離膜モジュール2内の分離膜の細孔の乾燥を抑制することができる。これにより、滅菌処理後、分離膜の液相置換等の余分な処理を行うことなく速やかに濾過処理を行うことができる。
【0100】
さらに、実施の形態2では、2次側に液体を封入した状態で、滅菌処理後に圧縮空気の供給により膜分離型連続発酵装置200の放冷を行うため、水蒸気の急激な凝縮によるハンマリングや、雑菌混入も抑制することができる。
【0101】
なお、本発明の実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置200は、液体供給部40を備えた構成としているが、水を封入液体として使用する場合は、液体供給部40を設けることなく、分離膜モジュール2の2次側に封入液体(水)を封入することも可能である。図7は、本実施の形態2の変形例にかかる膜分離型連続発酵装置200Aの概略図である。膜分離型連続発酵装置200Aで蒸気滅菌を行う際、以下のようにして分離膜モジュール2の2次側に水を封入する。まず、水供給ポンプ16の駆動により発酵槽1に水を供給した後、循環ポンプ8により、発酵槽1中の水を分離膜モジュール2に循環させる。循環ポンプ8により水の循環を行いながら、濾過バルブ13を開とし、濾過ポンプ11を運転することにより濾過を行い、分離膜モジュール2の2次側に水を通液する。分離膜モジュール2の2次側が水で満たされた後、濾過ポンプ11を停止、濾過バルブ13を閉とすることにより2次側に水を封入することができる。2次側に水を封入した後、発酵槽1、配管23および25、分離膜モジュール2の1次側等の水を排出し、実施の形態2で説明したようにして蒸気滅菌を行うことにより、滅菌温度までの昇温時間を短縮することができる。
【0102】
また、本発明の実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置200において、液体供給部40を、分離膜モジュール2の2次側に接続してもよい。液体供給部40を分離膜モジュール2の2次側に接続する場合、分離膜洗浄装置18が接続される濾過液排出ライン24に接続すればよい。2次側に液体供給部40を接続した場合、液体供給部40により2次側に液体を供給して、2次側に液体を封入することに加え、蒸気滅菌終了後に圧縮空気により膜分離型連続発酵装置を冷却する際、液体供給部40から分離膜モジュール2に液体を連続的に供給し、2次側から1次側に逆圧濾過しながら冷却を行なってもよい。
【0103】
次に、本実施の形態にかかる膜分離型連続発酵装置200で使用される微生物および培養細胞について説明する。本実施の形態で使用する微生物および培養細胞については特に制限はなく、例えば、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、および糸状菌等の真核細胞、大腸菌、乳酸菌、コリネ型細菌および放線菌などの原核細胞が挙げられる。また、培養細胞としては、動物細胞および昆虫細胞等が挙げられる。また、使用する微生物や培養細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
【0104】
乳酸を製造する場合、真核細胞であれば酵母、原核細胞であれば乳酸菌を用いることが好ましい。このうち酵母は、乳酸脱水素酵素をコードする遺伝子を細胞に導入した酵母が好ましい。このうち乳酸菌は、消費したグルコースに対して対糖収率として50%以上の乳酸を産生する乳酸菌を用いることが好ましく、更に好ましくは対糖収率として80%以上の乳酸菌であることが好適である。
【0105】
また、本実施の形態で使用する発酵原料としては、培養する微生物および培養細胞の生育を促し、目的とする発酵生産物である化学品を良好に生産させ得るものであればよい。 発酵原料としては、液体培地が用いられる。培地中の成分であって、目的の化学品に変換される物質(すなわち狭義の原料)を原料と称することもあるが、本書では、特に区別しない場合には、培地全体を原料と称する。狭義の原料とは、例えば化学品としてアルコールを得るための発酵基質であるグルコース、フルクトース、ショ糖などの糖である。
【0106】
原料は、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸やビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する。炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトースおよびラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、およびグリセリンなどが使用される。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等が添加されてもよい。
【0107】
微生物または培養細胞が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物が標品またはそれを含有する天然物として、原料に添加される。原料は、消泡剤を必要に応じて含有してもよい。
【0108】
本明細書において、培養液とは、発酵原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液である。連続発酵においては、培養液に発酵原料を追加することができるが、追加する発酵原料の組成は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、培養開始時の組成から適宜変更してもよい。例えば、狭義の発酵原料の濃度、培地における他の成分の濃度等は、変更可能である。
【0109】
また、本明細書において、発酵液とは、発酵の結果生じた物質を含有する液であり、原料、微生物または培養細胞、及び化学品を含有してもよい。つまり、文言「培養液」と「発酵液」とはほぼ同じ意味で用いられることがある。
【0110】
本実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置200によれば、上記の微生物または培養細胞によって、発酵液中に、化学品すなわち変換後の物質が生産される。化学品としては、例えば、アルコール、有機酸、アミノ酸および核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。例えば、アルコールとしては、エタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびグリセロール等が挙げられる。また、有機酸としては、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸およびクエン酸等を挙げることができ、核酸であればイノシン、グアノシンおよびシチジン等を挙げることができる。また、本発明の方法を、酵素、抗生物質および組換えタンパク質のような物質の生産に適用することも可能である。
【0111】
本実施の形態2にかかる膜分離型連続発酵装置200は、化成品、乳製品、医薬品、食品または醸造品の製造に適用できる。ここで化成品としては、例えば、有機酸、アミノ酸および核酸が挙げられ、乳製品としては、例えば、低脂肪牛乳などが挙げられ、食品としては、例えば、乳酸飲料など、醸造品としては、例えば、ビール、焼酎が挙げられる。また、本発明の製造方法によって製造された、酵素、抗生物質、組み換えタンパク質等は、医薬品に適用可能である。
【0112】
連続発酵による化学品の製造では、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って、微生物濃度を高くした後に、連続発酵(つまり培養液の引き抜き)を開始しても良い。または、微生物濃度を高くした後に、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続発酵を行っても良い。連続発酵による化学品の製造では、適当な時期から原料培養液の供給および培養物の引き抜きを行うことが可能である。原料培養液供給と培養液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、原料培養液の供給と培養液の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。
【0113】
培養液には菌体増殖に必要な栄養素を添加し、菌体増殖が連続的に行われるようにすればよい。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、培養液の環境が微生物または培養細胞の増殖にとって不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが、効率よい生産性を得る上で好ましい態様である。培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、一例として、SL乳酸菌を用いたD−乳酸発酵では、乾燥重量として、微生物濃度を5g/L以上に維持することにより良好な生産効率が得られる。
【0114】
連続発酵による化学品の製造において、原料に糖類を使用する場合は、培養液中の糖類濃度は5g/L以下に保持されることが好ましい。培養液中の糖類濃度を5g/L以下に保持することが好ましい理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。
【0115】
微生物および培養細胞の培養は、通常、pH3以上8以下、温度20℃以上60℃以下の範囲で行われる。培養液のpHは、無機の酸あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、通常、pH3以上8以下のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、培養液を加圧する、攪拌速度を上げる、あるいは通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
【0116】
連続発酵の運転においては、微生物発酵槽の微生物濃度をモニタリングすることが望ましい。微生物濃度の測定はサンプルを採取し、測定することでも可能だが、微生物発酵槽に、MLSS測定器など、微生物濃度センサーを設置し、微生物濃度の変化状況を連続的にモニタリングすることが望ましい。
【0117】
連続発酵による化学品の製造では、必要に応じて、発酵槽内から培養液、微生物または培養細胞を引き抜くことができる。例えば、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなることから、引き抜くことで、閉塞から回避することができる。また、発酵槽内の微生物または培養細胞濃度によって化学品の生産性能が変化することがあるが、生産性能を指標として微生物または培養細胞を引き抜くことで、生産性能を維持させることも可能である。
【0118】
連続発酵による化学品の製造では、発酵生産能力のあるフレッシュな菌体を増殖させつつ行う連続培養操作は、菌体を増殖させつつ生産物を生成する連続培養法であれば、発酵槽の数は問わない。連続発酵による化学品の製造では、連続培養操作は、通常、培養管理上単一の発酵槽で行うことが好ましい。発酵槽の容量が小さい等の理由から、複数の発酵槽を用いることも可能である。この場合、配管によって並列または直列に接続された複数の発酵槽を用いて連続培養を行っても、発酵生産物の高生産性は得られる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の効果をさらに詳細に、実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
(参考例1)
中空糸膜の作製
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ−ブチロラクトンとを、それぞれ38質量%と62質量%の割合で170℃の温度で溶解した。この高分子溶液をγ−ブチロラクトンを中空部形成液体として随伴させながら口金から吐出し、温度20℃のγ−ブチロラクトン80質量%水溶液からなる冷却浴中で固化して球状構造からなる中空糸膜を作製した。次いで、質量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14質量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP482−0.5)を1質量%、N−メチル−2−ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社、商品名イオネット(登録商標)T−20C)を5質量%、水を3質量%の割合で95℃の温度で混合溶解して高分子溶液を調製した。この製膜原液を、球状構造からなる中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させて球状構造層の上に三次元編目構造を形成させた中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜の被処理水側表面の平均細孔径は、0.05μmであった。
【0121】
(参考例2)
分離膜モジュール2の作製
分離膜モジュールケースにはポリスルホン樹脂製筒状容器(内径35mm)である成型品を用いて分離膜モジュール2を作製した。分離膜として参考例1で作製した中空糸膜を用い、121℃の飽和水蒸気と1時間接触させた。飽和水蒸気との接触には、TOMY社製のオートクレーブ「LSX−700」を使用した。中空糸膜325本(外径1.4mm、有効長20cm)を前記モジュールケース内に挿入し、ウレタン樹脂(サンユレック社製、SA−7068A/SA−7068B、2剤を重量比が64:100となるように混合)を用いてモジュールケースと中空糸膜の両端を接着した。分離膜モジュール2の中空糸膜の両端は中空糸膜を開口させるために、余分な接着部は切り落として用いた。分離膜モジュール2における中空糸膜の充填率は50%であった。なお、分離膜モジュール2は、分離膜モジュール2横下部ノズルと分離膜モジュール2横上部ノズル、さらに分離膜モジュール2上端と下端に各々ノズルを持つ構造であり、中空糸膜の内側に、分離膜モジュール上端または下端から流体を流入/排出する。また中空糸膜の外側には、分離膜モジュール横下部ノズルまたは上部ノズルから流体を流入/排出する。モジュールケースの1次側にエタノール80%水溶液を供給し、一部を2次側から濾過して、分離膜モジュール2内をエタノール80%水溶液で満たし、1時間静置した。その後、エタノール80%水溶液を排出し、蒸留水で分離膜モジュール2内を洗浄、置換した。
次に、上記の中空糸多孔性膜について純水透水量を評価したところ、3.9×10−9/m/s/Paであった。透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。分離膜モジュール2は内部に水を満たして保管した。
【0122】
(参考例3)リークテスト
参考例2の通り作製した分離膜モジュール2の1次側に、100kPaの空気を供給し、分離膜モジュール2の1次側の水を2次側に濾過した後、分離膜モジュール2の1次側を封じ込めして、100kPaの空気で加圧状態とした。ここで、分離膜モジュール2の1次側供給ラインに圧力計を設置し、分離膜モジュール2の1次側の圧力を確認できるようにした。また分離膜モジュール2の2次側は大気開放とした。3分後、分離膜モジュール2の1次側の圧力の低下が10kPa以内ならば、合格と判断した。
【0123】
(実施例1)
上記の通り作製した分離膜モジュールを図7に示すような膜分離型連続発酵装置200Aの発酵液循環ラインに設置し、滅菌を行った。はじめに、発酵槽1に水を15L添加し、循環ポンプ8で発酵槽1から循環ポンプ8、分離膜モジュール2に水を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して濾過を行い、分離膜モジュール2の2次側に水を封入した。濾過は0.2m/dayの濾過流束で、30分間行った。水の封入に際しては、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14および排出バルブ27を閉止した。事前に水の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、水は98%封入されていた。分離膜の2次側に水封入後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側にある水を排出した。その後、蒸気供給部20から発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給した。発酵槽1が121℃になった後、配管23および25、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し、分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止して蒸気滅菌を終了した。蒸気滅菌終了後、発酵槽1の温度が100℃まで低下した時点から、気体供給バルブ30を開として、圧縮空気を分離膜モジュール2内へ供給し、分離膜モジュール2が陰圧にならないようにして放冷した後、分離膜モジュール2の2次側に封入された水を排出して分離膜モジュール2の滅菌処理を終了した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計32分であった。この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が10回まで参考例3のリークテストで問題はなかった。また、蒸気滅菌処理を10回行なった後の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の98%であった。
【0124】
蒸気滅菌した分離膜モジュール2を用いて、膜分離型連続発酵装置200Aを用いて連続発酵を行った。実施例1における運転条件は、特に断らない限り、以下のとおりである。
発酵槽1容量:20(L)
発酵槽1有効容積:15(L)
発酵槽1温度調整:37(℃)
発酵槽1通気量:窒素ガス2(L/min)
発酵槽1攪拌速度:600(rpm)
発酵槽1内pH調整:3N Ca(OH)によりpH6に調整
乳酸発酵培地供給:発酵槽1液量が約15Lで一定になる様に制御して添加
発酵液循環装置による循環液量:10(L/min)
膜濾過流量制御:吸引ポンプによる流量制御
間欠的な濾過処理:濾過処理(9分間)〜濾過停止処理(1分間)の周期運転
膜濾過流束:0.1(m/day)以上0.3(m/day)以下の範囲で膜間差圧が20kPa以下となる様に可変。膜間差圧が範囲を超えて上昇し続けた場合は、連続発酵を終了した。
【0125】
培地は121℃、20分での飽和水蒸気下の蒸気滅菌をして用いた。微生物としてSporolactobacillus laevolacticus JCM2513(SL株)を用い、培地として表1に示す組成の乳酸発酵培地を用い、生産物である乳酸の濃度の評価には、下記に示したHPLCを用いて以下の条件下で行った。
【0126】
【表1】
【0127】
カラム:Shim−Pack SPR−H(島津社製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(0.8mL/min)
反応相:5mM p−トルエンスルホン酸、20mMビストリス、0.1mM EDTA・2Na(0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度カラム温度:45℃
【0128】
なお、乳酸の光学純度の分析は、以下の条件下で行った。
カラム:TSK−gel Enantio L1(東ソー社製)
移動相:1mM硫酸銅水溶液
流速:1.0mL/分
検出方法:UV 254nm
温度:30℃
L−乳酸の光学純度は、次式(1)で計算される。
光学純度(%)=100×(L−D)/(D+L) ・・・(1)
また、D−乳酸の光学純度は、次式(2)で計算される。
光学純度(%)=100×(D−L)/(D+L) ・・・(2)
ここで、LはL−乳酸の濃度を表し、DはD−乳酸の濃度を表す。
【0129】
培養は、まずSL株を試験管で5mLの乳酸発酵培地で一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸発酵培地100mLに植菌し、1000mL容坂口フラスコで24時間、30℃で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図7に示す連続発酵装置200Aの15Lの発酵槽1に培地を入れて植菌し、発酵槽1を付属の攪拌装置4によって攪拌し、発酵槽1の通気量の調整、温度調整、pH調整を行い、循環ポンプ8を稼働させることなく、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、循環ポンプ8を稼働させ、前培養時の運転条件に加え、乳酸発酵培地の連続供給を行い、連続発酵装置の発酵液量が15Lとなるよう膜透過水量の制御を行いながら連続培養し、連続発酵によるD−乳酸の製造を行った。連続発酵試験を行うときの膜透過水量の制御は、濾過ポンプ11により濾過量が発酵培地供給流量と同一となるように制御した。適宜、膜透過発酵液中の生産されたD−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。間欠的な濾過処理で、濾過処理(9分間)〜濾過停止処理(1分間)の周期運転を行った。図7に示す膜分離型連続発酵装置200Aにおいて化学品を製造したことにより、連続発酵を400時間行うことができた。
【0130】
(実施例2)
実施例1と同様に分離膜モジュール2を図7に示す膜分離型連続発酵装置200Aに接続し、蒸気滅菌を行った。はじめに、発酵槽1に水を10L添加し、循環ポンプ8で水を発酵槽1、循環ポンプ8、および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して濾過を行い、分離膜の2次側に水を濾過し、2次側に水を封入した。濾過は0.1m/dayの濾過流束で、5分間行った。2次側への水の封入は、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14、および排出バルブ27を閉止することにより行なった。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側にある水を排出した。事前に水の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、水は80%封入されていた。
その後、蒸気供給部20から発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給した。発酵槽1が121℃になった後、配管23および25、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し、分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止して蒸気滅菌を終了した。蒸気滅菌終了後、発酵槽1の温度が100℃まで低下した時点から、気体供給バルブ30を開として、圧縮空気を分離膜モジュール2内へ供給し、分離膜モジュール2が陰圧にならないようにして放冷した後、分離膜モジュール2の2次側に封入された水を排出して分離膜モジュール2の滅菌処理を終了した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計35分であった。この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が10回まで参考例3のリークテストで問題はなかった。また、蒸気滅菌処理を10回行なった後の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の99%であった。
【0131】
(実施例3)
実施例1と同様に分離膜モジュールを図7に示す膜分離型連続発酵装置200Aに接続し、蒸気滅菌を行った。はじめに、発酵槽1にグリセリン10wt%水溶液を10L添加し、グリセリン水溶液を、循環ポンプ8により発酵槽1および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け、濾過ポンプ11を運転して分離膜の2次側にグリセリン水溶液を濾過し、分離膜の2次側にグリセリン水溶液を封入した。濾過は0.2m/dayの濾過流束で、15分間行った。グリセリン水溶液の封入は、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14および排出バルブ27を閉止することにより行なった。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側にあるグリセリン水溶液を排出した。事前にグリセリン水溶液の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、グリセリン水溶液は95%封入されていた。
【0132】
その後、蒸気供給部20から発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給した。発酵槽1が121℃になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給することにより昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止して滅菌工程を終了した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計40分であった。
蒸気滅菌後、発酵槽1の温度が100℃まで低下した時点から、気体供給バルブ30を開として、圧縮空気を分離膜モジュール2内へ供給し、分離膜モジュール2が陰圧にならないようにして放冷した。その後、30℃まで放冷した後、発酵槽1にエタノール30wt%水溶液を1L添加し、エタノール水溶液を循環ポンプ8で発酵槽1および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して濾過を行い、分離膜の2次側にエタノール水溶液を濾過した。濾過は0.2m/dayの濾過流束で、15分間行った。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側および2次側にあるエタノール水溶液を排出した。
引き続き、発酵槽1に水を10L添加し、循環ポンプ8で発酵槽1および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して濾過を行い、分離膜の2次側に水を濾過した。濾過は0.2m/dayの濾過流束で、15分間行った。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側および2次側にある水を排出し、分離膜の洗浄を終了した。
この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が10回まで参考例3のリークテストで問題はなかった。また蒸気滅菌処理を10回行なった後の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の99%であった。
【0133】
(実施例4)
実施例1と同様に分離膜モジュールを図7に示す膜分離型連続発酵装置200Aに接続し、蒸気滅菌を行った。はじめに、発酵槽1に水を10L添加し、循環ポンプ8で、水を発酵槽1および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して、分離膜モジュール2の2次側に水を濾過し、分離膜の2次側に水を封入した。濾過は0.1m/dayの濾過流束で、5分間行った。水の封入は、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14、および排出バルブ27を閉止することにより行なった。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側にある水を排出した。事前に水の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、水は85%封入されていた。
その後、蒸気供給部20から発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給した。発酵槽1が121℃になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し、分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止し、分離膜モジュール2の蒸気滅菌を終了した。蒸気滅菌終了後、分離膜モジュール2の表面温度が100℃になるまで放冷した。
その後、分離膜洗浄装置18を使用することで、分離膜モジュールの冷却を行った。具体的には、洗浄液バルブ14を開とし、洗浄液供給ポンプ12を稼働させることで、分離膜モジュールの2次側から1次側へ、80℃の温水を、逆圧濾過流束1m/dで、5分間通液し、分離膜モジュールを冷却した。分離膜モジュール2の冷却後、2次側に封入された水を排出して分離膜モジュール2の滅菌処理を終了した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計35分であった。この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が10回まで参考例3のリークテストで問題はなかった。また蒸気滅菌処理を10回行なった後の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の98%であった。
【0134】
(実施例5)
液体供給部40が2次側に接続された分離膜モジュール(図3参照)を膜分離型連続発酵装置に接続し、蒸気滅菌を行った。はじめに、封入液体供給バルブ22を開とした状態で、液体供給部40から、液体供給ポンプ21で、グリセリン10wt%水溶液を分離膜モジュール2の2次側に供給し、分離膜モジュール2の2次側から1次側へ逆圧濾過し、分離膜の2次側にグリセリン水溶液を封入した。逆圧濾過は0.1m/dayの濾過流束で、5分間行った。グリセリン水溶液の封入に際しては、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14、および排出バルブ27を閉止して行った。その後、分離膜モジュール2の1次側へ逆圧濾過されたグリセリン水溶液を排出した。事前にグリセリン水溶液の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、グリセリン水溶液は85%封入されていた。
その後、蒸気供給部20から発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給し、発酵槽1が121℃になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し、分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止し、分離膜モジュール2の蒸気滅菌を終了した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計35分であった。
【0135】
蒸気滅菌後、発酵槽の温度が100℃まで低下した時点から、気体供給バルブ30を開として、圧縮空気を分離膜モジュール2内へ供給し、分離膜モジュール2が陰圧にならないようにして放冷した。その後、30℃まで放冷した後、発酵槽1にエタノール30質量%水溶液を1L添加し、エタノール水溶液を循環ポンプ8で発酵槽1および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して濾過を行い、分離膜の2次側にエタノール水溶液を濾過した。濾過は0.2m/dayの濾過流束で、15分間行った。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側および2次側にあるエタノール水溶液を排出した。
引き続き、発酵槽1に水を10L添加し、循環ポンプ8で発酵槽1および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して濾過を行い、分離膜の2次側に水を濾過した。濾過は0.2m/dayの濾過流束で、15分間行った。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側および2次側にある水を排出し、分離膜の洗浄を終了した。
この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が10回まで参考例3のリークテストで問題はなかった。また蒸気滅菌処理を10回行なった後の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の98%であった。
【0136】
(実施例6)
液体供給部40が2次側に接続された分離膜モジュール(図3参照)を、実施例1と同様に分離膜モジュールを図7に示す膜分離型連続発酵装置200Aに接続し、蒸気滅菌を行った。はじめに、発酵槽1に水を10L添加し、水を循環ポンプ8により発酵槽1および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け、濾過ポンプ11を運転して分離膜の2次側に水を濾過し、分離膜の2次側に水を封入した。濾過は0.1m/dayの濾過流束で、5分間行った。水の封入は、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14、封入液体供給バルブ22、および排出バルブ27を閉止することにより行った。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側にある水を排出した。事前に水の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、水は85%封入されていた。
その後、液体供給バルブ22を開けて、液体供給部から、液体供給ポンプ21で、水を分離膜モジュール2へ供給し、分離膜モジュール2の2次側から1次側へ逆圧濾過し、分離膜の2次側に水を供給した。濾過は0.02m/dayの濾過流束で連続的に行った。
【0137】
上述のとおり逆圧濾過しながら、蒸気供給部20から発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給し、発酵槽1が121℃になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し、分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止し、分離膜モジュール2の滅菌処理を終了した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計40分であった。
蒸気滅菌後、発酵槽1の温度が100℃まで低下した時点から、気体供給バルブ30を開として、圧縮空気を分離膜モジュール2内へ供給し、分離膜モジュール2が陰圧にならないようにして放冷した後、分離膜モジュール2の2次側に封入された水を排出して分離膜モジュール2の滅菌処理を終了した。
この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が10回まで参考例3のリークテストで問題はなかった。また蒸気滅菌処理を10回行なった後の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の99%であった。
【0138】
(実施例7)
実施例1と同様に分離膜モジュールを図5に示す膜分離型連続発酵装置200Aに接続し、蒸気滅菌を行った。
はじめに、発酵槽1に10Lの水を添加し、循環ポンプ8で、水を発酵槽1と分離膜モジュール2との間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して、分離膜モジュール2の2次側に水を濾過し、分離膜の2次側に水を封入した。濾過は0.1m/dayの濾過流束で、5分間行った。水の封入は、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14、および排出バルブ27を閉止することにより行なった。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側にある水を排出した。事前に水の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、水は85%封入されていた。
次に、発酵槽1で水温を50℃まで昇温した。その後、濾過バルブ13、洗浄液バルブ14、排出バルブ27、液体供給バルブ22を閉止し、循環バルブ17を開とした。この状態で、循環ポンプ8を起動して、分離膜モジュール2に50℃温水をクロスフロー循環した。循環開始5分後、クロスフロー循環したまま、発酵槽の温度を1℃/分で80℃まで昇温した。その後、発酵槽1、分離膜モジュール2の1次側およびクロスフローの配管中の温水を系外に排出した。
【0139】
その後、蒸気供給部20から発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給した。発酵槽1が121℃になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し、分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止し、分離膜モジュール2の蒸気滅菌を終了した。蒸気滅菌終了後、分離膜モジュール2の表面温度が100℃になるまで放冷した。その後、分離膜モジュールの2次側から1次側へ、80℃の温水を、逆圧濾過流束1m/dで、5分間通液し、分離膜モジュール2を冷却した。分離膜モジュール2の冷却後、2次側に封入された水を排出して分離膜モジュール2の滅菌処理を終了した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計30分であった。この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が10回まで参考例3のリークテストで問題はなかった。また蒸気滅菌処理を10回行なった後の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の98%であった。
【0140】
(比較例1)
実施例1と同様に分離膜モジュールを図7に示す膜分離型連続発酵装置200Aに接続し、蒸気滅菌を行った。はじめに、発酵槽1に水を1L添加し、水を循環ポンプ8で発酵槽1、および分離膜モジュール2間を循環させた。その後、分離膜モジュール2の濾過バルブ13を開け濾過ポンプ11を運転して濾過を行い、分離膜の2次側に水を封入した。その後、発酵槽1や循環ライン、分離膜モジュール2の1次側にある水を排出した。また、濾過バルブ13と排出バルブ27を開とし、分離膜の2次側中の水を排出した。事前に同条件で水の封入量を測定した結果、中空糸膜の濾過部分の2次側容積に対し、水は10%封入されていた。その後、蒸気供給部20により発酵槽1に125℃に制御された飽和水蒸気を供給し、発酵槽が121℃になった後、循環ライン、循環ポンプ8、分離膜モジュール2などに水蒸気を供給した。分離膜モジュール2の中空糸膜束の中心部に熱電対を設置し、分離膜モジュール2内の温度を観察した。熱電対の温度が123℃になるまで水蒸気を供給して分離膜モジュール2を昇温し、分離膜モジュール2を123℃以上で20分保持した後、水蒸気の供給を停止し、分離膜モジュール2の滅菌処理を終了した。滅菌処理を終了後、発酵槽1の温度が100℃まで低下した時点から、気体供給バルブ30を開として、圧縮空気を分離膜モジュール2内へ供給し、分離膜モジュール2が陰圧にならないようにして冷却した。分離膜モジュール2への水蒸気の供給は、合計55分であった。この分離膜モジュール2の蒸気滅菌を繰り返し、蒸気滅菌処理回数が4回目で参考例3のリークテストで不合格であった。また蒸気滅菌処理回数が3回目の中空糸膜モジュールの純水透水量は、中空糸作成時の90%であった。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の分離膜モジュールの滅菌方法、連続発酵による化学品の製造方法、分離膜モジュールの滅菌用装置および膜分離型連続発酵装置は、微生物等による発酵生産物である化学品の製造に有用である。
【符号の説明】
【0142】
1:発酵槽
2:分離膜モジュール
3:温度制御装置
4:撹拌装置
5:pHセンサー・制御装置
6:レベルセンサー・制御装置
7:差圧センサー・制御装置
8:循環ポンプ
9:原料供給ポンプ
10:中和剤供給ポンプ
11:濾過ポンプ
12:洗浄液供給ポンプ
13:濾過バルブ
14:洗浄液バルブ
15:気体供給装置
16:水供給ポンプ
17:循環バルブ
18:分離膜洗浄装置
19:供給バルブ
20:蒸気供給部
21:液体供給ポンプ
22:液体供給バルブ
23、25、34:配管
24:濾過液排出ライン
26、33:排出ライン
27、32:排出バルブ
29:洗浄液供給ライン
30:気体供給バルブ
31:液体供給ライン
40:液体供給部
50:制御装置
100、100A、100B:滅菌用装置
200、200A:膜分離型連続発酵装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7