(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
【0020】
本実施の形態に係るゴム組成物は、硫黄による加硫が可能なジエン系重合体100質量部に対して、0.5質量部以上4質量部以下の硫黄と、0.004mol以上0.17mol以下の分子量300以下の多価アルコール化合物とを含有する。
【0021】
このゴム組成物によれば、ジエン系重合体に対して所定量の硫黄、所定量の多価アルコール化合物を含有するので、ゴム組成物における硫黄の含有量と水酸基当量とが適度な範囲となり、多価アルコール化合物による硫黄と金属表面との結合形成反応の触媒機能が効率良く発現される。これにより、このゴム組成物は、組成物が乾燥しやすく、硫黄と金属表面との結合形成反応の触媒機能を有する水が減少する熱風加硫方式及びスチーム加硫方式のいずれの加硫方式を用いて加硫する場合であっても、金属表面とゴム層との接着性に優れたゴム層を得ることが可能となる。以下、本実施の形態に係るゴム組成物の各種成分について詳細に説明する。
【0022】
<ジエン系重合体>
ジエン系重合体としては、硫黄と加硫可能なものを用いる。ここで、硫黄と加硫可能とは、硫黄を媒介として架橋構造が形成される性質を意味する。他のジエン系重合体としては、例えば、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、及びクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)が挙げられる。これらを用いることにより、ゴム組成物に要求されるホース用としての諸物性を高次元で発揮できる。これらの中でも、補強層の金属表面とゴム層との高い接着性が得られる観点から、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が好ましい。これらのジエン系重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ジエン系重合体の配合量としては、ゴム混合加工性が良好となる観点及びゴム外観が良好になる観点から、ゴム組成物全体に対して20質量%以上70質量%以下が好ましい。
【0024】
<加硫剤>
本実施の形態に係るゴム組成物は、加硫剤として硫黄を含有する。硫黄としては、粉末硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、表面処理硫黄、及び不溶性硫黄が挙げられる。
【0025】
硫黄の含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して、0.5質量部以上4.0質量部以下である。硫黄の含有量が0.5質量部以上4.0質量部以下であれば、ゴム組成物の加硫時に硫黄と金属表面との結合が十分に形成され、ゴム層と金属表面との十分な接着性が得られる。硫黄の含有量は、ゴム層と金属表面との接着性の観点から、ジエン系重合体100質量部に対して、0.55質量部以上が好ましく、0.6質量部以上がより好ましく、0.65質量部以上が更に好ましく、0.7質量部以上がより更に好ましく、また3.75質量部以下が好ましく、3.5質量部以下がより好ましく、3.25質量部以下が更に好ましく、3.0質量部以下がより更に好ましい。以上を考慮すると、硫黄の含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して、0.55質量部以上3.75質量部以下が好ましく、0.6質量部以上3.5質量部以下がより好ましく、0.65質量部以上3.25質量部以下が更に好ましく、0.7質量部以上3.0質量部以下がより更に好ましい。
【0026】
本実施の形態に係るゴム組成物においては、本発明の効果を奏する範囲内で、硫黄以外の加硫剤を含んでいてもよい。硫黄以外の加硫剤としては、例えば、硫黄系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシムなどの加硫剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硫黄系の加硫剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド、及びジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイドなどの有機含硫黄化合物を挙げることができる。
【0027】
有機過酸化物系の加硫剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)が挙げられる。
【0028】
その他の加硫剤としては、例えば、亜鉛華、酸化マグネシウム、フェノール樹脂などの樹脂、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、及びメチレンジアニリンなどが挙げられる。
【0029】
<加硫促進剤>
本実施の形態に係るゴム組成物は、更に、加硫促進剤を含有することが好ましい。加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド-アンモニア系加硫促進剤、アルデヒド-アミン系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、及びキサントゲン酸塩系加硫促進剤が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、及びテトラメチルチウラムジスルフィド(TT)などが挙げられる。グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジンなどが挙げられる。スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミドなどが挙げられる。チオウレア系加硫促進剤としては、例えば、エチレンチオウレアなどが挙げられる。
【0031】
加硫促進剤の含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して、加硫特性が向上してゴム組成物を用いたゴム層と金属表面との接着性が向上する観点から、0.5質量部以上が好ましく、0.75質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましく、また3.5質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましい。
【0032】
<多価アルコール>
本実施の形態に係るゴム組成物は、分子量が300以下の多価アルコール化合物を含有する。多価アルコール化合物としては、分子量が300以下の2以上の水酸基を含有する化合物であれば、本発明の効果を奏する範囲で各種化合物を用いることができる。この多価アルコール化合物は、ゴム組成物の加硫時に加硫剤としての硫黄と金属表面の金属原子との結合形成反応を触媒する機能を有するので、ゴム組成物を含むゴム層と金属表面との接着性を向上させることができる。
【0033】
本実施の形態に係るゴム組成物においては、多価アルコール化合物としては、ゴム組成物を含むゴム層と補強層との接着性の観点から、下記一般式(1)で表される多価アルコール化合物が好ましい。
【化2】
(式(1)中、R
1は、水素原子又はエーテル結合及び分岐を含んでいてもよい炭素数が1以上5以下のモノ又はポリヒドロキシアルキル基を表し、R
2は、エーテル結合及び分岐を含んでいてもよい炭素数が1以上5以下のモノ又はポリヒドロキシアルキル基を表す。)
【0034】
上記一般式(1)において、R
1としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、ジヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、トリヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシブチル基、トリヒドロキシブチル基、テトラヒドロキシブチル基、ペンタヒドロキシブチル基、1−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシペンチル基、3−ヒドロキシペンチル基、4−ヒドロキシペンチル基、5−ヒドロキシペンチル基、ジヒドロキシペンチル基、トリヒドロキシペンチル基、テトラヒドロキシペンチル基、ペンタヒドロキシペンチル基、メトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ジヒドロキシプロポキシメチル基、ジヒドロキシプロポキシエチル基、トリヒドロキシプロポキシメチル基、及びトリヒドロキシプロポキシエチル基などが挙げられる。
【0035】
上記一般式(1)において、R
2としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、ジヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、トリヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、ジヒドロキシブチル基、トリヒドロキシブチル基、テトラヒドロキシブチル基、ペンタヒドロキシブチル基、1−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシペンチル基、3−ヒドロキシペンチル基、4−ヒドロキシペンチル基、5−ヒドロキシペンチル基、ジヒドロキシペンチル基、トリヒドロキシペンチル基、テトラヒドロキシペンチル基、ペンタヒドロキシペンチル基、メトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ジヒドロキシプロポキシメチル基、ジヒドロキシプロポキシエチル基、トリヒドロキシプロポキシメチル基、及びトリヒドロキシプロポキシエチル基などが挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)で表される多価アルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びヘキサントリオールなどが挙げられる。これらの中でも、多価アルコール化合物としては、ゴム組成物を用いたゴム層と金属表面との接着性に優れるゴム組成物が得られる観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、ジグリセリン、及びソルビトールからなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0037】
多価アルコール化合物の含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して、0.004mol以上0.17mol以下である。多価アルコール化合物の含有量が上記範囲内であれば、ゴム組成物中の水酸基当量が適度な範囲となるので、硫黄と金属表面との結合反応の触媒効果が十分に得られ、ゴム組成物を用いたゴム層と金属表面との接着性に優れた組成物が得られる。多価アルコール化合物の含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して、0.01mol以上が好ましく、0.02mol以上がより好ましく、また0.165mol以下が好ましく、0.0155mol以下がより好ましく、以上を考慮すると、多価アルコール化合物の含有量は、ジエン系重合体100質量部に対して、0.01mol以上0.165mol以下が好ましく、0.02mol以上0.155mol以下がより好ましい。
【0038】
[その他添加剤]
また、ゴム組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、必要に応じて、その他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、充填材、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、有機系活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、架橋促進助剤、加硫遅延剤、オゾン劣化剤、プロセスオイル(アロマオイル)及び接着助剤が挙げられる。
【0039】
充填材としては、例えば、カーボンブラック、シリカ(ホワイトカーボン)、クレー、タルク、酸化鉄、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、マイカ(雲母)、及びケイソウ土などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カーボンブラックとしては、用途に応じて適宜選択して使用することができる。カーボンブラックとしては、ISAF級及びFEF級などが好ましい。シリカとしては、例えば、結晶性シリカ、沈殿シリカ、非晶質シリカ(例えば、高温処理シリカ)、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、及び溶融シリカなどが挙げられる。特に、シリカは、カーボンブラックと同様に、カーボンゲル(バウンドラバー)を生成することが知られており、必要に応じて好適に用いることができる。クレーとしては、ハードクレー、ろう石クレー、カオリンクレー、及び焼成クレーなどが挙げられる。
【0040】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、トリメリット酸エステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、及びアジピン酸ブチレングリコールポリエステル、ナフテンオイルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
軟化剤としては、具体的には、例えば、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、石油樹脂、植物油、及び液状ゴムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
老化防止剤としては、例えば、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、N,N′−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、スチレン化フェノール(SP)、及び2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(RD)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
有機系活性剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
【0045】
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物が挙げられる。
【0046】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、及び臭素化ポリエーテルなどが挙げられる。また、非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、トリクレジル・ホスフェート、及びジフェニルクレジル・ホスフェートが挙げられる。
【0047】
架橋促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができる。ゴム用助剤としては、例えば、亜鉛華;ステアリン酸、オレイン酸、これらのZn塩を用いることができる。
【0048】
加硫遅延剤としては、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸などの有機酸;N−ニトロソ−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−フェニルーβ−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチルージヒドロキノリンの重合体などのニトロソ化合物;トリクロルメラニンなどのハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール、及びN−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(PVI)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
接着助剤としては、例えば、トリアジンチオール系化合物(例えば、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、6−ブチルアミノ−2,4−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン)、レゾルシン、クレゾール、レゾルシン−ホルマリンラテックス、モノメチロールメラミン、モノメチロール尿素、エチレンマレイミド、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、及びドデカン酸コバルトなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0050】
<ゴム組成物の製造方法>
本実施の形態に係るゴム組成物は、従来公知の製造方法により製造できる。本実施の形態に係るゴム組成物の製造方法としては、例えば、まず、上記ジエン系重合体と、必要に応じてその他のジエン系重合体及びジエン系重合体以外の重合体と上記各種添加剤などとを配合する。そして、バンバリーミキサー、及びニーダーなどの密閉式混合機、ロールなどの混練ロール機、押出し機、及び二軸押出機などを用いて混練する製造方法が挙げられる。
【0051】
[ゴム組成物金属積層体]
本実施の形態に係るゴム組成物金属積層体は、上記ゴム組成物と表面を金属めっきしたワイヤ補強層との積層体である。この積層体としては、例えば、高圧ホース及び油圧ホースなどが挙げられる。
図1は、本実施の形態に係る油圧ホースの一例を示す一部破断斜視図である。
図1に示すように、ホース1は、円筒状に形成され、内部を流体が通過する内部ゴム層11と、内部ゴム層11の外側に設けられる補強層12と、補強層12の外側に設けられる外部ゴム層13とを有する。補強層12は、内部ゴム層11と外部ゴム層13との間に挟みこまれるように配設されている。内部ゴム層11、補強層12、及び外部ゴム層13は、内部ゴム層11及び外部ゴム層13の加硫により接着固定される。
【0052】
<ゴム層>
上述したように、内部ゴム層11及び/又は外部ゴム層13は、上記実施の形態に係るゴム組成物を用いたゴム層である。ホースの耐候性の観点から、少なくとも外部ゴム層13を上記実施の形態に係るゴム組成物を用いて形成するのが好ましい。内部ゴム層11は、耐油性に優れたアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を主成分とするゴム組成物を用いて形成することが好ましい。
【0053】
上記内部ゴム層11の厚みは、例えば、0.2mm以上4.0mm以下が好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がより好ましい。同様に、上記外部ゴム層13の厚みは、例えば0.2mm以上4.0mm以下が好ましく、0.5mm以上2.0mm以下がより好ましい。
【0054】
<補強層>
補強層12は、鋼線材が編みこまれたワイヤブレードであり、ワイヤの表面がブラスめっきされている。油圧ホース1の強度保持の観点から内部ゴム層11と外部ゴム層13との間に設けられる層である。なお、
図1に示した例では、補強層12を一層としているが、層間に中間ゴム層が配置された複数の補強層12を設けるようにしてもよい。補強層12は、ワイヤブレードのほか、内部ゴム層11周囲に鋼線材ワイヤをらせん状に巻きつけたスパイラルワイヤとして形成されたものであってもよい。補強層12を形成する材料及び編み方や織り方又は巻き付け方は用途に応じて、例えば、耐圧力に応じて、適宜選択することができる。油圧ホースなどにおいては、ワイヤブレードにより補強層12を形成することが好ましい。
【0055】
ワイヤ材料としては、例えば、ピアノ線(炭素鋼)、硬鋼線及びステンレス鋼線などが挙げられる。ワイヤ材料としては、加工性及び強度などの観点からピアノ線(炭素鋼)及び硬鋼線が特に好ましい。
【0056】
補強層12は、ゴム層との接着性を高めるために、表面が金属めっきされる。この金属めっきは、ピアノ線及び硬鋼線にブラス(真鍮)コーティングが施されたものである。ブラスコーティングでは、銅が鋼ワイヤ上にめっきされ、亜鉛が銅の上にめっきされ、熱拡散処理を加えてブラスコーティングを形成する。
【0057】
<加硫ゴム製品>
上記ゴム組成物と補強層12とのゴム組成物金属積層体は、硫黄の存在下で架橋、すなわち加硫されることによって、内部ゴム層11及び外部ゴム層13を形成するゴムの分子間が硫黄によって架橋される。この架橋により、内部ゴム層11及び外部ゴム層13に弾性と引っ張り強さが付与されると共に、補強層12との界面でブラスコーティングを構成する金属(銅、亜鉛)と硫黄とが結合して内部ゴム層11及び外部ゴム層13と補強層12とが接着される。
【0058】
硫黄は、ゴム組成物としてのコンパウンドを形成する際に、他の材料とともに配合しておくことが好ましい。なお、硫黄の配合は、硫黄によりジエン系重合体を形成する分子鎖同士が硫黄により架橋され、内部ゴム層11及び外部ゴム層13と補強層12との界面における金属(銅、亜鉛)と硫黄との結合などにより内部ゴム層11及び外部ゴム層13と補強層12とが接着される限りにおいては、コンパウンド調製時の配合に限定されない。
【0059】
加硫方法としては、硫黄の存在下でゴム組成物を所定温度で所定時間加熱処理する方法が挙げられる。加硫温度としては、130℃以上180℃以下が好ましい。加硫時間としては、30分以上240分以下が好ましい。この範囲の温度と時間との組み合わせによって、加硫ゴム製品として所望の物性、例えば弾性、引張強度、外観、ゴム−金属界面の接着性及びゴム−金属界面のゴム付きを得ることができる。
【0060】
本実施の形態における加硫ゴム製品は、油圧ホースなどとして好適に用いることができる。油圧ホースなどの製造方法としては、例えば、高圧容器内にゴム組成物金属積層体を封入して蒸気缶内で架橋するスチーム加硫方式と、ゴム組成物金属積層体をナイロン布などで覆ったものを熱風乾燥炉内で加硫するオーブン加硫方式とが挙げられる。一般的に、スチーム加硫方式はバッチ式処理であり、オーブン加硫方式は連続式処理である。油圧ホースの製造方法としては、連続式処理であるオーブン加硫方式が好ましい。
【0061】
<加硫ゴム製品の製造方法>
以下に、本実施の形態に係る加硫ゴム製品の製造方法について説明する。ここでは加硫ゴム製品として油圧ホースを製造する場合を例として説明する。
【0062】
図2及び
図3を参照して、本実施の形態に係る油圧ホースの製造方法について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るゴム組成物を用いた油圧ホースの製造工程の説明図であり、
図3は、本発明の実施の形態に係るゴム組成物を用いた油圧ホースの加硫工程の説明図である。
【0063】
<ホース製造工程>
図2に示すように、ゴムホースは、内部ゴム層11を形成するゴム材の押出し工程(ステップS101)、補強層12の編上げ工程(ステップS102)、外部ゴム層13の押出し・加硫工程(ステップS103)、及び、マンドレル101の抜出し工程(ステップS104)により得られる。製造されたゴムホースは、水圧検査、さらに検査巻取り工程を経て、梱包、出荷される。
【0064】
まず、ステップS101においては、巻出機100から繰り出したマンドレル101の外周面に、第1押出機102により未加硫の内部ゴム層11を被覆する。内部ゴム層11を被覆したホース103は、巻取捲出機104に巻き取る。
【0065】
次に、ステップS102において、巻取捲出機104から繰り出したホース103を構成する内部ゴム層11を覆うように、編組機105により編組して補強層12を形成したホース106を巻取捲出機107に巻き取る。この補強層12のコードには、金属ワイヤが用いられる。金属ワイヤは、ゴムとの接着性を良好にするために真鍮をめっきした鋼線が用いられる。なお、補強層12は、金属ワイヤをマンドレル101の周囲に形成した内部ゴム層11の周囲にスパイラルに巻き回すことにより形成してもよい。
【0066】
次に、ステップS103においては、巻取捲出機107から繰り出したホース106の補強層12の上に、第2押出機108により未加硫の外部ゴム層13を被覆してホース本体109を形成し、形成したホース本体109を巻取機110に巻き取る。本実施の形態においては、ホース本体109が、第2押出機108を出てから巻取機110に巻き取られる間に、加硫装置111により加硫工程を実施して加硫したホース112を巻取機110で巻き取っているが、加硫工程は、ホース本体109を巻取機110で巻き取ったあとに設けてもよい。また、加硫装置111の前後には、ナイロン布などの保護布をホース本体109へ脱着するためのラッピング装置113及びアンラッピング装置114が設けられている。なお、
図2においては、ラッピング装置13によりナイロン布が巻かれた加硫前のホース115は、加硫後、ナイロン布を取り外す前のホース116となる。加硫工程については後述する。
【0067】
次に、ステップS104においては、加硫後、巻取機110から巻き出したアンラッピングしたホース116からマンドレル抜出装置117により、マンドレル101を抜き取ってホース118が完成する。
【0068】
<加硫工程>
図3に示すように、第2押出機108を出たホース本体109は、ラッピング装置113によって周囲にナイロン布119が巻き回される。ナイロン布119で被覆されたホース本体109は、加硫装置111内に搬入される。加硫装置111は、熱風120により加硫を進行させる熱風循環型の連続加硫装置である。この加硫方式は、オーブン加硫方式である。
【0069】
図4は、加硫装置に投入されるマンドレル101周囲の層構造の一例を説明する部分断面図である。
図4に示すように、マンドレル101周囲には、内部ゴム層11が形成されて、更にその周囲には補強層12が形成され、更にその周囲には外部ゴム層13が形成されている。外部ゴム層13の周囲には、ナイロン布119が巻き付けられており、この状態で加熱されて加硫工程が進行する。
【0070】
上述したように、加硫温度は130℃以上180℃以下、加硫時間すなわち加硫装置111内における加硫時間は30分以上240分以下であることが好ましい。この温度範囲及び加硫時間において、内部ゴム層11及び外部ゴム層13と補強層12との接着性が良好な油圧ホースが得られる。ここでは、上記実施の形態に係るゴム組成物を用いて内部ゴム層11及び/又は外部ゴム層13を形成することにより、内部ゴム層11及び/又は外部ゴム層13と金属製の補強層12との接着性が良好な油圧ホースを製造することができる。
【0071】
なお、ゴム組成物によれば、加硫直前まで適度な水分を組成物中に安定に保持できるため、水分蒸発の大きなオーブン加硫方式においても、水分不足による接着不良及び接着性の低下を抑制できる。しかしながら、上記実施の形態に係るゴム組成物は、従来公知の他の加硫方式によるゴム製品の製造にも好適に使用できることはいうまでもない。他の加硫方式としては、例えば、プレス加硫、蒸気加硫、及び温水加硫などを挙げることができる。
【0072】
また上記実施の形態においては、連続処理方式による製造工程を例示したが、ゴム層と補強層とを別工程で製造した後貼り合わせる方法によっても加硫ゴム製品を製造できる。
【0073】
本実施の形態に係る製造方法によって製造される油圧ホースは、様々な用途に適用することができる。油圧ホースの用途としては、例えば、自動車用エアコンホース、パワーステアリングホース、建設車両の油圧系などに用いられる油圧ホースなどとして好適に用いることができる。
【0074】
また、本実施の形態においては、ゴム組成物金属積層体及び加硫ゴム製品として油圧ホースを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、コンベヤベルトなど他のゴム積層体においても同様に用いることができる。
【0075】
以上のように、ゴム組成物金属積層体、加硫ゴム製品、及び加硫ゴム製品の製造方法によれば、オーブン加硫方式による連続生産方式においても、ゴム層と補強層との接着性が良好な加硫ゴム製品を提供することができる。とりわけ乾燥状態で長期保管された後に使用される場合であっても、補強層との接着性が良好なゴム製品を形成する組成物を提供することができる。この加硫ゴム製品は、油圧ホース、高圧ホースなどに好適に用いることができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0077】
<1.ゴム組成物の調製>
(実施例1)
アクリロニトリル−ブタジエンゴム(商品名「Nancar 3345」、南帝化学工業社製、アクリロニトリル含有量34質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)45)40質量%、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(商品名「EPT 4070」、三井化学社製、エチレン含有量56質量%、エチリデンノルボルネン含有量8質量%、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)47)30質量%、及びスチレンブタジエンゴム(商品名「Nipol 1502」、日本ゼオン社製、乳化重合SBR、結合スチレン含有量23.5質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)52)30質量%を含有するジエン系重合体100質量部に対して、2.3質量部の硫黄(細井化学工業社製)と、0.05molのエチレングリコール(日本触媒社製)と、1.7質量部のスルフェンアミド系加硫促進剤(N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、商品名「ノクセラーNS−P」、大内新興化学工業社製)と、0.3質量部のスコーチ防止剤(N−シクロヘキシルチオフタルイミド、FLEXSYS社製)と、62質量部のISAF級カーボンブラック(商品名「ショウブラックN220」、昭和キャボット社製)、15質量部のハードクレー(商品名「Suprex Clay」、ケンタッキーテネシークレイカンパニー社製)、5質量部の酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)と、1質量部のステアリン酸(日本油脂社製)と、2.4質量部のオゾン劣化防止剤(商品名「オゾンノン6C」、精工化学社製)と、10質量部の可塑剤(ジオクチルアジペート、商品名「DIACIZER DOA」、三菱化成ビニル社製)及び12質量部のアロマ系オイル(商品名「A−OMIX」、三共油化工業社製)を配合し、バンバリーキミサーで混練してゴム組成物を作製した。作製したゴム組成物の接着性を評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0078】
(実施例2)
エチレングリコールの配合量を0.16molとしたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0079】
(実施例3)
エチレングリコールに代えてジエチレングリコールを0.03mol配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0080】
(実施例4)
エチレングリコールに代えてグリセリン(坂本薬品社製)を0.0043mol配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0081】
(実施例5)
グリセリンの配合量を0.043molとしたこと以外は、実施例4と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0082】
(実施例6)
グリセリンの配合量を0.155molとしたこと以外は、実施例4と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0083】
(実施例7)
エチレングリコールに代えて1,2,6−ヘキサントリオール(東京化成工業社製)を0.15mol配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0084】
(実施例8)
エチレングリコールに代えてジグリセリン(坂本薬品社製)を0.04mol配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0085】
(実施例9)
エチレングリコールに代えてソルビトール(花王社製)を0.03mol配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0086】
(実施例10)
硫黄の配合量を4質量部としたこと以外は、実施例4と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0087】
(実施例11)
スチレンブタジエンゴム(商品名「Nipol 1502」、日本ゼオン社製、乳化重合SBR、結合スチレン含有量23.5質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)52)40質量%及びクロロプレンゴム(商品名「デンカクロロプレンS−41」、電気化学工業社製、非硫黄変性クロロプレンゴム、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)47)60質量%を含有するジエン系重合体100質量部に対して、0.043molのグリセリン(坂本薬品社製)と、0.55質量部の硫黄(細井化学工業社製)と、0.8質量部のチウラム系加硫促進剤(テトラメチルチウラムモノスルフィド、商品名「サンセラーTS−G」、三新化学工業社製)と、0.8質量部のグアニジン系加硫促進剤(ジフェニルグアニジン、商品名「ソクシノールD−G」、住友化学社製)と、95質量部のFEF級カーボンブラック(商品名「HTC#100」、新日化カーボン社製)と、5質量部の酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)と、3質量部の酸化マグネシウム(商品名「キョーワマグ150」、協和化学工業社製)と、2質量部のステアリン酸(日本油脂社製)と、2.0質量部のオゾン劣化防止剤(商品名「オゾンノン6C」、精工化学社製)、及び22質量部のアロマ系オイル(商品名「A−OMIX」、三共油化工業社製)を配合し、バンバリーキミサーで混練してゴム組成物を作製した。作製したゴム組成物の接着性を評価した。各成分の配合量を下記表1に示す。
【0088】
(比較例1)
エチレングリコールを配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0089】
(比較例2)
グリセリンの配合量を0.003molとしたこと以外は、実施例4と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0090】
(比較例3)
グリセリンの配合量を0.174molとしたこと以外は、実施例4と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0091】
(比較例4)
エチレングリコールの配合量を0.18molとしたこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0092】
(比較例5)
グリセリンの配合量を0.10molとし、硫黄の配合量を4.5質量部としたこと以外は、実施例4と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0093】
(比較例6)
グリセリンの配合量を0.10molとし、硫黄の配合量を0.45質量部としたこと以外は、実施例4と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0094】
(比較例7)
エチレングリコールに代えてポリグリセリンA(分子量330)を0.02mol配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0095】
(比較例8)
エチレングリコールに代えてポリグリセリンB(分子量500)を0.02mol配合したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0096】
(比較例9)
グリセリンの配合量を0.003molとし、硫黄の配合量を0.8質量部としたこと以外は、実施例11と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0097】
(比較例10)
グリセリンの配合量を0.174molとしたこと以外は、比較例9と同様にしてゴム組成物を作製して評価した。各成分の配合量を下記表2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
なお、表1及び表2に記載した各成分の詳細は以下のとおりである。
・NBR:商品名「Nancar 3345」、南帝化学工業社製、アクリロニトリル含有量34質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)45
・EPDM:商品名「EPT 4070」、三井化学社製、エチレン含有量56質量%、エチリデンノルボルネン含有量8質量%、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)47
・SBR:商品名「Nipol 1502」、日本ゼオン社製、乳化重合SBR、結合スチレン含有量23.5質量%、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)52
・CR:商品名「デンカクロロプレンS−41」、電気化学工業社製、非硫黄変性クロロプレンゴム、ムーニー粘度(ML1+4,125℃)47
・エチレングリコール:日本触媒社製
・ジエチレングリコール:日本触媒社製
・グリセリン:坂本薬品社製
・1,2,6−ヘキサントリオール:東京化成工業社製
・ジグリセリン:坂本薬品社製
・ソルビトール:花王社製
・ポリグリセリンA:商品名:ポリグリセリン#310、分子量330、坂本薬品社製
・ポリグリセリンB:商品名:ポリグリセリン#500、分子量500、坂本薬品社製
・硫黄:細井化学工業社製
・加硫促進剤A:N−t−ブチルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、商品名「ノクセラーNS−P」、大内新興化学工業社製
・加硫促進剤B:テトラメチルチウラムモノスルフィド、商品名「サンセラーTS−G」、三新化学工業社製
・加硫促進剤C:ジフェニルグアニジン、商品名「ソクシノールD−G」、住友化学社製
・スコーチ防止剤:N−シクロヘキシルチオフタルイミド、FLEXSYS社製
・カーボンブラックA:ISAF級カーボンブラック:商品名「ショウブラックN220」、昭和キャボット社製
・カーボンブラックB:FEF級カーボンブラック:商品名「HTC#100」、新日化カーボン社製
・ハードクレー:商品名「Suprex Clay」、ケンタッキーテネシークレイカンパニー社製
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種、正同化学工業社製
・酸化マグネシウム:商品名「キョーワマグ150」、協和化学工業社製
・ステアリン酸:日油社製
・オゾン劣化防止剤:商品名「オゾンノン6C」、精工化学社製
・可塑剤:ジオクチルアジペート、商品名「DIACIZER DOA」、三菱化成ビニル社製
・プロセスオイル:アロマ系オイル、商品名「A−OMIX」、三共油化工業社製
【0101】
<2.ゴム組成物の評価>
実施例1〜実施例11及び比較例1〜比較例10で得られた各ゴム組成物を各ゴム組成物からなるゴム外層と、ブラスめっきワイヤからなる補強層とを有するホース状試験片を以下に示すように作製した。
【0102】
まず、外径34mmのマンドレル上に、ブラスめっきワイヤをブレード状に巻き付けて補強層を形成した。次に、補強層の上に、得られた各ゴム組成物から調製した厚さ2.5mmの未加硫シートを貼り合わせて未加硫ホース状試験片を得た。次に、未加硫ホース状試験片の外側を覆うようにナイロン66製のキュアリングテープ(保護布)を巻きつけて加硫を行った。
【0103】
加硫は以下の4種の条件下で行い、得られたホース状加硫試験片の接着強度とゴム付きとを評価した。なお、接着強度及びゴム付きは、それぞれ10回測定した値の平均値である。
・加硫条件1:混練直後のゴム組成物を使用して作製した未加硫ホース状試験片を142℃のスチーム缶内で90分間加硫を行った(スチーム加硫)。
・加硫条件2:混練直後のゴム組成物を使用して作製した未加硫ホース状試験片を142℃の常圧オーブン内で135分間加硫を行った(オーブン加硫)。
・加硫条件3:加硫条件1で加硫した試験片を50℃、95%相対湿度(%RH)の乾燥環境下で1週間保管した後、142℃のスチーム缶内で90分間加硫を行った(スチーム加硫)。
・加硫条件4:加硫条件2で加硫した試験片を50℃、95%相対湿度(%RH)の乾燥環境下で1週間保管した後、142℃の常圧オーブン内で135分間加硫を行った(オーブン加硫)。
【0104】
<接着性試験1>
上述した加硫条件1で得られた各ホース状加硫試験片について、接着強度(kN/m)とゴム付き(%)とを評価した。ここで、接着強度(kN/m)とは、外側ゴム層と補強層との界面から剥離速度50mm/分で外側ゴム層を剥離するときに要する単位幅(m)あたりの力の大きさ(kN)である。ここで、ゴム付きとは、ホース状加硫試験片の外側ゴム層が補強層表面に残留している割合であって、補強層表面積全体に対する残留ゴム層の面積比率を百分率で表したものである。接着強度(kN/m)及びゴム付き(%)の数値は、10回測定した平均値である。評価結果を表3及び表4に示す。評価結果は、比較例1を100の接着試験の結果を100として指数で示した。
【0105】
<接着性試験2>
加硫条件2で得られた各ホース状加硫試験片を用いたこと以外は接着性試験1と同様にして接着性を評価した。
【0106】
<接着性試験3>
加硫条件3で得られた各ホース状加硫試験片を用いたこと以外は接着性試験1と同様にして接着性を評価した。
【0107】
<接着性試験4>
加硫条件4で得られた各ホース状加硫試験片を用いたこと以外は接着性試験1と同様にして接着性を評価した。
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
表3及び表4に示すように、ジエン系重合体に対して、水酸基当量が所定量となるように多価アルコール化合物を配合した実施例1−11においては、スチーム加硫方式及びオーブン加硫方式のいずれの場合にも優れた接着評価が得られることが分かる。これに対して、多価アルコール化合物を配合しない場合には、いずれの加硫方式でも接着特性が著しく悪化することが分かる(比較例1)。また、多価アルコール化合物の水酸基当量が所定範囲より少ない場合には、スチーム加硫方式では十分な接着強度が得られる一方、オーブン加硫方式では、接着強度が著しく悪化することが分かる(比較例2、9)。さらに、多価アルコール化合物の水酸基当量が所定範囲より多い場合には、オーブン加硫方式では十分な接着強度が得られる一方、スチーム加硫方式では、接着強度が著しく悪化することが分かる(比較例3、4、10)。これらの結果は、多価アルコール化合物による硫黄と金属表面との結合反応の触媒機能のバランスが悪化したためと考えられる。また、硫黄が所定範囲より多い場合には、いずれの加硫方式でも接着評価が低下する傾向にあることが分かる(比較例5)また、硫黄が所定範囲より少ない場合には、接着強度が著しく悪化することが分かる(比較例6)。これらの結果は、多価アルコール化合物による硫黄と金属表面との結合反応の触媒機能のバランスが悪化したためと考えられる。さらに、分子量が300を超える多価アルコール化合物を用いた場合には、特に、スチーム加硫方式における接着評価があっかすることが分かる(比較例7、8)。この結果は、多価アルコール化合物の分子量が大きすぎたため、ゴム組成物中での硫黄と金属表面との結合反応の触媒機能が発現しなかったためと考えられる。