特許第6015713号(P6015713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6015713骨補強体具とこの溶融積層造形法及び溶融積層造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015713
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】骨補強体具とこの溶融積層造形法及び溶融積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/28 20060101AFI20161013BHJP
   A61F 2/36 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   A61F2/28
   A61F2/36
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-104715(P2014-104715)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-208669(P2015-208669A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2015年8月26日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509153364
【氏名又は名称】伊藤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】野村 幸作
(72)【発明者】
【氏名】八尾 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】袴田 規知代
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−501776(JP,A)
【文献】 特開昭60−256462(JP,A)
【文献】 特開昭64−78822(JP,A)
【文献】 特開平3−18484(JP,A)
【文献】 特開2007−275945(JP,A)
【文献】 特開2003−266174(JP,A)
【文献】 特開2005−936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/30−2/44
A61F2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨、脛骨、膝関節からなる患部骨の外周形状を半周面又は全周面に倣って形成すべく、網目状又は薄板孔空き状にチタン金属を溶融金属の溶接ビートにより積層形成し、人工大腿骨や人工脛骨とした骨補強体具を製造する溶融積層造形装置であって、
4軸以上の多軸をNC制御されるベースマシンは、この基台上で水平2方向に移動制御される移動台と、前記移動台で旋回運動及び首振り運動するテーブルと、前記テーブル上部空間には、前記テーブル上に立体造形物となる骨補強体具を溶接ビートで積層する金属棒を溶融するアーク溶接部と溶接棒又はガス溶接部とこのトーチ部と溶接棒からなる昇降可能な積層造形手段を備え、前記各部材を骨補強体具の造形プログラムにより運転制御するNC運転制御部を備え、前記積層造形手段により溶接ビートを一層ずつ積層させることを特徴とする骨補強体具を製造する溶融積層造形装置
【請求項2】
前記テーブル上には不活性ガス又は液体を満たすべく搭載した加工槽を備えたことを特徴とする請求項1記載の骨補強体具を製造する溶融積層造形装置
【請求項3】
請求項1または2記載の骨補強体具を製造する溶融積層造形装置を用いた骨補強体具の製造方法において、
4軸以上のベースマシンのテーブル上にて、テーブルに金属棒をアーク溶接部又はガス溶接部により金属棒を熱溶解して溶接ビートの肉盛で積層造形物の大腿骨部や脛骨を積層造形する創形工程と、前記創形工程において大腿骨部や脛骨の端部に人工関節を形成する関節創形工程と、前記関節創形工程に続いて人工関節の表面を研削盤又は研磨盤上でハイパー研削又はチョッピング研削研磨する人工関節面磨き工程とからなり、前記人工関節面磨き工程後に骨補強体具の完成品とすることを特徴とする骨補強体具の製造方法。
【請求項4】
前記創形工程と前記関節創形工程とは、テーブル上の加工槽内に不活性ガス又は液体を満たして金属棒をアーク溶接部又はガス溶接部により金属棒を熱溶解して溶接ビートの肉盛で積層造形物の人工大腿骨や人工脛骨を積層造形することを特徴とする請求項3記載の骨補強体具の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体や動物等の骨とその関節に親和性のある各種熱溶融金属を溶接ビート技術により熱溶融積層して生体骨(自然骨)を補助する為の骨補強体具とし、この骨補強体具の製作を行う造形方法と装置にも係わる。特に、人体の生体骨との親和性を高めた骨補強体具により生体骨を親和性良く補強する新規技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化と共に、膝関節の病歴は歩行困難化を招き、車椅子や寝たきり患者を増大させた社会問題になっている。具体的に膝関節の病気は、図10に見るように、変形性膝関節症は筋力低下、加齢、肥満などのきっかけにより膝関節の機能が低下して膝軟骨や半月板の噛み合わせが緩んだり変形や断裂を起こし多くが炎症による関 節液の過剰滞留があり痛みを伴う病気である。膝関節のクッションの役目を果たす膝軟骨や半月板が長期間に少しずつすり減り変形することで起こるもの(1次性)と、関節リウマチや膝のケガなどの他の原因によって引き起こされるもの(2次性)の2種類がある。
【0003】
そこで、人体の膝の人工関節をセラミックスで形成したり、微粉末金属を積層して人工骨を3次元形成創成する技術が開発されている。その一つに、積層厚さを大幅に低減することで、積層段差を低減し研磨加工の必要性を大幅に低減することができ、高精度で微小な三次元モデルを製作でき、使用材料の制約が少なく、金属,セラミック,樹脂などからなる三次元モデルを直接製作でき、また複数の材料からなるモデルや,色の付いたモデルを製作できる三次元形状創成方法が知られている。
この解決手段は、三次元モデルのCADデータから二次元スライスデータを作成し、スライスデータをもとに、モデル部と空間部とで異なる粉末を用いた2種以上の粉末からなる平面画像を静電写真法により転写・定着させ、粉末平面画像を順次積層して2種以上の粉末からなる粉末立体を作成し、次いで粉末立体を処理して空間部を占める粉末を除去してモデル部を占める粉末からなる三次元形状を創成するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、別の粉末積層法による人工骨成形方法は、対象とする骨と同一形状を有し、かつ生体骨に類似の性質と成分を有し、骨置換術において移植可能な人工骨を成形することができる人工骨成形方法を提供するものである。この発明は、(a)生体適合性を有しかつ反応で硬化する粉末骨材を平面状の粉末層に形成する粉末層形成ステップと、(b)該粉末層の一部に生体適合性を有する水溶液を噴射し、噴射部分を硬化させる部分硬化ステップと、c) a) とb) のステップを繰り返して積層し、硬化部分が連結した所望の3次元構造の人工骨を成形する人工骨成形ステップと、を有することを特徴とする粉末積層法による人工骨成形方法である。本発明の好ましい実施形態によれば、前記粉末骨材は、燐酸カルシウム等の無機成分とその他の骨成分からなり、前記水溶液は、水と水溶性の生体由来成分、生体高分子の混合液もしくは懸濁液である(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
更に、別の人工骨成形方法がある。これは、生体材料で作られ、外形および内部構造が生体骨に非常に近く、移植対象患者に適合性がよく骨再生を促進する人工骨および人工軟骨の成形方法を提供するものである。具体的には、生体用粉体材料および液体材料を、噴射装置のノズル先端近傍まで異なる流路によって運び、このノズルから固体表面に混合噴射し、生体用粉体材料および液体材料の混合物の付着面の積層を繰り返すことによって付着層を複数層重層させ、骨の三次元構造物を立体形成させる人工骨または人工軟骨の成形方法を開発したものである(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
更に、複合人工関節がある。それは、金属製コアと、前記コア周囲の繊維強化複合外皮とを包含することによって、骨と類似の弾性係数を提供する人工関節、特に人工関節用複合外皮幹状部を提供するものであ。具体的には、複合外皮は、好ましくは、編組繊維と熱可塑性樹脂とから成る。人工関節の鋼性は、幹状部の全長に沿って変化しているものである(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
更に、人工骨等の表面に高い生体活性を付与するのみでなく、装着時の寸法微調製や生体内での腐食や疲労あるいは摩耗による表面の脱落時においても高い生体活性を失わない人工骨等およびその製法が提供されている。その具体的構成は、骨の成分を構成する生体活性物質(アパタイト粉末、ピロ燐酸カルシウム、その他カルシウムや燐の化合物など)をバインダーおよび金属粉末と共に混練したものを射出成型してできた成型体(グリーンボディ)を脱脂、焼結して製造して成る生体活性物質含有人工骨等であって、表面および内部にカルシウムや燐などの生体活性を有する元素が分散されていること、および粉末射出成型法で形状付与されることを特徴とする金属製の人工骨等とその製造法である(例えば、特許文献5参照。)。
【0008】
他方、従来の金属製乃至セラミックス製人工骨材料に比べ、生体親和性に優れ、一方、ハイドロキシアパタイト製乃至β−TCP製の骨再生用足場材に比べ、その治癒期間が短く、その耐久性についても大幅に改善した、骨治療用材料、具体的には骨再生用チタン製足場材が提供されている。その構成は、一定長かつ一定断面寸法のチタン金属又はチタン合金繊維からなり、所定の形状を有する不織材またはその焼成体であることを特徴とする生体親和性に優れた骨再生用チタン製足場材およびその製造方法である(例えば、特許文献6参照。)。
【0009】
また、チタン繊維医療材料で、骨と金属材料が三次元的に協同しあった立体的結合層を形成できるようなスカフォールドが提供されている。その構成は、スカフォールド材料設計を、100μm未満、アスペクト比20以上のチタン金属繊維を選定し、この選定してなる繊維を絡合して層状に形成し、繊維層の表面から内部に至るまでに生体硬組織誘導性及び定着性に優れた空間を形成した設定とし、この材料をインプラント周囲に固定する。これによって細胞活動のための十分な幾何学的空間が与えられるため、立体的な結合形成の期間が1ヶ月以内へと短縮されるのみならず、外傷などによって結合の一部が破綻された場合でも、細胞活動によって結合が自己修復されるものである(例えば、特許文献7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特開平9−324203号公報
【特許文献2】 W02005/011536号公報
【特許文献3】 特開2004−202126号公報
【特許文献4】 特開平6−63067号公報
【特許文献5】 特開2001−252347号公報
【特許文献6】 特開2004−16398号公報
【特許文献7】 特開2004−67547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特開平9−324203号公報の三次元形状を創成するには、三次元モデルのCADデータから三次元形状を創成するものであるから、製作のリードタイムを短縮することができる人工骨の製造方法としてのメリットを有する。これは3次元プリンター技術を人工骨の製造に応用したものであるが、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」が繰り返し作用する脚部や腕の人工骨として適用すると、期待できる程の人工骨としての耐久性や生体組織との親和性が発揮されない。
【0012】
更に、前記W02005/011536号公報の人工骨成形方法は、対象とする骨と同一形状を有し、かつ生体骨に類似の性質と成分を有し、骨置換術において移植可能な人工骨を成形することができる人工骨成形方法を提供するものである。然し乍ら、粉末骨材を平面状の粉末層に形成する粉末層形成ステップを採用しているから、積層される粉末層の硬化による接合強度となり、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」が繰り返し作用する脚部や腕の人工骨として適用すると、期待できる程の人工骨としての耐久性・接合強度が得られ難く、生体組織との親和性も発揮されない。
【0013】
また、前記特開2004−202126号公報の人工骨成形方法は、生体材料で作られ、外形および内部構造が生体骨に非常に近く、移植対象患者に適合性がよく骨再生を促進する人工骨および人工軟骨の成形方法である。然し乍ら、生体用粉体材料および液体材料の混合物の付着面の積層を繰り返すことによって付着層を複数層重層させ、骨の三次元構造物を立体形成させているから、積層される生体用粉体材料の接合強度が不安定となる。即ち、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」が繰り返し作用する脚部や腕の人工骨に適用すると、期待できる程の人工骨としての耐久性・接合強度が得られ難く、生体組織との親和性も発揮されない。
【0014】
また、前記特開平6−63067号公報の複合人工関節は、金属製コアと、前記コア周囲の繊維強化複合外皮とを包含することによって、骨と類似の弾性係数を提供する人工関節、特に人工関節用複合外皮幹状部を提供するものである。然し乍ら、金属製コアとコア周囲の繊維強化複合外皮からなる人工骨は、相互の接合性や生体組織との親和性も発揮されない。
【0015】
また、前記特開2001−252347号公報の人工骨等およびその製法は、人工骨等の表面に高い生体活性を付与するのみでなく、装着時の寸法微調製や生体内での腐食や疲労あるいは摩耗による表面の脱落時においても高い生体活性を失わない。然し乍ら、骨の成分を構成する生体活性物質(アパタイト粉末、ピロ燐酸カルシウム、その他カルシウムや燐の化合物など)をバインダーおよび金属粉末と共に混練したものを射出成型してできた成型体(グリーンボディ)を脱脂、焼結して製造して成る生体活性物質含有人工骨であるから、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」が繰り返し作用する脚部や腕の人工骨に適用すると、期待できる程の人工骨としての耐久性・接合強度が得られ離くい。
【0016】
また、前記特開2004−16398号公報の骨再生用チタン製足場材は、チタン金属又はチタン合金繊維からなり、所定の形状を有する不織材またはその焼成体であるから、形成精度や接合強度が不揃いとなり、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」が繰り返し作用する脚部や腕の骨再生用チタン製足場材骨に適用すると、期待できる程の人工骨としての耐久性・接合強度が得られ難くい。
【0017】
また、前記特開2004−67547号公報は、チタン繊維医療材料で、骨と金属材料が三次元的に協同しあった立体的結合層を形成できるようなスカフォールドである。然し乍ら、金属材料からなる立体的結合層の形成精度や接合強度が不揃いであるから、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」が繰り返し作用する脚部や腕の骨再生用チタン製足場材骨に適用すると、期待できる程の人工骨としての耐久性・接合強度が得られ難くい。
即ち、現状の治療法としては金属製(チタン)の人工関節が普及しているが、固定する側の骨の強度が骨粗鬆症)等で得られない場合は、適用が困難となっていて有望な解決法が待たれている。
【0018】
本願発明者は、前記公知技術の問題点に鑑みるとともに永年の研究成果として、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」に耐えられる溶接ビートを用いた三次元形状物となる骨補強体具の製造方法において、人体の各部位の骨の3次元映像に基づいて溶接ビートを3次元積層しながら骨の関節部や骨の外周部を補強する人工関節と骨補強部とを一体形成する骨補強体具の技術を提供しようとするものである。
即ち、前記人工関節と患骨部の骨補強体とを一体形成した骨補強体具を患者の骨患部に骨との親和性良く接合させることで、骨患部の早期回復が期待できる新手術法を提供することに成功した。即ち、患者の骨患部のデータ撮りに基づき、関節部はチタン関節で構成し、骨患部はチタンを網目体または窓有りに熱溶解チタンにより外周を包囲する骨補強体具を創形するノウハウを工業的に実施可能とした。
【0019】
具体的には、本発明では、骨補助具造形の第1ステップとして変形性膝関節症をテーマに取り上げ、MRI、CT等医療診断で得られる画像データをCAD−CAM−NC制御に変換し熱溶解した金属、樹脂等で関節から骨全体に及ぶ造形法としてラピッドプロトタイピングの手法を用いた方式を確立すること。このラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)とは、製品開発において用いられる試作手法であって、敏速に試作することを目的とする。即ち、同一規格の工業化量産でなく患者其々固有の状態に合わせる治療方法とし最適である。また、金属製人工関節の表面粗さは機械加工の限界を超えたRa0.2μm以上が求められており人手に頼る職人芸の磨き作業が要求される。この適用には、別途研究開発中のハイパー研削(後記する)やチョッピング加工(後記する)を適応して機械化を進め敏速で高規格な骨補強体具を製造する溶融積層造形装置と、この溶融積層造形装置による製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成すべく、前記骨補強体具を製造する熱溶融造形装置及びこの熱溶融造形装置による製造方法は、後記のように構成されたものである。
【0025】
請求項1は、大腿骨、脛骨、膝関節からなる患部骨の外周形状を半周面又は全周面に倣って形成すべく、網目状又は薄板孔空き状にチタン金属を溶融金属の溶接ビートにより積層形成し、人工大腿骨や人工脛骨とした骨補強体具を製造する溶融積層造形装置であって、
4軸以上の多軸をNC制御されるベースマシンは、この基台上で水平2方向に移動制御される移動台と、前記移動台で旋回運動及び首振り運動するテーブルと、前記テーブル上部空間には、前記テーブル上に立体造形物となる骨補強体具を溶接ビートで積層する金属棒を溶融するアーク溶接部と溶接棒又はガス溶接部とこのトーチ部と溶接棒からなる昇降可能な積層造形手段を備え、前記各部材を骨補強体具の造形プログラムにより運転制御するNC運転制御部を備え、前記積層造形手段により溶接ビートを一層ずつ積層させることを特徴とする骨補強体具を製造する溶融積層造形装置である。
【0026】
請求項2は、前記テーブル上には不活性ガス又は液体を満たすべく搭載した加工槽を備えたことを特徴とする請求項1記載の骨補強体具を製造する溶融積層造形装置である。
【0027】
請求項3は、請求項1または2記載の骨補強体具を製造する溶融積層造形装置を用いた骨補強体具の製造方法において、
4軸以上のベースマシンのテーブル上にて、テーブルに金属棒をアーク溶接部又はガス溶接部により金属棒を熱溶解して溶接ビートの肉盛で積層造形物の大腿骨部や脛骨を積層造形する創形工程と、前記創形工程において大腿骨部や脛骨の端部に人工関節を形成する関節創形工程と、前記関節創形工程に続いて人工関節の表面を研削盤又は研磨盤上でハイパー研削又はチョッピング研削研磨する人工関節面磨き工程とからなり、前記人工関節面磨き工程後に骨補強体具の完成品とすることを特徴とする骨補強体具の製造方法である。
【0028】
請求項4は、請求項3記載の骨補強体具の製造方法において、前記創形工程と前記関節創形工程とは、テーブル上の加工槽内に不活性ガス又は液体を満たして金属棒をアーク溶接部又はガス溶接部により金属棒を熱溶解して溶接ビートの肉盛で積層造形物の人工大腿骨や人工脛骨を積層造形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
前記各骨補強体具において、この骨補強体具を製造する溶融積層造形装置と、この骨補強体具の製造方法(以下、溶融積層造形法という)によると、下記の効果が得られる。
先ず、本発明の骨補強体具は、骨の外形状(膝関節、大腿骨、脛骨等)に沿った網目状又は孔空き状に軽量化され且つ剛性、柔軟性を併せ持つ金属(チタン)製で生体機能を損なわない最適条件で患部骨を包み込むことができる。更に、骨補強体具の人工関節は、現在普及している各種の人工関節よりも形状と潤滑性(面粗さRa0.1μm以上)に優れた機械加工ができる。更に、大腿骨、脛骨以外の骨補強体具は、その機能に沿った形状に加工されるとともに何れも軽量で且つ柔軟性に優れ其々の個体骨情報に基づき短時間に完成できる。骨補強体具は、骨の形状を長くする長身法等にも適用できる。
【0032】
前記骨補強体具の熱溶融造形法によると、前記骨補強体具は、MRI、CT等医療診断で得られる画像データをCAD−CAM−NC制御に変換し熱溶解した金属、樹脂等で関節から骨全体に及ぶ造形法としてラピッドプロトタイピングの手法を用いた方式により製造できる。即ち、製品開発を敏速に試作できるから、患者其々固有の状態に合わせる治療方法として最適である。また、金属製人工関節の表面粗が機械加工の限界を超えたRa0,1μm以上に磨くことができ、理想の骨補強体具が得られる。
また、不活性ガスを満たすべく搭載した加工槽内で立体造形物となる骨補強体具を溶接ビートで積層するから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具が得られる。
【0033】
前記骨補強体具の溶融積層造形装置によると、既存の機械システムにより、前記骨補強体具の溶融積層造形法が実施できる。これにより、前記骨補強体具の製造に際しては、MRI、CT等医療診断で得られる画像データをCAD−CAM−NC制御に変換し熱溶解した金属、樹脂等で関節から骨全体に及ぶ造形法としてラピッドプロトタイピングの手法を実施させられる。また、製品開発を敏速に試作する時の患者其々固有の状態に合わせた骨補強体具の製造にも適合する。そして、金属製人工関節の表面粗が機械加工の限界を超えたRa0,1μm以上に磨くことができる。
また、不活性ガス又は液体又は気液混合体を満たすべく搭載した加工槽内で立体造形物となる骨補強体具を溶接ビートで積層する積層造形手段を備えたから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態を示し、骨補強体具の溶融積層造形法の工程図である。
図2】本発明の第1,2実施の形態を示し、二つの骨補強体具を一部拡大した斜視図である。
図3】本発明の第3実施の形態を示し、二つの骨補強体具を一部拡大した斜視図である。
図4】本発明の第4実施の形態において、二つの骨補強体具を一部拡大した斜視図である。
図5】本発明の第5実施の形態を示し、骨補強体具を患部骨に装着する断面図である。
図6】本発明の第6実施の形態を示し、溶融積層造形装置の断面図である。
図7】本発明の第7実施の形態を示し、溶融積層造形法の工程図である。
図8】本発明の第8実施の形態を示し、各関節の研削方法を説明する作用図である。
図9】本発明の第9実施の形態を示し、各関節の研削方法を説明する作用図である。
図10】膝関節の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図1乃至図10を参照して本発明の骨補強体具と、この溶融積層造形法とこの溶 融積層造形装置の各実施の形態を順次に説明する。
【実施例】
【0036】
先ず、本発明の骨補強体具H,H0は、骨の外形状に沿った網目状、又は孔空き状に軽量化され且つ剛性、柔軟性を併せ持つ金属(チタン)製で生体機能を損なわない最適条件で骨を包み込むことができる。従って、現在普及している各種の人工関節よりも形状と潤滑性(面粗さ)に優れた機械加工が行われる。更に、大腿骨、脛骨以外の骨補強体具は、その機能に沿った形状に加工されるとともに何れも軽量で且つ柔軟性に優れ其々の個体骨情報に基づき短時間で完成する特徴を持っている。その他の形状としては、骨を長くする長身法等にも適用できる。
【0037】
次に、図1により、患者の各部位の骨格における患部骨1の3次元映像を得る方法と手段(公知技術)と、本発明の骨補強体具Hを造形する造形法アウトラインについて説明する。先ず、下記の手順により、患者の各部位の骨格における患部骨の3次元映像のデータを得て、骨補強体具Hが造形される。
▲1▼ MRI(核磁気共鳴画像法、magnetic resonance imaging,)又はCT(コンピュータ断層撮影、Computed TomogR a phy)により、患部骨1の3次元画像情報e0が得られる。この骨情報をCAD(キャド、computeR a ided design)に読み込み骨補強体具Hを設計する。
▲2▼ CAM(コンピュータ支援製造、computeR a ided manufacturing)に入力された3次元画像情報e0は、ここでNC化(コンピュータ数値制御、CNC(Computer(ized)Numerical(ly)Control(led)された3次元造形NC情報e1を得える。この3次元造形情報により、熱溶解金属造形機械(以下、溶融積層造形装置と言うこの機械は、4軸制御以上の同時NC制御工作機械や多関節ロボット他100の何れからなる)Mで患部骨1の造形加工を行う。以上は公知技術である。
▲3▼ 以下、本発明となる骨補強体具Hが造形される。先ず、溶融積層造形装置は、4軸制御以上の同時NC制御機能を持っており、上記3次元造形情報により、アーク溶接、ガス溶接等の熱溶解部によりチタン他の金属棒が熱溶解した熱溶融金属となって滴下され、この溶接ビードをテーブル部上に網目状工程(a)(b)(c)(d)(e)の如く積層して患部骨1を包囲する骨補強体具Hを3次元造形する。
▲4▼ 更に、前記骨補強体具H0の頂部に溶接ビードBを積層した人工関節H1が3次元表面H1として造形される。この3次元表面H1は、ハイパー研削及びチョッピング研削磨(後記)等により、高精度(表面粗さRa0.1μm以上)に滑らかに磨かれる。
▲5▼ 前記の工程で造形された人工関節H1を含む骨補強体具Hは、外科手術により人体の患部K0を切開した患部骨(例えば、関節と脛骨又は大腿骨からなる)1の外周(半周面または全周面)に装着固定される。
【0038】
続いて、本発明となる骨補強体具Hと、これが造形される第1実施の形態となる溶融積層造形法とその溶融積層造形装置(100)Mを、図2以下により説明する。先ず、骨補強体具Hの各実施形態と、患部骨(膝関節、脛骨及び大腿骨からなる)1の外周に装着固定される実施形態を説明する。図2(a)に示す骨補強体具Hは、患部骨(関節K1と脛骨K2及び関節K3と大腿骨K4からなる)1の外周形状に於ける半周面に倣って形成すべく、人工関節H1,H2をチタン金属CKで関節K1,K3を被冠させる三次元形状に形成され、造形される人工大腿骨部H3や人工脛骨H4等と連結され、網目状にチタン金属CKを溶融金属の溶接ビートBにより積層形成されている。また、図2(b)に示す骨補強体具H0は、患部骨(関節K1と脛骨K2及び関節K3と大腿骨K4からなる)1の外周形状に於ける半周面に倣って形成すべく、人工関節H1,H2をチタン金属で被冠させる三次元形状に形成され、造形される人工大腿骨部H3や人工脛骨H4等と連結され、薄板孔空き状にチタン金属CKを溶融金属の溶接ビートBにより積層形成されている。これにより、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」に耐えられから、剛性を落とさず軽量化が達成されている。
【0039】
また、第2実施の形態となる骨補強体具Hは、図3図3(a)(b)に示す骨補強体具Hは、患部骨(膝関節、大腿骨、脛骨等からなる)1の外周形状に於ける全周面に倣って分割形成となるHとHXとで形成されている。上記骨補強体具Hはチタン金属の人工関節H1とH2に連結され、人工関節H1とH2が関節K1,K3に被冠される三次元形状に形成さている。大腿骨K4や脛骨K2等は網目状にチタン金属を溶融金属の溶接ビートBにより分割形状に積層形成されている。また、図4図4(a)(b)に示す骨補強体具H0,H0Xは、患部骨(膝関節、大腿骨、脛骨等からなる)1の外周形状に於ける半周面に倣って形成すべく、チタン金属で被冠させる三次元形状に形成され、大腿骨K4や脛骨K2等は薄板孔空き状にチタン金属を溶融金属の溶接ビートBにより分割形状に積層形成されている。その他の構成は、骨補強体具H,HXと同一構成にて同一符号を付している。
【0040】
前記骨補強体具Hまたは骨補強体具H,HXとH0,H0Xは、図5(a)に示すように、人工関節H1,H2を含む骨補強体具H,H0は、外科手術により人体の患部となる膝関節K1,K2の周囲を切開した患部骨(膝関節、大腿骨、脛骨等からなる)1の外周壁の半周面に図2に示す半割状の骨補強体具H,H0が装着固定される。これは、患部骨1の片側のみ補強タイプとなる。このメリットは、軽症な患部骨1の骨補強に低コストに装着できるし、外科手術も短時間に行える。
また、図5(b)に示すように、患部骨1の外周における全周面は、図3及び図4に示すように、分割形状に積層形成された骨補強体具H,HXとH0,H0Xにより両側から包み込まれる両側補強タイプとなる。このメリットは、重症な患部骨1の骨補強にも低コストに装着できるし、外科手術も比較的に短時間に行える。
【0041】
続いて、前記人工関節H1,H2を含む片側タイプ、骨補強体具H,H0及び分割形状に積層形成された骨補強体具H,HXとH0,H0Xにより両側から包み込まれる両側補強タイプを製造する溶融積層造形装置(100)Mについて、図6で説明する。
この溶融積層造形装置100は、4軸以上の多軸をNC制御されるベースマシンBMを備え、この基台B1上で水平2方向(前後左右のX軸サーボモータMXとY軸サーボモータMY)に移動制御される移動台1と、上記移動台に旋回運動(C軸サーボモータMC)及び首振り運動(B軸サーボモータMB)するテーブル2と、上記テーブル上には立体造形物を溶接ビート11Aの肉盛で積層させるとともに不活性ガスG又は液体G又は気液混合体Gを満たすべく搭載した加工槽3とから成る。そして、上記加工槽の上部空間Sには、上記テーブル上に立体造形物となる骨補強体具Hまたは骨補強体具H0を溶接ビートBで積層する金属棒11を溶融するアーク溶接部80と溶接棒11、又はガス溶接部90とこのトーチ部30と溶接棒11からなる積層造形手段(造形物成形部)SZを備える。尚、樹脂材を溶接棒11とする時は、ガス溶接部90とこのトーチ部30による。
前記各部材は、骨補強体具Hまたは骨補強体具H0他の造形プログラムPにより運転制御されるNC運転制御部7を備えている。運転当初は、各溶接棒11は送り制御モータMK,MKにより加工槽3の上面近くまで下降して位置決めされる。この状態から溶接ビートBを、B1、B2,B3,B4・・・の如く一層ずつ積層させて行くに追従して送り制御モータMK,MKは、各溶接棒11の消耗量分を送り出すとともに積層される溶接ビートBの最上面との関係を加味しながら積層造形手段(造形物成形部)SZを上昇位置制御し、骨補強体具Hまたは骨補強体具H0他を積層造形する。
【0042】
尚、前記各金属棒11の肉盛量の制御は、金属棒11の移動速度と溶接電流又はガス燃焼量により行われる。また、不活性ガス又は液体又は気液混合体Gを満たすべく搭載した加工槽3内で立体造形物となる骨補強体具H,H0,H,HXとH0,H0Xを溶接ビートBで積層する積層造形手段を備えたから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具を製造できる。
【0043】
尚、前記溶融積層造形装置(100)Mにおいて、前記テーブル2を平面上で旋回運動するC軸サーボモータMCは、これを省略することが可能である。この平面上で旋回運動は、水平2方向(前後左右のX軸サーボモータMXとY軸サーボモータMY)に移動制御される移動台1の旋回運動によって行わせても良い。更に、前記溶接棒11のテーブル2及び加工槽3の上面に対する昇降制御をする溶融積層造形装置(NC制御工作機械100)Mの主軸頭(図示なし)をNC制御で行わせても良い。また、骨補強体具H,H0他に人工関節H1,H2が無い時は、不活性ガスG又は液体G又は気液混合体Gを満たすべく搭載した加工槽3内に不活性ガスG又は液体G又は気液混合体Gの供給を遮断したり、加工槽3を省略することも可能である。更に、固定されたテーブル2及び加工槽3の上面に多関節ロボット(4軸以上)のアームを配置し、このアームハンドに溶接棒11を備えても良い。
【0044】
前記実施の形態となる溶融積層造形装置(100)Mによる溶融積層造形法を図7の工程図で説明する。4軸以上のベースマシンテーブル上において、テーブル又は加工槽内に不活性ガス又は液体又は気液混合体を満たして金属棒をアーク溶接部又はガス溶接部により金属棒を熱溶解して溶接ビートの肉盛で骨補強体具H,H0他の大腿骨部H3や脛骨H4を積層造形する創形工程)(A)と、(前記大腿骨部H3や脛骨H4の端部に人工関節H1,H2を形成する関節創形工程)(B)と、前記関節創形工程に続いて人工関節の表面を研削盤又は研磨盤上でハイパー研削又はチョッピング研削研磨する人工関節面磨き工程(C)とからなり、(前記人工関節面磨き工程後に骨補強体具H,H0の完成品)(D)と、から成る。尚、骨補強体具H,H0の端部に人工関節H1,H2を形成させていない場合は、人工関節面磨き工程(C)を省略した(A)(B)(D)の各工程を造形プログラムPにより運転制御される。
【0045】
前記ハイパー研削(研削ホイールの保持具)(特許第5380674号)又はチョッピング研削研磨(実用新案登録第3181190号)により人工関節面磨き工程が実行される。図8図9により具体的に説明する。
前記ハイパー研削(研削ホイールの保持具)は、本願出願人に係る技術であり、具体的な構成は、図8において、この研削ホイール40は、両縁にフランジ1F,1Fを備えた環状基台1と、前記環状基台1の外周面1Bに内周面2Aを装着された環状砥石2とで構成されている。前記環状基台1の内周面1Aは回転主軸5に嵌着され、前記環状基台1の両縁フランジ1F,1Fが環状砥石2Tの両側面2F,2Fと接する部位に凹状断面の通路1Gを放射状に設け、前記通路1Gは上記回転主軸5の内部から外周5Aに繋がる冷却液K(高圧冷却液K)の冷却液供給通路Aから連絡孔H5,H6とで連絡させるとともにフランジ外周端で環状砥石2Tの両側面2F,2Fに開口H7されている。
【0046】
これにより、回転主軸の軸芯に穿かれた冷却液供給通路Aから高圧冷却液Kを環状砥石の両側面2F,2Fに接合する内面側の通路1G,1Gに供給される。これで、前記環状砥石2に供給された高圧冷却液Kが環状砥石の両側面2F,2Fから外周面2Bの外部へ噴出されるとともに、研削ホイール40の高速回転による遠心力で、高圧冷却液Kの外周面2Bの外部へ噴出を助長するから、人工関節H1,H2の被研削面Xを外側から完全に包囲することで効果的に冷却する。
【0047】
更に、高圧冷却液Kの高圧噴出は、直接にワークとの研削面に停滞,付着する研削塵の高能率な排除効果と砥石,ワーク研削面の高能率な冷却効果が期待でき、ワークの研削焼け防止効果が期待できる。即ち、高圧噴出する冷却液Kは、ワークとの研削面との加工点に噴射して発生する加工熱(摩擦熱)で体積比率1700倍前後に膨張することで、蒸気爆発効果で気化圧力を発生させる。これにより、線条痕の無い被研削面の表面粗さRa0.1μm以上の円滑・平滑面が人工関節面H1,H2に得られる。尚、環状砥石2は、凹凸面の多い関節面の磨き時には研磨バフとしても良い。
【0048】
前記チョッピング研削研磨は、本願出願人に係る技術であり、脈動供給する研削液により主軸回転と関係なく研削砥石に対するビビリ振動の無い往復運動制御が行えるチョッピング工具ホルダ50と、上記チョッピング工具ホルダに、研削液を脈動供給して研削砥石に対する往復運動制御が行えるチョッピング駆動装置60である。
具体的な構成は、図9において、先端部13Aに通孔13Bを持つ回転筒体13と、前記回転筒体の空間S内に膨張する摺動環部14Aを気密に摺動可能に嵌合する回転軸14と、前記回転軸の先端部14Bは回転筒体の通孔から外部へ突出してこれに付設した研削砥石GOと、前記回転筒体と回転軸の摺動環部との間に回転軸を後退させる弾性体15と、前記回転筒体の後側空間内に供給する脈動する研削液COとからなる。
これにより、チョッピング加工の条件となるステッピング加工の10倍以上の速い往復運動と、0.05mm〜1mm前後のストロークは、脈動供給される研削液や切削液により主軸回転とは関係なく刃具や研削砥石に対するビビリ振動の無い円滑で自由な往復運動制御の元に実施できる。これにより、線条痕の無い人工関節面H1,H2の被研削面Xの表面粗さRa0.1μm以上の円滑・平滑面が人工関節面H1,H2に得られる。尚、研削砥石GOは、凹凸面の多い関節面の磨き時には研磨バフとしても良い。
【0049】
本発明は、前記骨補強体具H,H0の実施例に限定されない。例えば、人体における各骨格に適用できる。具体的には、前記患部骨は、大腿骨と骨盤との股関節との関節にも適用される。また、前記患部骨は、骨盤と仙骨との関節及び背骨とこの各背骨(腰椎・胸推・頚椎)間にも適用される。また、前記患部骨は、脛骨と足首との関節や各指の関節にも適用される。また、前記患部骨は、腕とその各関節となる手首関節とその先端の指とその各関節の他、肩関節,肩甲骨,鎖骨とその関節の何れかにも適用される。
【0050】
以上の各実施例で説明したように、本発明の溶融積層造形法とその溶融積層造形装置及びこの骨補強体具H,H0によると、下記の有益な効果が発揮される。
本発明の骨補強体具H,H0は、骨の外形状に沿った網目状又は孔空き状に軽量化され且つ剛性、柔軟性を併せ持つ金属(チタン)製で生体機能を損なわない最適条件で患部骨を包み込むことができる。更に、骨補強体具H,H0の人工関節は、現在普及している各種の人工関節よりも形状と潤滑性(面粗さRa0.1μm以上)に優れた機械加工ができる。更に、大腿骨、脛骨以外の骨補強体具は、その機能に沿った形状に加工されるとともに何れも軽量で且つ柔軟性に優れ其々の個体骨情報に基づき短時間に完成できる。骨補強体具H,H0は、骨の形状を長くする長身法等にも適用できる。
【0051】
更に、骨補強体具の溶融積層造形装置によると、既存の機械システムにより、前記骨補強体具の溶融積層造形法が実施できる。これにより、前記骨補強体具の製造に際しては、MRI、CT等医療診断で得られる画像データをCAD−CAM−NC制御に変換し熱溶解した金属、樹脂等で関節から骨全体に及ぶ造形法としてラピッドプロトタイピングの手法を実施させられる。また、製品開発を敏速に試作する時の患者其々固有の状態に合わせた骨補強体具の製造にも適合する。そして、金属製人工関節の表面粗が機械加工の限界を超えたRa0,1μm以上に磨くことができる。また、不活性ガス又は液体又は気液混合体を満たすべく搭載した加工槽内で骨補強体具を溶接ビートで積層する積層造形手段を備えたから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具を製造できる。
【0052】
前記骨補強体具の溶融積層造形法によると、前記骨補強体具は、MRI、CT等医療診断で得られる画像データをCAD−CAM−NC制御に変換し熱溶解した金属、樹脂等で関節から骨全体に及ぶ造形法としてラピッドプロトタイピングの手法を用いた方式により製造できる。即ち、製品開発を敏速に試作できるから、患者其々固有の状態に合わせる治療方法として最適である。また、金属製人工関節の表面粗が機械加工の限界を超えたRa0,1μm以上に磨くことができ、理想の骨補強体具が得られる。また、不活性ガス又は液体又は気液混合体を満たすべく搭載した加工槽内で骨補強体具を溶接ビートで積層するから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の骨補強体具とこの溶融積層造形法及び溶融積層造形装置は、前記各実施例に限定されない。例えば、人体や動物等の各種関節や弱体化した骨の骨補強体具とこの製造技術として実施できる。
【符号の説明】
【0054】
1 患部骨
2 テーブル
2T 環状砥石
7 NC運転制御部(NC制御部)
11 溶接棒(金属棒)
30 バーナー
40 研削ホイール
50 チョッピング工具ホルダ
60 チョッピング駆動装置
80 アーク溶接部
90 ガス溶接部
100 溶融積層造形装置
BM ベースマシン
B 溶接ビート
B1 基台
CK チタン金属
CO 研削液
G 不活性ガス又は液体又は気液混合体
GO 研削砥石
e0 3次元画像情報
e1 3次元造形NC情報
H,H0 骨補強体具
HX,H0X 骨補強体具
H1,H2 人工関節
H3 人工大腿骨
H4 人工脛骨
K0 患部
K1 関節
K2 脛骨
K3 関節
K4 大腿骨
P 造形プログラム
S 空間
SZ 積層造形手段
MX X軸サーボモータ
MY Y軸サーボモータ
MC C軸サーボモータ
V1 開閉弁
(A) 創形工程
(B) 関節創形工程
(C) 人工関節面磨き工程
(D) 骨補強体具の完成品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10