【実施例】
【0036】
先ず、本発明の骨補強体具H,H0は、骨の外形状に沿った網目状、又は孔空き状に軽量化され且つ剛性、柔軟性を併せ持つ金属(チタン)製で生体機能を損なわない最適条件で骨を包み込むことができる。従って、現在普及している各種の人工関節よりも形状と潤滑性(面粗さ)に優れた機械加工が行われる。更に、大腿骨、脛骨以外の骨補強体具は、その機能に沿った形状に加工されるとともに何れも軽量で且つ柔軟性に優れ其々の個体骨情報に基づき短時間で完成する特徴を持っている。その他の形状としては、骨を長くする長身法等にも適用できる。
【0037】
次に、
図1により、患者の各部位の骨格における患部骨1の3次元映像を得る方法と手段(公知技術)と、本発明の骨補強体具Hを造形する造形法アウトラインについて説明する。先ず、下記の手順により、患者の各部位の骨格における患部骨の3次元映像のデータを得て、骨補強体具Hが造形される。
▲1▼ MRI(核磁気共鳴画像法、magnetic resonance imaging,)又はCT(コンピュータ断層撮影、Computed TomogR a phy)により、患部骨1の3次元画像情報e0が得られる。この骨情報をCAD(キャド、computeR a ided design)に読み込み骨補強体具Hを設計する。
▲2▼ CAM(コンピュータ支援製造、computeR a ided manufacturing)に入力された3次元画像情報e0は、ここでNC化(コンピュータ数値制御、CNC(Computer(ized)Numerical(ly)Control(led)された3次元造形NC情報e1を得える。この3次元造形情報により、熱溶解金属造形機械(以下、溶融積層造形装置と言うこの機械は、4軸制御以上の同時NC制御工作機械や多関節ロボット他100の何れからなる)Mで患部骨1の造形加工を行う。以上は公知技術である。
▲3▼ 以下、本発明となる骨補強体具Hが造形される。先ず、溶融積層造形装置は、4軸制御以上の同時NC制御機能を持っており、上記3次元造形情報により、アーク溶接、ガス溶接等の熱溶解部によりチタン他の金属棒が熱溶解した熱溶融金属となって滴下され、この溶接ビードをテーブル部上に網目状工程(a)(b)(c)(d)(e)の如く積層して患部骨1を包囲する骨補強体具Hを3次元造形する。
▲4▼ 更に、前記骨補強体具H0の頂部に溶接ビードBを積層した人工関節H1が3次元表面H1として造形される。この3次元表面H1は、ハイパー研削及びチョッピング研削磨(後記)等により、高精度(表面粗さRa0.1μm以上)に滑らかに磨かれる。
▲5▼ 前記の工程で造形された人工関節H1を含む骨補強体具Hは、外科手術により人体の患部K0を切開した患部骨(例えば、関節と脛骨又は大腿骨からなる)1の外周(半周面または全周面)に装着固定される。
【0038】
続いて、本発明となる骨補強体具Hと、これが造形される第1実施の形態となる溶融積層造形法とその溶融積層造形装置(100)Mを、
図2以下により説明する。先ず、骨補強体具Hの各実施形態と、患部骨(膝関節、脛骨及び大腿骨からなる)1の外周に装着固定される実施形態を説明する。
図2(a)に示す骨補強体具Hは、患部骨(関節K1と脛骨K2及び関節K3と大腿骨K4からなる)1の外周形状に於ける半周面に倣って形成すべく、人工関節H1,H2をチタン金属CKで関節K1,K3を被冠させる三次元形状に形成され、造形される人工大腿骨部H3や人工脛骨H4等と連結され、網目状にチタン金属CKを溶融金属の溶接ビートBにより積層形成されている。また、
図2(b)に示す骨補強体具H0は、患部骨(関節K1と脛骨K2及び関節K3と大腿骨K4からなる)1の外周形状に於ける半周面に倣って形成すべく、人工関節H1,H2をチタン金属で被冠させる三次元形状に形成され、造形される人工大腿骨部H3や人工脛骨H4等と連結され、薄板孔空き状にチタン金属CKを溶融金属の溶接ビートBにより積層形成されている。これにより、ダイナミックな荷重「圧縮、曲げ、引っ張り、捻れ、歪み等」に耐えられから、剛性を落とさず軽量化が達成されている。
【0039】
また、第2実施の形態となる骨補強体具Hは、
図3と
図3(a)(b)に示す骨補強体具Hは、患部骨(膝関節、大腿骨、脛骨等からなる)1の外周形状に於ける全周面に倣って分割形成となるHとHXとで形成されている。上記骨補強体具Hはチタン金属の人工関節H1とH2に連結され、人工関節H1とH2が関節K1,K3に被冠される三次元形状に形成さている。大腿骨K4や脛骨K2等は網目状にチタン金属を溶融金属の溶接ビートBにより分割形状に積層形成されている。また、
図4と
図4(a)(b)に示す骨補強体具H0,H0Xは、患部骨(膝関節、大腿骨、脛骨等からなる)1の外周形状に於ける半周面に倣って形成すべく、チタン金属で被冠させる三次元形状に形成され、大腿骨K4や脛骨K2等は薄板孔空き状にチタン金属を溶融金属の溶接ビートBにより分割形状に積層形成されている。その他の構成は、骨補強体具H,HXと同一構成にて同一符号を付している。
【0040】
前記骨補強体具Hまたは骨補強体具H,HXとH0,H0Xは、
図5(a)に示すように、人工関節H1,H2を含む骨補強体具H,H0は、外科手術により人体の患部となる膝関節K1,K2の周囲を切開した患部骨(膝関節、大腿骨、脛骨等からなる)1の外周壁の半周面に
図2に示す半割状の骨補強体具H,H0が装着固定される。これは、患部骨1の片側のみ補強タイプとなる。このメリットは、軽症な患部骨1の骨補強に低コストに装着できるし、外科手術も短時間に行える。
また、
図5(b)に示すように、患部骨1の外周における全周面は、
図3及び
図4に示すように、分割形状に積層形成された骨補強体具H,HXとH0,H0Xにより両側から包み込まれる両側補強タイプとなる。このメリットは、重症な患部骨1の骨補強にも低コストに装着できるし、外科手術も比較的に短時間に行える。
【0041】
続いて、前記人工関節H1,H2を含む片側タイプ、骨補強体具H,H0及び分割形状に積層形成された骨補強体具H,HXとH0,H0Xにより両側から包み込まれる両側補強タイプを製造する溶融積層造形装置(100)Mについて、
図6で説明する。
この溶融積層造形装置100は、4軸以上の多軸をNC制御されるベースマシンBMを備え、この基台B1上で水平2方向(前後左右のX軸サーボモータMXとY軸サーボモータMY)に移動制御される移動台1と、上記移動台に旋回運動(C軸サーボモータMC)及び首振り運動(B軸サーボモータMB)するテーブル2と、上記テーブル上には立体造形物を溶接ビート11Aの肉盛で積層させるとともに不活性ガスG又は液体G又は気液混合体Gを満たすべく搭載した加工槽3とから成る。そして、上記加工槽の上部空間Sには、上記テーブル上に立体造形物となる骨補強体具Hまたは骨補強体具H0を溶接ビートBで積層する金属棒11を溶融するアーク溶接部80と溶接棒11、又はガス溶接部90とこのトーチ部30と溶接棒11からなる積層造形手段(造形物成形部)SZを備える。尚、樹脂材を溶接棒11とする時は、ガス溶接部90とこのトーチ部30による。
前記各部材は、骨補強体具Hまたは骨補強体具H0他の造形プログラムPにより運転制御されるNC運転制御部7を備えている。運転当初は、各溶接棒11は送り制御モータMK,MKにより加工槽3の上面近くまで下降して位置決めされる。この状態から溶接ビートBを、B1、B2,B3,B4・・・の如く一層ずつ積層させて行くに追従して送り制御モータMK,MKは、各溶接棒11の消耗量分を送り出すとともに積層される溶接ビートBの最上面との関係を加味しながら積層造形手段(造形物成形部)SZを上昇位置制御し、骨補強体具Hまたは骨補強体具H0他を積層造形する。
【0042】
尚、前記各金属棒11の肉盛量の制御は、金属棒11の移動速度と溶接電流又はガス燃焼量により行われる。また、不活性ガス又は液体又は気液混合体Gを満たすべく搭載した加工槽3内で立体造形物となる骨補強体具H,H0,H,HXとH0,H0Xを溶接ビートBで積層する積層造形手段を備えたから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具を製造できる。
【0043】
尚、前記溶融積層造形装置(100)Mにおいて、前記テーブル2を平面上で旋回運動するC軸サーボモータMCは、これを省略することが可能である。この平面上で旋回運動は、水平2方向(前後左右のX軸サーボモータMXとY軸サーボモータMY)に移動制御される移動台1の旋回運動によって行わせても良い。更に、前記溶接棒11のテーブル2及び加工槽3の上面に対する昇降制御をする溶融積層造形装置(NC制御工作機械100)Mの主軸頭(図示なし)をNC制御で行わせても良い。また、骨補強体具H,H0他に人工関節H1,H2が無い時は、不活性ガスG又は液体G又は気液混合体Gを満たすべく搭載した加工槽3内に不活性ガスG又は液体G又は気液混合体Gの供給を遮断したり、加工槽3を省略することも可能である。更に、固定されたテーブル2及び加工槽3の上面に多関節ロボット(4軸以上)のアームを配置し、このアームハンドに溶接棒11を備えても良い。
【0044】
前記実施の形態となる溶融積層造形装置(100)Mによる溶融積層造形法を
図7の工程図で説明する。4軸以上のベースマシンテーブル上において、テーブル又は加工槽内に不活性ガス又は液体又は気液混合体を満たして金属棒をアーク溶接部又はガス溶接部により金属棒を熱溶解して溶接ビートの肉盛で骨補強体具H,H0他の大腿骨部H3や脛骨H4を積層造形する創形工程)(A)と、(前記大腿骨部H3や脛骨H4の端部に人工関節H1,H2を形成する関節創形工程)(B)と、前記関節創形工程に続いて人工関節の表面を研削盤又は研磨盤上でハイパー研削又はチョッピング研削研磨する人工関節面磨き工程(C)とからなり、(前記人工関節面磨き工程後に骨補強体具H,H0の完成品)(D)と、から成る。尚、骨補強体具H,H0の端部に人工関節H1,H2を形成させていない場合は、人工関節面磨き工程(C)を省略した(A)(B)(D)の各工程を造形プログラムPにより運転制御される。
【0045】
前記ハイパー研削(研削ホイールの保持具)(特許第5380674号)又はチョッピング研削研磨(実用新案登録第3181190号)により人工関節面磨き工程が実行される。
図8と
図9により具体的に説明する。
前記ハイパー研削(研削ホイールの保持具)は、本願出願人に係る技術であり、具体的な構成は、
図8において、この研削ホイール40は、両縁にフランジ1F,1Fを備えた環状基台1と、前記環状基台1の外周面1Bに内周面2Aを装着された環状砥石2とで構成されている。前記環状基台1の内周面1Aは回転主軸5に嵌着され、前記環状基台1の両縁フランジ1F,1Fが環状砥石2Tの両側面2F,2Fと接する部位に凹状断面の通路1Gを放射状に設け、前記通路1Gは上記回転主軸5の内部から外周5Aに繋がる冷却液K(高圧冷却液K)の冷却液供給通路Aから連絡孔H5,H6とで連絡させるとともにフランジ外周端で環状砥石2Tの両側面2F,2Fに開口H7されている。
【0046】
これにより、回転主軸の軸芯に穿かれた冷却液供給通路Aから高圧冷却液Kを環状砥石の両側面2F,2Fに接合する内面側の通路1G,1Gに供給される。これで、前記環状砥石2に供給された高圧冷却液Kが環状砥石の両側面2F,2Fから外周面2Bの外部へ噴出されるとともに、研削ホイール40の高速回転による遠心力で、高圧冷却液Kの外周面2Bの外部へ噴出を助長するから、人工関節H1,H2の被研削面Xを外側から完全に包囲することで効果的に冷却する。
【0047】
更に、高圧冷却液Kの高圧噴出は、直接にワークとの研削面に停滞,付着する研削塵の高能率な排除効果と砥石,ワーク研削面の高能率な冷却効果が期待でき、ワークの研削焼け防止効果が期待できる。即ち、高圧噴出する冷却液Kは、ワークとの研削面との加工点に噴射して発生する加工熱(摩擦熱)で体積比率1700倍前後に膨張することで、蒸気爆発効果で気化圧力を発生させる。これにより、線条痕の無い被研削面の表面粗さRa0.1μm以上の円滑・平滑面が人工関節面H1,H2に得られる。尚、環状砥石2は、凹凸面の多い関節面の磨き時には研磨バフとしても良い。
【0048】
前記チョッピング研削研磨は、本願出願人に係る技術であり、脈動供給する研削液により主軸回転と関係なく研削砥石に対するビビリ振動の無い往復運動制御が行えるチョッピング工具ホルダ50と、上記チョッピング工具ホルダに、研削液を脈動供給して研削砥石に対する往復運動制御が行えるチョッピング駆動装置60である。
具体的な構成は、
図9において、先端部13Aに通孔13Bを持つ回転筒体13と、前記回転筒体の空間S内に膨張する摺動環部14Aを気密に摺動可能に嵌合する回転軸14と、前記回転軸の先端部14Bは回転筒体の通孔から外部へ突出してこれに付設した研削砥石GOと、前記回転筒体と回転軸の摺動環部との間に回転軸を後退させる弾性体15と、前記回転筒体の後側空間内に供給する脈動する研削液COとからなる。
これにより、チョッピング加工の条件となるステッピング加工の10倍以上の速い往復運動と、0.05mm〜1mm前後のストロークは、脈動供給される研削液や切削液により主軸回転とは関係なく刃具や研削砥石に対するビビリ振動の無い円滑で自由な往復運動制御の元に実施できる。これにより、線条痕の無い人工関節面H1,H2の被研削面Xの表面粗さRa0.1μm以上の円滑・平滑面が人工関節面H1,H2に得られる。尚、研削砥石GOは、凹凸面の多い関節面の磨き時には研磨バフとしても良い。
【0049】
本発明は、前記骨補強体具H,H0の実施例に限定されない。例えば、人体における各骨格に適用できる。具体的には、前記患部骨は、大腿骨と骨盤との股関節との関節にも適用される。また、前記患部骨は、骨盤と仙骨との関節及び背骨とこの各背骨(腰椎・胸推・頚椎)間にも適用される。また、前記患部骨は、脛骨と足首との関節や各指の関節にも適用される。また、前記患部骨は、腕とその各関節となる手首関節とその先端の指とその各関節の他、肩関節,肩甲骨,鎖骨とその関節の何れかにも適用される。
【0050】
以上の各実施例で説明したように、本発明の溶融積層造形法とその溶融積層造形装置及びこの骨補強体具H,H0によると、下記の有益な効果が発揮される。
本発明の骨補強体具H,H0は、骨の外形状に沿った網目状又は孔空き状に軽量化され且つ剛性、柔軟性を併せ持つ金属(チタン)製で生体機能を損なわない最適条件で患部骨を包み込むことができる。更に、骨補強体具H,H0の人工関節は、現在普及している各種の人工関節よりも形状と潤滑性(面粗さRa0.1μm以上)に優れた機械加工ができる。更に、大腿骨、脛骨以外の骨補強体具は、その機能に沿った形状に加工されるとともに何れも軽量で且つ柔軟性に優れ其々の個体骨情報に基づき短時間に完成できる。骨補強体具H,H0は、骨の形状を長くする長身法等にも適用できる。
【0051】
更に、骨補強体具の溶融積層造形装置によると、既存の機械システムにより、前記骨補強体具の溶融積層造形法が実施できる。これにより、前記骨補強体具の製造に際しては、MRI、CT等医療診断で得られる画像データをCAD−CAM−NC制御に変換し熱溶解した金属、樹脂等で関節から骨全体に及ぶ造形法としてラピッドプロトタイピングの手法を実施させられる。また、製品開発を敏速に試作する時の患者其々固有の状態に合わせた骨補強体具の製造にも適合する。そして、金属製人工関節の表面粗が機械加工の限界を超えたRa0,1μm以上に磨くことができる。また、不活性ガス又は液体又は気液混合体を満たすべく搭載した加工槽内で骨補強体具を溶接ビートで積層する積層造形手段を備えたから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具を製造できる。
【0052】
前記骨補強体具の溶融積層造形法によると、前記骨補強体具は、MRI、CT等医療診断で得られる画像データをCAD−CAM−NC制御に変換し熱溶解した金属、樹脂等で関節から骨全体に及ぶ造形法としてラピッドプロトタイピングの手法を用いた方式により製造できる。即ち、製品開発を敏速に試作できるから、患者其々固有の状態に合わせる治療方法として最適である。また、金属製人工関節の表面粗が機械加工の限界を超えたRa0,1μm以上に磨くことができ、理想の骨補強体具が得られる。また、不活性ガス又は液体又は気液混合体を満たすべく搭載した加工槽内で骨補強体具を溶接ビートで積層するから、酸化作用による劣化を受けず高品質な骨補強体具が得られる。