(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環状シール部材は、前記ハウジングに接する固定部と、前記回転部の径方向外側表面に接するリップ部と、前記固定部と前記リップ部とを連結する環状連結部とを備える請求項1から3のいずれか1項に記載のシール機構。
前記複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材の距離は、前記シャフトが直線運動可能な軸方向のストロークよりも大きい、請求項7に記載のシール機構。
前記複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材の一方に潤滑剤を供給する貯留部を備え、前記貯留部から軸方向に隣合う環状シール部材の他方までの距離は、前記シャフトが直線運動可能な軸方向のストロークよりも大きい、請求項7に記載のシール機構。
前記複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材の間にある空間に接続され、排気又は吸気のための流路を備える、請求項1から9のいずれか1項に記載のシール機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術は、シール溝内に接触式シールであるOリングが収容されていることで、真空チャンバなどのプロセス室内と外部環境とを隔離させつつ、シャフトを回転させるものである。しかし、Oリングは、密封性を高めるものの、強制的に変形させてシャフトに接触させるため、Oリング又はシャフトの変形又は摩耗を生じる可能性がある。Oリングは、プロセス室内にあわせると、密封性が足りない場合があり、外部環境にあわせると、プロセス室内の影響で寿命が短くなるなど、材質によって一長一短がある。このため、密封性を高め、かつ部品の経時劣化を抑制して部品交換の頻度の低減された回転機構が望まれている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、密封性を高めるシール機構、シール機構の駆動装置、搬送装置及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るシール機構は、圧力又は気体の異なる2つの空間を隔てるシール機構であって、ハウジングと、前記ハウジングに挿入されるシャフトと、前記シャフトの一部又は前記シャフトに固定された回転部の径方向外側表面に接して、隙間を密封する複数の環状シール部材と、を含み、前記複数の環状シール部材は、それぞれ異なる材質の材料を含み、前記シャフトの中心軸と平行な軸方向の異なる位置に配置されることを特徴とする。
【0007】
このシール機構は、複数の環状シール部材のそれぞれが、シャフトの軸方向の異なる位置に応じて、適正な密封性を発揮でき、摩耗などの劣化の促進を抑制することができる。
【0008】
本発明の望ましい態様として、前記圧力の異なる2つの空間のうち高圧側空間寄りに位置する環状シール部材は、シール性能が高い材質の材料を含み、低圧側空間寄りに位置する環状シール部材は、耐食性の高い材質の材料を含むことが好ましい。この構造により、高圧側空間寄りに位置する環状シール部材には、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響が抑制され、ガスなどによる劣化が抑制される。低圧側空間寄りに位置する環状シール部材には、高圧側空間の圧力が他の環状シール部材により減じられているので、わずかな圧力をうけるにとどまる。そして、複数の環状シール部材のそれぞれは、シャフトの軸方向の異なる位置に応じて、適正な密封性を発揮でき、摩耗などの劣化の促進を抑制することができる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記複数の環状シール部材は、硬さが異なる材料を含み、前記圧力の異なる2つの空間のうち高圧側空間寄りに位置する環状シール部材は、低圧側空間寄りに位置する環状シール部材よりも硬い材料を含むことが好ましい。これにより、高圧側空間寄りに位置する環状シール部材には、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響が抑制され、ガスなどによる劣化が抑制される。低圧側空間寄りに位置する環状シール部材には、高圧側空間の圧力が他の環状シール部材により減じられているので、わずかな圧力をうけるにとどまる。これにより、複数の環状シール部材のそれぞれは、シャフトの軸方向の異なる位置に応じて、適正な密封性を発揮でき、摩耗などの劣化の促進を抑制することができる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記環状シール部材は、前記ハウジングに接する固定部と、前記回転部の径方向外側表面に接するリップ部と、前記固定部と前記リップ部とを連結する環状連結部とを備えることが好ましい。このシール機構は、環状シール部材が回転部に対して接触する接触圧を高めることができるため、高い封止性を実現することができる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記リップ部の押圧力を回転部側へ付勢する付勢部材をさらに備え、前記付勢部材は、前記リップ部と、前記環状連結部と、前記固定部とで囲む空間に備えられていることが好ましい。この構造により、シール機構は、密封性を高めることができる。
【0012】
本発明の望ましい態様として、前記シャフトは、回転可能に支持されていることが好ましい。これにより、シール機構は、回転運動を圧力又は気体の異なる2つの空間の間で伝達することができる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記シャフトは、前記ハウジングとの相対位置が軸方向に変化するように直線運動可能に支持されていることが好ましい。これにより、シール機構は、直線運動を圧力又は気体の異なる2つの空間の間で伝達することができる。
【0014】
本発明の望ましい態様として、前記複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材の距離は、前記シャフトが直線運動可能な軸方向のストロークよりも大きいことが好ましい。この構造により、複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材に異なる潤滑剤を使用することができる。その結果、環状シール部材の寿命を伸ばすことができる。
【0015】
本発明の望ましい態様として、前記複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材の一方に潤滑剤を供給する貯留部を備え、前記貯留部から軸方向に隣合う環状シール部材の他方までの距離は、前記シャフトが直線運動可能な軸方向のストロークよりも大きいことが好ましい。この構造により、複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材に異なる潤滑剤を使用することができる。その結果、環状シール部材の寿命を伸ばすことができる。
【0016】
本発明の望ましい態様として、前記複数の環状シール部材のうち、軸方向に隣合う環状シール部材の間にある空間に接続され、排気又は吸気のための流路を備えることが好ましい。この構造により、シール機構は、起動時間を短縮することができる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、圧力変動装置を備え、前記圧力変動装置が前記流路の圧力又は気体流量に応じて、前記流路を排気又は吸気することが好ましい。この構造により、シール機構は、起動時間を短縮することができる。
【0018】
本発明の望ましい態様として、圧力変動装置を備え、前記圧力変動装置が、常時前記流路を排気することが好ましい。この構造により、シール機構は、起動時間を短縮することができる。また、この構造により、シール機構は、シール性能を高めることができる。
【0019】
本発明の望ましい態様として、前記複数の環状シール部材のうち全ての環状シール部材の低圧側空間寄りに、潤滑剤を供給する貯留部をそれぞれ備えることが好ましい。この構造により、環状シール部材の寿命を伸ばすことができる。
【0020】
本発明の望ましい態様として、上述したシール機構と、回転運動及び直線運動の少なくとも1つを前記シャフトに加える駆動装置を備える、シール機構の駆動装置であることが好ましい。この構造により、シール機構の駆動装置は、高い封止性を実現することができる。
【0021】
本発明の望ましい態様として、上述したシール機構と、被搬送物を移動させる可動部材を備え、前記シャフトの回転運動及び直線運動の少なくとも1つと、前記可動部材の動きが連動する、搬送装置であることが好ましい。この構造により、搬送装置は、高い封止性を実現することができる。
【0022】
本発明の望ましい態様として、上述したシール機構を備える、製造装置であることが好ましい。この構造により、製造装置は、高い封止性を実現することができ、製造物の品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、密封性を高めるシール機構、シール機構の駆動装置、搬送装置及び製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0026】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る回転機構を備えた製造装置を模式的に示す断面図である。
図2は、実施形態1に係る回転機構を模式的に示す断面図である。
図1及び
図2は、回転機構1の回転中心軸Zrを含み、かつ回転中心軸Zrと平行な平面で回転機構1を切った断面を示している。なお、実施形態1において、軸方向とは、回転中心軸Zrと平行な方向である。
図3は、
図2のA−A矢視図である。
図4は、実施形態1に係る回転機構の隙間の拡大図である。回転機構1は、回転を伝達する機械要素であり、例えば、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境等の特殊環境下で使用される。回転機構1は、半導体製造又は工作機械製造等の製造装置、搬送装置、駆動装置に適用される。ここでは、一例として、回転機構1が、半導体製造のための製造装置において、スピンドルを回転軸として備える回転駆動装置(スピンドルユニット)である場合を説明するが、回転機構1の適用対象はこれに限定されるものではない。
【0027】
図1に示すように、例えば半導体製造に用いられる製造装置100は、回転機構1と、筐体10と、電動機8と、電動機8を制御する制御装置91を含む。回転機構1と、電動機8とは、シール機構の駆動装置6として、電動機8の回転を伝達して、搬送テーブル(可動部材)33を回転させる。製造装置100は、筐体10の内部空間Vを真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境にした上で、内部空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物又は工具)を搬送テーブル(可動部材)33に搭載して移動させる。被搬送物を移動させる場合、電動機8を内部空間Vに設置すると、電動機8の動作により異物が発生する可能性がある。そこで、製造装置100は、内部空間Vに搬送テーブル33を残したまま、電動機8を外部空間Eに設置する。そして、回転機構1は、内部空間Vと外部空間Eを隔てて密封性を高めながら、外部空間Eに設置された電動機8の動力を内部空間Vに伝えるシール機構である。電動機8は、例えば、ダイレクトドライブモータ、ベルトドライブを用いた駆動装置、リニアモータ、サーボモータなどである。制御装置91は、入力回路と、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、記憶装置であるメモリと、出力回路とを含む。メモリに記憶させるプログラムに応じて、電動機8を制御し、内部空間Vにある被搬送物(例えば、半導体基板、工作物又は工具)を搬送テーブル(可動部材)33に搭載して移動させ、製造装置100は、所望の製品を製造することができる。
【0028】
回転機構1は、ハウジング2と、回転部材3と、軸受4とを含む。ハウジング2は、軸受4を収容する部材である。実施形態1において、ハウジング2は、ハウジング本体として、筒状の部材である胴部21と、胴部21の一端部に設けられたハウジングフランジ部22とを有する。そして、ハウジング2は、ハウジングフランジ部22にボルト27で固定される蓋部23と、ハウジング本体の胴部21の内部に配置される、外輪止め部材24及びシール固定用スペーサ25をさらに備えている。実施形態1において、胴部21は筒形状(例えば円筒)の部材であり、一端部から他端部に向かう貫通孔21d、21c、21bを有している。
【0029】
ハウジングフランジ部22は、いずれも板状の鍔部材である。実施形態1において、ハウジングフランジ部22の形状は、平面視が円形であるが、これらの形状は円形に限定されない。ハウジングフランジ部22は、シャフト31の回転中心軸Zrを含み、かつ厚さ方向に貫通する、上述した貫通孔21bを有している。ハウジング2は、ハウジングフランジ部22を筐体10の外部から筐体10の開口部10eを覆うようにあてがい、ハウジングフランジ部22と筐体10の壁面とをボルト(不図示)で締結することで筐体10に固定されている。これにより、ハウジング2は、筐体10の開口部10eを筐体10の外部から塞ぐことができる。ハウジングフランジ部22は、平面視で筐体10と重なり合う部分に環状溝があり、この環状溝にOリング(環状シール)11をはめ込み、ハウジングフランジ部22と筐体10との密封性を向上させている。
【0030】
回転部材3は、シャフト31と、回転部(外周部)32と、搬送テーブル(可動部材)33とを備えている。シャフト31は、回転機構1の出力軸(主軸)であり、一端部がハウジング2に挿入されている。シャフト31の他端部は、カップリング82を介して、電動機8の出力シャフト81に接続されている。搬送テーブル(可動部材)33は、回転部32を介して、シャフト31の一端部に固定されている。
【0031】
搬送テーブル33及び回転部32は、シャフト31とともに回転する。搬送テーブル33は、シャフト31の一端部とは反対側の面に物体が載置される。実施形態1において、搬送テーブル33は、板状の部材であって平面視が円形である。搬送テーブル33は、ハウジング2のハウジングフランジ部22よりも軸方向に突出する回転部32の径方向外側まで張り出している。
【0032】
軸受4は、ハウジング2、実施形態1では、ハウジング2の内部に設置されてシャフト31を回転可能に支持する。軸受4は、軸受41及び軸受42を含み、2重の筒状である軸受スペーサ43を介して、回転中心軸Zrに沿って距離を離して配置されている。これにより、軸受4は、軸受41及び軸受42の複数箇所でシャフト31を支持することで、シャフト31の振れ回りを抑制することができる。実施形態1において、シャフト31は、2個の軸受41、42によってハウジング2に支持されるが、軸受の数は2個に限定されない。
【0033】
図2に示すように、軸受41、42は、外輪41a、42aと、転動体41b、42bと、内輪41c、42cとを含む。内輪41c、42cは、外輪41a、42aの径方向内側に配置される。このように、実施形態1において、軸受41、42は、いずれも転がり軸受である。転動体41b、42bは、外輪41a、42aと内輪41c、42cとの間に配置される。軸受41、42は、ハウジング2の胴部21が有する貫通孔21dの内壁に外輪41a、42aが接している。
【0034】
図2に示すように、外輪41aは、胴部21が有する貫通孔21dの内壁が彫り込まれた位置決め部21aに軸方向の一端が接している。外輪止め部材24の外輪押さえ部24aは、外輪42aの軸方向の一端を位置決め固定する。このため、位置決め部21aと外輪止め部材24とは、軸受41、軸受スペーサ43及び軸受42を軸方向に挟み込み固定する。このような構造により、軸受41、42は、ハウジング2に取り付けられる。実施形態1において、両方の軸受41、42は、いずれも玉軸受であるが、転がり軸受としての軸受41、42の種類は玉軸受に限定されない。また、実施形態1において、軸受41、42は、いずれも転がり軸受であるが、滑り軸受であってもよい。
【0035】
回転部32は、中空の凹部を有する円筒形状であり、径方向外側表面がハウジング2と所定の大きさの隙間55を有して対向する。実施形態1の回転部32は、シャフト31と同軸であるが、回転部32は、シャフト31よりも直径が大きく張り出している。このように、回転部32は、回転部32の径方向外側表面32pがシャフト31の外周31bよりも外形が大きく、回転部32の内部の中空部にシャフト31の一端31cが挿入可能な凹部の内壁32uを備える。このように、回転部32は、シャフト31の一端31cを覆うカバー構造である。回転部32にシャフト31の一端31cが挿入されることで、回転部32の回転中心軸と、シャフト31の回転中心軸Zrとが揃うので、回転中心軸の調整作業が不要になる。このため、実施形態1の回転機構1は、メンテナンス時の部品交換も容易になる。
【0036】
図2に示すように、回転部32は、一端部である搬送テーブル(可動部材)33側から他端部であるシャフト31側に向かって、軸方向に貫通する貫通孔32h1及び貫通孔32h2を備えている。貫通孔32h1は、回転部32の回転中心軸Zrと同軸に開けられている。貫通孔32h2は、回転部32の回転中心軸Zrに対して点対称の位置に複数開けられている。ここで、上述した搬送テーブル(可動部材)33は、一端部から他端部に向かって軸方向に貫通する貫通孔33h1を備えている。貫通孔33h1は、搬送テーブル(可動部材)33の回転中心軸Zrに対して点対称の位置に複数開けられている。一方、シャフト31の一端31cの端面には、ねじ穴31h1及びねじ穴31h2が開けられている。ねじ穴31h1は、シャフト31の回転中心軸Zrと同軸に開けられている。ねじ穴31h2は、シャフト31の回転中心軸Zrに対して点対称の位置に複数開けられている。
【0037】
ボルト34は、回転部32の内部の中空部にシャフト31の一端31cが挿入された状態で、貫通孔32h1を貫通し、ねじ穴31h1と締結して、回転部32とシャフト31とを固定する。そして、ボルト34で回転部32とシャフト31とが固定された状態で、複数のボルト35は、貫通孔33h1及び貫通孔32h2を貫通し、ねじ穴31h2と締結して、回転部32とシャフト31とを固定する。なお、貫通孔32h2の少なくとも1つの内部を雌ねじとして、ボルト34が貫通孔32h2に締結してもよい。
【0038】
上述したように、実施形態1の回転部32は、シャフト31と同軸であるが、回転部32は、シャフト31よりも直径が大きく張り出している。このため、回転部32は、搬送テーブル33の反対側の端面32aの少なくとも一部を内輪42cに当接させ、内輪押さえとすることができる。この構造により、部品点数が削減され、安価な回転機構1を提供できる。内輪41cは、シャフト31が有する外周凹部の位置決め部31aに軸方向の一端が接している。回転部32は、内輪42cの軸方向の一端を位置決め固定するので、位置決め部31aと回転部32とは、軸受41、軸受スペーサ43及び軸受42を軸方向に挟み込み固定する。このような構造により、軸受41、42は、シャフト31に取り付けられる。なお、ボルト34は、回転部32とシャフト31とを固定することで、回転部32が適正な押圧力を内輪42cの軸方向へ加えることができる。
【0039】
回転部32の内部の中空部の内壁32uには、軸方向と平行な平面で環状に凹む環状溝にはめ込まれたOリング(第2環状シール部材)36を備えている。Oリング(第2環状シール部材)36は、貫通孔32h1を介して漏れる気体を抑制し、回転機構1の密封性を高めることができる。
【0040】
シール固定用スペーサ25は、隙間55の大きさを規定するとともに、環状シール部材5Aを固定する。
図3に示すように、シール固定用スペーサ25は、環状の部材である。
図4に示すように、シール固定用スペーサ25は、径方向外周側の一部を軸方向に張り出したスペーサ位置決め部25aと、シール固定凹部25bと、径方向内周部25cと、径方向外周部25dと、径方向内周部25cよりも、回転部32側に突出する環状凸部25eと、軸方向の一端25jと、軸方向の他端25gとを備えている。径方向外周部25dの少なくとも一部が胴部21の貫通孔21bの内壁に接している。シール固定用スペーサ25は、環状シール部材5Aのガイドとして作用するので、環状シール部材5Aが回転部32に対して接触する接触圧を適切な設定値とすることができる。
【0041】
また、ハウジングフランジ部22には、環状溝22aが回転中心軸Zrと同心円状に形成されており、径方向外周部25dの少なくとも一部が環状溝22aの壁面の一部となっている。蓋部23がハウジングフランジ部22にボルト27で固定されると、環状溝22aにはめ込まれたOリング(第3環状シール部材)26が密封性を高め、封止する。また、蓋部23は、シール固定用スペーサ25の軸方向の一端25jに当接する。そして、Oリング(第3環状シール部材)26は、環状シール部材5Aよりも直径が大きい位置に配置される。また、スペーサ位置決め部25aは、上述した外輪止め部材24と胴部21の貫通孔21bの内壁との間に挟まれ固定されている。環状溝22a及びOリング(第3環状シール部材)26は、内部空間Vの真空度合いが低い場合、備える必要はない。
【0042】
図3に示すように、環状シール部材5Aは、回転部32、シール固定用スペーサ25、及びハウジングフランジ部22に固定されるOリング(第3環状シール部材)26、Oリング11と同様に回転中心軸Zrを中心に同心円を描くように配置される。環状シール部材5Bは、環状シール部材5Aと同様である。そして、
図2に示すように、環状シール部材5A、5Bは、軸受4よりも圧力の異なる2つの空間のうち、低圧側の内部空間V寄りに配置されている。この構造により、環状シール部材5A、5Bが、軸受4に用いられている潤滑剤などを内部空間V側に飛散させないようにしている。
【0043】
シール固定用スペーサ28は、隙間55の大きさを規定するとともに、環状シール部材5Bを固定する。
図3に示すシール固定用スペーサ25と同様に、シール固定用スペーサ28は、環状の部材である。
図4に示すように、シール固定用スペーサ28は、シール固定凹部28bと、径方向内周部28cと、径方向外周部28dと、径方向内周部28cよりも、回転部32側に突出する環状凸部28eと、軸方向の一端28jと、軸方向の他端28gとを備えている。径方向外周部28dの少なくとも一部が胴部21の貫通孔21cの内壁に接している。シール固定用スペーサ28は、環状シール部材5Bのガイドとして作用するので、環状シール部材5Bが回転部32に対して接触する接触圧を適切な設定値とすることができる。軸方向の一端28jは、シール固定用スペーサ25の軸方向の他端25gと対向する端面であり、軸方向の他端28gは、外輪止め部材24と対向する端面である。シール固定用スペーサ28は、シール固定用スペーサ25と外輪止め部材24とに挟まれることで固定されている。
【0044】
図4に示すように環状シール部材5A、5Bは、ハウジング2のシール固定用スペーサ25、28の径方向内周部25c、28cに接する固定部52と、回転部32の径方向外側表面32pに接するリップ部51と、固定部52とリップ部51とを連結する環状連結部53と、シールフランジ部54とを備える。この構造により、固定部52、環状連結部53及びリップ部51は、断面形状が略U字形状となっており、固定部52、環状連結部53及びリップ部51が囲む空間は、圧力の異なる2つの空間のうち、高圧側となる外部空間Eに向かって開口している。
【0045】
環状シール部材5A、5Bの材質は、ポリエチレン又はポリテトラフルオロ
エチレンであるとより好ましい。ポリエチレン又はポリテトラフルオロ
エチレンは、環状シール部材5A、5Bの材質として、耐摩耗性、耐薬品性に優れ、回転部32との潤滑に好適である。
【0046】
接触する回転部32の材質は、高炭素クロム軸受鋼鋼材、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼、Siを3.4質量%以上含む析出硬化性ステンレスの高珪素合金のいずれか1つが好ましい。この構造により、環状シール部材5A、5Bの摩耗が抑制され、実施形態1において回転機構1は、密封性を高めることができる。
【0047】
接触する回転部32の材質は、表面硬度を高められる材料を使用して、回転部32の径方向外側表面32pのロックウェル硬さを50HRC以上になるように硬化処理する。硬化処理は、回転部32の径方向外側表面32pにダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)をコーティングすることにより行われる。又は、硬化処理は、回転部32の径方向外側表面32pに硬質クロムメッキすることにより行われる。これにより、回転部32の寿命を伸ばすことができる。例えば、シャフト31のロックウェル硬さが50HRC程度である場合、回転部32の径方向外側表面32pのロックウェル硬さを50HRCより大きくすることができるので、回転部32の径方向外側表面32pは、シャフト31の径方向外側表面よりも硬くすることができる。回転機構1は、シャフト31を別材料とすることで、摩耗抑制のために表面硬さを高められる材料の使用量を抑制することができる。そして、回転部32の径方向外側表面32pは、シャフト31の径方向外側表面よりも硬くすることができる。回転部32とシャフト31とは別体であるので、シャフト31の材料選択の自由度を得ることができ、硬化処理の範囲を限定できることから、回転機構1は、製造コストを下げることができる。
【0048】
環状シール部材5A、5Bは、2つに限られず3つ以上でもよい。複数の環状シール部材5A、5Bは、回転機構1の密封性を高めることができる。環状シール部材5A、5Bが各々の材質が異なることで、耐食性と耐久性とを両立させることができる。
【0049】
例えば、内部空間Vでは、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響により、環状シール部材の材質がより劣化する可能性がある。ところで、環状シール部材5A、5Bのそれぞれは、シャフト31の軸方向の異なる位置に配置され、回転部32の径方向外側表面32pに接している。そこで、回転機構1は、圧力の異なる2つの空間のうち、高圧側(外部空間E側)に位置する環状シール部材5Bは、シール性能が高い材質、例えばポリエチレンなどを使用し、低圧側(内部空間V側)に位置する環状シール部材5Aには、耐食性の高い材料、例えばポリテトラフルオロ
エチレンなどを使用する。これにより、シール性能の高い環状シール部材5Bは、内部空間Vにおける、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響が抑制され、ガスなどによる劣化が抑制される。環状シール部材5Aには、高圧側(外部空間E側)の圧力が環状シール部材5Bにより減じられているので、わずかな圧力をうけるにとどまる。そして、環状シール部材5A、5Bのそれぞれは、シャフト31の軸方向の異なる位置に応じて、適正な密封性を発揮でき、摩耗などの劣化の促進を抑制することができる。
【0050】
図4に示すように、蓋部23がハウジングフランジ部22にボルト27で固定されると、シール固定用スペーサ25は、シール固定凹部25bに挿入されたシールフランジ部54を蓋部23とで挟み込み固定する。これにより、実施形態1の回転機構1は、環状シール部材5Aがシールフランジ部54を備えることにより、回転部32の回転により環状シール部材5Aが共周りする可能性を抑制することができる。蓋部23がハウジングフランジ部22にボルト27で固定されると、シール固定用スペーサ25は、シール固定用スペーサ28を押圧する。シール固定用スペーサ25がシール固定凹部28bに挿入されたシールフランジ部54をシール固定用スペーサ28とで挟み込み固定する。これにより、実施形態1の回転機構1は、環状シール部材5Bがシールフランジ部54を備えることにより、回転部32の回転により環状シール部材5Bが共周りする可能性を抑制することができる。
【0051】
蓋部23は、径方向内径側面23fと径方向外側表面32pとの隙間s1の距離Δd1を適宜設定して真空度を調整することができる。距離Δd1は、例えば、0.001mm以上0.5mm以下が好ましい。同様に、環状凸部25eは、径方向内径側面25fと径方向外側表面32pとの隙間s2の距離Δd2を適宜設定して真空度を調整することができる。距離Δd2は、例えば、0.001mm以上0.5mm以下が好ましい。また、環状凸部28eは、径方向内径側面28fと径方向外側表面32pとの隙間s3の距離Δd3を適宜設定して真空度を調整することができる。距離Δd3は、例えば、0.001mm以上0.5mm以下が好ましい。距離Δd1、距離Δd2及び距離Δd3を小さくする場合、隙間55にグリースなどの潤滑剤を保持しやすくできる。
【0052】
図4に示すように、固定部52、環状連結部53及びリップ部51が囲む空間の内部には、付勢部材56が配置され、リップ部51の押圧力を回転部32側へ付勢することができる。付勢部材56は、例えばステンレス鋼などで、いずれも平板状の板状部56a及び板状部56bを屈曲部56cで折り曲げた、断面視でV字状となる弾性体である。付勢部材56は、板状部56a及び板状部56bの先端同士が広がるように付勢されている。
【0053】
環状シール部材5A、5Bは、リップ部51の弾性変形による圧力に加え、付勢部材56に付加された圧力を受けたリップ部51が回転部32の径方向外側表面32pへ接触する。このため、回転機構1は、リップ部51が回転部32の径方向外側表面32pへ接触する接触圧を高めることができる。さらに、固定部52、環状連結部53及びリップ部51が囲む空間は、圧力の異なる2つの空間のうち、高圧側となる外部空間Eに向かって開口しているので、圧力の異なる2つの空間の圧力差は、リップ部51が回転部32の径方向外側表面32pへ接触する接触圧を高めることができる。これにより、回転機構1は、内部空間Vの真空を高くしても、高い密封性を維持できる。また、リップ部51の内周側先端51aのみが径方向外側表面32pへ接触するだけでなく、環状連結部53に近いリップ部51の内周側基部51dの少なくとも一部も径方向外側表面32pへ接触する。その結果、リップ部51の内周側が面で径方向外側表面32pへ接触するので、密封性を維持できる。
【0054】
リップ部51又はシャフト31が摩耗又は変形を生じても、付勢部材56が接触圧を維持するように作用する。このため、回転機構1は、密封性を高める部品である環状シール部材5A、5B又はシャフト31の交換頻度を低減することができる。
【0055】
以上説明したように、回転機構1は、圧力の異なる2つの内部空間Vと外部空間Eとを隔てることができる。回転機構1は、ハウジング2と、ハウジング2に挿入されるシャフト31と、ハウジング2に備えられ、シャフト31を回転可能に支持する軸受4と、シャフト31の一端部に別体として固定されシャフト31とともに回転し、かつ径方向外側表面32pがハウジング2のシール固定用スペーサ25と所定の大きさの隙間55を有して対向する回転部32と、環状シール部材5A、5Bとを含む。環状シール部材5A、5Bは、それぞれ異なる材質を含み、シャフトの回転中心軸Zrと平行な軸方向の異なる位置に配置される。これらの環状シール部材5A、5Bは、隙間55を密封する。
【0056】
この構造により、高圧側空間寄りに位置する環状シール部材5Bには、内部空間Vにおける、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響が抑制され、ガスなどによる劣化が抑制される。低圧側空間寄りに位置する環状シール部材5Aには、高圧側(外部空間E側)の圧力が環状シール部材5Bにより減じられているので、わずかな圧力をうけるにとどまる。そして、環状シール部材5A、5Bのそれぞれは、シャフト31の軸方向の異なる位置に応じて、適正な密封性を発揮でき、摩耗などの劣化の促進を抑制することができる。
【0057】
実施形態1に係る環状シール部材5A、5Bは、断面円形のいわゆるOリングであってもよいが、上述したように、ハウジング2のシール固定用スペーサ25に接する固定部52と、回転部32の径方向外側表面32pに接するリップ部51と、固定部52とリップ部51とを連結する環状連結部53とを備えることが好ましい。付勢部材56は、リップ部51の押圧力を回転部32側へ付勢する。回転機構1は、環状シール部材5A、5Bが回転部32に対して接触する接触圧を高めることができるため、高い封止性を実現することができる。これにより、回転機構1は、圧力の異なる2つの空間の一方の圧力を低くして、高い真空にすることもできる。そして、リップ部51の摩耗により寸法変化が生じても、付勢部材56がリップ部51を押圧するので、密封性の低下を抑制できる。このため、回転機構1は、密封性を高めることができる。
【0058】
リップ部51と、環状連結部53と、固定部52とで囲む空間は、圧力の異なる2つの内部空間V及び外部空間Eのうち、高圧側の外部空間Eに開口している。この構造により、環状シール部材5A、5Bのリップ部51自体の弾性変形による圧力と、付勢部材56が加える圧力とが相乗して、環状シール部材5A、5Bが回転部32に対して接触する接触圧を高めることができる。
【0059】
付勢部材56は、固定部52と、環状連結部53と、リップ部51とで囲む空間に備えられていることが好ましい。この構造により、リップ部51が回転部32に対して面接触しやすくできる。
【0060】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る回転機構を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態2に係る回転機構1は、回転部32の内部の中空部にシャフト31の一端31cが挿入可能な凹部の内壁32uを備えておらず、中実構造体である。回転部32の一端32tにある凸部32Tは、平面視で円形であり、直径が回転部32の径方向外側表面32pよりも小さく、内輪42cの内周側が囲む空間に挿入されて内輪42cと嵌め合う。回転部32の一端32tは、シャフト31の一端31cに当接している。凸部32Tは、軸方向と平行な平面で環状に凹む環状溝にはめ込まれたOリング(第2環状シール部材)37を備えている。Oリング(第2環状シール部材)37は、貫通孔32h1を介して漏れる気体を抑制し、回転機構1の密封性を高めることができる。なお、環状溝をシャフト31の一端31cに設け、Oリング(第2環状シール部材)37は、シャフト31側に備えられるようにしてもよい。
【0061】
実施形態2に係る回転機構1は、回転部32の回転中心軸と、シャフト31の回転中心軸とが揃うので、回転中心軸Zrの調整作業が不要になる。このため、実施形態2の回転機構1は、メンテナンス時の部品交換も容易になる。
【0062】
図5に示すように、付勢部材56は、例えばステンレス鋼などで、いずれも平板状の板状部56a及び板状部56bを屈曲部56cで折り曲げた、断面視でU字状となる弾性体である。屈曲部56cは、所定の曲率を有するように折り曲げている。そして、付勢部材56は、板状部56a及び板状部56bの先端同士が広がるように付勢されている。
【0063】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係る回転機構を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1又は実施形態2と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。実施形態3に係る回転機構1は、回転部32の内部の中空部にシャフト31の一端31cが挿入可能な凹部の内壁32uを備えておらず、シャフト31と一体であり、シャフト31の一端の一部分である。
【0064】
(実施形態4)
実施形態4に係る回転機構1は、実施形態1から実施形態3の回転機構と同じ機構であるが、環状シール部材5A、5Bの材質が異なる。上述した実施形態1、実施形態2又は実施形態3と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0065】
例えば、内部空間Vでは、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響により、環状シール部材の材質がより劣化する可能性がある。ところで、環状シール部材5A、5Bのそれぞれは、シャフト31の軸方向の異なる位置に配置され、回転部32の径方向外側表面32pに接している。そこで、回転機構1は、圧力の異なる2つの空間のうち、高圧側(外部空間E側)に位置する環状シール部材5Bは、シール性能が高い、低硬度の材質、例えばポリエチレンなどを使用し、低圧側(内部空間V側)に位置する環状シール部材5Aには、耐久性の高い高硬度の材料、例えばポリテトラフルオロ
エチレンなどを使用する。
【0066】
このように、圧力の異なる2つの空間のうち高圧側空間(外部空間E)寄りに位置する環状シール部材5Bは、低圧側空間(内部空間V)寄りに位置する環状シール部材5Aよりも硬い材料が使用されている。これにより、高圧側空間(外部空間E)寄りに位置する環状シール部材5Bには、内部空間Vにおける、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響が抑制され、ガスなどによる劣化が抑制される。低圧側空間(内部空間V)寄りに位置する環状シール部材5Aには、高圧側(外部空間E側)の圧力が環状シール部材5Bにより減じられているので、わずかな圧力をうけるにとどまる。これにより、環状シール部材5A、5Bのそれぞれは、シャフト31の軸方向の異なる位置に応じて、適正な密封性を発揮でき、摩耗などの劣化の促進を抑制することができる。
【0067】
(実施形態5)
図7は、実施形態5に係るシール機構を模式的に示す断面図である。実施形態5に係るシール機構1Aは、実施形態1から実施形態4の回転機構1と同じように、圧力の異なる2つの空間を隔てることができるが、シャフト31が回転に加え、シャフト31の軸方向に直線運動可能である点で異なる。環状シール部材5A、5Bの材質が異なる。上述した実施形態1から実施形態4と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0068】
実施形態5に係るシール機構1Aは、ハウジング2と、回転部材3と、を含む。ハウジング2は、上述した実施形態1に係る回転機構1のように、軸受4を収容しておらず、シャフト31が貫通している。このように、実施形態5に係るシール機構1Aは、上述した回転機構1のように、シャフト31の軸方向の位置が、軸受4などで規制されていない。
実施形態5において、ハウジング2は、ハウジング本体として、シール固定用スペーサ28A、シール固定用スペーサ25A、蓋部23Aを有し、シール固定用スペーサ28A、シール固定用スペーサ25A、蓋部23Aが軸方向に積層されている。実施形態5に係る蓋部23Aは、シール固定用スペーサ25Aにボルトなどの固定部材27Aで固定される。実施形態5に係る蓋部23Aは、実施形態1に係るハウジングフランジ部22と同様に、ボルトなどの固定部材27Bで平面視で筐体10と重なり合う部分が筐体10と固定されている。実施形態5に係る蓋部23Aは、平面視で筐体10と重なり合う部分に環状溝があり、この環状溝にOリング(環状シール)11をはめ込み、蓋部23Aと筐体10との密封性を向上させている。蓋部23Aがシール固定用スペーサ25Aにボルトなどの固定部材27Aで固定されると、環状溝にはめ込まれたOリング(第3環状シール部材)26Aが密封性を高め、封止する。また、蓋部23Aは、シール固定用スペーサ25Aの軸方向の一端に当接する。そして、Oリング(第3環状シール部材)26Aは、環状シール部材5Aよりも直径が大きい位置に配置される。
【0069】
実施形態5に係るシール固定用スペーサ28Aは、ボルトなどの固定部材27Cで平面視でシール固定用スペーサ25Aと重なり合う部分が固定されている。実施形態5に係るシール固定用スペーサ28Aは、平面視でシール固定用スペーサ25Aと重なり合う部分に環状溝があり、この環状溝にOリング(第3環状シール部材)26Bをはめ込み、シール固定用スペーサ25Aとシール固定用スペーサ28Aとの密封性を向上させている。シール固定用スペーサ28Aがシール固定用スペーサ25Aにボルトなどの固定部材27Cで固定されると、環状溝にはめ込まれたOリング26Bが密封性を高め、封止する。また、シール固定用スペーサ28Aは、シール固定用スペーサ25Aの軸方向の他端に当接する。そして、Oリング26Bは、環状シール部材5Bよりも直径が大きい位置に配置される。
【0070】
実施形態5に係るシール機構の駆動装置6は、回転駆動装置8Aと、直動駆動装置8Bと、を備えている。回転駆動装置8Aと、直動駆動装置8Bとは、直動案内機構89で連結されている。
【0071】
回転部材3は、シャフト31と、搬送テーブル(可動部材)33とを備えている。シャフト31は、シール機構1Aの出力軸(主軸)であり、一端部がハウジング2に挿入されている。シャフト31の他端部は、カップリング82を介して、回転駆動装置8Aのモータ部83の出力シャフト81に接続されている。搬送テーブル(可動部材)33は、シャフト31の一端部に固定されている。
【0072】
回転駆動装置8Aは、モータハウジング80内に、モータ部83と、出力シャフト81の回転を検出する検出器84とを備える。モータ部83は、モータハウジング80内に、モータステータ83aと、モータロータ83bとを備えている。
【0073】
モータ部83は、モータロータ83bがモータハウジング80に対して回転中心軸Zrを中心に回転自在となるように、軸受44、45、46を組み合わせた軸受4Aで支持されている。モータハウジング80は、回転中心軸Zrを中心とした中空円筒の筒形状であり、内周側にモータステータ83a及び軸受44、45、46の外輪を固定している。また、軸受44、45、46の内輪は、出力シャフト81の外周に固定されている。軸受4Aは、シャフト31の他端部がカップリング82を介して、回転駆動装置8Aのモータ部83の出力シャフト81に接続されることから、シャフト31も回転自在に支持することができる。
【0074】
モータステータ83aは、絶縁性のインシュレータを介して、励磁コイルが巻き付けられている。モータステータ83aは、電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板を、接着、ボス、カシメなどの手段により積層して製造されている円筒状の筒体である。励磁コイルは、線状の電線であり、制御装置91の制御により電力供給を受けて、モータステータ83aを励磁して回転磁界を生じさせることができる。モータステータ83aは、モータ部83のいわゆる固定子である。
【0075】
モータロータ83bは、回転中心軸Zrを中心としたコア材料の外周側にマグネットを固定している。モータロータ83bは、マグネットがモータロータ83bの径方向外側の外周表面に沿って貼り付けられ、円周方向に複数設けられている。マグネットは、永久磁石であり、S極及びN極がモータロータ83bの円周方向に交互に等間隔で配置される。このようなモータロータ83bは、PM(Permanent Magnet)型の回転子とよばれる。モータロータ83bは、励磁コイルがモータステータコアのティースに励磁した回転磁界に応じて回転する。
【0076】
検出器84は、例えばレゾルバ装置であり、軸方向(回転中心と平行な方向)のモータ部83の端部に位置している。検出器84は、レゾルバステータ84aと、レゾルバロータ84bと、を備えている。レゾルバロータ84bは、モータロータ83bの一端に固定されている。レゾルバステータ84aは、モータハウジング80に固定されている。検出器84は、モータロータ83bの回転に連動するレゾルバロータ84bの回転に応じて、レゾルバステータ84aから検出信号を出力することができる。レゾルバステータ84aからの検出信号は、制御装置91へ入力され、制御装置91は、出力シャフト81の回転を検出することができる。検出器84は、例えばレゾルバ装置に限られず、他の磁気センサ又は回転検出センサであってもよい。
【0077】
直動駆動装置8Bは、駆動モータ90と、ねじ軸85と、連結部86と、支持部材87と、位置決め部88と、直動案内機構89とを備える。駆動モータ90は、電動機8と同様の電動機である。直動駆動装置8Bは、シャフト31の軸方向と平行な直線運動の移動自由度を与える直動駆動装置であれば、この構成に限られない。
【0078】
駆動モータ90は、支持部材87により、筐体10との相対的な基準位置が固定されている。ねじ軸85と、連結部86とは、ボールねじ機構であり、駆動モータ90が伝達されたねじ軸85の回転を直線運動に変換し、連結部86をねじ軸85の延びる方向(ねじ軸85の軸方向)と平行なMZ方向に移動させる。連結部86は、位置決め部88と連結しており、位置決め部88の位置は、連結部86の直線運動に応じて直動案内機構89の案内に沿って定められた位置に連動する。位置決め部88は、上面に回転駆動装置8Aを搭載するテーブルである。このため、直動駆動装置8Bは、シャフト31の軸方向に沿って、回転駆動装置8Aごと、シャフト31を直線上に移動(直線運動)させることができる。
【0079】
実施形態5に係る制御装置91は、回転駆動装置8Aのモータ部83及び直動駆動装置8Bの駆動モータ90を制御して、シャフト31に回転運動及び直線運動の少なくとも1つを与える。このため、実施形態5に係る制御装置91は、搬送テーブル(可動部材)33を回転運動及び直線運動の少なくとも1つを与えるように、回転駆動装置8Aのモータ部83及び直動駆動装置8Bの駆動モータ90を制御することができる。
【0080】
実施形態5に係る環状シール部材5A、5Bにおいても、例えば、内部空間Vでは、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響により、環状シール部材の材質がより劣化する可能性がある。ところで、環状シール部材5A、5Bのそれぞれは、シャフト31の軸方向の異なる位置に配置され、
シャフト31の径方向外側表
面に接している。そこで、シール機構1Aは、圧力の異なる2つの空間のうち、高圧側(外部空間E側)に位置する環状シール部材5Bは、シール性能が高い材質、例えばポリエチレンなどを使用し、低圧側(内部空間V側)に位置する環状シール部材5Aには、耐食性の高い材料、例えばポリテトラフルオロ
エチレンなどを使用する。これにより、シール性能の高い環状シール部材5Bは、内部空間Vにおける、真空環境、減圧環境、プロセスガス充填環境の影響が抑制され、ガスなどによる劣化が抑制される。環状シール部材5Aには、高圧側(外部空間E側)の圧力が環状シール部材5Bにより減じられているので、わずかな圧力をうけるにとどまる。そして、環状シール部材5A、5Bのそれぞれは、シャフト31の軸方向の異なる位置に応じて、適正な密封性を発揮でき、摩耗などの劣化の促進を抑制することができる。環状シール部材5A、5Bは、2つに限られず3つ以上でもよい。複数の環状シール部材5A、5Bは、シール機構1Aの密封性を高めることができる。環状シール部材5A、5Bが各々の材質が異なることで、耐食性と耐久性とを両立させることができる。
【0081】
実施形態5に係る環状シール部材5A、5Bには、回転運動及び直線運動の応力が加わる。このため、環状シール部材5A、5Bの強度は、弾性率0.1GPaよりも強度がある方がより好ましい。
【0082】
(実施形態6)
図8は、実施形態6に係るシール機構を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1から実施形態5と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0083】
実施形態6に係る環状シール部材5A、5Bは、軸方向に距離L1分離れるように、配置されている。実施形態6に係るシール機構1Aは、複数の環状シール部材のうち少なくとも1組の隣合う環状シール部材5A、5Bは、それぞれ異なる材質である。異なる材質の環状シール部材5A、5Bには、異なる潤滑剤が適する場合がある。シャフト31は、上述したように軸方向に直線運動すると、異なる材質の環状シール部材5A、5Bに、それぞれ異なる潤滑剤を使用した場合、互いの潤滑剤が付着したシャフト31の外周表面が環状シール部材5A、5Bの両方に接触する可能性がある。
【0084】
実施形態6に係るシール機構1Aは、距離L1がシャフト31の直線運動で許容される最大長さであるストローク以上であることが好ましい。これにより、異なる材質の環状シール部材5A、5Bに、それぞれ異なる潤滑剤を使用することができる。その結果、異なる潤滑剤の混合が抑制され、異なる潤滑剤のそれぞれが潤滑効果を長く維持することができる。
【0085】
環状シール部材5A、環状シール部材5Bとの間の空間の圧力(以下、シール間圧力という。)は、筐体10の内部空間Vと外部空間Eとの中間の圧力となる。または、環状シール部材5Aが耐食性能を優先してシール性能が環状シール部材5Bよりも低い場合、シール間圧力は、筐体10の内部空間Vに近い圧力、例えば低真空などになる。
【0086】
シール間圧力は、筐体10の内部空間V側の状態変化に対し、一次遅れ系の変化をする。このため、上述した実施形態5に係るシール機構1Aは、シール間圧力が安定するまでの時間を起動時間として確保することが望ましい。これに対して、実施形態6に係るシール機構1Aは、環状シール部材5A、環状シール部材5Bとの間の空間に繋がる排気ライン又は吸気ラインとなる流路25Hをハウジング2に備えている。環状シール部材5A、環状シール部材5Bとの間の空間の気体Airが流路25Hを通じて排気又は吸気されることで、シール間圧力が一定となる。その結果、実施形態6に係るシール機構1Aは、起動時間を短縮することができる。
【0087】
実施形態6に係るシール機構1Aは、圧力変動装置92としてのポンプと、流路25H内の圧力又は気体流量を測定する測定器93とをさらに備えていてもよい。制御装置91は、測定した流路25H内の圧力又は気体流量に応じて、圧力変動装置92の気体Airの排出量又は流入量を制御して、シール間圧力を一定とするように圧力制御してもよい。これにより、実施形態6に係るシール機構1Aは、起動時間を短縮することができる。
【0088】
実施形態6に係るシール機構1Aは、制御装置91が測定した流路25H内の圧力又は気体流量の経時変化を記録し、所定の閾値を超えた場合、環状シール部材5A、又は環状シール部材5Bの劣化を警告することができる。その結果、筐体10の内部空間Vに大きな影響を与える前に、環状シール部材5A、又は環状シール部材5Bの交換時期を確認することができる。
【0089】
(実施形態7)
図9は、実施形態7に係るシール機構を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1から実施形態6と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0090】
実施形態7に係るシール機構1Aは、ハウジング2本体として、シール固定用スペーサ28A、シール固定用スペーサ25A、蓋部23Bを有し、シール固定用スペーサ28A、シール固定用スペーサ25A、蓋部23Bが軸方向に積層されている。蓋部23Bは、環状シール部材5Aの内部空間V寄りに円環状の溝gr1を配置し、溝gr1の空間に環状シール部材5Aのための潤滑剤を溜めている。これにより、環状シール部材5Aは、常時溝gr1から潤滑剤が供給される。蓋部23Bの内部空間V側の面から溝gr1までの距離L2は、シャフト31の直線運動で許容される最大長さであるストローク以上であることが好ましい。これにより、実施形態7に係るシール機構1Aは、例えば、内部空間Vが高真空環境の場合、溝gr1からシャフト31の表面に付着した潤滑剤により、真空度の低下(劣化)が発生する可能性を低減できる。ここで、距離L2とするために、実施形態7に係るシール機構1Aは、筐体10の内部空間V側の蓋部23Bの端部が、シャフト31側が円筒状の円筒部を備え、円筒部の外周側に段差がある。距離L2とするための構造は、この段差に限定されないが、蓋部23Bを用いることで実施形態7に係るシール機構1Aは、小型にできる。
【0091】
実施形態7に係るシール機構1Aは、シール固定用スペーサ25Aが、環状シール部材5Bの内部空間V寄りに円環状の溝gr2を配置し、溝gr2の空間に環状シール部材5Bのための潤滑剤を溜めている。これにより、環状シール部材5Bは、常時溝gr2から潤滑剤が供給される。環状シール部材5Aから溝gr2までの距離L3は、シャフト31の直線運動で許容される最大長さであるストローク以上であることが好ましい。これにより、異なる材質の環状シール部材5A、5Bに、それぞれ異なる潤滑剤を使用する場合であっても、異なる潤滑剤の混合が抑制され、異なる潤滑剤のそれぞれが潤滑効果を長く維持することができる。
【0092】
実施形態7に係るシール機構1Aは、潤滑剤の貯留部として溝gr1、gr2を備える。溝gr1、gr2は、溝でなくても穴であってもよく、潤滑剤を貯留できる貯留部であれば、形状は問わない。
【0093】
実施形態7に係るシール機構1Aは、圧力変動装置92としてのポンプが流路25H内を常時排気し続ける。実施形態7に係るシール機構1Aは、排気を行うことで、起動時間を短縮するのみならず、高いシール性能を得ることができる。
【0094】
(実施形態8)
図10は、実施形態8に係るシール機構を模式的に示す断面図である。上述した実施形態1から実施形態7と同じ構成要素には、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0095】
実施形態8に係るシール機構1Aは、回転部材3がシャフト31Aと、外周部31Bとを備える。外周部31Bは、実施形態1の回転部32と同様に、中空の凹部を有する円筒形状であり、径方向外側表面がハウジング2と所定の大きさの隙間を有して対向する。実施形態8の外周部31Bは、シャフト31Aと同軸であるが、外周部31Bは、シャフト31Aよりも直径が大きく張り出している。環状シール部材5A、5Bは、外周部31Bの外周の一部に接触することになる。回転部材3のうちシャフト31Aから外周部31Bを分解して取り出すことで、部品交換の作業性を向上することができる。シャフト31Aは、外周部31Bを交換した後、シール機構1Aに戻して使用することができるので、シャフト31Aを長寿命とし、コストを低減することができる。
【0096】
以上、実施形態1から実施形態8を説明したが、前述した内容により限定されるものではない。また、実施形態1から実施形態8の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。