【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「マイクロ波帯、ミリ波帯の利用拡大のための機器雑音抑制技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント基板やインターポーザなどの配線基板の配線構造は、その用途に合わせて設計されている。このため、ビアの位置を変更することは難しい。従って、すでに設計されている配線基板にメタマテリアルの構造体を導入する場合、ビアのレイアウトを変更せずにメタマテリアルの構造体を構築することが望ましい。しかしビアのレイアウトを変更しない場合、メタマテリアルの構造体に不要なビアが接続し、メタマテリアルの特性が設計からずれる可能性が出てくる。
【0006】
本発明の目的は、すでに設計されている配線基板にメタマテリアルの構造体を導入する場合において、メタマテリアルの構造体に不要なビアが接続し、メタマテリアルの特性が設計からずれることを抑制できる配線基板設計支援装置、配線基板設計方法、プログラム、及び配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、第1導体層、第2導体層、及び前記第1導体層から前記第2導体層まで延伸する複数の第1ビアを有する配線基板を設計する配線基板設計支援装置であって、
前記複数の第1ビアは、一端側が前記第1導体層に位置する第1導体に接続しており、
前記複数の第1ビアの配置を示すビア配置情報を取得するビア配置情報取得手段と、
前記第2導体層に繰り返し配置される複数の第2導体の配置位置を示す第2導体情報を取得する第2導体情報取得手段と、
前記複数の第2導体別に、当該第2導体と重なる前記第1ビアを抽出ビアとして抽出するビア抽出手段と、
前記複数の第2導体別に、前記抽出ビアから予め定められた数の前記第1ビアを選択ビアとして選択するビア選択手段と、
前記複数の第2導体それぞれに、前記ビア選択手段によって選択されなかった前記抽出ビアと平面視で重なる第1開口を導入する開口導入手段と、
を備える配線基板設計支援装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、第1導体層、第2導体層、及び前記第1導体層から前記第2導体層まで延伸する複数の第1ビアを有する配線基板を設計する配線基板設計支援装置であって、
前記複数の第1ビアは、一端側が前記第1導体層に位置する第1導体に接続しており、
前記複数の第1ビアの配置を示すビア配置情報を取得するビア配置情報取得手段と、
前記第2導体層に繰り返し配置される複数の第2導体別に前記第2導体の配置可能領域を示している配置可能領域情報を取得する配置可能領域情報取得手段と、
前記複数の第2導体別に、当該第2導体の前記配置可能領域と重なる前記第1ビアを抽出ビアとして抽出するビア抽出手段と、
前記複数の第2導体別に、前記抽出ビアから予め定められた数の前記第1ビアを選択ビアとして選択するビア選択手段と、
前記第2導体が前記選択ビアに接続するように前記第2導体の配置を定める第2導体配置手段と、
を備える配線基板設計支援装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、第1導体層、第2導体層、及び前記第1導体層から前記第2導体層まで延伸する複数の第1ビアを有する配線基板を設計する配線基板設計方法であって、
前記複数の第1ビアは、一端側が前記第1導体層に位置する第1導体に接続しており、
前記複数の第1ビアの配置を示すビア配置情報を取得し、
前記第2導体層に繰り返し配置される複数の第2導体の配置位置を示す第2導体情報を取得し、
前記複数の第2導体別に、当該第2導体と重なる前記第1ビアを抽出ビアとして抽出し、
前記複数の第2導体別に、前記抽出ビアから予め定められた数の前記第1ビアを選択ビアとして選択し、
前記複数の第2導体それぞれに、前記選択ビアとして選択されなかった前記抽出ビアと平面視で重なる第1開口を導入する、配線基板設計方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、第1導体層、第2導体層、及び前記第1導体層から前記第2導体層まで延伸する複数の第1ビアを有する配線基板を設計する配線基板設計方法であって、
前記複数の第1ビアは、一端側が前記第1導体層に位置する第1導体に接続しており、
前記複数の第1ビアの配置を示すビア配置情報を取得し、
前記第2導体層に繰り返し配置される複数の第2導体別に前記第2導体の配置可能領域を示している第2導体情報を取得し、
前記複数の第2導体別に、当該第2導体の前記配置可能領域と重なる前記第1ビアを抽出ビアとして抽出し、
前記複数の第2導体別に、前記抽出ビアから予め定められた数の前記第1ビアを選択ビアとして選択し、
前記第2導体が前記選択ビアに接続するように前記第2導体の配置を定める配線基板設計方法が提供される。
【0011】
本発明によれば、コンピュータを、第1導体層、第2導体層、及び前記第1導体層から前記第2導体層まで延伸する複数の第1ビアを有する配線基板を設計する配線基板設計装置として機能させるためのプログラムであって、
前記複数の第1ビアは、一端側が前記第1導体層に位置する第1導体に接続しており、
前記コンピュータに、
前記複数の第1ビアの配置を示すビア配置情報を取得する機能と、
前記第2導体層に繰り返し配置される複数の第2導体の配置位置を示す第2導体情報を取得する機能と、
前記複数の第2導体別に、当該第2導体と重なる前記第1ビアを抽出ビアとして抽出する機能と、
前記複数の第2導体別に、前記抽出ビアから予め定められた数の前記第1ビアを選択ビアとして選択する機能と、
前記複数の第2導体それぞれに、前記選択ビアとして選択されなかった前記抽出ビアと平面視で重なる第1開口を導入する機能と、
を実現させるプログラムが提供される。
【0012】
本発明によれば、コンピュータを、第1導体層、第2導体層、及び前記第1導体層から前記第2導体層まで延伸する複数の第1ビアを有する配線基板を設計する配線基板設計装置として機能させるためのプログラムであって、
前記複数の第1ビアは、一端側が前記第1導体層に位置する第1導体に接続しており、
前記コンピュータに、
前記複数の第1ビアの配置を示すビア配置情報を取得する機能と、
前記第2導体層に繰り返し配置される複数の第2導体別に前記第2導体の配置可能領域を示している第2導体情報を取得する機能と、
前記複数の第2導体別に、当該第2導体の前記配置可能領域と重なる前記第1ビアを抽出ビアとして抽出する機能と、
前記複数の第2導体別に、前記抽出ビアから予め定められた数の前記第1ビアを選択ビアとして選択する機能と、
前記第2導体が前記選択ビアに接続するように前記第2導体の配置を定める機能と、
を実現させるプログラムが提供される。
【0013】
本発明によれば、第1導体が設けられている第1導体層と、
平面視で前記第1導体と重なる領域に複数の第2導体が繰り返し設けられている第2導体層と、
一端側が前記第1導体に接続していて他端が前記第2導体層を貫通している複数の第1ビアと、
を備え、
前記複数の第2導体は、それぞれいずれかの前記第1ビアまたは第2ビアを介して前記第1導体に接続しており、
前記複数の第2導体の少なくとも一つは、第1の前記第1ビアと接続しており、かつ第2の前記第1ビアと重なる領域に開口を有している配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、すでに設計されている配線基板にメタマテリアルの構造体を導入する場合において、メタマテリアルの構造体に不要なビアが接続し、メタマテリアルの特性が設計からずれることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子装置の断面図である。この電子装置は配線基板200を備えている。配線基板200は、第1導体層220、第2導体層230、及び複数の第1ビア212を有している。第1導体層220には第1導体222が設けられており、第2導体層230には、複数の第2導体232が繰り返し、例えば周期的に設けられている。複数の第1ビア212は、一端側が第1導体層220に位置する第1導体222に接続しており、他端が第2導体層230を貫通している。複数の第2導体232は、それぞれいずれかの第1ビア212または第2ビア216を介して第1導体222に接続している。そして第2導体232の少なくとも一つ(例えば第2導体232b)は、一端が第1の第1ビア212(例えば第1ビア212b)に接続しており、かつ第2の第1ビア212(例えば第1ビア212c)と重なる領域に第1開口234を有している。
【0019】
配線基板200は、さらに第3導体層240を備えている。第3導体層240は、第1導体層220を基準にしたときに第2導体層230と同一側に位置しており、平面視で第1導体222と重なる領域に第3導体242を有している。複数の第1ビア212は、配線基板200の一面まで延伸している。第3導体242は、複数の第3開口244を有している。複数の第3開口244は、複数の第1ビア212を第3導体242に接触させずに通すため、平面視で複数の第1ビア212と重なる位置に設けられている。本実施形態において第1導体222はグラウンドプレーンであり、第3導体242は電源プレーンである。ただし電源プレーンとグラウンドプレーンは逆であってもよい。
【0020】
このような構成において、第2導体232、第1導体222のうち第2導体232に対向している領域、並びに第2導体232及び第1導体222の双方に接続している第1ビア212又は第2ビア216によって、単位セル500の少なくとも一部が構成されている。そして単位セル500が繰り返し(例えば周期的)に配置されることにより、メタマテリアルとしての構造体が構成される。本図に示す例では、単位セル500は、第2導体232、第1導体222のうち第2導体232に対向している領域、第2導体232及び第1導体222の双方に接続している第1ビア212、並びに第3導体242のうち第2導体232に対向している領域によって構成されており、いわゆるマッシュルーム構造を有している。具体的には、第1導体222が下側のプレーンに相当し、第3導体242が上側のプレーンに相当している。また第2導体232がマッシュルームの頭部に相当しており、第1ビア212がマッシュルームのインダクタンス部分に相当している。
【0021】
ここで「繰り返し」単位セル50を配置する場合、互いに隣り合う単位セル50において、同一のビアの間隔(中心間距離)が、ノイズとして想定している電磁波の波長λの1/2以内となるようにするのが好ましい。また「繰り返し」には、いずれかの単位セル50において構成の一部が欠落している場合も含まれる。また単位セル50が2次元配列を有している場合には、「繰り返し」には単位セル50が部分的に欠落している場合も含まれる。また「周期的」には、一部の単位セル50において構成要素の一部がずれている場合や、一部の単位セル50そのものの配置がずれている場合も含まれる。すなわち厳密な意味での周期性が崩れた場合においても、単位セル50が繰り返し配置されている場合には、メタマテリアルとしての特性を得ることができるため、「周期性」にはある程度の欠陥が許容される。なおこれらの欠陥が生じる要因としては、単位セル50の間に配線やビアを通す場合、既存の配線レイアウトにメタマテリアル構造を追加する場合において既存のビアやパターンによって単位セル50が配置できない場合、製造誤差、及び既存のビアやパターンを単位セルの一部として用いる場合などが考えられる。
【0022】
配線基板200の一面には、電子素子の一例である半導体パッケージ300が実装されている。半導体パッケージ300のグラウンド端子302は、配線基板200の一面に設けられた導体パターン202及び複数の第1ビア212を介して、第1導体222に接続している。また半導体パッケージ300は、後述する電源端子301、導体パターン201、及び電源ビア211を介して、第3導体242に接続している。上記したように第1導体222はグラウンドプレーンであり、第3導体242は電源プレーンである。このため、半導体パッケージ300がノイズ源となって電源プレーンである第3導体242にノイズが入ったり、逆に第3導体242を介して半導体パッケージ300にノイズが伝播する可能性がある。これに対して本実施形態では、単位セル500は、第2導体232、第1導体222のうち第2導体232に対向している領域、第2導体232及び第1導体222の双方に接続している第1ビア212、並びに第3導体242のうち第2導体232に対向している領域によって構成されている。このため、第3導体242を介してノイズが伝播することが抑制される。
【0023】
図2は、
図1に示した電子装置の上面図である。
図1は、
図2のA−A´断面図に相当している。上記したように、配線基板200の一面には半導体パッケージ300が実装されている。半導体パッケージ300は電源端子301、グラウンド端子302、及び信号端子303,304を有している。電源端子301は、導体パターン201を介して電源ビア211の一端に接続している。電源ビア211の他端側は
図1に示した第3導体242に接続している。グラウンド端子302は、導体パターン202を介して第1ビア212の一端に接続している。信号端子303は、配線203a、電子素子(例えば抵抗素子又は容量素子などのアナログ阻止)400、及び配線203bを介して他の第1ビア212の一端に接続している。信号端子304は配線204を介して図示しない信号ビアに接続している。
【0024】
図3は、
図1に示した配線基板200の第3導体層240の平面図である。第3導体層240の第3導体242は電源プレーンであり、配線基板200の一定の領域に渡ってシート状に形成されている。第3導体242には電源ビア211の他端側が接続している。また第3導体242は、信号ビア(図示せず)及び第1ビア212と重なる領域に第3開口244を有している。第3開口244が設けられることにより、信号ビア及び第1ビア212は、第3導体242と短絡することが防止される。
【0025】
図4は、
図1に示した配線基板200の第2導体層230の平面図である。第2導体層230には、複数の第2導体232が格子を構成するように配置されている。本図に示す例において第2導体232は矩形(例えば正方形)を有している。そして第2導体232は、いずれかの第1ビア212と重なっている場合には第1ビア212を介して
図1に示した第1導体222に接続しており、いずれの第1ビア212とも重なっていない場合には第2ビア216を介して第1導体222に接続している。第2ビア216は、第2導体232の中心と重なっている。また第2導体232は、信号ビア(図示せず)及び電源ビア211と重なっている領域に第1開口234を有している。第1開口234が設けられることにより、電源ビア211及び信号ビアは、第2導体232と短絡することが防止される。
【0026】
なお一つの第2導体232は、予め定められた数(本図の例では一つ)の第1ビア212又は第2ビア216に接続すればよい。このため、第2導体232は、予め定められた数より多くの第1ビア212と重なっている場合には、予め定められた数の第1ビア212のみを接続させるために、余分の第1ビア212と重なる領域にも第1開口234を有している。
【0027】
図5は、
図1に示した配線基板200の第1導体層220の平面図である。第1導体層220の第1導体222はグラウンドプレーンであり、配線基板200の一定の領域に渡ってシート状に形成されている。第1導体222は平面視で第3導体242及び複数の第2導体232と重なっている。第1導体222には、第1ビア212及び第2ビア216が接続している。また第1導体222は、信号ビア(図示せず)及び電源ビア211と重なっている領域に開口224を有している。開口224が設けられることにより、電源ビア211及び信号ビアは、第1導体222と短絡することが防止される。
【0028】
図6は、配線基板200の設計を支援する配線基板設計支援装置の機能構成を示すブロック図である。配線基板設計支援装置は、ビア配置情報取得部30、第2導体情報取得部40、ビア抽出部50、ビア選択部60、及び開口導入部70を備えている。ビア配置情報取得部30は、複数の第1ビア212の配置を示すビア配置情報を取得する。第2導体情報取得部40は、第2導体層230に繰り返し配置される複数の第2導体232の配置位置を示す第2導体情報を取得する。ビア抽出部50は、複数の第2導体232別に、当該第2導体232と重なる第1ビア212を抽出ビアとして抽出する。ビア選択部60は、複数の第2導体232別に、抽出ビアから予め定められた数の第1ビア212を選択ビアとして選択する。開口導入部70は、複数の第2導体232それぞれに、ビア選択部60によって選択されなかった抽出ビアと平面視で重なる第1開口234を導入する。
【0029】
また配線基板設計支援装置は、第2導体選択部80及び第2ビア導入部90を有している。第2導体選択部80は、複数の第2導体232のうち抽出ビアが選択されなかった第2導体232、すなわちいずれの第1ビア212も重なっていなかった第2導体232を選択する。第2ビア導入部90は、第2導体選択部80によって選択された第2導体232と第1導体222とを接続する第2ビアを配線基板に導入する処理を行う。
【0030】
また配線基板設計支援装置は、設計情報記憶部10及び第2導体情報記憶部20を有している。設計情報記憶部10は、配線基板200の設計データを記憶している。設計情報記憶部10が記憶している設計データは、ビア配置情報を含んでいる。また設計情報記憶部10が記憶している設計データは、第2ビア導入部90によって、複数の第2導体232、第1開口234、及び第2ビア216が導入された後の設計データに更新される。第2導体情報記憶部20は、配線基板200に導入すべき第2導体232の配置位置を示す第2導体情報を記憶している。
【0031】
なお
図6において、本発明の本質に関わらない部分の構成については省略してある。
図6に示した配線基板設計支援装置の各構成要素は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。配線基板設計支援装置の各構成要素は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶ユニット、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置には様々な変形例があることは、当業者には理解されるところである。そしてプログラムをコンピュータにインストールすることにより、
図6に示した配線基板設計支援装置を構築することができるため、配線基板設計支援装置を容易に構築できる。
【0032】
図7は、
図6に示した配線基板設計支援装置を用いて配線基板200を設計する方法を示すフローチャートである。
図8は、
図7に示す処理を行う前の状態において設計情報記憶部10が記憶している設計データによる配線基板200の構造を示す断面図である。
図9〜
図11は、
図7に示した処理を説明するための配線基板200の断面図である。
【0033】
図8の断面図に示すように、
図7に示す処理を行う前の状態において、設計情報記憶部10が記憶している設計データによる配線基板200は、第1導体222、第3導体242、導体パターン201,202、配線203a,203b,204、第1ビア212、及び第3開口244を備えている。
【0034】
まず配線基板設計支援装置のビア配置情報取得部30は、設計情報記憶部10からビア配置情報を読み出し(
図7のステップS10)、第2導体情報取得部40は、第2導体情報記憶部20から第2導体情報を読み出す(
図7のステップS20)。
【0035】
そしてビア抽出部50は、第2導体情報に基づいて、複数の第2導体232を、配線基板200の第2導体層230に導入する。そして複数の第2導体232別に、当該第2導体232と重なる第1ビア212を抽出ビアとして抽出する(
図7のステップS30及び
図9)。
図9に示す例では、第1ビア212a〜第1ビア212cが、抽出ビアとして抽出される。第2導体232aには一つの第1ビア212aのみが重なっているが、第2導体232bには、2つの第1ビア212b、212cが重なっている。また第2導体232cには、いずれの第1ビア212も重なっていない。
【0036】
そしてビア選択部60は、複数の第2導体232別に、抽出ビアから予め定められた数の第1ビア212を選択ビアとして選択する(
図7のステップS40)。開口導入部70は、複数の第2導体232それぞれに、ビア選択部60によって選択されなかった抽出ビアと平面視で重なる位置に第1開口234を導入する(
図7のステップS50及び
図10)。
図10に示す例では、第1ビア212aが第2導体232aに対する選択ビアとして選択され、第1ビア212bが第2導体232bに対する選択ビアとして選択される。また第1ビア212cは抽出ビアとして抽出されたが選択ビアとしては選択されていない。このため、第2導体232bには、第1ビア212cと平面視で重なる位置に第1開口234が導入される。
【0037】
また第2導体選択部80は、複数の第2導体232のうち抽出ビアが選択されなかった第2導体232を選択する(
図7のステップS60)。そして第2ビア導入部90は、第2導体選択部80によって選択された第2導体232と第1導体とを接続する第2ビア216を配線基板に導入する処理を行う(
図7のステップS70及び
図11)。
図11に示す例では、第2導体232cが第2導体選択部80によって選択される。そして第2導体232cに対して第2ビア216が導入される。第2ビア216が導入される領域は、例えば平面視で半導体パッケージ300と重なる領域である。
【0038】
その後第2ビア導入部90は、設計情報記憶部10が記憶している設計データを、複数の第2導体232、第1開口234、及び第2ビア216が導入された後の設計データに更新する(
図7のステップS80)。
【0039】
図12は、ビア選択部60が選択ビアを選択する処理(
図7のステップS40)の第1例を説明するための模式図である。この例では、ビア選択部60は、抽出ビアのうち基準位置に最も近い一つの第1ビア212を、選択ビアとして選択する。
【0040】
図13は、ビア選択部60が選択ビアを選択する処理(
図7のステップS40)の第2例を説明するための模式図である。この例では、第2導体232の平面形状は多角形、例えば正方形である。そしてビア選択部60は、抽出ビアのうち上記した多角形のいずれかの角からの距離が最も小さい一つの第1ビア212を、選択ビアとして選択する。本図に示す例では、図中上側の第1ビア212から図中右上の角までの距離が最も小さい。このため、図中上側の第1ビア212が選択ビアとして選択される。
【0041】
図14は、ビア選択部60が選択ビアを選択する処理(
図7のステップS40)の第3例を説明するための模式図である。この例では、基準位置は複数ある。そしてビア選択部60は、複数の基準位置それぞれについて、その基準位置から最も近い第1ビア212を選択ビアとして選択する。本図に示す例では、第2導体232は正方形であり、互いに対向する2辺の中心の近くに基準位置が設定されている。そしてこれら2つの基準位置それぞれについて、最も近い第1ビア212が選択ビアとして選択され、2つの基準位置のほぼ中間に位置する第1ビア212の周囲に第1開口234が導入されている。
【0042】
図15は、ビア選択部60が選択ビアを選択する処理(
図7のステップS40)の第4例を説明するための模式図である。この例では、ビア選択部60は複数の第1ビア212を選択ビアとして選択する。具体的には、基準位置は複数、例えば選択ビアの数と同数設定されている。そしてビア選択部60は、抽出ビアそれぞれに対して、複数の基準位置それぞれからの距離の合計値を算出する。そしてこれらの合計値が小さい順に選択ビアを選択する。本図に示す例では、選択ビア及び基準位置はそれぞれ2つである。そして図中最も上に位置する第1ビア212以外の第1ビア212が、選択ビアとして選択されている。
【0043】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、既存の第1ビア212の一部を選択して構造体を構成している。ここで、構造体を構成しない第1ビア212が第2導体232と導通すると、構造体のメタマテリアルとしての特性が設計からずれるため、好ましくない。これに対して本実施形態では、第2導体232のうち構造体を構成しない第1ビア212と重なる領域には、第1開口234が導入される。このためすでに設計されている配線基板にメタマテリアルの構造体を導入する場合において、不要な第1ビア212がメタマテリアルの構造体に接続し、メタマテリアルの特性が設計からずれることを抑制できる。またすでに設計されている配線基板にメタマテリアルの構造体を導入することができるため、過去の配線基板の設計データを有効活用することができる。従って、配線基板200の設計コストを低くすることができる。
【0044】
また本実施形態では、第2ビア導入部90が、いずれの第1ビア212とも重ならない第2導体232に対して第2ビア216を導入している。従って、単位セル500を構成しない第2導体232が生じることを抑制できる。このため、所望の領域に確実に構造体を導入することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図16は、第2の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図であり、第1の実施形態における
図1に相当している。本実施形態に係る電子装置は、以下の点を除いて第1の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。
【0046】
まず、配線基板200の第2導体層230は第3導体層240よりも、配線基板200の一面側に位置している。そして第3導体242には、平面視で第2ビア216と重なる領域に開口246を有している。開口246は、第2ビア導入部90が第2ビア216を導入するときに、第3導体242に導入する。開口246が導入されることにより、第2ビア216が第3導体242と短絡することが防止される。
【0047】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2導体232がシート状の第3導体242より上部に位置しているため、ビア216の長さ、及びビア212のうち第1導体222と第2導体232とを接続している部分の長さが、それぞれ第1の実施形態より長くなる。このため、インダクタンスが大きくなり、構造体が有するバンドギャップ周波数帯を低周波数側にシフトさせることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図17は、第3の実施形態に係る配線基板200の第1導体層220の構成を示す平面図である。本実施形態は、第1導体層220の第1導体222に複数の第2開口225及び複数の配線226が設けられている点を除いて、第1の実施形態と同様である。第2開口225及び配線226は、第1導体222を選択的に除去することにより形成されている。
【0049】
第2開口225は、第1ビア212のうち選択ビアとして選択されたビア、及び第2ビア216それぞれに対して設けられており、これらビアを内側に含むように設けられている。配線226は、一端が第1ビア212又は第2ビア216に接続しており、他端が第1導体222(第2開口225の縁)に接続している。
【0050】
本実施形態では第2ビア導入部90が開口導入部として機能する。すなわち第2ビア導入部90は、第1導体222のうち、選択ビアとして選択された第1ビア212の周囲に位置する部分、及び第2ビア216の周囲に位置する部分を選択的に除去する処理を行うことにより、第2開口225及び配線226を導入する。
【0051】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また配線226が第2ビア216とともにマッシュルーム構造のメタマテリアルのインダクタンス部分として機能する。このため、マッシュルーム構造のメタマテリアルにおけるインダクタンスを大きくすることができる。このインダクタンスが大きくなると、メタマテリアルが有するバンドギャップ周波数帯を低周波側にシフトする。
【0052】
(第4の実施形態)
図18は、第4の実施形態に係る配線基板200の第2導体層230の構成を示す平面図である。本実施形態は、第2導体層230の第2導体232に複数の第2開口235及び複数の配線236が設けられている点を除いて、第1〜第3の実施形態のいずれかと同様である。第2開口235及び配線236は、第2導体232を選択的に除去することにより形成されている。第2開口235及び配線236の配置および形状は、第3の実施形態における第2開口225及び配線226の配置および形状と同様である。
【0053】
本実施形態では第2ビア導入部90が開口導入部として機能する。すなわち第2ビア導入部90は、第2導体232のうち、選択ビアとして選択された第1ビア212の周囲に位置する部分、及び第2ビア216の周囲に位置する部分を選択的に除去する処理を行うことにより、第2開口235及び配線236を導入する。
【0054】
本実施形態によっても、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、電源パターンやグラウンドパターンを構成しない第2導体232に第2開口235及び配線236を導入しているため、電源パターンやグラウンドパターンに第2開口や配線を導入する場合と比較して、電源電位及びグラウンド電位の安定性が高くなる。
【0055】
(第5の実施形態)
図19は、第5の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図であり、第1の実施形態における
図1に相当している。
図20は、
図19に示した電子装置の配線基板200の第2導体層230の平面図である。この電子装置は、第2導体層230に、第2導体232ではなく第2導体233を有している点を除いて、第1の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。
【0056】
本実施形態において、第2導体層230は複数の配置可能領域237に区画されている。配置可能領域237には、第2導体233が一つずつ設けられている。第2導体233は、選択ビアとして選択された第1ビア212、及び第2ビア216それぞれに対して設けられている。第2導体233は配線状の導体であり、一端が第1ビア212又は第2ビア216に接続されており、他端が開放端となっている。第2導体233は第1ビア212又は第2ビア216以外には接続していない。また第1ビア212のうち選択ビアとして選択されていない第1ビア212には、第2導体233が設けられていない。本図に示す例では、単位セル500は、第2導体233、第1導体222のうち第2導体232に対向している領域、第2導体232及び第1導体222の双方に接続している第1ビア212、並びに第3導体242のうち第2導体232に対向している領域によって構成されている。第2導体233は、オープンスタブとして機能する。
【0057】
図21は、
図19における単位セル500の等価回路図である。本図に示すように、第3導体242と第1導体222の間には寄生容量C
Rが形成される。また第3導体242にはインダクタンスL
Rが形成される。また上記したように、第2導体233はオープンスタブとして機能しており、第1導体222のうち第2導体233に対向する部分と第2導体233とが伝送線路250、例えばマイクロストリップ線路を形成している。伝送線路250の他端は開放端になっている。
【0058】
そして構造体を伝播する電磁波の特性は、インダクタンスL
Rに基づいた直列インピーダンスZと、伝送線路250及び寄生容量C
Rに基づいたアドミタンスYによって決まる。より詳細には、伝送線路250の入力アドミタンスは、伝送線路250の線路長(すなわち第2導体233の長さ)および伝送線路250の実効誘電率により決まる。ある周波数における伝送線路250の入力アドミタンスは伝送線路250の線路長および実効誘電率により、容量性もしくは誘導性となる。通常、伝送線路250の実効誘電率は、導波路を構成する誘電体材料により決まってしまう。これに対して伝送線路250の線路長には自由度があり、所望の帯域においてアドミタンスYが誘導性となるように伝送線路250の線路長を設計することが可能である。
【0059】
そして、単位セル500の等価回路図において、伝送線路250の線路長を長くすることにより、バンドギャップが低周波側にシフトする。一般に、単位セル500のサイズを小型化するとバンドギャップ帯域は高周波側にシフトするが、伝送線路250の線路長を長くすることにより、バンドギャップの下限周波数を変えずに単位セル500のサイズを小型化することが可能となる。
【0060】
図22は、
図19に示した配線基板200の設計を支援する配線基板設計支援装置の機能構成を示すブロック図である。この配線基板設計支援装置は、以下の点を除いて、
図6に示した配線基板設計支援装置と同様の構成である。まず、第2導体情報記憶部20の代わりに配置可能領域情報記憶部22を有しており、第2導体情報取得部40の代わりに配置可能領域情報取得部42を有している。また第2導体選択部80の代わりに配置可能領域選択部82を有している。また開口導入部70を有していない。また、第2導体配置部72を有している。
【0061】
配置可能領域情報記憶部22は、配置可能領域情報を記憶している。配置可能領域情報は、第2導体層230に繰り返し配置される複数の第2導体233別に、第2導体233の配置可能領域237の位置及び形状を示している。配置可能領域情報取得部42は、配置可能領域情報記憶部22から配置可能領域情報を読み出す。ビア抽出部50は、複数の第2導体233別に、当該第2導体233の配置可能領域237と重なる第1ビア212を抽出ビアとして抽出する。ビア選択部60は、複数の第2導体233別に、抽出ビアから予め定められた数の第1ビア212を選択ビアとして選択する。そして第2導体配置部72は、第2導体233が、例えば一端において選択ビアとしての第1ビア212に接続するように、第2導体233の配置を定める。
【0062】
また本実施形態において、配置可能領域選択部82は、複数の配置可能領域237のうち抽出ビアが選択されなかった配置可能領域237を選択する。第2ビア導入部90は、配置可能領域選択部82によって選択された配置可能領域237に、第2導体233と第1導体222とを接続するための第2ビア216を導入する。そして第2導体配置部72は、配置可能領域選択部82によって選択された配置可能領域237において、第2導体233が、例えば一端において第2ビア216に接続するように第2導体233の配置を定める。
【0063】
図23は、
図22に示した配線基板設計支援装置を用いて配線基板200を設計する方法を示すフローチャートである。
図22に示す処理を行う前の状態において、設計情報記憶部10が記憶している設計データによる配線基板200は
図8に示した状態にある。
【0064】
まず配線基板設計支援装置のビア配置情報取得部30は、設計情報記憶部10からビア配置情報を読み出し(ステップS12)、配置可能領域情報取得部42は、配置可能領域情報記憶部22から配置可能領域情報を読み出す(ステップS22)。
【0065】
そしてビア抽出部50は、配置可能領域情報に基づいて、複数の配置可能領域237を、配線基板200の第2導体層230に導入する。そして複数の配置可能領域237別に、当該第2導体232と重なる第1ビア212を抽出ビアとして抽出する(ステップS32)。
図19に示す例では、第1ビア212a〜第1ビア212cが、抽出ビアとして抽出される。
【0066】
そしてビア選択部60は、複数の配置可能領域237別に、抽出ビアから予め定められた数(例えば一つ)の第1ビア212を選択ビアとして選択する(ステップS42)。
【0067】
また配置可能領域選択部82は、複数の配置可能領域237のうち抽出ビアが選択されなかった配置可能領域237を選択する(ステップS52)。そして第2ビア導入部90は、配置可能領域選択部82によって選択された配置可能領域237に対して第2ビア216を配線基板に導入する処理を行う(ステップS62)。第2ビア216が導入される領域は、例えば平面視で半導体パッケージ300と重なる領域である。
【0068】
そして第2導体配置部72は、第2導体233の配置が選択ビアとしての第1ビア212に接続するように、第2導体233を導入する。また第2導体配置部72は、配置可能領域選択部82によって選択された配置可能領域237において、第2導体233が、例えば一端において第2ビア216に接続するように第2導体233を導入する(ステップS72)。
【0069】
その後第2導体配置部72は、設計情報記憶部10が記憶している設計データを、複数の第2導体237及び第2ビア216が導入された後の設計データに更新する(ステップS82)。
【0070】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1の実施形態とは異なる構造を有するメタマテリアルを配線基板200に導入することができる。このメタマテリアルは、第2導体層230に島状の第2導体232ではなく配線状の第2導体233を有している。このため、第2導体層230に、第2導体233の隙間を這うように信号線を引き回すことができる。
【0071】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば上記した各実施形態では、配線基板200には半導体パッケージ300などが搭載されたが、配線基板200は半導体チップが搭載されるインターポーザ基板であってもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 第1導体が設けられている第1導体層と、
平面視で前記第1導体と重なる領域に複数の第2導体が繰り返し設けられている第2導体層と、
一端側が前記第1導体に接続していて他端が前記第2導体層を貫通している複数の第1ビアと、
を備え、
前記複数の第2導体は、それぞれいずれかの前記第1ビアまたは第2ビアを介して前記第1導体に接続しており、
前記複数の第2導体の少なくとも一つは、第1の前記第1ビアと接続しており、かつ第2の前記第1ビアと重なる領域に開口を有している配線基板。
2. 第1導体が設けられている第1導体層と、
第2導体層と、
一端側が前記第1導体に接続していて他端が前記第2導体層を貫通している複数の第1ビアと、
前記第2配線層に繰り返し設けられ、一端がいずれかの前記第1ビアに接続しており、かつ当該第1ビア以外には接続していない複数の配線状の第2導体と、
を備え、
前記複数の第1ビアの一部には、前記第2導体が接続していない配線基板。
3. 1.又は2.に記載の配線基板において、
前記第1導体層を基準にしたときに前記第2導体層と同一側に位置する第3導体層を有しており、
前記第3導体層は、平面視で前記第1導体と重なる領域に第3導体を有しており、
前記複数の第1ビアは、前記配線基板の一面まで延伸しており、
前記第3導体は、平面視で前記複数の第1ビアと重なる複数の第3開口を有している配線基板。
4. 3.に記載の配線基板において、
一面に実装された電子素子を備え、
前記電子素子は、前記第1ビアの少なくとも一つに接続している配線基板。