(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ブームを有する作業アタッチメントがベースマシンに装着されて成り、上記ブームは、左右一対のオフセットブームと、この両オフセットブーム間に同ブームの長さ方向に設置されて両オフセットブームに平行運動を行わせるオフセットシリンダによって左右にオフセット動作可能に構成され、かつ、上記オフセットシリンダのヘッド側及びロッド側両油室を油密状態に保持するヘッド側及びロッド側両保持弁を備えた建設機械において、上記両保持弁を、
(i) 上記オフセットブームの外側で、かつ、オフセットブームを水平にした状態での同ブームの上方に、
(ii) 上記オフセットブームの長さ方向に位置ずれするとともに、同ブーム先端側に位置する保持弁が上側、ブーム基端側に位置する保持弁が下側となるように上下方向に位置ずれした状態で
設け、両保持弁に対する油圧配管を、上記両保持弁のブーム長さ方向及び上下方向の位置ずれによって両保持弁まわりに形成される空間を用いて配索するように構成したことを特徴とする建設機械。
上記両保持弁の一端側に、上記オフセットシリンダの油室に接続されるシリンダ接続ポートを設け、上記先端側保持弁は上記シリンダ接続ポートがブーム先端側を向く状態で、上記基端側保持弁は上記シリンダ接続ポートがブーム基端側を向く状態でそれぞれ設置したことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
上記両保持弁における上記シリンダ接続ポートと反対側に、上記ベースマシンに向かう外部配管が接続される外部配管接続ポートを設け、上記基端側保持弁の外部配管は、上記外部配管接続ポートとの接続部分から左右一側方に水平に張り出し、この張り出し端から後方に向かうルートで配索したことを特徴とする請求項2記載の建設機械。
【背景技術】
【0002】
図6〜
図8によって背景技術を説明する。
【0003】
ショベル等の建設機械においては、クローラ式の下部走行体1上に、キャビン2aを備えた上部旋回体2が地面に対して垂直となる軸Xのまわりに旋回自在に搭載されてベースマシンが構成され、このベースマシン(上部旋回体2)の前部に作業アタッチメント3が装着される。
【0004】
作業アタッチメント3は、ブームフットピン4を中心として起伏自在なブーム5と、このブーム5の先端にブームトップピン6まわりに上下回動可能に取付けられたアーム7と、このアーム7の先端にアームトップピン8まわりに上下回動可能に取付けられた作業装置(ショベルではバケット)9を備え、この作業アタッチメント3の起伏及び屈伸動作により掘削、荷積み等の各種作業が行われる。
【0005】
ここで、オフセット式の建設機械では、ブーム5は、上部旋回体2に取付けられたリアブーム5aと、このリアブーム5aの先端に上下方向のオフセット支軸10まわりに左右方向に回動可能に連結されてオフセット動作を行う左右一対のオフセットブーム(「フロントブーム」ともいう)5b,5bと、この両オフセットブーム5b,5bの先端部に上下方向のアッパーブーム支軸11まわりに左右方向に回動可能に取付けられたアッパーブーム5cによって構成され、このブーム5のオフセット動作によりアーム7及びバケット9が左右に平行移動して側溝掘り作業等が行われる。
【0006】
図6〜
図8中、12はブーム5(リアブーム5a)を起伏作動させるブーム起伏シリンダ、13はアーム7を上下回動させるアームシリンダ、14はバケット9を上下回動させるバケットシリンダである。
【0007】
また、オフセットブーム内(両オフセットブーム5b,5b間)にオフセットシリンダ15がブーム長さ方向(前後方向)に設けられ、このオフセットシリンダ15の伸縮動作によって両オフセットブーム5b,5bが平行リンク運動を行う。
【0008】
このオフセット式の建設機械において、オフセットシリンダ15に接続されたシリンダ配管が破断した場合でもオフセットブーム5b,5bが勝手に動くことのないように、同シリンダ15のヘッド側及びロッド側両油室を油密状態に保持する保持弁(ホールディングバルブ)を設けたものが公知である(特許文献1参照)。
【0009】
この公知技術においては、両保持弁を、オフセットブーム内、すなわち、両オフセットブーム5b,5b間においてオフセットシリンダ15の下方または上方に設置している。
【0010】
なお、この明細書における「左」「右」は、キャビン2a内のオペレータから見た左右の方向性をいう。また、「上」「下」は、オフセットブーム5b,5bを水平にした状態での上下の方向性をいう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、ミニショベルのようにオフセットブーム内のスペースが上下、左右ともに狭い小型の建設機械に保持弁を設ける場合等に、上記公知技術をそのまま踏襲すると、オフセット動作時に両保持弁がオフセットブーム5b,5bと干渉するおそれがある。
【0013】
そこで、たとえば
図7中に二点鎖線で示すように、両保持弁16A,16Bをオフセットブーム外で、オフセットシリンダ15に近いブーム上方に設置することが考えられる。
【0014】
ここで、保持弁16A,16Bには、オフセットシリンダ15に接続されるシリンダ接続ポート(符号省略。他のポートも同じ)のほか、パイロットポート、パイロットドレンポート、それにメインポンプに接続されるポンプポートが設けられ、これら各ポートに油圧配管が接続される。
【0015】
すなわち、両保持弁16A,16Bは、弁本体とこれに接続された多数の油圧配管によって構成される。
【0016】
このため、両保持弁16A,16Bを単純にブーム長さ方向に並べて配置(縦列配置)するだけでは、保持弁16A,16Bの配管同士が干渉して設置困難となる。
【0017】
あるいは、干渉を避けるために両保持弁16A,16Bの間隔を大きくとると、周辺構造物との干渉が生じ、あるいは外観上の体裁が悪くなる等の弊害が生じる。
【0018】
そこで本発明は、オフセットシリンダに一対の保持弁を設けることを前提として、両保持弁を、配管を含めた互いの干渉を避けながら、小さいスペースにコンパクトかつ容易に設置することができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、ブームを有する作業アタッチメントがベースマシンに装着されて成り、上記ブームは、左右一対のオフセットブームと、この両オフセットブーム間に同ブームの長さ方向に設置されて両オフセットブームに平行運動を行わせるオフセットシリンダによって左右にオフセット動作可能に構成され、かつ、上記オフセットシリンダのヘッド側及びロッド側両油室を油密状態に保持するヘッド側及びロッド側両保持弁を備えた建設機械において、上記両保持弁を、
(i) 上記オフセットブームの外側で、かつ、オフセットブームを水平にした状態での同ブームの上方に、
(ii) 上記オフセットブームの長さ方向に位置ずれするとともに、同ブーム先端側に位置する保持弁が上側、ブーム基端側に位置する保持弁が下側となるように上下方向に位置ずれした状態で
設け、両保持弁に対する油圧配管を、上記両保持弁のブーム長さ方向及び上下方向の位置ずれによって両保持弁まわりに形成される空間を用いて配索するように構成したものである。
【0020】
この構成によれば、両保持弁をオフセットブームの外側に配置しているため、ミニショベル等の小型建設機械でも、オフセット動作時に、配管を含めた両保持弁とオフセットブームが干渉するおそれがない。
【0021】
しかも、両保持弁を、ブーム長さ方向及び上下方向に位置ずれして設け、両保持弁に対する油圧配管を、上記位置ずれによって両保持弁まわりに形成される空間を用いて配索するように構成したから、
この場合、先端側保持弁が上側となる上下位置ずれ状態であるため、逆に先端側保持弁が下になる位置ずれ状態と比べて、基端側保持弁とシリンダを接続するシリンダ接続配管が、先端側保持弁からベースマシンに向かう外部配管と干渉するおそれがない。
【0022】
従って、上記干渉を避けるために両保持弁を左右方向に大きく位置ずれさせる必要がないため、両保持弁を、オフセットシリンダから左右側方に大きくはみ出さない状態で設置することができる。
【0023】
本発明において、上記両保持弁の一端側に、上記オフセットシリンダの油室に接続されるシリンダ接続ポートを設け、上記先端側保持弁は上記シリンダ接続ポートがブーム先端側を向く状態で、上記基端側保持弁は上記シリンダ接続ポートがブーム基端側を向く状態でそれぞれ設置するのが望ましい(請求項2,3)。
【0024】
この構成によれば、両保持弁をたとえば上記と逆向きで設置した場合と比べて、両保持弁の設置に要するブーム長さ方向のスペースを最小限に縮小することができる。このため、両保持弁がオフセットシリンダから長さ方向に大きく突出するおそれがない。
【0025】
この場合、上記両保持弁における上記シリンダ接続ポートと反対側に、上記ベースマシンに向かう外部配管が接続される外部配管接続ポートを設け、上記基端側保持弁の外部配管は、上記外部配管接続ポートとの接続部分から左右一側方に水平に張り出し、この張り出し端から後方に向かうルートで配索するのが望ましい(請求項3)。
【0026】
こうすれば、両保持弁の外部配管を互いの干渉を避けながら容易に配索できる。
【0027】
さらに本発明においては、上記両保持弁を上方及び左右両側方から覆う保持弁カバーを設けるのが望ましい(請求項4)。
【0028】
こうすれば、ブーム外に保持弁を設けたことの弊害である、両保持弁の他の物との接触による損傷を防止できるとともに、外観上の体裁が良くなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、両保持弁を、配管を含めた互いの干渉を避けながら、小さいスペースにコンパクトかつ容易に設置することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態を
図1〜
図5によって説明する。
【0032】
実施形態において、建設機械とその作業アタッチメントに関する基本構成は
図6〜
図8に示す公知技術と同じであり、この共通部分については
図6〜
図8と同一符号を付し、かつ、適宜各図を引用して説明する。
【0033】
図1は作業アタッチメントの一部であるブーム5の構成を示す。
【0034】
公知技術(
図7)と同様に、オフセット動作の駆動源としてのオフセットシリンダ15がオフセットブーム内、すなわち、両オフセットブーム5b,5b間においてブーム長さ方向(前後方向)に設けられている。
【0035】
また、実施形態においては、このオフセットシリンダ15のヘッド側及びロッド側両油室を油密状態に保つヘッド側及びロッド側両保持弁16A,16Bが、オフセットブーム5b,5bの外側で、同ブーム上方に設けられている。
【0036】
この両保持弁16A,16Bは、図示のようにロッド側保持弁16Bがブーム先端側(前側)に、ヘッド側保持弁16Aがブーム基端側(後側)にそれぞれ位置するようにブーム長さ方向に位置ずれし、かつ、ブーム先端側のロッド側保持弁16Bが上側、ブーム基端側のヘッド側保持弁16Aが下側となるように上下方向に位置ずれした状態で、オフセットシリンダ15の上面に保持弁取付ブラケット(
図2,5参照)17a,17bを介して取付けられている。
【0037】
この両保持弁16A,16Bのブーム長さ方向及び上下方向の位置ずれによって両保持弁まわり、すなわち、ロッド側保持弁16Bの下方であってヘッド側保持弁16Aの後方、及びロッド側保持弁16Bの後方であってヘッド側保持弁16Aの上方にそれぞれ空間S1,S2(
図2のみに符号を付す)が形成され、両保持弁16A,16Bに対する油圧配管を、この空間S1,S2を利用して配索するように構成されている。
【0038】
いいかえれば、保持弁まわりに、配管に必要かつ十分な広さを持った空間S1,S2が形成されるという観点で、両保持弁16A,16Bのブーム長さ方向及び上下方向の位置ずれ量が設定される。
【0039】
従って、上記観点に基づき、両保持弁16A,16Bを、ポートを含めた弁本体が完全に長さ方向及び上下方向に位置ずれした完全位置ずれ状態で設置してもよいし、弁本体の一部同士が長さ方向及び上下方向の一方または双方で重なる程度の位置ずれ状態で設置してもよい。
【0040】
また、両保持弁16A,16Bは、実施形態では、
図3,4に示すようにオフセットシリンダ15の中心線Oに対してそれぞれ左右互いに反対側に少しずつオフセットして設けられているが、シリンダ中心線O、またはシリンダ中心線Oから左または右に少しオフセットした同一直線上に配置してもよい。
【0041】
両保持弁16A,16Bの配管構造を
図2〜
図5によって詳述する。なお、図の複雑化を避けるために、両保持弁16A,16Bの上から見た配管構造を
図3と
図4に分けて示す。
【0042】
両保持弁16A,16Bには、オフセットシリンダ15の油室に接続されるシリンダ接続ポートP1が保持弁長さ方向の一端側に設けられている。
【0043】
ヘッド側保持弁16Aは、
図3に示すようにこのシリンダ接続ポートP1が後向きとなる(ブーム基端側を向く)状態、ロッド側保持弁16Bは、
図4に示すように同ポートP1が前向きとなる(ブーム先端側を向く)状態でそれぞれ設置され、両シリンダ接続ポートP1,P1が、オフセットシリンダ15のヘッド側及びロッド側両油室に設けられた油出入口15a,15bにシリンダ接続配管18,18によって接続される。
【0044】
また、両保持弁16A,16Bの長さ方向の他端側、すなわち、ヘッド側保持弁16Aについては前側、ロッド側保持弁16Bについては後側にそれぞれパイロットポートP2とドレンポートP3が左右に並設され、この両ポートP2,P3にパイロット用及びドレン用の外部配管19,20が接続される。
【0045】
さらに、両保持弁16A,16Bの左右一側面にポンプポートP4が設けられ、このポンプポートP4にポンプ用の外部配管21が接続される。
【0046】
これら外部配管19,20,21は、
図6に示すベースマシン(上部旋回体2)に設置された図示しないポンプ、タンク等の対応機器に向かってブーム5沿いに配索される。
【0047】
ここで、ブーム先端側でかつ上方に位置するロッド側保持弁16Bの外部配管19〜21については、ベースマシンに向かって何の配索障害もないため、
図4に示すように各ポートP2,P3,P4から直接後向きに延ばせばよい。
【0048】
一方、ブーム基端側でかつ下方に位置するヘッド側保持弁16Aの外部配管19〜21のうち、パイロット用及びドレン用の外部配管19,20については、保持弁前端側のパイロット、ドレン両ポートP2,P3に接続されるため、
図3に示すようにポートP2,P3との接続部分から左右一側方に水平に張り出し、この張り出し端から後方に向かうルートで配索されている。
【0049】
また、
図2〜
図5に示すように両保持弁16A,16Bを覆う保持弁カバー22が設けられている。
【0050】
この保持弁カバー22は、両保持弁16A,16Bの一方または双方に取付けられた図示しないカバー取付ブラケットにより、両保持弁16A,16Bの本体と配管接続部分を上方及び左右両側から覆う状態で設けられている。
【0051】
上記構成によれば、次の効果を得ることができる。
【0052】
i. 両保持弁16A,16Bをオフセットブーム5b,5bの外側に配置しているため、ミニショベル等の小型建設機械でも、オフセット動作時に、配管を含めた両保持弁16A,16Bとオフセットブーム5b,5bが干渉するおそれがない。
【0053】
ii. 両保持弁16A,16Bを、ブーム長さ方向及び上下方向に位置ずれして設け、両保持弁16A,16Bに対する油圧配管(外部配管19,20)を、上記位置ずれによって両保持弁まわりに形成される空間S1,S2を用いて配索するように構成したから、両保持弁16A,16B(保持弁本体とそれぞれの配管)を、限られた空間に互いの干渉を避けながらコンパクトかつ容易に設置することができる。
【0054】
iii. この場合、先端側保持弁(ロッド側保持弁)16Bが上側となる上下位置ずれ状態であるため、逆に先端側保持弁16Bが下になる位置ずれ状態と比べて、基端側保持弁(ヘッド側保持弁)16Aとオフセットシリンダ15を接続するシリンダ接続配管18が、先端側保持弁16Bからベースマシンに向かう外部配管19,20,21と干渉するおそれがない。
【0055】
従って、上記干渉を避けるために両保持弁16A,16Bを左右方向に大きく位置ずれさせる必要がないため、両保持弁16A,16Bを、オフセットシリンダ15から左右側方に大きくはみ出さない状態で設置することができる。
【0056】
iv. 両保持弁16A,16Bの長さ方向の一端側に、オフセットシリンダ15の油室に接続されるシリンダ接続ポートP1を設け、先端側保持弁16Bはシリンダ接続ポートP1がブーム先端側を向く状態で、基端側保持弁16Aはシリンダ接続ポートP1がブーム基端側を向く状態でそれぞれ設置したから、両保持弁16A,16Bをたとえば上記と逆向きで設置した場合と比べて、両保持弁16A,16Bの設置に要するブーム長さ方向のスペースを最小限に縮小することができる。このため、両保持弁16A,16Bがオフセットシリンダ15から長さ方向に大きく突出するおそれがない。
【0057】
v. 両保持弁16A,16Bにおけるシリンダ接続ポートP1と反対側に、ベースマシンに向かう外部配管19,20が接続される外部配管接続ポート(パイロットポート及びドレンポート)P2,P3を設け、基端側保持弁16Aの外部配管19,20は、外部配管接続ポートP2,P3との接続部分から左右一側方に水平に張り出し、この張り出し端から後方に向かうルートで配索しているため、両保持弁16A,16Bの外部配管19,20を互いの干渉を避けながら容易に配索できる。
【0058】
vi. 両保持弁16A,16Bを上方及び左右両側方から覆う保持弁カバー22を設けているため、ブーム外に保持弁16A,16Bを設けたことの弊害である、両保持弁16A,16Bの他の物との接触による損傷を防止できるとともに、外観上の体裁が良いものとなる。
【0059】
ところで、上記実施形態では、先端側保持弁(ロッド側保持弁)16Bのシリンダ接続ポートP1をブーム先端側に、基端側保持弁(ヘッド側保持弁)16Aのシリンダ接続ポートP1をブーム基端側にそれぞれ設けたが、この両保持弁16A,16Bのシリンダ接続ポートP1,P1の位置を上記実施形態と反対にする等、必要に応じて適宜変更してもよい。
【0060】
また、両保持弁16A,16Bの外部配管接続ポートは、保持弁の制御の仕方その他に応じて適宜増減してもよい。