(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015740
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】移動体位置測定システム、中央局及びそれらに用いる質問制御方法並びにそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/91 20060101AFI20161013BHJP
G01S 13/76 20060101ALI20161013BHJP
G01S 5/06 20060101ALI20161013BHJP
G08G 5/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
G01S13/91 200
G01S13/76
G01S5/06
G08G5/00 A
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-500075(P2014-500075)
(86)(22)【出願日】2013年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2013000439
(87)【国際公開番号】WO2013121709
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年7月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-30050(P2012-30050)
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】近藤 天平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】北島 正明
【審査官】
荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−209211(JP,A)
【文献】
特開平07−005255(JP,A)
【文献】
特開2011−103549(JP,A)
【文献】
特開2010−286352(JP,A)
【文献】
特開2009−204307(JP,A)
【文献】
特開2006−113049(JP,A)
【文献】
橋田芳男、外2名,“航空管制用二次監視レーダ−SSRモードS”,東芝レビュー,2004年 2月,Vol.59, No.2,p.58-61,URL,http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2004/02/59_02pdf/f04.pdf
【文献】
吉田孝監修,「改訂レーダ技術」,社団法人電子情報通信学会,1997年 3月 3日,初版第2刷,p.227-233
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
G08G 5/00− 5/06
B64D 43/00−47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムであって、
前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を含み、
前記中央局は、前記送信装置が送信するべき質問信号を送信する送信時刻を決定し、前記質問信号を前記送信時刻に基づいてスケジューリングし、質問制御情報として生成し、生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する質問制御情報生成手段と、
複数の前記移動体の状態に基づいてそれぞれの前記移動体に対する優先順位を決定する優先順位決定手段と、を有し、
前記送信装置は、前記質問制御情報を受信する手段と、受信された前記質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信する手段とを有し、
前記質問制御情報生成手段は、前記優先順位に基づいて前記送信装置が送信するべき前記質問信号を送信する前記送信時刻を決定し、
前記優先順位は、前記移動体の状態に対して予め設定された緊急度を用いて前記緊急度が高い順に決定された前記移動体の優先度によって計算され、
前記送信時刻は、前記優先度に基づいてそれぞれの前記移動体に対する前記質問信号の送信順番を決定することにより決定される、
ことを特徴とする移動体位置測定システム。
【請求項2】
前記質問制御情報生成手段は、前記移動体の状態に対して予め定められた少なくとも1つ以上の質問信号起動条件に割り当てられた優先度に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定することを特徴とする請求項1記載の移動体位置測定システム。
【請求項3】
前記質問信号の起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の質問種類と、質問数とを設定することを特徴とする請求項2記載の移動体位置測定システム。
【請求項4】
前記質問信号の起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の緊急度を設定することを特徴とする請求項3記載の移動体位置測定システム。
【請求項5】
前記移動体の将来の予測位置を算出する追尾機能により計算された前記予測位置と前記複数の受信局との位置関係から、前記質問信号の質問種類、質問数、緊急度を決定することを特徴とする請求項4記載の移動体位置測定システム。
【請求項6】
前記中央局は、予め設定された時間枠毎に前記質問制御情報を生成し、その生成した前記質問制御情報を前記送信装置に送信するとともに、同一の時間枠内において前記質問信号が前記送信装置から時分割で送信されるよう前記質問制御情報を生成することを特徴とする請求項5記載の移動体位置測定システム。
【請求項7】
複数の移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる中央局であって、
前記移動体位置測定システムには、前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置が配設されており、
前記送信装置が送信するべき質問信号を送信する送信時刻を決定し、前記質問信号を前記送信時刻に基づいてスケジューリングし、質問制御情報として生成し、生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する質問制御情報生成手段と、
複数の前記移動体の状態に基づいてそれぞれの前記移動体に対する優先順位を決定する優先順位決定手段と、を有し、
前記送信装置が、前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信する場合において、
前記質問制御情報生成手段は、前記優先順位に基づいて前記送信装置が送信するべき前記質問信号を送信する前記送信時刻を決定し、
前記優先順位は、前記移動体の状態に対して予め設定された緊急度を用いて前記緊急度が高い順に決定された前記移動体の優先度によって計算され、
前記送信時刻は、前記優先度に基づいてそれぞれの前記移動体に対する前記質問信号の送信順番を決定することにより決定される、
ことを特徴とする中央局。
【請求項8】
前記質問制御情報生成手段は、前記移動体の状態に対して予め定められた少なくとも1つ以上の質問信号起動条件に割り当てられた優先度に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定することを特徴とする請求項7記載の中央局。
【請求項9】
前記質問信号の起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の質問種類と、質問数とを設定することを特徴とする請求項8記載の中央局。
【請求項10】
前記質問信号の起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の緊急度を設定することを特徴とする請求項9記載の中央局。
【請求項11】
前記移動体の将来の予測位置を算出する追尾機能により計算された前記予測位置と前記複数の受信局との位置関係から、前記質問信号の質問種類、質問数、緊急度を決定することを特徴とする請求項10記載の中央局。
【請求項12】
前記中央局は、予め設定された時間枠毎に前記質問制御情報を生成し、その生成した前記質問制御情報を前記送信装置に送信するとともに、同一の時間枠内において前記質問信号が前記送信装置から時分割で送信されるよう前記質問制御情報を生成することを特徴とする請求項11記載の中央局。
【請求項13】
複数の移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる送信制御方法であって、
前記移動体位置測定システムには、前記応答信号を得るための質問信号を移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置が配設されており、
前記中央局が、前記送信装置が送信するべき質問信号を送信する送信時刻を決定し、前記質問信号を前記送信時刻に基づいてスケジューリングし、質問制御情報として生成し、生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する質問制御情報生成処理とを実行し、
複数の前記移動体の状態に基づいてそれぞれの前記移動体に対する優先順位を決定し、
中央局において、前記送信装置が前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信するよう制御させ、
前記質問制御情報生成処理において、前記優先順位に基づいて前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定し、
前記優先順位は、前記移動体の状態に対して予め設定された緊急度を用いて前記緊急度が高い順に決定された前記移動体の優先度によって計算され、
前記送信時刻は、前記優先度に基づいてそれぞれの前記移動体に対する前記質問信号の送信順番を決定することにより決定される、
ことを特徴とする質問制御方法。
【請求項14】
前記質問制御情報生成処理において、前記移動体の状態に対して予め定められた少なくとも1つ以上の質問信号起動条件に割り当てられた優先度に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定することを特徴とする請求項13記載の質問制御方法。
【請求項15】
前記質問信号の起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の質問種類と、質問数とを設定することを特徴とする請求項14記載の質問制御方法。
【請求項16】
前記質問信号の起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の緊急度を設定することを特徴とする請求項15記載に記載の質問制御方法。
【請求項17】
前記移動体の将来の予測位置を算出する追尾機能により計算された前記予測位置と前記複数の受信局との位置関係から、前記質問信号の質問種類、質問数、緊急度を決定することを特徴とする請求項16記載の質問制御方法。
【請求項18】
前記中央局が、予め設定された時間枠毎に前記質問制御情報を生成し、その生成した前記質問制御情報を前記送信装置に送信するとともに、同一の時間枠内において前記質問信号が前記送信装置から時分割で送信されるよう前記質問制御情報を生成することを特徴とする請求項17記載の質問制御方法。
【請求項19】
複数の移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる中央局内の中央処理装置に実行させるプログラムであって、
前記移動体位置測定システムには、前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を配設されており、
前記送信装置が送信するべき質問信号を送信する送信時刻を決定し、前記質問信号を前記送信時刻に基づいてスケジューリングし、質問制御情報として生成し、生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する質問制御情報生成処理と、
複数の前記移動体の状態に基づいてそれぞれの前記移動体に対する優先順位を決定する優先順位決定処理とを含み、
中央局において、前記送信装置が前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信するよう制御させ、
前記質問制御情報生成処理において、前記優先順位に基づいて前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定し、
前記優先順位は、前記移動体の状態に対して予め設定された緊急度を用いて前記緊急度が高い順に決定された前記移動体の優先度によって計算され、
前記送信時刻は、前記優先度に基づいてそれぞれの前記移動体に対する前記質問信号の送信順番を決定することにより決定される、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体位置測定システム、中央局及びそれらに用いる質問制御方法並びにそのプログラムに関し、特に航空機測定システム(マルチラテレーションシステム)及び当該システムに用いられる送信局の質問制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチラテレーションシステムは、航空機が送信するSSR(SSR:Secondary Surveillance Radar:二次監視レーダ)モードA/C応答、SSRモードS応答、捕捉または拡張スキッタ信号を地上の4局以上の受信局で受信し、それらのデータを通信回線を通じて中央処理部に集め、中央処理部にて各受信局間の受信時刻の差から航空機の幾何学的位置を計測するシステムである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、SSRモードAは航空機の識別情報を取得するモードであり、SSRモードCは気圧高度情報を取得するモードであり、SSRモードSは航空機の固有アドレス情報を取得して個別に質問するためのモードある。また、SSRモードA/Cは全ての航空機に対して共通の質問を行う方式であり、SSRモードSは個別に質問、応答を可能としている方式である。
【0004】
マルチラテレーションシステムには、送信局あるいは送受信局を具備する場合もある。この送信局あるいは送受信局では、SSR装置が行うSSRモードA/C質問及びSSRモードS個別質問と同じ質問を送信することができる。これにより、SSRモードA/C応答のみの航空機の探知を可能とすると同時に、送信時刻をシステム自身が認識することができるため、送信から受信までの往復の時間を検出することができ、位置測位の精度向上に利用することができる。
【0005】
完全受動型マルチラテレーションシステムには、空中線として無指向性もしくは広指向性の空中線を使用するため、多数のSSRモードA/C応答を受信してしまい、SSRモードA/C応答が重畳(ガーブル状態)となり、応答信号の解読ができないという問題等が多数発生する。
【0006】
このため、完全受動型マルチラテレーションシステムでは、取得すべき情報(高度情報、モードAコード等)を、後段の航空管制システムに渡すために必要十分な情報や情報量を取得できない可能性が発生する。
【0007】
マルチラテレーションシステムが、目標(航空機)に対してモードS個別質問(送信)を行うためには、初期探知により目標の測位と航空機モードSアドレス(固有アドレス情報)の取得とが必要であり、初期探知した目標から順番にモードS個別質問を実施することになる。
【0008】
尚、既設SSR等への電波干渉等の影響を抑えるために、ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関)が発行している国際民間航空条約・第10附属書(ICAO ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定がある。
【0009】
これは、マルチラテレーションシステムの監視空域に多数の航空機が存在した場合において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑えるために、監視空域に存在する全ての航空機に対して、必要な情報を得るためのSSRモードS個別質問を実施できない、もしくは必要な情報を取得するのに充分な質問をできない可能性がある。このため、航空管制運用において、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性の低下を招く可能性がある。
【0010】
上記のマルチラテレーションを用いた技術としては、空港面探知レーダによる空港面監視を、マルチラテレーションの情報を統合することで補完する技術(例えば、特許文献2参照)、受信局で受信される信号のみでモードA応答か、モードC応答かを判別する技術(例えば、特許文献3参照)、GPS(Global Positioning System)衛星から到来する信号に基づいて複数の受信局同士の高精度の時刻同期を行う技術(例えば、特許文献4参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−300146号公報
【特許文献2】特開2007−333427号公報
【特許文献3】特開2011−112465号公報
【特許文献4】特開2010−230448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した本発明に関連する航空機位置測定システムでは、無指向性もしくは広指向性の空中線を使用するマルチラテレーションシステムの場合、監視空域に存在する航空機に対するSSRモードS個別質問は、初期探知にて検出された早い順番または磁北から方位角の小さい航空機から質問する方式となっている。
【0013】
この場合、監視覆域内に存在する航空機に対して、順番にSSRモードS質問を実施するために、ICAOが発行している国際民間航空条約・第10附属書(ICAO ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定があるため、一定時間内(例えば、1秒間隔)でSSRモードS個別質問ができない航空機が発生する。
【0014】
これにより、航空管制上において、緊急信号を発している、もしくは飛行状況が変化した等の重要度の高い航空機に対して質問を行うことができない可能性があるため、本システムの信頼性及び安全性を低下させる可能性がある。尚、上記の特許文献1〜4に記載の技術では、マルチラテレーションシステムにおいて送信局あるいは送受信局を具備する場合に関する技術ではないため、上記の課題を解決することはできない。
【0015】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、監視対象となっている移動体に対して、管制上において重要度の高い移動体から優先的にSSRモードS個別質問を行うことができ、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性とを向上させることができる移動体位置測定システム、中央局及びそれらに用いる質問制御方法並びにそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による移動体位置測定システムは、移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムであって、
前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を含み、
前記中央局は、前記送信装置が送信するべき質問信号及び送信時刻を決定する質問信号決定手段と、決定された前記質問信号及び前記送信時刻を質問制御情報として生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する手段とを備え、
前記送信装置は、前記質問制御情報を受信する手段と、受信された前記質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信する手段とを備え、
前記質問信号決定手段は、複数の移動体の状態に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定している。
【0017】
本発明による中央局は、移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる中央局であって、
前記移動体位置測定システムに、前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を配設し、
前記送信装置が送信するべき質問信号及び送信時刻を決定する質問信号決定手段と、決定された前記質問信号及び前記送信時刻を質問制御情報として生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する手段とを備え、
前記送信装置が、前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信し、
前記質問信号決定手段は、複数の移動体の状態に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定している。
【0018】
本発明による送信制御方法は、移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる送信制御方法であって、
前記移動体位置測定システムに、前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を配設し、
前記中央局が、前記送信装置が送信するべき質問信号及び送信時刻を決定する質問信号決定処理と、決定された前記質問信号及び前記送信時刻を質問制御情報として生成する生成処理と、前記生成処理により生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する処理とを実行し、
前記送信装置が、前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信し、
前記質問信号決定処理において、複数の移動体の状態に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定している。
【0019】
本発明によるプログラムは、移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる中央局内の中央処理装置に実行させるプログラムであって、
前記移動体位置測定システムに、前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を配設し、
前記送信装置が送信するべき質問信号及び送信時刻を決定する質問信号決定処理と、決定された前記質問信号及び前記送信時刻を質問制御情報として生成する生成処理と、前記生成処理により生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する処理とを含み、
前記中央局において、前記送信装置が前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信するよう制御させ、
前記質問信号決定処理において、複数の移動体の状態に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、監視対象となっている移動体に対して、管制上において重要度の高い移動体から優先的にSSRモードS個別質問を行うことができ、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性とを向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態による航空機測定システム(マルチラテレーションシステム)の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す中央処理部の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施の形態に用いる航空機への質問優先権の決定条件の一例を示す図である。
【
図4】本発明の他の実施の形態における2台の送受信局を配置した場合を示す図である。
【
図5】本発明の他の実施の形態における質問を実行する送受信局の選択方式を示す図である。
【
図6】本発明のさらに別の実施の形態による質問の送信形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明による移動体位置測定システムの概要について説明する。本発明による移動体位置測定システムは、航空機位置測定システム[MLAT(Multilateration):マルチラテレーションシステム]に関するものである。航空機位置測定システムでは、航空機や空港内の車両等の移動体の位置を測定することができるが、以下の説明では、移動体を航空機として説明する。
【0023】
本発明は、航空機測定システム(マルチラテレーションシステム)、当該システムに用いられる送信局の質問制御方式に係り、特にSSR(Secondary Surveillance Radar:二次監視レーダ)装置から質問された航空機からの応答信号、またはマルチラテレーションシステムから質問された航空機からの応答信号、またはSSR拡張スキッタ信号を4局以上の受信局で受信処理を行い、この受信信号を中央局(以下、中央処理部とする)で当該航空機の位置測定を行うマルチラテレーションシステムに関して、監視空域に存在する航空機に対するSSRモードS個別質問に優先順位をつけて質問する質問制御方式を提供するものである。
【0024】
本発明は、上記の問題を解決するために、監視対象となっている航空機に対して、航空管制上において重要度の高い航空機から優先的にSSRモードS個別質問を行う質問制御方式を提供することにより、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性の向上を図ることができる。
【0025】
本発明では、中央処理部において、パラメータによる優先順位条件によりSSRモードS個別質問の優先順を決定する。中央処理部は、質問する航空機の順番を決定し、応答信号を得るための質問信号及び送信時刻を質問制御情報として生成し、その質問制御情報を通信回線経由で送受信局に送る。送受信局は、中央処理部にて決められた順番の送信時刻にSSRモードS個別質問を行うことにより、航空管制上において、緊急信号を発している、もしくは飛行状況が変化した等の重要度の高い航空機に対して質問を行う。
【0026】
これにより、本発明では、システム主導で効率的にSSRモードS個別質問を取得することができるため、マルチラテレーションシステムの信頼性及び安全性を向上させることができる。
【0027】
図1は本発明の実施の形態による航空機測定システム(マルチラテレーションシステム)の構成例を示すブロック図であり、
図2は
図1に示す中央処理部3の構成例を示すブロック図である。
【0028】
図1において、本発明の実施の形態による航空機測定システムは、複数の受信局1−1〜1−4と、送受信局2と、中央処理部3と、通信回線4−1〜4−4,9とからなる。尚、本実施の形態では、受信局と送受信局との組み合わせとしているが、全てを送受信局としたり、送信局と受信局との組み合わせ、送受信局と送信局と受信局との組み合わせ等とすることも考えられる。
【0029】
図2において、中央処理部3は、通信部10と、目標位置測位部11と、目標情報解析部12と、目標情報生成部13と、質問制御情報生成部14と、目標追尾部15と、目標優先順位判定部16とを具備している。尚、中央処理部3内の各部による処理は、図示せぬCPU(中央処理装置)がプログラムを実行することでも実現可能である。
【0030】
受信局1−1〜1−4及び送受信局2は、GPS(Global Positioning System)衛星6からの時刻同期を用いた同期を行う。また、航空機5からのモードS応答/スキッタ信号8−1〜8−5を無指向性もしくは広指向性の空中線にて受信し、信号解読した後に応答信号の到着した時刻のタイムスタンプを付与して、通信回線4−1〜4−4,9を用いて中央処理部3に目標データとして送信する。
【0031】
中央処理部3は、通信部10にて収集された収集データ(目標データ)から目標位置測位部11にて目標測位を行った後、目標情報解析部12にて目標位置測位部11からの測位データ内の情報解析を行う。
【0032】
中央処理部3は、目標情報解析部12からの解析データを入力し、目標情報生成部13にて外部出力用に目標位置測定情報を編集して外部(航空管制システム等)に出力する。目標優先順位判定部16は、目標情報解析部12からの解析データを入力し、予め設定されたパラメータに基づき、質問を行う航空機に対する目標優先順位を決定する。
【0033】
目標追尾部15は、目標位置測位部11からの測位データに基づき追尾処理を行う。質問制御情報生成部14は、目標位置測位部11からの測位データと目標追尾部15からの測位予想値と目標優先順位判定部16からの順位データ[優先権(プライオリティ)情報]とを基にSSRモードS個別質問の順番を決定するとともに、送信タイミングのスケジューリングを行い、送信時刻の決定を行って質問制御情報を生成し、通信部10、通信回線9を経由して送受信局2に、スケジューリングされた質問制御情報を順次送出する。
【0034】
送受信局2は、送信制御情報生成部14からの質問制御情報に基づき、スケジューリング通りにSSRモードS個別質問を行う。次に、この質問に対する応答信号を受信局1−1〜1−4及び送受信局2で受信処理を行い、上記の処理を繰り返し行う。
【0035】
受信局1−1〜1−4及び送受信局2は、GPS衛星6からの時刻同期データを用いて同期を行う。GPS衛星6を用いた時刻同期に関しては、上記の特許文献4に記載の技術があり、この技術を用いることで精度良く同期を取ることが可能である。
【0036】
また、受信局1−1〜1−4及び送受信局2は、航空機5からのモードS応答/スキッタ信号8−1〜8−5を無指向性もしくは広指向性の空中線を経由して受信し、受信処理、信号解読処理を行った後に、応答信号の到着時刻のタイムスタンプを付与して、通信回線4−1〜4−4,9を用いて中央処理部3に目標データとして送信する。
【0037】
中央処理部3は、上記の目標データの受信処理を通信部10で行い、目標位置測位部11にて目標データに付与された到着時刻のタイムスタンプから各受信局の到着時刻差(TDOA:Time Difference Of Arrival)を算出し、航空機の位置測位計算を行う。
【0038】
2つの空中線間のTDOAは、数学的には3次元の双曲面に対応し、航空機の位置はその面上にあることとなる。4台以上の空中線で航空機の信号を検出することができれば、双曲線の交点を計算することで、航空機の位置を3次元で求めることができる。
【0039】
目標位置測位部11にて位置測位した航空機の測位データは、目標情報解析部12と目標追尾部15とに送られる。
【0040】
目標情報解析部12は、測位データ内の情報解析を行い、各種目標情報(モードSアドレス、モードAコード、高度、航空機動態情報等)の解析を行う。
【0041】
目標情報生成部13は、目標情報解析部12からの解析データを入力して、外部出力用に目標位置測定情報を編集して外部(航空管制システム等)に出力するためのメッセージ生成機能と外部(航空管制システム等)と連接するための通信プロトコル機能とを有する。
【0042】
目標優先順位判定部16は、目標情報解析部12からの解析データを入力し、予め設定されたパラメータに基づき、質問を行う航空機に対する目標優先順位を決定する。予め設定されたパラメータの例としては、
図3の「航空機への質問優先権の決定条件」に示している。
【0043】
図3においては、「航空機への質問優先権の決定条件」として、「質問制御条件」(例えば、「ターゲットが緊急コードを発信している」、「ターゲットレポートにN回連続で抜けが発生した」、「モードAコードを取得していない」等)(質問信号起動条件)、「要求質問回数」、「要求質問モード」[UF4(気圧高度情報要求信号)、UF5(識別符号(モードAコード)要求信号)等](質問種類)、「優先度」(緊急度)等を設定している。
【0044】
図3に示すパラメータを使用する場合、目標優先順位判定部16は、自処理の中で処理している全ての航空機の情報と
図3に示す条件とを照らし合わせ、航空機毎に質問制御条件を確認し、合致する条件の優先度値を足し合わせることで、質問を行う航空機に対する目標優先順位を決定する。この場合、優先度値合計の高い航空機ほど優先権(プライオリティ)が高いということになる。この時、質問数や質問モード(問い合わせ内容)についても情報として付加する。
【0045】
目標追尾部15は、目標位置測位部11からの目標データに基づき追尾処理を行う。質問制御情報生成部14は、目標優先順位判定部16で決定した優先権(プライオリティ)情報を基に、優先権(プライオリティ)が高い航空機から順に、SSRモードS個別質問を行うように質問の順番を決定する。
【0046】
質問制御情報生成部14は、優先権(プライオリティ)の値が同じ場合、送受信局2に対して距離が近い航空機から質問することとする。同時に、質問制御情報生成部14は、優先権の値を合計する際に付加した質問数や質問モードの情報から、当該航空機に対して質問数や質問内容も決定する。尚、本実施の形態では、質問制御情報生成部14で質問の順番を決定しているが、質問の順番を目標追尾部15にて決定してもよく、これに限定されない。
【0047】
次に、国際民間航空条約・第10附属書[ICAO(International Civil Aviation Organization:国際民間航空機関) ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3]に記載されているトランスポンダ占有率を2%以下に抑えるようにするために、送信制御情報生成部14は、送信タイミング(送信時刻)のスケジューリングを実施し、それぞれの航空機に対するSSRモードS個別質問の送信時刻の決定を行い、その決定に基づいた質問制御情報を送出する。
【0048】
スケジューリングでは、トランスポンダ占有率が2%を越えてしまう質問数が必要となった場合、優先権の低い航空機に対しての質問を行わない。尚、このような優先権の低い航空機は、送受信局2より質問送信を行わなくとも、SSR装置から質問された航空機からの応答信号またはSSR拡張スキッタ信号を受信局1にて受信し、受信処理を行うことにより航空機位置及び情報が得られているように、
図3に示す優先度のパラメータ設定を調整する必要がある。
【0049】
送信制御情報生成部14は、上記のようにして生成され、スケジューリングされた質問制御情報を、通信回線9経由で送受信局2に順次送出する。
【0050】
送受信局2は、送信制御情報生成部14からの質問制御情報に基づき、スケジューリング通りにSSRモードS個別質問を行う。次に、この質問に対する応答信号を受信局1−1〜1−4及び送受信局2で受信処理を行い、上記の処理を繰り返し行う。
【0051】
マルチラテレーションシステムが、目標(航空機)に対してモードS個別質問(送信)を行うためには、初期探知により目標の測位と航空機モードSアドレスの取得とが必要であり、初期探知した目標から順番にモードS個別質問を実施することになる。尚、既設SSR等への電波干渉等の影響を抑えるために、ICAOが発行している国際民間航空条約・第10附属書(ICAO ANNEX 10 Vol4amendment85 6.6.3)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定がある。
【0052】
これは、マルチラテレーションシステムの監視空域に多数の航空機が存在した場合において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑えるために、監視空域に存在する全ての航空機に対して、必要な情報を得るためのSSRモードS個別質問を実施できない可能性がある。このため、航空管制運用において、目標検出率が低下、もしくは必要な情報が欠如する可能性があり、信頼性と安全性の低下を招く可能性がある。
【0053】
マルチラテレーションシステムにおける送信機能の目的は、次の4つが考えられる。
(1)既設SSR応答を受信した場合(スキッタ機能を具備しない航空機の場合)は、受信データレートが既設SSRのデータレートと同じ1回(受信)/4秒(空港監視レーダの場合)または1回(受信)/10秒(航空路監視レーダの場合)となる(単一のSSR覆域の場合)。一方、当該送信機能により1回(受信)/1秒の受信信号を得ることが可能となり、データレートを向上させることができる。
(2)電波伝搬の状況により検出率の悪い目標の検出率を向上させることができる。
(3)航空機内部に登録されている航空機動態情報(選択高度、気圧補正高度、マック数、指示対気高度、真対地速度、ロール角、真トラック角等)を必要な時に、リアルタイムに取得することが可能となる。
(4)送信することで、測距機能が可能となるため、完全受動型マルチラテレーションシステムの測位に比べて測位精度を向上させることが可能となる。
【0054】
本発明は、上述した問題を解決するために、監視対象となっている航空機に対して、航空管制上において重要度の高い航空機から優先的にSSRモードS個別質問を行う質問制御方式を提供することにより、マルチラテレーションシステムの信頼性と安全性とを向上させることができる。
【0055】
本発明の他の実施の形態として、
図4に示すような送受信局2が2局以上ある場合の送信制御方式について記述する。
【0056】
送受信局が2局以上存在する場合において、
図4に示すように、送信局の送信覆域が重複している覆域内に存在する航空機に対して質問を行う場合、送受信局A及びBの2局から質問をすると、国際民間航空条約・第10附属書(ANNEX 10)において、トランスポンダ占有率を2%以下に抑える規定を満足できないことが想定される。また、同一航空機に対して2局から質問することは、送受信局の停止が考えられる場合や送信対象の航空機が送受信局からの覆域を跨ぐ時等の特殊な場合を除き、不要である。
【0057】
このため、
図5に示す「質問を実行する送受信局の選択方式」に記載したように、送受信局A及びBと覆域内の航空機との位置関係から質問する送受信局を選択する方式がある。
【0058】
この方式では、
図5において、質問を実行する航空機T1〜T3について、航空機T1〜T3各々から送受信局Aまでの距離(y1〜y3)と、航空機T1〜T3各々から送受信局Bまでの距離(x1〜x3)とを比較し、x>yの場合に送受信局Aを選択し、x≦yの場合に送受信局Bを選択する方式である。
【0059】
図5において、航空機T1の場合はx1>y1なので送受信局Aを選択し、航空機T2の場合はx2<y2なので送受信局Bを選択し、航空機T3の場合はx3<y3なので送受信局Bを選択することとなる。
【0060】
この方式により、各送受信局の質問回数を削減することが可能となり、国際民間航空条約・第10附属書(ANNEX 10)において、送信質問率を2%以下に抑える規定を満足させるとともに、本発明によるマルチラテレーションシステムの運用を実現可能とすることができる。
【0061】
さらに、本発明の別の実施の形態としては、パラメータ化した
図3に示す条件内容を変更することにより、システムが設置されるエリア、例えば、航空路や空港近辺、着陸進入に合致した柔軟なシステムの構築が可能となる。つまり、
図3に示す条件内容として、システムが設置されるエリアの項目を追加したり、あるいは優先度を変更することで、柔軟なシステムの構築が可能となる。
【0062】
さらにまた、本発明では、優先権(プライオリティ)の値が同じ場合、送受信局に対して距離が遠い航空機から質問することも可能である。また、システムのパラメータの設定により、送受信局に対して距離が近い航空機から質問することも可能である。
【0063】
図6は本発明のさらに別の実施の形態による質問の送信形態を示す図である。
図6において、例えば予め設定された時間枠(以下、フレームとする)tに対する質問制御情報は、中央処理部から送受信局に送信される。この場合、1フレームは、1000スロットに分割し、各スロット番号を送信時刻として中央処理部から送受信局に対して指定する。
【0064】
フレームtに対する質問制御情報の送信においては、中央処理部が、受信局から目標データを受信して、観測時間(追尾等)を計算し、質問制御情報の生成とその情報の送信とを実行する。送受信局は、中央処理部から指定されたフレーム内のスロット番号(送信時刻)にて質問信号を送信する。
【0065】
ここで、
図3におけるX1[ms]は、設定パラメータであり、質問制御情報生成アルゴリズムの処理時間、送信局へのコマンド送信、送信局でのコマンド処理、マージン(送信局とターゲット処理装置の時刻差等)という項目を用いて算出することができる。
【0066】
本発明は、本発明のさらに別の実施の形態による質問の送信形態を、監視対象となっている航空機に対して、航空管制上において重要度の高い航空機から優先的にSSRモードS個別質問を行う質問制御方式に適用することで、上述した効果を得ることもできる。
【0067】
上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の通信媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。また、記憶媒体には、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD、ROMカートリッジ、バッテリバックアップ付きRAMメモリカートリッジ、フラッシュメモリカートリッジ、不揮発性RAMカートリッジ等が含まれる。また、通信媒体には、電話回線等の有線通信媒体、マイクロ波回線等の無線通信媒体等が含まれる。
【0068】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0069】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下の記載に限定されない。
【0070】
[付記1]
移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる中央局であって、
前記移動体位置測定システムに、前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を配設し、
前記送信装置が送信するべき質問信号及び送信時刻を決定する質問信号決定手段と、決定された前記質問信号及び前記送信時刻を質問制御情報として生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する手段とを有し、
前記送信装置が、前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信し、
前記質問信号決定手段は、複数の移動体の状態に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定し、
前記質問信号決定手段は、前記移動体の状態に対して予め定められた少なくとも1つ以上の質問信号起動条件に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定することを特徴とする中央局。
【0071】
[付記2]
前記質問信号起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の質問種類と、質問数とを設定することを特徴とする付記1に記載の中央局。
【0072】
[付記3]
前記質問信号起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の緊急度を設定することを特徴とする付記2に記載の中央局。
【0073】
[付記4]
前記移動体の将来の予測位置を算出する追尾機能により計算された前記予測位置と前記複数の受信局との位置関係から、前記質問信号の質問種類、質問数、緊急度を決定することを特徴とする付記3に記載の中央局。
【0074】
[付記5]
前記複数の移動体各々に対し、前記移動体の状態が合致しかつ前記質問信号起動条件毎に予め設定された前記緊急度を用いて前記移動体の優先度を計算し、前記移動体各々に対して計算された前記優先度から、前記移動体に対する前記質問信号の送信順番を決定することを特徴とする付記3または付記4に記載の中央局。
【0075】
[付記6]
前記中央局は、予め設定された時間枠毎に前記質問制御情報を生成し、その生成した前記質問制御情報を前記送信装置に送信するとともに、同一の時間枠内において前記質問信号が前記送信装置から時分割で送信されるよう前記質問制御情報を生成することを特徴とする付記5に記載の中央局。
【0076】
[付記7]
移動体からの応答信号を受信する複数の受信局と、前記複数の受信局における前記応答信号の受信時刻を基に前記移動体の位置を測位する中央局とから構成され、前記中央局にて前記複数の受信局の受信時刻から前記移動体の幾何学的位置を計測する移動体位置測定システムに用いる質問制御方法であって、
前記移動体位置測定システムに、前記応答信号を得るための質問信号を前記移動体に送信する少なくとも1以上の送信装置を配設し、
前記中央局が、前記送信装置が送信するべき質問信号及び送信時刻を決定する質問信号決定処理と、決定された前記質問信号及び前記送信時刻を質問制御情報として生成する生成処理と、前記生成処理により生成された前記質問制御情報を前記送信装置に送出する処理とを実行し、
前記送信装置が、前記質問制御情報を受信した際に当該質問制御情報にて指定された前記送信時刻と前記送信装置が有する時刻とが一致した場合に前記質問制御情報にて指定された前記質問信号を送信し、
前記質問信号決定処理において、複数の移動体の状態に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定し、
前記質問信号決定処理において、前記移動体の状態に対して予め定められた少なくとも1つ以上の質問信号起動条件に基づいて、前記送信装置が送信するべき前記質問信号及び前記送信時刻を決定することを特徴とする質問制御方法。
【0077】
[付記8]
前記質問信号起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の質問種類と、質問数とを設定することを特徴とする付記7に記載の質問制御方法。
【0078】
[付記9]
前記質問信号起動条件毎に、前記送信装置が前記移動体に対して送信する前記質問信号の緊急度を設定することを特徴とする付記8に記載の質問制御方法。
【0079】
[付記10]
前記移動体の将来の予測位置を算出する追尾機能により計算された前記予測位置と前記複数の受信局との位置関係から、前記質問信号の質問種類、質問数、緊急度を決定することを特徴とする付記9に記載の質問制御方法。
【0080】
[付記11]
前記複数の移動体各々に対し、前記移動体の状態が合致しかつ前記質問信号起動条件毎に予め設定された前記緊急度を用いて前記移動体の優先度を計算し、前記移動体各々に対して計算された前記優先度から、前記移動体に対する前記質問信号の送信順番を決定することを特徴とする付記9または付記10に記載の質問制御方法。
【0081】
[付記12]
前記中央局が、予め設定された時間枠毎に前記質問制御情報を生成し、その生成した前記質問制御情報を前記送信装置に送信するとともに、同一の時間枠内において前記質問信号が前記送信装置から時分割で送信されるよう前記質問制御情報を生成することを特徴とする付記11に記載の質問制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、MLAT(Multilateration:マルチラテレーション)システムや広域で用いられるWAM[Wide Area MLAT(Multilateration)]システムに適用可能である。
【0083】
この出願は、2012年2月15日に出願された日本出願特願2012−030050を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0084】
1−1〜1−4 受信局
2 送受信局
3 中央処理部
4−1〜4−4,9 通信回線
5 航空機
6 GPS衛星
7 モードS質問/応答信号
8−1〜8−5 モードS応答/スキッタ信号
10 通信部
11 目標位置測位部
12 目標情報解析部
13 目標情報生成部
14 質問制御情報生成部
15 目標追尾部
16 目標優先順位判定部