(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カプラにアッテネーターとしての抵抗素子を組み込む場合、通信信号が流れる主線路と電磁気的に結合する副線路の途中に、抵抗膜によるブリッジ部分を設けることになる。従来、この種のカプラの製造には、まず基板全面に抵抗膜及び導体膜を順次形成し、これらを副線路の形状に順次パターニングした後、抵抗膜によるブリッジ部分のみ導体膜を除去するという方法が採用されている。特許文献3の[0023]段落には、カプラではなく終端抵抗体の例ではあるが、このような製造方法の例が開示されている。
【0008】
なお、特許文献3の
図1及び
図2を見ると、導体膜である入力電極20のうち、連結部分40C(抵抗膜である抵抗膜パターン40の一部)の上面に形成されている部分以外の部分は宙に浮いており、その下には抵抗膜パターン40が存在しないようにも考えられる。しかし、
図1及び
図2に記載の終端抵抗体1が[0023]段落に記載の製造方法に従って製造されたものであることを考慮すると、入力電極20の下面全面にわたって抵抗膜パターン40が形成されていると考えるのが妥当である。
【0009】
しかしながら、上記の製造方法では、導体膜の直下に抵抗膜が残存することになる。この状態で副線路に電流信号が流れた場合、その相当部分が、上記ブリッジ部分以外の部分においても(導体膜ではなく)抵抗膜を流れることになる。抵抗膜では導体膜に比べて電流信号の減衰が大きくなることから、導体膜ではなく抵抗膜を電流信号が流れるということは、電流信号の減衰量が大きくなることを意味している。
【0010】
電流信号が抵抗膜を流れるのは、いわゆる表皮効果によるものである。表皮効果には周波数特性があるため、上記の減衰量は電流信号の周波数によって異なる。近年の移動体通信機器や無線LAN機器では広帯域の信号が用いられるため、このような周波数による減衰量の違いがあると、回路設計に困難が生ずる。したがって、できるだけ表皮効果の影響を抑え、周波数による減衰量の違いを低減することが求められている。
【0011】
ここで、表皮効果の影響を抑えること自体は、導体膜の直下に抵抗膜が残存しないように構成すれば、実現することができる。特許文献3の
図5には、カプラではなく終端抵抗体の例ではあるが、導体膜の直下に抵抗膜が残存しないように構成した例が開示されている。
【0012】
しかしながら、単純に導体膜の直下に抵抗膜が残存しないようにした特許文献3の
図5のような例では、導体膜と抵抗膜とが垂直面のみで接触することになるため、接触抵抗が非常に大きくなってしまうという別の問題が生ずる。そこで、導体膜と抵抗膜の接触抵抗を抑えつつ、周波数による減衰量の違いを低減できるようにすることが求められている。
【0013】
以上のような課題は、カプラに限られるものではなく、複数の配線パターンを含む導体膜と、これら複数の配線パターンの間に配置されるアッテネーターとしての抵抗膜とからなる配線を備える電子部品に広く共通する課題である。
【0014】
したがって、本発明の目的の一つは、導体膜と抵抗膜の接触抵抗を抑えつつ、周波数による減衰量の違いを低減できるカプラ、電子部品、及び電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明によるカプラは、基板と、それぞれ前記基板上に設けられた入力端子及び出力端子と、前記基板上に設けられ、一端が前記入力端子に、他端が前記出力端子にそれぞれ接続された主線路と、それぞれ前記基板上に設けられた導体膜及び抵抗膜を含み、前記導体膜の一部で前記主線路と電磁気的に結合する副線路とを備え、前記導体膜は、第1及び第2の配線パターンを有し、前記抵抗膜は、前記第1の配線パターンと前記基板との間に嵌入するように配置された第1の端部と、前記第2の配線パターンと前記基板との間に嵌入するように配置された第2の端部とを含む第1の抵抗膜パターンを有し、前記第1及び第2の端部はそれぞれ、少なくとも上面及び端面で前記導体膜に接触することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、第1及び第2の端部それぞれの端面が導体膜に接触しているので、導体膜下面の少なくとも一部は抵抗膜によって覆われていないと言える。したがって、導体膜下面の全面が抵抗膜で覆われている従来例に比べ、周波数による減衰量の違いを低減することが可能になる。また、第1及び第2の端部それぞれの少なくとも上面及び端面で導体膜と抵抗膜とが接触するので、端面のみでこれらが接触する従来例に比べ、導体膜と抵抗膜の接触抵抗を抑えることが可能になる。
【0017】
上記カプラにおいて、前記抵抗膜を覆うように形成された絶縁膜をさらに備え、前記絶縁膜は、それぞれ前記第1及び第2の端部を露出させる第1及び第2のスルーホールを有し、前記抵抗膜と前記導体膜とは、前記第1及び第2のスルーホールの内部で互いに接触することとしてもよい。これによれば、第1及び第2のスルーホール以外の部分では抵抗膜が絶縁膜に覆われることになるので、カプラの製造工程において抵抗膜が酸化することを防止できる。したがって、抵抗膜の抵抗値の基板面内の場所によるバラつきを抑えることが可能になる。
【0018】
上記カプラにおいてさらに、前記第1の抵抗膜パターンは、前記第1及び第2のスルーホールそれぞれの内壁と接触する位置から、対応する端面にかけて、徐々に膜厚が薄くなるよう構成されることとしてもよい。これによれば、導体膜と抵抗膜の接触抵抗をさらに抑えることが可能になる。
【0019】
上記各カプラにおいてさらに、前記第1の抵抗膜パターンは第1の方向に延伸する直線状のパターンであり、前記第1の抵抗膜の前記第1の方向と直交する第2の方向の幅は、前記第1及び第2のスルーホールそれぞれの前記第2の方向の幅より小さいこととしてもよい。これによれば、第1及び第2のスルーホールの形成位置が多少ずれたとしても、第1及び第2の端部をスルーホール内に適切に露出させることが可能になる。
【0020】
また、本発明による電子部品は、基板と、それぞれ前記基板上に設けられた導体膜及び抵抗膜を含む配線とを備え、前記導体膜は、第1及び第2の配線パターンを有し、前記抵抗膜は、前記第1の配線パターンと前記基板との間に嵌入するように配置された第1の端部と、前記第2の配線パターンと前記基板との間に嵌入するように配置された第2の端部とを含む第1の抵抗膜パターンを有し、前記第1及び第2の端部はそれぞれ、少なくとも上面及び端面で前記導体膜に接触することを特徴とする。
【0021】
また、本発明による電子部品の製造方法は、第1及び第2の端部を含む第1の抵抗膜パターンを有する抵抗膜を形成する工程と、前記抵抗膜を形成した後、前記第1及び第2の端部の上面を除く前記第1の抵抗膜パターンの上面を覆い、かつ、前記第1及び第2の端部を露出させる絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜を形成した後、それぞれ前記第1及び第2の端部を覆う第1及び第2の配線パターンを有する導体膜を形成する工程と、底面に前記導体膜が露出したコンタクトホールを有する保護膜を成膜する工程と、前記コンタクトホールを介して前記導体膜と接触する端子を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、導体膜下面の少なくとも一部が抵抗膜によって覆われておらず、かつ、第1及び第2の端部それぞれの少なくとも上面及び端面で導体膜と抵抗膜とが接触する電子部品を製造することが可能になる。また、導体膜を形成する前に、抵抗膜を絶縁膜で覆っているので、製造工程における抵抗膜の酸化を抑制することが可能になる。したがって、抵抗膜の抵抗値が基板面内の場所によってばらつくことを防止できる。
【0023】
上記電子部品の製造方法においてさらに、前記絶縁膜を形成する工程は、前記第1及び第2の端部を覆う第2のレジストパターンを形成する工程と、前記第2のレジストパターンを覆う絶縁膜材料を成膜する工程と、前記第2のレジストパターン及び該第2のレジストパターンの上面に形成された前記絶縁膜材料を除去する工程とを有することとしてもよい。これによれば、絶縁膜に、それぞれ第1及び第2の端部を露出させる第1及び第2のスルーホールを形成することが可能になる。
【0024】
上記電子部品の製造方法において、前記絶縁膜を形成した後に逆スパッタを行うことにより、露出した前記第1及び第2の端部の一部分を除去する工程をさらに備えることとしてもよい。これによれば、第1の抵抗膜パターンを、第1及び第2のスルーホールそれぞれの内壁と接触する位置から、対応する端面にかけて、徐々に膜厚が薄くなるよう構成することができる。
【0025】
上記各電子部品の製造方法においてさらに、前記抵抗膜を形成する工程は、抵抗膜材料を成膜する工程と、前記抵抗膜材料を覆う第1のレジストパターンを形成する工程と、前記第1のレジストパターンをマスクとして前記抵抗膜材料をエッチングする工程と、前記第1のレジストパターンを除去する工程とを有することとしてもよい。
【0026】
上記各電子部品の製造方法においてさらに、前記導体膜を形成する工程は、シード電極膜を成膜する工程と、前記シード電極膜を覆う第3のレジストパターンを形成する工程と、メッキにより、前記第3のレジストパターンの間に導体膜材料を成膜する工程と、前記第3のレジストパターンを除去する工程と、前記シード電極膜のうち前記導体膜材料に覆われていない部分を除去する工程とを有することとしてもよい。
【0027】
また、本発明は、次の第1乃至第5の特徴に示すように構成することも可能である。
【0028】
すなわち、第1の特徴に係る本発明は、基板と、それぞれ前記基板上に設けられた入力端子及び出力端子に接続された主線路と、前記主線路と電磁気的な結合をするように前記基板上に配置された配線層と薄膜抵抗パターンを含む副線路とを有し、前記薄膜抵抗パターンの幅は前記配線層の幅より狭く、前記薄膜抵抗パターンの側端部と上面部が前記配線層に覆われ、前記薄膜抵抗パターンの上面部が前記配線層との接続部分を除いて第1の絶縁膜で覆われているカプラである。
【0029】
上記第1の特徴に係るカプラによれば、薄膜抵抗パターンが、主線路及び副線路の下面全面には形成されておらず、副線路の下面の一部分のみで配線層と接触する構造を有しているため、高周波領域における表皮効果によって生ずる高周波ロスの削減効果が得られる。したがって、小型薄膜化された抵抗内蔵型カプラのアッテネーターの周波数特性において、高周波領域における減衰量の変化を小さくすることができる。また、配線層との接続部分以外の薄膜抵抗パターンの上面部が第1の絶縁膜で覆われているので、薄膜抵抗パターンの酸化による劣化を防止する効果とともに放熱効果が得られ、さらに、ESD耐性が向上することから、静電気が入力されることによる薄膜抵抗パターンの劣化の進行を防止する効果も得られる。
【0030】
第2の特徴に係る本発明は、上記第1の特徴に係るカプラにおいて、前記第1の絶縁膜が前記配線層との接続部分を除いた前記薄膜抵抗パターン上面部と側面部に形成されているカプラである。
【0031】
上記第2の特徴に係るカプラによれば、第1の絶縁膜が薄膜抵抗パターンの上面部のみを覆う構造に比べ、薄膜抵抗パターンが酸化などの影響によって劣化することを防止できる。したがって、薄膜抵抗パターンの抵抗値のばらつきを小さくすることが可能になる。
【0032】
第3の特徴に係る本発明は、上記第2の特徴に係るカプラにおいて、前記第1の絶縁膜は前記薄膜抵抗パターンと前記配線層との接続部分に対応する領域にスルーホールを有し、前記スルーホールの開口幅は前記薄膜抵抗パターンの幅Wより大きいカプラである。
【0033】
上記第3の特徴に係るカプラによれば、スルーホールの開口幅が薄膜抵抗パターンの幅Wより大きいことから、スルーホール内に薄膜抵抗パターンの端部の全体を確実に露出させることができる。したがって、薄膜抵抗パターンの抵抗値のばらつきを小さくすることが可能になる。
【0034】
なお、第1の絶縁膜は、上記スルーホールの部分を除き、主線路及び副線路の下面全面を広く覆うように形成されることが好ましい。こうすることで、第1の絶縁膜と、薄膜抵抗パターンの下部に形成されている他の絶縁膜(基板表面の全体を覆う平坦化膜やその上に形成される絶縁膜など)との接触面積が増大することから、これらの密着性が良くなり、第1の絶縁膜の剥がれが抑制される。
【0035】
第4の特徴に係る本発明は、上記第2又は第3の特徴に係るカプラにおいて、前記基板の表面に形成された第2の絶縁膜をさらに有し、前記第1及び第2の絶縁膜がともに前記基板と同じ材質で形成されているカプラである。
【0036】
上記第4の特徴に係るカプラによれば、第1の絶縁膜と第2の絶縁膜の密着性を、より向上することが可能になる。なお、第1及び第2の絶縁膜及び基板の構成材料として、アルミナや窒化シリコンなどの、薄膜抵抗パターンとの反応性の小さい無機材料を用いることで、薄膜抵抗パターンの酸化等による劣化を抑え、基板面内での抵抗値ばらつきを小さく抑えることも可能である。
【0037】
第5の特徴に係る本発明は、基板と、前記基板上に配線層が形成され、少なくとも1つの薄膜抵抗パターンが前記配線層に接続されており、前記薄膜抵抗パターンの幅は前記配線層の幅より狭く、前記薄膜抵抗パターンの側端部と上面部が前記配線層に覆われて接続され、前記薄膜抵抗パターンの上面部が前記配線層との接続部分を除いて絶縁膜で覆われている電子部品である。
【0038】
上記第5の特徴に係る電子部品によれば、薄膜抵抗パターンが、主線路及び副線路の下面全面には形成されておらず、副線路の下面の一部分のみで配線層と接触する構造を有しているため、高周波領域における表皮効果によって生ずる高周波ロスの削減効果が得られる。したがって、周波数特性の高周波領域における減衰量の変化を小さくすることが可能になる。また、配線層との接続部分以外の薄膜抵抗パターンの上面部が絶縁膜で覆われているので、薄膜抵抗パターンの酸化による劣化を防止する効果とともに放熱効果が得られ、さらに、ESD耐性が向上することから、静電気が入力されることによる薄膜抵抗パターンの劣化の進行を防止する効果も得られる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、導体膜下面の全面が抵抗膜で覆われている従来例に比べ、周波数による減衰量の違いを低減することが可能になる。また、第1及び第2の端部それぞれの少なくとも上面及び端面で導体膜と抵抗膜とが接触するので、端面のみでこれらが接触する従来例に比べ、導体膜と抵抗膜の接触抵抗を抑えることが可能になる。
【0040】
また、導体膜下面の少なくとも一部が抵抗膜によって覆われておらず、かつ、第1及び第2の端部それぞれの少なくとも上面及び端面で導体膜と抵抗膜とが接触する電子部品を製造することが可能になる。また、導体膜を形成する前に、抵抗膜を絶縁膜で覆っているので、製造工程における抵抗膜の酸化を抑制することが可能になる。したがって、抵抗膜の抵抗値が基板面内の場所によってばらつくことを防止できる。
【0041】
さらに、小型薄膜化された抵抗内蔵型カプラのアッテネーターの周波数特性において高周波領域における減衰量の変化が小さくなり、かつ抵抗素子の形成時の抵抗値のばらつきが小さくなるので、アッテネーターの高周波特性のばらつきを小さくすることが可能となる。また、本発明の構造を有する電子部品の周波数特性に関して、高周波領域における減衰量の変化を小さくすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0044】
図1は、本実施の形態に係るカプラ1の構成を示す等価回路図である。同図に示すように、カプラ1は、入力端子T11、出力端子T12、カップリング端子T21、アイソレーション端子T22、第1線路L1、第2線路L2、及び薄膜抵抗パターン(抵抗膜パターン)R11〜R13,R21〜R23を備えて構成される。
【0045】
第1線路L1と第2線路L2とは、互いに電磁気的に結合するように配置される。
図1には、この電磁気的な結合の例として、磁気結合Mと容量結合C1、C2とを図示している。
【0046】
第1線路L1の一端は入力端子T11に接続され、他端は出力端子T12に接続される。また、第2線路L2の一端は薄膜抵抗パターンR11を介してカップリング端子T21に接続され、他端は薄膜抵抗パターンR21を介してアイソレーション端子T22に接続される。薄膜抵抗パターンR12の一端は第2線路L2と薄膜抵抗パターンR11の間に接続され、他端はグランド端子T23に接続される。薄膜抵抗パターンR13の一端は薄膜抵抗パターンR11とカップリング端子T21の間に接続され、他端はグランド端子T23に接続される。薄膜抵抗パターンR22の一端は第2線路L2と薄膜抵抗パターンR21の間に接続され、他端はグランド端子T23に接続される。薄膜抵抗パターンR23の一端は薄膜抵抗パターンR21とアイソレーション端子T22の間に接続され、他端はグランド端子T23に接続される。薄膜抵抗パターンR11,R12,R13は、カップリング端子T21に接続されたπ型アッテネーターを構成する。また、薄膜抵抗パターンR21,R22,R23は、アイソレーション端子T22に接続されたπ型アッテネーターを構成する。なお、以下の説明では、入力端子T11と出力端子T12の間に設けられる線路を「主線路」と称し、カップリング端子T21とアイソレーション端子T22の間に設けられる線路(グランド端子T23との間に設けられる部分を含む)を「副線路」と称する場合がある。
【0047】
上述した第1線路L1及び第2線路L2それぞれの長さは、カプラ1の仕様に応じて決定される。一例では、対象となる伝送信号(第1線路L1を通過する信号)に関して1/4波長(λ/4)共振器回路となるように、第1線路L1及び第2線路L2それぞれの長さが設定される。
【0048】
図1を参照しながら、カプラ1の基本的な動作について説明する。カプラ1によるピックアップの対象となる信号は、入力端子T11に入力され、出力端子T12から出力される。入力端子T11に信号が入力されると、第1線路L1には主電流IMが流れる。主電流IMが第1線路L1に流れると、磁気結合Mに基づく誘導電流ILが第2線路L2を一方向に向かって流れるとともに、容量結合C1、C2に基づく変位電流ICが第2線路L2を両方向に流れる。第2線路L2を流れる電流は誘導電流ILと変位電流ICの和となり、その結果、誘導電流ILが流れる方向と一致した方向性をもつ電流(カップリング端子T21に向かう電流)が流れることになる。このように、信号がカプラの入力端子T11に入力され出力端子T12から出力されると、当該信号の一部に相当する信号がカップリング端子T21から出力される。
【0049】
カプラ1は、例えばパワーアンプ(PA)の出力モニタ用に使用される。この場合、カプラ1の入力端子T11がパワーアンプの出力端子に接続され、カプラ1のカップリング端子T21がAGC検波回路を介してパワーアンプの入力端子に接続される。これにより、パワーアンプから出力された信号の一部に相当する信号が、カプラ1のカップリング端子T21からAGC検波回路を介してパワーアンプの入力端子に、フィードバック信号として供給されることになる。パワーアンプでは、このフィードバック信号に基づいて出力制御を行うことにより、出力利得を一定に維持することが可能になる。
【0050】
また、例えば無線通信機器のアンテナチューナーの制御用として、カプラ1を使用することも可能である。この場合、カプラ1の入力端子T11がアンテナの出力端子に接続され、カプラ1のカップリング端子T21がアンテナスイッチに接続される。これにより、アンテナから出力された信号の一部に相当する信号が、カプラ1のカップリング端子T21からアンテナスイッチに、フィードバック信号として供給されることになる。アンテナチューナーでは、このフィードバック信号に基づいて出力制御を行うことにより、出力利得を一定に維持することが可能になる。カプラ1は、アッテネーターとしての薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23を備えていることから、アンテナから出力される信号が広帯域信号である場合においても、インピーダンス変動に対して高い安定性をもって動作できる。
【0051】
次に、以上説明したカプラ1の具体的な構造について、第1乃至第4の実施の形態を挙げて説明する。
(第1の実施の形態)
【0052】
図2は、本発明の第1の実施の形態によるカプラ1Aの平面図である。また、
図3は
図2のA−A'部分におけるカプラ1Aの垂直断面図であり、
図4は
図2に示した領域Bの拡大図であり、
図5は
図4のC−C'部分におけるカプラ1Aの垂直断面図であり、
図6は
図2のD−D'部分におけるカプラ1Aの垂直断面図である。
【0053】
まず
図3に示すように、カプラ1Aは、基板K1の表面の全面に平坦化膜H0及び絶縁膜H01がこの順で積層され、その上面に、
図1に示した各構成が形成されている構造を有している。なお、本発明では、基板K1、平坦化膜H0、及び絶縁膜H01をまとめて「基板」と称する場合がある。これから説明する各構成はいずれも、絶縁膜H01の上方に形成される。
【0054】
カプラ1Aの平面的な構造について、
図2を参照しながら説明する。以下では、
図2にも示すように、長方形である基板K1の長辺方向をx方向、短辺方向をy方向と称する。
【0055】
入力端子T11及び出力端子T12は、基板K1の一方の長辺の一方の角及び他方の角にそれぞれ配置される。入力端子T11及び出力端子T12の間には、グランド端子T13が配置される。また、カップリング端子T21及びアイソレーション端子T22は、基板K1の他方の長辺の一方の角及び他方の角にそれぞれ配置される。カップリング端子T21及びアイソレーション端子T22の間には、グランド端子T23が配置される。
【0056】
絶縁膜H01(
図3)の上面には、それぞれ導体膜である配線パターンL11,L21〜L25と、それぞれ抵抗膜である薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23とが形成される。
【0057】
配線パターンL11は上述した主線路を構成しており、グランド端子T13を避けるために基板K1の中央に向かって湾曲しつつ、入力端子T11と出力端子T12とを接続するように配置される。配線パターンL11は、基板K1の中央付近にx方向に延伸する直線部分を有している。この直線部分は、
図1に示した第1線路L1を構成する。
【0058】
配線パターンL21〜L25及び薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23は、上述した副線路を構成する。具体的には、まず配線パターンL21は、配線パターンL11の直線部分(第1線路L1)と平行に設けられた直線部分L21aと、直線部分L21aの一端(カップリング端子T21寄りの端部)から、カップリング端子T21に向かってカーブしつつ最終的にy方向に延伸する第1の部分L21bと、第1の部分L21bの先端からグランド端子T23に向かってx方向に延伸しつつ、途中で基板K1の外側に向かう方向にカーブして最終的にy方向に延伸する第2の部分L21cと、直線部分L21aの他端(アイソレーション端子T22寄りの端部)から、アイソレーション端子T22に向かってカーブしつつ最終的にy方向に延伸する第3の部分L21dと、第3の部分L21dの先端からグランド端子T23に向かってx方向に延伸しつつ、途中で基板K1の外側に向かう方向にカーブして最終的にy方向に延伸する第4の部分L21eとを有して構成される。直線部分L21aは
図1に示した第2線路L2を構成し、配線パターンL11の直線部分と電磁気的に結合する。第2及び第4の部分L21c,L21eそれぞれの先端は、配線パターンL21の両端を構成する。第1の部分L21bの先端(第2の部分L21cとの接続端)は、薄膜抵抗パターンR11を介して、カップリング端子T21と電気的に接続される。第3の部分L21dの先端(第4の部分L21eとの接続端)は、薄膜抵抗パターンR21を介して、アイソレーション端子T22と電気的に接続される。
【0059】
配線パターンL22は、グランド端子T23の下側をくぐってx方向に延設される直線状のパターンである。配線パターンL22の一端(カップリング端子T21寄りの端部)は、抵抗膜R12を介して配線パターンL21の第2の部分L21cの先端と電気的に接続される。配線パターンL22の他端(アイソレーション端子T22寄りの端部)は、抵抗膜R22を介して配線パターンL21の第4の部分L21eの先端と電気的に接続される。
【0060】
配線パターンL23は、グランド端子T23の下側をくぐって配線パターンL22と平行に、かつ、配線パターンL23に比べて基板K1の縁に近い位置に延設される直線状のパターンである。配線パターンL22の長さは、配線パターンL23に比べて若干短くなるように設定される。配線パターンL24は、一端がカップリング端子T21に接続され、他端が配線パターンL23の一端と対向するように配置された直線状のパターンである。配線パターンL24の他端と、配線パターンL23の一端とは、薄膜抵抗パターンR13を介して電気的に接続される。配線パターンL25は、一端がアイソレーション端子T22に接続され、他端が配線パターンL23の他端と対向するように配置された直線状のパターンである。配線パターンL25の他端と、配線パターンL23の他端とは、薄膜抵抗パターンR23を介して電気的に接続される。
【0061】
次に、カプラ1Aの立体的な構造について、
図3を参照しながら説明する。以下では
図3に示した部分に着目して説明するが、他の部分も同様の構造を有している。
【0062】
上述したように、基板K1の表面の全面には、平坦化膜H0及び絶縁膜H01がこの順で積層される。基板K1としては、アルミナ基板、ガラス基板、フェライト基板、窒化アルミ基板などの各種基板の中から1つを選択して用いることが好適である。平坦化膜H0としては、アルミナ膜又はシリカ膜を用いることが好適である。平坦化膜H0をアルミナ膜によって構成する場合、スパッタリング法などによって基板K1の表面にアルミナ膜を成膜し、その後CMP(Chemical Mechanical Polishing)を行うことによってこのアルミナ膜の表面を平坦化することで、アルミナ膜である平坦化膜H0が得られる。平坦化膜H0をシリカ膜によって構成する場合には、いわゆるスピンオングラス法によって平坦化膜H0を構成することが好適である。この場合、平坦化膜H0の表面を平坦にするためのCMPを行う必要はない。絶縁膜H01としては、窒化シリコン膜又はアルミナ膜を用いることが好適である。なお、絶縁膜H01は、表面の電気伝導率を十分低い値に保つために設けられるもので、平坦化膜H0だけでも表面の電気伝導率を十分低い値に保てる場合には、絶縁膜H01は不要である。
【0063】
薄膜抵抗パターンR13,R23は、絶縁膜H01の表面に形成された抵抗膜R1によって構成される。抵抗膜R1の材料としては、窒化タンタルやニッケルクロム合金などが好適である。また、配線パターンL23〜L25はそれぞれ、絶縁膜H01の表面に形成された導体膜M1によって構成される。導体膜M1の材料としては、Cu,Ag,Pd,Ag−Pd,Ni,Auなどが好適に利用できる。
【0064】
ここで、
図4及び
図5を参照しながら、薄膜抵抗パターンR13(第1の抵抗膜パターン)と、配線パターンL23,L24(第1及び第2の配線パターン)それぞれとの接続構造について、詳しく説明する。以下では、薄膜抵抗パターンR13及び配線パターンL23,L24に着目して説明するが、他の薄膜抵抗パターンと他の配線パターンの接続についても同様の構造によって実現される。
【0065】
図4に示すように、薄膜抵抗パターンR13は、x方向の一方端部R13a(一方端面から長さX1の部分。第1の端部)で配線パターンL23と接続し、x方向の他方端部R13b(他方端面から長さX2の部分。第2の端部)で配線パターンL24と接続するよう構成される。薄膜抵抗パターンR13の配線幅W1は、配線パターンL23,L24の配線幅W2より小さい値に設定される。
【0066】
一方端部R13aは、
図5に示すように、配線パターンL23と基板(絶縁膜H01)との間に嵌入するように配置される。これにより、一方端部R13aの上面、端面(x方向側面)、及び幅方向の両側面(y方向両側面)はそれぞれ、配線パターンL23に接触している。同様に、他方端部R13bは、配線パターンL24と基板(絶縁膜H01)との間に嵌入するように配置される。これにより、一方端部R13bの上面、端面(x方向側面)、及び幅方向の両側面(y方向両側面)はそれぞれ、配線パターンL24に接触している。
【0067】
一方端部R13a及び他方端部R13bそれぞれのx方向の長さX1,X2の具体的な値は、配線パターンL23,L24の延長に比べて十分小さな値に設定される。薄膜抵抗パターンR13以外の薄膜抵抗パターンについても同様であることから、
図3にも示すように、導体膜M1の下面のほとんどの部分は、抵抗膜R1によって覆われておらず、絶縁膜H01と直接接している。
【0068】
薄膜抵抗パターンR13の上面のうち、配線パターンL23,L24に接している部分以外の部分は、
図4及び
図5に示すように、絶縁膜H1で覆われている。絶縁膜H1は、製造工程において抵抗膜R1が酸化することを防止するための膜であり、絶縁膜H01と同様、窒化シリコン膜又はアルミナ膜を用いることが好ましい。なお、本実施の形態では、
図6に示すように、絶縁膜H1は各薄膜抵抗パターン(抵抗膜R1)の幅方向の側面には設けられていない。
【0069】
図3に戻る。導体膜M1の膜厚は、抵抗膜R1の膜厚と絶縁膜H1の膜厚の合計値より大きな値に設定される。したがって、
図3に示すように、絶縁膜H1の上面は、導体膜M1の上面より低い位置に位置している。
【0070】
絶縁膜H1及び導体膜M1の上層には、保護膜I1が形成される。この保護膜I1は、
図6に示すように、各薄膜抵抗パターン(抵抗膜R1)の幅方向の側面も覆っている。保護膜I1は、被覆する各構成を保護するためのもので、窒化シリコン、酸化アルミニウム、二酸化シリコンなどの無機系絶縁体、又は、ポリイミド、エポキシ樹脂などの有機系絶縁体により構成される。
【0071】
保護膜I1には、
図3に示すように、各端子と対応する位置にコンタクトホールCHが設けられる。コンタクトホールCHの底面には、導体膜M1が露出する。コンタクトホールCHの内部には導体膜M2が埋め込まれており、この導体膜M2は下面で導体膜M1と接触している。導体膜M2の具体的な構成材料は導体膜M1と同じでよい。導体膜M2は、コンタクトホールCHの上端よりも高い位置まで成膜されており、コンタクトホールCHの上端よりも高い部分の平面的な広がりがコンタクトホールCHの断面積よりも広くなるよう構成される。導体膜M2のうち、コンタクトホールCHの外側に出た部分の表面は、メッキ膜M3で覆われている。メッキ膜M3として具体的には、Ni/Auメッキ又はNi/Snメッキを好適に用いることができる。導体膜M2とメッキ膜M3により、
図3に示すように、カップリング端子T21、アイソレーション端子T22、及びグランド端子T23のそれぞれが構成される。
【0072】
以下、以上説明したカプラ1Aの構造について、別の観点から再度説明する。
【0073】
図2に示すように、配線パターンL11(主線路)は入力端子T11と出力端子T12に接続され、第2線路L2と同一面内で対向して配置される。これにより、配線パターンL11は、第2線路L2と電磁気的な結合をする部位となる。第2線路L2は、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23を介して、カップリング端子T21、アイソレーション端子T22、グランド端子T23に繋がっている。
【0074】
図3に示すように、基板K1上には、平坦化膜H0、絶縁膜H01が形成される。絶縁膜H01は、十分な絶縁が取れる場合には不要である。薄膜抵抗パターンR13、R23は絶縁膜H01上に形成される。また、薄膜抵抗パターンR13、R23の導体膜M1(配線層)との接続部分以外のみを覆うように絶縁膜H1が形成され、絶縁膜H1で覆われていない薄膜抵抗パターンR13、R23の上には導体膜M1が形成される。導体膜M1及び絶縁膜H1の上には、保護膜I1が形成される。端子T21,T22,T23は導体膜M1と導体膜M2(端子)の積層体により形成される。端子T21,T22,T23の表面にはメッキ膜M3が形成されている。
【0075】
図4及び
図5に示すように、薄膜抵抗パターンR13の幅W1は導体膜M1の幅W2より狭く、かつ、薄膜抵抗パターンR13は左右の側端部及び上面部の長さX1及びX2の領域(端部R13a,R13b)で導体膜M1に覆われて接続されている。この接続部分を除いた薄膜抵抗パターンR13の上層部のみ絶縁膜H1で覆われている。
【0076】
次に、本実施の形態によるカプラ1Aによって奏される効果について説明するが、説明に先立ち、本発明の背景技術によるカプラについて簡単に説明し、その後、この背景技術にかかるカプラと比較しながら、カプラ1Aによって奏される効果を説明する。
【0077】
図18は、本発明の背景技術によるカプラ100の平面図である。また、
図19は
図18のA−A'部分におけるカプラ100の垂直断面図であり、
図20は
図18に示した領域Bの拡大図であり、
図21は
図20のC−C'部分におけるカプラ1Aの垂直断面図である。これらの図と
図2〜
図5とを比較すると理解されるように、カプラ100は、導体膜M1の下面全体が抵抗膜R1によって覆われている点、絶縁膜H1が設けられていない点、及び、各薄膜抵抗パターンの配線幅が各配線パターンの配線幅に等しい点で、第1の実施の形態によるカプラ1Aと相違する。
【0078】
カプラ100の構成について、より詳しく説明する。カプラ100では、配線パターンL11(主線路)が入力端子T11と出力端子T12に接続され、第2線路L2と同一面内で対向して配置される。これにより、配線パターンL11は、第2線路L2と電磁気的な結合をする部位となる。第2線路L2は薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23を介して、カップリング端子T21、アイソレーション端子T22、グランド端子T23に繋がっている。これにより、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23はアッテネーターとして機能する。
【0079】
カプラ100における抵抗膜R1は、配線パターンL11(主線路)及び配線パターンL21〜L25(副線路の一部)の下面の全体にわたって一体に形成されている。カプラ100における薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23はそれぞれ、抵抗膜R1の一部分である。
【0080】
カプラ100においても、基板K1上の全面に、平坦化膜H0及び絶縁膜H01が形成される。抵抗膜R1は絶縁膜H01上に形成され、絶縁膜H01の上には導体膜M1(配線層)が形成される。導体膜M1の上には保護膜I1が形成される。端子T21,T22,T23は導体膜M1と導体膜M2の積層体により形成される。端子T21,T22,T23の表面にはメッキ膜M3が形成される。
【0081】
さて、本実施の形態によるカプラ1Aによって奏される効果について説明する。カプラ1Aによれば、導体膜M1の下面に抵抗膜R1によって覆われていない部分があることから、導体膜M1の下面の全体が抵抗膜R1で覆われているカプラ100に比べ、表皮効果によって抵抗膜R1に電流が流れることによる影響を抑えることが可能になる。したがって、カプラ1Aにおける電流信号の減衰量は、カプラ100における電流信号の減衰量に比べ、周波数による違いが低減されたものとなっている。
【0082】
別の言い方をすると、カプラ100では、抵抗膜R1が導体膜M1の下部の全面に存在しており、導体膜M1の下部全面と接しているため、特に高周波領域において、導体膜M1を流れる電流の一部が、表皮効果によりその下にある抵抗膜R1にも流れることになる。これは、高周波ロスを発生させる原因となる。これに対して、第1の実施の形態のカプラ1Aでは、抵抗膜R1と導体膜M1とが、各薄膜抵抗パターンと導体膜M1の接続部分以外では絶縁膜H1によって完全に分離され、互いに絶縁されているために、上記のような高周波ロスを抑制することができる。
【0083】
また、カプラ1Aでは、各薄膜抵抗パターンの端部が、上面、端面、及び幅方向の各側面で導体膜M1と接触するので、端面のみでこれらが接触する従来例(例えば特許文献3の
図5)に比べ、導体膜M1と抵抗膜R1の接触抵抗を抑えることが可能になる。
【0084】
その他、カプラ1Aでは、カプラ100とは異なり各薄膜抵抗パターンの上面を絶縁膜H1で覆っているので、製造工程における抵抗膜R1の酸化による劣化を防止できる。したがって、抵抗膜R1の抵抗値の基板面内の場所によるばらつきを小さくすることが可能になる。
【0085】
なお、抵抗膜R1の酸化防止には、絶縁膜H01及び絶縁膜H1を窒化シリコン膜又はアルミナ膜で形成していることも寄与している。すなわち、窒化シリコン膜又はアルミナ膜のような無機材料は抵抗膜R1との反応性が小さいため、絶縁膜H01及び絶縁膜H1を窒化シリコン膜又はアルミナ膜で形成することで、抵抗膜R1の酸化が抑制される。
【0086】
絶縁膜H1は、放熱効果やESD耐性の向上効果も有している。このうち後者に関して、ESD耐性が向上するということは、静電気が入力されることによって抵抗膜R1の劣化が進行してしまうことを防止する効果が得られるということである。したがって、この点からも、カプラ1Aによれば、抵抗膜R1の抵抗値の基板面内の場所によるばらつきを小さくすることが可能になると言える。
【0087】
また、カプラ1Aでは、抵抗膜R1(薄膜抵抗パターン)の配線幅が、導体膜M1(配線パターン)の配線幅より小さい値に設定されていることから、製造工程でこれらの相対的な位置が幅方向に多少ずれたとしても、抵抗膜R1と導体膜M1の接触面積を一定値に維持することが可能になる。
(第2の実施の形態)
【0088】
図7は、本発明の第2の実施の形態によるカプラ1Bの平面図である。また、
図8は
図7のA−A'部分におけるカプラ1Bの垂直断面図であり、
図9は
図7のD−D'部分におけるカプラ1Bの垂直断面図である。
【0089】
本実施の形態によるカプラ1Bは、絶縁膜H1が抵抗膜R1の上面だけでなく幅方向(対応する2つの配線パターンの端面が対向する方向と垂直な方向)の側面も覆っている点、及び、絶縁膜H1が導体膜M1と抵抗膜R1の間にも延設されている点で、第1の実施の形態によるカプラ1Aと相違する。これら以外の点では第1の実施の形態によるカプラ1Aと同様であるので、以下、相違点に着目して詳しく説明する。
【0090】
図6と
図9とを比較すると、カプラ1Aでは絶縁膜H1が抵抗膜R1の上面のみを覆い、側面(幅方向の側面)は覆っていないのに対し、カプラ1Bでは絶縁膜H1が抵抗膜R1の上面のみならず側面(幅方向の側面)をも覆っていることが理解される。このように、本実施の形態では、絶縁膜H1によって抵抗膜R1の上面だけでなく幅方向の側面も覆っているので、製造工程における抵抗膜R1の酸化による劣化を、より確実に防止できる。
【0091】
また、
図7及び
図8に示すように、本実施の形態では、絶縁膜H1が導体膜M1と抵抗膜R1の間にも延設されている。これにより、カプラ1Bの製造工程を、導体膜M1となる導電性材料の成膜を行う前に絶縁膜H1のパターニングを行うように構成することが可能になる。つまり、設計上、導体膜M1と抵抗膜R1の間にも延設されるように絶縁膜H1の長さを設計しておくことで、仮に絶縁膜H1のパターンと配線パターンとの間に位置ずれが発生したとしても、導電性材料のパターニング後に、抵抗膜R1が露出してしまうことのないようにすることができる。したがって、上記のような製造の順序を採用することが可能になる。
【0092】
なお、以上のように絶縁膜H1の長さを設計するとしても、各薄膜抵抗パターンの端部の上面(導体膜M1と接触させる部分)が絶縁膜H1で覆われてしまうことのないように設計する必要がある。薄膜抵抗パターンの上面及び幅方向の側面の全体が絶縁膜H1で覆われてしまうと、導体膜M1と抵抗膜R1の接触抵抗を抑えることが不可能になるからである。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態によるカプラ1Bによれば、各薄膜抵抗パターンと導体膜M1との接続部分を除き、各薄膜抵抗パターンの上面に加えて側面にも絶縁膜H1がある構造を有していることから、第1の実施の形態によるカプラ1Aによって奏される効果に加えてさらに、抵抗膜R1が絶縁膜H1の形成直後に酸化してしまうことを、より確実に防止できる。これにより、抵抗膜R1の抵抗値の基板面内の場所によるばらつきを小さくすることが可能になる。
【0094】
また、カプラ1Bによれば、導体膜M1となる導電性材料の成膜を行う前に絶縁膜H1のパターニングを行うように、製造工程を構成することが可能になる。
(第3の実施の形態)
【0095】
図10は、本発明の第3の実施の形態によるカプラ1Cの平面図である。また、
図11は
図10のA−A'部分におけるカプラ1Cの垂直断面図であり、
図12は
図10に示した領域Bの拡大図であり、
図13は
図12のC−C'部分におけるカプラ1Cの垂直断面図である。
【0096】
本実施の形態によるカプラ1Cは、絶縁膜H1が導体膜M1の下面を広く覆っている点で、第2の実施の形態によるカプラ1Bと相違する。これ以外の点では第2の実施の形態によるカプラ1Bと同様であるので、以下、相違点に着目して詳しく説明する。
【0097】
後ほどカプラ1Cの製造工程を説明するので詳しくはそちらで説明するが、本実施の形態による絶縁膜H1は、各薄膜抵抗パターンを形成した後、全面に絶縁膜材料を成膜し、この絶縁膜材料に複数のスルーホールを設けることによって形成される。この複数のスルーホールは、
図10に示したスルーホールH111,H112,H121,H122,H131,H132,H211,H212,H221,H222,H231,H232であり、それぞれ各薄膜抵抗パターンの端部(導体膜M1と接触させる端部)を露出させる位置に形成されている。各薄膜抵抗パターンの端部と、対応する配線パターンとは、これらスルーホールの内部で接触する。
【0098】
図12及び
図13を参照しながら、薄膜抵抗パターンR13(第1の抵抗膜パターン)の両端に対応するスルーホールH132,H131(第1及び第2のスルーホール)を例に、本実施の形態による絶縁膜H1の構造について詳しく説明する。以下では言及しないが、他のスルーホールに関する絶縁膜H1の構造も同様である。
【0099】
図12及び
図13に示すように、スルーホールH132,H131はそれぞれ、薄膜抵抗パターンR13のx方向の一方端部R13a(第1の端部)及び他方端部R13b(第2の端部)を露出させる位置に構成される。また、絶縁膜H1上には、第1及び第2の実施の形態と同様、配線パターンL23,L24を構成する導体膜M1が形成される。配線パターンL23を構成する導体膜M1はスルーホールH132の内部にも形成されており、したがって、スルーホールH132内で薄膜抵抗パターンR13の一方端部R13aと接触している。同様に、配線パターンL24を構成する導体膜M1はスルーホールH131の内部にも形成されており、したがって、スルーホールH131内で薄膜抵抗パターンR13の他方端部R13bと接触している。
【0100】
スルーホールH132,H131の大きさ及び形成位置は、それぞれ一方端部R13a及び他方端部R13bの上面がある程度露出するように設定される。特に、スルーホールH132,H131それぞれのy方向の幅(薄膜抵抗パターンR13の幅方向の幅)W4は、薄膜抵抗パターンR13の配線幅W3より広く、かつ配線パターンL23,L24の配線幅W2より狭くなるよう構成される。これにより、薄膜抵抗パターンR13の各端部は、上面、端面、及び幅方向の各側面で、対応する導体膜M1に接触している。
【0101】
以上のように構成したことにより、本実施の形態によるカプラ1Cにおいても、導体膜M1下面の全面が抵抗膜R1で覆われているカプラ100(
図14〜
図17)に比べ、周波数による減衰量の違いを低減することが可能になる。また、抵抗膜R1(薄膜抵抗パターン)の端部が、上面、端面、及び幅方向の各側面で導体膜M1と接触するので、端面のみでこれらが接触する従来例に比べ、導体膜M1と抵抗膜R1の接触抵抗を抑えることが可能になる。
【0102】
また、本実施の形態によるカプラ1Cによれば、第2の実施の形態と同様、抵抗膜R1が絶縁膜H1の形成直後に酸化してしまうことを防止できる。したがって、抵抗膜R1の抵抗値の基板面内でのばらつきを小さくすることが可能になる。
【0103】
また、カプラ100では導体膜M1の下部全面に抵抗膜R1が接しているのに対し、本実施の形態によるカプラ1Cでは、抵抗膜R1(薄膜抵抗パターン)の幅W3よりスルーホールの開口幅W4が大きく形成されているので、抵抗値を大きく決定付ける要素の一つである抵抗膜R1の幅W3を、各薄膜抵抗パターンの始点と終点の間のみに限定することができる。したがって、カプラ1Cによれば、導体膜M1と抵抗膜R1の接触抵抗の抵抗値の基板面内でのばらつきを小さくすることが可能になる。
【0104】
さらに、本実施の形態によるカプラ1Cでは、絶縁膜H1を薄膜絶縁膜を用いて形成しているので、抵抗値を大きく決定付ける要素の一つである薄膜抵抗パターンの始点と終点のスルーホール間の距離のパターニング精度が、絶縁膜H1を厚膜絶縁膜で形成する場合と比較して向上している。したがって、抵抗膜R1の抵抗値の基板面内でのばらつきを、厚膜絶縁膜で形成する場合と比較して小さくできる。さらに、各スルーホール内における直流抵抗成分や、寄生インダクタンスによる高周波ロスの発生を小さくすることができる。
【0105】
また、絶縁膜H1が導体膜M1の下に広く形成されているので、薄膜抵抗パターンを覆う絶縁膜H1と、抵抗膜R1の下側に形成された絶縁膜H01との接触する面積が増大する。したがって、これらの間の密着性が第2の実施の形態によるカプラ1Bと比較してよくなり、絶縁膜H1の剥がれが抑制される。
【0106】
次に、本実施の形態によるカプラ1Cの製造工程について説明する。
【0107】
図14及び
図15は、カプラ1Cの製造工程を示すフローチャートである。同図に示すように、カプラ1Cを製造する際には、まず初めにスパッタにより、基板K1上にアルミナ膜を成膜する(ステップS1)。そして、このアルミナ膜をCMPによって平坦化することにより、平坦化膜H0を形成する(ステップS2)。その後、全面にアルミナ又は窒化シリコンなどの無機膜を成膜する(ステップS3)。これにより、絶縁膜H01が形成される。
【0108】
次に、抵抗膜R1(薄膜抵抗パターン)を形成する(ステップS4〜S6)。具体的には、まず初めに、抵抗膜R1の材料となる抵抗膜材料を、スパッタにより全面に成膜する(ステップS4)。次いで、抵抗膜材料を覆うように全面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによって、抵抗膜R1(薄膜抵抗パターン)の形状のレジストパターン(第1のレジストパターン)に成形する(ステップS5)。そして、イオンミリングによってフォトレジストで覆われていない部分の抵抗膜材料を除去することにより、すなわち、ステップS5で形成したレジストパターンをマスクとして抵抗膜材料をエッチングすることにより、抵抗膜R1(薄膜抵抗パターン)を形成する(ステップS6)。抵抗膜R1を形成した後には、フォトレジストを剥離(除去)する(ステップS7)。
【0109】
次に、絶縁膜H1を形成する(ステップS8〜S10)。具体的には、初めにフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィにより、絶縁膜H1を形成しない場所(スルーホール部分に相当)のみにフォトレジストを残す(ステップS8)。こうして形成されたレジストパターン(第2のレジストパターン)は、各薄膜抵抗パターンの端部のみを覆うパターンとなる。次いで、スパッタにより、ステップS8で形成したレジストパターンを覆う絶縁膜材料(アルミナ又は窒化シリコンなど)を成膜し(ステップS9)、さらに、フォトレジストを剥離することにより、レジストパターン及び該レジストパターンの上面に形成された絶縁膜材料を除去する(ステップS10)。これにより、
図10に示した位置にスルーホールを有する絶縁膜H1が形成される。なお、ステップS10の工程は、いわゆる「リフトオフ」に相当する。したがって、ステップS8で形成するフォトレジストは、ステップS10においてフォトレジスト及び絶縁膜材料の除去が確実にできるよう、いわゆるバイレイヤーレジストとすることが好ましい。
【0110】
次に、逆スパッタを行うことにより、全面をエッチングする(ステップS11)。この逆スパッタの主たる目的は抵抗膜R1及び絶縁膜H1の上面の粗度を高める点にあり、この逆スパッタを行うことにより、ここまでの工程で形成した抵抗膜R1及び絶縁膜H1と、以降の工程で形成する導体膜M1との密着性を向上させることができる。
【0111】
次に、導体膜M1(配線パターン)を形成する(ステップS12〜S15)。具体的には、まず全面にシード電極膜(例えばクロムと銅の積層膜若しくはチタンと銅の積層膜)を成膜する(ステップS12)。次いで、このシード電極膜を覆うように全面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィによって、導体膜M1(配線パターン)を形成しない場所のみにフォトレジストを残す(ステップS13)。これにより、シード電極膜を覆うレジストパターン(第3のレジストパターン)が形成されるので、さらに導電性材料(例えば銅)によるメッキを行う(ステップS14)。こうして形成されるメッキ導体はレジストパターンの間にのみ形成され、レジストパターンの上面には形成されない。メッキの後には、フォトレジストを剥離することにより、レジストパターンを除去する(ステップS14)。これにより、
図10に示した平面形状を有する導体膜M1(配線パターン)が形成される。導体膜M1を形成した後には、露出しているシード電極膜(導電性材料によって覆われていない部分)をエッチングにより除去する(ステップS15)。
【0112】
次に、保護膜I1を形成する(ステップS16)。具体的には、全面に感光性ポリイミドを塗布し、フォトリソグラフィによって各端子T11〜T13,T21〜T23の形成領域にコンタクトホールCHを形成することにより、ポリイミドからなる保護膜I1を形成すればよい。
【0113】
最後に、端子T11〜T13,T21〜T23を形成する(ステップS17〜S21)。具体的には、まず導体膜M2を、導体膜M1と同様の方法によって形成する(ステップS17〜S20)。次いで、メッキによってNi/Auを成膜することにより、導体膜M2の表面にメッキ膜M3を形成する(ステップS21)。これにより、端子T11〜T13,T21〜T23が形成され、以上で全工程が完了する。
【0114】
以上説明したように、本製造方法によれば、
図10〜
図13に示したカプラ1Cを製造することが可能になる。また、導体膜M1を形成する前の時点で抵抗膜R1を絶縁膜H1で覆っているので、製造工程における抵抗膜R1の酸化を抑制することが可能になる。したがって、抵抗膜R1の抵抗値が基板面内の場所によってばらつくことを防止できる。
【0115】
なお、ここで説明した製造工程によれば、第2の実施の形態にかかるカプラ1Bを製造することも可能である。すなわち、カプラ1Cとカプラ1Bの違いは、上述したように絶縁膜H1が導体膜M1の下面を広く覆っているか否かという点のみであるから、ステップS8でフォトレジストを残す部分を広げることで、上記製造工程をカプラ1Bの製造に利用することが可能になる。
【0116】
また、上述した製造工程のステップS11では、抵抗膜R1及び絶縁膜H1の上面の粗度を高めることを目的として逆スパッタを行ったが、抵抗膜R1の各端部における膜厚が、対応するスルーホールの内壁と接触する位置から端面にかけて徐々に薄くなる程度まで、逆スパッタを行うようにしてもよい。以下、詳しく説明する。
【0117】
図16(a)〜(e)は、ステップS8からステップS15までの工程における、薄膜抵抗パターンR13の一方端部R13aの近傍の様子を示す図である。
図16(a)がステップS8に、
図16(b)がステップS9に、
図16(c)がステップS10に、
図16(d)がステップS11に、
図16(e)がステップS12〜S15に、それぞれ相当する。ただし、
図16(e)では、シード電極膜の図示を省略している。
【0118】
図16(a)に示すように、ステップS8で形成するフォトレジストは、フォトレジストRG1,RG2からなるバイレイヤーレジストである。バイレイヤーレジストを用いる場合、上側のフォトレジストRG2は下側のフォトレジストRG1に比べて面積が大きくなるので、ステップS8でスルーホール部分に残るフォトレジストは、同図に示すようにキノコ状のレジストパターンとなる。このようなキノコ状のレジストパターンが形成されている状態で絶縁膜H1となる絶縁膜材料を成膜する(ステップS9)と、抵抗膜R1の上に形成された部分の膜厚は、
図16(b)に示すように、フォトレジストRG1に近くなるにつれて徐々に薄くなる。これは、スパッタリングターゲットから飛来する原子の行路が、フォトレジストRG2によって遮られることによるものである。
【0119】
次にステップS9でフォトレジストRG1,RG2を剥離する(ステップS10)と、
図16(c)に示すように、スルーホールH132が形成される。スルーホールH132の内壁は、図示するように、上側に向かって徐々に広くなる漏斗状となる。スルーホールH132の底面には、薄膜抵抗パターンR13の一方端部R13aが露出する。
【0120】
この状態で、抵抗膜R1及び絶縁膜H1の上面の粗度を高める程度を超える長時間にわたり、逆スパッタを行う(ステップS11)。すると、
図16(d)に示すように、一方端部R13aにおける薄膜抵抗パターンR13の形状が、スルーホールH132の内壁と接触する位置(図示した位置R13a1)から端面(図示した位置R13a2)にかけて、徐々に薄くなる形状となる。要するにテーパー状になるのであるが、これは、スルーホールH132の内壁が上述したように漏斗状となっていることによる効果である。その後、
図16(e)に示すように、導体膜M1の形成を行う(ステップS12〜S15)。
【0121】
このように、本製造方法では、スルーホールH132の内壁が漏斗状となっていることから、抵抗膜R1及び絶縁膜H1の上面の粗度を高める程度を超える長時間にわたって逆スパッタを行うことで、抵抗膜R1の端部をテーパー状に加工することが可能になる。そして、このようにすることで、導体膜M1と抵抗膜R1の接触抵抗をさらに抑えることが可能になる。
【0122】
図17は、
図1に示した薄膜抵抗パターンR11〜R13によって構成されるπ型アッテネーターと同じ回路構成を有するπ型アッテネーターを通過する電流信号の減衰量の周波数による変化を、該π型アッテネーターを本実施の形態によるカプラ1Cに示した構造で実現した場合(実施例Ex1)と、上述した背景技術によるカプラ100に示した構造で実現した場合(比較例Ex0)とのそれぞれについて示す図である。同図の縦軸は周波数(GHz)であり、縦軸は減衰量(dB)である。
【0123】
実施例Ex1及び比較例Ex0にかかるπ型アッテネーターの具体的な材料及び作製方法は、それぞれ次のとおりである。すなわち、まず実施例Ex1に関しては、基板K1としてフェライト基板を使用し、平坦化膜H0としてアルミナをスパッタリング法で成膜した。平坦化膜H0の表面は、CMPで平坦化した。抵抗膜R1としては50Ω/sqのニッケルクロム合金をスパッタリング法で成膜した。抵抗膜R1のパターニングは、フォトリソグラフィ法でレジストパターンを作製し、このレジストパターンに覆われている部分以外の抵抗膜R1をイオンミリングにて除去することにより行った。その後、フォトリソグラフィ法でレジストパターンを作製した上で、絶縁膜H1としてのアルミナ膜を成膜し、リフトオフ法にてスルーホールを形成した。導体膜M1としては、銅をメッキにて形成した。保護膜I1は、感光性ポリイミドをフォトリソグラフィ法でパターニングすることにより形成した。導体膜M2としては、銅をメッキにて形成し、その表面にNi/Au合金をメッキにて形成した。
【0124】
一方、比較例Ex0に関しては、基板K1としてフェライト基板を使用し、平坦化膜H0としてアルミナをスパッタリング法で成膜した。平坦化膜H0の表面は、CMPで平坦化した。抵抗膜R1としては50Ω/sqのニッケルクロム合金をスパッタリング法で成膜した。導体膜M1としては、銅をメッキにて形成した。保護膜I1は、感光性ポリイミドをフォトリソグラフィ法でパターニングすることにより形成した。端子M2としては、銅をメッキにて形成し、その表面にNi/Au合金をメッキにて形成した。
【0125】
図17に示すように、1.025GHzの周波数では、実施例Ex1及び比較例Ex0ともに、減衰量は18.68dBとなっていた(
図17のポイントm3)。一方、10.0GHzの周波数では、比較例Ex0での減衰量が17.39dBである(
図17のポイントm1)のに対し、実施例Ex1での減衰量は17.56dBとなっている(
図17のポイントm2)。つまり、比較例Ex0では1.29dBであった1.025GHzと10.0GHzとでの減衰量の差が、実施例Ex1では1.12dBの差に留まっており、比較例Ex0に対して周波数による減衰量の違いが低減されていることが理解される。
【0126】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限度において様々な変形が可能である。例えば、本発明のカプラは、カプラ以外の薄膜コンデンサ、フィルタ等の他の電子部品に適用可能である。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0127】
例えば、第2の実施の形態によるカプラ1B及び第3の実施の形態によるカプラ1Cに関しては、絶縁膜H1、絶縁膜H01、及び基板K1を、同じ材料により構成することとしてもよい。こうすることで、これらの間の密着性を高めることが可能になる。
【0128】
以下、本発明についての補足的な説明を行う。
【0129】
まず、本発明の課題に関し、特許文献3では、抵抗素子として機能する部分以外の主線路および副線路を形成する導体の直下の全面域に抵抗素子を形成した際に形成された抵抗膜が残る構造となる。その結果、高周波領域においては表皮効果により導体表面を電流が流れやすいため、カプラの主線路および副線路を形成する導体直下の全面に抵抗膜が残る構造では抵抗膜によるロスが発生してしまう。また、近年、移動体通信機器や無線LAN機器等の使用周波数帯がますます高くなっている状況では、高周波領域になるに従いアッテネーターの機能における減衰量の変化が大きくなることが問題である。
【0130】
また、上記構造の抵抗内蔵カプラでは作製基板面内で抵抗値のばらつきが大きく、アッテネーターの高周波特性に差が生じることも問題である。
【0131】
したがって、本発明の目的のひとつは、抵抗素子を用いたアッテネーターを有するカプラにおいて、アッテネーターの高周波特性のばらつきを小さくする点にある。
【0132】
図1に示したカプラ1は、第1線路L1と、第1線路と電磁気的に結合する第2線路L2とπ型のアッテネーターとして、カップリング端子T21側には抵抗R11、R12、R13をアイソレーション端子T22側にはR21、R22、R23とを備えている。第1線路L1と第2線路L2との間の電磁気的な結合として、磁気結合Mと、容量結合C1、C2を
図1に図解している。
【0133】
このカプラ1においては、第1線路のL1の一端が入力端子T11に接続され、第1線路L1の他端が出力端子T12に接続されている。また、第2線路L2の一端が抵抗R11を介してカップリング端子T21に接続され、第2線路L2の他端が抵抗R21を介してアイソレーション端子T22に接続されている。抵抗R12、R13、R22、R23の一端はグランド端子T23に接続されている。
【0134】
上述した線路L1〜L2の長さは、カプラ1の仕様に応じて異なり、例えば、対象となる伝送信号の1/4波長(λ/4)共振器回路となるよう設定することができる。
【0135】
以下に、
図1を参照してカプラ1の基本的な動作について説明する。信号は、入力端子T11に入力され、出力端子T12から出力される。入力端子T11に信号が入力されると、第1線路L1には主電流IMが流れる。主電流IMが第1線路L1に流れると、磁気結合Mに基づく誘導電流ILが第2線路L2において一方向に向かって流れるとともに、容量結合C1、C2に基づく変位電流ICが第2線路L2において両側に向かって流れる。第2線路L2を最終的に流れる電流は、磁気結合Mに基づく誘導電流ILと、容量結合C1、C2に基づく変位電流ICの和となり、その結果、磁気結合による誘導電流の方向と一致した方向性をもつ電流がカップリング端子T21に向かって流れることとなる。このように信号がカプラの入力端子T11に入力され出力端子T12から出力されると、当該信号の一部に相当する信号がカップリング端子T21から出力される。
【0136】
上記のカプラ1は、例えばパワーアンプ(PA)の出力モニタ用に使用される。この場合、カプラ1の入力端子T11がパワーアンプの出力端子に接続され、カプラ1のカップリング端子T21がAGC検波回路を介してパワーアンプの入力端子に接続される。これにより、パワーアンプから出力された信号がカプラ1の入力端子T11に入力されると、この信号の一部に相当する信号がカプラ1のカップリング端子T21から出力され、AGC検波回路を通じてパワーアンプにフィードバック信号が入力される。この結果、パワーアンプの出力利得が一定に維持、制御される。
【0137】
また、上記のカプラ1は、例えば無線通信機器のアンテナチューナーの制御を目的に使用される。この場合、カプラ1の入力端子T11がアンテナの出力端子に接続され、カプラ1のカップリング端子T21がアンテナスイッチに接続される。これにより、アンテナから出力された信号がカプラ1の入力端子T11に入力されると、この信号の一部に相当する信号がカプラ1のカップリング端子T21から出力され、アンテナの出力フィードバック信号がアンテナスイッチに入力される。この結果、アンテナの出力利得が一定に維持、制御される。広帯域に使用する場合には、アッテネーターとして抵抗R11、R12、R13、R21、R22、R23があることでインピーダンス変動に対して安定性を保つことができる。
【0138】
次に、上記カプラ1の第1の実施の形態であるカプラ1A(
図2〜
図6)について説明する。
図2に示すように、カプラ1Aでは、主線路L11が端子T11と端子T12に接続され、副線路L21と同一面内で対向した配置となり、電磁気的な結合をする部位となる。副線路L21は薄膜抵抗パターンR11、R12、R13、R21、R22、R23を介して、カップリング端子T21、アイソレーション端子T22、グランド端子T23に繋がっている。
【0139】
図3に示すように、基板K1上には、平坦化膜H0、絶縁膜H01が形成される。絶縁膜H01は十分な絶縁が取れる場合には不要である。H01上に薄膜抵抗パターンR13、R23を形成し、絶縁膜H1で薄膜抵抗パターンR13、R23の導体膜M1(配線層)との接続部分以外のみを覆うように形成し、絶縁膜H1で覆われていない薄膜抵抗パターンR13、R23の上に導体膜M1を形成する。導体膜M1及び絶縁膜H1の上には保護層I1を形成する。端子T21、T22、T23は導体膜M1と端子M2の積層体により形成される。端子T21、T22、T23の表面にはメッキ膜M3が形成されている。
【0140】
図4に示すように、薄膜抵抗パターンR13の幅W1は導体膜M1の幅W2より狭く、且つ、薄膜抵抗パターンR13は左右の側端部および上面部の長さX1およびX2の領域で導体膜M1に覆われて接続されている。この接続部分を除いた薄膜抵抗パターンR13の上層部のみ絶縁膜H1で覆われている。
【0141】
基板K1については、例えばアルミナ、ガラス、フェライト、窒化アルミなどの基板が使用できる。平坦化膜H0については例えばアルミナをスパッタリング法等で成膜し、CMPで平坦化する方法や、スピンオングラス(SOG)を使用すればCMPをすることなく平坦化が得られて良い。絶縁膜H01については例えば、窒化シリコン膜、アルミナ膜などが好適である。薄膜抵抗パターンR13については例えば、窒化タンタルやニッケルクロム合金などが好適である。導体膜M1と端子M2については例えば、Cu,Ag、Pd、Ag−Pd、Ni、Au等を使用でき、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、フォトリソグラフィ法等の方法により形成される。メッキ膜M3については例えば、Ni/AuメッキやNi/Snメッキが用いられる。保護層I1としては例えば、窒化シリコン、酸化アルミニウム、二酸化シリコン等の無機系絶縁体のみならず、ポリイミド、エポキシ樹脂等の有機系絶縁体を使用できる。
【0142】
次に、上記カプラ1の第2の実施の形態によるカプラ1B(
図7〜
図9)は、絶縁膜H1が薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23と導体膜M1との接続部分を除いた薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の上面部と側面部に形成されている点で、
図2等に示したカプラ1Aと異なっている。
【0143】
図6と
図9を比べると理解されるように、カプラ1Aでは絶縁膜H1が薄膜抵抗パターンR22,R23の上にしかないのに対し、カプラ1Bは絶縁膜H1が薄膜抵抗パターンR22,R23の上面のみならず側面を覆っている構造を有している。
【0144】
次に、上記カプラ1の第3の実施の形態であるカプラ1C(
図10〜
図13)は、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の接続始点と終点が導体膜M1に絶縁膜H1を用いて形成されたスルーホールH111,H112,H121,H122,H131,H132,H211,H212,H221,H222,H231,H232を介して接続されている点と、スルーホールH111,H112,H121,H122,H131,H132,H211,H212,H221,H222,H231,H232は薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の幅W3より大きい開口幅を有する点で、
図7等に示したカプラ1Bと異なっている。
【0145】
カプラ1Cの絶縁膜H1はカプラ1Bのそれと異なり、薄膜抵抗パターンR13,R23の上とそれ以外の導体膜M1の下部にも配置されており、薄膜抵抗パターンR13,R23と導体膜M1との接続部分に対応する領域にスルーホールH131,H132,H231,H232を形成する構造となっている。
【0146】
図12に示すように、薄膜抵抗パターンR13の幅はW3であり、薄膜抵抗パターンR13と導体膜M1との接続部分に絶縁膜H1で形成されたスルーホールH131、H132は、薄膜抵抗パターンR13の幅W3より大きい開口幅を有する構造となっている。
【0147】
なお、カプラ1B,1Cにおいては、基板表面と同じ材質で絶縁膜H01と絶縁膜H1を形成することとしてもよい。以下では、このように構成したカプラ1B,1Cを第4の実施の形態と称する。
【0148】
本実施の形態(第1〜第4の実施の形態)は、以下の効果を有する。
【0149】
本発明の背景技術によるカプラ100(
図18〜
図21)では、薄膜抵抗パターンR1が導体膜M1の下部の全面に存在しており、導体膜M1の下部全面で接している構造のため、高周波領域において、導体膜M1を流れる電流は表皮効果により、導体膜M1の下部の薄膜抵抗パターンR1にも集中的に流れるようになり、高周波ロスを発生させてしまう。これに対して、本発明の第1の実施の形態によるカプラ1Aでは、
図2〜
図6に示したように、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23と導体膜M1とが、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23と導体膜M1との接続部分以外では絶縁膜H1によって完全に分離され、互いに絶縁されている。したがって、カプラ1Aでは、高周波ロスを抑制することができる。また、絶縁膜H1は薄膜抵抗パターンの酸化等の劣化の保護の他に放熱効果やESD耐性の向上による薄膜抵抗パターンの劣化の進行を防ぐ効果がある。
【0150】
本発明の背景技術によるカプラ100(
図18〜
図21)が導体膜M1の下部全面に薄膜抵抗パターンが接している構造を有しているのに対して、本発明の第2の実施の形態によるカプラ1Bは、
図7〜
図9に示したように、薄膜抵抗パターンと導体膜M1との接続部分を除いた薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の上面に加えて側面にも絶縁膜H1がある構造を有している。したがって、カプラ1Bでは、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23が第1の実施の形態より絶縁膜H1形成直後に酸化などの影響を確実に防ぎやすくなり、薄膜抵抗パターンの抵抗値のばらつきを小さくすることができる。
【0151】
本発明の背景技術によるカプラ100(
図18〜
図21)が導体膜M1の下部全面に薄膜抵抗パターンが接している構造を有しているのに対して、本発明の第3の実施の形態によるカプラ1Cは、
図10〜
図13に示したように、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の幅W3よりスルーホールH111,H112,H121,H122,H131,H132,H211,H212,H221,H222,H231,H232の開口幅が大きく形成された構造を有している。したがって、抵抗値を大きく決定付ける要素の一つである薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の幅W3を薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の始点と終点の間のみに限定することができるため、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の抵抗値のばらつきを小さくすることができる。
【0152】
また、絶縁膜H1に薄膜絶縁膜を用いて形成しているので、抵抗値を大きく決定付ける要素の一つである薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の始点と終点のスルーホール間の距離のパターニング精度が向上し、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23の抵抗値を厚膜絶縁膜と比較して基板面内でのばらつきを小さくできる。さらに、スルーホールH111,H112,H121,H122,H131,H132,H211,H212,H221,H222,H231,H232における直流抵抗成分や寄生インダクタンスの高周波ロスの発生を小さくすることができる。
【0153】
さらに、絶縁膜H1が主線路L11及び副線路L12の下部にも形成されているので、薄膜抵抗パターンR11〜R13,R21〜R23を覆う絶縁膜H1と薄膜抵抗パターンの下部に形成された絶縁膜H01との接触面積が増大することから、密着性が第2の実施の形態によるカプラ1Bと比較して良くなり、絶縁膜H1が剥がれることを抑制することができる。
【0154】
本発明の背景技術によるカプラ100(
図18〜
図21)が導体膜M1の下部全面に薄膜抵抗パターンが接している構造を有しているのに対して、本発明の第4の実施の形態によるカプラ1B,1Cでは、基板表面と同じ材質で絶縁膜H01と絶縁膜H1を形成しているので、絶縁膜H01、絶縁膜H1、及び基板表面相互間の密着性を、薄膜抵抗パターンがないときと同等程度とすることができる。また特に絶縁膜H01及び絶縁膜H1をアルミナや窒化シリコンなどの薄膜抵抗パターンと反応性の小さい無機材料で形成することで薄膜抵抗パターンの酸化等による影響を抑え、基板面内での抵抗値ばらつきを小さく抑えることが可能である。
【0155】
以下、
図17に関して再度説明する。
図10〜
図13に示したカプラ1Cの構成において、基板K1にフェライトを使用し、平坦化膜H0としてアルミナをスパッタリング法で成膜して、CMPで平坦化した。薄膜抵抗パターンは50Ω/sqのニッケルクロム合金をスパッタリング法で成膜後にフォトリソグラフィ法でパターンを作製し、イオンミリングにてパターン部以外を除去して、パターンを形成した。フォトリソグラフィ法でパターンを作製した上で、絶縁膜H1として、アルミナ膜を成膜し、リフトオフ法にてスルーホールを形成し、導体膜M1と薄膜抵抗パターンR13、R23を接続する。導体膜M1として、フォトリソグラフィ法でパターンを作製し、銅をメッキにて形成した。保護層I1は感光性ポリイミドをフォトリソグラフィ法でパターニングして形成した。端子M2はフォトリソグラフィ法でパターンを作製し、銅をメッキにて形成し、その表面にNi/Au合金をメッキにて形成した。
【0156】
これに対して
図18〜
図21に示したカプラ100の構成において、基板K1にフェライトを使用し、平坦化膜H0としてアルミナをスパッタリング法で成膜して、CMPで平坦化した。薄膜抵抗パターンR1は50Ω/sqのニッケルクロム合金をスパッタリング法で成膜し、導体膜M1としてフォトリソグラフィ法でパターンを作製し、銅をメッキにて形成した。保護層I1は感光性ポリイミドをフォトリソグラフィ法でパターニングして形成した。端子M2はフォトリソグラフィ法でパターンを作製し、銅をメッキにて形成し、その表面にNi/Au合金をメッキにて形成した。
【0157】
図17は、以上説明したようにして作製したカプラ1Cとカプラ100それぞれの構造に関して、アッテネーターの周波数特性を調べたものである。理想的なアッテネーターは周波数特性を持たずに一定の減衰量を示すものである。比較例Ex0では10GHzで17.39dBまで変化してしまい、使用上問題があったが、実施例Ex1では10GHzで17.56dBとなり、約0.2dBの改善をすることができた。