(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1〜3置換の芳香族化合物が、フェノール誘導体、カテコール誘導体、レゾルシン誘導体、ヒドロキノン誘導体、および2〜3置換の芳香族系アルケニル化合物からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の変性シス−1,4−ポリブタジエンの製造方法。
遷移金属化合物がコバルト化合物、ニッケル化合物およびチタン化合物からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項5に記載の変性シス−1,4−ポリブタジエンの製造方法。
1〜3置換の芳香族化合物が、フェノール誘導体、カテコール誘導体、レゾルシン誘導体、ヒドロキノン誘導体、および2〜3置換の芳香族系アルケニル化合物からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の変性シス−1,4−ポリブタジエンの製造方法。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエンの重合触媒については、従来から数多くの提案がなされており、特にハイシス−1,4−ポリブタジエン、すなわち、シス−1,4結合含量の高いポリブタジエンは、熱的、機械的に優れた特性を有するため、多くの重合触媒が開発されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、コバルト化合物、酸性金属ハライド、アルキルアルミニウム化合物及び水からなる触媒を用い、1,3−ブタジエンを重合させる高シス−1,4−ポリブタジエンの製造法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ジエチルアルミニウムクロライド、水、及びコバルトオクトエートよりなる触媒を用い、1,3−ブタジエンを直鎖状または分岐状脂肪族炭化水素よりなる溶媒中で重合させる方法が開示されている。
【0005】
ハイシス−1,4−ポリブタジエンにおいては、ポリマー鎖の分岐度が小さいもの、すなわち、リニアタイプのハイシス−1,4−ポリブタジエンは、耐発熱性、反撥弾性等に優れた特性を有している。しかし、分岐度の高いブランチタイプのハイシス−1,4−ポリブタジエンと比較して、ゴムにカーボンブラックなどを配合して得られる配合物を製造する際に加工性が低下するため、これを改良する方法が求められていた。
【0006】
ポリブタジエンの加工性を改良する方法として、特許文献3には、ポリブタジエンの重合溶液を有機アルミニウム化合物及びハロゲン化アルキル化合物で処理する方法が開示されている。また、特許文献4には、不飽和結合を有するゴムを溶媒に溶解し、ルイス酸の存在下、有機酸ハライドを反応させてゴムを変性する方法が記載されている。しかし、これらの方法はいずれも、重合工程の後に、重合物を変性する工程が必要となり、煩雑な操作を省力化した方法の開発が望まれている。
【0007】
一方、ゴム組成物の発熱性を改良する方策として、近年補強材としてカーボンブラックの代わりにシリカを使用するケースが増えてきている。しかしながら、シリカの表面には極性のあるシラノール基があるため、シリカはポリブタジエンなどの炭化水素構造との親和性が低く、これによりシリカが配合されたゴム中においてシリカ粒子が凝集し易くなり、分散性が悪くなるといった問題が生じていた。その結果、シリカ凝集体の分裂、すなわちペイン効果が起こると、シリカ凝集体の内部では強いシリカ−シリカ相互作用が観測され、シリカ−ゴム間で大きなヒステリシスロスが生じて発熱性悪化の原因となっていた。
【0008】
極性シリカ表面と非極性ゴムマトリックス間の親和性や相互作用を強化する方策としては、二元機能を持ったシランカップリング剤の使用やゴムの化学変性が鋭意研究されている。ゴムの化学変性技術として、ハイシス−1,4−ポリブタジエンを化学変性したものの多くは、希土類触媒を使って1,3−ブタジエンをリビング重合した後、各種の効果的なアルコキシシランカップリング剤を使用して、分子末端を機能化する方法が報告されている。
【0009】
特許文献5には、コバルト化合物でポリブタジエンゴムを重合した後、必要に応じて、更に酸ハロゲン化物、ハロゲン含有硫黄化合物、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物などを反応させてコールドフロー性を改良する方法が記載されている。
【0010】
その後、加工性と低ロス性のバランス改良を目的として、コバルト化合物でポリブタジエンゴムを重合した後、所定量の有機ハロゲン化合物で変性する方法が開示されている(特許文献6および7)。しかし、昨今の環境低負荷・省エネルギーの観点から、さらなる加工性と低ロス性の向上に対する要望が高まっている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1)シス−1,4−ポリブタジエンの製造
シス−1,4−ポリブタジエンは、遷移金属化合物および有機アルミニウム化合物を含有する重合触媒の存在下、1,3−ブタジエンを重合することにより製造することができる。
【0024】
(重合触媒)
重合触媒に用いられる遷移金属化合物としては、コバルト化合物、ニッケル化合物およびチタン化合物などを挙げることができるが、コバルト化合物が好適に用いられる。また、有機アルミニウム化合物としては、ハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物及びアルキルアルミニウム化合物などを挙げることができ、これらは単独でも併用して用いることもできる。例えば、コバルト化合物を用いた触媒系(以下、コバルト系触媒組成物という場合がある。)としては、コバルト化合物、ハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物および水からなる触媒系またはコバルト化合物、ハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物、水およびアルキルアルミニウム化合物からなる触媒系を好ましく用いることができる。
【0025】
コバルト系触媒組成物におけるコバルト化合物としては、コバルトの塩や錯体が好ましく用いられ、特に好ましいものとして、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト(コバルトオクトエート)、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、酢酸コバルト、マロン酸コバルト等のコバルト塩や、コバルトのビスアセチルアセトネートやトリスアセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト、ハロゲン化コバルトのトリアリールフォスフィン錯体、トリアルキルフォスフィン錯体、ピリジン錯体やピコリン錯体等の有機塩基錯体、エチルアルコール錯体等のコバルト錯体が挙げられる。
【0026】
また、コバルト系触媒組成物におけるハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物としては、R
13−nAlX
n(式中、R
1は炭素数1〜10の炭化水素基、Xはハロゲンを示し、nは1〜2の数である。)で表されるものが好ましい。例えば、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイドなどのジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジクロライド、アルキルアルミニウムジブロマイドなどのアルキルアルミニウムジハライド等が挙げられる。具体的化合物としては、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジシクロヘキシルアルミニウムモノクロライド、ジフェニルアルミニウムモノクロライド等が挙げられ、この中でも特にジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライドが好ましい。
【0027】
また、コバルト系触媒組成物におけるアルキルアルミニウム化合物としては、R
23Al(式中、R
2は炭素数1〜10の炭化水素基を示す。)で表されるものが好ましい。例えば、トリアルキルアルミニウム化合物、より具体的には、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられる。
【0028】
また、アルミノキサンを用いてもよい。アルミノキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R’)O−)
n(式中、R’は炭素数1〜10の炭化水素基を示し、一部ハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)で示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンが挙げられる。好ましいR’としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基が挙げられるが、メチル基及びエチル基が特に好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。
【0029】
(1,3−ブタジエンの重合)
1,3−ブタジエンの重合は、例えば、次のように行う。まず、内部を窒素置換した耐圧容器に1,3−ブタジエンと溶媒を仕込み、次いで、水、分子量調節剤及び有機アルミニウム化合物を仕込んで攪拌する。耐圧容器を所定の温度にした後、遷移金属重合触媒を仕込み、重合を開始する。重合は、常圧または10気圧(ゲ−ジ圧)程度までの加圧下に行われる。
【0030】
触媒成分の添加順序としては、不活性溶媒中に水を添加して均一に混合して、有機アルミニウム化合物を添加し、コバルト化合物を添加して重合を開始することが好ましい。有機アルミニウム化合物を添加した後、所定時間の熟成を行い、コバルト化合物を加えることが好ましい。熟成時間は0.1〜24時間が好ましく、熟成温度は0〜80℃が好ましい。
【0031】
重合触媒として、コバルト化合物、ハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物および水からなるコバルト系触媒組成物を用いる場合、コバルト化合物については、1,3−ブタジエン1モルに対して1×10
−7〜1×10
−3モルの範囲あることが好ましい。また、ハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物については、1,3−ブタジエン1モルに対して1×10
−5〜1×10
−1モルの範囲の範囲にあることが好ましい。また、水については、1,3−ブタジエン1モルに対して1×10
−5〜1×10
−1モルの範囲にあることが好ましい。
【0032】
上記コバルト系触媒組成物に用いられるハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物の添加量は、添加する水に対しては、0.9〜3.0倍、中でも1.0〜2.0倍であることが好ましい。この範囲より大きいと所望する物性が得られず、この範囲より小さいと加工性が悪くなる傾向がある。ハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物の添加量と添加する水の割合は、とりわけポリブタジエンのリニアリティーを制御する上で重要である。
【0033】
重合溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のC4留分などのオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。また、1,3−ブタジエンそのものを重合溶媒としてもよい。
【0034】
中でも、ベンゼン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0035】
分子量調節剤としては、重合時に公知の、例えば、シクロオクタジエン、アレンなどの非共役ジエン類、またはエチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン類を使用することができる。特に好ましくはシクロオクタジエンであり、1,3−ブタジエン1モル当たり0.5〜40mmolが好ましく、1〜10mmolがさらに好ましく、1〜7mmolが特に好ましい。この範囲以外の量を用いると、重合体の加工性が悪化する傾向がある。
【0036】
重合温度は、−30〜100℃の範囲が好ましく、30〜80℃の範囲が特に好ましい。重合時間は5分〜12時間の範囲が好ましく、10分〜6時間がさらに好ましく、15分〜1時間が特に好ましい。
【0037】
(シス−1,4−ポリブタジエンの性状)
本発明で用いるシス−1,4−ポリブタジエンのムーニー粘度は10〜120、好ましくは15〜100、より好ましくは、20〜70である。ムーニー粘度が上記範囲より大きいと加工が困難であり、上記範囲より小さいと耐摩耗性や低ロス性が低下する傾向がある。
【0038】
また、5重量%トルエン溶液の溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML
1+4)の比(Tcp/ML
1+4)は1.0〜6.0が好ましい。また、Mw/Mnは1.2〜5.0が好ましく、特に好ましくは1.5〜4.5である。
【0039】
(2)シス−1,4−ポリブタジエンの変性
本発明の一実施形態に係る変性シス−1,4−ポリブタジエンは、ルイス酸および有機ハロゲン化合物の存在下、シス−1,4−ポリブタジエンと変性剤である下記一般式(1)で表される1〜3置換の芳香族化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0040】
【化3】
式(1)において、Yは水素、水酸基、アルケニル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示し、Z
1、Z
2はそれぞれ水素、水酸基、アルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。
【0041】
(変性剤)
上記一般式(1)で表される変性剤の例として、具体的には、アニソール、フェネトール、n−プロポキシベンゼン、イソプロポキシベンゼン、n−ブトキシベンゼン、イソブトキシベンゼン、sec−ブトキシベンゼン、n−ペンチルオキシベンゼン、イソペンチルオキシベンゼン、ネオペンチルオキシベンゼン、n−ヘキシルオキシベンゼン、(2−エチルブチルオキシ)ベンゼン、n−オクチルオキシベンゼン、n−デシルオキシベンゼン、ベラトロール、1,3−ジメトキシベンゼン、1,4−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシベンゼン、1,3−ジエトキシベンゼン、1,4−ジエトキシベンゼン、1,2−ジ−n−プロポキシベンゼン、1,3−ジ−n−プロポキシベンゼン、1,4−ジ−n−プロポキシベンゼン、1,2−ジ−n−ブトキシベンゼン、1,3−ジ−n−ブトキシベンゼン、2−エトキシ−メトキシベンゼン、3−エトキシ−メトキシベンゼン、4−エトキシ−メトキシベンゼン、2−プロポキシ−メトキシベンゼン、3−プロポキシ−メトキシベンゼン、4−プロポキシ−メトキシベンゼン、1,4−ジ−n−ブトキシベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、1,2,3−トリメトキシベンゼン、1,2,4−トリメトキシベンゼン、1,3,5−トリメトキシベンゼン、フェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、3,4−ジメトキシフェノール、3,5−ジメトキシフェノール、カテコール、3−メトキシカテコール、レゾルシノール、2−メトキシレゾルシノール、5−エトキシレゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、アネトール、サフロール、イソサフロール、オイゲノール、メチルオイゲノール、イソオイゲノール、メチルイソオイゲノール、ピロガロール、ピロガロールトリメチルエーテル、フロログルシノール、フロログルシノールトリメチルエーテルなどが挙げられる。この中でもフェノール誘導体、カテコール誘導体、レゾルシン誘導体、ヒドロキノン誘導体、および2〜3置換の芳香族系アルケニル化合物からなる群より選択された1種以上の変性剤を用いることが好ましく、さらにフェノール誘導体、カテコール誘導体、レゾルシン誘導体が好ましく、特にアニソール、フェネトール、アネトール、ベラトロール、1,3−ジメトキシベンゼン、1,3−ジエトキシベンゼン、1,2−メチレンジオキシベンゼン、サフロール、イソサフロール、メチルイソオイゲノールが好ましい。また、これらのうち2種類以上を組み合わせて使用しても問題ない。
【0042】
(ルイス酸)
変性反応に用いられるルイス酸は、一般に知られているものが使用可能である。その代表例は金属または半金属のハロゲン化物であって、例えばBe、B、Al、Si、P、S、Ti、V、Fe、Zn、Ga、Ge、As、Se、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Sb、Te、Hf、Ta、W、Hg、Bi、Uなどの元素、またはPO、SeO、SO、SO
2、VOなどの酸素−元素結合体のハロゲン化物もしくは有機ハロゲン化物、またはこれらの錯体などが挙げられる。さらに具体的には、BF
3、BF
3・O(C
2H
5)
2、(CH
3)
2BF、BCl
3、AlCl
3、AlBr
3、(C
2H
5)AlCl
2、POCl
3、TiCl
4、VCl
4、MoCl
6、SnCl
4、(CH
3)SnCl
3、SbCl
5、TeCl
4、TeBr
4、FeCl
3、WCl
6、Sc(OTf)
3、Hf(OTf)
3、Sb(OTf)
3、Bi(OTf)
3、およびGa(OTf)
3などが挙げられる。中でも好ましいのはアルミニウムのハロゲン化物またはアルミニウムの有機ハロゲン化物である。
また、本実施形態においては、変性反応におけるルイス酸として、有機アルミニウム化合物を用いることができる。そのため、上記1,3−ブタジエンの重合で用いた有機アルミニウム化合物をルイス酸として引き続き使用することができる。1,3−ブタジエンの重合で用いた有機アルミニウム化合物をルイス酸として引き続き使用することで、変性反応の際に新たなルイス酸を添加する必要がないため好ましい。本実施形態においては、例えば、上記コバルト系触媒組成物に用いられるハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物と同じものを用いることが好ましい。なお、有機アルミニウム化合物は、変性反応の際にルイス酸として別途添加することもできる。
【0043】
(有機ハロゲン化合物)
変性反応に用いられる有機ハロゲン化合物は、ルイス酸と反応してカルボカチオンを生成するものであれば特に制限はなく、例えば、下記一般式(2)で表されるハロゲン化アルキルを用いることができる。
【0044】
【化4】
式(2)において、R
3、R
4は水素、クロル、ブロムまたは炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、クロル置換アルキル基、アルコキシ基などであり、R
5はクロル、ブロムまたは炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、クロル置換アルキル基、アルコキシ基などであり、Xはクロル、ブロムなどのハロゲンである。R
3およびR
4が水素である場合は、R
5はアリール基であることが好ましい。上記のアルキル基は、飽和あるいは不飽和であってもよく、また、直鎖状、分岐状または環状のものであってもよい。
【0045】
具体的化合物としては、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、フェニル、ベンジル、ベンゾイル、ベンジリデンなどの塩化物、臭化物あるいはヨウ化物などが挙げられる。また、メチルクロロホルメート、ブロモホルメート、クロロジフェニルメタンまたはクロロトリフェニルメタンなどが挙げられる。本実施形態においては、生成するカルボカチオンの安定性などから、第3級ハロゲン化アルキル、特に、炭素数4〜12の第3級ハロゲン化アルキルが好ましく、具体的には、t−ブチルクロライドおよびt−ブチルブロマイドが好ましい。
【0046】
また、変性反応に用いられる有機ハロゲン化合物として、下記一般式(3)で表されるハロゲン化アシル化合物を用いることができる。
【0047】
【化5】
式(3)において、R
6は水素、クロル、ブロムまたは炭素数1〜12のアルキル基、アリール基、クロル置換アルキル基、アルコキシ基などであり、Xはクロル、ブロムなどのハロゲンである。
【0048】
(変性反応)
変性反応は、1,3−ブタジエンの重合停止後、重合に引き続いて行ってもよく、反応生成物中に残留している溶媒や未反応モノマーを除去した後に行ってもよい。また、スチームストリッピング法や真空乾燥法などで重合体を乾燥させた後、シクロヘキサンなどの溶媒に再度溶解させてから行ってもよい。重合系にハロゲン含有アルミニウム化合物などのルイス酸成分が含まれている場合は、1,3−ブタジエンの重合に引き続き変性反応を行うのが好適である。
【0049】
1,3−ブタジエンの重合に引き続き変性反応を行う場合は、重合後、変性剤を添加し、その後、所定の温度において有機ハロゲン化合物を添加して所定時間攪拌混合する。この際、必要に応じてルイス酸を添加することもできる。変性剤をポリブタジエンに反応させる温度は、好ましくは20〜100℃、より好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは50〜90℃である。この温度範囲より高いと、ゲル化を促進するため好ましくない。一方、この温度範囲より低いと、変性反応が効果的に起こり難い。反応時間は、1〜600分間が好ましい。より好ましくは、10〜90分間攪拌混合することが望ましい。
【0050】
変性剤の量としては、シス−1,4−ポリブタジエン中の1,3−ブタジエンユニット1モルに対して1×10
−3〜100モルの量が好ましく、特に1×10
−2〜10モルが好ましい。さらに、有機ハロゲン化合物の量としては、上記重合反応時の有機アルミニウム化合物に対して0.05〜50倍、好ましくは1〜20倍である。この量より少ないと、変性反応が十分に進行せず、所望の重合体を得ることが出来ない場合がある。また、多すぎると、ポリブタジエン分子同士の反応によるゲル化が促進され、所望の重合体を得られない場合がある。変性反応後は、反応槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0051】
(変性度)
本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンの変性度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を用いる手法により算出する。これについて、
図1に基づいて詳細に説明する。
【0052】
図1において縦軸は、GPC測定によって得られたポリマーのUV吸光度から得られるピーク面積値UVと、示差屈折率(RI)から得られるピーク面積値RIの比、UV/RIの値を示す。
【0053】
横軸は(1/Mn)×10
4の値を示し、Mnは数平均分子量である。
図1において、Li−BR(未変性)は、Li系触媒によるアニオン重合によって1,3−ブタジエンを重合したポリマーそのもののUV/RIの値を、異なる5種類の数平均分子量Mnのポリマーについてプロットしたもので、直線として近似することができる。また、Li−BR(変性)は、Li系触媒によるアニオン重合によって重合した後、重合末端と3,5−ジメトキシベンジルブロミドを反応させて変性したポリマーのUV/RIの値を、異なる5種類の数平均分子量Mnのポリマーについてプロットしたもので、直線として近似することができる。
【0054】
アニオン重合の場合は、ポリマー1分子と変性剤1分子が定量的に反応することから、ある数平均分子量(Mn1)におけるLi−BR(変性)のUV/RI値とLi−BR(未変性)のUV/RI値の差をAとする。これはその数平均分子量(Mn1)である1分子鎖に変性剤が1分子反応した場合のUV/RI値の変化量を示すため、この値を基準に変性度を算出することができる。
【0055】
Li−BRと同様にして、ある数平均分子量(Mn1)である本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンと、変性に用いたものと同じ方法で得られた未変性のシス−1,4−ポリブタジエンについて、それぞれUV/RI値を算出してその差をBとすると、本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンの変性度は以下の式で表すことができる。
【0057】
以上のようにして求めた本実施形態のシス−1,4−ポリブタジエンの変性度は、特に限定されるものではないが、0.1を超えることが好ましく、0.5を超えることがより好ましい。また、変性度は20を超えないことが好ましく、15を超えないことがより好ましい。変性度が0.1以下では変性による効果が十分でない場合があり、変性度が20以上では本来のシス−1,4−ポリブタジエンが有する特性を損なう場合がある。
【0058】
(3)ゴム組成物の製造
本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンは、単独で、または他の合成ゴム若しくは天然ゴムとブレンドして配合し、必要ならばプロセス油で油展し、次いでカーボンブラックやシリカ等の充填剤(フィラー)、シランカップリング剤、加硫剤、加硫促進剤、その他の通常の配合剤を加えて加硫することでゴム組成物とすることができる。
【0059】
(他の合成ゴム)
ゴム組成物に含まれる他の合成ゴムとしては、加硫可能なゴムが好ましく、具体的にはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリイソプレン、ハイシスポリブタジエンゴム、ローシスポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。これらの中でもSBRが好ましい。さらにSBRの中でも溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム(S−SBR)が特に好ましい。これらのゴムは単独でも、二種以上組合せて用いても良い。
【0060】
溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム(S−SBR)のミクロ構造としては、スチレン含量が15〜35重量%、好ましくは17〜30重量%、ブタジエン部分のビニル結合含量が30〜75%、好ましくは32〜72%である。このS−SBRを、ゴム成分100重量部に対し、30重量部以上90重量部未満、好ましくは50〜80重量部使用することにより、上記効果が発現される。S−SBRの配合量が少ないとウェット性能が低下するので好ましくなく、逆に多いと耐摩耗性や、低ロス性が悪化するので好ましくない。かかるS−SBRは公知であり、例えば日本ゼオンNipol、旭化成アサプレンなどの市販品を用いることができる。
【0061】
(シランカップリング剤)
ゴム組成物に用いられるシランカップリング剤としては、一般式R
7nSiR
84−nで表される有機珪素化合物で、R
7は、ビニル基、アシル基、アリル基、アリルオキシ基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、クロル基、アルキル基、フェニル基、水素、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、ウレイド基などから選ばれる反応基を有する炭素数1〜20の有機基であり、R
8は、クロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基などから選ばれる加水分解基であり、nは1〜3の整数を示す。
【0062】
上記のシランカップリング剤のR
7成分において、ビニル基及び/またはクロル基を含有するものが好ましい。
【0063】
具体的なシランカップリング剤として、市販で利用できるものは、例えば、以下のものが含まれるが、決してこれらに限定されるものではない。ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、クロロメチルジメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、ジアセトキシメチルジニルシラン、アリルオキシジメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、フェニルビニルジクロロシラン、トリアセトキシビニルシラン、3−クロロプロピルメチルジビニルシラン、ジエトキシジビニルシラン、メチルイソブチルケトキシムビニルシラン、ジメチルイソブトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、メチルフェニルビニルクロロシラン、メチルフェニルビニルシラン、ジメチルイソペンチルオキシビニルシラン、4−ブロモフェニルジメチルビニルシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、4−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、ジメチルピペリヂノメチルビニルシラン、ジメチル−2−[(2−エトキシエトキシ)エトキシ]ビニルシラン、ジビニルメチルフェノキシシラン、ジメチル−P−アニシルビニルシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、トリイソプロポキシビニルシラン、ジエトキシ−2−ピペリジノエトキシビニルシラン、ジフェニルビニルクロロシラン、3−ジメチルビニルフェニル−N,N−ジエチルカルボメイト、トリフェノキシビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1−(4−メチルピペリジノメチル)−1,1,3,3−テトラメチル−3−ビニルジシロキサン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシロキシ)ベンゼン、1,3−ビス(ジメチルビニルシロキシ)ベンゼン、1,1,3,3−テトラフェニル−3−ジビニルジシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニルサイクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルサイクロテトラシロキサン、テトラキス(ジメチルビニルシロキシメチル)メタン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどがある。
【0064】
シランカップリング剤の添加量としては、フィラー量に対して0.2〜20%が良く、5〜15%が特に好ましい。上記の範囲よりも少ないと、スコーチの原因となるために好ましくない。また、上記の範囲よりも多いと引張り特性、延びの悪化の原因となるため好ましくない。
【0065】
(4)ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物の製造
また、本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンは、プラスチック、例えば、耐衝撃性ポリスチレンの改質剤として使用する、すなわち、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物を製造することもできる。
【0066】
上記のゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物の製造方法としては、本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンの存在下にスチレン系モノマーの重合を行う方法が採用され、塊状重合法や塊状懸濁重合法が経済的に有利な方法である。スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンのようなアルキル置換スチレン、クロロスチレンのようなハロゲン置換スチレンなど、従来ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物製造用として知られているスチレン系モノマーの1種又は2種以上の混合物が用いられる。これらの中で好ましいのはスチレンである。
【0067】
製造時に必要に応じて上記変性シス−1,4−ポリブタジエンの他に、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、アクリル系ゴムなどを上記変性シス−1,4−ポリブタジエンに対して50重量%以内で併用することができる。又、これらの方法によって製造された樹脂をブレンドしてもよい。更に、これらの方法によって製造された樹脂を含まないポリスチレン系樹脂を混合して製造してもよい。上記の塊状重合法として一例を挙げて説明すると、スチレンモノマー(99〜75重量%)に変性シス−1,4−ポリブタジエン(1〜25重量%)を溶解させ、場合によっては溶剤、分子量調節剤、重合開始剤などを添加して、10〜40%のスチレンモノマー転化率まで変性シス−1,4−ポリブタジエンを分散した粒子に転化させる。このゴム粒子が生成するまではゴム相が連続相を形成している。更に重合を継続してゴム粒子として分散相になる相の転換(粒子化工程)を経て50〜99%の転化率まで重合してゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物が製造される。
【0068】
変性シス−1,4−ポリブタジエンの分散粒子(ゴム粒子)は、樹脂中に分散された粒子で、変性シス−1,4−ポリブタジエンとポリスチレン系樹脂よりなり、ポリスチレン系樹脂は変性シス−1,4−ポリブタジエンにグラフト結合したり、或いはグラフト結合せずに吸蔵されている。本実施形態では、変性シス−1,4−ポリブタジエンの分散粒子の径として0.5〜7.0μmの範囲、好ましくは1.0〜3.0μmの範囲のものが好適に製造できる。
【0069】
グラフト率として、150〜350の範囲のものが好適に製造できる。バッチ式でも連続的製造方法でもよく特に限定されない。
【0070】
上記のスチレン系モノマーと変性シス−1,4−ポリブタジエンとを主体とする原料溶液は完全混合型反応器において重合されるが、完全混合型反応器としては、原料溶液が反応器において均一な混合状態を維持するものであればよく、好ましいものとしては、ヘリカルリボン、ダブルヘリカルリボン、アンカーなどの型の攪拌翼が挙げられる。ヘリカルリボンタイプの攪拌翼にはドラフトチューブを取り付けて、反応器内の上下循環を一層強化することが好ましい。
【0071】
ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物には、製造時や製造後に適宜必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、滑剤、着色剤、各種充填剤及び各種の可塑剤、高級脂肪酸、有機ポリシロキサン、シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤や発泡剤などの公知添加剤を添加してもよい。
【0072】
本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンによって得られるゴム組成物は、タイヤ・防振ゴム・ベルト・ホース・免震ゴムなどの工業用品や紳士靴、婦人靴、スポーツシューズなどの履物といった各種のゴム用途に使用される。その場合、ゴム成分中に少なくとも本実施形態の変性シス−1,4−ポリブタジエンを10重量%含有するように配合することが好ましい。また、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂組成物は、公知の各種成形品に用いることはできるが、難燃性、耐衝撃強度、引張強度に優れるために電気・工業用途分野、包装材料、住宅関連材料、OA機器用材料、工具、日用品等に好適である。例えばテレビ、パソコン、エアコンなどの筐体、複写機やプリンターなど事務機器の外装材、冷凍食品、乳酸飲料、アイスクリームなどの食品容器といった広範な用途に用いることができる。
【実施例】
【0073】
(評価方法)
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、実施例中のムーニー粘度、トルエン溶液粘度、数平均分子量、加工性、加硫物の反撥弾性、加硫物のtanδ、永久歪の測定は、以下の方法により行った。
【0074】
ムーニー粘度(ML
1+4、100℃):JIS−K6300に従い、株式会社島津製作所製のムーニー粘度計(SMV−300)を使用して、100℃で1分予熱したのち、4分間測定してゴムのムーニー粘度(ML
1+4、100℃)として表示した。
【0075】
トルエン溶液粘度(Tcp):ポリマー2.28gをトルエン50mlに溶解した後、標準液として粘度計校正用標準液(JIS Z8809)を用い、キャノンフェンスケ粘度計No.400を使用して、25℃で測定した。
【0076】
数平均分子量:ポリスチレンを標準物質としてテトラヒドロフランを溶媒として温度40℃で、GPC(株式会社島津製作所製)法により行い、得られた分子量分布曲線から求めた検量線を用いて計算し、数平均分子量を求めた。
【0077】
変性度:上述の通り、対象となる実施例と同じ数平均分子量におけるLi−BR(変性)のUV/RI値とLi−BR(未変性)のUV/RI値の差をA、対象となる実施例のUV/RI値をBとして、次式より求めた。
【0078】
【数2】
【0079】
加工性:未加硫物のムーニー粘度で評価した。試作品2または3を100として指数表示し、指数は大きいほど良好となるように換算した。
【0080】
加硫物の反撥弾性:BS903に従い、ダンロップ・トリプソメーターを使用して室温で反発弾性を測定し、試作品2または3を100として指数表示した。指数が大きいほど低ロス性が良好である。
【0081】
貯蔵弾性率(G’)のひずみ依存性(ペイン効果):アルファーテクノロジー社製のゴム加工性解析装置RPA−2000を使い、120℃、1Hzの周波数の条件で動的ひずみ分析を行った。ペイン効果は、ひずみ45%時のG’とひずみ0.5%時のG’の比(G’
45%/G’
0.5%)を試作品2または3を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、補強剤の分散性が良好であることを示す。
【0082】
加硫物のtanδ:GABO社製EPLEXOR 100Nを用いて、温度50℃、周波数10Hz、動的歪み0.3%の条件で測定し、試作品2または3を100として指数表示し、指数は大きいほど良好となるように換算した。
【0083】
発熱量・永久歪:JIS K6265に規定されている測定方法に準じて測定し、試作品2または3を100として指数表示し、指数は大きいほど良好となるように換算した。
【0084】
(実施例1)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを32.4重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液600mL(シクロヘキサン26.4重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を39.2重量%含有)を仕込み、次に水1.3mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.9mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン5.1mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.005mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤1,3−ジメトキシベンゼン(DMOB)を430mmol添加し、オートクレーブを昇温した。70℃に内温が到達してから、t−ブチルクロライド3.8mmolを添加して60分反応した。そこに老化防止剤を添加して80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの変性度は0.35であった。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0085】
(実施例2)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.3重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液500mL(シクロヘキサン37.3重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.2重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン7.3mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤1,3−ジメトキシベンゼン(DMOB)を9.1mmol添加し、オートクレーブを内温70℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド15.8mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0086】
(実施例3)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.3重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液500mL(シクロヘキサン37.3重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.2重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン4.5mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤1,3−ジメトキシベンゼン(DMOB)を9.0mmol添加し、80℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド3.3mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0087】
(実施例4)
変性剤を1,3−ジエトキシベンゼン(DEOB)とした他は、実施例3と同様に反応を行った。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0088】
(実施例5)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.3重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液500mL(シクロヘキサン37.3重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.2重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン7.3mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤ベラトロールを9.2mmol添加し、70℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド31.3mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0089】
(実施例6)
変性剤を1,2−メチレンジオキシベンゼン(MDB)とした他は、実施例3と同様に反応を行った。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0090】
(実施例7)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.3重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液500mL(シクロヘキサン37.3重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.2重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン4.5mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤アニソールを9.3mmol添加し、70℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド3.3mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0091】
(実施例8)
変性剤をフェネトールとした他は、実施例7と同様に反応を行った。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0092】
(実施例9)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.3重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液500mL(シクロヘキサン37.3重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.2重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン4.5mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤アネトールを9.3mmol添加し、70℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド7.9mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0093】
(実施例10)
変性剤をサフロールとした他は、実施例3と同様に反応を行った。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0094】
(実施例11)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.3重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液500mL(シクロヘキサン37.3重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.2重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン4.5mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤イソサフロールを9.0mmol添加し、70℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド3.3mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0095】
(実施例12)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.6重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液600mL(シクロヘキサン36.8重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.1重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン4.5mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤1,2−メチレンジオキシベンゼン(MDB)を18mmol添加し、80℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド3.3mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0096】
(実施例13)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.6重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液600mL(シクロヘキサン36.8重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.1重量%含有)を仕込み、次に水1.1mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.6mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン4.5mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.003mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。重合反応後に変性剤イソサフロールを9.0mmol添加し、80℃まで昇温した。次いで、t−ブチルクロライド3.3mmolを添加して15分反応した。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0097】
(比較例1)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを32.4重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液600mL(シクロヘキサン26.4重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を39.2重量%含有)を仕込み、次に水1.3mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.9mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン5.3mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.005mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られたシス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0098】
(比較例2)
内部を充分窒素置換した1.5リットル容量のステンレス製のオートクレーブに、1,3−ブタジエンを30.6重量%含有するシクロヘキサン−C4留分混合溶液600mL(シクロヘキサン36.8重量%、シス−2−ブテンを主成分とするC4留分を31.1重量%含有)を仕込み、次に水1.3mmol、ジエチルアルミニウムモノクロライド1.9mmolを加えて攪拌を行ない、シクロオクタジエン5.3mmolを添加した。オートクレーブを昇温し、60℃に内温が到達してから、コバルトオクトエート0.005mmolを加えて、60℃で25分間重合反応を行なった。老化防止剤を添加後、重合体をエタノールで析出させ、80℃で3時間真空乾燥した。得られたシス−1,4−ポリブタジエンの物性を表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
(試作品1)
実施例1で得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンを用い、表2に示す配合処方に従って250ccのラボプラストミルによりSBR及びシリカ等と混練した後、加硫剤及び加硫助剤をオープンロールで混合した。次いで、温度160℃でプレス加硫し、得られた加硫試験片の物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0101】
(試作品2)
比較例1で得られたシス−1,4−ポリブタジエンを用いた他は、試作品1と同様に配合加工し、物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0102】
【表2】
【0103】
配合に用いた化合物の詳細は次の通りである。
SBR:スチレン含量が23%、ML
1+4(100℃)70
シリカ:東ソー・シリカ(株)製、商品名 ニップシールAQ
シランカップリング剤:エボニック製、商品名 Si69
オイル:サン石油(SUNOCO)製、サンセンオイル4240
酸化亜鉛:堺化学工業 Sazex 1号
ステアリン酸:花王ステアリン酸
老化防止剤:住友化学 アンチゲン6C
硫黄:細井化学工業(株)製
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーCZ
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーD
【0104】
得られた配合物の評価結果を表3に示した。試作品2の各評価項目を100と規定し、試作品1と比較した。各項目とも数値が大きいほど特性が優れていることを表している。
【0105】
【表3】
【0106】
(試作品3)
比較例2で得られたシス−1,4−ポリブタジエンを用い、表4に示す配合処方に従って250ccのラボプラストミルによりSBR及びシリカ等と混練した後、加硫剤及び加硫助剤をオープンロールで混合した。次いで、温度160℃でプレス加硫し、得られた加硫試験片の物性評価を行った。その結果を表5に示した。
【0107】
(試作品4)
実施例12で得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンを用いた他は、試作品3と同様に配合加工し、物性評価を行った。その結果を表3に示した。
【0108】
(試作品5)
実施例13で得られた変性シス−1,4−ポリブタジエンを用いた他は、試作品3と同様に配合加工し、物性評価を行った。その結果を表5に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
配合に用いた化合物の詳細は次の通りである。
SBR:スチレン含量が23%、ML
1+4(100℃)70
シリカ:エボニック製、商品名 Ultrasil 7000GR
シランカップリング剤:エボニック・デグサ製、商品名 Si75
オイル:代替アロマオイル
酸化亜鉛:堺化学工業 Sazex 1号
ステアリン酸:花王ステアリン酸
老化防止剤:住友化学 アンチゲン6C
硫黄:細井化学工業(株)製
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーCZ
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製 ノクセラーD
【0111】
得られた配合物の評価結果を表5に示した。試作品3の各評価項目を100と規定し、試作品4および5と比較した。各項目とも数値が大きいほど特性が優れていることを表している。
【0112】
【表5】