【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出する変位センサにおいて、
極性の異なる2個のマグネット、もしくは磁性体と非磁性体の各1個のペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールを備えるとともに、
前記1ピッチを1周期とし、ピッチに対する位相θが(90/n)°ずつシフトする4n個の信号を出力するように、4n個(nは2または4)のセンサユニットが前記1ピッチの区間に磁気スケールに沿って直列に配列され、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は磁気スケールの1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、
さらに前記4n個の信号の平均を出力する平均化部を備えていることを特徴とする。
【0006】
この発明はまた、磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出することにより変位を検出する方法において、
極性の異なる2個のマグネット、もしくは磁性体と非磁性体の各1個のペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールが設けられると共に、
前記1ピッチを1周期とし、ピッチに対する位相θが(90/n)°ずつシフトする4n個の信号を出力するように、4n個(nは2または4)のセンサユニットが前記1ピッチの区間に磁気スケールに沿って直列に配列され、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は磁気スケールの1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、
さらに平均化部により、前記4n個の信号の平均を出力することにより、前記周期的誤差を打ち消すことを特徴とする。
【0007】
発明者は、磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出する変位センサでは、マグネット2個が1周期、2周期、4周期、あるいは磁性体と非磁性体の各1個のペアが1周期、2周期、4周期となる、周期的な誤差が生じることを見出した。センサユニットの側から見ると、複数のピッチが設けられた磁気スケールに対して移動する場合、1ピッチシフトすると磁気スケールから受ける磁気的環境は同じで、誤差も同じになる。従って誤差はピッチ毎に繰り返し、誤差の1周期分の長さ(誤差の波長)はピッチの整数分の1となる。そして磁気スケールの1ピッチに対し、4n個のセンサユニットを設けると、位相が90/n°ずつシフトした4n個の信号が得られ、これらを平均すると誤差の影響が小さくなる。この発明では、磁気スケールの1ピッチをn周期として繰り返す周期的誤差を打ち消し、正確に変位を検出できる。なおこの明細書において、変位センサに関する記載はそのまま変位検出方法にも当てはまり、変位検出方法に関する記載はそのまま変位センサにも当てはまる。
【0008】
位相が90/n°ずつシフトした4n個の信号が得られるようにし、これらを平均すると誤差の影響を特に小さくできる。
【0009】
好ましくは、前記磁気スケールは前記ピッチを複数備え、前記センサユニットは、検出中のピッチのオフセット信号を出力するように構成され、前記平均化部は、前記位相と前記オフセット信号とを用いて、前記平均を求める。4n個のセンサユニットからの位相を平均すると、測定レンジは1ピッチの長さの1/4nとなる。そこでオフセット信号を平均することにより、測定レンジを磁気スケールの全長へ拡大できる。
【0010】
特に好ましくは、前記センサユニットは前記1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、前記4n個のセンサユニットからの信号を平均することにより、周期的誤差を打ち消す。このようにすると、位相が90/n°ずつシフトした4n個の出力が得られ、これらを平均すると、正確に変位を検出できる。
好ましくは、磁気スケールが直線状に配置され、変位センサは磁気スケールに沿ったリニアな位置を検出するリニア変位センサである。
特に好ましくは、磁気スケールがリニアモータの磁石列で、リニアモータの駆動のために磁気スケールに沿ったリニアな位置を求める。
【0011】
またこの発明のリニア変位センサは、磁気スケールを基準とするリニアな位置を磁気素子により検出するリニア変位センサにおいて、
リニアモータのマグネット列中の、極性が異なりかつ隣接する2個のマグネットから成るペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールと、
前記1ピッチの長さをpとする際に、p/(4n)ずつ磁気スケールに沿った位置が変化するように、1ピッチの長さ内に配置されている、4n個のセンサユニット(nは2または4)と、
前記4n個のセンサユニットからの信号の平均を出力する平均化部と、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路と、を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は磁気スケールの1ピッチがn周期となる周期的誤差を有している。
【0012】
このようにすると、リニアモータをそのマグネット列を利用して、正確に駆動することができる。特にリニアモータのコイルからの磁界が誤差の原因となる状況で、正確に位置を検出できる。またセンサユニットは4n個なので、これらの信号は、1ピッチがn周期の誤差に対して、位相が90°/nずつシフトし、平均すると簡単に誤差を除くことができる。
【0013】
好ましくは、前記平均化部は、前記4n個のセンサユニットからのピッチ内座標ai(iは1から4nまでの自然数)の平均値に、前記4n個のセンサユニットが検出しているピッチの原点座標biの平均値を加算するように構成され、前記4n個のセンサユニットは隣接する2個のピッチを検出していることがある。4n個のセンサユニットが1ピッチの長さp以内の長さに渡って配置されていると、全体として隣接する2個のピッチを検出可能である。ここで、4n個のセンサユニットからのピッチ内座標aiは絶えず変化し、4n個のセンサユニットが検出しているピッチの原点座標biは短い時間の範囲では一定である。そこでこれらの平均値を別個に求めると、演算が容易になる。