特許第6015776号(P6015776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015776
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年11月2日
(54)【発明の名称】変位センサ及び変位の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20161020BHJP
【FI】
   G01D5/245 110B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-556354(P2014-556354)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2013083884
(87)【国際公開番号】WO2014109190
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2015年6月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-2329(P2013-2329)
(32)【優先日】2013年1月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲也
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】花香 敏
(72)【発明者】
【氏名】太田 龍男
(72)【発明者】
【氏名】寺田 将吾
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256171(JP,A)
【文献】 特開2011−059839(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129140(WO,A1)
【文献】 特開2007−155618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出する変位センサにおいて、
極性の異なる2個のマグネット、もしくは磁性体と非磁性体の各1個のペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールを備えるとともに、
前記1ピッチを1周期とし、ピッチに対する位相θが(90/n)°ずつシフトする4n個の信号を出力するように、4n個(nは2または4)のセンサユニットが前記1ピッチの区間に前記磁気スケールに沿って直列に配列され、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は前記1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、
さらに前記4n個の信号の平均を出力する平均化部を備えていることを特徴とする、変位センサ。
【請求項2】
前記センサユニットは、検出中のピッチのオフセット信号を出力するように構成され、
前記平均化部は、前記位相θを表す信号と前記オフセット信号とを用いて、前記平均を求めることを特徴とする、請求項1の変位センサ。
【請求項3】
前記磁気スケールがリニアモータのマグネット列であることを特徴とする、請求項1または2の変位センサ。
【請求項4】
磁気スケールを基準とするリニアな位置を磁気素子により検出するリニア変位センサにおいて、
リニアモータのマグネット列中の、極性が異なりかつ隣接する2個のマグネットから成るペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールと、
前記1ピッチの長さをpとする際に、p/(4n)ずつ前記磁気スケールに沿った位置が変化するように、前記1ピッチの長さ内に配置されている、4n個のセンサユニット(nは2または4)と、
前記4n個のセンサユニットからの信号の平均を出力する平均化部と、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路と、を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記位相θを表す信号前記1ピッチがn周期となる周期的誤差を有している、リニア変位センサ。
【請求項5】
前記平均化部は、前記4n個のセンサユニットからのピッチ内座標ai(iは1から4nまでの自然数)の平均値に、前記4n個のセンサユニットが検出しているピッチの原点座標biの平均値を加算するように構成され、前記4n個のセンサユニットは隣接する2個のピッチを検出可能である、ことを特徴とする、請求項4のリニア変位センサ 。
【請求項6】
磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出することにより変位を検出する方法において、
極性の異なる2個のマグネット、もしくは磁性体と非磁性体の各1個のペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールが設けられると共に、
前記1ピッチを1周期とし、ピッチに対する位相θが(90/n)°ずつシフトする4n個の信号を出力するように、4n個(nは2または4)のセンサユニットが前記1ピッチの区間に前記磁気スケールに沿って直列に配列され、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は前記1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、
さらに平均化部により、前記4n個の信号の平均を出力することにより、前記周期的誤差を打ち消すことを特徴とする、変位検出方法。
【請求項7】
前記磁気スケールがリニアモータのマグネット列であることを特徴とする、請求項6の変位検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は変位センサに関し、特に誤差の軽減に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者は、磁気的なスケールとコイル等の磁気素子とを組み合わせた変位センサを開発している(例えば特許文献1:JP4919177)。このような変位センサには誤差があり、誤差を小さくすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4919177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、変位センサの誤差を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出する変位センサにおいて、
極性の異なる2個のマグネット、もしくは磁性体と非磁性体の各1個のペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールを備えるとともに、
前記1ピッチを1周期とし、ピッチに対する位相θが(90/n)°ずつシフトする4n個の信号を出力するように、4n個(nは2または4)のセンサユニットが前記1ピッチの区間に磁気スケールに沿って直列に配列され、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は磁気スケールの1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、
さらに前記4n個の信号の平均を出力する平均化部を備えていることを特徴とする。
【0006】
この発明はまた、磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出することにより変位を検出する方法において、
極性の異なる2個のマグネット、もしくは磁性体と非磁性体の各1個のペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールが設けられると共に、
前記1ピッチを1周期とし、ピッチに対する位相θが(90/n)°ずつシフトする4n個の信号を出力するように、4n個(nは2または4)のセンサユニットが前記1ピッチの区間に磁気スケールに沿って直列に配列され、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は磁気スケールの1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、
さらに平均化部により、前記4n個の信号の平均を出力することにより、前記周期的誤差を打ち消すことを特徴とする。
【0007】
発明者は、磁気スケールを基準とする位置を磁気素子により検出する変位センサでは、マグネット2個が1周期、2周期、4周期、あるいは磁性体と非磁性体の各1個のペアが1周期、2周期、4周期となる、周期的な誤差が生じることを見出した。センサユニットの側から見ると、複数のピッチが設けられた磁気スケールに対して移動する場合、1ピッチシフトすると磁気スケールから受ける磁気的環境は同じで、誤差も同じになる。従って誤差はピッチ毎に繰り返し、誤差の1周期分の長さ(誤差の波長)はピッチの整数分の1となる。そして磁気スケールの1ピッチに対し、4n個のセンサユニットを設けると、位相が90/n°ずつシフトした4n個の信号が得られ、これらを平均すると誤差の影響が小さくなる。この発明では、磁気スケールの1ピッチをn周期として繰り返す周期的誤差を打ち消し、正確に変位を検出できる。なおこの明細書において、変位センサに関する記載はそのまま変位検出方法にも当てはまり、変位検出方法に関する記載はそのまま変位センサにも当てはまる。
【0008】
位相が90/n°ずつシフトした4n個の信号が得られるようにし、これらを平均すると誤差の影響を特に小さくできる。
【0009】
好ましくは、前記磁気スケールは前記ピッチを複数備え、前記センサユニットは、検出中のピッチのオフセット信号を出力するように構成され、前記平均化部は、前記位相と前記オフセット信号とを用いて、前記平均を求める。4n個のセンサユニットからの位相を平均すると、測定レンジは1ピッチの長さの1/4nとなる。そこでオフセット信号を平均することにより、測定レンジを磁気スケールの全長へ拡大できる。
【0010】
特に好ましくは、前記センサユニットは前記1ピッチがn周期となる周期的誤差を有し、前記4n個のセンサユニットからの信号を平均することにより、周期的誤差を打ち消す。このようにすると、位相が90/n°ずつシフトした4n個の出力が得られ、これらを平均すると、正確に変位を検出できる。
好ましくは、磁気スケールが直線状に配置され、変位センサは磁気スケールに沿ったリニアな位置を検出するリニア変位センサである。
特に好ましくは、磁気スケールがリニアモータの磁石列で、リニアモータの駆動のために磁気スケールに沿ったリニアな位置を求める。
【0011】
またこの発明のリニア変位センサは、磁気スケールを基準とするリニアな位置を磁気素子により検出するリニア変位センサにおいて、
リニアモータのマグネット列中の、極性が異なりかつ隣接する2個のマグネットから成るペアを1ピッチとし、かつ直線状に複数ピッチに渡り配置されている磁気スケールと、
前記1ピッチの長さをpとする際に、p/(4n)ずつ磁気スケールに沿った位置が変化するように、1ピッチの長さ内に配置されている、4n個のセンサユニット(nは2または4)と、
前記4n個のセンサユニットからの信号の平均を出力する平均化部と、
前記4n個のセンサユニットにsinωtの波形の交流信号を加えるドライブ回路と、を備え、
前記4n個のセンサユニットは各々、4個の磁気素子から成るブリッジと、前記ブリッジからsinθsinωt及びcosθsinωtに対応する信号を取り出し、加法定理によりピッチに対する位相θを表す信号を出力する位相検出部とを備え、かつ前記4n個の信号は磁気スケールの1ピッチがn周期となる周期的誤差を有している。
【0012】
このようにすると、リニアモータをそのマグネット列を利用して、正確に駆動することができる。特にリニアモータのコイルからの磁界が誤差の原因となる状況で、正確に位置を検出できる。またセンサユニットは4n個なので、これらの信号は、1ピッチがn周期の誤差に対して、位相が90°/nずつシフトし、平均すると簡単に誤差を除くことができる。
【0013】
好ましくは、前記平均化部は、前記4n個のセンサユニットからのピッチ内座標ai(iは1から4nまでの自然数)の平均値に、前記4n個のセンサユニットが検出しているピッチの原点座標biの平均値を加算するように構成され、前記4n個のセンサユニットは隣接する2個のピッチを検出していることがある。4n個のセンサユニットが1ピッチの長さp以内の長さに渡って配置されていると、全体として隣接する2個のピッチを検出可能である。ここで、4n個のセンサユニットからのピッチ内座標aiは絶えず変化し、4n個のセンサユニットが検出しているピッチの原点座標biは短い時間の範囲では一定である。そこでこれらの平均値を別個に求めると、演算が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の変位センサのブロック図
図2】センサヘッドの要部ブロック図
図3】実施例の変位検出方法を示すフローチャート
図4】センサユニットからの誤差を模式的に示す図
図5】スケールに対するセンサユニットの取付位置を変えた際の誤差を示す図
図6図5のデータを平均化した出力を示す図
図7】リニアモータからのセンサユニットの取付位置を変えた際の誤差を示す図
図8図7のデータを平均化した出力を示す図
図9】8個のセンサユニットの出力を平均した際の、基準センサからの誤差を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0016】
図1図9に実施例を示す。図1に変位センサの構成を示し、磁気スケール2はマグネット4,6を配列したスケールで、直線状に配置されている。マグネット4は表面がS極、マグネット6は表面がN極で、マグネット4,6のペアを1ピッチとし、複数のピッチを直列に配列してある。マグネット4,6は変位センサ専用のスケールでも、リニアモータの一部としてのマグネット列でも良く、ここではリニアモータの一部であるものとする。なお磁気スケール2は、マグネット4,6以外にも、磁性体と非磁性体との組合わせ等でも実現でき、その場合は、1個の磁性体と1個の非磁性体とのペアが1ピッチである。センサヘッド8は、例えば1個のドライブ10と例えば8個のセンサユニットu1〜u8とから成り、センサユニットの数は4の倍数の4n個(nは自然数で、2または4)である。nの意味は例えば、1ピッチ内で誤差が繰り返す周期の数である。ドライブ10はここで8個のセンサユニットu1〜u8に交流電流を供給し、i番目のセンサユニットuiの出力信号をxiとする。8個のセンサユニットu1〜u8の出力信号x1〜x8を平均化部12で平均し、位置信号xを出力する。実施例の変位センサは磁気スケール2に沿った位置を検出するリニア変位センサで、特にリニアモータの駆動のために、磁気スケール2に沿ったリニアな位置を検出することが好ましい。
【0017】
なお磁気スケール2が地上側に固定で、センサヘッド8が可動でも、逆に磁気スケール2が可動で、センサヘッド8が地上側に固定でも良い。また磁気スケールで例えばマグネットを8個単位で設置するような場合、1単位が4ピッチであると見なす。磁性体の薄膜と非磁性体の薄膜を交互に4ペア設ける場合も、同様に4ピッチあるものと見なす。
【0018】
各1個のマグネット4,6から成る1ピッチの区間内に、8個のセンサユニットu1〜u8が、磁気スケール2の長手方向(変位を測定する方向)に沿って直線状に配列されている。8個のセンサユニットu1〜u8により、1個のセンサアレイを構成する。また1ピッチの区間内での位置を位相θ(0≦θ≦2π)で表し、センサユニットu1〜u8は位相θが各45°ずつ異なるように配置されている。センサユニット間の位相の差は2πをセンサユニットの数4nで除した値である。なおmピッチ(mは2以上の自然数)の区間に、センサユニットを4nm個直列に配列して、その信号を平均化しても良い。ここに4nは1ピッチの区間に配列するセンサユニットの数である。
【0019】
図2にドライブ10と1個のセンサユニットu1の構成を示し、他のセンサユニットも同様である。カウンタ14は交流の位相ωtを出力し、テーブル16でωtをsinωtに相当するデジタル信号に変換し、D/Aコンバータ18はこの信号を交流電圧sinωtに変換して、センサユニットu1〜u8へ供給する。
【0020】
センサユニットu1では、例えば4個のコイルC1〜C4がC1からC4への番号順にスケールの長手方向に沿って直線状に配列されており、図2のようにブリッジに組んで交流電圧sinωtを加える。ブリッジの出力を増幅器A1,A2で増幅することにより、cosθ・cosωtとsinθ・sinωtに相当する出力を取り出す。例えば cosθ・cosωt−sinθ・sinωt=cos(θ+ωt)であることを用い、位相検出部20でcos(θ+ωt)に相当するアナログ信号に変換し、cos(θ+ωt)が0となる際のωtの値から1ピッチ単位での位相θを求める。位相θの算出方法は、他にも種々のものが公知で、sin(θ+ωt)を用いるもの等の任意のものを用い得る。また1センサユニット内でのコイルの数と結線等も、種々のものが公知で任意である。さらにコイルC1〜4は、ホール素子、磁気抵抗素子等を含む磁気素子の例である。
【0021】
オフセット補正部22は初期位置からのピッチの変化を記憶し、例えばピッチが変化する毎にピッチ番号を加減算して、現在検出中のピッチ番号を記憶する。またオフセット補正部22は各ピッチの原点座標biを記憶し、位相θから求めたピッチ内座標aiにピッチの原点座標biを加算し、出力信号xiとする。ピッチ内座標aiは各ピッチの原点座標biを基準とする直線上の座標で、出力信号xiは適宜の原点からの座標である。なおピッチの長さをpとし、θを角度単位で表すと ai=p×θ/360 である。ただしオフセット補正部22はピッチの番号を出力して、ピッチの番号から原点座標biへの換算と平均とを平均化部12で行っても良い。
【0022】
平均化部12は8個の出力信号x1〜x8を加算し下位の3ビットを切り捨てる、もしくは加算した値を3ビット最小デジット側へシフトする等により、平均化した出力信号xを求め、xは複数個のセンサユニットからの信号の単純平均である。ピッチ内座標aiを平均すると、位相θで45°を周期とする信号となり、これにピッチの原点座標biの平均を加えることにより、変位を表す信号xが得られる。なお平均化の演算手法は任意である。図3に、センサユニットの配置(ステップ1)と、各センサユニットでの変位の検出(ステップ2)、及びセンサユニット毎の変位の単純平均(ステップ3)の処理を示す。
【0023】
図4は1ピッチ内でのセンサユニットからの信号を模式的に示し、磁気スケール2からの直線的な変位信号に、様々な誤差要因が加わりセンサユニットの信号xiとなる。図4では、1ピッチ内に2周期分の誤差があり、誤差はピッチの前半で後半よりも大きい例を示している。センサユニットを1ピッチ分変位させると、コイルC1〜C4が磁気スケール2から受ける磁気的環境は同じで、このためセンサユニットの信号xiは1ピッチ単位で繰り返す周期的な信号となり、誤差eiも1ピッチ単位で繰り返す周期的な信号となる。
【0024】
誤差は1ピッチ内でn周期分繰り返す周期的な信号であり、発明者の経験した範囲でnは1,2または4である。誤差の周期が1,2,4のいずれになるかは変位センサの構造と使用環境とに依存し、実験で判別できる。そして4n個のセンサユニットを設けて、その出力信号を単純平均すれば、誤差が極く小さい変位センサとなる。さらに気温の変化等に対しても、磁気スケールを1ピッチ分移動すると、環境は同じで、気温の変動による誤差も打ち消すことができる。
【0025】
図5図9に特性を示す。図5図6ではセンサユニットは1個で、縦軸は誤差、横軸は直線性が高く誤差が少ない基準センサの出力から求めた位置を表し、センサユニットとスケールとの間隔を変えた際の誤差を示している。図5のデータは平均化前で、図6のデータは平均化後である。図5ではスケールの1ピッチが2周期の規則的な誤差が有り、図5の各曲線に対し、位相を45°ずつ変えて、図6のように平均化すると誤差が軽減されている。
【0026】
図7図8はリニアモータに対するセンサユニットの取付位置を変えた際の誤差を示し、図7は平均化前のデータを、図8は、図6と同様にして平均化した後のデータを示す。スケールを兼用するリニアモータからの磁界が誤差要因で、図7では位相のずれがありスケールの1ピッチが2周期となる周期的誤差がある。図8のように平均化すると、誤差が軽減されている。
【0027】
図9ではセンサユニットは8個で、1ピッチに対する位相を45°ずつ変化させて配置した。縦軸は誤差、横軸は基準センサの出力から求めた位置である。図の太線は8個のセンサユニットの信号の平均値である。この例でも、スケールの1ピッチが2周期の規則的な誤差であった。
【0028】
実施例では、スケールの1ピッチをn周期とする周期的な誤差が生じることに着目する。そして例えば4n個のセンサユニットを1ピッチに沿って規則的に配置し、出力を単純平均することにより、誤差を小さくする。また信号処理は単純平均で簡単である。
【0029】
実施例ではセンサユニットu1〜u8に各4個のコイルC1〜C4を設ける。各センサユニットに対し、3個、6個、8個等の磁気素子を設けても良いが、このようなものは本発明には含まれない。コイルは磁気素子の例である。例えば6個の場合、1ピッチ内での位相が異なる3個の信号が得られる。そしてセンサユニットを4n個設ける。
【0030】
実施例では、センサユニットu1〜u8は全体として、隣接する2個のピッチを検出可能に構成されている。これは、センサヘッド8と磁気スケール2との間の相対移動のため、センサヘッド8が次のピッチへ移行するためである。
【符号の説明】
【0031】
2 磁気スケール 4,6 マグネット 8 センサヘッド
10 ドライブ 12 平均化部 14 カウンタ
16 テーブル 18 D/Aコンバータ 20 位相検出部
22 オフセット補正部
A1,A2 増幅器 u1〜u8 センサユニット C1〜C4 コイル
θ 1ピッチ内での位相 ωt 交流入力の位相
bi ピッチ原点の座標 xi センサユニットの出力 x 平均出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9