特許第6015790号(P6015790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6015790手摺用帆布、マンコンベアの移動手摺、マンコンベア用手摺及びマンコンベア用手摺の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015790
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】手摺用帆布、マンコンベアの移動手摺、マンコンベア用手摺及びマンコンベア用手摺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/24 20060101AFI20161013BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20161013BHJP
   D03D 13/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B66B23/24 A
   D03D1/00 Z
   D03D13/00
   D03D1/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-34253(P2015-34253)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-155647(P2016-155647A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2015年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】山佐 礼司
(72)【発明者】
【氏名】本田 武信
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−019537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 − 31/02
D03D 1/00、 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1縦糸及び第1横糸を用いて織られた基布と、
前記基布に設けられ、前記基布の表面の一部を覆う摺動布と、
を備え、
前記摺動布は、前記第1縦糸より低い摩擦特性を有し且つ磨耗し易い第2縦糸と前記第1縦糸より低い熱収縮率を有する第2横糸とを用いて織られた手摺用帆布。
【請求項2】
前記第2横糸は、150℃の環境下に10秒間放置した時の熱収縮率が3%以下の糸からなる請求項1に記載の手摺用帆布。
【請求項3】
前記第1縦糸及び第1横糸は、ポリエステル繊維からなる請求項1又は請求項2に記載の手摺用帆布。
【請求項4】
前記第1横糸と前記第2横糸とは一続きの糸からなる請求項1から請求項3の何れか一項に記載の手摺用帆布。
【請求項5】
前記第2縦糸は、フッ素樹脂繊維からなる請求項1から請求項4の何れか一項に記載の手摺用帆布。
【請求項6】
横断面がC字状を呈し、無端状に形成された本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側の表面に設けられた帆布と、
を備え、
前記本体樹脂部は、押し出し成形によって成形され、
前記帆布は、前記本体樹脂部を押し出し成形によって成形する際に前記本体樹脂部を構成する樹脂とともに加熱及び加圧された請求項1から請求項5の何れか一項に記載の前記手摺用帆布からなる
マンコンベアの移動手摺。
【請求項7】
横断面がC字状を呈する長尺の本体樹脂部と、
前記本体樹脂部の内側の表面に設けられた帆布と、
を備え、
前記本体樹脂部は、押し出し成形によって成形され、
前記帆布は、前記本体樹脂部を押し出し成形によって成形する際に前記本体樹脂部を構成する樹脂とともに加熱及び加圧された請求項1から請求項5の何れか一項に記載の前記手摺用帆布からなる
マンコンベア用手摺。
【請求項8】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の前記手摺用帆布を用意する工程と、
押し出し成形によって横断面がC字状を呈する長尺の本体樹脂部を成形する工程と、
を備え、
前記本体樹脂部を押し出し成形によって成形する際に前記本体樹脂部を構成する樹脂とともに前記手摺用帆布を加熱及び加圧することにより、前記手摺用帆布が前記本体樹脂部の内側の表面に設けられるマンコンベア用手摺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マンコンベアの移動手摺に使用される帆布に関する。また、この発明は、マンコンベアの移動手摺とマンコンベア用手摺及びその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、マンコンベアで使用される移動手摺が記載されている。特許文献1に記載された移動手摺は帆布を備える。帆布を構成する縦糸の一部に、フッ素樹脂繊維等の摩擦特性が極めて低い糸が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−42413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された移動手摺は、その製造時に、帆布が幅方向に大きく収縮するといった問題があった。出願人がその原因について調査したところ、帆布を構成する縦糸の一部にフッ素樹脂繊維等の摩擦特性が極めて低い糸が使用されていることが原因である旨の結論を得た。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされた。この発明の目的は、マンコンベアの移動手摺或いはマンコンベア用手摺を製造する時の幅方向の収縮量を低減できる手摺用帆布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る手摺用帆布は、第1縦糸及び第1横糸を用いて織られた基布と、基布に設けられ、基布の表面の一部を覆う摺動布と、を備える。摺動布は、第1縦糸より低い摩擦特性を有し且つ磨耗し易い第2縦糸と第1縦糸より低い熱収縮率を有する第2横糸とを用いて織られる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、マンコンベアの移動手摺或いはマンコンベア用手摺を製造する時の帆布の幅方向の収縮量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】マンコンベアの全体構成を示す断面図である。
図2図1のA−A断面を示す図である。
図3図1のB−B断面を示す図である。
図4】移動手摺の断面を示す図である。
図5】この発明の実施の形態1における手摺用帆布を示す正面図である。
図6】この発明の実施の形態1における手摺用帆布の断面を示す図である。
図7】基布の織り方の一例を示す図である。
図8】摺動布の織り方の一例を示す図である。
図9】出願人が本発明をなすために行った調査結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0010】
実施の形態1.
図1は、マンコンベアの全体構成を示す断面図である。図1は、マンコンベアの一例として、上下階床間の移動の際に利用されるエスカレータを示す。動く歩道といったマンコンベアの他の例については、具体的な説明を省略する。
【0011】
エスカレータのトラス1は、建物の上下階床間に掛け渡される。トラス1は、エスカレータの自重及び積載荷重を支持する。エスカレータの乗客は、上下階床間を移動する際にステップ2に乗る。ステップ2は、ステップチェーン3に連結される。ステップチェーン3は、無端状に形成される。多数のステップ2がステップチェーン3に連結されることにより、上部の乗降口4から下部の乗降口5に渡ってステップ2が隙間無く配置される。
【0012】
乗降口4の下方に、機械室6が設けられる。機械室6は、トラス1の端部に形成された空間である。機械室6に、例えば電動機7、減速機8及び制御装置9が備えられる。また、機械室6に設けられた軸にスプロケット10及び11が設けられる。
【0013】
電動機7は、ステップ2及び移動手摺12を駆動するための駆動力を発生させる。減速機8は、電動機7の出力を減速し、チェーンを介してスプロケット10及び11が設けられた軸を回転させる。制御装置9は、エスカレータの運転を制御する。電動機7の制御は、制御装置9によって行われる。ステップチェーン3は、ステップ駆動用のスプロケット10に巻き掛けられる。スプロケット10が軸とともに回転することにより、ステップ2が乗降口4及び乗降口5間を循環移動する。
【0014】
移動手摺12は、ステップ2に乗降する乗客及びステップ2に乗っている乗客が掴むものである。移動手摺12は無端状を呈する。ステップ2の両側に、欄干13が設けられる。移動手摺12は、上側に配置された部分が欄干13の縁に沿って移動する。移動手摺12の上側に配置された部分は、ステップ2と同期するように移動する。また、移動手摺12は、乗降口4及び5で上下に反転される。移動手摺12の下側に配置された部分は、ステップ2の両側に設けられたスカートガードの内側を移動する。
【0015】
移動手摺12は、手摺駆動装置14によって駆動される。手摺駆動装置14は、例えば摩擦駆動方式によって移動手摺12を駆動する。手摺駆動装置14は、例えば駆動ローラ15及び加圧ローラ16を備える。移動手摺12は、駆動ローラ15及び加圧ローラ16によって上下(表裏)から挟み込まれる。手摺駆動装置14は、移動手摺12を挟み込んだ状態で駆動ローラ15を回転させることにより、移動手摺12との摩擦力を利用して移動手摺12を駆動する。駆動ローラ15は、移動手摺12の内側の表面に接触する。加圧ローラ16は、移動手摺12の外側の表面に接触する。移動手摺12の外側の表面は、乗客が掴む面である。
【0016】
手摺チェーン17は、手摺駆動用のスプロケット11と手摺駆動装置14に備えられたスプロケット18とに巻き掛けられる。手摺チェーン17により、スプロケット11の回転力が手摺駆動装置14に伝達される。即ち、スプロケット11が軸とともに回転することにより、移動手摺12が乗降口4及び乗降口5間を循環移動する。
【0017】
次に、移動手摺12について具体的に説明する。
図2図1のA−A断面を示す図である。図3図1のB−B断面を示す図である。図4は移動手摺12の断面を示す図である。
【0018】
移動手摺12は、横断面が略C字状を呈する。上記横断面とは、移動手摺12の長手方向に直交する方向の断面である。手摺駆動装置14による移動手摺12の駆動と案内レール19による移動手摺12の走行案内とは、移動手摺12の内側の表面を介して行われる。このため、移動手摺12には、内側の表面に、十分な駆動力を発生させるための高い摩擦特性(摩擦係数)と案内レール19上を走行する際の抵抗を低減させるための低い摩擦特性(摩擦係数)との双方の機能が要求される。
【0019】
移動手摺12は、例えば本体樹脂部20、抗張体21及び帆布22を備える。
本体樹脂部20は、移動手摺12の要部を構成する。本体樹脂部20は、例えばゴム或いはポリウレタン等の樹脂部材からなる。本体樹脂部20は、全体として無端状に形成される。本体樹脂部20は、横断面が略C字状を呈する。図4は、本体樹脂部20が2層の樹脂層によって構成される例を示す。移動手摺12に付与する機能に合わせて、本体樹脂部20を単層或いは3層以上の樹脂層で構成しても良い。
【0020】
抗張体21は、移動手摺12に一定の引張強度を付与するためのものである。抗張体21は、例えば鋼製のワイヤが縒り合わされたものからなる。スチールテープ等によって抗張体21を構成しても良い。抗張体21は、本体樹脂部20の内部に設けられる。抗張体21は、本体樹脂部20の長手に沿って本体樹脂部20の全長に渡って配置される。
【0021】
帆布22は、摩擦特性に関する上記2つの機能を移動手摺12に付与するために備えられる。帆布22は、本体樹脂部20の内側の表面に設けられる。帆布22は、本体樹脂部20の長手に沿って本体樹脂部20の全長に渡って配置される。
【0022】
図5は、この発明の実施の形態1における手摺用帆布を示す正面図である。図6は、この発明の実施の形態1における手摺用帆布の断面を示す図である。図5及び図6に示す手摺用帆布は、本体樹脂部20に固定される前の帆布22である。
【0023】
図5及び図6に示す手摺用帆布は、例えば基布23と摺動布24とを備える。図5及び図6は、手摺用帆布が基布23と摺動布24とからなる二層構造を有する例を示す。
【0024】
図7は基布23の織り方の一例を示す図である。基布23は、例えば縦糸25と横糸26とを用いて織られた織物である。縦糸25は、手摺用帆布が本体樹脂部20に固定された時に本体樹脂部20の長手に沿って配置される糸である。横糸26は、縦糸25に直交するように配置された糸である。即ち、横糸26は、手摺用帆布が本体樹脂部20に固定された時に本体樹脂部20の長手の方向と直交する方向に配置される。縦糸25及び横糸26として、例えばポリエステル繊維が用いられる。縦糸25に低収縮性の繊維を用いる必要はない。なお、基布23の織り方は、図7に示す織り方に限定されない。
【0025】
摺動布24は、基布23に設けられる。摺動布24は、基布23の表面の一部を覆う。図8は摺動布24の織り方の一例を示す図である。摺動布24は、例えば縦糸27と横糸28とを用いて織られた織物である。縦糸27は、手摺用帆布が本体樹脂部20に固定された時に本体樹脂部20の長手に沿って配置される糸である。横糸28は、縦糸27に直交するように配置された糸である。即ち、横糸28は、手摺用帆布が本体樹脂部20に固定された時に本体樹脂部20の長手の方向と直交する方向に配置される。
【0026】
縦糸27として、基布23を構成する糸より低い摩擦特性を有し且つ磨耗し易い糸が使用される。即ち、縦糸27は、縦糸25及び横糸26より低い摩擦特性を有する。また、縦糸27は、縦糸25及び横糸26より摩耗し易い。縦糸27として、例えば、フッ素樹脂繊維(PTFE材)が用いられる。
【0027】
横糸28として、基布23の縦糸25より低い熱収縮率を有する糸が使用される。例えば、横糸28として、低収縮のための処理が施された繊維が用いられる。低収縮のための処理として予め熱処理が施された繊維を横糸28に用いても良い。また、横糸28として、低収縮のための処理が施されたポリエステル繊維を用いても良い。
【0028】
基布23と摺動布24とにおいて共通の横糸を用いても良い。かかる場合、横糸26と横糸28とは一続きの糸からなる。また、縦糸25より低い熱収縮率を有する糸が横糸26として使用されることになる。
【0029】
図9は、出願人が本発明をなすために行った調査結果を示す図である。図9は、温度に対する帆布の幅の収縮量を示す。図9の横軸は温度(℃)を示す。図9の縦軸は帆布の幅方向の収縮量(%)を示す。
【0030】
図9に示す折れ線a1は、縦糸及び横糸として通常のポリエステル繊維が用いられた帆布の収縮量を示す。本実施の形態において通常のポリエステル繊維とは、低収縮のための処理(例えば、熱処理)が施されていない繊維のことである。以下においてはこの帆布のことを帆布aと記す。図9に示す折れ線b1は、縦糸としてフッ素樹脂繊維が用いられ、横糸として通常のポリエステル繊維が用いられた帆布の収縮量を示す。以下においてはこの帆布のことを帆布bと記す。特許文献1に記載の移動手摺に用いられる帆布は、帆布bに相当する。帆布aの縦糸及び横糸と帆布bの横糸とは同様の繊維が用いられている。
【0031】
図9に示す折れ線c1は、縦糸としてフッ素樹脂繊維が用いられ、横糸として低収縮のための処理(例えば、熱処理)が施されたポリエステル繊維が用いられた帆布の収縮量を示す。以下においてはこの帆布のことを帆布cと記す。図5及び図6に示す手摺用帆布は、帆布cに相当する。
【0032】
図9に示すように、帆布aの幅方向の収縮量は、150℃において2%程度、200℃において5%以下と実用的な範囲に収められている。即ち、帆布が通常のポリエステル繊維を用いて織られていても、通常のポリエステル繊維が縦糸及び横糸の双方に用いられていれば、帆布の幅の収縮量を実用的な範囲に収めることができる。これは、横糸の収縮を縦糸が阻むように機能するためである。
【0033】
一方、帆布bの幅方向の収縮量は、150℃において10%程度、200℃において20%程度と実用的な範囲から大きく外れている。即ち、縦糸に低い摩擦特性を有する糸を使用すると、縦糸は横糸の収縮を阻むように機能しない。縦糸の摩擦特性が低い場合は、横糸の収縮に伴って帆布が幅方向に収縮してしまう。
【0034】
帆布cの幅方向の収縮量は、帆布aの収縮量と同様に、150℃において2%程度、200℃において5%以下と実用的な範囲に収められている。これは、横糸に低収縮のための処理が施された糸が使用されているためである。出願人は、帆布の横糸として、150℃の環境下に10秒間放置した時の熱収縮率が3%以下の糸を使用すれば、縦糸としてフッ素樹脂繊維のような極めて低い摩擦特性を有する糸を使用しても、移動手摺を問題なく製造できることを確認した。
【0035】
次に、移動手摺12を製造する方法について説明する。
先ず、図5及び図6に示す構成の手摺用帆布を用意する。本体樹脂部20は、押し出し成形によって横断面がC字状を呈する長尺のものに成形される。本体樹脂部20を押し出し成形によって成形する際に、本体樹脂部20を構成する樹脂とともに抗張体21及び用意された手摺用帆布が加熱及び加圧される。これにより、抗張体21が本体樹脂部20の内部で固定され、手摺用帆布が本体樹脂部20の内側の表面に固定される。本体樹脂部20を押し出し成形によって成形する際に図5及び図6に示す手摺用帆布が本体樹脂部20を構成する樹脂とともに加圧されて本体樹脂部20に固定されたものが帆布22である。
【0036】
以上の手順により、図4に示す断面と同様の断面を有する長尺のマンコンベア用手摺が製作される。移動手摺12を製作する場合は、マンコンベア用手摺を一定の長さに切断してその両端部を接続する。これにより、無端状の移動手摺12が完成する。なお、完成した移動手摺12では、基布23は、本体樹脂部20の内側の表面に設けられる。基布23は、本体樹脂部20の長手に沿って本体樹脂部20の全長に渡って配置される。基布23は、例えば本体樹脂部20の内側の表面全体を覆うように配置される。
【0037】
また、摺動布24は、移動手摺12が案内レール19上を走行する際の抵抗を低減させるために備えられる。駆動ローラ15が摺動布24に接触すると、駆動ローラ15の回転力を移動手摺12に十分に伝えることができない。このため、摺動布24は、駆動ローラ15が対向する部分に配置されない。駆動ローラ15が対向する部分には基布23が配置される。本実施の形態に示す例では、2つの摺動布24が一定の間隔を空け、本体樹脂部20の長手に沿って配置される。基布23のうち摺動布24の間に配置された部分が駆動ローラ15に対向する。
【0038】
本発明の実施の形態1によれば、移動手摺12(マンコンベア用手摺)を製造する時の帆布の幅方向の収縮量を低減できる。このため、移動手摺12(マンコンベア用手摺)の製造時に帆布の幅が足りなくなるような不具合を防止することができる。なお、基布23の縦糸25には低収縮性の繊維が用いられていない。このため、移動手摺12(マンコンベア用手摺)の製造時、帆布は、その長手の方向に大きく収縮する。この収縮に対しては、予め長い帆布を用意しておけば対応できる。一方、帆布の幅方向の収縮に対して同様の対策を採用すると、帆布の幅を予め大きくしておかなければならない。帆布の幅が大きいと押し出し成形を行うための設備に帆布が入らなくなってしまう。実施の形態1で開示した構成を採用することにより、帆布の幅を過度に大きくすることなく移動手摺12(マンコンベア用手摺)を適正な形に成形することができる。
【0039】
なお、横糸28としてスパンヤーン(紡績糸)を採用することにより、フィラメントヤーンを採用する場合と比較して、横糸28が縦糸27に対して滑ることを更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 トラス、 2 ステップ、 3 ステップチェーン、 4 乗降口、 5 乗降口、 6 機械室、 7 電動機、 8 減速機、 9 制御装置、 10 スプロケット、 11 スプロケット、 12 移動手摺、 13 欄干、 14 手摺駆動装置、 15 駆動ローラ、 16 加圧ローラ、 17 手摺チェーン、 18 スプロケット、 19 案内レール、 20 本体樹脂部、 21 抗張体、 22 帆布、 23 基布、 24 摺動布、 25 縦糸(第1縦糸)、 26 横糸(第1横糸)、 27 縦糸(第2縦糸)、 28 横糸(第2横糸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9