特許第6015798号(P6015798)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015798
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20161013BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20161013BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20161013BHJP
   B29D 30/38 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B60C11/00 B
   B60C5/00 Z
   B60C13/00 Z
   B29D30/38
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-64851(P2015-64851)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-182770(P2016-182770A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】岸端 和明
【審査官】 馳平 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−526311(JP,A)
【文献】 特開2012−131031(JP,A)
【文献】 特開2015−042512(JP,A)
【文献】 特開2013−180652(JP,A)
【文献】 特開2012−158156(JP,A)
【文献】 特開2012−158064(JP,A)
【文献】 特開2001−121905(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/171462(WO,A1)
【文献】 特開平06−071781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00〜19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出加工により一体的に成形されるキャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記キャップトレッドゴム層と前記アンダートレッドゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置し、前記アンダートレッドゴム層の外端位置からタイヤセンターラインまでの距離Aに対して、前記キャップトレッドゴム層と前記アンダートレッドゴム層との界面の外端位置から前記距離Aの30%に相当する領域に前記糸を配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
押出加工により一体的に成形されるトレッドゴム層とエッジゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッドゴム層と前記エッジゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
押出加工により一体的に成形されるサイドゴム層とリムクッションゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記サイドゴム層と前記リムクッションゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記糸をタイヤ周方向に延在するように配置したことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記糸の破断強度が100N以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記糸の打ち込み密度が5本/50mm以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層を備えた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、これらゴム層の界面における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを加硫する際にブリスター故障と呼ばれる加硫故障を生じることがある。ブリスター故障は、ゴム中に含まれる水分や残留エアのほか、タイヤ成形時にタイヤ構成部材の端部に形成される段差に残留するエアが加硫時に局所的に集められ、それによって生じた気泡が加硫中に分散しきらずにブリスターとなってタイヤ内に残存した状態となる故障である。ゴム中に含まれる水分や残留エアは、加硫初期において無数に発泡するものの、その気泡の多くは加硫中にミクロ分散して消滅する。しかしながら、ミクロ分散時に加圧力が弱い部位では気泡が集約され、加硫終了後に再発泡してブリスターを形成することがある。
【0003】
ブリスター故障を抑制するために、タイヤ成形時にはタイヤ構成部材をステッチャーにより押圧してエアの分散を促進し、加硫時には金型内面に配設されたベントホールを介してエアの排出を行っているが、それだけではタイヤ内部に残留するエアを十分に排除することができない。
【0004】
これに対して、カーカス層とそれに隣接する部材との間にエア溜りが形成され易いという知見に基づいて、カーカス層の少なくとも一方の面にゴム被覆されていないエア吸収用の有機繊維コードを配置し、その有機繊維コードによりカーカス層とそれに隣接する部材との間に残留するエアを吸収し、加硫時にエア溜りが形成されるのを防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上述のようにカーカス層の少なくとも一方の面にゴム被覆されていないエア吸収用の有機繊維コードを配置した場合、カーカス層とそれに隣接する部材との間に残留するエアを吸収することは可能であるものの、ブリスター故障を必ずしも効果的に抑制することができないのが現状である。また、カーカス層の表面にゴム被覆されていないエア吸収用の有機繊維コードを配置した場合、その有機繊維コードがタイヤ成形工程において離脱したり、位置ずれを起こしたりする恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2013/035555号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層の界面における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記複数種類のゴム層の界面に少なくとも1本の糸を配置したことを特徴とし、より具体的には、以下の(1)、(2)又は(3)の構成を有するものである。
(1)押出加工により一体的に成形されるキャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記キャップトレッドゴム層と前記アンダートレッドゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置し、前記アンダートレッドゴム層の外端位置からタイヤセンターラインまでの距離Aに対して、前記キャップトレッドゴム層と前記アンダートレッドゴム層との界面の外端位置から前記距離Aの30%に相当する領域に前記糸を配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
(2)押出加工により一体的に成形されるトレッドゴム層とエッジゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記トレッドゴム層と前記エッジゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
(3)押出加工により一体的に成形されるサイドゴム層とリムクッションゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記サイドゴム層と前記リムクッションゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明者は、加硫時に発生するブリスター故障について鋭意研究した結果、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層を備えた空気入りタイヤにおいて、これらゴム層の界面においてブリスター故障が生じ易いことを知見し、本発明に至ったのである。
【0010】
即ち、本発明では、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層の界面に少なくとも1本の糸を配置することにより、ゴム層の界面における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することができる。しかも、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層の界面に糸を配置する場合、タイヤ成形工程において糸が離脱したり、位置ずれを起こしたりすることはないので、タイヤ成形工程を円滑に行うことができるという利点もある。
【0011】
押出加工により一体的に成形されるキャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層を備えた空気入りタイヤにおいては、キャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置することが好ましい。これにより、加硫時にキャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層との界面に集まろうとするエアを糸により分散させることができる。
【0012】
特に、アンダートレッドゴム層の外端位置からタイヤセンターラインまでの距離Aに対して、キャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層との界面の外端位置から距離Aの30%に相当する領域に糸を配置することが好ましい。タイヤショルダー部は加硫初期のミクロ分散時における加圧力が弱いため気泡が形成され易いが、上記領域Aに糸を配置することでブリスター故障を効果的に抑制することができる。
【0013】
押出加工により一体的に成形されるトレッドゴム層とエッジゴム層を備えた空気入りタイヤにおいては、トレッドゴム層とエッジゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置することが好ましい。これにより、加硫時にトレッドゴム層とエッジゴム層との界面に集まろうとするエアを糸により分散させることができる。タイヤショルダー部は加硫初期のミクロ分散時における加圧力が弱いため気泡が形成され易いが、上記部位に糸を配置することでブリスター故障を効果的に抑制することができる。
【0014】
押出加工により一体的に成形されるサイドゴム層とリムクッションゴム層を備えた空気入りタイヤにおいては、サイドゴム層とリムクッションゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置することが好ましい。これにより、加硫時にサイドゴム層とリムクッションゴム層との界面に集まろうとするエアを糸により分散させることができる。リムクッション部は加硫初期のミクロ分散時における加圧力が弱いため気泡が形成され易いが、上記部位に糸を配置することでブリスター故障を効果的に抑制することができる。
【0015】
圧延加工により一体的に成形されるインナーライナー層とタイゴム層を備えた空気入りタイヤにおいては、インナーライナー層とタイゴム層との界面に少なくとも1本の糸を配置することが好ましい。これにより、加硫時にインナーライナー層とタイゴム層との界面に集まろうとするエアを糸により分散させることができる。
【0016】
本発明において、糸はタイヤ周方向に延在するように配置することが好ましい。押出工程や圧延工程で糸を挿入する場合、その糸を押出方向又は圧延方向に沿って延在させることで糸の連続的な挿入を容易に行うことができる。その結果として、糸がタイヤ周方向に配向した構造が得られる。また、糸をタイヤ周方向に延在するように配置した場合、ゴム層の層間に残留するエアをタイヤ周方向に沿って効果的に分散させることができる。
【0017】
糸の破断強度は100N以下であることが好ましい。この糸はエア分散性の改善を目的とするものであって補強部材ではないので、その破断強度の上限値を規制することでゴム層の挙動に対する影響を最小限に抑制することができる。
【0018】
糸の打ち込み密度は5本/50mm以下であることが好ましい。この糸はエア分散性の改善を目的とするものであって補強部材ではないため、その打ち込み密度の上限値を規制することでゴム層の挙動に対する影響を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。
図2】界面に糸が挿入されたトレッドゴム層とエッジゴム層を示す断面図である。
図3】界面に糸が挿入されたサイドゴム層とリムクッションゴム層を示す断面図である。
図4】界面に糸が挿入されたインナーライナー層とタイゴム層を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、図2図4は該空気入りタイヤの構成部材を示すものである。なお、図1はタイヤセンターラインCLの一方側の部分のみを示しているが、この空気入りタイヤはタイヤセンターラインCLの他方側にも対応する構造を有している。
【0021】
図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含む2層のカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。ビードコア5の外周上には高硬度のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置され、該ビードフィラー6がカーカス層4により包み込まれている。
【0022】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
【0023】
トレッド部1におけるベルト層7の外周側にはトレッドゴム層11が配置されている。このトレッドゴム層11は、タイヤ外表面に露出するキャップトレッドゴム層11Aと、該キャップトレッドゴム層11Aのタイヤ径方向内側に位置するアンダートレッドゴム層11Bとから構成されている。また、トレッドゴム層11のタイヤ幅方向の両外側にはそれぞれエッジゴム層12が配置されている。これらキャップトレッドゴム層11Aとアンダートレッドゴム層11Bとエッジゴム層12は押出加工により一体的に成形され、しかる後に一体的なタイヤ構成部材(図2参照)としてタイヤ成形工程に供される。
【0024】
また、サイドウォール部2におけるカーカス層4のタイヤ幅方向外側にはサイドゴム層13が配置され、ビード部3にはサイドゴム層13に隣接するリムクッションゴム層14が配置されている。これらサイドゴム層13とリムクッションゴム層14は押出加工により一体的に成形され、しかる後に一体的なタイヤ構成部材(図3参照)としてタイヤ成形工程に供される。
【0025】
更に、タイヤ内面にはカーカス層4に沿ってインナーライナー層15とタイゴム層16との積層体が配置されている。インナーライナー層15はタイヤ内面に露出し、タイゴム層16はカーカス層4とインナーライナー層15との間に介在している。これらインナーライナー層15とタイゴム層16は圧延加工により一体的に成形され、しかる後に一体的なタイヤ構成部材(図4参照)としてタイヤ成形工程に供される。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層(例えば、キャップトレッドゴム層11A、アンダートレッドゴム層11B、エッジゴム層12、サイドゴム層13、リムクッションゴム層14、インナーライナー層15、タイゴム層16)の界面に少なくとも1本の糸20(図2図4参照)が配置されている。
【0027】
このように構成される空気入りタイヤを加硫する場合、タイヤ成形工程を経て成形された未加硫状態のタイヤを金型内に投入し、ブラダーによりタイヤ内側から圧力を掛けながら加熱する。その際、加硫初期においてタイヤ内部に残留する水分やエアが発泡するが、その気泡の多くは加硫中にミクロ分散して消滅する。しかしながら、ミクロ分散時に加圧力が弱い部位では気泡が局所的に集まろうとする。これに対して、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層の界面に少なくとも1本の糸20を配置することにより、ゴム層の界面における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することができる。しかも、圧延加工又は押出加工により一体的に成形される複数種類のゴム層の界面に糸20を配置する場合、タイヤ成形工程において糸20が離脱したり、位置ずれを起こしたりすることはないので、タイヤ成形工程を円滑に行うことができる。
【0028】
以下、より具体的な構造について説明する、押出加工により一体的に成形されるキャップトレッドゴム層11Aとアンダートレッドゴム層11Bを備える場合、図2に示すように、キャップトレッドゴム層11Aとアンダートレッドゴム層11Bとの界面に少なくとも1本の糸20を配置すると良い。図2において、糸20はタイヤ周方向に延在し、タイヤ周方向の全域に存在するように配置されている。これにより、加硫時にキャップトレッドゴム層11Aとアンダートレッドゴム層11Bとの界面に集まろうとするエアを糸20によりタイヤ周方向に分散させることができる。
【0029】
特に、アンダートレッドゴム層11Bの外端位置からタイヤセンターラインCLまでの距離Aに対して、キャップトレッドゴム層11Aとアンダートレッドゴム層11Bとの界面の外端位置から距離Aの30%に相当する領域Xに糸20を選択的に配置すると良い。タイヤショルダー部は加硫初期のミクロ分散時における加圧力が弱いため気泡が形成され易いが、上記領域Aに糸20を配置することでブリスター故障を効果的に抑制することができる。ここで、領域Xから外れた位置に糸20を配置することも可能であるが、糸20を距離Aの30%に相当する領域Xに選択的に配置した場合、エアの分散を最も効果的に行うことができる。なお、距離A及び領域Xはキャップトレッドゴム層11Aとアンダートレッドゴム層11Bを平面上に展開した状態で特定されるものとする。
【0030】
また、押出加工により一体的に成形されるトレッドゴム層11とエッジゴム層12を備える場合、図2に示すように、上記と同様にトレッドゴム層11とエッジゴム層12との界面に少なくとも1本の糸20を配置すると良い。これにより、加硫時にトレッドゴム層11とエッジゴム層12との界面に集まろうとするエアを糸20によりタイヤ周方向に分散させることができる。タイヤショルダー部は加硫初期のミクロ分散時における加圧力が弱いため気泡が形成され易いが、上記部位に糸20を配置することでブリスター故障を効果的に抑制することができる。なお、トレッドゴム層11は互いに異なるゴム組成物からなるキャップトレッドゴム層11Aとアンダートレッドゴム層11Bとの積層体であっても良く、或いは、単一種類のゴム組成物から構成されるものであっても良い。
【0031】
更に、押出加工により一体的に成形されるサイドゴム層13とリムクッションゴム層14を備える場合、図3に示すように、サイドゴム層13とリムクッションゴム層14との界面に少なくとも1本の糸20を配置すると良い。図3において、糸20はタイヤ周方向に延在し、タイヤ周方向の全域に存在するように配置されている。これにより、加硫時にサイドゴム層13とリムクッションゴム層14との界面に集まろうとするエアを糸20によりタイヤ周方向に分散させることができる。リムクッション部は加硫初期のミクロ分散時における加圧力が弱いため気泡が形成され易いが、上記部位に糸20を配置することでブリスター故障を効果的に抑制することができる。
【0032】
また、圧延加工により一体的に成形されるインナーライナー層15とタイゴム層16を備える場合、図4に示すように、インナーライナー層15とタイゴム層16との界面に少なくとも1本の糸20を配置すると良い。図4において、糸20はタイヤ周方向に延在し、タイヤ周方向の全域に存在するように配置されている。これにより、加硫時にインナーライナー層15とタイゴム層16との界面に集まろうとするエアを糸20によりタイヤ周方向に分散させることができる。
【0033】
上記空気入りタイヤにおいて、糸20はタイヤ周方向に延在するように配置することが望ましいが、他の配置とすることも可能である。押出工程や圧延工程において糸20を挿入する場合、その糸20を押出方向又は圧延方向に沿って延在させることで糸20の連続的な挿入を容易に行うことができる。その結果として、糸20がタイヤ周方向に配向した構造が得られる。
【0034】
糸20の破断強度は100N以下、より好ましくは、1N〜5Nであると良い。この糸20はエア分散性の改善を目的とするものであって補強部材ではないので、その破断強度の上限値を規制することでゴム層の挙動に対する影響を最小限に抑制することができる。糸20の破断強度が大き過ぎるとタイヤ成形工程に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0035】
糸20の構成材料は特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の合成繊維の他、綿等の天然繊維を使用することができる。また、糸20の総繊度は25dtex〜170dtexの範囲にあると良い。これにより、破断強度を低くすると共に、良好なエア分散性を確保することができる。
【0036】
糸20の打ち込み密度は5本/50mm以下であると良い。この糸20はエア分散性の改善を目的とするものであって補強部材ではないため、その打ち込み密度の上限値を規制することでゴム層の挙動に対する影響を最小限に抑制することができる。糸20の打ち込み密度が大き過ぎるとタイヤ成形工程に悪影響を及ぼす恐れがある。なお、糸20の打ち込み密度は糸20の相互間隔から特定される。例えば、糸20の相互間隔がPmmであるとき、糸20の打ち込み密度(本/50mm)は50/Pとなる。また、各界面における糸20の打ち込み本数が1本である場合、その打ち込み密度は5本/50mm以下であるものと見做す。
【実施例】
【0037】
タイヤサイズ225/65R17の空気入りタイヤにおいて、キャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層との界面に2本の糸を配置し、トレッドゴム層とエッジゴム層との界面に2本の糸を配置し、サイドゴム層とリムクッションゴム層との界面に1本の糸を配置し、インナーライナー層とタイゴム層との界面に8本の糸を配置した実施例1のタイヤを製作した。また、上記ゴム層の各界面に糸を配置しなかったこと以外は実施例1と同じ構造を有する従来例1のタイヤを製作した。
【0038】
実施例1において、アンダートレッドゴム層の外端位置からタイヤセンターラインまでの距離Aに対して、キャップトレッドゴム層とアンダートレッドゴム層との界面の外端位置から距離Aの30%に相当する領域に糸を選択的に配置した。糸としては、綿繊維からなり、総繊度が29.5dtexである糸を使用した。この糸の破断強度は1Nである。
【0039】
実施例1及び従来例1のタイヤをそれぞれ96本ずつ加硫し、加硫後に各タイヤにおけるブリスター故障の有無を検査し、ブリスター故障の発生率を求めた。その結果、実施例1のタイヤでは、従来例1との対比において、ショルダー部、リムクッション部、タイヤ内面の各部位においてブリスター故障の発生が減少していた。そして、実施例1におけるブリスター故障の発生率は従来例1におけるブリスター故障の発生率の約14%であった。
【符号の説明】
【0040】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
11 トレッドゴム層
11A キャップトレッドゴム層
11B アンダートレッドゴム層
12 エッジゴム層
13 サイドゴム層
14 リムクッションゴム層
15 インナーライナー層
16 タイゴム層
20 糸
CL タイヤセンターライン
図1
図2
図3
図4