(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のナノ微粒子複合体の製造方法は、工程1:非水媒体中に分散安定化剤としてアミノ基と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した特定構造を有する重合体を溶解乃至分散させた溶液に、微粒子を添加してナノ微粒子分散体を形成する分散工程、及び工程2:前記重合体を架橋させる架橋工程を有する。
本発明の製造方法によれば、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させ、かつ分散時の微粒子の平均粒径を小さく保つことができる。
【0027】
上記本発明の製造方法により上記のような効果を発揮する作用としては、未解明ではあるが、以下のように推定される。
本発明においては、分散安定化剤として、少なくとも一般式(I)で表される構成単位(1)を有し、更に前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した重合体を用いる。上記重合体の4級アンモニウム塩形成部位は、微粒子に対する吸着性が強く、一方で上記重合体全体としては、非水媒体に対して溶解性を有する。
本発明の製造方法は、まず、上記重合体の溶液に、上記微粒子を添加することにより、微粒子の表面に重合体が集積し、かつ微粒子表面の全体を覆うように存在するものと推定される。更に微粒子表面を覆う上記重合体が有する上記重合性基を有するハロゲン化炭化水素の重合性基を架橋することにより、上記重合体を微粒子表面に固定させることができる。これにより、ナノ微粒子複合体の粒径を小さくし、かつ、微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができるものと推定される。従って、本発明のナノ微粒子複合体の製造方法によれば、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させ、かつ分散時の微粒子の平均粒径を小さく保つことができるものと推定される。
【0028】
更に本発明においては、重合性基を有するハロゲン化炭化水素を用いて4級アンモニウム塩を形成した重合体を用いることで、重合性基を有する有機酸化合物で塩を形成した場合よりも、非水媒体中での重合性基が解離しにくいというメリットがある。下記化学式(B)に示したように、重合性基を有する有機酸化合物では、重合性基が対アニオン側にあるので、アルコール等の極性媒体中で重合性基が解離し得るため、極性媒体を併用して微粒子を分散させる必要がある微粒子には適用が困難であった。それに対してハロゲン化炭化水素が4級アンモニウム塩を形成している場合は、下記化学式(A)に示したように重合性基は直接Nに結合しているため、極性媒体中でも重合性基の解離は起こらないものと推定される。
また、4級アンモニウム塩形成部位の方が、有機酸化合物で塩を形成した部位と比較して、非水媒体に対する溶解性が低く、微粒子表面への吸着力が強いため、4級アンモニウム塩形成部位は、表面が不活性な微粒子(例えば、平板な分子構造が積み重なった結晶構造を有するフタロシアニン系顔料等)に対しても吸着できるものと推定される。
このように、重合性基を有するハロゲン化炭化水素を用いて4級アンモニウム塩を形成した重合体は、微粒子への吸着力が強いうえに、非水媒体中で重合性基の解離が起こりにくいため、本発明の製造方法により得られたナノ微粒子複合体は、従来よりも分散安定性が向上し、適用できる微粒子の種類が増えるものと推定される。
【0029】
【化5】
(式(A)は、一般式(I)が有するアミノ基と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した一例を示す。式(B)は、一般式(I)が有するアミノ基と、重合性基を有する有機酸化合物とが塩形成をした一例を示す。式(A)及び式(B)中、R
1、R
2、R
3、及びAは、一般式(I)と同様である。)
以下、本発明のナノ微粒子複合体の製造方法の各工程について説明する。
【0030】
[工程1.分散工程]
本発明のナノ微粒子複合体の製造方法が有する工程1は、非水媒体中に、分散安定化剤として、少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位(1)を有し、更に前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した重合体を溶解させた溶液に、微粒子を添加してナノ微粒子分散体を形成する分散工程である。
【0031】
【化6】
(式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−CH(R
6)−CH(R
7)−又は−[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−で示される2価の基、R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。上記アルキル基、アルキレン基はそれぞれ置換基を有していても良い。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0032】
本工程は、分散安定化剤として少なくとも上記一般式(I)で表される構成単位(1)を有し、更に前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した重合体を用いることにより、非水媒体中での微粒子の安定化を図ることができ、その結果、微粒子の分散性及び安定性に優れたものとすることができる。
以下、本工程について詳細に説明する。
【0033】
<分散安定化剤>
本発明においては、分散化安定剤として、少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位(1)を有し、更に前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した重合体が用いられる。
【0034】
【化7】
(式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−CH(R
6)−CH(R
7)−又は−[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−で示される2価の基、R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。上記アルキル基、アルキレン基はそれぞれ置換基を有していても良い。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0035】
上記式(I)において、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。これらの中で、メチル基及びエチル基が好ましい。
本発明においては、上記R
2及びR
3は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0036】
Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、*−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−CH(R
6)−CH(R
7)−**、又は、*−[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−**で示される2価の基である。ここで、*は、エステル結合側の連結部位を表し、**は、アミノ基側の連結部位を表す。また、上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。本発明においては、x、y、及びzが、上記の範囲内にあれば、微粒子の分散性を優れたものとすることができる。
このAとしては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。炭素数が1〜8の範囲内であれば、微粒子の分散性を良好に保つことができる。
【0037】
本発明に用いられる重合体において、上記一般式(I)で表される構成単位(1)は、3〜60質量%の割合で含まれていることが好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。重合体中の上記一般式(I)で表される構成単位(1)の含有量が上記範囲内にあれば、重合体中のアミノ基が形成する塩形成部位の割合が適切となり、微粒子に対する吸着性が良好となり、微粒子の分散性、及び安定性が得られる。
【0038】
(重合性基を有するハロゲン化炭化水素)
本発明において、分散化安定剤として用いられる重合性基は、前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成している。前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成していることにより、非水媒体中での微粒子の安定化を図ることができ、その結果、微粒子の分散性及び安定性に優れたものとすることができる。
【0039】
前記構成単位(1)が有するアミノ基と4級アンモニウム塩を形成する、重合性基を有するハロゲン化炭化水素としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれかのハロゲン原子が、重合性基を有する炭化水素基の水素原子と置換されているものが挙げられる。
【0040】
上記炭化水素基としては、特に限定されず、直鎖、分岐、又は環状の飽和脂肪族炭化水素基、直鎖、分岐、又は環状の不飽和脂肪族炭化水素基、単環又は多環芳香族基及びこれらの組み合わせが挙げられる。不飽和脂肪族炭化水素が重合性基として機能するものである場合には、別途重合性基を有していなくてもよい。上記炭化水素基の炭素数としては、2〜18程度、更に3〜10程度が好適に用いられる。当該炭化水素基は、本発明の効果が損なわれない限り、更に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、アルコキシ基等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン化炭化水素としては、中でも、ハロゲン化アラルキル又はハロゲン化アリルが好ましく用いられ、特にハロゲン化アラルキルが好ましく用いられる。ハロゲン化アラルキルのアラルキル基としては、炭素数7〜18のものが挙げられるが特に限定されない。具体的には、例えば、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル、塩化ナフチルメチル、臭化ナフチルメチル等が挙げられる。また、上記ハロゲン化アリルとしては、例えば、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルが挙げられる。中でも、塩化アリル、臭化アリル、塩化ベンジル及び臭化ベンジルからなる群から選択される少なくとも1種であることが塩形成反応のしやすさと、生成した塩形成部位が微粒子への吸着性に優れている点、分散剤の耐熱性や耐アルカリ性を高くすることができる点から好ましい。
【0042】
ハロゲン化炭化水素が有する重合性基としては、特に限定されない。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基や、オキシラン環、オキセタン環等の環状エーテル含有基を含むカチオン重合性基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和結合含有基が好ましい。
エチレン性不飽和結合含有基としては、例えば、炭素数2〜18のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、−[CH(R
31)−CH(R
32)−O]
a−R
33又は−[(CH
2)
b−O]
c−R
33で示される1価の基であり、且つ、R
31及びR
32がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
33が、炭素数2〜18のアルケニル基、−CO−CH=CH
2、又は−CO−C(CH
3)=CH
2等を挙げることができる。ここで、aは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、bは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。cは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。中でも、ビニル基、アリル基あるいは−[CH(R
31)−CH(R
32)−O]
a−R
33、又は−[(CH
2)
b−O]
c−R
33であり、且つ、R
33が−CO−CH=CH
2又は−CO−C(CH
3)=CH
2であるものが好ましく、特に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、であることが好ましい。
【0043】
本発明において、重合性基を有するハロゲン化炭化水素としては、中でも、クロロメチルスチレン、又はブロモメチルスチレンであることが、ラジカル重合しやすく、容易に非水媒体中での微粒子の安定化を図ることができ、その結果、微粒子の分散性及び安定性に優れたものとすることができる点から、特に好ましい。
【0044】
本発明においては、微粒子を分散後に、後述する架橋工程において、上記重合性基を有するハロゲン化炭化水素が有する重合性基同士を微粒子の近傍で架橋させることができる。その結果、微粒子の周囲にブロック共重合体が固定化され、微粒子がより均一かつ安定的に分散し、かつ分散時の微粒子複合体の平均粒径を小さく保つことが可能となる。
【0045】
本発明で用いられる重合体における上記重合性基を有するハロゲン化炭化水素の含有量は特に制限はないが、一般に前記構成単位(1)に含まれるアミノ基に対して、0.05〜2.0モル当量程度、好ましくは0.1〜1.5モル当量、より好ましくは0.2〜1.0モル当量である。尚、重合性基を有するハロゲン化炭化水素は、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができ、2種以上併用する場合、これらを合計した含有量が上記範囲内にあればよい。
【0046】
本発明においては、分散化安定剤として、少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位(1)を有し、更に前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、前記重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した重合体であれば、特に限定されない。中でも、後述する特定のブロック共重合体、又は後述する特定のグラフト共重合体であることが、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させ、かつ分散時の微粒子の平均粒径を小さく保つことができるナノ微粒子複合体を製造できる点から好ましい。
以下、好ましい特定のブロック共重合体、及び好ましいグラフト共重合体について、順に説明する。
【0047】
(ブロック共重合体)
本発明においては、前記分散化安定剤として用いられる前記重合体が、前記一般式(I)で表される構成単位(1)と、下記一般式(II)で表される構成単位(2)とを有し、更に前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成したブロック共重合体(塩型ブロック共重合体と称することがある)であることが、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させ、かつ分散時の微粒子の平均粒径を小さく保つことができるナノ微粒子複合体を製造できる点から好ましい。
【0048】
【化8】
(式(II)中、R
4は、水素原子又はメチル基、R
5は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−R
8又は−[(CH
2)
y−O]
z−R
8で示される1価の基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
8は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO、又は−CH
2COOR
9で示される1価の基であり、R
9は水素原子又は炭素数が1〜5のアルキル基である。上記アルキル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ置換基を有していても良い。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0049】
上記一般式(II)において、R
5は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−R
8又は−[(CH
2)
y−O]
z−R
8を示す。
上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
【0050】
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
【0051】
上記R
8は水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO、又は−CH
2COOR
9で示される1価の基であり、R
9は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
上記R
8で示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R
8のうちの炭素数1〜18のアルキル基、及び、アラルキル基、アリール基は、前記R
5で示したとおりである。
上記R
4において、x、y及びzは、前記Aで説明したとおりである。
また、上記一般式(II)で表される繰り返し単位(2)中のR
4及びR
5は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0052】
本発明において、上記R
5としては、なかでも、後述する非水媒体との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、上記ブロック共重合体を構成する構成単位等によっても異なるが、非水媒体として、エーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの媒体を用いる場合には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。また、非水媒体が、ペンタン、ヘキサン等のより極性の低いものである場合には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等を用いることが好ましい。
ここで、上記R
5をこのように設定する理由は、上記R
5を含む構成単位(2)が、上記非水媒体に対して溶解性を有し、上記構成単位(1)のアミノ基と、前記重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが形成する塩形成部位が微粒子に対して高い吸着性を有するものであることにより、微粒子の分散性、及び安定性を特に優れたものとすることができるからである。
さらに、上記R
5は、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよい。
【0053】
本発明に用いられるブロック共重合体の分子サイズに関しては、上記繰り返し単位(1)の数は、3〜200の整数、好ましくは3〜50の整数である。上記繰り返し単位(2)の数は、10〜200の整数、好ましくは20〜100の整数、より好ましくは20〜70の整数である。本発明においては、上記繰り返し単位の数が、それぞれ上記の範囲内にあることにより、可溶性部位と不溶性部位が効果的に作用し、微粒子の分散性に優れたものとすることができる。
さらに、上記ブロック共重合体の質量平均分子量Mwは、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜15000の範囲内であることがより好ましく、3000〜12000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、微粒子を均一に分散させる分散初期の微粒子に対する濡れ性と分散安定性を両立することが可能となる。
【0054】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0055】
本発明に用いられるブロック共重合体の結合順としては、上記繰り返し単位(1)及び上記繰り返し単位(2)を有し、微粒子を安定に分散することができるものであればよく、特に限定されないが、上記繰り返し単位(1)が上記ブロック共重合体の一端のみに結合したものであることが好ましい。すなわち、上記繰り返し単位(1)と、上記繰り返し単位(2)とが、繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)の順で結合したものであってもよく、繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)−繰り返し単位(1)の順で結合したものであってもよく、繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)が繰り返し結合したものであってもよいが、本発明においては、なかでも繰り返し単位(1)−繰り返し単位(2)の順で結合したものが好ましい。その理由は、微粒子に対する吸着性に優れ、さらにこのようなブロック共重合体を用いた分散安定化剤同士の凝集を効果的に抑えることができるからである。
【0056】
構成単位(1)や構成単位(2)が2種以上含まれる場合において、構成単位(1)−構成単位(2’)−構成単位(2”)の順で結合したブロック共重合体や、構成単位(1’)−構成単位(1”)−構成単位(2)の順で結合したブロック共重合体や、構成単位(1’)−構成単位(1”)−構成単位(2’)−構成単位(2”)の順で結合したブロック共重合体などであっても良い。
【0057】
(塩型ブロック共重合体の製造)
本発明において、塩型ブロック共重合体の製造方法としては、前記の構成単位(1)と、構成単位(2)とを有し、かつ構成単位(1)が有するアミノ基と、前記重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成したものを製造することができる方法であればよく特に限定されない。本発明においては、例えば、前記の構成単位(1)および構成単位(2)を公知の重合手段を用いて重合した後、後述する非水媒体中に溶解または分散し、次いで前記重合性基を有するハロゲン化炭化水素を添加し、30〜120℃の温度で反応させることにより製造することができる。
上記重合手段としては、前記の構成単位(1)および構成単位(2)を所望のユニット比で重合し、所望の分子量とすることができる手段であればよく、特に限定されず、ビニル基を有する化合物の重合に一般的に用いられる方法を採用することができ、例えば、アニオン重合やリビングラジカル重合などを用いることができる。本発明においては、なかでも、「J.Am.Chem.Soc.」105、5706(1983)に開示されているグループトランスファー重合(GTP)のようにリビング的に重合が進行する方法を用いることが好ましい。この方法によると、分子量、分子量分布などを所望の範囲とすることが容易であるので、分散性などの特性を均一にすることができる。
【0058】
上記塩型ブロック共重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その含有量は、用いる微粒子の種類などに応じて適宜選定されるが、後述する微粒子100質量部に対して、通常、5〜200質量部の範囲であり、10〜100質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましい。塩型ブロック共重合体の含有量が上記範囲内にあれば、微粒子を均一に分散させることができる。
【0059】
(グラフト共重合体)
本発明においては、前記分散化安定剤として用いられる前記重合体が、下記一般式(I’)で表される窒素含有モノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらに前記窒素含有モノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成したグラフト共重合体(塩型グラフト共重合体と称することがある)であることが、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させ、かつ分散時の微粒子の平均粒径を小さく保つことができるナノ微粒子複合体を製造できる点から好ましい。
【0060】
【化9】
(式(I’)中、R
1、R
2、R
3、及びAは、それぞれ式(I)と同じである。)
【0061】
前記分散化安定剤として用いられる塩型グラフト共重合体において、マクロモノマーは、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなるものである。このエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端(以下、「片末端」と称することがある。)のみに有することが好ましい。また、マクロモノマーは、グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、置換基で置換されていてもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子などが挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが好ましく挙げられ、なかでも(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0062】
前記マクロモノマーのポリマー鎖は、下記一般式一般式(III)又は一般式(IV)で表される構成単位を少なくとも1種有するものであることが好ましい。
【0063】
【化10】
(式(III)及び、式(IV)中、R
21は水素原子又はメチル基であり、R
22は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、−[CH(R
23)−CH(R
24)−O]
x−R
25、−[(CH
2)
y−O]
z−R
25、−[CO−(CH
2)
y−O]
z−R
25、−CO−O−R
26又は−O−CO−R
27で示される1価の基である。R
23及びR
24は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
R
25は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO又は−CH
2COOR
28で示される1価の基であり、R
26は、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノ基、−[CH(R
23)−CH(R
24)−O]
x−R
25、−[(CH
2)
y−O]
z−R
25、−[CO−(CH
2)
y−O]
z−R
25で示される1価の基である。R
27は炭素数1〜18のアルキル基であり、R
28は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
mは1〜5の整数、n及びn’は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0064】
上記R
23及びR
24は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。R
25は、水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO又は−CH
2COOR
28で示される1価の基である。R
28は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基であり、R
27は、炭素数1〜18のアルキル基である。
上記R
25で示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R
22、R
25、R
26及びR
27のうちの炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR
5で示したとおりである。
上記R
22及びR
26において、x、y及びzは、前記R
5で説明したとおりである。
【0065】
本発明において、上記R
22及びR
26としては、なかでも、後述する非水媒体との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、上記グラフト共重合体を構成する構成単位等によっても異なるが、後述する非水媒体として、エーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの媒体を用いる場合には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。また、非水媒体が、ペンタン、ヘキサン等のより極性の低いものである場合には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等を用いることが好ましい。
ここで、上記R
22及びR
26をこのように設定する理由は、上記R
22及びR
26を含む構成単位が、上記非水媒体に対して溶解性を有し、上記窒素含有モノマーのアミノ基と後述するハロゲン化炭化水素とが形成する塩形成部位が微粒子に対して高い吸着性を有するものであることにより、微粒子の分散性、及び安定性を特に優れたものとすることができるからである。
【0066】
さらに、上記R
22及びR
26は、上記グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよい。また、これらの置換基を有するグラフト共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、カルボキシル基を有するグラフト共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたり、イソシアネート基を有するグラフト共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
【0067】
更に、グラフト共重合体に用いられるマクロモノマーは、1種単独で用いられても良いが、2種以上混合して用いても良い。
【0068】
mは1〜5の整数、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは4又は5の整数である。また、マクロモノマーの構成単位のユニット数n及びn’は、5〜200の整数であればよく、特に限定されないが、5〜100の範囲内であることが好ましい。
【0069】
マクロモノマーの質量平均分子量Mwは、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜10000の範囲内であることがより好ましい。上記範囲であることにより、分散安定化剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、立体効果による微粒子への吸着時間の増大を抑制することもできる。
【0070】
このようなマクロモノマーは、適宜合成したものでもよいし、市販品であってもよく、市販品としては、例えば片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(質量平均分子量:6000,「AA−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(質量平均分子量:6000,「AB−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(質量平均分子量:6000,「AS−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(「プラクセルFM5(商品名)」:ダイセル化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(「プラクセルFA10L(商品名)」:ダイセル化学(株)製)などが挙げられる。
【0071】
このようなマクロモノマーを合成するには、リビング重合法や、連鎖移動剤を用いるラジカル重合法がよく知られている。ラジカル重合法の方が、モノマーの選択の自由度が大きい点で利用しやすい。例えば、メルカプトプロピオン酸のような、カルボキシル基を有する連鎖移動剤の存在下でモノマーをラジカル重合することにより、片末端にカルボキシル基を有するオリゴマーが得られる。このオリゴマーにグリシジルメタクリレートを付加すると、片末端にメタクリロイル基を有するオリゴマー、すなわちマクロモノマーが得られる。
【0072】
また、上記グラフト共重合体の質量平均分子量Mwは、1000〜100000の範囲内であることが好ましく、3000〜50000の範囲内であることがより好ましく、5000〜30000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、微粒子を均一に分散させることができる。
【0073】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0074】
本発明に用いられるグラフト共重合体は、上記窒素含有モノマーとマクロモノマーとを共重合体成分として有し、さらに前記窒素含有モノマーが有するアミノ基と重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが塩を形成したものであり、その構造は、例えば
図4のように表される。
図4において、グラフト共重合体は、窒素含有モノマー単位51が重合反応により主鎖を形成し、該重合反応においてマクロモノマーの重合性基部位(エチレン性不飽和二重結合を有する基部位)52が同時に窒素含有モノマーと重合し、マクロモノマーは当該エチレン性不飽和二重結合を有する基部位に接続しつつポリマー鎖53として側鎖を形成しており、重合性基を有するハロゲン化炭化水素54は、窒素含有モノマー単位51のアミノ基と塩を形成したものである。
【0075】
(塩型グラフト共重合体の製造)
本発明において、分散安定化剤として用いる塩型グラフト共重合体の製造方法としては、前記窒素含有モノマーと、ポリマー鎖とその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基とからなるマクロモノマーとを共重合体成分として含有し、かつ窒素含有モノマーが有するアミノ基と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが塩を形成したものを製造することができる方法であればよく特に限定されない。本発明においては、例えば、前記窒素含有モノマーと前記マクロモノマーと、必要に応じてその他のモノマーとを公知の重合手段を用いてグラフト重合させることが可能である。次いで、後述する非水媒体に上記重合性基を有するハロゲン化炭化水素を添加し、30〜120℃の温度で反応させることにより塩型グラフト共重合体を製造することができる。なお、上記重合においては、重合に一般的に用いられる添加剤、例えば重合開始剤、連鎖移動剤などを用いてもよい。
【0076】
本発明において分散安定化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いる場合には、上記塩型ブロック共重合体を2種以上用いる場合や上記グラフト共重合体を2種以上用いる場合の他、上記塩型ブロック共重合体と上記塩型グラフト共重合体を組み合わせて用いてもよい。
分散安定化剤のナノ微粒子分散体中における含有量は、非水媒体中で微粒子を均一に分散することができれば特に限定されるものではなく、微粒子の種類によっても異なるが、後述する微粒子100質量部に対して、5〜200質量部の範囲で用いることが好ましく、10〜150質量部の範囲で用いることがより好ましく、20〜100質量部の範囲内で用いることがさらに好ましい。分散安定化剤の含有量が上記範囲内にあることにより、微粒子を均一に分散することが可能となる。
【0077】
<非水媒体>
本発明で用いられる非水媒体としては、上記重合体が可溶性を示す媒体であれば特に限定されるものではない。通常、比較的極性の低い媒体が好適に用いられるが、本発明においては、比較的極性の高い媒体を併用することもできる。
本発明で用いられる非水媒体としては、具体的には、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジアルキレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのジエチレングリコールアルキルエーテル類や、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのジプロピレングリコールアルキルエーテル類などのジアルキレングリコールアルキルエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類や、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類などのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−3−メトキシブチルなどのエステル類;ヘキサン、ヘプタンなどのアルカン類などが挙げられ、なかでもジエチレングリコール類、アルキレングリコールアルキルエーテル類、ジアルキレングリコールアルキルエーテル類、及びアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましく、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0078】
また、本工程に用いられる非水媒体は、溶解性の指標であるSP値(Solubility Parameter)が7〜12の範囲内であるものが好ましく、7〜11の範囲内であるものがより好ましく、9〜10の範囲内であるものがさらに好ましい。SP値が上記範囲内にあれば、上記重合体においてアミノ基と、上記重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが形成している4級アンモニウム塩が、解離することがなく、上記非水媒体中で上記重合体が完全に溶解することがない。その結果、後述する前記重合体の微粒子表面への選択的な集積する特性が低くなることもない。
ここで、SP値(単位:(cal/cm
3)
1/2)とは、お互いの分子間の引き合う力、すなわち凝集エネルギー密度CED(Cohensive Energy Density)の平方根で表されるものである。ここで、CEDの定義は、1cm
3のものを蒸発させるのに要するエネルギー量(単位:cal/cm
3)である。
【0079】
本工程に用いられる非水媒体としては、上述した1種類のみからなるものであってもよく、2種類以上を組み合わせたものであってもよい。本発明においては、以上のような溶媒を、当該溶媒を含むナノ微粒子分散体の全量に対して、70〜99質量%の割合になるように用いることが好ましい。非水媒体が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下したり、後述する架橋工程において分散液がゲル化する場合がある。
【0080】
<微粒子>
本発明で用いられる微粒子としては、上記非水媒体に対して不溶であるものであれば特に限定されるものではない。このような微粒子としては、例えば、無機・有機の顔料、染料、金属粉末、樹脂製造用のモノマー成分、化粧品、医薬品、微生物、細胞などが挙げられる。
【0081】
微粒子の平均粒径は、用途などに応じて適宜選択しうるものであるが、本発明のナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させるという効果を有効に活かす観点から、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜50nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、上記微粒子の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0082】
微粒子のナノ微粒子分散体中の含有量は、上記非水媒体中で均一に分散することができれば特に限定されるものではなく、用途などによって異なるものであるが、ナノ微粒子分散体全量に対して、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、1〜30質量%の範囲内であることがより好ましく、1〜15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
微粒子の含有量が上記範囲内にあることにより、微粒子を均一に分散することが可能となる。
【0083】
<ナノ微粒子分散体>
工程1で形成されるナノ微粒子分散体は、上記分散安定化剤の溶液に、上記微粒子を添加することにより、微粒子の表面に重合体が集積したものである。本発明においては、構成単位(1)に含まれるアミノ基と重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが形成する塩形成部位が非水媒体に対して不溶性を示すものであるため、微粒子を分散剤溶液に添加した際に、重合体が微粒子の表面に選択的に集積することができる。そのため、微粒子の分散性及び安定性に優れたナノ微粒子分散体が形成される。
【0084】
ナノ微粒子分散体の平均粒径は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、10nm〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。後述するナノ微粒子複合体の平均粒径を小さいものとすることができるため、上記微粒子が有する特性をより効果的、安定的に発揮することができるからである。
なお、上記ナノ微粒子分散体の平均粒径は、レーザ散乱法により測定した値である。具体的には、微粒子を非水媒体中に分散し、その分散体にレーザ光線を当てて得られた散乱光を捕捉し、演算することにより、平均粒径を測定する。
【0085】
(ナノ微粒子分散体の形成方法)
上記したナノ微粒子分散体は、公知の攪拌・分散手段により形成することができる。攪拌、あるいは分散において採用される分散機としては、例えば2本ロール、3本ロールなどのロールミル、ボールミル、振動ボールミルなどのボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミルなどのビーズミルなどが挙げられる。ビーズミルを用いる場合、使用するビーズ径は、0.03mm〜2.0mmが好ましく、より好ましくは0.05mm〜1.0mmである。
【0086】
[工程2.架橋工程]
次に、本発明の工程2を説明する。工程2は、上記重合体を架橋させる架橋工程である。本工程においては、重合体を微粒子表面に固定させることができるため、ナノ微粒子分散体と比べて分散性と安定性とに優れたナノ微粒子複合体を形成することができる。
また、上記ナノ微粒子分散体を形成する上記重合体が、微粒子表面に選択的に集積し、かつ微粒子表面の全体を覆うように存在することから、ナノ微粒子複合体の粒径を小さくし、かつ微粒子同士の再凝集を効果的に防ぐことができる。このことから、本発明で得られたナノ微粒子複合体は、例えば、非水媒体から取出し、乾燥した後に、用途に応じた媒体に再分散させることもできる。
さらに、本工程においては、上記重合体が架橋することでナノ微粒子複合体を形成するものであり、溶解度の差を利用して析出させることによるものではないため、非水媒体の再置換、乾燥などの工程が不要であり、生産性を向上させることもできる。
【0087】
本工程において、上記重合体を架橋させる方法としては、光開始剤の存在下での光の照射あるいは、熱開始剤の存在下での加熱により架橋させる方法が挙げられ、重合性基の種類により適宜選択される。本工程においては、いずれの方法も好適に用いることができるが、例えば、ナノ微粒子分散体の透明度が低く、光の照射で十分なラジカルを生じさせて、架橋を進行させることができないような場合は、加熱により重合する方法を用いることが好ましく、一方、微粒子の耐熱性が低い場合は、光の照射により架橋させる方法を用いることが好ましい。
また、本架橋工程は30〜150℃の温度条件が好ましく、30〜50℃がより好ましい。架橋工程の温度条件が上記範囲内にあれば、加熱条件による微粒子の再凝集などを防止することができる。
【0088】
(開始剤)
本工程において用いられる開始剤としては、従来知られている各種光開始剤、熱開始剤の中から適宜選択して用いることができる。光開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンなどの芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾイン;2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのハロメチルオキサジアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジンなどのハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−
フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノンなどが挙げられる。これらの光開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
本工程においては、上記光開始剤の使用量は、上記重合体の重合性基を有するハロゲン化炭化水素の重合性基に対して、0.0005〜0.1モル当量が好ましく、0.001〜0.05モル当量がより好ましい。光開始剤の使用量が上記範囲内にあれば、十分に架橋させることができ、架橋した塩型ブロック共重合体及び/または塩型グラフト共重合体の分子量が低くなることがないので、良好なナノ微粒子複合体の強度が得られる。
【0090】
熱開始剤としては、例えば、アルキル過酸化物、アシル過酸化物、ケトン過酸化物、アルキルヒドロ過酸化物、ペルオキシ2炭酸塩、スルホニル過酸化物などの有機過酸化物類、無機過酸化物類、アゾニトリルなどのアゾ化合物類、スルフィン酸類、ビスアジド類、ジアゾ化合物などが挙げられる。具体例としては、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ2硫酸塩、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硼酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾイソビスブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2炭酸塩、アゾビスシアノ吉草酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、p−トルエンスルフィン酸ナトリウムなどが好適に挙げられる。なかでも、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)は、30〜50℃程度の低温でも十分な効果を発揮し、加熱条件による微粒子の再凝集を防止できる点で好ましい。これらの熱開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
本工程における、上記熱開始剤の使用量は、上記重合体の重合性基を有するハロゲン化炭化水素の重合性基に対して0.0005〜0.1モル当量が好ましく、0.001〜0.05モル当量がより好ましい。熱開始剤の使用量が上記範囲内にあれば、十分に架橋させることができ、架橋した塩型ブロック共重合体及び/または塩型グラフト共重合体の分子量が低くなることがないので、良好なナノ微粒子複合体の強度が得られる。
【0092】
本工程における光開始剤及び熱開始剤の添加時期は、上記した架橋工程の前であれば特に限定されるものではなく、上記した分散工程前であってもよく、分散工程後であってもよく、光開始剤及び熱開始剤の安定性などに応じて適宜設定することができる。
【0093】
微粒子の分散剤溶液中の濃度が高い場合、本工程は超音波処理をしながら行うことが好ましい。超音波処理を行うことで、上記分散剤溶液のゲル化を防止することができ、あるいは微粒子の分散性が悪い場合でも、架橋が速やかに進行するので得られるナノ微粒子複合体の平均粒径を小さくすることができ、また安定的な分散が得られる。超音波処理は、光開始剤又は熱開始剤の添加時期と同時に、あるいは該添加時期よりも前に行うことが好ましい。
【0094】
(ナノ微粒子複合体)
このようにして得られたナノ微粒子複合体は、ナノサイズの微粒子を均一かつ安定的に分散させ、かつ分散時の微粒子の平均粒径を小さく保つことができるものである。ナノ微粒子複合体の平均粒径は、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、10nm〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。ナノ微粒子複合体の平均粒径が上記範囲内にあれば、微粒子が有する特性をより効果的、安定的に発揮することができるからである。なお、ナノ微粒子分散体の平均粒径は、上記したナノ微粒子分散体の平均粒径と同様にして測定することができる。
【0095】
本発明の製造方法で得られたナノ微粒子複合体は、微粒子の分散性および安定性を保持した状態で用いることが要求される用途において特に好適に用いることができる。例えば、ナノサイズの微粒子を用いることが要求される分野である、印刷用インク、医療材料、塗料、記録材料、化粧品、半導体基板などに用いることができる。
また、近年のパーソナルコンピューター、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴い、液晶ディスプレイの需要が増加している。そして最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、ますます液晶ディスプレイの市場は拡大しつつあり、さらにその大画面化の傾向が強まっている。このような中、液晶表示装置や有機発光表示装置をカラー表示化させる機能を有するカラーフィルタの製造に用いられる着色樹脂組成物に適用される顔料にも好適に適用することができる。
【実施例】
【0096】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0097】
(製造例1 ブロック共重合体の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、テトラヒドロフラン(THF)300質量部および開始剤のジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール2.68質量部を添加用ロートを介して加え、充分に窒素置換を行った。触媒のテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートの1モル/Lのアセトニトリル溶液0.40質量部をシリンジを用いて注入し、メタクリル酸メチル50質量部、メタクリル酸n−ブチル30質量部、メタクリル酸ベンジル20質量部の混合液を添加用ロートを用いて、60分かけて滴下した。反応フラスコを氷浴で冷却することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(略称DMA)50質量部を20分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール1質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液をエバポレーション、真空乾燥により精製を行い、ブロック共重合体を得た。このようにして得られたブロック共重合体を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01モル/Lの臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量Mw:9250、数平均分子量Mn:7850、分子量分布Mw/Mnは1.18であった。なおアミン価は120mgKOH/gであった。
【0098】
(製造例2 マクロモノマーAの合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称PGMEA)80.0重量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸メチル50.0重量部、メタクリル酸−n−ブチル30.0重量部、メタクリル酸ベンジル20.0重量部、メルカプトエタノール4.0重量部、PGMEA30重量部、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)1.0重量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)8.74重量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.125g、p−メトキシフェノール0.125重量部、及びPGMEA10重量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーAの49.5%溶液を得た。得られたマクロモノマーAを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01mol/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量(Mw)4010、数平均分子量(Mn)1910、分子量分布(Mw/Mn)は2.10であった。
【0099】
(製造例3 グラフト共重合体の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0重量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。製造例2のマクロモノマーA溶液67.34重量部(有効固形分33.33重量部)、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(略称DMA)16.67重量部、n−ドデシルメルカプタン1.24重量部、PGMEA20.0重量部、AIBN0.5重量部の混合溶液混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10重量部 、PGMEA10.0重量部 の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体の26.0%溶液を得た。得られたグラフト共重合体は、GPC測定の結果、重量平均分子量(Mw)12420、数平均分子量(Mn)4980、分子量分布(Mw/Mn)は2.49であった。なおアミン価は118mgKOH/gであった。
【0100】
(製造例4 塩型ブロック共重合体溶液の調製)
300mL丸底フラスコ中で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)130.0質量部、n−ブトキシエタノール30.0重量部、製造例1で調製したブロック共重合体35.9質量部を溶解させ、重合性基を有するハロゲン化炭化水素として、4−クロロメチルスチレン(アクロス社製)を4.1質量部(ブロック共重合体のDMAユニットに対し、0.35モル当量)加え、反応温度80℃で6時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型ブロック共重合体溶液を調製した。このとき、ブロック共重合体のアミノ基は、4−クロロメチルスチレンとの4級化反応により塩形成されている。
【0101】
(製造例5 塩型グラフト共重合体溶液の調製)
300mL丸底フラスコ中で、PGMEA29.2質量部、n−ブトキシエタノール30.0重量部、製造例3で調製したグラフト共重合体136.2質量部を溶解させ、重合性基を有するハロゲン化炭化水素として、4−クロロメチルスチレン(アクロス社製)を4.6質量部(グラフト共重合体のDMAユニットに対し、0.40モル当量)加え、反応温度80℃で6時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型グラフト共重合体溶液を調製した。このとき、グラフト共重合体のアミノ基は、4−クロロメチルスチレンとの4級化反応により塩形成されている。
【0102】
実施例1
(ナノ微粒子分散体Aの製造)
製造例4で得られた塩型ブロック共重合体溶液30.0重量部(固形分量:6.0重量部)、微粒子として市販のC.I.ピグメントイエロー150(平均一次粒径:20〜50nm)10.0重量部、PGMEA55.8重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)4.2重量部、2.0mmジルコニアビーズ100重量部をマヨネーズビンに入れて、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液100重量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ200重量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて3時間分散を行い、ナノ微粒子分散体Aを得た。
【0103】
(ナノ微粒子複合体Aの製造)
50mlのナスフラスコ中に、上記で得られたナノ微粒子分散体A30重量部に対して、開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−70:和光純薬社製)0.010質量部を加えて、超音波処理を行いながら50℃で3時間反応させることでナノ微粒子複合体Aを含有するナノ微粒子複合体分散液Aを得た。
【0104】
実施例2
実施例1において、微粒子を市販のC.I.ピグメントブルー15:6(平均一次粒径:10〜40nm)とした以外は実施例1と同様にしてナノ微粒子複合体Bを含有するナノ微粒子複合体分散液Bを得た。
【0105】
実施例3
実施例1において、微粒子を市販のピグメントレッド209(平均一次粒径:30〜60nm)とした以外は実施例1と同様にしてナノ微粒子複合体Cを含有するナノ微粒子複合体分散液Cを得た。
【0106】
実施例4
実施例1において、微粒子を市販のシリカ微粒子(平均一次粒径:10〜30nm)とし、本解砕として12時間分散した以外は実施例1と同様にしてナノ微粒子複合体Dを含有するナノ微粒子複合体分散液Dを得た。
【0107】
参考例1〜4
実施例1〜4におけるナノ微粒子分散体A〜Dを含有する分散液を各々参考例1〜4とした。
【0108】
実施例5
(ナノ微粒子分散体Eの製造)
製造例5で得られた塩型グラフト共重合体溶液30.0重量部(固形分量:6.0重量部)、微粒子として市販のC.I.ピグメントイエロー150(平均一次粒径:20〜50nm)10.0重量部、PGMEA55.8重量部、PGME4.2重量部、2.0mmジルコニアビーズ100重量部をマヨネーズビンに入れて、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液100重量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ200重量部とをマヨネーズビンに入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて3時間分散を行い、ナノ微粒子分散体Eを得た。
【0109】
(ナノ微粒子複合体Eの製造)
50mlのナスフラスコ中に、上記で得られたナノ微粒子分散体A30重量部に対して、開始剤としてV−70 0.010質量部を加えて、超音波処理を行いながら50℃で3時間反応させることでナノ微粒子複合体Eを含有するナノ微粒子複合体分散液Eを得た。
【0110】
実施例6
実施例5において、微粒子を市販のC.I.ピグメントブルー15:6(平均一次粒径:10〜40nm)とした以外は実施例5と同様にしてナノ微粒子複合体Fを含有するナノ微粒子複合体分散液Fを得た。
【0111】
実施例7
実施例5において、微粒子を市販のピグメントレッド209(平均一次粒径:30〜60nm)とした以外は実施例5と同様にしてナノ微粒子複合体Gを含有するナノ微粒子複合体分散液Gを得た。
【0112】
実施例8
実施例5において、微粒子を市販のシリカ微粒子(平均一次粒径:10〜30nm)とし、本解砕として12時間分散した以外は実施例5と同様にしてナノ微粒子複合体Hを含有するナノ微粒子複合体分散液Hを得た。
【0113】
参考例5〜8
実施例5〜8におけるナノ微粒子分散体E〜Hを含有する分散液を各々参考例5〜8とした。
【0114】
<分散安定性評価>
分散安定性の評価として、各実施例及び参考例で得られた分散液を、40℃で1週間静置し、静置前後の上記分散液中のナノ微粒子複合体及びナノ粒子分散体の平均粒径とせん断粘度の測定を行った。平均粒径の測定には、日機装社製「ナノトラック粒度分布計UPA−EX150」を用い、粘度測定には、Anton Paar製「レオメータMCR301」を用いて、せん断速度が60rpmのときのせん断粘度を測定した。
結果を表1及び2に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
[結果のまとめ]
非水媒体中に、分散安定化剤として、一般式(I)で表される構成単位(1)を有し、更に前記構成単位(1)が有するアミノ基の少なくとも一部と、重合性基を有するハロゲン化炭化水素とが4級アンモニウム塩を形成した重合体を溶解させた溶液に、微粒子を添加してナノ微粒子分散体を形成し、前記重合体を架橋させて得られた、実施例1〜8のナノ粒子複合体は、同一の粒子と分散剤を用いた、対応する参考例1〜8のナノ粒子分散体よりも、粒径が小さく、粘度が低くなることが明らかとなった。更に、実施例1〜8のナノ粒子複合体は、保存安定性試験後においても、粒径及び粘度がほとんど変化せず、分散安定性に優れることが明らかとなった。