(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、携帯電話端末など、小型の通信端末装置は、その小型化、薄型化にともなう機械的強度の劣化に対応するため、これまで樹脂で作られていた筐体の全面に金属メッキをするなど、筺体の「金属化」が進められている。但し、金属化した筺体の内側にアンテナを内蔵すると、アンテナから出力される信号が金属によって遮蔽されるため、通信できなくなる問題がある。そのため、一般的には、筺体の一部を非金属化して、その付近にアンテナを実装する構造が採られる。
【0006】
しかし、最近では、NFC(Near Field Communication)などのHF帯RFIDシステムが内蔵されることも増えてきている。このHF帯RFIDシステムで使われるアンテナコイルをも前記非金属部に配置させるとなると、アンテナに必要なスペースの確保が非常に困難になる。
【0007】
すなわち、複数の周波数帯域を適用するアンテナを如何に構成するか、如何に組み込むか、が課題であった。
【0008】
上述の事情は、通信用や放送受信用のアンテナに限らず、電力伝送用のアンテナ(送受電部)を備える電子機器にも同様で当てはまる。
【0009】
本発明の目的は、周波数帯の異なる複数のシステムで兼用できる小型のアンテナ装置およびそれを備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアンテナ装置は次のように構成される。
【0011】
(1)第1周波数帯用のアンテナ素子である放射素子と、
前記放射素子に接続されるグランド導体と、
前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用の第2給電回路に接続されるコイルと、
を備え、
前記放射素子と前記グランド導体とによって磁界型アンテナのループ部が構成され、
前記コイルは前記ループ部に磁界結合することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、放射素子は第1周波数帯(例えばUHF帯)においては本来の放射素子として作用し、第2周波数帯(例えばHF帯)においては、前記放射素子の全部または一部がループ部の一部として兼用されて放射素子として作用する。そのため、第1の周波数帯を用いるシステムと第2の周波数帯を用いるシステムとで兼用でき、アンテナ装置の小型化が図れる。
【0013】
(2)上記(1)において、前記放射素子は電界型アンテナであることが好ましい。
【0014】
(3)上記(1)または(2)において、前記第2給電回路は平衡型の回路であることが好ましい。
【0015】
(4)上記(3)において、前記放射素子と前記グランド導体との間に接続される第1リアクタンス素子をさらに備え、前記第1リアクタンス素子は、前記第1周波数帯におけるインピーダンスが、前記第2周波数帯におけるインピーダンスより高いことが好ましい。この構成により、第1リアクタンス素子は第1周波数帯でのアンテナ動作に影響を与えず、且つ前記ループ部を第2周波数でのアンテナとして作用させることができる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、例えば前記放射素子は、セルラー通信用のアンテナであり、前記ループ部は、HF帯RFIDシステム用のアンテナである。
【0017】
(6)本発明の電子機器は、
第1周波数帯用のアンテナ素子である放射素子と、
前記放射素子に接続されるグランド導体と、
前記第1周波数帯よりも低い第2周波数帯用の第2給電回路に接続されるコイルと、
を備え、
前記放射素子と前記グランド導体とによって磁界型アンテナのループ部が構成され、
前記コイルは前記ループ部に磁界結合する、アンテナ装置と、
前記第2給電回路を収容する筐体と、を有する。
【0018】
(7)上記(6)において、前記筐体は金属部を有し、前記放射素子は前記金属部で構成されることが好ましい。
【0019】
(8)上記(6)または(7)において、前記筐体は金属部を有し、前記グランド導体は前記金属部で構成されることが好ましい。
【0020】
(9)上記(6)または(7)において、前記グランド導体は、前記第2給電回路が設けられる基板に形成されることが好ましい。
【0021】
(10)上記(6)から(9)のいずれかにおいて、例えば前記放射素子は、セルラー通信用のアンテナであり、前記ループ部は、HF帯RFIDシステム用のアンテナである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、放射素子を第1周波数帯においては電界放射素子として、第2周波数帯においては磁界放射素子として作用するため、第1の周波数帯を用いる通信システムと第2の周波数帯を用いる通信システムとで兼用でき、アンテナ装置の小型化が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るアンテナ装置101の主要部の平面図である。このアンテナ装置101は基板10に構成されている。基板10にはグランド導体11の形成領域と、グランド導体が形成されていない非グランド領域NGZとを備えている。非グランド領域NGZには、コ字状の放射素子21が形成されている。すなわち、この放射素子21はグランド導体11の端辺に対して平行な部分とその平行部分からグランド導体方向へ延びる部分とで構成されている。放射素子21の第1端とグランド導体11との間にはチップキャパシタ(コンデンサ)C1が実装されていて電気的に接続されている。また、放射素子21の第2端とグランド導体11との間にはチップインダクタL1が実装されていて電気的に接続されている。インダクタL1は、本発明に係る第1リアクタンス素子、キャパシタC1は本発明に係る第2リアクタンス素子に相当する。
【0025】
基板10には、UHF帯(第1周波数帯)用ICによる第1給電回路31およびHF帯(第2周波数帯)RFID用ICによる第2給電回路32がそれぞれ設けられている。
【0026】
第1給電回路31の入出力部はキャパシタC3を介して放射素子21の所定の給電点に接続されている。また、第2給電回路32の入出力部はキャパシタC2を介して放射素子21の第1端付近に接続されている。
【0027】
図2は2つの周波数帯におけるアンテナ装置101の等価回路図である。
図2において等価回路EC11,EC12はUHF帯での等価回路図、等価回路EC20はHF帯での等価回路図である。
【0028】
図1に示したキャパシタC1は、UHF帯では低インピーダンスで等価的にショート状態となるので、
図2の等価回路EC11において接地端SPで示すとおり、放射素子21の第1端はグランド導体11に接地される。また、
図1に示したインダクタL1は、UHF帯では高インピーダンスで等価的にオープン状態となるので、
図2の等価回路EC11において開放端OPで示すとおり、放射素子21の第2端は開放される。キャパシタC1はUHF帯では素子の誘導性リアクタンスが支配的となるので、
図2の等価回路EC12に示すように等価的なインダクタLeを介して接地されているように表すこともできる。また、インダクタL1は、UHF帯では素子の容量性リアクタンスが支配的となるので、
図2の等価回路EC12に示すように、放射素子21の開放端と接地との間に等価的なキャパシタCeが接続されているように表すこともできる。
【0029】
第1給電回路31は放射素子21上の所定の給電点に電圧給電する。UHF帯では、放射素子21の開放端が電界強度最大、接地端SPが電流強度最大となるように共振する。換言すると、UHF帯で共振するように、放射素子21の長さ、等価的インダクタLeおよびキャパシタCeの値などが定められている。但し、この放射素子21は700MHz〜2.4GHzの周波数帯域のうちローバンドでは基本波モードで共振し、ハイバンドでは高次モードで共振する。このようにして、UHF帯では、放射素子21およびグランド導体11が電界放射に寄与する逆F型アンテナとして作用する。なお、ここでは逆F型アンテナを例示しているが、モノポールアンテナなどにも同様に適用できる。また、板状逆Fアンテナ(PIFA)等のパッチアンテナでも同様に適用できる。
【0030】
一方、HF帯では、
図2の等価回路EC20に示すように、放射素子21、この放射素子21に対向するグランド導体11の端辺およびインダクタL1によるインダクタンスとキャパシタC1のキャパシタンスとでLC共振回路が構成される。第2給電回路32はキャパシタC2を介してキャパシタC1の両端に第2周波数の通信信号を給電する。
【0031】
上記LC共振回路はHF帯で共振し、放射素子21およびグランド導体11の端辺に共振電流が流れる。換言すると、HF帯で共振するように、放射素子21の長さ、インダクタL1およびキャパシタC1の値などが定められている。このようにして、HF帯では、放射素子21およびグランド導体11によるループ部が磁界放射に寄与するループアンテナとして作用する。
【0032】
図1に示したキャパシタC3は、HF帯(第2周波数帯)では高インピーダンスとなって、第1給電回路31が等価的に接続されていない状態となるので、第1給電回路31はHF帯の通信に影響を与えない。また、UHF帯(第1周波数帯)では、放射素子21の第1端は等価的に接地されているか、低インダクタンスを介して接地されているので、第2給電回路32にUHF帯の通信信号が流れることがなく、第2給電回路32はUHF帯の通信に影響を与えない。
【0033】
このようにして、アンテナ装置101はUHF帯(第1周波数帯)を用いる通信用アンテナおよびHF帯(第2周波数帯)を用いる通信用アンテナとして作用する。
【0034】
図3は第1の実施形態のアンテナ装置101の集中定数素子による等価回路図である。
図3において等価回路EC1はUHF帯での等価回路図、等価回路EC2はHF帯での等価回路図である。
図3において、放射素子21をインダクタL21A,L21Bで表し、グランド導体11をインダクタL11で表している。
【0035】
図3に示すように、UHF帯では等価回路EC1において矢印で示す電流が流れて、逆F型アンテナとして作用する。HF帯では、等価回路EC2において矢印で示す電流が流れて、ループアンテナとして作用する。
【0036】
図4は第2給電回路32の入出力部にローパスフィルタLPFを設けた場合の等価回路図である。
図4の例では、RFID用ICで構成される給電回路32とキャパシタC2との間にインダクタL4およびキャパシタC4によるローパスフィルタLPFが設けられている。その他の構成は
図3の等価回路EC1に示したとおりである。ローパスフィルタLPFはRFID用ICから出力される高周波のノイズ成分を除去する。これによりUHF帯を用いる通信およびHF帯を用いる通信に与えるノイズ成分の影響を抑制する。
【0037】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では第2給電回路がアンテナに平衡給電する例について示す。
【0038】
図5は第2の実施形態に係るアンテナ装置102の主要部の平面図である。このアンテナ装置102は基板10に構成されている。基板10にはグランド導体11の形成領域と、グランド導体が形成されていない非グランド領域NGZとを備えている。非グランド領域NGZには、コ字状の放射素子21が形成されている。放射素子21の第1端とグランド導体11との間には複数のチップ部品および第2給電回路32を含む回路が構成されている。放射素子21の第2端とグランド導体11との間にはチップインダクタL1が接続されている。その他の構成は
図1に示したものと同様である。
【0039】
図6は第2の実施形態のアンテナ装置102のHF帯での等価回路図である。
図6において放射素子21をインダクタL21で表し、グランド導体11をインダクタL11で表している。これらのインダクタL21,L11,L1およびキャパシタC1A,C1BによってLC共振回路が構成される。
【0040】
第2給電回路32とキャパシタC2A,C2Bとの間にはインダクタL4A,L4BおよびキャパシタC4A,C4Bによるローパスフィルタが構成されている。第2給電回路32は上記ローパスフィルタおよびキャパシタC2A,C2Bを介してキャパシタC1A,C1Bの両端に第2周波数の通信信号を平衡給電する。このように平衡給電回路を適用することもできる。
【0041】
《第3の実施形態》
図7は第3の実施形態に係るアンテナ装置103の主要部の平面図である。このアンテナ装置103は基板10に構成されている。基板10にはグランド導体11の形成領域と、グランド導体が形成されていない非グランド領域NGZとを備えている。非グランド領域NGZには、コ字状の放射素子21が形成されている。放射素子21の第1端はグランド導体11に直接接地されている。放射素子21の第2端とグランド導体11との間にはチップインダクタL1およびチップキャパシタC1が直列に接続されている。
【0042】
基板10には、UHF帯用ICによる第1給電回路31およびHF帯RFID用ICによる第2給電回路32がそれぞれ設けられている。
【0043】
第1給電回路31の入出力部はキャパシタC3を介して放射素子21の所定の給電点に接続されている。また、第2給電回路32の入出力部はキャパシタC2を介して、インダクタL1とキャパシタC1との接続部に接続されている。
【0044】
上記インダクタL1、キャパシタC1,C2および第2給電回路32は1つのRFモジュール41として構成されていて、このRFモジュール41が基板10に実装されている。
【0045】
図8は2つの周波数帯におけるアンテナ装置103の等価回路図である。
図8において等価回路EC11,EC12はUHF帯での等価回路図、等価回路EC20はHF帯での等価回路図である。
【0046】
図7に示したキャパシタC1は、UHF帯では低インピーダンスで等価的にショート状態となるが、
図7に示したインダクタL1はUHF帯では高インピーダンスで等価的にオープン状態となる。そのため、
図8の等価回路EC11において開放端OPで示すとおり、放射素子21の第2端は開放される。UHF帯におけるキャパシタC1およびインダクタL1のキャパシタンス成分を等価的なキャパシタCeで表せば、
図8の等価回路EC12に示すように、放射素子21の開放端と接地との間に等価的なキャパシタCeが接続されているように表すこともできる。
【0047】
第1給電回路31は放射素子21上の所定の給電点に電圧給電する。UHF帯では、放射素子21の開放端が電界強度最大、接地端SPが電流強度最大となるように共振する。換言すると、UHF帯で共振するように、放射素子21の長さ、等価的キャパシタCeの値などが定められている。このようにして、UHF帯では、放射素子21およびグランド導体11が電界放射に寄与する逆F型アンテナとして作用する。
【0048】
一方、HF帯では、
図8の等価回路EC20に示すように、放射素子21、この放射素子21に対向するグランド導体11の端辺およびインダクタL1によるインダクタンスとキャパシタC1のキャパシタンスとでLC共振回路が構成される。第2給電回路32はキャパシタC2を介してキャパシタC1の両端に第2周波数の通信信号を給電する。
【0049】
上記LC共振回路はHF帯で共振し、放射素子21およびグランド導体11の端辺に共振電流が流れる。換言すると、HF帯で共振するように、放射素子21の長さ、インダクタL1およびキャパシタC1の値などが定められている。このようにして、HF帯では、放射素子21およびグランド導体11によるループ部が磁界放射に寄与するループアンテナとして作用する。
【0050】
図7に示したキャパシタC3は、HF帯(第2周波数帯)では高インピーダンスとなって、第1給電回路31が等価的に接続されていない状態となるので、第1給電回路31はHF帯の通信に影響を与えない。また、UHF帯(第1周波数帯)では、放射素子21の第1端は等価的に接地されているか、低インダクタンスを介して接地されているので、第2給電回路32にUHF帯の通信信号が流れることがなく、第2給電回路32はUHF帯の通信に影響を与えない。
【0051】
このようにして、アンテナ装置103はUHF帯(第1周波数帯)を用いる通信用アンテナおよびHF帯(第2周波数帯)を用いる通信用アンテナとして作用する。
【0052】
《第4の実施形態》
図9は第4の実施形態に係るアンテナ装置の、特に放射素子21の構造を示す図である。
【0053】
第1〜第3の実施形態では、基板に導体パターンによる放射素子を設けた例を示したが、
図9に示すように、放射素子21は金属板で構成してもよい。また、放射素子21およびグランド導体によって形成されるループ部のループ面はグランド導体11の面内に無くてもよく、平行でなくてもよい。
図9に示すようにループ面はグランド導体11の面に対して垂直であってもよい。
【0054】
グランド導体11についても、基板に導体パターンで形成されている必要はなく、例えば金属板で構成されていてもよい。さらには金属化筐体をグランド導体の一部として利用してもよい。
【0055】
図9の例では、放射素子21の第1端21E1、第2端21E2とグランド導体11との間にそれぞれ間隙が設けられている。この部分に、例えば
図1に示したチップキャパシタC1やチップインダクタL1を設けてもよい。
【0056】
また、
図9の例では、グランド導体11から電気的に分離された電極12にスプリングピン等による給電ピンFPが突設されていて、この給電ピンFPが放射素子21の所定位置に当接して給電される。
【0057】
《第5の実施形態》
図10は第5の実施形態に係るアンテナ装置105の主要部の平面図である。基板10の非グランド領域NGZには、C字状の放射素子21が形成されている。この放射素子21のうちグランド導体11の端辺と対向する部分の一方端FP2とグランド導体11との間にはチップインダクタL1およびチップキャパシタC1が直列に接続されている。
【0058】
基板10には、UHF帯用ICによる第1給電回路31およびHF帯RFID用ICによる第2給電回路32がそれぞれ設けられている。
【0059】
第1給電回路31の入出力部はキャパシタC3を介して放射素子21の所定の給電点FP1に接続されている。また、第2給電回路32の入出力部はキャパシタC2を介して、インダクタL1とキャパシタC1との接続部に接続されている。
【0060】
上記インダクタL1、キャパシタC1,C2および第2給電回路32は1つのRFモジュール41として構成されていて、このRFモジュール41が基板10に実装されている。
【0061】
放射素子21の上記給電点FP1から第1端21E1までの線路長と、給電点FP1から第2端21E2までの線路長は異なる。この放射素子21は700MHz〜2.4GHzの周波数帯域のうちローバンドとハイバンドの2つの周波数帯で共振する。放射素子21の第1端21E1と第2端21E2との間に生じる容量によっても上記2つの共振周波数は調整される。
【0062】
放射素子21のうち、UHF帯の給電点FP1とモジュール41の接続点FP2との間の部分がHF帯用アンテナのループの一部を構成する。
【0063】
《第6の実施形態》
図11は第6の実施形態に係るアンテナ装置106の主要部の平面図である。基板10の非グランド領域NGZには、コ字状の放射素子21が形成されている。放射素子21の第1端とグランド導体11との間にはチップキャパシタC1が接続されていて、放射素子21の第2端とグランド導体11との間にはチップインダクタL1が接続されている。
【0064】
基板10には、UHF帯用ICによる第1給電回路31およびHF帯RFID用ICによる第2給電回路32がそれぞれ設けられている。
【0065】
第1給電回路31の入出力部はキャパシタC3を介して放射素子21の所定の給電点に接続されている。給電回路32は平衡入出力型のRFID用ICであり、その入出力部にキャパシタを介して給電コイル33が接続されている。この給電コイル33はフェライトコアにコイルが巻回されたフェライトチップアンテナである。給電コイル33は、そのコイル軸が放射素子21側を向くように配置されている。給電回路32、キャパシタおよび給電コイル33はモジュール化し、それを基板10に実装するようにしてもよい。
【0066】
HF帯では、放射素子21およびグランド導体11の端辺、インダクタL1およびキャパシタC1によってLC共振ループが構成される。給電コイル33はこのループと磁界結合する。
【0067】
図12は給電コイル33と放射素子21との磁界結合の様子を示す図である。給電コイル33はグランド導体11の縁に配置されていて、給電コイル33を通る磁束はグランド導体11を避けるように周回するので、この磁束は基板10の非グランド領域NGZの形成されている放射素子21と鎖交しやすい。
【0068】
図13はアンテナ装置106のHF帯での等価回路図である。
図13において、放射素子21をインダクタL21で表し、グランド導体11の端辺をインダクタL11で表している。給電コイル33にはキャパシタC1A,C1Bの直列回路が接続されていて、LC共振回路が構成されている。第2給電回路32はキャパシタC2A,C2Bを介してこのLC共振回路にHF帯の通信信号を給電する。
【0069】
放射素子21およびグランド導体11の端辺、インダクタL1およびキャパシタC1によるLC共振ループがブースタアンテナ51として作用する。
【0070】
なお、
図7に示したように、放射素子21の第1端を接地し、第2端にインダクタおよびキャパシタを配置してもよいし、第2端を接地し、第1端にインダクタおよびキャパシタを配置してもよい。
【0071】
この実施形態では、放射素子21にHF帯の給電回路を直接接続しないので、給電コイル33の実装位置の自由度が高く、また基板10に形成するパターンも簡素化できる。
【0072】
《第7の実施形態》
図14は第7の実施形態に係るアンテナ装置107の主要部の平面図である。基板10の非グランド領域NGZには、コ字状の放射素子21が形成されている。放射素子21の第1端とグランド導体11との間にはチップインダクタL1が接続されていて、放射素子21の第2端とグランド導体11との間にはチップインダクタL2が接続されている。
【0073】
基板10には、UHF帯用ICによる第1給電回路31およびHF帯RFID用ICによる第2給電回路32がそれぞれ設けられている。
【0074】
第1給電回路31の入出力部はキャパシタC3を介して放射素子21の所定の給電点に接続されている。給電回路32の入出力部にキャパシタを介して給電コイル33が接続されている。この給電コイル33はフェライトコアにコイルが巻回されたフェライトチップアンテナであり、そのコイル軸が放射素子21側を向くように配置されている。
【0075】
図15は2つの周波数帯におけるアンテナ装置107の等価回路図である。
図15において等価回路EC1はUHF帯での等価回路図、等価回路EC2はHF帯での等価回路図である。UHF帯においては、インダクタL1,L2は高インピーダンスとなるので、放射素子21の両端は等価的に開放され、UHF帯の電界放射アンテナとして作用する。
【0076】
放射素子21にHF帯の給電回路を直接接続しない場合には、この例のように、放射素子21の両端を、インダクタを介してグランド導体11に接地してもよい。そのことで、HF帯において、放射素子21およびグランド導体11の端辺、およびインダクタL1,L2によってループ部が構成される。給電コイル33はこのループ部と磁界結合する。このことで、前記ループ部はブースタアンテナとして作用する。
【0077】
《第8の実施形態》
図16は第8の実施形態に係るアンテナ装置を備えた通信端末装置201の、下部筐体を取り外した状態での平面図である。この通信端末装置201は本発明の「電子機器」の一実施形態である。通信端末装置201の筐体は大部分が金属化筐体部90で構成され、両端部の非金属領域91,92に成型金属板による放射素子21,20がそれぞれ配置されている。金属化筐体部90にはバッテリーパック52が収められている。基板10には給電回路30、第1給電回路31、第2給電回路32、チップキャパシタC1,C2,C3、チップインダクタL1、カメラモジュール53等が実装されている。金属化筐体部90は基板10のグランドと電気的に接続されている。放射素子21に対するこれらの各素子の接続関係は
図1に示したものと同じである。
【0078】
UHF帯では、放射素子21およびグランド導体11が電界放射に寄与する逆F型アンテナとして作用する。HF帯では、放射素子21および金属化筐体部90の端辺によるループが磁界放射に寄与するループアンテナとして作用する。
【0079】
なお、
図16に示した例では、放射素子20はセルラー通信用メインアンテナとして用い、放射素子21は(UHF帯において)セルラー通信用サブアンテナとして用いている。
【0080】
《第9の実施形態》
図17は第9の実施形態に係るアンテナ装置を備えた通信端末装置202の、下部筐体を取り外した状態での平面図である。この通信端末装置202は本発明の「電子機器」の一実施形態である。通信端末装置202の筐体は大部分が金属化筐体部90で構成され、両端部の非金属領域91,92に成型金属板による放射素子21,20がそれぞれ配置されている。金属化筐体部90にはバッテリーパック52が収められている。この通信端末装置202の基板10には、給電回路30、第1給電回路31、チップキャパシタC3、RFモジュール41、カメラモジュール53等が実装されている。金属化筐体部90は基板10のグランドと電気的に接続されている。放射素子21に対するこれらの各素子の接続関係は
図7に示したものと同じである。
【0081】
UHF帯では、放射素子21およびグランド導体11が電界放射に寄与する逆F型アンテナとして作用する。HF帯では、放射素子21および金属化筐体部90の端辺によるループが磁界放射に寄与するループアンテナとして作用する。
【0082】
《第10の実施形態》
第10の実施形態は2つの放射素子を含むループをHF帯用のループアンテナとして利用する例である。
【0083】
図18は第10の実施形態に係る通信端末装置203の、下部筐体を取り外した状態での平面図である。この通信端末装置203の筐体は大部分が金属化筐体部90で構成され、両端部の非金属領域91,92に成型金属板による放射素子21,20がそれぞれ配置されている。筐体内には、給電回路30、第1給電回路31、第2給電回路32、チップキャパシタC1,C2,C3、チップインダクタL1等が設けられている。
図18においては基板の図示は省略している。
【0084】
放射素子21の第1端と金属化筐体部90との間はキャパシタC1で接続されている。放射素子21の第2端と放射素子20の第1端とはインダクタや線路を介して接続されている。放射素子20の第2端と金属化筐体部90との間はインダクタL1で接続されている。このように、放射素子20,21、金属化筐体部90、上記インダクタおよび線路によってループが構成され、このループとキャパシタC1とでLC共振回路が構成されている。第2給電回路32はキャパシタC2を介して上記LC共振回路に給電する。第1給電回路31はキャパシタC3を介して放射素子21の給電点へ給電する。同様に、給電回路30はキャパシタを介して放射素子20の給電点へ給電する。
【0085】
このようにして、ループ径(ループ長)の大きなHF帯用ループアンテナが構成できる。
【0086】
《第11の実施形態》
放射素子とグランド導体との間に接続される第1リアクタンス素子は、理想的には自己共振しない素子であるか、自己共振周波数が非常に高いことが好ましい。しかし、現実のリアクタンス素子は寄生成分を含むことにより、自己共振してしまう。本実施形態は、第1リアクタンス素子の自己共振周波数が使用周波数帯域内にある場合に、所定周波数で自己共振するリアクタンス素子を組み合わせることで、自己共振が問題にならないようにした例を示すものである。
【0087】
図19は第11の実施形態に係るアンテナ装置111の主要部の平面図である。このアンテナ装置111は基板10に構成されている。基板10にはグランド導体11の形成領域と、グランド導体11が形成されていない非グランド領域NGZとを備えている。非グランド領域NGZには、コ字状の放射素子21が形成されている。すなわち、この放射素子21はグランド導体11の端辺に対して平行な部分とその平行部分からグランド導体方向へ延びる部分とで構成されている。放射素子21の第1端とグランド導体11との間にはチップキャパシタ(コンデンサ)C1が実装されていて電気的に接続されている。また、放射素子21の第2端とグランド導体11との間にはチップインダクタL1a,L1b,L1cが実装されていて電気的に接続されている。チップインダクタL1a,L1b,L1cは、本発明に係る第1リアクタンス素子、キャパシタC1は本発明に係る第2リアクタンス素子に相当する。
【0088】
第1の実施形態で
図1に示したアンテナ装置101と異なり、第1リアクタンス素子を複数のリアクタンス素子の直列回路で構成している。この例では、第1リアクタンス素子を3つのチップインダクタL1a,L1b,L1cの直列回路で構成している。その他は第1の実施形態で示したアンテナ装置101と同様である。
【0089】
図20は、第1給電回路31から見た第1リアクタンス素子の挿入損失(S21)の周波数特性を示す図である。
図20に表れている800MHz帯、2GHz帯、5GHz帯の挿入損失の谷は、上記3つのインダクタL1a,L1b,L1cによって生じたものである。すなわち、チップインダクタL1a,L1b,L1cは、それぞれの寄生成分である容量がインダクタに並列接続された回路と見なすことができる。この例では、チップインダクタL1a,L1b,L1cそれぞれの自己共振周波数は、800MHz,2GHz,5GHzである。したがって、チップインダクタL1a,L1b,L1cはそれぞれの自己共振周波数で高インピーダンス(等価的にオープン状態)になる。そのため、それぞれの周波数帯において放射素子21の第2端(第1リアクタンス素子であるチップインダクタL1a,L1b,L1cが設けられている側)は等価的に開放となる。その結果、
図20に表れているように、UHF帯(第1周波数帯)において、それぞれの周波数帯で第1リアクタンス素子は放射素子のアンテナとしての機能を阻害することがなく、放射素子21が広帯域でアンテナとして作用する。
【0090】
このように、それぞれの自己共振周波数が異なる複数のチップインダクタの直列回路を第1リアクタンス素子として設けることにより、UHF帯(第1周波数帯)において、アンテナとして作用する周波数帯を広げることができる。
【0091】
なお、
図19に示した例では、3つのチップインダクタを設けたが、少なくとも所定周波数で自己共振するリアクタンス素子であれば、その素子数は2つでもよいし、4つ以上でもよい。また、リアクタンス素子としてはチップインダクタに限らず、所定周波数で自己共振するリアクタンス素子であれば、同様に適用できる。
【0092】
なお、以上に示した各実施形態では、UHF帯用アンテナとHF帯用アンテナとで兼用するアンテナ装置を示したが、本発明はこの周波数帯に限られるものでないことは言うまでもない。例えば5GHz帯のW−LAN、FM放送やAM放送の受信用アンテナ等、UHFやHF以外の周波数帯域に適用することもできる。
【0093】
また、特に、放射素子、リアクタンス素子およびグランド導体によって構成されるループ部は、通信用に限らず磁界共鳴型ワイヤレスチャージャー用の電力伝送用のアンテナに適用することもできる。