(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相手ハウジングに嵌合可能とされ、正規嵌合時に前記相手ハウジングを弾性的に係止して両ハウジングを嵌合状態に保持する撓み可能なロックアームを有するハウジングと、
前記ハウジングに移動可能に組み付けられ、前記ハウジングに係止可能な係止部を有するとともに、前記係止部に一体化された規制部を有し、前記両ハウジングの嵌合過程では、前記係止部が前記ハウジングに係止されることにより移動規制され、前記両ハウジングの正規嵌合時には、前記係止部が前記相手ハウジングに押圧されて前記ハウジングとの係止状態が解除されて移動可能となり、さらに、前記規制部が前記ロックアームの撓み空間に進入して前記ロックアームの撓み動作を規制するようになっているスライダとを備え、
前記係止部は、前記スライダの基部から前方へ片持ち状に突出する形態とされ、前記基部における前記ロックアームと対向する上面に連なる基端部を支点として上下方向に撓み変形可能とされており、前記規制部は、前記係止部の前記基端部に肉盛りされた形態とされていることを特徴とするコネクタ。
前記両ハウジングの嵌合過程で前記相手ハウジングに押圧されることで弾性的に圧縮され、前記両ハウジングが正規嵌合されるに伴い圧縮状態が解除されて自然状態に向けて伸長するバネ部材を備え、前記係止部が前記ハウジングに係止された状態では前記バネ部材が圧縮状態に保たれ、前記係止部が前記ハウジングとの係止状態を解除した状態では前記前記バネ部材が伸長して前記スライダを強制的に移動させることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
前記バネ部材が、前記圧縮状態の解除後、前記相手ハウジングの押圧方向となる後方に伸長し、それに伴い前記スライダも後方に移動するものであり、且つ、前記ロックアームの後端部には係止状態を解除する際に押圧される解除操作部が形成されており、前記両ハウジングの嵌合過程では、前記規制部が前記ロックアームにおける前記解除操作部よりも前方の部分と対向する位置に配置され、前記両ハウジングの正規嵌合時には、前記規制部が前記解除操作部と対向する位置に至ることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
前記両ハウジングの離脱時に、前記両ハウジングが正規嵌合された状態で前記スライダが前方に移動することにより、前記規制部が前記解除操作部と対向する位置から外れて前記ロックアームの撓み動作が可能となるものであり、前記スライダには一対の保護壁が立ち上げ形成され、前記両ハウジングの正規嵌合時には、前記解除操作部の両側を両保護壁が覆うように配置されることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
前記両ハウジングの嵌合過程で前記相手ハウジングに押圧されることで弾性的に圧縮され、前記両ハウジングが正規嵌合されるに伴い圧縮状態が解除されて自然状態に向けて伸長するバネ部材を備え、前記係止部が前記ハウジングに係止された状態では前記バネ部材が圧縮状態に保たれ、前記係止部が前記ハウジングとの係止状態を解除した状態では前記前記バネ部材が伸長して前記スライダを強制的に移動させる。これによれば、スライダの移動操作を手作業で行わずに済む。また、両ハウジングの嵌合過程で係止部がハウジングに係止されることにより、バネ部材の付勢力に抗することができる。
【0012】
前記バネ部材が、前記圧縮状態の解除後、前記相手ハウジングの押圧方向となる後方に伸長し、それに伴い前記スライダも後方に移動するものであり、且つ、前記ロックアームの後端部には係止状態を解除する際に押圧される解除操作部が形成されており、前記両ハウジングの嵌合過程では、前記規制部が前記ロックアームにおける前記解除操作部よりも前方の部分と対向する位置に配置され、前記両ハウジングの正規嵌合時には、前記規制部が前記解除操作部と対向する位置に至る。これによれば、スライダが移動する全範囲において規制部がハウジングから突き出ることがなく、規制部に電線等の異物が引っ掛かる事態が回避される。
【0013】
前記両ハウジングの離脱時に、前記両ハウジングが正規嵌合された状態で前記スライダが前方に移動することにより、前記規制部が前記解除操作部と対向する位置から外れて前記ロックアームの撓み動作が可能となるものであり、前記スライダには一対の保護壁が立ち上げ形成され、前記両ハウジングの正規嵌合時には、前記解除操作部の両側を両保護壁が覆うように配置される。したがって、両ハウジングが正規嵌合された状態では、スライダを前方に移動させない限り、ロックアームが規制部によって撓み変形することがなく、さらに、解除操作部への解除操作も両保護壁によって規制されるため、ロックアームが不用意に解除される事態が確実に回避される。
【0014】
<実施例1>
本発明の実施例1を
図1〜
図20によって説明する。本発明のコネクタは、相手ハウジング90に嵌合可能なハウジング10と、ハウジング10に移動可能に組み付けられるスライダ60と、スライダ60に支持されるバネ部材80とを備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、
図1の左側を前方とし、上下方向については
図5を基準とする。
【0015】
相手ハウジング90は合成樹脂製であって、
図5に示すように、筒状のフード部91を有している。フード部91の内部には、雄タブ95が突出して配置されている。フード部91の上壁の上面には、ロック部92が突設されている。また、
図1に示すように、フード部91の上壁の上面には、ロック部92を挟んだ幅方向両側に、一対のガイド突条93が前後方向に延出して形成され、さらに、両ガイド突条93の両側外方に、一対の押圧部94が前後方向に延出して形成されている。
【0016】
ハウジング10は同じく合成樹脂製であって、
図5及び
図15に示すように、ブロック状のハウジング本体11と、ハウジング本体11の周りを包囲する筒状の嵌合筒部12とを有している。ハウジング本体11と嵌合筒部12との間には、フード部91が嵌合可能な嵌合空間13が前方に開放して形成されている。
【0017】
ハウジング本体11には、
図15に示すように、複数のキャビティ14が前後方向に貫通して形成されている。本実施例の場合、各キャビティ14は、横並びに対をなして配置され、その下面に撓み可能なランス15が突出して形成されている。各キャビティ14内には端子金具20が挿入される。
図5に示すように、端子金具20は、電線100の導体部分に圧着接続されるとともに、電線100に嵌着されたゴム栓200に圧着接続されるようになっている。そして、各キャビティ14内に端子金具20が正規挿入されると、端子金具20がランス15に弾性的に係止されて抜け止めされるとともに、ゴム栓200がキャビティ14の後端部に挿入されてキャビティ14内が液密にシールされ、且つ、ハウジング本体11の後端から電線100が引き出されるようになっている。
【0018】
ハウジング本体11の外周面の前後方向略中央には、
図5に示すように、段差16が形成されており、段差16を境とする前方領域が後方領域から一段落ちた形態とされている。ハウジング本体11の外周面には、段差16の前方にシールリング300が嵌着されている。
図6に示すように、両ハウジング10、90の嵌合時には、嵌合空間13にフード部91が進入して、フード部91とハウジング本体11との間にシールリング300が弾性的に圧縮され、これによって両ハウジング10、90が液密にシールされるようになっている。
【0019】
ハウジング本体11の外周面の前端部には、
図5及び
図14に示すように、キャップ状のフロント部材400が被せられる。ハウジング本体11の前面は、各キャビティ14と対応する部位を除いてフロント部材400によって被覆されている。また、シールリング300はフロント部材400によって前方への抜け出しが規制される。
【0020】
ハウジング本体11の外周面の上端には、
図8に示すように、ロックアーム17が連結されている。ロックアーム17は、ハウジング本体11の外周面の前後方向中央部から上方に突出する脚部18と、脚部18の上端から前後両方向に延出するアーム本体19とを有している。アーム本体19の前端部にはロック突起21が下向きに突出して形成され、アーム本体19の後端部には解除操作部22が一段高く形成されている。解除操作部22は、嵌合筒部12の上端より上方に位置している。
【0021】
図6に示すように、両ハウジング10、90の嵌合過程では、ロック突起21がロック部92と干渉してアーム本体19が脚部18を支点として撓み変形され、
図7に示すように、両ハウジング10、90の正規嵌合時には、アーム本体19が弾性的に復帰してロック突起21がロック部92を係止可能に配置されて、両ハウジング10、90が嵌合状態に保持されるようになっている。一方、両ハウジング10、90の嵌合状態を解除する際には、解除操作部22を上方から押圧して、ロック部92からロック突起21を離間させることにより、両ハウジング10、90を互いに引き離すことが可能とされている。
【0022】
また、
図2及び
図8に示すように、アーム本体19の上面の前端部には、スライダ60の後方への抜けを規制する抜け止め部23が形成されている。抜け止め部23は、幅方向に延びるリブ状の形態とされている。また、
図15に示すように、脚部18の幅方向中央部には、貫通孔24が形成されている。貫通孔24の上端はアーム本体19の下端とほぼ同じ高さに位置し、貫通孔24の下端はハウジング本体11の上面より上方に位置している。
図8に示すように、脚部18における貫通孔24の下方には、段差16の後方に、ハウジング本体11との間に段付き状をなす係止受け部25が形成されている。
図6に示すように、貫通孔24にはスライダ60の後述する係止部76が貫通可能とされ、係止受け部25には貫通孔24を貫通した係止部76の後述する係止突起77が係止可能とされている。
【0023】
図15及び
図16に示すように、嵌合筒部12の上壁のうちロックアーム17と対向する部分は開放されており、ロックアーム17の上面は露出している。ここで、嵌合筒部12の上壁は、ロックアーム17を挟んだ両側に、一対のガイド壁26を有している。両ガイド壁26は、ハウジング本体11の前端からハウジング本体11の後端より後方位置まで延出する形態とされ、ハウジング本体11との間にスライダ60の移動動作を案内するガイド空間27が形成されている。
【0024】
両ガイド壁26の後部は、上方に開放された略四半円弧の断面形状を有し、
図16に示すように、ハウジング本体11の後端より後方に突出する後端部28を有している。また、両ガイド壁26の後端部28間には、逃がし凹部29が切り欠き形成されている。逃がし凹部29の前端は、ハウジング本体11の後端によって幅方向に沿ったストレート状に区画され、逃がし凹部29の幅方向両端は、両ガイド壁26の後端部28の内縁によって後方へ向けて拡開するテーパ状に区画されている。そして、逃がし凹部29の内側には、押し込み手段としての図示しない指が後方から進入可能とされている。
【0025】
両ガイド壁26の前部は、ロックアーム17と対向する側を開放させた略半円弧の断面形状を有している。また、
図15及び
図16に示すように、両ガイド壁26の前部には、一対のガイドリブ31が立ち上げ形成されている。両ガイドリブ31は、両ガイド壁26の内縁に沿うように前後方向に延出する形態とされ、アーム本体19の前部の幅方向両端と対向して配置される。
【0026】
また、
図15に示すように、両ガイド壁26の前端には、ガイド空間27の前方を閉塞する一対のストッパ壁32が連結されている。
図9に示すように、両ストッパ壁32の下端には、一対の内側ガイド壁33が後方に延出して形成されている。内側ガイド壁33は、断面円弧状をなし、ガイド壁26とほぼ平行に配置されている。内側ガイド壁33とガイド壁26との間には、スライダ60の後述するバネ収容部65の前部が挿入されて案内可能とされている。また、
図9に示すように、バネ収容部65の前端がストッパ壁32に当接することにより、スライダ60のそれ以上の前進が規制されるようになっている。
【0027】
続いてスライダ60について説明する。スライダ60は、ハウジング10のガイド空間27に挿入され、ハウジング10に対し、前進位置(
図1、
図5〜
図7、
図9、
図10、
図12に示す位置)と後退位置(
図2、
図4、
図8、
図11、
図13に示す位置)との間を、ガイド壁26を摺動しつつ前後方向に移動可能に組み付けられる。具体的には、スライダ60は合成樹脂製であって、
図17に示すように、幅方向に沿った板状の基部61と、基部61の幅方向両端から前方に延出する一対のアーム部62と、両アーム部62の前端間に架け渡される連結部63とを有している。
【0028】
連結部63は、基部61より上方に位置しており、
図20に示すように、正面視において基部61と重ならないように段違いに配置されている。また、
図17に示すように、連結部63の後端の幅方向中央部には、略矩形状に凹む抜け止め受け部64が切り欠き形成されている。
図2に示すように、スライダ60が後退位置にあるときに、抜け止め受け部64の内側には、ロックアーム17の抜け止め部23が挿入されるようになっている。
【0029】
図18及び
図20に示すように、両アーム部62の下部には、バネ部材80を収容可能なバネ収容部65が形成されている。
バネ部材80は、圧縮コイルバネ等の周知のバネからなり、前後方向に弾性的に伸縮可能とされている。
図9に示すように、バネ部材80の前端上部には、バネ部材80がバネ収容部65に収容された状態で、第1バネ受け部67に対向して支持される第1領域82が配置され、バネ部材80の前端下部には、バネ部材80がバネ収容部65に収容された状態で、第1バネ受け部67と対向せずに露出される第2領域83が配置されている。
【0030】
バネ収容部65は、略円筒状の形態をなし、その内部にバネ部材80の全体を収容可能とされている。
図18に示すように、バネ収容部65の周壁の前部には、下方及び内方に開放された開放部66が形成され、開放部66にバネ部材80の第2領域83が露出して配置されている。両ハウジング10、90の嵌合過程では、開放部66に相手ハウジング90の押圧部94が進入して、バネ部材80の第2領域83が押圧部94により押圧されるようになっている。
【0031】
そして、バネ収容部65には、
図9に示すように、バネ部材80の前後両端を受けて支持可能な一対のバネ受け部67、68が形成されている。両バネ受け部67、68は、
図18及び
図19に示すように、バネ収容部65の前端より少し後方へ引っ込んだ位置に配置される第1バネ受け部67(他方のバネ受け部)と、バネ収容部65の後端に配置される第2バネ受け部68(一方のバネ受け部)とからなる。バネ収容部65のうち、第1バネ受け部67よりも前方の部分は、断面円弧状の突片部69とされ、
図9に示すように、スライダ60がハウジング10に組み付けられた状態で、内側ガイド壁33とガイド壁26との間に摺動可能に挿入されるようになっている。
【0032】
第1バネ受け部67は、
図9に示すように、バネ部材80の前端上部となる第1領域82に当接可能とされ、
図20に示すように、バネ収容部65の周壁の上部に沿って配置されている。第1バネ受け部67の下方は、開放部66の前端開口を構成しており、ここから開放部66に押圧部94が導入されるようになっている。
図9に示すように、第1バネ受け部67の後面には、バネ部材80の前端が嵌着される第1突起71が形成されている。第1突起71は、第1バネ受け部67の下端において、バネ収容部65の中心部に沿うように後方へ突出し、その後端が尖がり状をなす形態とされている。
【0033】
一方、第2バネ受け部68は、
図9に示すように、バネ部材80の後端下部に当接可能とされ、
図20に示すように、バネ収容部65の周壁の下部に沿って配置されている。
図9に示すように、第2バネ受け部68の前面には、バネ部材80の後端が嵌着される第2突起72が前方に突出して形成されている。第2突起72は、第2バネ受け部68の上端において、バネ収容部65の中心部に沿うように前方へ突出し、その前端が尖がり状をなす形態とされている。
【0034】
ここで、第1バネ受け部67の下端と第2バネ受け部68の上端とは、互いにほぼ同じ高さとなるバネ収容部65の中心部に位置している。このため、第1バネ受け部67と第2バネ受け部68とは、正面視及び背面視において互いに重なり合わない位置関係にある(
図20を参照)。言い換えれば、第1バネ受け部67と第2バネ受け部68とは、前後方向における互いの投影面から外れた位置に配置されている。
【0035】
また、
図20に示すように、両アーム部62には、バネ収容部65から略垂直に立ち上がる一対の保護壁73が形成されている。スライダ60がハウジング10に組み付けられた場合に、両保護壁73は、
図5に示すように、その上面が解除操作部22の上面とほぼ同じ高さに位置し、
図14に示すように、ロックアーム17の幅方向両端を覆うように配置される。
【0036】
また、両アーム部62の上端部には、
図12に示すように、スライダ60の移動動作を案内可能な一対のガイド本体74が形成されている。ガイド本体74は、
図19及び
図20に示すように、両保護壁73の上端からいったん外側に張り出したあと下向きに垂れる略弧状の形態をなしている。スライダ60がハウジング10に組み付けられると、
図12及び
図14に示すように、ガイド本体74と保護壁73との間にガイドリブ31が嵌合状態で挿入され、
図12から
図13にかけて示すように、スライダ60の移動過程では、ガイドリブ31がガイド本体74と保護壁73とに摺動して、スライダ60の移動動作が案内されるようになっている。
【0037】
さらに、
図19に示すように、両アーム部62の後端には、後端から前方に向けて上方へ階段状に傾斜する押し込み操作部75が形成されている。押し込み操作部75が前方へ押圧されることにより、スライダ60が前進位置に向けて移動することが可能となっている。
【0038】
基部61には、
図17に示すように、スライダ60の後退位置への移動を規制可能な係止部76が形成されている。係止部76は、基部61の上面の幅方向中央部から前方へ片持ち状に突出する形態とされ、基部61の上面に連なる基端部を支点として上下方向に撓み変形可能とされている。
図18及び
図19に示すように、係止部76の前端には、係止突起77が下向きに突出して形成されている。そして、
図5に示すように、スライダ60が前進位置にあるときに、係止突起77が係止受け部25に引っ掛け係止されるようになっている。
【0039】
また、係止部76の上面には、
図17に示すように、この係止部76と一体に規制部78が形成されている。規制部78は、
図5に示すように、係止部76の基端部から前後方向略中央部にかけて厚みを増加する肉盛り状の形態とされている。規制部78の上面は、後退位置でロックアーム17の解除操作部22の下面に当接可能なフラット状の部分を有している。なお、規制部78が係止部76の基端側に形成されることにより、係止部76の剛性が高められている。
【0040】
本実施例のコネクタの構造は上述の通りであり、続いて、コネクタの組み付け方法及び嵌合動作を説明する。
まず、スライダ60のバネ収容部65にバネ部材80が収容される。バネ部材80は、開放部66を通してバネ収容部65に挿入される。すると、バネ部材80の前端における第1領域82が第1バネ受け部67の第1突起71に嵌合支持されるとともに、バネ部材80の後端が第2バネ受け部68の第2突起72に嵌合支持される(
図9を参照)。
【0041】
続いて、ハウジング10のガイド空間27に後方からスライダ60が挿入される。スライダ60の挿入過程では、基部61が解除操作部22の下方に配置されるとともに、保護壁73がガイド壁26とロックアーム17との間の隙間に進入して、連結部63がアーム本体19の上方に配置される(
図1及び
図5を参照)。スライダ60が正規挿入されると、係止部76が貫通孔24を貫通して、
図5に示すように、係止突起77が係止受け部25を係止可能に配置されて、スライダ60の後方への抜け止めがなされる。また、スライダ60が正規挿入されると、
図9に示すように、バネ収容部65の突片部69がストッパ壁32に当接可能に配置されて、スライダ60の前方への変位が規制される。かくしてスライダ60がハウジング10に対して前進位置に移動規制状態に保持される。
【0042】
スライダ60が前進位置にあるとき、バネ部材80は、
図9に示すように、その前後両端が第1バネ受け部67と第2バネ受け部68とに支持された伸長状態に保たれ、
図14に示すように、その前端の下側が前方に露出して配置される。また、
図1に示すように、スライダ60が前進位置にあるとき、連結部63の前端がハウジング10の前端とほぼ同じ位置に幅方向に沿って配置されるとともに、基部61の後端が逃がし凹部29の前端とほぼ同じ位置に幅方向に沿って配置される。このため、スライダ60が前進位置にあるときに、
図1に示すように、コネクタを上方から見ると、連結部63及び両アーム部62が露出することで、スライダ60を視認することができる一方、
図3に示すように、コネクタを下方から見ると、スライダ60の全体がハウジング10に隠れることで、スライダ60を視認することができない。また、スライダ60が前進位置にあるときに、コネクタを側方から見ると、ロックアーム17が解除操作部22を除いて保護壁73及びガイド本体74に隠れるようになっている。さらに、前進位置では、規制部78がロックアーム17における解除操作部22よりも前方に位置し、ロックアーム17の撓み動作が可能となっている。
【0043】
続いて、ハウジング10の嵌合空間13に相手ハウジング90のフード部91が嵌合される。嵌合過程では、相手ハウジング90の押圧部94が開放部66を通してバネ収容部65の内側に進入し、バネ部材80の前端下部における第2領域83に押圧部94が当接する。さらに嵌合が進むと、
図10に示すように、バネ部材80の第2領域83が押圧部94に押されて、バネ部材80の前端上部における第1領域82が第1バネ受け部67から離間し、バネ部材80が第2バネ受け部68に支持された状態で前後方向に弾性的に圧縮される。
【0044】
ハウジング10が相手ハウジング90に正規嵌合されると、
図11に示すように、ロックアーム17がロック部92に弾性的に係止され、両ハウジング10、90が抜け止め状態に保持される。これにより、
図7に示すように、端子金具20が雄タブ95に電気的に正規接続される。また、両ハウジング10、90が正規嵌合されるに伴い、
図7に示すように、フード部91の前端が係止部76の前端に当接して、係止部76が上方へ撓み変形して係止受け部25から離間する。これにより、係止部76の係止状態が解除されるとともに、バネ部材80に蓄勢された付勢力が解放され、もってバネ部材80が後方へ伸長する。そして、バネ部材80が伸長するのに伴い、第2バネ受け部68が伸長するバネ部材80に押圧されて、
図8に示すように、スライダ60の全体が後方へ移動させられる。スライドの移動過程では、バネ収容部65がガイド壁26の内面を摺動するとともに、保護壁73とガイド本体74とにガイドリブ31が摺動し、これによってスライダ60の移動動作が案内される。そして、
図11に示すように、スライダ60が後退位置に至ると、バネ部材80が実質的にほぼ自然状態に伸長された状態となり、且つ、ロックアーム17の抜け止め部23がスライダ60の抜け止め受け部64に当接され、これによってスライダ60のそれ以上の後退が規制される。
【0045】
スライダ60が後退位置にあるとき、
図8に示すように、規制部78がロックアーム17の解除操作部22の下面に当接可能に配置される。また、スライダ60が後退位置にあるとき、
図2に示すように、解除操作部22の幅方向両側と対向する位置に保護壁73及びガイド本体74が配置される。このため、スライダ60が後退位置にあるときに、コネクタを側方から見ると、ロックアーム17の全体が保護壁73及びガイド壁26に隠れて視認することができなくなる。
【0046】
上記の場合、仮に、ロックアーム17の解除操作部22に上方から異物(指を含む)が偶発的に当接しようとしても、両保護壁73に異物が干渉することにより、解除操作部22が不用意に解除操作されるのが防止される。また、万一、両保護壁73間に異物が進入して解除操作部22に当接しても、ロックアーム17の撓み動作が規制部78によって規制されるため、解除操作部22が不用意に解除操作されるのがより確実に防止されるようになっている。
【0047】
さらに、スライダ60が後退位置にあるとき、
図4に示すように、基部61の後端が逃がし凹部29の後端、つまりハウジング10の後端とほぼ同じ位置に幅方向に沿って配置される。これにより、逃がし凹部29に基部61が臨み、詳細には、逃がし凹部29の全体が基部61によって閉塞される。したがって、
図4に示すように、コネクタを下方から見ると、逃がし凹部29を通して基部61が露出し、スライダ60を視認することが可能となる。なお、本実施例の場合、スライダ60とハウジング10とは異なる配色が施されており、これによってより良好な視認性が確保されている。
【0048】
ところで、仮に、両ハウジング10、90が正規嵌合される前にその嵌合操作を停止すると、嵌合過程で蓄勢されたバネ部材80の付勢力によって押圧部94が押し戻され、両ハウジング10、90が互いに離反される。これにより、両ハウジング10、90が半嵌合状態のまま留め置かれるのが防止されるようになっている。
【0049】
また、メンテナンス等の事情により両ハウジング10、90を互いに離間する際には、逃がし凹部29に後方から指を進入させ、押し込み操作部75を指で押圧して、スライダ60を前方へ向けて押し込むようにする。すると、バネ部材80が弾性的に圧縮されて、押圧部94がバネ部材80に押圧された状態となる。そして、スライダ60の前進に伴って解除操作部22の下方から規制部78が退避するとともに、ロックアーム17の解除操作部22の両側外方から両保護壁73が退避し、これによってロックアーム17の撓み動作が許容される。その状態で、解除操作部22を押圧してロックアーム17の前端部を持ち上げると、ロック突起21がロック部92から離間する。こうしてロックアーム17のロック状態が解除されるに伴い、バネ部材80が押圧部94を前方へ押圧しつつ伸長し、その押圧力(付勢力)によってハウジング10が相手ハウジング90から離反されることとなる。
【0050】
以上説明したように、本実施例によれば、バネ部材80の前後両端がそれぞれ第1バネ受け部67と第2バネ受け部68とに支持され、これら第1バネ受け部67と第2バネ受け部68とがいずれもスライダ60に設けられているため、バネ部材80をスライダ60側とハウジング10側とに跨って組み付ける必要がなく、組み付け作業性が改善される。また、ハウジング10側の構成を簡素化することができる。
【0051】
この場合、第1バネ受け部67及び第2バネ受け部68が、前後方向から見て互いに重ならないように位置しているため、スライダ60の成形時、前後方向に抜かれる金型によって第1バネ受け部67及び第2バネ受け部68を簡単に成形することができ、金型構造が複雑になることがなく、スライダ60の成形性も良好となる。
【0052】
また、両ハウジング10、90の嵌合過程でスライダ60を移動規制する係止部76に、両ハウジング10、90の正規嵌合時にロックアーム17の撓み動作を規制する規制部78が一体化されているため、係止部76と規制部78とが別々の部位に形成されるよりも、スライダ60の構成が簡素化されるとともに、スライダ60の大型化が抑えられる。
【0053】
さらに、両ハウジング10、90が正規嵌合されると、スライダ60が前進位置から後退位置に移動するから、スライダ60が一旦後退したあと前進して元の位置に戻る場合に比べ、スライダ60の位置確認を行い易い。また、両ハウジング10、90が正規嵌合されると、下方から見て、逃がし凹部29にスライダ60の基部61があらわれるから、それを確認することで、スライダ60の位置確認を確実に行うことができ、嵌合検知機能の信頼性が高められる。しかも、逃がし凹部29が単なる位置確認の機能だけではなく、スライダ60に押し込み手段としての指を導くための機能をも有するため、両機能が別々の部位に設けられるよりも、ハウジング10の構成が簡素化される。
【0054】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、第1バネ受け部と第2バネ受け部とがバネ部材の端面の上下方向の異なる位置に配置されていたが、本発明によれば、第1バネ受け部と第2バネ受け部とがバネ部材の端面の幅方向の異なる位置に配置されるものであってもよい。
(2)逃がし凹部は、押し込み手段として指以外に治具等が進入するものであってもよい。
(3)係止部には係止突起の代わりに係止凹部が凹み形成され、係止受け部が係止凹部を引っ掛け係止可能な突状の形態をなすものであってもよい。
(4)係止部がその基端側から前方へ向けてほぼ一定厚みで延出する形態とされ、係止部と規制部とが実質的に形態上の区別なく一体化されるものであってもよい。