(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る信号伝達回路について説明する。
【0020】
図1は本発明に係る信号伝達回路を備えて構成される電力変換器の要部概略構成図である。
図1においてHQ,LQはトーテムポール接続されてハーフブリッジ回路を形成し、交互にオン・オフ動作して直流電圧Eをスイッチングする、例えばIGBTからなるスイッチング素子である。
【0021】
前記上アーム側のスイッチング素子HQは、制御回路CONTからの制御信号を受けて動作するハイサイドドライバHDによりオン・オフ駆動される。また下アーム側のスイッチング素子LQは、前記制御回路CONTからの制御信号を受けて動作するローサイドドライバLDによりオン・オフ駆動される。尚、前記制御回路CONT、前記ハイサイドドライバHDおよび前記ローサイドドライバLDは、例えば高電圧集積回路HVICに集積一体化される。
【0022】
ちなみに前記ハイサイドドライバHDは、第1の電位である前記ハーフブリッジ回路の中点電位VSを基準電位とし、所定の電源電圧VB(>VS)を受けて動作するように構成される。また前記ローサイドドライバLDおよび前記制御回路CONTのそれぞれは、前記中点電位VSよりも低い第2の電位として前記ハーフブリッジ回路の接地電位GNDを基準電位とし、所定の電源電圧VCC(>GND)を受けて動作するように構成される。従ってここでは前記ハイサイドドライバHDをハイサイド回路と称し、また前記ローサイドドライバLDおよび前記制御回路CONTをローサイド回路と称する。
【0023】
ここで前記ハイサイドドライバHDおよび前記ローサイドドライバLDは、前記スイッチング素子HQ,LQをそれぞれオン・オフ駆動する役割を担う。更に前記ハイサイドドライバHDおよび前記ローサイドドライバLDは、前記スイッチング素子HQ,LQにそれぞれ流れる電流、およびその動作温度を監視する機能を備える。前記電流の検出は、例えば前記各スイッチング素子HQ,LQに設けられた電流検出用エミッタを介して行われる。また前記温度の検出は、例えば前記各スイッチング素子HQ,LQに一体に組み込まれた温度検出用ダイオードを介して行われる。
【0024】
そして前記ハイサイドドライバHDおよび前記ローサイドドライバLDは、過電流や過熱等の異常を検出したとき、前記各スイッチング素子HQ,LQの駆動を停止することで該スイッチング素子HQ,LQを保護すると共に、その異常検出信号を前記制御回路CONTに通知する機能を備える。この際、ハイサイド回路である前記ハイサイドドライバHDから前記制御回路CONTに通知する前記異常検出信号を、該制御回路CONTの基準電位にレベルダウンすることが必要となる。
【0025】
図2は本発明の第1の実施形態に係る信号伝達回路1の要部概略構成図であり、10は前述したHVICに設けられるハイサイド回路、20はローサイド回路である。この信号伝達回路1は、前記ハイサイド回路10(具体的にはハイサイドドライバHD)において検出される複数種の異常検出信号OHE,OCE,UVEをレベルダウンして前記ローサイド回路20に伝達する役割を担う。前記異常検出信号OHEは、過熱検出部11により検出された過熱を示す信号、前記異常検出信号OCEは、過電流検出部12により検出された過電流を示す信号、そして前記異常検出信号UVEは、電圧低下検出部13により検出された電圧低下を示す信号である。
【0026】
前記信号伝達回路1は、前記各検出部11,12,13から入力される複数種の異常検出入力OHIN,OCIN,UVINを、その優先度に応じて出力するアービタ回路14を備える。このアービタ回路14は、基本的には先着優先で前記異常検出入力OHIN,OCIN,UVINに応じて異常検出信号OHE,OCE,UVEを出力する。しかし前記複数種の異常検出入力OHIN,OCIN,UVINが同時に発生した場合、前記アービタ回路14は、例えば
図3に示すように[OHIN>UVIN>OCIN]なる優先順位で前記異常検出信号OHE,UVE,OCEを出力する。
【0027】
また前記信号伝達回路1は、前記アービタ回路14から出力される前記異常検出信号OHE,OCE,UVEに応じてパルス信号を生成するパルス生成回路15を備える。更に前記信号伝達回路1は、前記異常検出信号OHE,OCE,UVEを前記ローサイド回路20に伝達する為の2つのスイッチ素子16,17を並列に備える。これらのスイッチ素子16,17は、例えば高耐圧のpチャネル型MOS-FET;PM1,PM2からなる。これらのスイッチ素子16,17は、それぞれそのソースを前記電源電圧VBに接続し、ドレインを前記ローサイド回路20の後述する電圧変換回路に接続したものである。前記パルス生成回路15は、前記各スイッチ素子16,17が同時にオンすることのないタイミングで、前記各異常検出信号OHE,OCE,UVEに応じた複数のパルス信号を生成し、該パルス信号を前記スイッチ素子16,17の各ゲートに印加する。
【0028】
具体的には前記パルス信号は、例えば
図4に示すように過熱を示す前記異常検出信号OHEの出力時には前記スイッチ素子17を第1の周期で連続的にオン・オフする連続パルス信号からなる。また過電流を示す前記異常検出信号OCEの出力時には前記スイッチ素子16を第1の周期で連続的にオン・オフする連続パルス信号からなる。そして電圧低下を前記異常検出信号UVEの出力時には前記2つのスイッチ素子16,17を前記第1の周期よりも長い第2の周期で交互にオン・オフするパルス信号からなる。
【0029】
即ち、前記アービタ回路14は、過熱異常、過電流異常、および電圧低下異常の発生状況に応じて異常検出信号OHE,OCE,UVEを生成する。そして前記パルス生成回路15は、例えば
図5に示すように前記アービタ回路14の管理の下で前記異常検出信号OHE,OCE,UVEに応じて前記スイッチ素子16,17をそれぞれオン・オフ駆動するパルス信号を生成する。
【0030】
具体的には過熱異常だけが発生したときには、
図5において区間Aに示すように前記スイッチ素子17だけが第1の周期でオン・オフ駆動される。また電圧低下異常だけ発生した場合には、区間Bに示すように前記スイッチ素子16,17が第2の周期で交互にオン・オフ駆動される。そして前記過熱異常と電圧低下異常とが同時に発生した場合には、区間Cに示すように前記電圧低下異常よりも前記過熱異常が優先して前記スイッチ素子17だけが第1の周期でオン・オフ駆動される。
【0031】
また過電流異常だけが発生したときには、
図5において区間Dに示すように前記スイッチ素子16だけが第1の周期でオン・オフ駆動される。また過電流異常に加えて前記過熱異常が同時に発生した場合には、区間Eに示すように前記スイッチ素子16の駆動に優先して前記スイッチ素子17だけが第1の周期でオン・オフ駆動される。また前記過電流異常と前記電圧低下異常とが同時に発生した場合には、区間Fに示すように前記スイッチ素子16,17が第2の周期で交互にオン・オフ駆動される。そして前記過熱異常、および過電流異常と共に電圧低下異常とが同時に発生した場合には、区間Gに示すように前記過熱異常が優先して前記スイッチ素子17だけが第1の周期でオン・オフ駆動される。
【0032】
一方、前記ローサイド回路20は、前記スイッチ素子16,17を介して伝達される上述したパルス信号を電圧変換して取り込んで、該ローサイド回路20の基準電位である接地電位GNDを基準とするパルス信号を生成する電圧変換回路21を備える。この電圧変換回路21は、例えば
図6に示すように電圧変換部21aと同相ノイズフィルタ21bを備えて構成され、前記パルス信号を復元するパルス生成機能を備えたものとして実現される。
【0033】
具体的には前記電圧変換回路21における前記電圧変換部21aは、例えば
図6に示すように前記スイッチ素子16,17の各ドレインに直列接続された抵抗R1,R2と、これらの各抵抗R1,R2にそれぞれ並列接続されて該抵抗R1,R2に生起される電圧をクランプするツェナーダイオードZD1,ZD2からなる。そして前記電圧変換部21aは、前記抵抗R1,R2に生起される電圧として、前記パルス信号を前記接地電位GNDを基準として復元するように構成される。
【0034】
尚、前記電圧変換部21aを、例えば
図7に示すように一対のnチャネル型MOS-FETからなる第1のカレントミラー回路CM11,CM21、および一対のpチャネル型MOS-FETからなる第2のカレントミラー回路CM12,CM22を用いて構成することも可能である。この場合には前記第1のカレントミラー回路CM11,CM21のドレイン・ソース間電圧を前記ツェナーダイオードZD1,ZD2によりクランプする。
【0035】
そして前記第1のカレントミラー回路CM11,CM21の出力にて前記第2のカレントミラー回路CM12,CM22を駆動し、該第2のカレントミラー回路CM12,CM22の出力電流にて前記抵抗R1,R2に電圧を生起する。従ってこのように構成された前記電圧変換部21aにおいても、前記抵抗R1,R2に生起される電圧として、前記スイッチ素子16,17を介して伝達されたパルス信号が、前記接地電位GNDを基準とするパルス信号として復元される。
【0036】
また前記同相ノイズフィルタ21bは、例えば
図6および
図7にそれぞれ示すようにpチャネル型MOS-FETおよびnチャネル型MOS-FETをそれぞれ2段ずつ、計4段にトーテムポール接続したスイッチ回路SW1,SW2として構成される。第1のスイッチ回路SW1における1段目のpチャネル型MOS-FET;PM11および3段目のnチャネル型MOS-FET;NM11は、前記抵抗R2から得られるパルス信号を各ゲートに入力して相補的にオン・オフ動作する。また2段目のpチャネル型MOS-FET;PM12および4段目のnチャネル型MOS-FET;NM12は、前記抵抗R1から得られ、ノット回路NOT1を介して反転されたパルス信号を各ゲートに入力して相補的にオン・オフ動作する。
【0037】
従って前記第1のスイッチ回路SW1は、前記スイッチ素子16,17を介して同時にパルス信号が入力されたとき、これらのパルス信号の出力を禁止する。そして前記スイッチ素子16だけを介して前記パルス信号が入力されたとき、当該パルス信号を出力する。このようにして同相フィルタリング処理されて前記pチャネル型MOS-FET;PM12と3段目のnチャネル型MOS-FET;NM11の接続点に得られるパルス信号は、出力アンプAMP1を介して異常検出信号ER1として出力される。
【0038】
また同様に前記第2のスイッチ回路SW2における1段目のpチャネル型MOS-FET;PM21および3段目のnチャネル型MOS-FET;NM21は、前記抵抗R1から得られるパルス信号を各ゲートに入力して相補的にオン・オフ動作する。また2段目のpチャネル型MOS-FET;PM22および4段目のnチャネル型MOS-FET;NM22は、前記抵抗R2から得られ、ノット回路NOT2を介して反転されたパルス信号を各ゲートに入力して相補的にオン・オフ動作する。
【0039】
従って前記第2のスイッチ回路SW2は、前記第1のスイッチ回路SW1と同様に第1の前記スイッチ素子16,17を介して同時にパルス信号が入力されたとき、これらのパルス信号の出力を禁止する。そして前記スイッチ素子17だけを介して前記パルス信号が入力されたとき、当該パルス信号を出力する。このようにして同相フィルタリング処理されて前記2段目のpチャネル型MOS-FET;PM22と3段目のnチャネル型MOS-FET;NM21の接続点に得られるパルス信号は、出力アンプAMP2を介して異常検出信号ER2として出力される。
【0040】
ここで前記ローサイド回路20の構成の説明に戻って、前記ローサイド回路20は
図2に示すように前記電圧変換回路21により電圧変換して復元されたパルス信号をラッチするラッチ回路22を備える。また前記ローサイド回路20は、前記ラッチ回路22にラッチされた前記パルス信号を解析して前述した異常検出信号の種別を判定する信号解析回路23を備える。更に前記ローサイド回路20は、前記信号解析回路23の出力である信号解析結果に応じてアラーム信号ALMを出力するアラーム出力回路24を備える。
【0041】
前記ラッチ回路22は、具体的には、例えば
図8に示すように前述したパルス信号からなる前記異常検出信号ER1,ER2をそれぞれラッチする2段構成のラッチLT11,LT12とラッチLT21,LT22とを並列に備える。これらのラッチLT11,LT12,LT21,LT22は、前記異常検出信号ER1,ER2を入力するパルス生成回路PGが生成するクロック信号CLKを受けてラッチ動作する。
【0042】
ちなみに前記パルス生成回路PGは、前記異常検出信号ER1,ER2をそれぞれ形成するパルス信号の一方が反転したとき、これに同期して前記クロック信号CLKを生成するように構成される。そして前記1段目のラッチLT11,LT21は、前記クロック信号CLKを受けて前記異常検出信号ER1,ER2をそれぞれラッチする。また前記2段目のラッチLT12,LT22は、前記1段目のラッチLT11,LT21に保持されている異常検出信号をそれぞれラッチする。
【0043】
従って前述した2段構成の前記ラッチLT11,LT12および前記ラッチLT21,LT22には、前記異常検出信号ER1,ER2の変化の状態を示す信号がラッチされる。そして前記ラッチLT11,LT12および前記ラッチLT21,LT22にそれぞれラッチされて保持された計2ビットの信号は
、過熱および過電流をそれぞれ示
す異常検出信号OHR,OCRとしてそれぞれ出力される。尚、前記各ラッチLT11,LT12,LT21,LT22は、後述するクリア信号CLRを受けて一斉にリセットされて初期化される。
【0044】
このように構成された前記ラッチ回路22に保持された前記異常検出信号ER1,ER2を解析する前記信号解析回路23は、例えば
図9に示す論理に従って前記異常検出信号ER1,ER2の経時的な遷移状態変化から、当該異常検出信号ER1,ER2が示す異常の種別を判定する。即ち、前記信号解析回路23は、前記異常検出信号OHR,OCRが[00],[00]であるとき、これを異常なしとして判定する。そして前記異常検出信号OHRが[11]であり、且つ前記異常検出信号OCRが[00]であるとき、これを過熱異常であるとして判定する。
【0045】
また前記信号解析回路23は、前記異常検出信号OHRが[00]であり、且つ前記異常検出信号OCRが[11]であるとき、これを過電流異常であるとして判定する。そして前記異常検出信号OHRが[01]または[10]であり、且つ前記異常検出信号OCRが[10]または[01]であるとき、これを低電圧異常であるとして判定する。この低電圧異常の判定は、前述したように前記異常検出信号UVEの出力時には前記2つのスイッチ素子16,17が前記過熱および過電流の検出時よりも長い周期で交互にオン・オフされることに基づいている。即ち、この場合には、前記ラッチ回路22に保持される信号が1段目と2段目とで異なり、且つ前記異常検出信号ER1,ER2間において互いに異なることに基づいている。
【0046】
そして前記異常検出信号OHR,OCRが[10(11)],[11(10)]として、共に同じ値を示すとき、前述したように前記スイッチ素子16,17を同時にオンさせることがない条件で前記パルス信号を生成していることから、この状態を受信異常として判定する。この場合、前記クリア信号CLRを生成して前記ラッチ回路22をリセットする。このようにして前記異常検出信号OHRおよび前記異常検出信号OCRを解析する前記信号解析回路23は、前記異常検出信号OHRおよび前記異常検出信号OCRを入力して、その解析結果である異常の種別を示す信号ERDET,OHER,OCER,UVER,RXERを選択的に出力するメモリとして実現される。
【0047】
さてこのような解析結果、即ち、前記信号ERDET,OHER,OCER,UVER,RXERを入力する前記アラーム出力回路24は、例えば
図10に示すように前記異常検出信号ERDETを入力してセットされるフリップフロップFFを備える。そしてこのフリップフロップFFのセット出力にてnチャネル型MOS-FET;NM31をオン駆動することでアラーム信号ALMを出力するように構成される。
【0048】
また前記アラーム出力回路24は、前記フリップフロップFFのセット出力を受けて前記信号OHER,OCER,UVER,RXERをそれぞれラッチする4つのラッチLT1,LT2,LT3,LT4を並列に備える。更に前記アラーム出力回路24は、pチャネル型MOS-FET;PM30との間でカレントミラー回路を形成する定電流源としての4つのpチャネル型MOS-FET:PM31,PM32,PM33,PM34を並列に備える。そしてこれらの各pチャネル型MOS-FET;PM31,PM32,PM33,PM34には、スイッチとしての4つのpチャネル型MOS-FET;PM41,PM42,PM43,PM44がそれぞれ直列に接続されている。
【0049】
これらのpチャネル型MOS-FET;PM41,PM42,PM43,PM44は、前記ラッチLT1,LT2,LT3,LT4の各出力にて選択的にオンされて、前記pチャネル型MOS-FET;PM31,PM32,PM33,PM34からなる定電流源にてコンデンサC1を充電する役割を担う。そして前記コンデンサC1の充電に伴って該コンデンサC1に生じる充電電圧は比較器COMPに与えられ、基準電圧Vrefと比較される。そして前記比較器COMPは、前記コンデンサC1の充電電圧が前記基準電圧Vrefを超えたとき、アラーム信号の出力停止を指令する終了信号TENDを発するものとなっている。
【0050】
この終了信号TENDにより、遅延回路を介して前記コンデンサC1に並列接続されたnチャネル型MOS-FET;NM32がオン駆動され、前記コンデンサC1に充電された電荷が放電されて該コンデンサC1がリセットされる。また前記終了信号TENDは、前記フリップフロップFFのリセット端子に印加されると共に、該フリップフロップFFのセット端子の前段に設けられたアンドゲート回路に入力される。このアンドゲート回路は、前記フリップフロップFFがリセット状態であり、且つ前記終了信号TENDが出力されていないときにだけ、該フリップフロップFFのセット端子に前記異常検出信号ERDETを印加する役割を担う。
【0051】
従って前記フリップフロップFFは、
図11に示すように前記異常検出信号ERDETが入力されたタイミングでセットされ、これに伴って前記コンデンサC1の充電が開始された後、該コンデンサC1の充電電圧が前記基準電圧Vrefを超えて前記終了信号TENDが出力されたときにリセットされる。この結果、前記フリップフロップFFがセットされている期間tに亘って前記アラーム信号ALMが出力されることになる。
【0052】
この際、前記pチャネル型MOS-FET;PM31,PM32,PM33,PM34にそれぞれ設定する一定電流値に重み付けをしておけば、前記信号OHER,OCER,UVER,RXERの種別に応じて前記コンデンサC1の充電電流が変化する。この結果、該コンデンサC1の充電電圧が前記基準電圧Vrefに達するまでの
期間t、つまり前記終了信号TENDが生成されるタイミングに時間差が生じる。従って前記信号OHER,OCER,UVER,RXERの種別に応じて前記アラーム信号ALMの出力時間を変えることが可能となる。そしてこのアラーム信号ALMの出力時間を弁別することで前記異常検出の種別を判定することが可能となる。
【0053】
かくしてこのように構成された信号伝達回路1によれば、ハイサイド回路10において発生する複数種(この例では3種)の異常検出信号OHIN,OCIN,UVINに応じて、所定の優先順位で異常の種別を示す信号OHER,OCER,UVERが生成される。そしてこれらの信号OHER,OCER,UVERに応じて、前述した2つのスイッチ素子16,17の一方を連続してオン・オフさせるパルス信号、または前記スイッチ素子16,17を交互にオンさせるパルス信号が生成される。そしてこれらのパルス信号が前記スイッチ素子16,17を介してローサイド回路20に伝達される。
【0054】
従って前記ハイサイド回路10における電源電圧変動(dV/dt)の影響を受けることなく前記ローサイド回路20への信号伝達を行い得る。また前記スイッチ素子16,17が同時にオン駆動されることがないので、該2つのスイッチ素子16,17に混入する同相ノイズの影響を簡易に、且つ効果的に除去して、前記各パルス信号をそれぞれ確実に検出することができる。
【0055】
故に前記ローサイド回路20においては前記スイッチ素子16,17をそれぞれ介して伝達されるパルス信号から前記ハイサイド回路10において発生した異常の種別を正確に判別することが可能となる。特に前記2つのスイッチ素子16,17を用いて、前記ハイサイド回路10において発生する3種類の異常の種別を、異常なしの状態を含めて簡易に、且つ確実に前記ローサイド回路20に伝達することが可能であり、その実用的利点が多大である。
【0056】
尚、3個のスイッチ素子PM1,PM2,PM3を並列に設け、これらのスイッチ素子PM1,PM2,PM3を択一的にオンさせるパルス信号を生成して前記ハイサイド回路10から前記ローサイド回路20への信号伝達を行うように構成することも可能である。この場合、前記ハイサイド回路10に生じた異常の種別に応じて、例えば前記スイッチ素子PM1,PM2,PM3の1つだけを第1の周期でオン・オフするパルス信号と、前記スイッチ素子PM1,PM2,PM3の中の2つを交互にオン・オフする第2の周期のパルス信号を生成するようにすれば良い。このようにすれば異常なしの状態を含めて、6種類の異常の種別を伝達することが可能となる。
【0057】
次に本発明の第2の実施形態に係る信号伝達回路1について説明する。
【0058】
この実施形態は前述したアービタ回路14により信号種別の優先度に応じて求められた異常検出信号OHE,OCE,UVEに応じて、例えば
図12に示すようにパルス幅の異なる3種類のパルス信号を生成する。そしてこのパルス信号は、例えば
図13に示すように1つのスイッチ素子16だけを介してローサイド回路20に伝達するように構成される。ちなみに前記3種類のパルス信号のパルス幅T1,T2,T3は、例えば
図12に示すように[T2=2・T1],[T3=2・T2=4・T1]として設定される。
【0059】
このような異常信号の種別に応じたパルス幅T1,T2,T3のパルス信号は、例えば所定周波数の基準クロック信号を計数する3ビットのカウンタ18と、該カウンタ18の出力を選択するマルチプレクサ19とを用いて生成される。具体的には前記カウンタ18および前記マルチプレクサ19の各動作を、例えば2ビットのデータ[01],[10],[11]からなる異常信号の種別を示す前記異常検出信号OHE,OCE,UVEに応じて制御することによって生成される。そして前記パルス幅T1,T2,T3のパルス信号を用いて前記スイッチ素子16を連続的にオン・オフ駆動する。
【0060】
一方、前記ローサイド回路20においては、前記電圧変換部21aを介して電圧変換して得られるパルス信号を用いて、該パルス信号のパルス幅時間に亘ってコンデンサC2を充電する。そしてパルス幅検出回路25においては、前記コンデンサC2の充電電圧を、並列に設けられた3つの比較器CMP1,CMP2,CMP3にて基準電圧Vref1,Vref2,Vref3とそれぞれ比較して前記各パルス幅に相当する出力ALM1,ALM2,ALM3をそれぞれ求める。その上で前記パルス幅検出回路25は、前記各比較器CMP1,CMP2,CMP3の出力ALM1,ALM2,ALM3を、アンドゲート回路AND1,AND2を介してマスキング処理し、前記出力ALM1,ALM2,ALM3の1つを選択的に出力する。
【0061】
ちなみにこの例では[ALM1<ALM2<ALM3]なる優先順位でアラーム信号を出力するように構成されている。また
図13において前記コンデンサC2に並列接続されたnチャネル型MOS-FET;NM31は、ノット回路を介して反転された前記パルス信号によりオン駆動されて、前記コンデンサC2の充電電荷を放電する役割を担う。
【0062】
かくしてこのように構成された信号伝達回路1によれば、
図14にその動作タイミングを示すように、異常検出信号の種別に応じて前記スイッチ素子PM1をオン駆動するパルス信号のパルス幅T1,T2,T3が変更されるので、これに伴って前記コンデンサC2の充電電圧が変化する。そして前記コンデンサC2の充電電圧が前記基準電圧Vref1,Vref2,Vref3を超えた際、前記比較器CMP1,CMP2,CMP3は順次その出力A1,A2,A3を反転させる。
【0063】
そして前記各比較器CMP1,CMP2,CMP3の出力A1,A2,A3は、前記基準電圧が高く設定されている上位の比較器CMP2,CMP3の出力A2,A3により順にマスキングされる。この結果、前記コンデンサC2がリセットされるタイミングで前記各比較器CMP1,CMP2,CMP3の出力A1,A2,A3を抽出すれば、これによって前記異常の種別に応じた異常検出出力ALM1,ALM2,ALM3を択一的に求めることが可能となる。
【0064】
従って上述した如く異常の種別に応じたパルス幅T1,T2,T3のパルス信号を前記スイッチ素子16を介して伝達するようにしても、先の実施形態と同様にハイサイド回路10において発生した異常の種別を前記ローサイド回路20に対して簡易に、しかも確実に伝達することができる。しかも1つのスイッチ素子16を用いるだけで、異常の種別を示す信号伝達を確実に行うことができる。但し、この実施形態の場合、前記パルス信号のパルス幅T1,T2,T3の設定条件によっては、その信号伝達から該パルス信号の解析までの時間が掛かることが否めない。従って異常の種別によって定まる緊急度に応じて前記パルス幅T1,T2,T3を最適に設定することが望ましいことは言うまでもない。
【0065】
また本発明を次のようにして実施することも可能である。
【0066】
この第3の実施形態は前述したアービタ回路14により信号種別の優先度に応じて求められた異常検出信号OHE,OCE,UVEに応じて、例えば
図15に示すようにパルス数nの異なる3種類のパルス信号列を生成する。そしてこのパルス信号列を、例えば
図16に示すように1つのスイッチ素子16を介してローサイド回路20に伝達する。ちなみにパルス数の異なる前記3種類のパルス信号列は、例えば
図15に示すように一定の休止期間Tbを挟んで設定される一定の信号出力期間Taに出力するパルス数nを異ならせたものである。
【0067】
この
図15に示す例では前記信号出力期間Taにおけるパルス数nを、前記異常検出信号OHE,OCE,UVEに応じて4パルス、6パルス、8パルスとして設定している。このようなパルス信号列は、例えば
図16に示すように基準クロック信号CLKを分周器31にて分周した後、3ビットのカウンタ32にて計数する。そしてこのカウンタ32による計数値と、前記異常検出信号OHE,OCE,UVEを示す2ビットのアラーム情報とを比較器33にて比較し、その比較結果によりアンドゲート回路34を制御して前記基準クロック信号CLKをマスキングすることで生成される。
【0068】
この結果、前記アンドゲート回路34を介して前記スイッチ素子16に与えられる前記基準クロック信号CLKのパルス数が前記異常検出信号OHE,OCE,UVEの種別に応じて制限される。そして前記スイッチ素子16は、前記カウンタ32の1動作周期(Ta+Tb)において、前記アンドゲート回路34を通過した前記基準クロック信号CLKのパルス数だけオン・オフ駆動される。
【0069】
またこのようにして前記ハイサイド回路10から伝達されるパルス信号を受信する前記ローサイド回路20においては、次のようにして前記パルス信号のパルス数から前記異常検出信号の種別を解析すれば良い。即ち、前記電圧変換部21aを介して電圧変換して得られるパルス信号を4ビットのカウンタ36にて計数し、その計数値をラッチ回路37にてラッチする。この際、前記カウンタ36による計数動作と、前記ラッチ回路37によるラッチタイミングをタイマー回路38にて制御する。
【0070】
ちなみに前記タイマー回路38は、例えば
図17に示すように前記電圧変換部21aから得られるパルス信号を受けてセットされるフリップフロップ(FF)38aを備える。また前記タイマー回路38は、前記フリップフロップ38aのセット出力を受けて充電されるコンデンサC11の充電電圧を第1の比較器CMP11にて所定の基準電圧Vref11と比較する第1のタイマー38bを備える。そしてこの第1のタイマー38bにより、前記パルス信号の出力期間Taを求めるように構成される。
【0071】
更に前記タイマー回路38は、前記第1の比較器CMP11の出力にて充電されるコンデンサC12の充電電圧を第2の比較器CMP12にて所定の基準電圧Vref12と比較する第2のタイマー38cを備える。そしてこの第2のタイマー38cにて前記パルス信号の休止期間Tbを求めるように構成される。その上で前記タイマー回路38は、前記第2のタイマー38cである前記第2の比較器CMP12の出力により前記フリップフロップ38aをリセットすることで、前記第1および第2のタイマー38b,38cをそれぞれ初期化するように構成される。
【0072】
このように構成された前記タイマー回路38によれば、前記電圧変換部21aを介して前記ハイサイド回路10から伝達されたパルス信号を受信した時点で前記フリップフロップ38aがセットされる。従って前記第1のタイマー38bは、前記パルス信号の受信タイミングを起点としてタイマー動作を開始し、前記期間Taが経過した時点で前記カウンタ36によるカウンタ動作を停止させる。従って前記カウンタ36は、前記期間Taの間に受信したパルス信号だけを計数する。換言すれば前記異常検出信号OHE,OCE,UVEの種別に応じて前記ハイサイド回路10から伝達されたパルス信号のパルス数が前記カウンタ36において求められる。
【0073】
その後、前記第2のタイマー38cによって前記休止期間Tbが経過した時点で前記ラッチ回路37が起動され、前記カウンタ36において求められた前記パルス信号のパルス数がラッチされる。そして前記ラッチ回路37に保持された計数値であるパルス数がデコーダ39に与えられ、当該パルス数に応じたアラーム出力が求められる。ちなみに前記デコーダ39は、例えば
図18に示すように前記ラッチ回路37に保持された計数値に応じて、その出力ALM1,ALM2,ALM3を変化させるように構成される。
【0074】
従って上述した如く構成された信号伝達回路1によれば、
図19にその動作タイミングを示すように、異常検出信号の種別に応じて前記スイッチ素子16をオン駆動するパルス信号の一定期間Taにおける出力パルス数nが変更される。故に前記ローサイド回路20においては、前記一定期間Taにおいて検出されるパルス信号のパルス数を前記カウンタ36にて計数し、その計数値を解析することで先の実施形態と同様にハイサイド回路10において発生した異常の種別を判定することが可能となる。
【0075】
特にこの実施形態に係る信号伝達回路1によれば、一定期間Taにおいて前記スイッチ素子16を介して伝達するパルス信号のパルス数nを前記異常検出信号の種別に応じて変更するだけで良いので、該異常検出信号の種別を前記ローサイド回路20に対して簡易に、しかも確実に伝達することができる。しかも先の実施形態と同様に1つのスイッチ素子16を用いるだけで、異常の種別を示す信号伝達を確実に行うことができる。故に先の各実施形態と同様な効果が奏せられる。
【0076】
尚、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。例えば第1の実施形態における信号伝達の制御と、第2または第3の実施形態による信号伝達の制御とを併用して信号伝達を行うことも可能である。具体的には前記2つのスイッチ素子16,17の一方を連続的にオン・オフする連続パルス信号の周期を前記異常検出信号の種別に応じて変え、または前記2つのスイッチ素子16,17を交互にオン・オフするパルス信号の周期を前記異常検出信号の種別に応じて変えるようにしても良い。このようにすれば更に多くの種別の信号を前記ハイサイド回路10から前記ローサイド回路20へと伝達することが可能となる。
【0077】
また前述した各実施形態におけるパルス信号の周期等については、前記ハイサイド回路10から前記ローサイド回路20へと伝達する信号の発生頻度や、信号伝達の緊急性等の仕様に応じて設定すれば十分である。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。