(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015859
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】糸製造装置
(51)【国際特許分類】
D02G 3/16 20060101AFI20161013BHJP
D01F 9/127 20060101ALI20161013BHJP
D01H 1/115 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
D02G3/16
D01F9/127
D01H1/115 A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-524994(P2015-524994)
(86)(22)【出願日】2013年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2013068535
(87)【国際公開番号】WO2015001668
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 史章
【審査官】
斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/022129(WO,A2)
【文献】
特公昭63−042008(JP,B2)
【文献】
特開2011−153392(JP,A)
【文献】
特開2010−281025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/14
D01F 9/08 − 9/32
D01H 1/00 − 17/02
D02G 1/00 − 3/48
D02J 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ繊維群を走行させつつ当該カーボンナノチューブ繊維群からカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、
走行する前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる糸製造部を備え、
前記糸製造部は、
前記カーボンナノチューブ繊維群が挿通されるノズル本体部と、
前記ノズル本体部に設けられ、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向に圧縮空気により第1旋回流を発生させる第1ノズル部と、
前記ノズル本体部に設けられ、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向で且つ前記第1旋回流とは逆方向に圧縮空気により第2旋回流を発生させる第2ノズル部と、を有し、
前記第1ノズル部と前記第2ノズル部とは、前記ノズル本体部において、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において異なる位置に設けられており、
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部の少なくとも一方に、架橋剤溶液を供給する架橋剤溶液供給機構を備えることを特徴とする糸製造装置。
【請求項2】
前記第1ノズル部は、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において、前記第2ノズル部の上流側に設けられており、
前記第1旋回流を形成するための圧縮空気の圧力は、前記第2旋回流を形成するための圧縮空気の圧力よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の糸製造装置。
【請求項3】
前記第1ノズル部において発生する前記第1旋回流は、主として前記カーボンナノチューブ繊維群の外層の一部を巻き付け、
前記第2ノズル部において発生する前記第2旋回流は、主として前記カーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを施して凝集させることを特徴とする請求項1又は2記載の糸製造装置。
【請求項4】
前記ノズル本体部には、前記第1ノズル部と前記第2ノズル部との間に、空気逃し部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の糸製造装置。
【請求項5】
前記空気逃し部は、前記ノズル本体部の一部を切り欠いた切欠き部であることを特徴とする請求項4記載の糸製造装置。
【請求項6】
前記架橋剤溶液を化学反応させるための架橋促進照射装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の糸製造装置。
【請求項7】
カーボンナノチューブ繊維群を走行させつつ当該カーボンナノチューブ繊維群からカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、
走行する前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる糸製造部を備え、
前記糸製造部は、
前記カーボンナノチューブ繊維群が挿通されるノズル本体部と、
前記ノズル本体部に設けられ、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向に圧縮空気により第1旋回流を発生させる第1ノズル部と、
前記ノズル本体部に設けられ、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向で且つ前記第1旋回流とは逆方向に圧縮空気により第2旋回流を発生させる第2ノズル部と、を有し、
前記第1ノズル部と前記第2ノズル部とは、前記ノズル本体部において、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において異なる位置に設けられており、
前記第1ノズル部及び前記第2ノズル部の少なくとも一方に、凝集液を供給する凝集液供給機構を備えることを特徴とする糸製造装置。
【請求項8】
前記第1ノズル部は、前記カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において、前記第2ノズル部の上流側に設けられており、
前記第1旋回流を形成するための圧縮空気の圧力は、前記第2旋回流を形成するための圧縮空気の圧力よりも小さいことを特徴とする請求項7記載の糸製造装置。
【請求項9】
前記第1ノズル部において発生する前記第1旋回流は、主として前記カーボンナノチューブ繊維群の外層の一部を巻き付け、
前記第2ノズル部において発生する前記第2旋回流は、主として前記カーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを施して凝集させることを特徴とする請求項7又は8記載の糸製造装置。
【請求項10】
前記ノズル本体部には、前記第1ノズル部と前記第2ノズル部との間に、空気逃し部が設けられていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項記載の糸製造装置。
【請求項11】
前記空気逃し部は、前記ノズル本体部の一部を切り欠いた切欠き部であることを特徴とする請求項10記載の糸製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカーボンナノチューブ糸の糸製造装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載の糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向の上流側に設けられたスピンゾーンによりカーボンナノチューブ繊維群に対して一方向に撚りを施すと共に、上記スピンゾーンの下流側に設けられた他のスピンゾーンにより一方向とは逆方向の他方向に撚りを施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/22129号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンナノチューブ繊維群からカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置では、より高速にカーボンナノチューブ糸を製造することが求められている。
【0005】
本発明は、カーボンナノチューブ糸製造の高速化を図ることができる糸製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る糸製造装置は、カーボンナノチューブ繊維群を走行させつつ当該カーボンナノチューブ繊維群からカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、走行するカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる糸製造部を備え、糸製造部は、カーボンナノチューブ繊維群が挿通されるノズル本体部と、ノズル本体部に設けられ、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向に圧縮空気により第1旋回流を発生させる第1ノズル部と、ノズル本体部に設けられ、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向で且つ第1旋回流とは逆方向に圧縮空気により第2旋回流を発生させる第2ノズル部と、を有し、第1ノズル部と第2ノズル部とは、ノズル本体部において、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において異なる位置に設けられていることを特徴とする。なお、上記の直交する方向の旋回流には、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向の旋回成分を含む旋回流が含まれる。つまり、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に向かって圧縮空気を発生させた場合でも、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向に直交する方向の旋回成分が含まれている場合には、本発明の旋回流に含まれる。
【0007】
この糸製造装置では、旋回流によりカーボンナノチューブ繊維群に撚りを施すため、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させたカーボンナノチューブ糸を高速で製造することができる。このとき、糸製造装置では、第1ノズル部により第1旋回流を発生させており、第2ノズル部により第1旋回流と逆方向の第2旋回流を発生させている。そのため、糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを施して高速で凝集させることができる。また、糸製造装置では、圧縮空気により旋回流を発生させてカーボンナノチューブ繊維群に撚りを施す構造であるため、圧縮空気の量を調整することにより、撚り具合を容易に調整することができる。また、糸製造装置では、第1ノズル部と第2ノズル部とは、それぞれノズル本体部に設けられてユニット化されており、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において異なる位置に設けられている。これにより、糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群を容易に第1ノズル部及び第2ノズル部に通すことができる。
【0008】
一実施形態においては、第1ノズル部は、カーボンナノチューブ繊維群の走行方向において、第2ノズル部の上流側に設けられており、第1旋回流を形成するための圧縮空気の圧力は、第2旋回流を形成するための圧縮空気の圧力よりも小さくてもよい。このように、第1ノズル部を第2ノズル部の上流側に設けた構成において、第1旋回流を形成する圧縮空気の圧力を小さくする、すなわち第2旋回流を形成する圧縮空気の圧力を大きくすることにより、カーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを良好に施して凝集させることができる。
【0009】
一実施形態においては、第1ノズル部において発生する第1旋回流は、主としてカーボンナノチューブ繊維群の外層の一部を巻き付け、第2ノズル部において発生する第2旋回流は、主としてカーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを施してして凝集させてもよい。これにより、糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを良好に施して凝集させることができる。
【0010】
一実施形態においては、ノズル本体部には、第1ノズル部と第2ノズル部との間に、空気逃し部が設けられていてもよい。これにより、糸製造装置では、第1ノズル部における第1旋回流と第2ノズル部における第2旋回流とが干渉することを抑制できる。これにより、各ノズル部における旋回流に乱れが生じることを抑制でき、カーボンナノチューブ糸の品質の信頼性の低下を抑制できる。
【0011】
一実施形態においては、空気逃し部は、ノズル本体部の一部を切り欠いた切欠き部であってもよい。これにより、糸製造装置では、切欠き部以外のノズル本体部により、カーボンナノチューブ繊維群が飛散することを抑制できる。
【0012】
一実施形態においては、第1ノズル部及び第2ノズル部の少なくとも一方に、架橋剤溶液を供給する架橋剤溶液供給機構を備えていてもよい。これにより、糸製造装置では、旋回流によって架橋剤溶液をカーボンナノチューブ繊維群に効果的に付着させることができる。したがって、糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群を架橋剤溶液により架橋させることができる。その結果、糸製造装置では、良好なカーボンナノチューブ糸を製造することができる。特に、第1ノズル部に架橋剤溶液を供給すると、下流側の第2ノズル部の第2旋回流により溶媒を効率良く気化させることができる。
【0013】
一実施形態においては、架橋剤溶液を化学反応させるための架橋促進照射装置を備えていてもよい。これにより、糸製造装置では、カーボンナノチューブ繊維群をより効果的に架橋させることができる。
【0014】
一実施形態においては、第1ノズル部及び第2ノズル部の少なくとも一方に、凝集液を供給する凝集液供給機構を備えていてもよい。これにより、糸製造装置では、仮撚りされたカーボンナノチューブ繊維群を効率的に凝集させることができる。これにより、糸製造装置では、第1旋回流によって凝集液をカーボンナノチューブ繊維群に効果的に付着させることができる。したがって、糸製造装置では、良好なカーボンナノチューブ糸を製造することができる。特に、第1ノズル部に凝集液を供給すると、下流側の第2ノズル部の第2旋回流により凝集液を効率良く気化させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カーボンナノチューブ糸製造の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る糸製造装置を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す糸製造装置の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、糸製造部におけるエアーの流れを示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る糸製造装置を示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る糸製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る糸製造装置を示す図である。
図2は、
図1に示す糸製造装置の一部を示す斜視図である。各図に示されるように、糸製造装置1は、カーボンナノチューブ繊維群(以下、「CNT繊維群」という)Fを走行させつつ当該CNT繊維群Fからカーボンナノチューブ糸(以下、「CNT糸」という)Yを製造する装置である。
【0019】
糸製造装置1は、基板支持部3と、糸製造部5と、ニップローラー7a,7bと、巻取装置9と、を備えている。基板支持部3、糸製造部5、ニップローラー7a,7b及び巻取装置9は、この順序で所定線上に配置されており、CNT繊維群Fは、基板支持部3から巻取装置9に向かって走行させられる。なお、CNT繊維群Fは、カーボンナノチューブからなる繊維が複数集合したものである。CNT糸Yは、CNT繊維群Fに仮撚りが掛けられて凝集したものである。
【0020】
基板支持部3は、CNT繊維群Fが引き出されるカーボンナノチューブ形成基板(以下、「CNT形成基板」という)Sを保持した状態で支持する。CNT形成基板Sは、カーボンナノチューブフォレスト(carbon nanotube forest)、或いは、カーボンナノチューブの垂直配向構造体等と称されるものであり、化学気相成長法等によって基板B上に高密度且つ高配向にカーボンナノチューブ(例えば、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等)が形成されたものである。基板Bとしては、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、シリコン基板、金属基板等が用いられる。なお、CNT糸Yの製造開始時、CNT形成基板Sの交換時等には、マイクロドリルと称される治具によって、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出すことができる。
【0021】
糸製造部5は、圧縮空気(エアー)の旋回流によってCNT繊維群Fに仮撚りを施して凝集させる。
図3は、糸製造部を示す図である。
図4は、
図3に示す糸製造部の分解図である。
図3及び
図4では、ノズル本体部10を断面で示している。
図3及び
図4に示されるように、糸製造部5は、ノズル本体部10と、第1ノズル部20と、第2ノズル部30と、を備えている。第1ノズル部20及び第2ノズル部30は、ノズル本体部10に設けられており、ノズル本体部10、第1ノズル部20及び第2ノズル部30は、ユニット化されている。
【0022】
ノズル本体部10は、CNT繊維群Fを挿通させると共に、第1ノズル部20及び第2ノズル部30を保持するハウジングである。ノズル本体部10は、例えば真鍮等の材料により形成されている。ノズル本体部10は、CNT繊維群Fを挿通させると共にノズル本体部10にCNT繊維群Fを導入する導入口11と、第1ノズル部20を収容する第1収容部12と、第2ノズル部30を収容する第2収容部13と、CNT繊維群Fを挿通させると共にノズル本体部10からCNT繊維群Fを導出する導出口14と、を有している。第1収容部12及び第2収容部13は、CNT繊維群Fの走行方向に沿って配置されている。
【0023】
第1収容部12は、CNT繊維群Fの走行方向において一端側(糸製造部5が
図1に示されるように配置されたときに、CNT繊維群Fの走行方向の上流側となる位置)に設けられている。第2収容部13は、CNT繊維群Fの走行方向において他端側(糸製造部5が
図1に示されるように配置されたときに、第1収容部12の下流側となる位置)に設けられている。
【0024】
第1収容部12と第2収容部13との間には、空気逃し部15が設けられている。空気逃し部15は、第1ノズル部20において発生した第1旋回流SF1を逃す部分である。空気逃し部15は、ノズル本体部10の一部を切り欠いた切欠き部とされている。空気逃し部15は、CNT繊維群Fの走行路を含んで設けられている。第1収容部12と第2収容部13との間のCNT繊維群Fの走行路は、空気逃し部15により開放されている一方、ノズル本体部10により一部が囲われている。
【0025】
ノズル本体部10には、第1流路部16と、第2流路部17と、が設けられている。第1流路部16は、第1収容部12に連通しており、第1ノズル部20に圧縮空気を供給する流路である。第2流路部17は、第2収容部13に連通しており、第2ノズル部30に圧縮空気を供給する流路である。なお、本実施形態では、ノズル本体部10が複数(ここでは3個)の部品により構成されているが、ノズル本体部10は一体成型品であってもよい。
【0026】
第1ノズル部20は、第1旋回流SF1を発生させてCNT繊維群Fにバルーンを形成し、CNT繊維群Fに撚りを施す。第1ノズル部20は、例えばセラミックスにより形成されている。第1ノズル部20は、ノズル本体部10の第1収容部12に配置されている。第1ノズル部20は、CNT繊維群Fを挿通させる共に、第1旋回流SF1を発生させる空間を画成する筒状部22を有している。筒状部22は、CNT繊維群Fの走行方向に沿って設けられている。
【0027】
第1ノズル部20には、
図5に示されるように、ノズル本体部10に設けられた第1流路部16を介して、図示しないエアー供給源から圧縮空気が供給される。第1ノズル部20では、
図2に示されるように、CNT繊維群Fの走行方向に直交する方向、例えば走行方向を軸として半時計回りの方向に第1旋回流SF1が発生する。第1旋回流SF1は、筒状部22の内壁に沿って発生する。第1旋回流SF1は、主として、CNT繊維群Fの外側の繊維群(外層の一部)を内側の繊維群に巻き付ける。第1旋回流SF1を形成する圧縮空気の圧力(静圧)は、例えば0.25MPa程度である。
【0028】
第2ノズル部30は、第2旋回流SF2を発生させてCNT繊維群Fにバルーンを形成し、CNT繊維群Fに撚りを施す。第2ノズル部30は、例えばセラミックにより形成されている。第2ノズル部30は、ノズル本体部10の第2収容部13に配置されている。第2ノズル部30には、CNT繊維群Fを挿通させると共に、第2旋回流SF2を発生される空間を画成する筒状部32を有している。筒状部32は、CNT繊維群Fの走行方向に沿って設けられている。
【0029】
第2ノズル部30には、
図5に示されるように、ノズル本体部10に設けられた第2流路部17を介して、図示しないエアー供給源から圧縮空気が供給される。第2ノズル部30では、
図2に示されるように、CNT繊維群Fの走行方向に直交する方向で第1旋回流SF1とは逆方向、例えば走行方向を軸として時計回りの方向に第2旋回流SF2が発生する。すなわち、第2旋回流SF2の方向は、第1旋回流SF1の方向と逆方向とされている。第2旋回流SF2は、筒状部32の内壁に沿って発生する。第2旋回流SF2は、主として、CNT繊維群Fの芯部(内側の繊維群)に対して、第1旋回流SF1とは逆方向の撚りを施す。第2旋回流SF2を形成する圧縮空気の圧力(静圧)は、例えば0.4〜0.6MPa程度である。すなわち、第2旋回流SF2を形成する圧縮空気の圧力は、第1旋回流SF1を形成する圧縮空気の圧力よりも大きい。言い換えれば、第1旋回流SF1を形成する圧縮空気の圧力は、第2旋回流SF2を形成する圧縮空気の圧力よりも小さい。
【0030】
ニップローラー7a,7bは、糸製造部5により仮撚りされて凝集されたCNT糸Yを搬送する。ニップローラー7a,7bは、CNT糸Yを挟む位置に一対配置されている。ニップローラー7a,7bは、糸製造部5から伝播するCNT繊維群Fの撚り(バルーン)を止める。糸製造部5により仮撚りされたCNT繊維群Fは、ニップローラー7a,7bを通過することにより更に凝集され、最終的な製造物であるCNT糸Yとされる。
【0031】
巻取装置9は、糸製造部5によって仮撚りされてニップローラー7a,7bを通過したCNT糸Yをボビンに巻き取る。
【0032】
続いて、糸製造部5におけるCNT繊維群Fの仮撚りの動作について説明する。最初に、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fは、糸製造部5の第2ノズル部30の第2旋回流SF2により撚りが開始される。第2旋回流SF2により撚りが施されて凝集したCNT繊維群Fは、第1ノズル部20の第1旋回流SF1により撚りが戻される。また、第1ノズル部20の第1旋回流SF1により、第2旋回流SF2により凝集されなかったCNT繊維群Fの一部(外面の部分)が凝集した表面に巻き付けられる。これにより、糸製造部5によりCNT繊維群Fを凝集させる。糸製造装置1では、例えば数十m/minでCNT糸Yが製造される。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る糸製造装置1では、圧縮空気の旋回流によりCNT繊維群Fに撚りを施すため、CNT繊維群からCNT糸Yを高速で製造することができる。このとき、糸製造装置1では、第1ノズル部20により第1旋回流SF1を発生させており、第2ノズル部30により第1旋回流SF1と逆方向の第2旋回流SF2を発生させている。そのため、糸製造装置1では、CNT繊維群Fに安定した仮撚りを高速で施すことができる。
【0034】
糸製造装置1では、圧縮空気により旋回流を発生させてCNT繊維群Fに仮撚りを施すため、圧縮空気の量を調整することにより、撚り具合を容易に調整することができる。また、糸製造装置1では、第1ノズル部20と第2ノズル部30とは、それぞれノズル本体部10に設けられてユニット化されており、CNT繊維群Fの走行方向において異なる位置に配置されている。これにより、糸製造装置1では、CNT繊維群Fを容易に第1ノズル部20及び第2ノズル部30に通すことができる。
【0035】
本実施形態では、第1ノズル部20は、CNT繊維群Fの走行方向において、第2ノズル部30の上流側に配置されている。このような構成において、第1旋回流SF1を形成する圧縮空気の圧力は、第2旋回流SF2を形成する圧縮空気の圧力よりも小さい。これにより、糸製造装置1では、第1ノズル部20において発生する第1旋回流SF1は、主としてCNT繊維群Fの外側の毛羽を巻き付け、第2ノズル部30において発生する第2旋回流SF2は、主としてCNT繊維群Fに撚りを施す。したがって、糸製造装置1では、CNT繊維群Fに良好に仮撚りを施すことができる。
【0036】
本実施形態では、ノズル本体部10には、第1ノズル部20と第2ノズル部30との間に、空気逃し部15が設けられている。空気逃し部15は、ノズル本体部10の一部を切り欠いた切欠き部である。これにより、糸製造部5では、第1ノズル部20における第1旋回流SF1と第2ノズル部30における第2旋回流SF2とが干渉することを抑制できる。したがって、糸製造部5では、各ノズル部20,30における旋回流SF1,SF2に乱れが生じることを抑制でき、CNT糸Yの品質の信頼性の低下を抑制できる。また、糸製造部5では、空気逃し部15以外のノズル本体部10により、CNT繊維群Fが飛散することを抑制できる。
【0037】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態に係る糸製造装置を示す図である。
図6に示されるように、糸製造装置1Aは、基板支持部3と、糸製造部5と、ニップローラー7a,7bと、巻取装置9と、を備えており、架橋剤溶液供給機構40と、架橋促進照射装置であるUV照射部42と、を更に備えている。
【0038】
架橋剤溶液供給機構40は、糸製造部5に架橋剤溶液を供給する。架橋剤溶液供給機構40は、例えば、第1ノズル部20に架橋剤溶液を供給する。架橋剤溶液供給機構40により供給された架橋剤溶液は、第1ノズル部20において圧縮空気と共に噴射され、第1旋回流SF1に添加されてCNT繊維群Fに付着する。架橋剤としては、カーボンナノチューブの分子間の架橋構造を作るものであればよい。架橋剤溶液は、揮発性を有する溶媒(例えばエタノール、アセトン等)に架橋剤が溶かされたものである。
【0039】
UV照射部42は、CNT糸YにUV(ultraviolet:紫外線)を照射する。UV照射部42は、ニップローラー7a,7bと巻取装置9との間に配置され、ニップローラー7a,7bを通過したCNT糸YにUVを照射する。UV照射部42は、架橋剤溶液が付着したCNT糸YにUVを照射することで、CNT糸Yの架橋を促進させる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る糸製造装置1Aでは、糸製造部5の第1ノズル部20に架橋剤溶液供給機構40により架橋剤溶液を供給している。これにより、糸製造装置1Aでは、CNT繊維群Fに架橋剤溶液を第1旋回流SF1により付着させることができる。したがって、糸製造装置1Aでは、CNT繊維群Fを架橋させることができる。また、糸製造装置1Aでは、架橋剤溶液供給機構40により架橋剤溶液をCNT繊維群Fに付着させた後、UV照射部42によりCNT糸YにUVを照射している。そのため、糸製造装置1Aでは、CNT糸Yの架橋を促進させることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、架橋促進照射装置としてUVを照射するUV照射部42を一例に説明したが、架橋促進照射装置としては、例えば電子線を照射する電子線照射部を採用してもよい。照射部は、架橋剤(架橋剤溶液)に化学反応を生じさせるものであればよい。
【0042】
また、上記実施形態では、架橋剤溶液供給機構40が第1ノズル部20に架橋剤溶液を供給する形態を一例に説明したが、架橋剤溶液供給機構40は第2ノズル部30に架橋剤溶液を供給してもよい。或いは、架橋剤溶液供給機構40は、第1ノズル部20及び第2ノズル部30に架橋剤溶液を供給してもよい。第1ノズル部20に供給する場合には、下流側の第2ノズル部30の第2旋回流SF2により溶媒を効率良く気化させることができる。
【0043】
[第3実施形態]
続いて、第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態に係る糸製造装置を示す図である。
図7に示されるように、糸製造装置1Bは、基板支持部3と、糸製造部5と、ニップローラー7a,7bと、巻取装置9と、を備えており、凝集液供給機構44を更に備えている。
【0044】
凝集液供給機構44は、糸製造部5に凝集液を供給する。凝集液供給機構44は、例えば、第1ノズル部20に凝集液を供給する。凝集液供給機構44により供給された凝集液は、第1ノズル部20において圧縮空気と共に噴射され、第1旋回流SF1に添加されてCNT繊維群Fに付着する。凝集液としては、カーボンナノチューブの分子間の凝集構造を作るものであればよい。凝集液は、揮発性を有する有機化合物(例えばエタノール、アセトン、フロン類、トルエン、ジクロロメタン等)である。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る糸製造装置1Bでは、糸製造部5の第1ノズル部20に凝集液供給機構44により凝集液を供給している。これにより、糸製造装置1Bでは、CNT繊維群Fに凝集液を第1旋回流SF1により付着させることができる。したがって、糸製造装置1Bでは、CNT繊維群Fを良好に凝集させることができる。
【0046】
上記実施形態では、凝集液供給機構44が第1ノズル部20に凝集液を供給する形態を一例に説明したが、凝集液供給機構44は第2ノズル部30に凝集液を供給してもよい。或いは、凝集液供給機構44は、第1ノズル部20及び第2ノズル部30に凝集液を供給してもよい。第1ノズル部20に供給する場合には、下流側の第2ノズル部30の第2旋回流SF2により凝集液を効率良く気化させることができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、CNT繊維群Fの供給源として、CNT形成基板Sに替えて、カーボンナノチューブを連続的に合成してCNT繊維群Fを供給する浮遊触媒装置等を用いてもよい。
【0048】
上記実施形態では、第1旋回流SF1を形成する圧縮空気の圧力を第2旋回流SF2を形成する圧縮空気の圧力よりも小さくする形態を一例に説明したが、第1及び第2旋回流SF2を形成する圧縮空気の圧力は、同じであってもよい。或いは、第2旋回流SF2を形成する圧縮空気の圧力を第1旋回流SF1を形成する圧縮空気の圧より小さくしてもよい。
【0049】
上記実施形態では、ノズル本体部10に第1ノズル部20及び第2ノズル部30が配置さている構成を一例に説明したが、ノズル本体部10に形成される空間をそれぞれ第1ノズル部及び第2ノズル部としてもよい。すなわち、ノズル本体部10において、第1ノズル部20及び第2ノズル部30に相当する構成が一体に形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、カーボンナノチューブ糸製造の高速化を図ることができる糸製造装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A,1B…糸製造装置、5…糸製造部、10…ノズル本体部、15…空気逃し部、20…第1ノズル部、30…第2ノズル部、40…架橋剤溶液供給機構、42…UV照射部、44…凝集液供給機構、F…CNT繊維群(カーボンナノチューブ繊維群)、SF1…第1旋回流、SF2…第2旋回流、Y…CNT糸(カーボンナノチューブ糸)。