特許第6015862号(P6015862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015862
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】糸製造装置
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/16 20060101AFI20161013BHJP
   D01F 9/127 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   D02G3/16
   D01F9/127
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-528038(P2015-528038)
(86)(22)【出願日】2013年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2013069816
(87)【国際公開番号】WO2015011771
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】矢野 史章
(72)【発明者】
【氏名】福原 修一
(72)【発明者】
【氏名】高嶌 弘樹
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/119747(WO,A1)
【文献】 特開2010−116632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 31/00 − 31/14
D01F 9/08 − 9/32
D01H 1/00 − 17/02
D02G 1/00 − 3/48
D02J 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ繊維群を凝集させてカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、
前記カーボンナノチューブ繊維群をカーボンナノチューブ形成基板から連続的に引き出す引き出し部と、
前記引き出し部によって引き出された前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる糸製造部と、
記カーボンナノチューブ糸の状態を監視する状態監視部と、
を備え、
前記状態監視部は、前記カーボンナノチューブ糸の太さを検知する光学式又は静電容量式の糸太さ検知センサである、糸製造装置。
【請求項2】
前記状態監視部における監視結果に応じて、前記引き出し部によって引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御する制御部を更に備える、請求項1に記載の糸製造装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記引き出し部における前記カーボンナノチューブ繊維群の引き出し速度を変更することにより、引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御する、請求項に記載の糸製造装置。
【請求項4】
複数設けられた前記カーボンナノチューブ形成基板から、前記カーボンナノチューブ繊維群を引き出す前記カーボンナノチューブ形成基板の枚数を変更する引出枚数変更部を更に備え、
前記制御部は、前記引出枚数変更部を制御して前記カーボンナノチューブ繊維群を引き出す前記カーボンナノチューブ形成基板の枚数を変更することにより、引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御する、請求項に記載の糸製造装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記状態監視部により前記カーボンナノチューブ糸の走行が検出されない場合、前記引き出し部の動作と、前記糸製造部の動作とを停止させる、請求項からのいずれか一項に記載の糸製造装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記引き出し部によって引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御した後、前記カーボンナノチューブ糸の所望の太さが得られない場合、前記引き出し部及び前記糸製造部の動作を停止させる、請求項からのいずれか一項に記載の糸製造装置。
【請求項7】
カーボンナノチューブ繊維群を凝集させてカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、
前記カーボンナノチューブ繊維群をカーボンナノチューブ形成基板から連続的に引き出す引き出し部と、
前記引き出し部によって引き出された前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる糸製造部と、
前記カーボンナノチューブ形成基板から引き出された前記カーボンナノチューブ繊維群、又は前記カーボンナノチューブ糸の状態を監視する状態監視部と、
前記状態監視部における監視結果に応じて、前記引き出し部によって引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御する制御部と、
を備える糸製造装置。
【請求項8】
前記状態監視部は、前記カーボンナノチューブ糸の太さを検知する糸太さ検知センサである、請求項に記載の糸製造装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記引き出し部における前記カーボンナノチューブ繊維群の引き出し速度を変更することにより、引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御する、請求項7又は8に記載の糸製造装置。
【請求項10】
複数設けられた前記カーボンナノチューブ形成基板から、前記カーボンナノチューブ繊維群を引き出す前記カーボンナノチューブ形成基板の枚数を変更する引出枚数変更部を更に備え、
前記制御部は、前記引出枚数変更部を制御して前記カーボンナノチューブ繊維群を引き出す前記カーボンナノチューブ形成基板の枚数を変更することにより、引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御する、請求項7又は8に記載の糸製造装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記状態監視部により前記カーボンナノチューブ繊維群又は前記カーボンナノチューブ糸の走行が検出されない場合、前記引き出し部の動作と、前記糸製造部の動作とを停止させる、請求項7から10のいずれか一項に記載の糸製造装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記引き出し部によって引き出される前記カーボンナノチューブ繊維群の量を制御した後、前記カーボンナノチューブ糸の所望の太さが得られない場合、前記引き出し部及び前記糸製造部の動作を停止させる、請求項7から11のいずれか一項に記載の糸製造装置。
【請求項13】
前記糸製造部は、気流によって前記カーボンナノチューブ繊維群に撚りを施す、請求項1から12のいずれか一項に記載の糸製造装置。
【請求項14】
カーボンナノチューブ繊維群を凝集させてカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置であって、
前記カーボンナノチューブ繊維群をカーボンナノチューブ形成基板から連続的に引き出す引き出し部と、
前記引き出し部によって引き出された前記カーボンナノチューブ繊維群を凝集させる糸製造部と、
前記カーボンナノチューブ形成基板から引き出された前記カーボンナノチューブ繊維群、又は前記カーボンナノチューブ糸の状態を監視する状態監視部と、
を備え、
前記糸製造部は、気流によって前記カーボンナノチューブ繊維群に撚りを施す、糸製造装置。
【請求項15】
前記状態監視部は、前記カーボンナノチューブ糸の太さを検知する糸太さ検知センサである、請求項14に記載の糸製造装置。
【請求項16】
前記カーボンナノチューブ形成基板を支持する基板支持部を更に備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の糸製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ繊維群からカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したような糸製造装置として、カーボンナノチューブ形成基板からカーボンナノチューブ繊維群を引き出す引き出し部と、引き出し部によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群に撚りを施して糸を製造する糸製造部と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−116632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、カーボンナノチューブ形成基板からカーボンナノチューブ繊維群を引き出す際の引き出し速度に応じて、カーボンナノチューブ繊維群の引き出し性能に変動が生じることが知られている。このため、このような糸製造装置の分野においては、カーボンナノチューブ糸の状態を監視することが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、カーボンナノチューブ糸の製造状態を監視することが可能な糸製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る糸製造装置は、カーボンナノチューブ繊維群に撚り又は仮撚りを加えてカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置である。この糸製造装置は、引き出し部と、糸製造部と、状態監視部とを備える。引き出し部は、カーボンナノチューブ繊維群をカーボンナノチューブ形成基板から連続的に引き出す。糸製造部は、引き出し部によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる。状態監視部は、カーボンナノチューブ糸の状態を監視する。状態監視部は、カーボンナノチューブ糸の太さを検知する光学式又は静電容量式の糸太さ検知センサである。
本発明の他の一側面に係る糸製造装置は、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させてカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置である。この糸製造装置は、引き出し部と、糸製造部と、状態監視部と、制御部とを備える。引き出し部は、カーボンナノチューブ繊維群をカーボンナノチューブ形成基板から連続的に引き出す。糸製造部は、引き出し部によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる。状態監視部は、カーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群、又はカーボンナノチューブ糸の状態を監視する。制御部は、状態監視部における監視結果に応じて、引き出し部によって引き出されるカーボンナノチューブ繊維群の量を制御する。
本発明のさらに他の一側面に係る糸製造装置は、カーボンナノチューブ繊維群を凝集させてカーボンナノチューブ糸を製造する糸製造装置である。この糸製造装置は、引き出し部と、糸製造部と、状態監視部とを備える。引き出し部は、カーボンナノチューブ繊維群をカーボンナノチューブ形成基板から連続的に引き出す。糸製造部は、引き出し部によって引き出されたカーボンナノチューブ繊維群を凝集させる。状態監視部は、カーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群、又はカーボンナノチューブ糸の状態を監視する。糸製造部は、気流によってカーボンナノチューブ繊維群に撚りを施す。
【0007】
この糸製造装置では、状態監視部によってカーボンナノチューブ繊維群又はカーボンナノチューブ糸の状態を監視することで、カーボンナノチューブ糸の製造状態を監視することができる。このようにカーボンナノチューブ糸の製造状態を監視することで、例えば、状態監視部によって検出された不具合等に応じた対応が可能となる。
【0008】
状態監視部は、カーボンナノチューブ糸の太さを検知する糸太さ検知センサであってもよい。この場合には、カーボンナノチューブ糸の太さを検知することができるので、糸太さに不具合があるカーボンナノチューブ糸が製造されることを防ぐことができる。なお、糸太さ検知センサとして、カーボンナノチューブ形成基板から引き出されたカーボンナノチューブ繊維群の繊維量に基づいてカーボンナノチューブ糸の太さを検知する、又は、カーボンナノチューブ糸の太さを直接検知するものを用いることができる。
【0009】
糸製造装置は、状態監視部における監視結果に応じて、引き出し部によって引き出されるカーボンナノチューブ繊維群の量を制御する制御部を更に備えていてもよい。この場合には、状態監視部による監視結果をカーボンナノチューブ繊維群の引き出し量にフィードバックさせることができ、監視結果に基づいてカーボンナノチューブ繊維群の引き出し量を制御することで均一な太さのカーボンナノチューブ糸を製造することができる。
【0010】
制御部は、引き出し部におけるカーボンナノチューブ繊維群の引き出し速度を変更することにより、引き出されるカーボンナノチューブ繊維群の量を制御してもよい。この場合には、カーボンナノチューブ繊維群の引き出し速度を変更するだけで、カーボンナノチューブ繊維群の量を容易に制御することができる。
【0011】
糸製造装置は、複数設けられたカーボンナノチューブ形成基板から、カーボンナノチューブ繊維を引き出すカーボンナノチューブ形成基板の枚数を変更する引出枚数変更部を更に備え、制御部は、引出枚数変更部を制御してカーボンナノチューブ繊維群を引き出すカーボンナノチューブ形成基板の枚数を変更することにより、引き出されるカーボンナノチューブ繊維群の量を制御してもよい。この場合は、カーボンナノチューブ繊維群を引き出すカーボンナノチューブ形成基板の枚数を変更するだけで、カーボンナノチューブ繊維群の量を容易に制御することができる。
【0012】
制御部は、状態監視部によりカーボンナノチューブ繊維群又はカーボンナノチューブ糸の走行が検出されない場合、引き出し部の動作と、糸製造部の動作とを停止させてもよい。この場合には、カーボンナノチューブ繊維群又はカーボンナノチューブ糸が走行していないにも関わらず、引き出し部及び糸製造部が動作を続けることが防止され、糸製造装置の好適な制御が可能となる。
【0013】
制御部は、引き出し部によって引き出されるカーボンナノチューブ繊維群の量を制御した後、所望のカーボンナノチューブ糸の太さが得られない場合、引き出し部及び糸製造部の動作を停止させてもよい。この場合には、所望のカーボンナノチューブ糸の太さが得られないにも関わらず、カーボンナノチューブ糸が製造され続けることを防止することができる。
【0014】
糸製造部は、気流によってカーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを施してもよい。ここで、気流を用いる場合には、カーボンナノチューブ繊維群に高速に仮撚りを施すことができる。このため、カーボンナノチューブ形成基板からカーボンナノチューブ繊維群を高速に引き出す必要が生じるが、引き出し速度が速くなると、所望の量のカーボンナノチューブ繊維群を引き出すことができない場合が生じる傾向がある。そこで、気流によってカーボンナノチューブ繊維群に仮撚りを施す糸製造装置に状態監視部を設けてカーボンナノチューブ糸の状態を監視することで、例えば、状態監視部によって検出された不具合等に応じた対応等をより好適に行うことができる。
【0015】
カーボンナノチューブ形成基板を支持する基板支持部を更に備えていてもよい。これによれば、カーボンナノチューブ繊維群を安定して供給することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カーボンナノチューブ糸の製造状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る糸製造装置の概略構成を示す平面図である。
図2図1の制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
図3】第1の変形例に係る糸製造装置の概略構成を示す平面図である。
図4】第2の変形例に係る糸製造装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1に示すように、糸製造装置1は、カーボンナノチューブ繊維群(以下、「CNT繊維群」という)Fを走行させつつCNT繊維群Fからカーボンナノチューブ糸(以下、「CNT糸」という)Yを製造する装置である。糸製造装置1は、基板支持部2、フロントローラ部(引き出し部)3、糸製造部4、ニップローラ部5、糸太さ検知センサ(状態監視部)6、巻取部7、及び、制御部8を含んで構成される。基板支持部2、フロントローラ部3、糸製造部4、ニップローラ部5、糸太さ検知センサ6、及び、巻取部7は、この順序で所定線L上に配置されており、CNT繊維群F及びCNT糸Yは、基板支持部2から巻取部7に向かって走行させられる。なお、CNT繊維群Fは、カーボンナノチューブからなる繊維が複数集合したものである。CNT糸Yは、糸製造部4によってCNT繊維群Fに撚り(仮撚り)が掛けられたものである。
【0020】
基板支持部2は、CNT繊維群Fが引き出されるカーボンナノチューブ形成基板(以下、「CNT形成基板」という)Sを保持した状態で支持する。CNT形成基板Sは、カーボンナノチューブフォレスト(carbon nanotube forest)、或いは、カーボンナノチューブの垂直配向構造体等と称されるものであり、化学気相成長法等によって基板上に高密度且つ高配向にカーボンナノチューブ(例えば、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等)が形成されたものである。基板としては、例えば、プラスチック基板、ガラス基板、シリコン基板、金属基板等が用いられる。なお、CNT糸Yの製造開始時、CNT形成基板Sの交換時等には、マイクロドリルと称される治具等によって、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出すことができる。
【0021】
フロントローラ部3は、駆動ローラ30a、従動ローラ30b、及び、駆動モータ31を備える。駆動ローラ30a及び従動ローラ30bは、外周面同士が当接する。駆動ローラ30aは、駆動モータ31からの駆動力によって回転する。従動ローラ30bは、駆動ローラ30aの回転に伴って従動回転する。駆動ローラ30a及び従動ローラ30bは、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fを挟み込み、駆動ローラ30a及び従動ローラ30bの回転に伴ってCNT形成基板SからCNT繊維群Fを連続的に引き出して、糸状に凝集させる。
【0022】
糸製造部4は、フロントローラ部3によってCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fに、撚りを施す。糸製造部4は、ノズル40、及び、空気供給部41を備える。空気供給部41は、ノズル40に対して空気を供給する。ノズル40は、空気供給部41から供給された空気をCNT繊維群Fの周囲に吹き付けて、気流によってCNT繊維群Fに撚り(仮撚り)を施し、CNT糸Yを生成する。
【0023】
ニップローラ部5は、駆動ローラ50a、従動ローラ50b、及び、駆動モータ51を備える。駆動ローラ50a及び従動ローラ50bは、外周面同士が当接する。駆動ローラ50aは、駆動モータ51からの駆動力によって回転する。従動ローラ50bは、駆動ローラ50aの回転に伴って従動回転する。糸製造部4によって撚りが施されたCNT糸Yは、駆動ローラ30a及び従動ローラ30bによって挟み込まれる。糸製造部4から送り出された直後のCNT糸Yにはばたつきが生じているが、駆動ローラ50a及び従動ローラ50bによって挟み込まれることでばたつきが抑制される。
【0024】
糸太さ検知センサ6は、CNT糸Yの状態を監視するものであり、ここではCNT糸Yの太さを検知する。糸太さ検知センサ6として、例えば、光学式、接触式、或は、静電容量式の糸太さ検知センサ等、CNT糸Yの太さを検知できるものであれば、各種のセンサ等を用いることができる。糸太さ検知センサ6による検知結果は、制御部8に出力される。
【0025】
巻取部7は、巻取管70、及び、駆動モータ71を備える。巻取管70には、CNT糸Yが巻き付けられる。駆動モータ71は、巻取管70を回転駆動し、巻取管70にCNT糸Yを巻き付ける。
【0026】
制御部8は、糸太さ検知センサ6の検知結果に基づいて、駆動モータ31、51及び71の回転速度の制御、及び、空気供給部41におけるノズル40への空気の供給量の制御を行う。より詳細には、糸太さ検知センサ6によってCNT糸Yの太さが所定範囲の下限値よりも細くなったことが検知された場合、制御部8は、駆動モータ31、51及び71の回転速度を遅くし、且つ、空気供給部41からノズル40へ供給される空気の量を少なくすることで、CNT形成基板SからのCNT繊維群Fの引き出し速度を遅くする。CNT形成基板SからのCNT繊維群Fの引き出し速度を遅くすると、CNT繊維群Fの引き出し性能が向上し、引き出した単位長さあたりのCNT繊維群Fの量が多くなる。これにより、CNT糸Yの太さを太くすることができる。
【0027】
一方、糸太さ検知センサ6によってCNT糸Yの太さが所定範囲の上限値よりも太くなったことが検知された場合、制御部8は、駆動モータ31、51及び71の回転速度を早くし、且つ、空気供給部41からノズル40へ供給される空気の量を多くすることで、CNT形成基板SからのCNT繊維群Fの引き出し速度を早くする。CNT形成基板SからのCNT繊維群Fの引き出し速度を早くすると、CNT繊維群Fの引き出し性能が低下し、引き出した単位長さあたりのCNT繊維群Fの量が少なくなる。これにより、CNT糸Yの太さを細くすることができる。
【0028】
このように、制御部8によって、駆動モータ31、51及び71の回転速度の制御、及び、空気供給部41におけるノズル40への空気の供給量の制御を行うことで、CNT糸Yの太さを制御することができる。
【0029】
また、制御部8は、駆動モータ31等及び空気供給部41を制御してCNT形成基板Sから引き出されるCNT繊維群Fの量を制御した後、糸太さ検知センサ6によって所望の糸太さ(所定範囲内の糸太さ)が検知されない場合、駆動モータ31、51及び71の回転を停止させ、且つ、空気供給部41におけるノズル40への空気の供給を停止させる。
【0030】
更に、制御部8は、糸太さ検知センサ6によってCNT糸Yの太さが検知されない場合、即ち、糸切れ等が生じてCNT糸Yの走行が検知されない場合、駆動モータ31、51及び71の回転を停止させ、且つ、空気供給部41におけるノズル40への空気の供給を停止させる。
【0031】
次に、制御部8で行われる処理の流れについて説明する。図2に示すように、制御部8は、糸太さ検知センサ6の検知結果に基づいてCNT糸Yが走行しているか否かを判断する(ステップS101)。CNT糸Yが走行している場合(ステップS101:YES)、制御部8は、糸太さ検知センサ6の検知結果に基づいて、CNT糸Yの太さが所定範囲内であるか否かを判断する(ステップS102)。CNT糸Yの太さが所定範囲内である場合(ステップS102:YES)、制御部8は、駆動モータ31等及び空気供給部41に対して通常時の制御を行う(ステップS103)。この通常時の制御とは、例えば、予め定められた制御値、又は、CNT糸Yの太さが所定範囲内である現在の状態における駆動モータ31等及び空気供給部41の制御値によって、駆動モータ31等及び空気供給部41の制御を行うことをいう。通常時の制御の後、制御部8は、上述のステップS101の処理を行う。
【0032】
一方、CNT糸Yの太さが所定範囲内でない場合(ステップS102:NO)、制御部8は、駆動モータ31等及び空気供給部41に対して異常時の制御を行う(ステップS104)。この異常時の制御とは、上述したように、駆動モータ31等の回転速度及びノズル40への空気の供給量を制御して、CNT糸Yの太さが所範囲内となるように制御することをいう。
【0033】
異常時の制御の後、制御部8は、糸太さ検知センサ6の検知結果に基づいて、CNT糸Yの太さが所定範囲内であるか否かを判断する(ステップS105)。この処理は、異常時制御を行ったことによってCNT糸Yの太さが所定範囲内になったか否かを判断するものである。CNT糸Yの太さが所定範囲内である場合(ステップS105:YES)、制御部8は、上述のステップS101の処理を行う。
【0034】
また、CNT糸Yが走行していない場合(ステップS101:NO)、或は、異常時制御の後、CNT糸Yの太さが所定範囲内にならなかった場合(ステップS105:NO)、制御部8は、駆動モータ31、51及び71の回転を停止させ、且つ、空気供給部41におけるノズル40への空気の供給を停止させる(ステップS106)。
【0035】
本実施形態は以上のように構成され、糸製造装置1では、糸太さ検知センサ6を用いることで、CNT糸Yの製造状態を監視することができる。このCNT糸Yの製造状態を監視することで、例えば、糸太さ検知センサ6によって検出された不具合等に応じた対応が可能となる。
【0036】
CNT糸Yの太さを検知する糸太さ検知センサ6を用いることで、糸太さに不具合があるCNT糸Yが製造されることを防ぐことができる。
【0037】
糸太さ検知センサ6の検知結果に基づいて駆動モータ31等の制御を行う制御部8を備えることで、糸太さ検知センサ6による検知結果をCNT繊維群Fの引き出し量にフィードバックさせることができる。糸太さ検知センサ6の検知結果に基づいてCNT繊維群Fの引き出し量を制御することで均一な太さのCNT糸Yを製造することができる。
【0038】
制御部8は、糸太さ検知センサ6によってCNT糸Yの走行が検出されない場合、駆動モータ31等の動作を停止させる。この場合には、CNT糸Yが走行していないにも関わらず、フロントローラ部3及び糸製造部4等が動作を続けることが防止され、糸製造装置1の好適な制御が可能となる。
【0039】
制御部8は、駆動モータ31等を制御してCNT形成基板Sから引き出されるCNT繊維群Fの量を制御した後、所望のCNT糸Yの太さが得られない場合、駆動モータ31等の動作を停止させる。この場合には、所望のCNT糸Yの太さが得られないにも関わらず、CNT糸Yが製造され続けることを防止することができる。
【0040】
糸製造部4は、気流によってCNT繊維群Fに撚りを施すノズル40を備える。ここで、気流を用いる場合には、CNT繊維群Fに高速に撚りを施すことができる。このため、CNT形成基板SからCNT繊維群Fを高速に引き出す必要が生じるが、引き出し速度が速くなると、所望のCNT繊維群Fの量を引き出すことができない場合が生じる傾向がある。そこで、気流によってCNT繊維群Fに撚りを施す糸製造装置1に糸太さ検知センサ6を設けてCNT糸Yの状態を監視することで、例えば、糸太さ検知センサ6によって検出された不具合等に応じた対応等をより好適に行うことができる。
【0041】
CNT形成基板Sを支持する基板支持部2を備えることで、CNT繊維群Fを安定して供給することができる。
【0042】
次に、第1の変形例について説明する。上記実施形態では、糸太さ検知センサ6を用いてCNT糸Yの太さを検知するものとしたが、糸太さ検知センサ6に代えて、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fを監視してもよい。以下、第1の変形例として、CNT繊維群Fを監視して駆動モータ31等の制御を行う糸製造装置について説明する。図3に示すように、本変形例に係る糸製造装置1Aは、上記実施形態における糸製造装置1の糸太さ検知センサ6に代えて繊維群検出部(状態監視部)9が設けられる。糸製造装置1Aにおける他の構成要素は、実施形態に係る糸製造装置1と同じであるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
繊維群検出部9は、カメラ90、及び、画像処理部91を備える。カメラ90は、CNT形成基板Sから引き出された後、フロントローラ部3よりも前の状態のCNT繊維群Fを撮像する。画像処理部91は、カメラ90によって撮像された画像に基づいて、CNT繊維群Fの量を算出する。この算出は、例えば、既知の画像処理技術を用い、カメラ90によって撮像された画像に基づいて、撮像範囲中においてCNT繊維群Fが占める割合等より、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの量を算出することができる。CNT繊維群Fの量が多い場合にはCNT糸Yの太さが太くなり、CNT繊維群Fの量が少ない場合にはCNT糸Yの太さが細くなる。このため、CNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fの量によって、CNT糸Yの太さを推定することができる。画像処理部91は、算出されたCNT繊維群Fの量に基づいてCNT糸Yの太さを推定し、制御部8に出力する。
【0044】
また、画像処理部91は、カメラ90によって撮像された画像に基づいて、CNT形成基板SからCNT繊維群Fが引き出されていない状態、即ち、CNT糸Yの走行が走行していない状態を検出することができる。
【0045】
制御部8は、上述した実施形態と同様に、CNT糸Yの太さに基づいて駆動モータ31等の制御を行う。これにより、本変形例においても、実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
次に、第2の変形例について説明する。第2の変形例では、基板支持部2が複数のCNT形成基板Sを支持可能であり、CNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sの枚数を変更するものである。図4に示すように、本変形例に係る糸製造装置1Bは、上記実施形態における糸製造装置1に対し、制御部8を制御部8Bに代え、引出枚数変更部10及び基板交換部11を追加したものである。糸製造装置1Bにおける他の構成要素は、実施形態に係る糸製造装置1と同じであるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
基板支持部2は、複数の基板支持体2aを備える。各基板支持体2aは、それぞれCNT形成基板Sを支持する。基板支持体2aは、基板支持部2の表面に対してCNT形成基板Sが起立するように、CNT形成基板Sを支持する。引出枚数変更部10は、基板支持体2aに支持された複数のCNT形成基板Sのうち、CNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sの枚数を変更する。具体的には、新たにCNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sを追加する場合、引出枚数変更部10は、引き出し対象となるCNT形成基板Sに対して引出ノズル10aを伸ばし、引出ノズル10aの吸引力によってCNT形成基板SからCNT繊維群Fを引き出す。引出枚数変更部10は、引き出したCNT繊維群Fを他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fに接触させる。これにより、新たに引き出されたCNT繊維群Fは、他のCNT形成基板Sから引き出されたCNT繊維群Fと共に糸製造部4へ送られる。
【0048】
基板交換部11は、基板支持部2に支持されたCNT形成基板Sのうち、カーボンナノチューブ繊維群が無くなったCNT形成基板Sを、新たなCNT形成基板Sと交換する。
【0049】
制御部8Bは、糸太さ検知センサ6によるCNT糸Yの太さの検知結果に基づいて、引出枚数変更部10を制御し、CNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sの枚数を変更する。具体的には、制御部8Bは、糸太さ検知センサ6によってCNT糸Yの太さが細くなったことが検知された場合、引出枚数変更部10を制御し、CNT繊維群Fを引き出すCNT形成基板Sの枚数を増やす。
【0050】
一方、糸太さ検知センサ6によってCNT糸Yの太さが太くなったことが検知された場合、制御部8Bは、CNT形成基板Sを支持する基板支持体2aを制御し、CNT繊維群Fの引き出し方向に対してCNT形成基板Sを傾けることによってCNT繊維群Fの引き出しを停止させ、CNT繊維群Fが引き出されるCNT形成基板Sの枚数を減らす。なお、CNT繊維群Fの引き出しの停止の方法はこれに限定されず、例えば、切断手段によってCNT形成基板Sから引き出されているCNT繊維群Fを切断して引き出しを停止させる等、各種の方法を用いることができる。
【0051】
このように、制御部8が、糸太さ検知センサ6の検知結果に基づいて引出枚数変更部10及び基板支持体2aを制御することによっても、CNT繊維群Fの引き出し量を制御することができ、均一な太さのCNT糸Yを製造することができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、制御部8は、糸太さ検知センサ6によって検知されたCNT糸Yの太さに基づいて駆動モータ31等を制御するものとしたが、糸太さ検知センサ6によって検出された糸の太さを、CNT糸Yの位置と共に記憶装置に記録させることもできる。これにより、製造されたCNT糸Yにおいて、例えば、所定範囲外の太さの部位の位置を把握することができる。
【0053】
糸太さ検知センサ6又は繊維群検出部9を用いて、CNT糸Yの太さ及びCNT糸Yの走行の有無を検知する以外にも、他の検出装置等を用いて、CNT糸Yの走行速度を検知したり、CNT糸Yが製造された長さ等を検知したりしてもよい。
【0054】
CNT繊維群Fの供給源として、CNT形成基板Sに代えて、カーボンナノチューブを連続的に合成してCNT繊維群Fを供給する装置等を用いてもよい。気流によりCNT繊維群Fに撚りを施す糸製造部4を用いるものとしたが、気流を用いる以外の方法によってCNT繊維群Fに撚りを施す糸製造部を用いてもよい。糸製造部4及び巻取部7に代えて、CNT繊維群Fに撚り(実撚り)を掛けてCNT糸Yを製造しながらCNT糸Yを巻き取る装置等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、カーボンナノチューブ糸の製造状態を監視することができる糸製造装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A…糸製造装置、2…基板支持部、3…フロントローラ部(引き出し部)、4…糸製造部、5…ニップローラ部、6…糸太さ検知センサ(状態監視部)、7…巻取部、8…制御部、9…繊維群検出部(状態監視部)、10…引出枚数変更部、F…CNT繊維群、S…CNT形成基板、Y…CNT糸。
図1
図2
図3
図4