(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗料において、イソシアネート系硬化剤(B)中のイソシアネート基と、水酸基を有するアクリル系共重合体(A)中の水酸基との比、NCO/OHが1/1〜3/1であることを特徴とする、請求項1に記載の加飾フィルム。
前記基材層は、ポリエステル、ポリカーボネート、およびポリメチルメタクリレートからなる群より選択される単層または複層からなることを特徴とする、請求項1または2いずれかに記載の加飾フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書で特定する数値「A〜B」とは、数値Aと数値Aより大きい値であって、且つ数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲を示す。また、本明細書における「シート」とは、JISにおいて定義される「シート」のみならず、「フィルム」も含むものとする。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独でも2種以上を併用してもよい。また「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0021】
本実施形態の加飾フィルムは、少なくともハードコート層と基材層とを含む積層体からなり、以下の条件(I)〜(VII)を満たす。
即ち、
(I)ハードコート層は、水酸基を有するアクリル系共重合体(A)(以下、単に「アクリル共重合体(A)」ともいう)とイソシアネート系硬化剤(B)とを含む塗料の硬化物である。
(II)ハードコート層は、全光線透過率が40%以上、拡散透過率が70%以下である。
(III)ハードコート層は、25℃、50%RHの雰囲気下における引張強度が15〜100N/mm
2である。
(IV)アクリル系共重合体(A)は、
水酸基価が5〜210mgKOH/g、
酸価が0〜20mgKOH/g、
ガラス転移温度が0〜95℃、
質量平均分子量(Mw)が100,000〜1,000,000、および
質量平均分子量/数平均分子量(以下、多分散度ともいう)が2.3〜10である。
(V)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有するモノマー由来のユニットと他のモノマー由来のユニットからなる共重合体である。
(VI)前記水酸基を有するモノマー由来のユニット100mol%中、1つの水酸基を持つモノマー(分子内に水酸基を1つ有するモノマー)由来のユニットの含有率が50mol%以上である。
(VII)アクリル系共重合体(A)中の水酸基の56%以上が1級の水酸基である。
【0022】
上記(I)に特定したとおり、ハードコート層は、水酸基を有するアクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)を含む塗料を塗工して硬化させることにより得る。これにより、熱可塑性のアクリル系樹脂を溶融押出しにより得られるアクリル系樹脂フィルムでは得られない、成型性と表面硬度を両立できる。また、UV硬化型アクリル系樹脂フィルムでは得られない耐光性を確保することができる。
【0023】
<水酸基を有するアクリル系共重合体(A)>
水酸基を有するアクリル系共重合体(A)は、水酸基を有するモノマーと水酸基を有さない他のモノマーとを共重合することにより得られる。即ち、アクリル共重合体(A)は、水酸基を有するモノマー由来のユニットと他のモノマー由来のユニットからなるとの共重合体である。
【0024】
水酸基を有するアクリル系共重合体(A)の重合に供され、前記アクリル系共重合体(A)を構成することとなる水酸基を有するモノマー100mol%のうち、1つの水酸基を持つモノマーの含有率は50mol%以上とする。モノマー仕込み比は、ポリマーの組成比とほぼ等しくなるので、実質上、アクリル共重合体(A)を構成する水酸基を有するモノマー由来のユニット100mol%中、1つの水酸基を持つモノマー由来のユニットの含有率が50mol%以上となる。
【0025】
1つの水酸基を持つモノマーを用いることにより、水酸基を導入したアクリル系共重合体(A)をイソシアネート硬化剤(B)と硬化させた場合、ハードコート層の層内での架橋がより均一となる。2つ以上の水酸基を持つモノマーの利用により水酸基を導入した共重合体は、共重合体の1つの側鎖に複数の水酸基を持つために、イソシアネート系硬化剤(B)との硬化反応が1つの側鎖内で生じる可能性がある。従って、1つの側鎖に1つの水酸基を持つ共重合体の利用による分子間架橋の場合よりも、硬化塗膜の耐摩耗性や耐薬品性が劣る。
また、共重合体の水酸基価が同程度であれば、1つの側鎖に複数の水酸基を持つ共重合体中の水酸基は、1つの側鎖に1つの水酸基を持つ共重合体中の水酸基の場合よりも、主鎖に対し局在化する。従って、1つの側鎖に複数の水酸基を持つ共重合体が分子間架橋したとしても、架橋が不均一になりやすく、硬化塗膜の耐摩耗性や耐薬品性が劣る。
一方、1つの側鎖に複数の水酸基を持つ共重合体の利用により架橋点間距離の大きい部位が生じるため、1つの水酸基を持つモノマーによって水酸基を導入した共重合体と比較すると成型性が良化する傾向にある。
【0026】
1つの水酸基を持つモノマーとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにε−カプロラクトンが付加した化合物などが挙げられ、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにε−カプロラクトン付加した化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン2モル付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン3モル付加物などの炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0028】
2つ以上の水酸基を持つモノマーとしては、例えば、1,1−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、1,2−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートや、一分子中にエポキシ基を有する(メタ)アクリロイル系モノマーに、エポキシ基と反応し得る官能基を一分子中に1個及び水酸基を有する化合物もしくは水を反応させ、エポキシ基の開環により得られるモノマーなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0029】
また、アクリル系共重合体(A)中の水酸基は56%以上を1級の水酸基とする。即ち、アクリル系共重合体(A)中の水酸基に占める1級水酸基の割合が前記範囲となるように、水酸基を有するモノマーの種類と量を選択し、重合する。1級の水酸基は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。2級水酸基や3級水酸基に比して1級水酸基はイソシアネート系硬化剤(B)との反応性に富む。従って、1級水酸基の占める割合が増えることにより、硬化塗膜中に未反応成分が残り難くなり、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性が向上する。
なお、アクリル系共重合体(A)中の水酸基の種類とその量は、アクリル系共重合体(A)の形成に供された水酸基を有するモノマーの各量(mol)と、各モノマーにおける1級と1級以外の各水酸基の官能基とから求めることができる。
【0030】
アクリル系共重合体(A)の水酸基価は5〜210mgKOH/gであることが好ましい。アクリル系共重合体(A)の水酸基価が5mgKOH/g以上であることで、硬化膜の耐久性が確保でき、また、210mgKOH/g以下であることで、硬化膜の成型性が確保できる。基材との密着性の観点から、例えば、ポリカーボネート系基材上にアクリル系共重合体からなる塗料を塗工し積層させる場合は、アクリル系共重合体(A)の水酸基価は、50mgKOH/g以下であることが好ましい。水酸基価が50mgKOH/gであることでハードコート層とポリカーボネート系基材層とが良好に密着する。また、その他の基材を用いる際は、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。後述するようにハードコート層を単離(キャストフィルムという)し、接着剤を用いて基材層と貼り合わせる場合、膜強度の観点から、水酸基は50mgKOH/g以上であることが好ましく、さらには、70mgKOH/g以上であることがより好ましい。
【0031】
水酸基を有しない他のアクリル系モノマーとしては、次に示すような種々のモノマーを挙げることができる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、tert−ブチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0032】
脂環式炭化水素基を有するモノマーとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、 ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジルアクリレート、α−メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0034】
水酸基を有するアクリル系共重合体(A)は、前記した種々のモノマーのうち、メタクリレート系のモノマーを重合してなるものであることが好ましい。
【0035】
モノマーを重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる重合方法によって限定されるものではない。これらの重合方法のなかでは、得られる反応混合物をそのまま使用することができることから、溶液重合法が好ましい。
【0036】
以下に、モノマーを溶液重合させることによって水酸基を有するアクリル系共重合体(A)を調製する場合の一実施態様について説明する。但し、本発明は、その実施態様のみに限定されるものではない。
【0037】
モノマーを溶液重合させる際に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブなどのアルコール系溶媒; 酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。溶媒の量は、単量体混合物の濃度、目的とするアクリル系共重合体の分子量などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0038】
重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。重合開始剤の量はモノマー混合物100質量部あたり、通常、好ましくは0.01〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部である。本発明のように質量平均分子量(Mw)を100,000以上とする場合には、重合開始剤の量は0.05〜0.1質量部とすることが好ましい。
【0039】
モノマーを重合させる際の重合温度は、通常、好ましくは40〜200℃ 、より好ましくは40〜160℃である。本発明のように質量平均分子量(Mw)を100,000以上とする場合には、重合温度は90℃以下が好ましい。
【0040】
モノマーの重合時間は、重合温度、モノマー混合物の組成、重合開始剤の種類およびその量などによって異なるので一概には決定することができないため、それらに応じて適宜決定することが好ましい。
【0041】
アクリル系共重合体(A)は、酸価を有していてもよい。酸価を有することで、水酸基とイソシアネートとの反応が促進されるため、耐久性が高い硬化膜を得ることができる。酸価を付与する場合、アクリル系共重合体(A)の酸価は20mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が20mgKOH/g以下であることで、成型性を損なうことなく耐久性を付与することができる。酸価は15mgKOH/g以下であることがより好ましい。
アクリル系共重合体(A)に酸価を付与する方法としては、酸価を有するモノマーと他のモノマーとを共重合することにより得られる。酸価を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−ヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェートなどが上げられ、中でも(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
【0042】
アクリル系共重合体(A)は、ガラス転移温度が0〜95℃であり、80℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃以上であることにより、良好な耐擦傷性と耐摩耗性が得られ、95℃以下であることにより、良好な成型性が得られる。アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、前記水酸基含有モノマー、酸性官能基含有モノマーとともに共重合する他のモノマーの組成比によって決まる。
【0043】
なお、ここで言うガラス転移温度とは、アクリル系共重合体(A)の溶液を乾燥させて固形分を100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって測定したガラス転移温度のことを示す。本発明のガラス転移温度は、後述する実施例により求めた値をいう。
【0044】
アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は100,000〜1,000,000であり、200,000〜800,000であることが好ましい。一般的に硬いアクリル系共重合体は脆く、伸張性が良いアクリル系共重合体は強度が低くかったりする。そのために前述したように、これまではアクリル系共重合体を加飾フィルムに用いた場合に、成型性と表面硬度等の両立ができなかった。本発明のアクリル系共重合体(A)は、質量平均分子量を100,000以上とすることにより、成型性と表面硬度を兼ね備えることができる。質量平均分子量が1,000,000以下であることにより、ゲル物の生成を防止して、表面平滑性の良好なハードコート層を得ることができる。
【0045】
アクリル系共重合体(A)の多分散度(Mw/Mn)は2.3〜10であることが好ましい。質量平均分子量が同程度の重合体を比べた場合、多分散度が小さい重合体に含まれる低分子量成分は相対的に少なく、多分散度が大きい重合体には低分子量成分が相対的に多く含まれる。重合体中には硬化反応に直接関与しない分子も含まれ得る。硬化反応に直接関与しない分子のうち、低分子量成分は可塑剤として働くため、多分散度により硬化後の膜物性が大きく変化する。
すなわち、多分散度が2.3以上であることで、硬化塗膜の架橋密度を適度に低下し成型性が良化する。一方、多分散度が10以下であることで、硬化塗膜の可塑性を適度に抑制し、耐摩耗性を保つことができる。多分散度は、3〜9であることがより好ましく、さらに、4〜8であることがより好ましい。
【0046】
なお、上記の質量平均分子量・数平均分子量は、後述する実施例で説明する方法により求めた値をいう。
【0047】
アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)を100,000以上とするためには、
(1)開始剤量を少なくする、
(2)反応温度を下げる、
(3)モノマー濃度を上げる、
(4)連鎖移動性の少ない溶媒を用いる、等の方法が採られるが、それらの内の1つもしくは複数を組み合わせてもよい。
【0048】
<イソシアネート系硬化剤(B)>
イソシアネート系硬化剤(B)は、前述の水酸基を有するアクリル系共重合体(A)中の架橋性官能基である水酸基と反応し、架橋した硬化樹脂層を形成する。ハードコート層を形成するための塗料におけるアクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)の配合比は、本発明の水酸基を有するアクリル系共重合体(A):100質量部(固形分)に対して、イソシアネート系硬化剤(B)中のイソシアネート基とアクリル系共重合体(A)中の水酸基との比が、NCO/OH=1/1〜3/1であることが好ましい。水酸基1molに対しイソシアネート基が1mol以上であることにより、アクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)との架橋反応が進行し、単なる熱可塑性アクリル押し出しフィルムでは得られない、耐擦傷性と耐摩耗性の良好なアクリル系樹脂層が得られる。水酸基1molに対しイソシアネート基が3mol以下であることにより、過度の架橋反応を抑制して、深絞り成型が可能となる。
【0049】
イソシアネート系硬化剤(B)は、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有することが重要であり、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート等が挙げられる。中でも、成型加飾フィルムの黄変を防止する点から、脂肪族イソシアネート系硬化剤を用いることが好ましい。イソシアネート系硬化剤(B)は、1種類でもよく、2種類以上の硬化剤を併用してもよい。また、本発明の加飾フィルムの物性に影響を与えない範囲で、他の水酸基と反応する硬化剤を用いてもよい。
【0050】
芳香族イソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4',4"−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
脂肪族イソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
脂環族イソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる
【0053】
これらイソシアネート系硬化剤はさらに、上記イソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、上記イソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、更には上記イソシアネートと公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体として用いることが好ましい。
【0054】
これらイソシアネート系硬化剤(B)の中でも、意匠性の観点から、低黄変型の脂肪族または脂環族のイソシアネートが好ましく、硬化被膜の被膜強度の観点からは、アダクト体が好ましい。より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアダクト体、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のアダクト好ましい。また、これらの混合体も好適に用いられる。
【0055】
また、本発明では、ハードコート層形成用の塗料の保存安定性の観点から、ブロック化イソシアネート硬化剤を用いてもよい。ブロック化イソシアネート硬化剤としては、上記の非ブロック化イソシアネート硬化剤を種々のブロック化剤でブロックしたものが用いられ、ブロック化剤としては80℃〜120℃程度の比較的低温で乖離するものが好ましい。また、非ブロック化イソシアネート硬化剤を用いる場合には、水酸基を有するアクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)とは別々にパッケージングして、使用する直前に混合して使用する方法が好適に用いられる。
【0056】
<ハードコート層を形成するための塗料>
塗料は、アクリル系共重合体(A)、イソシアネート系硬化剤(B)の他、溶剤を含む。溶剤の種類は特に限定されず、公知のものを使用できるが、アクリル系共重合体(A)やイソシアネート系硬化剤(B)の溶解性の観点から、有機溶剤であることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、などの芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒などが挙げられる。
【0057】
基材層として耐溶剤性に乏しいプラスチック(例えば、ポリカーボネートなど)を用いる場合、溶剤は、アルコール、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKともいう)又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMACともいう)の少なくとも1種類を含むことが好ましい。なお、アルコールは、イソシアネート系硬化剤(B)がブロックイソシアネートであれば使うことができ、非ブロックイソシアネートの場合であっても、イソシアネート基との反応性の乏しい高級アルコールであれば使用できる。
これらの溶剤を用いた場合、ポリカーボネート系基材に本発明の塗料を塗工する際に、基材層表面を白くさせることが無く、塗工後の乾燥・硬化時にポリカーボネート系基材が反ることもない。
MIBKまたは/およびPGMACを用いる場合、両者の合計100質量%中、MIBKとPGMACの割合は、MIBK/PGMAC=100/0〜0/100であることが好ましい。そして、用いる有機溶剤100質量%中に、MIBKおよびPGMACは合計で70質量%以上であることが好ましい。
なお、基材層としてポリカーボネートなどを用いる場合であっても、塗料を基材層に直に塗工しない場合には、MIBKやPGMAC以外の溶剤も用いることができる。即ち、塗料を剥離性フィルム上に別途塗工し、溶剤を揮発させ、水酸基を有するアクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)とを硬化させ、ハードコート層を形成した後、接着剤層を用いて前記ハードコート層を基材層に積層する場合には、塗料に含まれる溶剤の選択の自由度は広がる。
【0058】
溶剤の沸点は50℃〜200℃ のものを用いることが好ましい。沸点が50℃よりも低いと、硬化性組成物である塗料を基材フィルムに塗布する際に溶剤が揮発しやすく、固形分が高くなって均一な膜厚で塗布することが難しくなる。沸点が200℃よりも高いと、溶剤を乾燥し難くなる。なお、溶剤は2種以上用いてもよい。
【0059】
本発明では、形成されるハードコート層に耐候性を付与する目的で、塗料に紫外線吸収剤や紫外線安定剤などをさらに含むことができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤などの有機系紫外線吸収剤や、酸化亜鉛などの無機系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン化合物のような紫外線安定剤が好適に用いられる。紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、添加剤として塗料に添加してもよいし、官能基を有するような紫外線吸収剤や紫外線安定剤を、アクリル系共重合体と反応させて用いてもよいし、他の樹脂と反応させて用いてもよい。こられ紫外線吸収剤や紫外線安定剤は、紫外線吸収剤や紫外線安定剤を除く塗料の固形分100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部用いることが好ましい。
【0060】
本発明では、ハードコート層に滑り性を付与する目的で、塗料にスリップ剤を添加することができる。スリップ剤としてはフッ素系スリップ剤、シリコーン系スリップ剤、ワックス系スリップ剤などがあげられる。これらのスリップ剤は塗料の固形分100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部用いることが好ましい。
【0061】
ハードコート層形成用の塗料は比較的厚膜になるように塗布されるため、一般的に厚膜化によって表面不良が生じやすくなる傾向があるが、本発明では、表面不良をより効果的に防止する目的で塗料に表面調整剤などを添加してもよい。表面調整剤としてはBYK社製BYK−300、BYK−315、BYK−320などが挙げられる。これらの表面調整剤は塗料の固形分100質量部に対して、0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部用いることが好ましい。
【0062】
本発明では、成型性を向上させるためにポリオールを添加することができる。ここでのポリオールとは、アクリル系共重合体(A)以外の、イソシアネート基と反応可能な水酸基を2つ以上含有する化合物である。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、1種類又は2種類以上併用して用いることができる。硬化膜の耐久性、成型性の点から、特に、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0063】
前記ポリエステルポリオールとして具体的には、ジカルボン酸の少なくとも1種と、多価アルコール、多価フェノール、またはこれらのアルコキシ変性物等のポリオールの少なくとも1種とをエステル化して得られる末端水酸基含有エステル化合物が挙げられる。ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタル酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシ)安息香酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライ酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等のジカルボン酸等が挙げられる。
【0064】
前記多価アルコールの例としては、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールプロパンエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0065】
前記多価フェノールの例としては、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ヘキシルレゾルシン、トリヒドロキシベンゼン、ジメチロールフェノール等が挙げられる。
【0066】
水酸基を2個以上有する市販品のポリエステルポリオールとしては、例えば、株式会社クラレ製のクラレポリオールP−510、P−1010、P−2010、P−3010、P−4010、P−5010、P−6010、P−2011、P−2012、P−520、P−1020、P−2020、P−1012、P−2012、P−530、P−2030、F−510、F−1010、F−2010、F−3010、N−2010等が挙げられる。
【0067】
前記ポリエーテルポリオールの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。水酸基を二個以上有する市販のポリエーテルポリオールとしては、例えば、保土谷化学工業社製のPTG1000、PTG2000、PTG3000、三菱化学社製の、PTMG650、PTMG850、PTMG1000、PTMG1300、PTMG1500、PTMG1800、PTMG2000、PTMG3000、三洋化成社製のサンニックスPP1000、サンニックスPP2000、サンニックスPP3000等が挙げられる。
【0068】
前記ポリカーボネートポリオールの例としては、下記一般式で表されるポリカーボネートジオールが挙げられる。
H−(O−R−OCO−)
n−ROH
(R:アルキル鎖、ジエチレングリコール等)
水酸基を2個以上有する市販のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、株式会社クラレ製のクラレポリオールC−590、C−1090、C−2090、C−3090等が挙げられる。ポリオール化合物は、1種もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
ポリオールは数平均分子量が500〜7000が好ましく、800〜6000がよりこの好ましい。数平均分子量が500以上であることで、充分な柔軟性を付与することができ、7000以下で高い架橋度を有するため好ましい。また、水酸基価については、10mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましい。水酸基価が10mgKOH/g以上であることで、高い架橋度を有するため摩耗性が向上し、15mgKOH/gであれば、さらに架橋度を高めることができるため、摩耗性がさらに向上する。したがって、数平均分子量が800〜6000、水酸基価が15mgKOH/g以上であることがより好ましい。
【0070】
アクリル系共重合体(A)以外のポリオールの化合物の含有量は、本発明の効果を損なわない程度であれば特に制限はないが、ハードコート層形成用の塗料に含まれるアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、ポリオールは200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、さらに、50質量部以下であることがより好ましい。ポリオール含有量がアクリル系共重合体(A)100質量部に対して200質量部以下であることで、耐久性を著しく損なわずに大幅に成型性を向上させることができる。
【0071】
本発明では、本発明の目的が阻害されない範囲内で、ハードコート層形成用の塗料に、前記水酸基を有するアクリル系共重合体(A)以外の他の樹脂や、有機系もしくは無機系の微粒子や、有機溶媒などが含まれていてもよい。前記水酸基を有するアクリル系共重合体(A)以外の他の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂や、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、フェノール樹脂、セルロースエステル樹脂などを挙げることができる。これら樹脂は、架橋性官能基を有してもよいし、架橋性官能基を有さないものでもよい。好ましくは架橋性官能基を有していた方がよい。
【0072】
本発明では、ハードコート層形成用の塗料には有機系もしくは無機系の微粒子を含有することにより、ハードコート層の表面を凹凸にしてブロッキング防止効果を付与したり、表面の凹凸によるマット感を出したり、皮膜に強度を与えて、傷付き難くしたりすることができる。これら微粒子は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01〜20質量部含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部含有することが好ましい。含有量が0.01重量部以上とすることにより上記効果が期待でき、20質量部以下とすることにより成型性に優れ、透明性を阻害しない丈夫なハードコート層を形成できる。
【0073】
有機系微粒子の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂などのポリマー微粒子、あるいは、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、 殻粉、澱粉などが挙げられる。有機系粒子は1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0074】
無機微粒子の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ケイ素、アンチモン、などの金属の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩などを含有する無機系微粒子が挙げられる。さらに詳細な具体例としては、シリカ、シリカゲル、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、マイカ、ガラス繊維、ガラス粉末などを含有する無機系粒子が挙げられる。無機系粒子は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0075】
また、ハードコート層形成用の塗料には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤は、水酸基を有するアクリル系共重合体(A)中の水酸基とイソシアネート系硬化剤(B)とのウレタン結合反応を促進する触媒としての役割を果たす。硬化促進剤としては、スズ化合物、金属塩、塩基などが上げられ、具体例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、塩化スズ、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。これらは、単独または組み合わせて用いることができる。
【0076】
ハードコート層形成用の塗料には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤をさらに添加してもよい。
【0077】
ハードコート層形成用の塗料は、以下のようにして得ることができる。例えば、容器に水酸基を有するアクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)と溶剤(有機溶剤が好ましい)とを所定量計量・配合し、攪拌機で充分に撹拌することにより、ハードコート層形成用の塗料を得ることができる。アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は1,000,000以下が好ましい。Mwが1,000,000を超えると塗料の粘度が高くなり、塗工時にゲル物に由来するフィシュアイ等が発生しやすくなる。溶剤は塗料の粘度と流動性を調整する役割を担う。アクリル系共重合体(A)の重合時の溶媒をそのまま用いてもよいし、塗料調整時にさらに添加することもできる。
【0078】
ハードコート層形成用の塗料は、基材層や剥離性フィルムに塗工する前に脱泡することが好ましい。塗料中に泡が含まれていると、基材層や剥離性フィルムに塗工する際に、形成中の塗膜に泡が混入し、乾燥ないし硬化後の塗膜の表面に泡が割れた痕が残ることがある。脱泡の方法としては、撹拌後に泡が消えるまで待ってもよいし、真空脱泡器などで強制的に脱泡してもよい。
【0079】
<ハードコート層>
前述の通り、ハードコート層は、アクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)とを含む塗料の硬化物からなる。また、ハードコート層は、全光線透過率が40%以上、拡散透過率が70%以下である。全光線透過率や拡散透過率が大きいことによって、基材層と成型体等の被加飾体本体との間やハードコート層と基材層との間に着色層や印刷層を設けた場合、ハードコート層を通して、着色層や印刷層をより鮮明に見ることができる。このような視認性向上の点から、全光線透過率は60%以上、拡散透過率は50%以下であることがより好ましい。
【0080】
本発明におけるハードコート層の25℃、50%RH雰囲気化における引張強度は15〜100N/mm
2である。引張強度が15N/mm
2以上であることで、成型時のハードコート層のひび割れや白化を抑制することができ、また、引張強度が100N/mm
2以下であることで、成型時の被加飾体への形状追随性に優れ、加飾フィルムが被加飾体から浮くなどの成型不良を抑制することができる。引張強度は、20〜100N/mm
2であることがより好ましい。
【0081】
また、剥離性フィルム上にハードコート層を形成し、前記ハードコート層を剥離性フィルムから剥がし、単離した後、ラミネート接着剤を介して基材層と貼り合わせる。このときの引張強度は30N/mm
2以上であることが好ましい。アクリルキャストフィルムとして扱う際、引張強度が30N/mm
2以上あることで後述する剥離処理した基材フィルムから硬化したアクリルキャストフィルムを速やかに滞りなく剥離することができる。一方、基材層に塗液を直接塗工してハードコート層を設ける場合は、この限りではない。
【0082】
なお、本発明の25℃、50%RH雰囲気下における引張強度は、後述する実施例に記載した方法で測定した値である。
単離したハードコート層(キャストフィルムともいう)に力を加えて引っ張って、応力−歪曲線を描くと、初めは、応力に対して一定の歪を示すが、応力がある点に達すると、歪は大きくなるのに対して、応力は低下する。この時、フィルムが降伏したという。この点の応力を「降伏値」と呼び、本発明における引張強度とした。降伏点に至るまでの変形は弾性変形であり、荷重を除去すれば形状は元に戻るが、降伏点以後は塑性変形となり、荷重を除去しても弾性変形分以上に戻ることはない。
【0083】
本発明のハードコート層の25℃、50%RHの雰囲気下での破断時における伸び率は10%以上であることが好ましい。伸び率が10%以上であることで、成型時の型に追従し容易に成型することができる。伸び率の上限は特にないが、成型性と耐久性の両立の観点から伸び率は10〜200%であることが好ましい。本発明における伸び率とは、試料の元の長さに対してどの程度伸長したかを示すものであり、例えば、0%が全く伸びていないことを示し、100%は試料が元の2倍の長さ(元の長さが10mmであれば、10mm伸ばされ全体の長さが20mm)まで伸びたことを示す。
【0084】
ハードコート層の厚みに特に限定はないが、成型性と耐久性の観点から5〜200μmであることが好ましく、さらに10〜100μmであることが好ましい。
【0085】
<基材層>
本発明の基材層は、ハードコート層や後述するその他の着色層や接着剤層などを支持する役割を果たす。
基材層は、支持体としての役割を果たすフィルムであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、アルミニウム箔、紙などが挙げられ、1種または複数種類が積層されたものを使用することができる。特に、透明性、成型性の観点から、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムであることが好ましい。これらのフィルムにおいても、単独で用いることも複数種類が積層されたものを用いることもでき、例えば、ポリカーボネート(PC)上にポリメチルメタクリレート(PMMA)が共押し出しされたPMMA/PCフィルムや、ポリカーボネートフィルムとポリエステルフィルムが接着剤でラミネートされたフィルムなどを用いることもできる。なお、ポリカーボネートフィルムは成型性が良く、ポリエステルフィルムは耐溶剤性(有機溶剤、日焼け止めクリームなどに対して)が良く、ポリメチルメタクリレートフィルムは硬度が良いという特徴があるため、使用用途によりフィルムやその組み合わせを適宜選択して使用することができる。
また、全光線透過率、拡散透過率に関して、基材層もハードコート層と同様に、全光線透過率40%以上、拡散透過率が70%以下であることが好ましいが、例えば、着色層がハードコート層と基材層との間に設けられる構成などではこの限りではない。
【0086】
基材層のハードコート層と対向していない非対向面側には、剥離性フィルムを保護フィルムとして積層してもよい。特に、ポリカーボネート系基材は、傷付きやすいため使用直前まで保護フィルムにて裏側を保護しておくことが好ましい。
【0087】
基材層の厚みに特に限定はないが、成型性と耐久性の観点から、5〜1000μmであることが好ましく、さらに、10〜500μmであることが好ましく、さらには10〜400μmであることが好ましい。基材層は厚みの異なる複数種類の基材を組み合わせてもよく、その場合は組み合わせた各基材層の合計の厚みが5〜1000μmであることが好ましい。
【0088】
<加飾フィルムの製造方法>
本発明の加飾フィルムの製造方法の一例について説明するが、本発明の加飾フィルムの製造方法は、以下の方法に限定されないことは言うまでもない。
まず、上述したハードコート層を形成するための水酸基を有するアクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)とを含む熱硬化性の塗料であって、当該塗料の硬化物であるハードコート層の25℃、50%RHの雰囲気下における引張り強度が15〜100N/mm
2となる塗料を用意する。そして、前記塗料を塗工して塗工層を得、この塗工層の硬化塗膜を有する積層体を形成する工程を含む。
【0089】
塗料の塗工は、(α)積層体からなる加飾フィルムを構成するいずれかの層に塗料を塗工する方法と、(β)剥離フィルムに塗工する方法が例示できる。
【0090】
上記(α)の方法の一例として、基材層に塗工する例について説明する。まず、ハートコート層形成用の塗料を基材層の一方の面に塗工、硬化する。具体的には、基材層に本発明の塗料を塗工し、すぐに乾燥オーブン中に投入し、溶剤を揮発させる。溶剤が揮発したあと、エージングを行いアクリル系共重合体(A)中の水酸基とイソシアネート系硬化剤(B)中のイソシアネート基とを反応させ硬化させてハードコート層を得ることができる。
【0091】
上記(β)の方法の一例として、接着剤を用いる例について説明する。まず、剥離性フィルム上にハードコート層形成用の塗料を塗工し、乾燥オーブン中に投入し、溶剤を揮発させる。溶剤が揮発した後、エージングを行いアクリル系共重合体(A)中の水酸基とイソシアネート系硬化剤(B)中のイソシアネート基とを反応させ、硬化塗膜(キャストフィルム)を得る。次いで、ラミネート用接着剤をキャストフィルム又は/および基材層に塗工し、ラミネート用接着剤が溶剤を含む場合はその溶剤を揮発させた後に、キャストフィルムと基材層をラミネートしてハートコート層と基材層とを有する加飾フィルムを得ることができる。剥離性フィルムはラミネートの前後で適宜剥離する。このように、ハードコート層を形成後に、他の基材層等の構成層と貼り付ける場合、アクリル系共重合体(A)の水酸基価は50〜210mgKOH/gであることがより好ましい。また、引張り強度が30〜100N/mm
2であることがより好ましい。
【0092】
前記塗料を塗布する方法としては、上記いずれの方法に対しても公知の方法を用いることができる。具体的には、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティングなど挙げることができる。
【0093】
前記塗料は、50〜200℃にて乾燥することが好ましく、70〜120℃で乾燥することがより好ましい。さらにオーブンを数段階のゾーンに区分けして、例えば、第一ゾーンは50℃、第二ゾーンは70℃、第三ゾーンは100℃等のように、低温から高温へ傾斜するようにオーブン温度を設定することが好ましい。オーブン中に滞留している時間は、通常1分から10分程度である。温度を固定したオーブンを数台用意し、其々の温度のオーブン中で数分間ずつ乾燥させる方法も取られることがある。
【0094】
乾燥後、通常は室温〜100℃程度の環境下、1日〜10日間、水酸基とイソシアネート基との反応を進行(エージング)させる。オーブンの温度を150〜200℃程度に高くして、オーブン中を通過する間に水酸基とイソシアネート基との反応を終了させる方法も選択できるが、基材層への熱的ダメージの点から低温でエージングさせることが好ましい。
【0095】
オーブンにて溶剤を乾燥し、取り出した積層体は、枚葉でエージングされる場合もあるし、ロール状に巻き取ってエージングされる場合もある。いずれの場合も、エージング前の塗膜にタックが残り、基材層の反対面と重なるとブロッキング現象を生じる場合がある。このようなブロッキング現象を防止するために、枚葉で積み重ねる際や、ロール状に巻き取る際に、塗膜にブロッキング防止用のセパレーターを積層しておくことができる。セパレーターとしては、離形処理を施したPETフィルムや、未延伸のプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が好適に用いられる。
【0096】
本発明の加飾フィルムは、後述するようにさらに接着剤層、着色層を設けることができる。接着剤層は、前述のように、ハードコート層と基材層との間に設けハードコート層と基材層とを貼り合わせるために用いる他、複数の基材層を用いる場合や、着色層を用いる場合に、種々の層を貼り合せるためにも用いられる。
例えば、接着剤層を用いて第一基材層と第二基材層とを貼り合わせることができる。あるいは、基材層のハードコート層側とは反対側に接着剤層を設け、加飾フィルムと樹脂成型体等の被加飾体とを貼り合わせることもできる。
【0097】
接着剤層を構成する接着剤は特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば熱硬化型接着剤、感圧接着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられ、1種類又は2種類以上併用して用いることができる。
これら接着剤を構成する成分は特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン―酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、天然ゴムなどが挙げられ1種類又は2種類以上併用して用いることができる。
【0098】
接着剤層を設ける方法を説明する。接着剤層は、溶剤を含む接着剤を基材層やハードコート層に直接塗工・乾燥して設ける方法や、溶剤を含まない接着剤を熱で軟化させ、基材層やハードコート(HC)に塗工・冷却し設ける方法や、溶剤を含む、もしく含まない接着剤を剥離性フィルム上に上記方法で塗工し、接着性シートを設けた後、接着の対象物の間に前記接着性シートを挟む方法などにより設けることができる。接着剤層を設けた後に、さらにエージング処理を施してもよい。また、接着剤層の厚さは特に限定されず、接着力が確保できる厚みを任意に設定して設けることができるが、接着力、耐久性とのバランスから、1〜200μmの範囲であることが好ましい。
【0099】
前記接着剤を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、具体的には、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティングなど挙げることができる。
【0100】
本発明の加飾フィルムはさらに着色層を設けてもよい。着色層は、加飾フィルムに意匠性を持たせるために積層され、ハードコート層と基材層との間、基材層のハードコート層と他方の面など、加飾成型体とした際に、最外層にならない位置であれば自由に設けることができる。また、本発明で言う着色とは、単一の色以外にも、絵・図柄、金属調、文字、模様など様々な装飾を含む意であり、異なる着色層を複数積層させてもよい。
【0101】
着色層を得る方法を説明する。着色層は着色塗料を基材層に塗工し乾燥して得る方法、基材層に塗工、乾燥、エージングを行い得る方法、基材層に塗工し光照射して得る方法、基材層に印刷し乾燥して得る方法、基材層に印刷し光照射を行い得る方法、基材層に金属を蒸着して得る方法などが挙げられる。着色層の厚さは、意図した色、柄などが認識できる厚みであれば特に限定されないが、成型性の観点から500μm以下であることが好ましい。
【0102】
前記着色層を基材上に設ける方法としては、公知の方法を用いることができ、具体的には、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティング、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、蒸着など挙げることができる。
【0103】
本発明の加飾フィルムは、真空成型、圧空成型、TOM成型、射出成型、インモールド成型、プレス成型、スタンピング成型など様々な成型方法で加飾成型体を作製することができる。
加飾フィルム製造時のブロッキング防止、傷付防止、成型時の傷付防止、金型跡防止、成型後加飾成型体が使用に供されるまでの汚れ防止の点から、ハードコート層上に剥離可能な保護フィルムをハードコート層上にさらに設けることができる。
また、接着剤層を用いて、被加飾対象である被加飾体に加飾フィルムを貼り付ける場合は、ブロッキング防止の観点から、加飾フィルムの内側に設けられる接着剤層上に剥離可能な保護フィルムをさらに設けることもできる。
【0104】
本発明で用いることのできる保護フィルムは特に限定されず、公知のプラスチックフィルム、紙フィルムを適宜選択して用いることができる。保護フィルムとして用いることのできるフィルムとして、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、アルミニウム箔、紙などが挙げられるが、限定されるものではなく、1種または複数種類が積層されたものを使用することができる。また、保護フィルムは上記プラスチックフィルム上に、剥離処理、または、粘着処理が施されていてもよい。
【0105】
本発明の加飾フィルムに保護フィルムを設ける方法としては、基材層に塗液を塗布、乾燥させて、ハードコート層や接着剤層を設けた際に、保護フィルムを貼り合わせる方法や、保護フィルム上に塗液を塗布、乾燥、必要に応じてエージングを行いハードコート層や接着剤層を設けた後に、基材層や加飾フィルムと貼り合わせる方法などが挙げられる。なお、ハードコート層を先に保護フィルム上に設けた場合は、必要に応じて接着剤を用いて貼り合わせてもよい。
【0106】
本発明の加飾フィルムには様々な態様がある。その態様の具体例を図に基づいて説明する。
図1に、ハードコート層10と基材層1の2層構成からなる加飾フィルム101を示す。
図2に、ハードコート層10と2層の第一基材層1a、第二基材層1bの積層体からなる加飾フィルム102を示す。第一基材層1a、第二基材層1bは、例えば共押出しで設けることができる。
図3に、ハードコート層10と基材層1との間に接着剤層2が挟持された加飾フィルム103を示す。
図4に、ハードコート層10と基材層1とを有し、基材層1のハードコート層10との非対向側に着色層3を有する加飾フィルム104を示す。
図5に、ハードコート層10と基材層1と着色層3とを有し、ハードコート層10と基材層1との間に着色層3が挟持された積層体からなる加飾フィルム105を示す。
図6に、ハードコート層10と基材層1と接着剤層2と着色層3を有し、ハードコート層10と基材層1との間に接着剤層2が挟持され、基材層1の接着剤層2との非対向面側に着色層3を有する加飾フィルム106を示す。
図7に、ハードコート層10と第一基材層1a、第二基材層1bと第一の接着剤層2aと第二の接着剤層2bとを有し、第一の接着剤層2aがハードコート層10と第一基材層1aとの間に、第二の接着剤層2bが第一基材層1aと第二基材層1bに位置する加飾フィルム107を示す。
図8に、ハードコート層10と基材層1と着色層3と接着剤層2とを有し、基材層1の反対側(ハードコート層との非対向面側)に着色層3が位置し、ハードコート層10と接着剤層2とがそれぞれ表面に位置する態様を示す。
【0107】
<加飾成型体>
本発明の加飾成型体とは、前記加飾フィルムで表面が覆われた成型体等の被加飾体であり、被覆される被加飾体の素材に特に限定はなく、公知の素材を使用することができる。
被加飾体として用いることのできる素材の例として、木材、紙、金属、プラスチック、繊維強化プラスチック、ゴム、ガラス、鉱物、粘土などあげることができ、1種類又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
プラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステル、ポリテトラフルオロロエチレンなどが挙げられ、1種類又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
繊維強化プラスチックとしては、例えば、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチック、ポリエチレン繊維強化プラスチックなどが挙げられ、1種類又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
金属としては、例えば、熱延鋼、冷延鋼、亜鉛メッキ鋼、電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、合金化溶融亜鉛めっき鋼、亜鉛合金めっき鋼、銅めっき鋼、亜鉛―ニッケルめっき鋼、亜鉛―アルミめっき鋼、鉄−亜鉛メッキ鋼、アルミメッキ鋼、アルミニウム−亜鉛メッキ鋼、スズめっき鋼等、アルミ、ステンレス鋼、銅、アルミ合金、電磁鋼などが挙げられ、1種類又は2種類以上組み合わせて使用することができる。また、金属の表面に防剤層などが設けられていてもよい。
【0108】
本発明の加飾フィルムと被加飾体と一体化する方法に特に限定はなく、公知の一体化方法で一体化させることができる。一体化方法として、例えば、インサート成型、インモールド成型、真空成型、圧空成型、TOM成型、プレス成型などを用いることができる。
【0109】
例えば、本発明の加飾フィルムを所望の形状に予備成型した後、ハードコート層側が最外層になるように、プラスチックや繊維強化プラスチックを射出成型し、加飾成型体を得ることもできる。
あるいは、プラスチック、繊維強化プラスチック、金属から成型体を得ておき、該成型体の表面に、本発明の加飾フィルムを、もしくは加飾フィルム所望の形状に予備成型した予備成型体を、ハードコート層側が最外層になるように貼り付け、得ることもできる。
【0110】
本発明の加飾成型体は、前記加飾フィルムのハードコート層側が最外層に位置する。前述のように、加飾フィルムのハードコート層は塗工、乾燥、エージング、成型一体化などの各工程で生じうる、外観不良を保護するための保護フィルムが設けられていてもよいが、得られた加飾成型体が使用される場面においては、前記保護フィルムは剥離されていることが好ましい。
【0111】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、アクリル系共重合体(A)中の水酸基の56%以上を1級の水酸基とすることにより、耐摩耗性が高く、しかも耐日焼け止めクリーム性に優れた塗膜が得られることがわかった。これは、前記条件にすることにより、架橋を塗膜内でより均質に進行できることによるものと考えている。
【0112】
本発明の加飾フィルムによれば、光硬化性塗膜ではなく、熱硬化性塗膜を用いているので、被覆する被加飾体の形状やサイズによらずに一括して硬化を進行させることができるので、汎用性が高く、生産性に優れる。また、アクリル系共重合体として上述した(IV)〜(VII)を満たし、且つ上述した(I)〜(III)を満たすことにより、優れた成型性を実現できるのみならず、優れた意匠性、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性を有する。
【0113】
本発明の加飾フィルムを用いて製造した加飾成型体は、金属調やピアノブラック調のインパネデコレーションパネルや、シフトゲートパネル、ドアトリム、エアコン操作パネル、カーナビゲーション等の自動車の内装部品として、あるいは自動車前後部のエンブレムや、タイヤホイールのセンターオーナメント、ネームプレート等の外装部品として用いられる。
また、自動車内外部品以外に、家電、スマートキー、スマートフォンや携帯電話、ノートパソコン等の外装材に限らず、ヘルメットやスーツケース等の外装材料、カーナビゲーションシステムや液晶テレビ等の液晶画面を保護する保護シート、蓄電デバイス等の外装材、テニスラケットやゴルフシャフトなどのスポーツ用品、住宅用のドアやパーテーション、壁材等の建材等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は質量部を、%は質量%(但し伸び率での%は除く)をそれぞれ示す。
【0115】
合成例A−1「アクリル系共重合体A−1溶液」
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(MIBK)を150部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら昇温した。フラスコ内の温度が74℃になったらこの温度を合成温度として維持し、メタクリル酸メチル3部、メタクリル酸n−ブチル82.54部、アクリル酸−4−ヒドロキシブチル12.85部、メタクリル酸0.61部、ファンクリルFA−711MM(日立化成社製、メタクリル酸−ペンタメチルピペリジニル)を1部、アゾビスイソブチロニトリル0.1部を混合したモノマー溶液を2時間掛けて滴下した。モノマー滴下終了1時間後から1時間毎に、アゾビスイソブチロニトリルを0.02部ずつ加えて反応を続け、溶液中の未反応モノマーが1%以下になるまで反応を続けた。未反応モノマーが1%以下になったら冷却して反応を終了し、固形分約40%のアクリル系共重合体A−1溶液を得た。アクリル系共重合体A−1は、ガラス転移温度:15℃、酸価:4mgKOH/g、水酸基価:50mgKOH/g、数平均分子量:70,000、質量平均分子量:150,000、多分散度:2.3であった。
固形分、ガラス転移温度(Tg)、酸価、水酸基価、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、多分散度(Mw/Mn)は、下記に記述する方法により測定した。
【0116】
《固形分の測定》
直径55mm、深さ15mmの蓋付きアルミ皿の質量を、小数点以下4桁まで測定する。アルミ皿に樹脂溶液を約1.5g採取し、直ちに蓋をして素早く正確に質量を測定する。蓋を外した状態で、150℃のオーブンに入れて10分間乾燥させる。室温まで冷却してから、アルミ皿と蓋の質量を測定し、下記式で固形分を算出する。
固形分(%)=(乾燥後の質量−アルミ皿の質量)÷(乾燥前の質量−アルミ皿の質量)×100
【0117】
《ガラス転移温度(Tg)の測定》
溶剤を乾燥させ、固形分100%とした
樹脂約10mgのサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとを示差走査熱量分析(DSC)装置にセットし、これを窒素気流中で液体窒素を用いて、予測されるガラス転移温度よりマイナス50℃の温度まで冷却処理し、その後、昇温速度10℃/分で、予測されるガラス転移温度よりプラス50℃の温度まで昇温してDSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度とした。
【0118】
《酸価(AV)の測定》
共栓付き三角フラスコ中に樹脂溶液を約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液50mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
酸価(mgKOH/g)=(a×F×56.1×0.1)/S
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)
F:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0119】
《水酸基価(OHV)の測定》
共栓付き三角フラスコ中に樹脂溶液を約1g精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液50mLを加えて溶解する。更にアセチル化剤( 無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、100℃に加熱して約1時間攪拌する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。別途、空試験として、トルエン/エタノール混合液のみにアセチル化剤を加えて、100℃1時間加熱した溶液について、0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした。
水酸基価(mgKOH/g)={(b−a)×F×56.1×0.5}/S+D
S:試料の採取量×(試料の固形分/100)(g)
a:0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)
b:空実験の0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)
F:0.5mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0120】
《数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の測定》
昭和電工社製 Shodex GPC−104/101システムを用いて測定した。
カラム Shodex KF−805L+KF−803L+KF−802
検出器 示差屈折率計(RI)
カラム温度 40℃
溶離液 テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
試料濃度:0.2%
検量線用標準試料 TSK標準ポリスチレン
得られたMnおよびMwから以下の式によって多分散度を求めた。
多分散度=Mw/Mn
【0121】
*合成例A−2〜A−45「アクリル系共重合体A−2〜A−45溶液」
表1〜4の組成に従って反応を行い、アクリル系共重合体A−2〜A−45溶液を得た。ガラス転移温度、酸価、水酸基価、数平均分子量、質量平均分子量、多分散度を表1〜4に示す。なお、固形分はすべて40%となるよう調整した。また、表中の記号は以下のとおりである。
・MMA:メタクリル酸メチル
・MAA:メタクリル酸
・CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
・BA:アクリル酸−n−ブチル
・n−BMA:メタクリル酸−n−ブチル
・2−EHMA:メタクリル酸−2−エチルヘキシル
・2−HEMA:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル
・4−HBA:アクリル酸−4−ヒドロキシブチル
・GLMA:メタクリル酸グリセリル
・FA−711MM::メタクリル酸−ペンタメチルピペリジニル
・FA−712HM:メタクリル酸−テトラメチルピペリジニル
・2,3−DHMA:メタクリル酸−2,3−ジヒドロキシブチル
・AIBN::アゾビスイソブチロニトリル
また、表1〜4の「1つの水酸基を持つモノマーの含有率」とは、アクリル系共重合体(A)の共重合体を構成する水酸基を有するモノマー100mol%中において、化合物に1つの水酸基を持つモノマーの含有率をいうものとする。また、同表の「1級OH基の割合」とは、アクリル系共重合体(A)中の水酸基における1級水酸基の割合をいう。
【0122】
*比較例用合成例A’−101「アクリル系共重合体A’−101溶液」
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、酢酸エチルを100部仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら77℃まで昇温した。フラスコ内の温度が77部になったら、メタクリル酸メチル10部、メタクリル酸n−ブチル86部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル2部、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル2部、アゾビスイソブチロニトリル0.04部を混合したモノマー溶液を2時間掛けて滴下した。モノマー滴下終了1時間後から1時間毎に、アゾビスイソブチロニトリルを0.02部ずつ加えて反応を続け、溶液中の未反応モノマーが1%以下になるまで反応を続けた。未反応モノマーが1%以下になったら冷却して反応を終了し、固形分約50%のアクリル系共重合体A’−101溶液を得た。アクリル系共重合体A’−101は、ガラス転移温度:28℃、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:16mgKOH/g、数平均分子量:145,000 、質量平均分子量450,000、多分散度:3.1であった(表5参照)。
なお、表5中の記号は表1〜4において説明したとおり、または以下のとおりである。
・2−HBMA:メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル
・2,3−DHPM::メタクリル酸−2,3−ヒドロキシプロピル
【0123】
*比較例用合成例A’−102「アクリル系共重合体A’−102溶液」
表5に示す組成で、比較例用合成例A’−101と同様の方法にて合成を行い、アクリル系共重合体A’−102溶液を得た。
アクリル系共重合体A’−102は、ガラス転移温度:28℃、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:19mgKOH/g、数平均分子量:52,000 、質量平均分子量150,000、多分散度:2.9であった。
【0124】
*比較例用合成例A’−103「アクリル系共重合体A’−103溶液」
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸n−ブチル30部、メタクリル酸−2−エチルヘキシル20部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10部、トルエン100 部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.08部加えて2 時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2 時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2 時間重合反応を行い、固形分約50%のアクリル系共重合体A’−103溶液を得た。アクリル系共重合体A’−103は、ガラス転移温度:24℃、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:35.5mgKOH/g、数平均分子量:75,000 、質量平均分子量165,000、多分散度:2.2であった。
【0125】
*比較例用合成例A’−104「アクリル系共重合体A’−104溶液」
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メタクリル酸メチル6.7部、メタクリル酸n−ブチル63.9部、メタクリル酸0.6部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル27.8部、ファンクリルFA−711MM(日立化成社製、メタクリル酸−ペンタメチルピペリジニル)1部、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2―アセタート500部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを2.5部加えて2時間重合反応を行った。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを転化率が98%以上となるまで1時間毎に0.5 部加えて重合反応を行い、転化率が98%以上を確認後、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2―アセタート250部で希釈し、固形分約40%のアクリル系共重合体A’−103溶液を得た。
アクリル系共重合体A’−104は、ガラス転移温度:34℃、酸価:4mgKOH/g、水酸基価:120mgKOH/g、数平均分子量:18,000 、質量平均分子量210,000、多分散度:12であった。
【0126】
*比較例用合成例A’−105〜A’−109「アクリル系共重合体A’−105〜A’−109溶液」
表5の組成に従い、合成例A−1と同様の反応を行い、アクリル系共重合体A’−105〜A’−109溶液を得た。ガラス転移温度、酸価、水酸基価、数平均分子量、質量平均分子量、多分散度を表5に示す。なお、固形分はすべて40%となるよう調整した。
【0127】
*比較例用合成例A’−110「アクリル系共重合体A’−110溶液」
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン70部及びメタクリル酸メチル20部を仕込み80℃ に昇温した。その後メタクリル酸メチル73.5部、メタクリル酸ブチル1部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル5部、メタクリル酸0.5部およびアゾビスイソブチロニトリル0.3部を均一に溶解攪拌した混合液を2時間掛けて滴下し、さらに80℃で2時間保温した。その後、メチルイソブチルケトン75部およびアゾビスイソブチロニトリル0.5部を均一に溶解攪拌した混合液を1時間掛けて滴下し、さらに80℃で4時間保温した。その後、50℃に冷却し、メチルイソブチルケトンを88.3部加えて固形分約30%のアクリル系共重合体A’−110溶液を得た。
アクリル系共重合体A’−110は、ガラス転移温度:101℃、酸価:3.25mgKOH/g、水酸基価:20mgKOH/g、数平均分子量:29,000 、質量平均分子量130,000、多分散度:4.5であった。
【0128】
*比較例用合成例A’−111「アクリル系共重合体A’−111溶液」
表5の組成に従い、合成例A−1と同様の反応を行い、アクリル系共重合体A’−111溶液を得た。ガラス転移温度、酸価、水酸基価、数平均分子量、質量平均分子量、多分散度を表5に示す。なお、固形分は40%となるよう調整した。
【0129】
*ハードコート用塗料「HC−1」の調液、および硬化塗膜の作製
アクリル系共重合体(A−1)100質量部(固形分)を含む合成例1で得られたアクリル系共重合体(A−1)溶液に、ポリイソシアネート化合物としてデュラネート「P301−75E」(旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート体、以下、硬化剤1という)59.9質量部(固形質量)を加え、さらに固形分が30%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えて撹拌し、ハードコート用塗料(HC−1)を得た。
ドクターブレードを用いて、ハードコート用塗料(HC−1)を予め剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの剥離面に塗布し、100℃のオーブン中で1分間乾燥して溶剤類を揮発させた。乾燥後の膜厚が50μmとなるようにドクターブレードを選択した。次いで50℃の恒温室に4日間放置してアクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物との反応を進行(エージング)させて、剥離性PETフィルム上に硬化塗膜を形成した。
得られた硬化塗膜について、後述する方法に従い、全光線透過率、拡散透過率、降伏値、伸び率を求めた。
【0130】
*ハードコート用塗料「HC−1〜HC−54」の調液、および硬化塗膜の作製
表6〜7に示す組成に従い、ハードコート用塗料HC−1と同様にして、ハードコート用塗料(HC−2〜HC−54)を得た。
なお、硬化剤2(表6,7においては硬化剤の種類2として表記する)は、旭化成ケミカルズ社製「MHG−80B」、ヘキサメチレンジイソシアネートと3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのポリイソシアネート体とした。また、HC−51〜HC−54に用いたポリオールは、クラレポリオールP−6010((株))クラレ社製)である。
【0131】
[実施例101]
ハードコート用塗料(HC−1)を、ドクターブレードを用いて、厚さ300μm、A4サイズのポリカーボネート系基材(バイエル社製 Makrofol、DE1−1)の片面に塗布し、100℃のオーブン中で1分間乾燥して溶剤類を揮発させた。乾燥後の膜厚が20μmとなるようにドクターブレードを選択した。
次いで50℃の恒温室に4日間放置して、アクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物との反応を進行(エージング)させて、ポリカーボネート系基材上にハードコート層を形成し、加飾フィルムを得た。
加飾フィルムについて後述する方法に従い、密着性、耐溶剤性、鉛筆硬度、耐摩耗性、成型性、耐日焼け止めクリーム性、耐候性の評価を行い、その結果を表8に示した。
【0132】
[実施例102〜154]、
表8〜9に従い、ハードコート用塗料(HC−2〜HC−54)を用いて、実施例101と同様にして以下、加飾フィルムを作製し、同様の評価を行い、その結果を表8〜9に示した。
【0133】
[実施例201]
ハードコート用塗料(HC−1)を、テクノロイC001(エスカーボシート社製、PMMA系樹脂層/PC系樹脂層の2層シート、総厚み300μm)のPMMA系樹脂層の面に、ドクターブレードを用いて塗工した。乾燥後の塗料の膜厚が20μmとなるようにドクターブレードを選定した。塗工後、100℃のオーブン中で1分間放置し、溶剤類を揮発させ、次いで50℃の恒温室に4日間放置してアクリル系共重合体とポリイソシアネート化合物との反応を進行(エージング)させて、加飾フィルムを得た。加飾フィルムについて後述する方法に従い、実施例101と同様の評価を行い、その結果を表10に示した。
【0134】
[実施例202〜254]
表10〜11に従い、ハードコート用塗料(HC−2〜HC−54)を用いて、実施例201と同様にして以下、加飾フィルムを作製し、同様の評価を行い、その結果を表10、11に示した。
【0135】
[実施例301]
上述した方法で、ハードコート用塗料(HC−1)を剥離性PETフィルム上に塗工し、乾燥・硬化し、厚さ50μmの硬化塗膜を形成した。
次に、片面にインジウム蒸着を施した厚さ50μmのPETフィルムの非蒸着面にラミネート接着剤(東洋モートン社製 TOMOFLEX TM−K51/CAT−56)を、乾燥膜厚5μmとなるように塗布した。次に、前記剥離性PETフィルムから硬化樹脂皮膜層を剥がしながら、剥離性PETフィルムとは接していない面を上記インジウム蒸着PETフィルムのラミネート接着剤と接するように重ねあわせて、ニップ温度80℃、ニップ圧15kg/cmの圧着条件でラミネートした。上記積層物を50℃の恒温室で4日間放置し、ラミネート接着剤の反応を進行(エージング)させ、加飾フィルムを得た。加飾フィルムについて後述する方法に従い、実施例101と同様の評価を行い、その結果を表12に示した。
【0136】
[実施例302〜354]
表12〜13に従い、ハードコート用塗料(HC−2〜HC−54)を用いて、実施例301と同様にして以下、加飾フィルムを作製し、同様の評価を行い、その結果を表12〜13に示した。
【0137】
[比較例1]
アクリル系共重合体(A’−101)100質量部を含む比較例用合成例A’−101で得られたアクリル系共重合体(A’−101)溶液に、ポリイソシアネート化合物としてP301−75E(旭化成ケミカルズ社製ポリイソシアネート化合物、以下、硬化剤1(表6,7においては硬化剤の種類1として表記する)という)59.9質量部(固形質量)を加え、さらに固形分が30%となるようにメチルイソブチルケトン(MIBK)を加えて撹拌し、塗料(HC’−1)を得た。
【0138】
得られた塗料から得られた硬化塗膜について、前述の方法と同様にして、全光線透過率、拡散透過率、降伏値、伸び率を求めた。
また、得られた塗料について実施例と同様にして、密着性、耐溶剤性、鉛筆硬度、耐摩耗性、成型性、耐日焼け止めクリーム性、耐候性の評価を行い、その結果を表14に示した。
【0139】
[比較例2〜10、13]
表14に示す組成に従い、比較例1と同様にして塗料を得た後、比較例1と同様にして加飾フィルムを作製し、同様の評価を行った。その結果は、表14に示した。
【0140】
[比較例11]
アクリル系共重合体(A’−110):100質量部を含む比較例用合成例A’−110で得られたアクリル系共重合体(A’−110)溶液に、ポリイソシアネート化合物としてE405−70B(旭化成ケミカルズ社製ポリイソシアネート化合物)(表14においては硬化剤の種類3として表記する)を16.7質量部(固形質量)加え、さらに、光硬化性プレポリマーをアクリル系共重合体(A’−110)100質量部に対して50質量部となるようにヒタロイド7903−3(日立化成工業社製多官能ウレタンアクリレート、固形分50%、酢酸ブチル溶液品)を100部、光ラジカル開始剤としてIRGACURE184(チバスペシャルティカミカルズ社製、1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)を4質量部加えて撹拌し、塗料を得た。
得られた塗料を用いて実施例1と同様の方法で加飾フィルムを作製し、同様の評価を行った。
【0141】
[比較例12]
比較例11で得た塗料を比較例11と同様に基材に塗工をし、100℃で1分間乾燥させた後、高圧水銀灯80W/cmで照射量200mJ/cm
2の活性エネルギーを照射し塗膜を得え、比較例1と同様の評価を行った。
【0142】
≪全光線透過率、拡散透過率の測定≫
剥離処理したPETフィルム上に設けたハードコート層を単離し、日本電色工業社製、ヘイズメーターNDH2000にて全光線透過率、および拡散透過率を測定した。
【0143】
≪降伏値、伸び率の測定≫
剥離処理したPETフィルム上に設けたハードコート層を単離し、幅10mmの短冊状に切り、TENSILON社製「テンシロン万能試験機 RTE−1210にて、25℃、50%RH雰囲気下で引張試験を行った。
引張速度:0.5mm/min
試料のサイズ:幅5mm×厚さ約0.1mm
チャック間距離:10mm
引張強度(降伏値):N/mm
2
伸び率は破断直前の値をとり、また、降伏値については以下に説明する値を用いた。単離したハードコート層に力を加えて引っ張って、応力−歪曲線を描くと、初めは、応力に対して一定の歪を示すが、応力がある点に達すると、歪は大きくなるのに対して、応力は低下する。この時、フィルムが降伏したという。この点の応力を「降伏値」と呼び、本発明における引張強度とした。
【0144】
≪密着性≫
得られた加飾フィルムのハードコート層の面で、JIS K−5400に準じて碁盤目セロハンテープ剥離法により試験を行い、100枡中の塗膜の残存数で示した。
【0145】
≪耐溶剤性≫
得られた加飾フィルムのハードコート層の面で、耐溶剤性試験を行った。綿棒にメチルエチルケトン(MEK)を含ませ、アクリル系樹脂層の上を綿棒が折れない程度の力を加えて3cmの幅で往復させる。アクリル系樹脂層の面の変化を評価した。
4:100往復してもアクリル系樹脂層の面に変化が見られない。
3:100往復した後に、アクリル系樹脂層の面が少し曇る。
2:50往復した時に、アクリル系樹脂層の面が曇る。
1:100往復した時に、アクリル系樹脂層が剥がれてシート状基材が露出する。
【0146】
≪鉛筆硬度≫
加飾フィルムの表面硬度として、鉛筆硬度を測定した。JIS K5400に準じて、雰囲気温度23℃の恒温室内で、80mm×60mmに切り出したポリカーボネート系基材を用いた加飾フィルムのアクリル系樹脂層側表面に対して、円筒状の鉛筆の芯の先端を平らに削った先端部を45度の角度に保って、1kgの荷重をかけた状態で線を引き、表面の傷付きを評価した。例えば、Hの鉛筆で5本の線を引き、5本の内2本以内に傷が付いているものを鉛筆硬度Hと表す。5本の内3本傷が付いた場合は、Fの鉛筆で再度試験を行い、傷が2本以内になる鉛筆の硬度で表す。
【0147】
≪耐摩耗性の評価≫
加飾フィルムの耐摩耗性は、JIS K7204、K6264[摩耗性試験]に準拠して試験を行い、以下の基準で評価した。試験に用いた加飾フィルムは、ポリカーボネート系基材を用いた加飾フィルムにて行い、試験に用いた装置は、東洋精機社製「ロータリーアブレージョンテスタ」であり、摩耗輪として「CS−10」を用い、荷重500gで500回転後の摩耗量を評価した。評価基準は以下の通りである。
4:摩耗量が5mg未満
3:摩耗量が5mg以上、20mg未満
2:摩耗量が20mg以上、50mg未満
1:摩耗量が50mg以上
【0148】
≪成型性の評価≫
加飾フィルムを、上下2室のチャンバーボックスに分かれた真空成型機の真ん中に、ハードコート層が上に向くようにセットする。下チャンバーボックスには成型金型をセットする。成型金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り成型用の金型を用いた。次に真空ポンプでチャンバーボックス内を真空状態にする。チャンバー上部の加熱ヒーターを点灯し、加飾フィルムの表面温度が160℃になるまで加熱を続ける。加飾フィルムが熱軟化し、垂れ下がり状態になった時に、下チャンバーボックスの金型を上昇させて、金型を加飾フィルムが覆った状態にする。
次に、上チャンバーボックスを大気開放状態にする。加飾フィルムは気圧差により、金型に密着する。上チャンバーボックスに圧縮空気を送入することにより、加飾フィルムはさらに大きな力で金型に密着させられる。下チャンバーボックスを大気圧状態に戻し、上チャンバーボックスを上昇させ、冷却してから、金型から予備成型物を取り出す。得られた成型加飾フィルムについて、その外観(成型性)を下記の基準で評価した。
4:皺や割れが全く無い。
3:皺や割れが無いが、一部に浮きがみられる。
2:全体の10%に皺や割れが見られる。
1:全体の50%以上に皺や割れが見られる。
【0149】
《耐日焼け止めクリーム性の評価》
加飾フィルムのハードコート層に、日焼け止めクリーム(Neutrogena Ultra Sheer DRY−TOUCH SUNSCREEN SPF55(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製))を0.5g塗布し、上からガラスの板を載せる。ガラス板の上に荷重500gをさらに載せて、日焼け止めクリームが広がるに任せた状態で、80℃24時間放置した。放置後、日焼け止めクリームを水で洗い流し水気を取った後、日焼け止めクリームを滴下した部分を中心にした直径3cmの円の範囲の外観を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
4:ハードコート層、基材層ともに皺の発生や変色などの外観不良が見られない。
3:ハードコート層の一部(面積の10%以下)が基材層から浮いているが、基材層の変色は見られない。
2:ハードコート層の一部(面積の10%以下)が基材層から浮き、さらに基材層の変色も見られる。
1:面積の10%を超える範囲のハードコート層が基材層から浮いている、または面積の10%を超える範囲で基材層の変色が見られる。
【0150】
≪耐候性試験:光沢変化≫
得られた加飾フィルムのハードコート層の面について、下記促進耐候性試験機を用い、以下の条件にて耐候性試験を行った。
スガ試験機社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75
キセノンロングライフアークランプ7.5kW(紫外部300〜400nm)
照射+降雨38℃、95%RH、160W/m
2、12min
照射63℃、50%RH、160W/m
2、1時間48分
100回繰り返し:200時間を1サイクルとして、8サイクル、計1600時間耐候性試験を行った。
試験前と試験後のハードコート層の面を下記光沢計にて光沢値を測定し、試験前の光沢値と試験後の光沢値の差から耐候性を評価した。
BYK−Gardner社製マイクロ・トリグロス光沢計を用いて、入反射角度60度で試験片の中から3か所を測定し、平均値を求めた。
光沢変化(%)=(試験後の光沢値−試験前の光沢値)/試験前の光沢値×100
4:試験前と試験後の光沢変化が10%未満
3:試験後の光沢変化が、10%以上、20%未満
2:試験後の光沢変化が、20%以上、30%未満
1:試験後の光沢変化が、40%以上
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
【表5】
【0156】
【表6】
【0157】
【表7】
【0158】
【表8】
【0159】
【表9】
【0160】
【表10】
【0161】
【表11】
【0162】
【表12】
【0163】
【表13】
【0164】
【表14】
【0165】
表7〜13に示す通り、実施例101〜154、201〜254、301〜354は、適切なアクリル系共重合体とイソシアネート系硬化剤の硬化物であるハードコート層は適切な引張強度を示し、前記ハードコート層を有す加飾フィルムを用いた加飾成型体は、密着性、耐溶剤性、鉛筆硬度、耐摩耗性、成型性、耐日焼け止めクリーム性、耐候性に優れる。
【0166】
一方、表14に示すように、比較例1はアクリル系共重合体中の水酸基のうち1級の水酸基が少ないので、未反応成分が多くなり、耐溶剤性、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性が劣る。
比較例2は、アクリル系共重合体の形成に供された水酸基モノマー100mol%中、分子内に1つの水酸基を持つモノマーの割合が50mol%未満であるため、架橋が不均一な硬化膜が生じ、耐溶剤性、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性などの耐久性に劣る。
比較例3はアクリル系共重合体の多分散度が2.3未満であるため、高分子量成分が多く、分子鎖同士の束縛が激しいため伸び率が低く、成型性に劣る。
比較例4はアクリル系共重合体の多分散度が10より大きく低分子量成分が多いため、耐日焼け止めクリーム性に劣る。
比較例5はアクリル系共重合体の酸価が20mgKOH/gより大きいため、水酸基とイソシアネート基との硬化が促進されて硬い硬化膜となり伸び率が低下するため、成型性に劣る。
比較例6はアクリル系共重合体のガラス転移温度が0℃未満であり、硬化膜の引張強度が15N/mm
2未満であるため、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性に劣る。
比較例7はアクリル系共重合体のガラス転移温度が80℃より大きく、引張強度が100N/mm
2より多いため成型性に劣る。
比較例8はアクリル系共重合体の水酸基価が5mgKOH/g未満であり、引張強度が15N/mm
2未満であるため、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性に劣る。
比較例9はアクリル系共重合体の水酸基価が210mgKOH/gより大きいため、引張強度が大きくなり過ぎ成型性に劣る。
比較例10はイソシアネート系硬化剤が含まれていないため、良く伸び、成型性には優れるが、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性に劣る。
比較例11、12は、第3成分として光硬化性成分を含有する場合であるが、光硬化の有無に関わらず、引張強度が15N/mm
2未満であるため、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性に劣る。
比較例13は、アクリル系共重合体の質量平均分子量が小さいので、引張強度が15N/mm
2未満となり、耐溶剤性、鉛筆硬度、耐摩耗性、耐日焼け止めクリーム性に劣る。
【0167】
[実施例401]
実施例101と同様にして、ポリカーボネート系基材上にハードコート層を形成し、部材1を得た。
【0168】
アクリル系共重合体(A−1)100質量部(固形質量)に、ポリイソシアネート化合物としてP301−75E(旭化成ケミカルズ社製ポリイソシアネート化合物)60質量部(固形質量)、MA100(三菱化学社製カーボンブラック)5質量部(固形質量)、BYK−9076(BYK社製分散剤)0.5質量部(固形質量)を加え、さらに固形分が30%となるようにプロピレングリコール1―モノメチルエーテル2―アセタート(PGMAc)を加えて撹拌し、着色硬化性樹脂組成物を得た。
【0169】
前記着色硬化性樹脂組成物を、前記部材1のポリカーボネートフィルム側にバーコーターを用いて塗布し、100℃のオーブン中で1分間乾燥して溶剤を揮発させて、厚さ5μmの着色層を設けた。
次いで、前記着色層上に接着剤(東洋モートン社製、AD−76G1)を、乾燥後の膜厚5μmとなるよう塗布し、接着剤層および着色層の付いている加飾フィルムを得た。
【0170】
以下の手順に従い下記形状の角型の鋼板部材(被加飾体)の凸側の表面に前記加飾フィルムを担持する加飾成型体を得た。
<手順>
成型機内に角型の鋼板部材を設置すると共に、前記鋼板部材の上方に、前記加飾フィルムの接着剤層が前記鋼板部材に接触しない状態で対向するように配置した。
次に、前記加飾フィルムを160℃程度に加熱しながら、1.5気圧程度の真空吸引力で前記鋼板部材の表面に真空成型し、接着剤層および着色層を硬化させ、鋼板部材表面に加飾フィルムが担持している加飾成型体を得た。
<角型の鋼板部材>
鋼板を、縦90mm×横90mm×深さ5mmの角型、コーナーRは約10に成型したもの。
【0171】
≪密着性≫
加飾成型体の凸部表面(縦90mm×横90mmの面)のハードコート層側から、加飾フィルムと被加飾体との界面付近まで深く届くように碁盤目状の傷を付け、JIS K−5400に準じてセロハンテープ剥離法により試験を行った。碁盤目100枡の内で剥離されなかった碁盤目の数を数え、加飾フィルムと被加飾体との密着性を以下の基準で評価した。
○:剥離面積0%。
△:剥離面積0%より大きい、35%未満。
×:剥離面積35%以上。
【0172】
[実施例402〜422]
実施例401で用いた接着剤の代わりに、表15に示す接着剤を用いた以外は、実施例401と同様にして接着剤層および着色層の付いている加飾フィルムを得た。
【0173】
次いで、表15に記載の被加飾体に対して実施例401と同様に成型及び密着性を評価した。
なお、被加飾体のABSはアクリロニトリル−ブタジエンースチレン樹脂、CFRPは炭素繊維強化樹脂であり、それぞれの形状は実施例401の鋼板部材と同じとした。
【0174】
[実施例423]
接着剤層設けなかった以外は実施例401と同様にして、着色層の付いている加飾フィルムを得た。
得られた加飾フィルムを射出成型用金型のキャビティ内に挿入し、160℃程度に加熱しながら、1.5気圧程度の条件で真空吸引し、角型(縦90mm×横90mm×深さ5mmの角型、コーナーRは約10)に予備成型した。
次で、前記予備成型体の着色層側に、成型温度220〜240℃、金型温度30〜50℃で、ABS樹脂を約3mmの厚さに射出成型し、加飾成型体を得た。
得られた加飾成型体について実施例401と同じ方法で、加飾フィルムと被加飾体との密着性を評価した。
【0175】
[実施例424]
射出樹脂をABS樹脂から炭素繊維強化樹脂(CFRP)へ変更した以外は、実施例423を同じ方法で、加飾成型体を作製し、同様の評価を行った。
【0176】
【表15】
本発明に係る加飾フィルム101は、ハードコート層10と基材層1とを含む積層体からなり、ハードコート層10は、水酸基を有するアクリル系共重合体(A)とイソシアネート系硬化剤(B)とを含む熱硬化性の塗料の硬化物からなる。ハードコート層10は、所定の全光線透過率、拡散透過率および引張り強度を有する。また、アクリル系共重合体(A)は、特定の水酸基価、酸価、ガラス転移温度、MwおよびMw/Mnを有し、水酸基を有するモノマー由来のユニットを有する共重合体である。前記水酸基を有するモノマー由来のユニット100mol%中、1つの水酸基を持つモノマー由来のユニットの含有率、アクリル系共重合体(A)中に1級の水酸基の含有率が特定の範囲を満たす。