(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺の鋼材の一端部を把持した状態で前記鋼材をその長手方向に送りながら前記鋼材の前記長手方向の一部分を加熱しつつ前記一端部を二次元又は三次元方向に移動させることで曲げを含む所定の形状に形成した後、前記曲げを含む被加熱部を冷却する冷却装置であって、
前記被加熱部に対して第1の冷却媒体を噴射する第1の冷却装置と;
前記鋼材の送り方向に沿って見た場合に前記第1の冷却装置よりも下流側に設けられ、前記被加熱部に対して第2の冷却媒体を噴射する第2の冷却装置と;
を備え、
前記第2の冷却装置が、
前記送り方向に沿って複数配置され、かつ互いに独立して前記第2の冷却媒体の流量が制御可能であり;
前記鋼材の周方向に沿って複数配置されてかつ、それぞれが相互に独立して前記第2の冷却媒体を流量制御可能に噴射する冷却機構を備える;
ことを特徴とする、鋼材の冷却装置。
前記各第2の冷却装置を前記送り方向に沿って見た場合に、相対的に上流側にある前記第2の冷却装置よりも下流側にある前記第2の冷却装置の方が、前記鋼材が挿通する空間の内径寸法が大きい
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の鋼材の冷却装置。
前記各第2の冷却装置のうちで最上流位置にあるものより噴射された前記第2の冷却媒体と前記鋼材との衝突位置よりも上流位置で、下流側に向かう前記第1の冷却媒体を水切りする第1の水切り機構をさらに有する
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の鋼材の冷却装置。
前記各第2の冷却装置のうちの一つより噴射された前記第2の冷却媒体と前記鋼材との衝突位置よりも下流位置で、下流側に向かう前記第2の冷却媒体を水切りする第2の水切り機構をさらに複数有する
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の鋼材の冷却装置。
長尺の鋼材の一端部を把持した状態で前記鋼材をその長手方向に送りながら前記鋼材の前記長手方向の一部分を加熱しつつ前記一端部を二次元又は三次元方向に移動させることで曲げを含む所定の形状に形成した後、前記曲げを含む被加熱部を冷却する冷却方法であって、
前記被加熱部に対して第1の冷却媒体を噴射する第1の冷却工程と;
前記送り方向に沿って見た場合に前記第1の冷却媒体の噴射位置よりも下流側でかつ、前記被加熱部に対して第2の冷却媒体を噴射する第2の冷却工程と;
を有し、
前記第2の冷却工程で、前記鋼材の、前記送り方向に沿った複数箇所に対して互いに流量を独立制御しながら前記第2の冷却媒体を噴射し、かつ、前記第2の冷却媒体を前記鋼材の周方向に沿った複数位置より、相互に独立して流量制御可能に噴射する
ことを特徴とする、鋼材の冷却方法。
前記第2の冷却工程が、前記第2の冷却媒体を前記送り方向に沿った複数箇所に対して噴射する際の前記送り方向における噴射間隔をそれぞれ一定に保ちつつ、前記鋼材に対する前記第2の冷却媒体の衝突位置の並びを前記鋼材の前記所定の形状に追従させる移動工程を含む
ことを特徴とする、請求項13に記載の鋼材の冷却方法。
前記移動工程が、前記鋼材の外形に接触することで得られた前記鋼材の前記所定の形状を前記第2の冷却媒体を噴射し前記送り方向に沿って複数配置された各第2の冷却装置の並びに反映させ、前記各第2の冷却装置が連結されることにより、前記第2の冷却媒体の前記送り方向における前記噴射間隔がそれぞれ一定に保たれている受動的移動工程である
ことを特徴とする、請求項14に記載の鋼材の冷却方法。
前記移動工程が、前記鋼材の外形に接触することで得られた前記鋼材の前記所定の形状を前記第2の冷却媒体を噴射し前記送り方向に沿って複数配置された各第2の冷却装置の並びに反映させ、前記第2の冷却装置の移動方向がガイドにより規定されている受動的移動工程である
ことを特徴とする、請求項14に記載の鋼材の冷却方法。
前記第2の冷却媒体のうちで最上流位置にあるものと前記鋼材との衝突位置よりも上流位置で、下流側に向かう前記第1の冷却媒体を水切りする第1の水切り工程をさらに有する
ことを特徴とする、請求項13〜18のいずれか一項に記載の鋼材の冷却方法。
前記複数箇所のそれぞれにおいて、前記第2の冷却媒体と前記鋼材との衝突位置よりも下流位置で、下流側に向かう前記第2の冷却媒体を水切りする第2の水切り工程をさらに複数有する
ことを特徴とする、請求項13〜19のいずれか一項に記載の鋼材の冷却方法。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、実施形態に係る鋼材の冷却装置及び鋼材の冷却方法を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態、鋼材の冷却装置)
まず、第1実施形態に係る鋼材10の冷却装置を備える曲げ加工装置について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1実施形態における鋼材10の冷却装置を備える曲げ加工装置1の構成を示す模式図である。
【0041】
曲げ加工装置1は、長尺の鋼材10を断続的または連続的に送り出しながら、鋼材10の曲げ加工を行う。曲げ加工装置1は、鋼材10の送り方向に沿って見た場合に、上流側から順に、送り装置20と、加熱装置21と、第1の冷却装置22と、第2の冷却装置23と、曲げ装置24とを備える。
なお、本実施形態では、鋼材10が長手方向(管軸方向)に送り出される方向(
図1中のX軸方向)を送り方向という。なお、特に明示しない限り、上流側とは鋼材10の送り方向における上流側(
図1中のX軸負方向側)をいい、下流側とは鋼材10の送り方向における下流側(
図1中のX軸正方向側)をいう。
曲げ加工装置1の構成は、上述の構成に限定されない。また、本実施形態では鋼材10が偏平な鋼管(偏平管)である場合について説明するが、例えば鋼材10が丸管、矩形管等の鋼管である場合や鋼材10が管形を有さない場合にも適用可能である。
【0042】
(送り装置)
送り装置20は、曲げ装置24により一端部(先端部)が把持された鋼材10を、長手方向(管軸方向)に断続的または連続的に送り出す。送り装置20は、周知の構成を採用することができ、特定の構成に限定されるものではない。なお、
図1に示すように、送り装置20は、鋼材10の他端部(後端部)を把持してもよい。
【0043】
(加熱装置)
加熱装置21は、例えば鋼材10の周囲に環状に設けられた高周波誘導加熱コイルによって、鋼材10の長手方向の一部分を加熱する。
【0044】
(曲げ装置)
曲げ装置24は、鋼材10の先端部を把持し、鋼材10の先端部を二次元方向又は三次元方向に移動させることで、鋼材10に曲げ(曲げ部)11を形成する。曲げ装置24は、鋼材10の先端部を把持するクランプ25と、クランプ25を移動させる駆動アーム26とを有する。
【0045】
(冷却装置)
本実施形態に係る鋼材10の冷却装置は、第1の冷却装置(一次冷却装置)22と第2の冷却装置(二次冷却装置)23とを備える。
第1の冷却装置22は、加熱装置21により加熱された鋼材10の長手方向の一部分(以下、被加熱部という)に第1の冷却媒体35を噴射する。なお、被加熱部には、曲げ11が含まれる。
【0046】
第2の冷却装置23は、鋼材10の送り方向に沿って見た場合に、第1の冷却装置22よりも下流側に設けられ、被加熱部に対して第2の冷却媒体55を噴射する。第2の冷却装置23は、鋼材10の送り方向に沿って複数配置され、互いに独立して第2の冷却媒体55の流量を制御することができる冷却機構を備える。
図1に示す第2の冷却装置23は、第1の冷却機構40と第2の冷却機構41とを備える。
第1の冷却媒体35及び第2の冷却媒体55としては、冷却水を用いることが好ましい。
なお、第1の冷却装置22及び第2の冷却装置23の詳細な構成については、後述する。
【0047】
曲げ加工装置1では、クランプ25によって鋼材10の先端部を把持した状態で、送り装置20によって鋼材10を送り出す。送り出された鋼材10は、加熱装置21によって所定温度に加熱される。さらに、駆動アーム26によってクランプ25を二次元方向又は三次元方向に移動させることで、鋼材10の被加熱部に曲げモーメントが付与される。これにより、鋼材10が曲げ11を含む所定の形状に形成される。鋼材10の被加熱部に曲げモーメントが付与された後、鋼材10は、第1の冷却装置22から噴射される第1の冷却媒体35によって冷却され、さらに第2の冷却装置23から噴射される第2の冷却媒体55によって冷却される。
なお、本実施形態では、第1の冷却媒体35による鋼材10の冷却を一次冷却といい、第2の冷却媒体55による鋼材10の冷却を二次冷却という。
【0048】
次に、本実施形態に係る第1の冷却装置22及び第2の冷却装置23について説明する。
図2は、本実施形態に係る第1の冷却装置22の構成を示す模式図である。
図3は、本実施形態に係る第1の冷却機構40の構成を示す模式図である。
図4は、本実施形態に係る第1の冷却機構40が第2の冷却媒体55を噴射する様子を示す模式図である。
図5は、本実施形態に係る第2の冷却機構41の構成を示す模式図である。
【0049】
(第1の冷却装置)
図2に示すように第1の冷却装置22は、鋼材10の周囲に環状に設けられ、第1の冷却媒体35を供給するヘッダー30を有する。ヘッダー30において下流方向側の側面31には、柱状の噴流の第1の冷却媒体35を噴射する吐出口32が複数形成されている。また、第1の冷却装置22の側面31は、鋼材10の送り方向に沿って見た場合に、内側端部31aが外側端部31bに対して上流側に位置するように傾斜している。そのため、複数の吐出口32から噴射される第1の冷却媒体35は、下流側に向けて噴射される。
上述の構成を有する第1の冷却装置22から第1の冷却媒体35を噴射することにより、第1の冷却媒体35が上流側に向けて流れることを防ぐことができる。そのため、加熱装置21による鋼材10の加熱を阻害することなく、第1の冷却装置22による鋼材10の一次冷却を行うことが可能である。
【0050】
(第2の冷却装置)
図1に示すように、第2の冷却装置23では、第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41が上流側から順に並べて配置される。第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41は、相互に独立して第2の冷却媒体55を噴射することができると共に、相互に独立して第2の冷却媒体55の流速や流量を制御することができる。なお、冷却機構の数は、本実施形態の例に限定されず、任意に設定できる。
【0051】
(第1の冷却機構)
図3に示すように、第2の冷却装置23を構成する第1の冷却機構40は、鋼材10の周方向に沿って複数配置され、第2の冷却媒体55を供給するヘッダー50〜53を備えてもよい。第1の冷却機構40がヘッダー50〜53を有する場合、上部ヘッダー50は鋼材10の鉛直上方に配置され、下部ヘッダー51は鋼材10の鉛直下方に配置され、側部ヘッダー52、53は、それぞれ鋼材10の水平方向側方に配置される。各ヘッダー50〜53は、相互に独立して第2の冷却媒体55を噴射し、相互に独立して第2の冷却媒体55の流速や流量を制御することができる。
第1の冷却機構40がヘッダー50〜53を備えることにより、鋼材10の周方向全体を確実に冷却することができる。そのため、鋼材10が複雑な形状に形成される場合であっても、鋼材10に生じる焼きむらを低減することができる。
なお、ヘッダー50〜53の数は本実施形態に限定されず、任意に設定することができる。
【0052】
各ヘッダー50〜53には、スプレーノズル54が設けられる。スプレーノズル54には、例えばフラットノズル、フルコーンノズル、長円ノズルなどが用いられる。スプレーノズル54として上述のノズルが用いられた場合には、第2の冷却媒体55は、それぞれフラット状の噴流、フルコーン状の噴流、長円状の噴流である。
なお、各ヘッダー50〜53に設けられるスプレーノズル54の数は
図3に示した数に限定されず、任意に設定できる。
図4に示すように、第2の冷却媒体55が下流側に向けて流れるように、各ヘッダー50〜53のスプレーノズル54の向きを設定してもよい。
【0053】
各ヘッダー50〜53のスプレーノズル54は、第2の冷却媒体55の噴射方向を調整できるように構成されていてもよい。これにより、鋼材10の形状に応じて第2の冷却媒体55を噴射することが可能となり、鋼材10を複雑な形状に形成する場合であっても、鋼材10の曲げ11の外側の周面に第2の冷却媒体55を噴射することができる。そのため、鋼材10を複雑な形状に形成する場合であっても、鋼材10に曲げ加工を行う場合の焼きむらを低減することができる。
特に、上部ヘッダー50及び下部ヘッダー51のスプレーノズル54を、スプレーノズル54から噴射される第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突角度θ
1が45度以下になる向きに配置することが好ましい。第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突角度θ
1を45度以下にすることにより、鋼材10に衝突した第2の冷却媒体55が上流側に流れることを抑制できる。なお、第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突角度θ
1の好ましい下限値としては、20度が挙げられる。
【0054】
ヘッダー50〜53の各スプレーノズル54は、各スプレーノズル54から噴射された第2の冷却媒体55が鋼材10に至るまでの間に、各スプレーノズル54から噴射される第2の冷却媒体55同士が相互に交差しないように配置されることが好ましい。このように各スプレーノズル54が配置されることにより、各スプレーノズル54から噴射される第2の冷却媒体55同士が相互に干渉しないため、第2の冷却媒体55を所望の衝突位置及び衝突角度で鋼材10に噴射することができる。
上部ヘッダー50と下部ヘッダー51のスプレーノズル54から噴射される第2の冷却媒体55の噴射角度θ
2及び側部ヘッダー52、53のスプレーノズル54から噴射される第2の冷却媒体55の噴射角度θ
3は、10〜70度が好ましい。但し、上部ヘッダー50及び下部ヘッダー51の冷却能力を確保するとともに、ノズル個数の過剰な増加を防ぐため、噴射角度θ
2及びθ
3はできるだけ広い角度であることが好ましい。なお、噴射角度が大きくなると、鋼材10を一様に冷却するのが困難になる可能性があるので、噴射確度θ
2及びθ
3は、50度程度が好ましい。しかしながら、鋼材10の冷却面が狭小である場合には、噴射確度θ
2及びθ
3は10度程度でもよい。
【0055】
(第2の冷却機構)
図5に示すように、第1の冷却機構40とともに第2の冷却装置23を構成する第2の冷却機構41は、第1の冷却機構40と同様の構成を有する。すなわち、第2の冷却機構41は、ヘッダー50〜53と同様の構成を有するヘッダー60〜63を備える。また、各ヘッダー60〜63は、スプレーノズル54と同様の構成を有するスプレーノズル64を備える。
【0056】
なお、
図1に示すように、第1の冷却機構40と第2の冷却機構41とで、送り方向と直交する方向(
図1中のY軸方向)の幅(鋼材10が挿通する空間の内径寸法)を比較した場合に、相対的に上流側にある第1の冷却機構40の幅D1よりも、下流側にある第2の冷却機構41の幅D2の方が大きくなるように構成してもよい。鋼材10は下流側の曲げ幅が大きいため、曲げ加工後の鋼材10が第2の冷却機構41に接触しないように、第1の冷却機構40の幅D1よりも第2の冷却機構41の幅D2を大きくしている。なお、第1の冷却機構40の幅D1は、第2の冷却機構41の幅D2と同じであってもよい。
【0057】
(第1実施形態、鋼材の冷却方法)
次に、本実施形態に係る第1の冷却装置22と第2の冷却装置23とを用いて行われる鋼材10の冷却方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、第1実施形態に係る第1の冷却装置22と第2の冷却装置23とを用いて鋼材10を冷却する様子を示す模式図である。
図6に示すように、本実施形態に係る鋼材10の冷却方法は、被加熱部に対して第1の冷却媒体35を噴射する工程と、送り方向に沿って見た場合に第1の冷却媒体35の噴射位置よりも下流側から、被加熱部に対して第2の冷却媒体55を噴射する工程とを有する。なお、本実施形態では、被加熱部に対して第1の冷却媒体35を噴射する工程を第1の冷却工程といい、被加熱部に対して第2の冷却媒体55を噴射する工程を第2の冷却工程という。
本実施形態に係る鋼材10の冷却方法では、第2の冷却工程で、鋼材10の送り方向に沿った複数箇所に対して互いに流量を独立制御しながら第2の冷却媒体55を噴射する。
【0058】
図6に示すように、加熱装置21で所定温度(例えば1000℃)に加熱され、曲げモーメントが付与された鋼材10は、最初に、第1の冷却装置22から噴射される第1の冷却媒体35によって冷却される。第1の冷却媒体35による冷却により、鋼材10の表面は、Ar
3変態開始温度未満(例えば200〜800℃)まで冷却される。
【0059】
第1の冷却媒体35による冷却後、鋼材10は、第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41から噴射される第2の冷却媒体55によって冷却される。第2の冷却媒体55により、鋼材10は、マルテンサイト変態終了温度Mf未満あるいは室温付近(例えば室温〜300℃)まで冷却される。一次冷却によって既に鋼材10の温度が下がっているため、二次冷却では核沸騰域で安定的且つ効率的に鋼材10が冷却される。
【0060】
図6に示すように、本実施形態に係る鋼材10の冷却方法では、鋼材10に対して、第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41から第2の冷却媒体55を噴射する。また、第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41は、被加熱部中の曲げ11の曲率に応じて、第2の冷却媒体55の流量分布を制御することが可能である。これにより、本実施形態に係る鋼材10の冷却方法では、従来では冷却することが難しかった、鋼材10の曲げ11の外側も確実に冷却することが可能である。
上述の理由から、本実施形態の鋼材10の冷却方法によれば、従来技術の課題であった鋼材10の曲げ加工時における焼きむらを低減することが可能である。そのため、鋼材10に対して、適切な曲げ加工を施すことができる。
【0061】
第1の冷却媒体35の運動量と第2の冷却媒体55の運動量とを比較した場合に、少なくとも第2の冷却装置23のうち最上流位置にある第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55の運動量が、第1の冷却機構40の隣接位置にある第1の冷却装置22から噴射された第1の冷却媒体35の運動量よりも大きいことが好ましい。
【0062】
第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55の運動量が、第1の冷却装置22から噴射された第1の冷却媒体35の運動量よりも大きいことにより、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55が鋼材10と衝突する際に、第2の冷却媒体55と鋼材10との間に第1の冷却媒体35が存在する場合でも、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55は第1の冷却媒体35を突き抜けることが可能である。
これにより、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55が鋼材10に確実に到達するとともに、鋼材10を冷却することにより温度上昇した第1の冷却媒体35が第1の冷却機構40よりも下流側に流れないため、鋼材10を効率的に冷却することが可能である。
なお、第2の冷却媒体55の運動量は、第1の冷却媒体35の運動量の1.5倍〜5倍であることが好ましい。
【0063】
第2の冷却工程では、第2の冷却媒体55を鋼材10の周方向に沿った複数位置より、相互に独立して流量制御可能に噴射してもよい。第2の冷却媒体55を鋼材10の周方向に沿った複数位置より、相互に独立して流量制御可能に噴射することにより、鋼材10の周方向全体を確実に冷却することができる。そのため、鋼材10が複雑な形状に形成される場合であっても、鋼材10に生じる焼きむらを低減することができる。
【0064】
(第2実施形態、鋼材の冷却装置)
次に、第2実施形態に係る鋼材10の冷却装置について説明する。
図7は、第2実施形態に係る鋼材10の冷却装置を備える鋼材10の曲げ加工装置1の構成を示す模式図である。
図8は、第2実施形態に係る鋼材10の冷却装置を備える鋼材10の曲げ加工装置1を用いて、鋼材10に対して曲げ加工を行う状態を示す模式図である。
なお、第1実施形態に係る鋼材10の曲げ加工装置1と同様の構成を有する部分については、詳細な説明を省略する。
【0065】
本実施形態に係る鋼材10の冷却装置は、第1実施形態と同様に第1の冷却装置22を備えるが、第1実施形態とは異なり第2の冷却装置223を備える。
本実施形態に係る第2の冷却装置223は、
図7に示すように、第1の冷却機構240、第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242を備える。更に、第2の冷却装置223は、第1の冷却機構240の中心と第2の冷却機構241の中心とを連結する連結部材290及び第2の冷却機構241の中心と第3の冷却機構242の中心とを連結する連結部材293を備える。
第2の冷却装置223が連結部材290、293を有するため、
図8に示すように、鋼材10に対して曲げ加工を行っても、第1の冷却機構240と第2の冷却機構241との中心間距離及び第2の冷却機構241と第3の冷却機構242との中心間距離を一定に保つことが可能である。
【0066】
次に、本実施形態に係る第2の冷却装置223の詳細な構成について説明する。
図9は、鋼材10に対して曲げ加工が施されていない状態における、第2実施形態に係る第2の冷却装置223の構成を示す模式図である。
図10は、第2実施形態に係る第1の冷却機構240の構成を示す模式図である。
図11は、第2実施形態に係る第2の冷却機構241の構成を示す模式図である。
【0067】
図9に示すように、鋼材10の送り方向に沿って見た場合に、第2の冷却装置223は、上流側から順に、第1の冷却機構240、第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242を備える。第1の冷却機構240、第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242が、互いに独立して第2の冷却媒体55の流量を制御可能である点については第1実施形態と同様である。なお、冷却機構の数は、本実施形態の例に限定されず、任意に設定できる。
【0068】
図10に示すように、本実施形態に係る第1の冷却機構240は、鋼材10の周囲に環状に設けられ、第2の冷却媒体55を供給するヘッダー250を有してもよい。ヘッダー250において鋼材10の送り方向側の側面には、柱状の噴流の第2の冷却媒体55を噴射する吐出口251が複数形成されている。複数の吐出口251から噴射される第2の冷却媒体55は、下流側に向けて噴射される。
また、ヘッダー250の内側面にも、柱状の噴流の第2の冷却媒体55を噴射する吐出口252が複数形成されている。複数の吐出口252から噴射される第2の冷却媒体55は、鋼材10の上下面が冷却されるように、鉛直方向に向かって噴射される。
【0069】
ヘッダー250の外周部には、第2の冷却媒体55を供給する供給管260〜263が接続される。上部供給管260、261はヘッダー250の上面に接続され、下部供給管262、263はヘッダー250の下面に接続される。供給管260〜263をヘッダー250の接線方向に複数設置している理由は、第2の冷却媒体55の吐出の安定化および水量確保のためである。
例えば、鋼材10の送り方向に沿って見た場合に、ヘッダー250の対角線上にある上部供給管260と下部供給管263から第2の冷却媒体55をヘッダー250に供給し、他の上部供給管261と下部供給管262からの第2の冷却媒体55の供給を停止する。上述のように第2の冷却媒体55を供給した場合には、供給された第2の冷却媒体55は環状のヘッダー250内を旋回して流れるので、ヘッダー250の吐出口251、252から、鋼材10の周方向に均一に第2の冷却媒体55を噴射できる。
なお、ヘッダー250に第2の冷却媒体55を供給する際には、上部供給管261と下部供給管262から第2の冷却媒体55を供給し、上部供給管260と下部供給管263からの第2の冷却媒体55の供給を停止してもよい。第2の冷却媒体55の水量を確保するため、全ての供給管260〜263から第2の冷却媒体55を供給してもよい。
【0070】
図10に示すように、ヘッダー250は、第1の支持部材270を介して第2の支持部材271に固定されている。このため、第1の冷却機構240は移動せずに第2の冷却媒体55を噴射することが可能である。
【0071】
図11に示すように、本実施形態に係る第2の冷却機構241は、鋼材10の周囲に環状に設けられ、第2の冷却媒体55を供給するヘッダー255を有してもよい。ヘッダー255において、鋼材10の送り方向側の側面には、柱状の噴流の第2の冷却媒体55を噴射する吐出口256が複数形成されている。複数の吐出口256から噴射される第2の冷却媒体55は、下流側に向かって噴射される。また、ヘッダー255の内側面にも、柱状の噴流の第2の冷却媒体55を噴射する吐出口257が複数形成されている。複数の吐出口257から噴射される第2の冷却媒体55は、鋼材10の上下面が冷却されるように、鉛直方向に向かって噴射される。
【0072】
ヘッダー255の外周部には、第2の冷却媒体55を供給する供給管265〜268が接続される。上部供給管265、266はヘッダー255の上面に接続され、下部供給管267、268はヘッダー255の下面に接続される。なお、供給管265〜268からヘッダー255への第2の冷却媒体55の供給方法は、上述した第1の冷却機構240における供給管260〜263からヘッダー250への第2の冷却媒体の供給方法と同様である。
なお、図示しないが、第3の冷却機構242は、上述した第2の冷却機構241と同様の構成を有する。
【0073】
ヘッダー255の上流側には、一対の接触部材(接触部)280、280が設けられる。接触部材280は、側面視において略三角形状を有し、鋼材10の外形に接触する。接触部材280には、鋼材10に損傷を与えず、かつ耐熱性を有する材料、例えばフッ素樹脂などが用いられる。
接触部材280は、ヘッダー255に取り付けられた支持部材281に支持される。接触部材280は、加工対象である鋼材10のサイズに応じて交換されるため、支持部材281から取り外し自在である。
【0074】
第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242では、接触部材280が鋼材10に接触しているため、曲げ11を含む所定の形状に形成された鋼材10の移動に追従して、接触部材280が移動する。接触部材280の移動に伴い、第2の冷却機構241のヘッダー255及び第3の冷却機構242のヘッダー255は、鋼材10の移動に追従して移動する。
これにより、鋼材10に対して複雑な曲げ加工を行う場合でも、第2の冷却機構241のヘッダー255及び第3の冷却機構242のヘッダー255から噴射される第2の冷却媒体55は、鋼材10に衝突する衝突位置及び衝突角度を一定に保つことができる。そのため、鋼材10の形状によらず鋼材10の曲げ11の外側を含む周面に対して第2の冷却媒体55を噴射することができるので、鋼材10の曲げ加工における焼きむらを低減することができる。
【0075】
図9に示すように隣接する第1の冷却機構240及び第2の冷却機構241には、第1の冷却機構240の中心と第2の冷却機構241の中心とを連結する連結部材(連結部)290が設けられる。連結部材290の一方の端部は、第1の冷却機構240の固定軸291に固定され、連結部材290は固定軸291を中心に回動自在である。また、連結部材290のもう一方の端部は、第2の冷却機構241の固定軸292に固定され、連結部材290は固定軸292を中心に回動自在である。
なお、
図10および
図11に示すように、連結部材290及び固定軸291、292は、鋼材10の鉛直上方及び鉛直下方に設けられる。
図9に示すように、連結部材290によって、第1の冷却機構240と第2の冷却機構241との中心間距離L
1が一定に維持される。
【0076】
同様に、第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242にも、第2の冷却機構241の中心と第3の冷却機構242の中心とを連結する連結部材293が設けられる。連結部材293の一方の端部は、第2の冷却機構241の固定軸292に固定され、連結部材293は固定軸292を中心に回動自在である。また、連結部材293のもう一方の端部は、第3の冷却機構242の固定軸294に固定され、連結部材293は固定軸294を中心に回動自在である。
なお、
図11に示すように、連結部材293及び固定軸292(、294)は、鋼材10の鉛直上方及び鉛直下方に設けられる。
図9に示すように、連結部材293によって、第2の冷却機構241と第3の冷却機構242の中心間距離L
2が一定に維持される。
【0077】
第1の冷却機構240と第2の冷却機構241との中心間距離L
1又は第2の冷却機構241と第3の冷却機構242の中心間距離L
2が一定に維持されていない場合には、第2の冷却媒体55が鋼材10に衝突する衝突位置と衝突角度とが一定ではないため、鋼材10の表面の部位によっては、第2の冷却媒体55が適切に噴射されない可能性がある。そのため、鋼材10に焼きむらが生じる可能性がある。
一方、本実施形態によれば、第1の冷却機構240と第2の冷却機構241との中心間距離L
1及び第2の冷却機構241と第3の冷却機構242の中心間距離L
2が一定に維持されることにより、第2の冷却媒体55が鋼材10に衝突する衝突位置と衝突角度とが一定に維持される。
また、本実施形態によれば、鋼材10を複雑な形状に形成する場合であっても、鋼材10の外側の周面に第2の冷却媒体55を噴射することができる。
【0078】
上述の理由から、本実施形態によれば、従来技術では冷却することが難しかった曲げ11の外側も確実に冷却することができるため、鋼材10の曲げ加工における焼きむらを低減することができる。
また、本実施形態によれば、複雑な駆動機構を要さずに、上述の二次冷却を実現できる。
【0079】
鋼材10を冷却した後の第1の冷却機構240から噴射された第2の冷却媒体55は、温度が上昇している。そのため、第2の冷却機構241から噴射された第2の冷却媒体55が鋼材10を冷却する際に、鋼材10を冷却した後の第1の冷却機構240から噴射された第2の冷却媒体55が存在すると、鋼材10を効果的に冷却することができない。
しかしながら、第2の冷却機構241に設けられた接触部材280は、第1の冷却機構240から噴射された第2の冷却媒体55を水切りする機能も有する。すなわち、第2の冷却機構241から噴射される第2の冷却媒体55は、第1の冷却機構240から噴射された第2の冷却媒体55と干渉することなく、鋼材10を冷却することができる。そのため、本実施形態によれば、第2の冷却機構241から噴射された第2の冷却媒体55により鋼材10を効果的に冷却することが可能である。
【0080】
同様に、第3の冷却機構242の接触部材280も、第2の冷却機構241から噴射される第2の冷却媒体55を水切りする機能を有する。すなわち、第3の冷却機構242から噴射される第2の冷却媒体55は、第2の冷却機構241から噴射された第2の冷却媒体55と干渉することなく、鋼材10を冷却することができる。そのため、本実施形態によれば、第3の冷却機構242から噴射された第2の冷却媒体55により鋼材10を効果的に冷却することが可能である。
したがって、本実施形態によれば、第2の冷却装置223による鋼材10の二次冷却をより効果的に行うことができる。
【0081】
本実施形態では、互いに隣接する各冷却機構の並び間隔をそれぞれ一定に保ちつつ、各冷却機構の並びを鋼材10の曲げ形状に追従させる機構を、移動機構という。
図9〜
図11に示した第2の冷却装置223では、接触部材280及び連結部材290、293が上述の移動機構を構成する。接触部材280及び連結部材290〜293により構成される移動機構は、鋼材10の移動に対応して第2の冷却装置223を移動させるため、受動的な移動機構である。
【0082】
(第2実施形態、鋼材の冷却方法)
次に、本実施形態に係る第2の冷却装置223を使用した鋼材10の冷却方法について、
図12を用いて説明する。
図12は、接触部材280及び連結部材290〜293を備える第2実施形態に係る第2の冷却装置223を用いて鋼材10を冷却する様子を示す模式図である。
本実施形態に係る鋼材10の冷却方法では、
図12に示すように、第1の冷却機構240の中心と第2の冷却機構241の中心とが連結部材290によって連結されており、第2の冷却機構241の中心と第3の冷却機構242の中心とが連結部材293によって連結されている。そのため、第2の冷却媒体55を送り方向に沿った複数箇所に対して噴射する際の送り方向における噴射間隔がそれぞれ一定に保たれている。
【0083】
また、本実施形態に係る鋼材10の冷却方法では、
図12に示すように、第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242に設けられた接触部材280が鋼材10に接触している。これにより、本実施形態に係る鋼材10の冷却方法では、鋼材10に対する第2の冷却媒体55の衝突位置の並びを、鋼材10の外形に接触することで得られた鋼材10の所定の形状に追従させている(移動工程)。
本実施形態に係る鋼材10の冷却方法によれば、第2の冷却媒体55を送り方向に沿った複数箇所に対して噴射する際の送り方向における噴射間隔がそれぞれ一定に保たれているとともに、鋼材10に対する第2の冷却媒体55の衝突位置の並びを鋼材10の所定の形状に追従させているため、鋼材10の焼きむらを低減することができる。
【0084】
(第2実施形態、変形例1)
次に、第2実施形態の変形例1について、
図13を用いて説明する。
図13は、第2実施形態の変形例1に係る第2の冷却装置の構成を示す模式図である。
上述の第2の冷却装置223では、移動機構として接触部材280と連結部材290〜293を設けたが、移動機構の構成はこれに限定されない。
【0085】
図13に示すように第2の冷却機構241は、例えばモータなどを内蔵した駆動部295を有する。駆動部295は、第1の冷却機構240の中心と同心円状に延伸するガイド(ガイド部)296に取り付けられる。駆動部295は、鋼材10に対して付与する予定の所定の形状に応じて、第2の冷却機構241のヘッダー255をガイド296に沿って移動させる。つまり、ガイド296は、第2の冷却機構241の移動方向を規定する。
【0086】
同様に、第3の冷却機構242は、例えばモータなどを内蔵した駆動部297を有する。駆動部297は、第1の冷却機構240の中心と同心円状に延伸するガイド(ガイド部)298に取り付けられる。駆動部297は、鋼材10に対して付与する予定の所定の形状に応じて、第3の冷却機構242のヘッダー255をガイド298に沿って移動させる。つまり、ガイド298は、第3の冷却機構242の移動方向を規定する。
本変形例によれば、駆動部295が鋼材10に対して付与する予定の所定の形状に応じて第2の冷却機構241のヘッダー255をガイド296に沿って移動させるとともに、駆動部297が鋼材10に対して付与する予定の所定の形状に応じて第3の冷却機構242のヘッダー255をガイド298に沿って移動させる。これにより、第2の冷却機構241のヘッダー255及び第3の冷却機構242のヘッダー255から噴射される第2の冷却媒体55は、鋼材10に衝突する衝突位置と衝突角度とを一定に保つことができる。
上述の理由から、本変形例によれば、第2実施形態と同様に、従来技術では冷却することが難しかった曲げ11の外側も確実に冷却することができるため、鋼材10の曲げ加工における焼きむらを低減することができる。
【0087】
第2実施形態の変形例1では、駆動部295、297とガイド296、298とが移動機構を構成する。駆動部295、297とガイド296、298とにより構成される移動機構は、予めプログラミングされた鋼材10の曲げ形状に応じて第2の冷却装置223を移動させるため、能動的な移動機構である。
なお、ガイド296、298はレール状のガイドに限定されず、種々の構成を取り得る。例えばガイドは、第2の冷却機構241と第3の冷却機構242とをそれぞれ鉛直上方から吊り下げて案内してもよい。
【0088】
また、本変形例において、ガイド296、298を省略し、予めプログラミングされた鋼材10の曲げ形状に応じて、中心間距離L
1、L
2がそれぞれ一定になるように駆動部295、297を制御してもよい。但し、確実に中心間距離L
1、L
2を一定にするためには、ガイド296、298が設けられていることが好ましい。
【0089】
(第2実施形態、変形例2)
次に、第2実施形態の変形例2について、
図14を用いて説明する。
図14は、第2実施形態の変形例2に係る第2の冷却装置223の構成を示す模式図である。
図14に示す第2の冷却装置223は、移動機構として、接触部材280及びガイド296、298を備える。
【0090】
本変形例では、第2の冷却機構241のヘッダー255は、摺動部材295’により、ガイド296に沿って移動することが可能である。同様に、第3の冷却機構242のヘッダー255は、摺動部材297’により、ガイド298に沿って移動することが可能である。
また、本変形例では、第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242が接触部材280を備えているため、第2の冷却機構241のヘッダー255及び第3の冷却機構242のヘッダー255は、鋼材10の移動に追従して移動する。
【0091】
これにより、鋼材10に対して複雑な曲げ加工を行う場合でも、第2の冷却機構241及び第3の冷却機構242のヘッダー255から噴射される第2の冷却媒体55は、鋼材10に衝突する衝突位置及び衝突角度を一定に保つことができる。そのため、鋼材10の曲げ形状によらず、鋼材10の曲げ11の外側の周面に対して第2の冷却媒体55を噴射することができるので、曲げ加工における焼きむらを低減することが可能である。
なお、本変形例の移動機構は、鋼材10の移動に対応して第2の冷却装置223を移動させるため、受動的な移動機構である。
【0092】
(第3実施形態、鋼材の冷却装置)
次に、第3実施形態に係る鋼材10の冷却装置について、
図15〜
図17を用いて説明する。
図15は、第3実施形態に係る鋼材10の冷却装置を備える曲げ加工装置を示す模式図である。
図16は、第1の水切り機構300の構成を示す模式図である。
図17は、第3実施形態に係る鋼材10の冷却装置を用いて鋼材10を冷却する様子を表す模式図である。
図15に示すように、本実施形態に係る第2の冷却装置323のうち、最上流位置にある第1の冷却機構40は、水切り水を噴射する第1の水切り機構300を有する。第1の水切り機構300は、第1の冷却装置22と第2の冷却装置23の最上流に位置する第1の冷却機構40との間に設けられる。第1の水切り機構300は、鋼材10と第1の冷却機構40より噴射された第2の冷却媒体55との衝突位置よりも上流位置で、第1の冷却装置22から下流側に向けて噴射された第1の冷却媒体35を水切りする。
【0093】
図16に示すように第1の水切り機構300は、鋼材10の周方向に分割して設けられ、水切り水を供給するヘッダー350〜353を有する。上部ヘッダー350は鋼材10の鉛直上方に配置され、下部ヘッダー351は鋼材10の鉛直下方に配置される。側部ヘッダー352、353は、それぞれ鋼材10の水平方向側方に配置される。各ヘッダー350〜353は、独立して水切り水の流速や水量を制御できる。なお、ヘッダー350〜353の数は本実施形態の数に限定されず、任意に設定できる。
【0094】
各ヘッダー350〜353には、それぞれスプレーノズル354が設けられる。スプレーノズル354には、例えばフラットノズル、フルコーンノズル、長円ノズルなどが用いられる。なお、各ヘッダー350〜353に設けられるスプレーノズル354の数は
図16に示された数に限定されず、任意に設定できる。
【0095】
図17に示すように各ヘッダー350〜353のスプレーノズル354は、スプレーノズル354からの水切り水が上流側、すなわち第1の冷却装置22側に噴射される向きに配置される。そして、第1の水切り機構300から噴射される水切り水によって、第1の冷却媒体35は水切りされるので下流側に流れない。このため、第1の冷却装置22から噴射される第1の冷却媒体35の影響を受けることなく、第1の冷却機構40から噴射される第2の冷却媒体55を鋼材10に衝突させることができる。したがって、第2の冷却装置323が第1の水切り機構300を備えることにより、第1の冷却機構40による鋼材10の二次冷却をより効果的に行うことができる。
【0096】
また、
図15に示すように第2の冷却装置323は、水切り水を噴射する第2の水切り機構320及び第3の水切り機構321をさらに備えてもよい。第2の水切り機構320は、第1の冷却機構40と第2の冷却機構41との間に設けられる。第3の水切り機構321は、第2の冷却機構41の下流側に設けられる。
第2の冷却装置323が第2の水切り機構320を備えることにより、第2の水切り機構320から噴射される水切り水によって、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55は水切りされるので下流側に流れない。このため、第1の冷却機構40から噴射される第2の冷却媒体55の影響を受けることなく、第2の冷却機構41から噴射される第2の冷却媒体55を鋼材10に衝突させることができる。したがって、第2の冷却装置323が第2の水切り機構320を備えることにより、第2の冷却機構41による鋼材10の二次冷却をより効果的に行うことができる。
【0097】
第3の水切り機構321から噴射される水切り水によって、第2の冷却機構41から噴射される第2の冷却媒体55は水切りされるため、第2の冷却機構41から噴射される第2の冷却媒体55が鋼材10を超えて飛散するのを抑制できる。
なお、第2の水切り機構320及び第3の水切り機構321は、第1の水切り機構300と同様の構成を有する。
【0098】
(第3実施形態、鋼材の冷却方法)
次に、第3実施形態に係る鋼材10の冷却方法について、
図17を用いて説明する。
(第1の水切り工程)
本実施形態に係る鋼材10の冷却方法は、第2の冷却装置23のうち最上流に位置する第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突位置よりも上流位置で、下流側に向けて噴射された第1の冷却媒体35を水切りする第1の水切り工程を有する。
本実施形態に係る鋼材10の冷却方法が第1の水切り工程を有することにより、第1の冷却装置22から噴射される第1の冷却媒体35の影響を受けることなく、第1の冷却機構40から噴射される第2の冷却媒体55を鋼材10に衝突させることができる。そのため、第1の冷却機構40による鋼材10の二次冷却をより効果的に行うことができる。
【0099】
(第2の水切り工程)
本実施形態に係る鋼材10の冷却方法は、第2の冷却媒体55のうちの一つと鋼材10との衝突位置よりも下流位置で、下流側に向かう第2の冷却媒体55を水切りする第2の水切り工程をさらに複数有してもよい。
本実施形態に係る鋼材10の冷却方法が第2の水切り工程を複数有することにより、第1の冷却機構40から噴射される第2の冷却媒体55の影響を受けることなく、第2の冷却機構41から噴射される第2の冷却媒体55を鋼材10に衝突させることができる。また、本実施形態に係る鋼材10の冷却方法が第2の水切り工程を複数有することにより、第2の冷却機構41から噴射される第2の冷却媒体55を水切りすることができるので、第2の冷却媒体55が鋼材10を超えて飛散するのを抑制できる。
したがって、本実施形態に係る鋼材10の冷却方法が第2の水切り工程を有することにより、第2の冷却機構41による鋼材10の二次冷却をより効果的に行うことができる。
【0100】
(第4実施形態、鋼材の冷却装置)
次に、第4実施形態に係る鋼材10の冷却装置について、
図18を用いて説明する。
図18は、第4実施形態に係る鋼材10の冷却装置を備える鋼材10の曲げ加工装置の構成の概略を示す模式図である。
【0101】
本実施形態に係る第2の冷却装置423において、第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41から噴射される第2の冷却媒体55は、
図18に示す制御部400によって制御される。制御部400は、例えばコンピュータであり、制御部400には、第2の冷却媒体55の流速や水量密度などを制御するプログラムが格納されている。
制御部400は、第2の冷却媒体55の流速が2〜30m/sec、水量密度が5〜100m
3/m
2/minとなるように、第2の冷却媒体55を制御している。第2の冷却媒体55による冷却により、鋼材10は例えばマルテンサイト変態終了温度Mf未満あるいは室温程度まで冷却される。具体的には、鋼材10は例えば室温〜300℃に冷却される。
なお、本実施形態において、水量密度(m
3/m
2/min)は、冷却水が衝突する領域である被冷却材表面の単位面積、単位時間あたりの水量とする。
【0102】
上述では制御部400が第2の冷却装置423に設けられる場合について説明したが、制御部400を第1の冷却装置22に設け、制御部400が第1の冷却装置22から噴射される第1の冷却媒体35を制御してもよい。制御部400が第1の冷却媒体35を制御する場合には、制御部400は、第1の冷却媒体35の流速が2〜8m/sec、水量密度が20〜80m
3/m
2/minとなるように第1の冷却媒体35を制御している。
制御部400が上述のように第2の冷却媒体55を制御することにより、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55が、第1の冷却装置22から噴射された第1の冷却媒体35を水切りすることができる。
【0103】
鋼材10を効率よく冷却するため、すなわち鋼材10への熱伝達量を大きくするためには、一般に温度境界層の厚さを小さくする必要がある。本実施形態では、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55が第1の冷却媒体35の水切りを行うことにより、温度上昇した第1の冷却媒体35が下流側に流れることを防ぐことができる。これにより、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55の温度境界層の発達を防ぐことができる。したがって、鋼材10を効果的に冷却することができる。
【0104】
また、制御部400が上述のように第2の冷却媒体55を制御することにより、第2の冷却機構41から噴射された第2の冷却媒体55が、第1の冷却機構40から噴射された第2の冷却媒体55を水切りすることができる。これにより、上述と同様の理由から、第2の冷却機構41から噴射された第2の冷却媒体55の温度境界層の発達を防ぐことができるため、鋼材10をより効果的に冷却することができる。
【0105】
二次冷却において核沸騰域で安定的且つ効率的に鋼材10を冷却するためには、第2の冷却媒体55の水量密度を確保する必要がある。水量密度を確保する観点から、第2の冷却媒体55の流速の下限値を2m/secとする。
【0106】
一方、第2の冷却媒体55の流速の上限については、第1の冷却媒体35の水切りを行い、鋼材10の二次冷却を適切に行うという観点では特に限定されない。但し、第2の冷却装置23のメンテナンス性及び経済性の観点から、第2の冷却媒体55の水量はできるだけ少ない方が好ましく、第2の冷却媒体55の流速はできるだけ遅い方が好ましい。このため、第2の冷却媒体55の流速の上限値を30m/secとする。
なお、本実施形態において、第2の冷却媒体55の流速とは、スプレーノズル54、64出口における流速を指す。
【0107】
(第4実施形態、鋼材の冷却方法)
次に、第4実施形態に係る鋼材10の冷却方法について、
図19を用いて説明する。
図19は、第4実施形態に係る鋼材10の冷却装置を用いて鋼材10の上面を冷却する様子を表す模式図である。
【0108】
図19に示すように、第1の冷却装置22から噴射された第1の冷却媒体35は、衝突角度φ
1で鋼材10に衝突する。第1の冷却媒体35は、鋼材10を一次冷却した後、下流側に向かって流れる。
第1の冷却機構40の上部ヘッダー50のスプレーノズル54から噴射された第2の冷却媒体55は、衝突角度θ
4で鋼材10に衝突する。なお、
図19に示すように、第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41には制御部400が設けられており、第2の冷却媒体55の流速が2〜30m/sec、水量密度が5〜100m
3/m
2/minとなるように制御されている。
【0109】
スプレーノズル54から鋼材10に噴射された第2の冷却媒体55のうち、一部の第2の冷却媒体55aは上流側に流れて、第1の冷却媒体35の水切りを行い、残りの第2の冷却媒体55bは下流側に流れて、鋼材10の二次冷却を行う。この冷却方法によれば、第1の冷却媒体35が水切りされているので、二次冷却を行う第2の冷却媒体55bが第1の冷却媒体35の影響を受けずに、鋼材10の二次冷却を適切に行うことができる。
なお、第2の冷却媒体55aは第1の冷却媒体35の水切りに用いられて、第1の冷却媒体35と共に鋼材10の側方から排出されるので、上流側(加熱装置21側)に流れることはない。
【0110】
第2の冷却機構41の上部ヘッダー60のスプレーノズル64から噴射された第2の冷却媒体55は、衝突角度θ
5で鋼材10に衝突する。スプレーノズル64から鋼材10に噴射された第2の冷却媒体55のうち、一部の第2の冷却媒体55aは上流側に流れて、スプレーノズル54から噴射された第2の冷却媒体55bの水切りを行い、残りの第2の冷却媒体55bは下流側に流れて、鋼材10の二次冷却を行う。この冷却方法によれば、温度上昇した第2の冷却媒体55bが下流側に流れることを防ぐことができるため、第2の冷却媒体55による鋼材10の二次冷却を効率的に行うことができる。
【0111】
本実施形態では、第2の冷却媒体55の流速が2〜30m/secに制御されるので、鋼材10に噴射された第2の冷却媒体55のうちの一部の第2の冷却媒体55aが上流側に流れて第1の冷却媒体35の水切りを行い、残りの第2の冷却媒体55bによって鋼材10の二次冷却が行われる。
したがって、第1の冷却媒体35の影響を受けずに第2の冷却媒体55bが鋼材10を冷却することができるため、第2の冷却媒体55bを鋼材10の曲げ11の外側の周面に対して噴射することができる。これにより、鋼材10の焼きむらを抑制することができ、鋼材10に適切な曲げ加工を施すことができる。しかも、第2の冷却媒体55が第1の冷却媒体35の水切り機能と鋼材10の二次冷却機能を備えているので、第1の冷却媒体35の水切り機構を別に設ける必要が無く、経済性に優れている。
【0112】
鋼材10の下面を冷却する場合も、同様の冷却方法が用いられる。すなわち、鋼材10の下面の冷却においても、第1の冷却機構40の下部ヘッダー51のスプレーノズル54及び第2の冷却機構41の下部ヘッダー61のスプレーノズル64から噴射される第2の冷却媒体55の流速を2〜30m/secとすることにより、第2の冷却媒体55による鋼材10の下面の冷却を適切に行うことができる。なお、第1の冷却機構40の側部ヘッダー52、53のスプレーノズル54及び第2の冷却機構41の側部ヘッダー62、63のスプレーノズル64から噴射される第2の冷却媒体55の流速は、上部ヘッダー50、60及び下部ヘッダー51、61から噴射される第2の冷却媒体55と同様に、2〜30m/secにするのが好ましい。
【0113】
鋼材10の冷却状態に応じて、第2の冷却媒体55の流速だけではなく、第2の冷却媒体55の水量密度や第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突角度も制御部400により制御してもよい。制御部400が第2の冷却媒体55の水量密度や第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突角度を制御可能であることにより、鋼材10に対して複雑な曲げ加工を行う場合であっても、焼きむらを発生させることなく、鋼材10を冷却することができる。
【0114】
(第4実施形態、変形例1)
次に、第4実施形態の変形例1について、
図20〜
図22を用いて説明する。
図20は、第4実施形態の変形例1に係る鋼材10の冷却装置を備える鋼材10の曲げ加工装置1の構成を示す模式図である。
図21は、第4実施形態の変形例1に係る第1の冷却機構40及び移動機構470の構成を示す模式図である。
図22は、従来の鋼材200の冷却方法を用いて鋼材200を冷却する様子を表す模式図である。
本変形例に係る第2の冷却装置423は、
図20及び
図21に示すようにスプレーノズル54、64を移動させる移動機構470をさらに備える。移動機構470は、ヘッダー50〜53、60〜63を支持する支持部材471と、支持部材471(ヘッダー50〜53、60〜63およびスプレーノズル54、64)を移動させる駆動アーム472と、駆動アーム472を駆動させる駆動部495とを有する。なお、移動機構470の構成は本変形例に限定されず、スプレーノズル54、64を移動させることができれば、任意の構成を取り得る。
なお、図示しないが、第2の冷却機構41に設けられる移動機構470は、第1の冷却機構40に設けられる移動機構470と同様の構成を有する。
【0115】
ここで、例えば特許文献1に記載された従来の鋼材200の冷却方法を用いた場合、すなわち
図22に示すように加熱加工後の鋼材200を冷却装置210によって冷却する場合、冷却装置210から噴射された冷却媒体は、鋼材200の送り方向(
図22中のX軸方向)に直進するため、鋼材200の曲げの外側(凸側)の周面201(
図22中の点線で囲った領域)に衝突しない。したがって、曲げの外側の周面201の冷却が十分に行われず、鋼材200に焼きむらが生じる。特に、複雑な形状の曲げ加工を行う場合及び鋼材200の送り速度が速い場合には、鋼材200に焼きむらが生じやすい。
【0116】
一方、本実施形態の移動機構470は、曲げ装置24によって曲げ11を含む所定の形状に形成された鋼材10の移動に追従して、ヘッダー50〜53、60〜63に設けられたスプレーノズル54、64を移動させることができる。したがって、複雑な形状に加工される鋼材10に対しても、鋼材10の曲げ11の外側の周面に対して第2の冷却媒体55を噴射することができる。その結果、曲げ11の外側の周面を適切に冷却することができるので、鋼材10の焼きむらを抑制することができる。
【0117】
さらに、移動機構470によってスプレーノズル54、64を移動させることができるので、スプレーノズル54、64から噴射される第2の冷却媒体55が鋼材10に衝突する衝突角度を調整することができる。
第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突角度を45度以下に調整することにより、鋼材10に衝突した第2の冷却媒体55が上部ヘッダー50、60または下部ヘッダー51、61側に戻ることを防ぐことができる。また、第2の冷却媒体55と鋼材10との衝突角度を調整することにより、鋼材10の送り方向に関する第2の冷却媒体55の運動量を、鋼材10の送り方向に関する第1の冷却媒体35の運動量よりも大きくすることができる。
したがって、第2の冷却装置423が移動機構470を備えることにより、鋼材10の二次冷却をより効果的に行うことができる。
【0118】
また、
図3に示した実施形態では、鋼材10が多様な形状に形成される場合に対応するため、上部ヘッダー50及び下部ヘッダー51の幅を大きくし、上部ヘッダー50と下部ヘッダー51とにそれぞれ複数のスプレーノズル54を設けている。
一方、本変形例では、
図21に示すように上部ヘッダー50及び下部ヘッダー51の幅を小さくすると共に、スプレーノズル54の数を減らすことができる。なお、スプレーノズル54の数は本実施形態に示した数に限定されず、任意に設定できる。例えば側部ヘッダー52、53及び側部ヘッダー52、53に設けられたスプレーノズル54を省略してもよい。
なお、
図21では、制御部400を省略している。
【0119】
さらに、第2の冷却装置423が移動機構470を備えることにより、ヘッダー50〜53に設けられたスプレーノズル54を鋼材10の移動に追従させることができるので、スプレーノズル54から噴射される第2の冷却媒体55を鋼材10に確実に衝突させることができる。そのため、鋼材10を所定の温度に冷却するために必要な第2の冷却媒体55の水量を少なくすることが可能である。これにより、第2の冷却装置423のメンテナンス性及び経済性などを向上させることができる。
【0120】
(第4実施形態、変形例2)
次に、第4実施形態の変形例2について、
図23を用いて説明する。
図23は、第4実施形態の変形例2に係る第2の冷却装置423を備える鋼材10の曲げ加工装置1の構成を示す模式図である。
図23に示すように、本実施形態の第1の冷却機構40及び第2の冷却機構41は、制御部400に加えて、第2の冷却媒体55に脈動を付与する脈動付与機構480をさらに備える。脈動付与機構480の構成は周知の構成を採用することができ、特定の構成に限定されない。
【0121】
鋼材10の二次冷却を核沸騰域で行うためには、一般に鋼材10上の第2の冷却媒体55が撹拌されること及び鋼材10から第2の冷却媒体55に潜熱が適切に付与されることが必要となる。鋼材10に噴射される第2の冷却媒体55に対して、脈動付与機構480によって脈動が付与されている場合には、第2の冷却媒体55が撹拌され、第2の冷却媒体55による鋼材10の二次冷却をより確実に核沸騰域で行うことができる。したがって、鋼材10の二次冷却をより効果的に行うことができる。
【0122】
(第5実施形態、鋼材の冷却装置)
次に、第5実施形態に係る鋼材10の冷却装置について
図24及び
図25を用いて説明する。
図24は、第5実施形態に係る鋼材10の冷却装置を備える曲げ加工装置1の構成を示す模式図である。
図25は、第5実施形態に係る第1の冷却機構540の構成を示す模式図である。
【0123】
図24に示すように、本実施形態に係る鋼材10の曲げ加工装置1は、第2の冷却装置23に代えて、第2の冷却装置523を備える。
図25に示すように、本実施形態に係る第1の冷却機構540の各ヘッダー550〜553のスプレーノズル554は、スプレーノズル554から噴射される第2の冷却媒体55が送り方向の上流側に噴射される向きに配置される。
なお、上部ヘッダー550と下部ヘッダー551のスプレーノズル554は、スプレーノズル554から噴射される第2の冷却媒体55が鋼材10に衝突する衝突角度θ
6が60度以下になる向きに配置されるのが好ましい。衝突角度θ
6を60度以下にすることにより、鋼材10に衝突した第2の冷却媒体55が逆流して上部ヘッダー550又は下部ヘッダー551側に戻ることを抑制できる。
【0124】
各ヘッダー550〜553のスプレーノズル554は、スプレーノズル554から噴射される第2の冷却媒体55が鋼材10に至るまでの間に、各スプレーノズル554から噴射される第2の冷却媒体55同士が相互に交差しない位置に配置されることが好ましい。
さらに、鋼材10に対して複雑な形状の曲げ加工を行う場合であっても、第2の冷却媒体55が鋼材10を適切に冷却することができるように、上部ヘッダー550及び下部ヘッダー551のスプレーノズル54から噴射される第2の冷却媒体55の噴射角度θ
7と、側部ヘッダー552、553のスプレーノズル54とから噴射される第2の冷却媒体55の噴射角度θ
8とは、上述のように第2の冷却媒体55同士が相互に交差しない範囲で、できるだけ大きい角度であることが好ましい。
但し、第2の冷却装置523のメンテナンス性及び経済性を考慮すると、噴射角度θ
7、θ
8はそれぞれ30〜90度程度が好ましい。さらに、後述するように第2の冷却装置523に移動機構570が設けられている場合には、噴射角度θ
7、θ
8はそれぞれ30〜50度程度が好ましい。しかしながら、鋼材10の冷却面が狭小である場合には、θ
7、θ
8は10〜30度であっても構わない。
【0125】
なお、
図25に基づいて第1の冷却機構540の構成について説明したが、第2の冷却機構541も同様の構成を有する。
また、第1の冷却機構540及び第2の冷却機構541において、各スプレーノズル554、564から噴射される第2の冷却媒体55を
図27に示す制御部500によって制御してもよい。
【0126】
第2の冷却媒体55の流速が制御部500によって制御される場合には、2〜15m/secとすることが好ましい。
本実施形態の第2の冷却装置523から噴射される第2の冷却媒体55の流速の下限値は、上述と同様の理由から、2m/secとする。一方、第2の冷却媒体55の流速が15m/secより大きい場合、第2の冷却媒体55が加熱装置21に流れてしまう場合がある。そこで本実施形態では、第2の冷却媒体55の流速の上限値を15m/secとする。
【0127】
本実施形態に係る第2の冷却装置523は、
図28及び
図29に示すように、移動機構570を有してもよい。なお、
図29は第1の冷却機構540に設けられる移動機構570を表しているが、第2の冷却機構541に設けられる移動機構570も同様の構成を有する(不図示)。
また、本実施形態に係る第2の冷却装置523は、
図30に示すように、脈動付与機構580を有してもよい。
なお、移動機構570及び脈動付与機構580としては、第4実施形態と同様の構成のものを採用することができる。
【0128】
(第5実施形態、鋼材の冷却方法)
次に、第5実施形態に係る鋼材10の冷却方法について、
図26を用いて説明する。
図26は、第5実施形態に係る鋼材10の冷却装置を用いて、鋼材10の上面を冷却する様子を表す模式図である。
【0129】
第1の冷却装置22から噴射された第1の冷却媒体35は、衝突角度φ
1で鋼材10に衝突する。第1の冷却媒体35は鋼材10を一次冷却した後、下流側に流れる。
【0130】
第1の冷却機構540の上部ヘッダー550のスプレーノズル554から噴射された第2の冷却媒体55は、衝突角度θ
6で鋼材10に衝突する。スプレーノズル554から鋼材10に噴射された第2の冷却媒体55のうち、一部の第2の冷却媒体55aは上流側に流れて、第1の冷却媒体35の水切りを行う。この冷却方法によれば、二次冷却を行う際に第1の冷却媒体35が水切りされているので、スプレーノズル554から噴射された第2の冷却媒体55bが第1の冷却媒体35の影響を受けずに、鋼材10の二次冷却を行うことができる。なお、第2の冷却媒体55aは第1の冷却媒体35の水切りに用いられた後、第1の冷却媒体35と共に鋼材10の側方から排出されるので、上流側の加熱装置21側に流れない。
【0131】
第2の冷却機構541の上部ヘッダー560のスプレーノズル564から噴射された第2の冷却媒体55は、衝突角度θ
11で鋼材10に衝突する。スプレーノズル564から鋼材10に噴射された第2の冷却媒体55のうち、一部の第2の冷却媒体55aは上流側に流れて、第2の冷却媒体55bの水切りを行う。この冷却方法によれば、二次冷却を行う際にスプレーノズル554から噴射された第2の冷却媒体55bが水切りされているので、スプレーノズル564から噴射された第2の冷却媒体55bがスプレーノズル554から噴射された第2の冷却媒体55bの影響を受けずに、鋼材10の二次冷却を行うことができる。
【0132】
本実施形態の鋼材10の冷却方法によれば、上述の理由から、第2の冷却媒体55の温度境界層の厚さを小さくすることができるので、鋼材10を効率的に冷却することができる。
【0133】
本実施形態によれば、第2の冷却媒体55が送り方向の上流側に向かって噴射されるので、スプレーノズル554から鋼材10に噴射された第2の冷却媒体55aが上流側に流れて第1の冷却媒体35の水切りを行う。また、スプレーノズル564から鋼材10に噴射された第2の冷却媒体55aが上流側に流れて、スプレーノズル554から噴射された第2の冷却媒体55bの水切りを行う。
したがって、温度上昇した第1の冷却媒体35及びスプレーノズル554から噴射された第2の冷却媒体55bの影響を受けずに、第2の冷却媒体55を鋼材10の曲げ11の凸側の周面に噴射することができるため、曲げ加工時における鋼材10の焼きむらを抑制することができ、その結果、鋼材10に適切な曲げ加工を施すことができる。
また、第2の冷却媒体55が第1の冷却媒体35の水切り機能と鋼材10の二次冷却機能とを兼ね備えているので、効率的に鋼材10を冷却することができる。
【0134】
本実施形態において、鋼材10の送り方向に関する第2の冷却媒体55の運動量は、鋼材10の送り方向に関する第1の冷却媒体35の運動量より若干大きくてもよい。但し、第2の冷却媒体55の運動量が第1の冷却媒体35の運動量の2倍以上であると、第2の冷却媒体55aが第1の冷却媒体35を突き抜けて上流側の加熱装置21側に流れる可能性があるため、第2の冷却媒体55の運動量は第1の冷却媒体35の運動量の1〜1.5倍程度が好ましい。
【0135】
上記では
図26を用いて鋼材10の上面を冷却する場合について説明したが、鋼材10の下面を冷却する場合も同様の冷却方法が用いられる。すなわち、鋼材10の下面の冷却においても、上述したように下部ヘッダー551、561のスプレーノズル554、564から噴射される第2の冷却媒体55は送り方向の上流側に噴射され、且つ第2の冷却媒体55の流速を2〜15m/secに制御しすることにより、第2の冷却媒体55による鋼材10の下面の冷却を適切に行うことができる。
なお、側部ヘッダー552、553、562、563のスプレーノズル554、564から噴射される第2の冷却媒体55の流速は、上部ヘッダー550、560及び下部ヘッダー551、561と同様に、2〜15m/secに制限するのが好ましい。
【0136】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【実施例】
【0137】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0138】
第1実施形態に係る鋼材の冷却装置を用いた場合における、鋼材の送り位置に対する鋼材の表面温度について、
図31及び
図32を用いて説明する。
図31は、実施例1−1の結果を示すグラフであり、
図32は、比較例1−1の結果を示すグラフである。
実施例1−1及び比較例1−1では、第1の冷却装置として、
図2に示す第1の冷却装置を用いた。実施例1−1では、第2の冷却装置として、
図3及び
図4に示す第1の冷却機構と
図5に示す第2の冷却機構とを用いた。一方、比較例1−1では、特許文献2に記載されている第2の冷却装置を用いた。
【0139】
実施例1−1では、以下の条件を用いた。
第1の冷却媒体の水量は110L/min、流速は4m/secとした。
第1の冷却機構の上部ヘッダーからの第2の冷却媒体の水量は50L/min、流速は12m/secであり、下部ヘッダーからの第2の冷却媒体の水量は50L/min、流速は12m/secであり、側部ヘッダーからの第2の冷却媒体の水量はそれぞれ18L/min、流速は10m/secとした。第2の冷却機構の上部ヘッダーからの第2の冷却媒体の水量は75L/min、流速は12m/secであり、下部ヘッダーからの第2の冷却媒体の水量は75L/min、流速は12m/secであり、側部ヘッダーからの第2の冷却媒体の水量はそれぞれ20L/min、流速は10m/secである。なお、第1の冷却媒体は柱状噴流であり、水量密度は40m
3/m
2/minであった。
【0140】
二次冷却には、ヘッダーのノズルとしてフラットスプレーノズルを用いた。、広がり角度は上部ヘッダー及び下部ヘッダーでは、ノズルから噴射される第2の冷却媒体の広がり角度(噴射確度)は50度、水量密度は80m
3/m
2/min、とした。側部ヘッダーでは、扁平側面への噴射であるために、スプレー上述の広がり角度は10度、水量密度は40m
3/m
2/minとした。
第2の冷却媒体の運動量は、いずれも第1の冷却媒体の1.5倍以上であった。
【0141】
比較例1−1では、以下の条件を用いた。なお、上述したように、比較例1−1で用いた第1の冷却装置は、実施例1−1で用いた第1の冷却装置と同じであり、比較例1−1における第1の冷却媒体に関する条件も、実施例1−1における第1の冷却媒体に関する条件と同じ条件を用いた。
第2の冷却媒体の水量は200L/min、第2の冷却媒体の流速は4m/sec、第2の冷却媒体の水量密度は12m
3/m
2/minとした。また、第2の冷却媒体の噴射態様は柱状噴流とした。
鋼材の送り方向に関する第2の冷却媒体の運動量は鋼材の送り方向に関する第1の冷却媒体の運動量の1倍であった。
【0142】
上記条件に基づき、鋼材に対して曲げ加工を行った。なお、
図31および
図32において、横軸は鋼材の送り方向の位置(送り位置)を示し、縦軸は鋼材の表面温度を示す。また、
図31及び
図32において、実線は鋼材の曲げ部内側に位置するある一点の温度変化を示し、点線は鋼材の曲げ部外側に位置するある一点の温度変化を示す。
図31および
図32を比較すると、比較例1−1においては、曲げ部の内側と外側とで温度差が生じているのに対して、実施例1−1においては、曲げ部の内側と外側とで温度差がほとんど生じなかった。
したがって、本発明によれば、鋼材の曲げ部の内側と外側とを均一に冷却できるため、従来技術の課題である焼きむらを抑制できることが分かった。
【実施例2】
【0143】
第1実施形態に係る鋼材の冷却装置を用いた場合の残留応力について、
図33を用いて説明する。
図33は、実施例2−1、実施例2−2及び比較例2−1の結果を示すグラフである。
なお、実施例2−1、実施例2−2及び比較例2−1で用いた第1の冷却装置は、実施例1−1及び比較例1−1で用いた第1の冷却装置と同じである。また、実施例2−1及び実施例2−2で用いた第2の冷却装置は、実施例1−1で用いた第2の冷却装置と同じである。さらに、比較例2−1で用いた第2の冷却装置は、比較例1−1で用いた第2の冷却装置と同じである。
【0144】
実施例2−1の条件は、第2の冷却機構の側部ヘッダーから噴射される第2の冷却媒体の水量を18L/minとした点以外は、実施例1−1と同様の条件を用いた。
【0145】
実施例2−2の条件は以下の通りである。
第1の冷却媒体の水量は110L/min、第1の冷却媒体の流速は3m/sec、第1の冷却媒体の水量密度は40m
3/m
2/minとし、第1の冷却媒体の噴射態様は柱状噴流とした。
第1の冷却機構の上部ヘッダー及び下部ヘッダーから噴射される第2の冷却媒体については、水量を60L/min、流速を14m/secとした。第1の冷却機構の側部ヘッダーから噴射される第2の冷却媒体については、水量を23L/min、流速を12m/secとした。
【0146】
第2の冷却機構の上部ヘッダー及び下部ヘッダーから噴射される第2の冷却媒体については、水量を90L/min、流速を14m/secとした。第2の冷却機構の側部ヘッダーから噴射される第2の冷却媒体については、水量を23L/min、流速を12m/secとした。
第1の冷却機構及び第2の冷却機構のヘッダーのノズルとしては、長円吹きスプレーノズルを用いた。
【0147】
第1の冷却機構及び第2の冷却機構の上部ヘッダー及び下部ヘッダーから噴射される第2の冷却媒体については、広がり角度(噴射角度)を50度、水量密度を25m
3/m
2/minとした。
第1の冷却機構及び第2の冷却機構の側部ヘッダーから噴射される第2の冷却媒体については、広がり角度(噴射角度)を10度、水量密度を28m
3/m
2/minとした。
鋼材の送り方向に関する第2の冷却媒体の運動量は、鋼材の送り方向に関する第1の冷却媒体の運動量の1.5倍以上であった。
【0148】
比較例2−1では、比較例1−1と同じ条件を用いた。
【0149】
上記条件で鋼材に対して曲げ加工を行った。その結果を
図33に示す。
図33において、縦軸は冷却後の鋼材に残留する応力を示し、比較例2−1の残留応力を1とした場合の比率を示す。また、正の残留応力は引張応力であり、負の残留応力は圧縮応力である。
【0150】
図33を参照すると、比較例2−1においては、鋼材に引張応力が残留したのに対して、実施例2−1及び2−2においては、鋼材に圧縮応力が残留した。したがって、本発明によれば、鋼材の強度が向上することが分かった。
【実施例3】
【0151】
第5実施形態に係る鋼材の冷却装置を用いた場合における、鋼材の送り位置に対する鋼材の表面温度について、
図34を用いて説明する。
図34は、実施例3−1の結果を示すグラフである。
実施例3−1では、
図2に示した第1の冷却装置及び第5実施形態に係る第2の冷却装置を用いた。
【0152】
実施例3−1では、第2の冷却装置として
図25に示す第2の冷却装置を用いた点以外は、実施例1−1と同じ条件を用い、鋼材に対して曲げ加工を行った。
図34の横軸は鋼材の送り方向の位置(送り位置)を示し、縦軸は鋼材の表面温度を示す。また、
図34において、実線は鋼材の曲げ部内側に位置するある一点の温度変化を示し、点線は鋼材の曲げ部外側に位置するある一点の温度変化を示す。
【0153】
図34に示すように、実施例3−1においては、曲げ部の内側と外側とにおいて温度差がほとんど生じておらず、比較例1−1のような温度差は生じていなかった。したがって、本発明によれば、鋼材の曲げ部の内側と外側とを均一に冷却できるため、従来技術の課題である焼きむらを抑制できることが分かった。