【実施例】
【0028】
以下の実施例は、現在最もよく知られた本発明の実施形態を説明する。しかしながら、以下は、本発明の原理の応用の例示または説明にすぎないことを理解されたい。当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱しない範囲で多くの修正、ならびに代替の組成物、方法およびシステムを工夫し得る。添付の特許請求の範囲は、そうした修正および構成を含むことを意図している。したがって、本発明について詳細に上述してきたが、以下の実施例は、現時点で本発明の最も実用的で好ましいと考えられる実施形態についてさらに詳述するものである。
【0029】
(実施例1)
固体を形成する局所麻酔製剤
本発明の一実施形態により、表1の製剤の組成に従い固体を形成する局所麻酔製剤を調製した:
【0030】
【表1】
【0031】
製剤は、適用後粘着性の軟らかい固体を形成する。
【0032】
(実施例2)
固体を形成する局所麻酔製剤
本発明の一実施形態により、表2の製剤の組成に従い別の固体を形成する局所麻酔製剤を調製した:
【0033】
【表2】
【0034】
(実施例3)
ヘルペス後神経障害が原因の神経障害性疼痛の処置
実施例1の製剤について、ヘルペス後神経障害に罹患している23例のヒト被験者を対象に二重盲検によるクロスオーバー試験を実施した。約1ミリメートルの層の製剤を、ヒト被験者が疼痛に罹患している皮膚領域に適用した。製剤は軟らかい粘着性固体層に凝固し、60分後に剥がして除去した。各被験者の疼痛スコアを視覚的アナログ疼痛スケールで記録した。治療群(active arm)の疼痛スコアの平均値は、製剤の適用から早くも約30分後にプラセボ群と比較して著しい低下を示し始め、治療群の低下はプラセボ群に対して約2倍大きかった。製剤の疼痛スコアの低下は製剤の除去後も継続し、プラセボの2倍を超える水準を9時間を超えて維持した。疼痛スコアを
図1に示す。治療群の患者ではさらに、プラセボ群よりアロディニアが大きく軽減された。結果を
図2に示す。この実施例から、製剤適用のわずか1時間後に、疼痛およびアロディニアが顕著に軽減され、その効果が9時間を超えて持続し得ることが示される。
【0035】
(実施例4)
ヘルペス後神経障害が原因の神経障害性疼痛の処置
実施例3に記載されているように0.3mm厚の製剤層を皮膚に適用し、適用後約2時間そのまま状態しておくことにより、製剤中に存在する実質的にすべての水が蒸発し、局所麻酔薬の送達が実質的に停止するが、鎮痛作用は持続する。
【0036】
(実施例5)
製剤の粘度試験
以下は、本発明の製剤の粘度測定の試験手順の概要を示す。
【0037】
1.試験を行う必要があるサンプルを冷蔵庫から取り出し、処理前に少なくとも1時間室温で平衡にさせた。サンプルは、処理前に実験室温度で平衡にする必要がある。
【0038】
2.天秤を使用して、空の少量サンプルアダプター(13R)を天秤に載せ、風袋引きボタン(tare button)を押す。アダプターの風袋引きが行われたら、アダプターにサンプル材料を総重量の約1/3(約7グラム)まで充填する。アダプターの硬質な表面を数秒間軽くたたいて底面に存在し得る閉じ込められた空気を除去する。軽くたたいて閉じ込められた空気を除去しながら、サンプル重量が20〜21グラム(最大)になるまで、サンプルアダプターの1/3を1度にさらなるサンプル材料で充填し続ける。
【0039】
3.バランス遠心分離機を使用して、サンプル中の任意の気泡をさらに除去するためアダプターのサンプルを約30秒間高速(約4000rpm)で回転させる。
【0040】
4.遠心分離後、サンプル材料(約1グラム)をさらに加えて、21〜22グラムの最終的なサンプル重量を得る。サンプル重量(グラム単位)を記録する。
【0041】
5.粘度計の温度コントローラーを23±2℃に設定する。少量サンプルアダプター内のサンプルを平衡にさせる。温度計を使用して、プローブを、アダプターの壁から離れたサンプルの中央に1cm以下挿入する。
【0042】
6.ここでサンプルは粘度計による試験の準備が整う。サンプルアダプターをサンプルアダプターホルダーに挿入し、溝を合わせて適切な位置にロックする。スピンドル連結ナットモジュールの後ろにあるナットをねじって外し、サンプルアダプターを支持するバックホルダーを取り外す。スピンドル連結リンクを粘度計連結ナットにはめ込み、スピンドルを時計回りに回す。バックホルダーを元の位置に戻し、同時にスピンドルをサンプルホルダーの中央に浸す。できる限りサンプルの混乱(perturbation)を回避する。スピンドル連結ナットモジュールの後にあるバックアダプターを維持するナットをねじ込む。粘度測定の際は、スピンドルをシャフトの凹みの中央までサンプルに浸す必要がある。スピンドルをシャフトの凹みの中央までサンプルに浸さないと、不完全な粘度測定値が得られることがある。
【0043】
7.スピンドルを所定の位置に固定したら、「速度設定(SET SPEED)」キーを1回押し、矢印tまたはj.を使用してスピンドルの速度を4.0rpmに設定する。「速度設定」キーを再び押す。適切な速度(4.0rpm)およびスピンドル(7)がディスプレイに表示されたら、2分からカウントダウンするようにタイマーを設定する。
【0044】
8.タイマーを始動させると同時に、「モーターオン/オフ(MOTOR ON/OFF)」キーを押して粘度測定を開始する。粘度測定値およびトルク値(%)を記録する前に読みを2分間平衡にさせる。
【0045】
9.読みが粘度計の範囲外(トルク測定値(%)>100.0%)になった場合、cpおよびトルク測定値はEEEEを示す。ここでモーターをオフにし、速度をすぐ下の設定に変更し、2分間のタイマーを再始動させる。モーターおよびタイマーを同時にオンにし、読みを2分間平衡にさせてからトルク値および粘度値を記録する。トルクおよび粘度が依然として範囲外(EEEE)である場合、速度を段階的に下げ続け、T値(%)および粘度値が範囲内に収まるまでサンプルの測定を繰り返す。
【0046】
10.2分間の平衡時間が経過したら、トルク値(%)および粘度値を記録する。モーターキーを押してオフにする。ここで、ロックを解除し、サンプルアダプターをサンプルアダプターホルダーから慎重に取り外す。粘度計連結ナットを保持しながら、スピンドルカウンターを時計回りに回してスピンドルを粘度計から取り外す。
【0047】
11.過剰のサンプル材料をスピンドルから除去する。サンプルアダプターに残ったサンプルは、廃棄物容器に入れてもよい。
【0048】
(実施例6)
製剤の粘度は、主にチューブからの製品の絞り出しにくさ、および製品の皮膚における展延性に影響する。粘度が低くなると、容器から出しやすくなると同時に皮膚に適用しやすくなるが、粘度が低すぎると、製品が使用できなくなることがある。粘度が過度に低いと、製剤がチューブから過剰に滴るか、または皮膚に適用後流れたりする場合がある。
【0049】
様々な粘度で数種の製剤を製造して、様々な粘度範囲を実証した。以下の製剤を製造し、塗布性について評価した。粘度約28kセンチポアズの製剤1は適用が容易で広がりやすいものの、やや流れやすかった。製剤2および3は若干より高粘度であり、その分流れにくかった。製剤4および5はさらに高粘度であったが、それでもチューブから絞り出しやすく、平らな層に非常に広がりやすかった。こうした高粘度製剤はより流れにくい傾向を示した。粘度約828kの製剤6は極めて粘稠であり、投薬して広げるのにより手間がかかるものの、一部の用途にはなお好適であった。とはいえ、アロディニアにかかっている皮膚など非常に感受性の高い皮膚表面にはあまり望ましくないと考えられる。
【0050】
【表3】
【0051】
(実施例7)
製剤の全含水量は、主に化学的安定性および乾燥時間の観点から重要である。テトラカインは水溶液中で4−ブチルアミノ安息香酸(4−BABA:4−butylaminobenzoic acid)および2−ジメチルアミノエタノール(DMAE)に加水分解することが示されている。したがって、製剤の分解生成物は、製剤の最適な効力および純度を確保するため最小限にとどめるべきである。様々な製剤の試験(下記表を参照)から、製剤の4−BABAレベルは製剤の全含水量に相関することが示された。5℃で24カ月保存(保管期間)後、4−BABAのレベルを3%未満に維持することが望ましいという意味で、たとえば全含水量を確実に約50%未満に保つことが望ましいことになる。
【0052】
【表4】
【0053】
また、全含水量は製剤の乾燥時間にも直接影響を与える点に注目すべきである。水が蒸発すると製剤は凝固層を形成するため、全含水量は乾燥時間に直接影響することが予想される。数種の製剤を試験して含水量の乾燥時間に与える影響を評価したところ、下記に示す結果から、約30%の水を含む製剤は約10分で完全に指触乾燥したのに対し、40%および54%の水を含む製剤は指触乾燥にそれぞれ約30および60分を要した。指触乾燥とは、指で軽く触れても製剤が層から剥がれないほど十分に製剤層の表面が凝固していることを意味する。
【0054】
【表5】
【0055】
(実施例8)
本明細書の製剤は冷蔵状態で保存してもよいため、非常な低温、凍結温度または循環(凍結融解)温度が製剤に与える影響は、製剤の改良のために注目し得る。凍結融解サイクルにより製剤中のPVA分子は架橋を生じ得、結果として粘度が飛躍的に増大し、製剤が皮膚に広がりにくくなり得る。複数の「凍結融解」サイクルにさらした際の影響を評価するため、数種の製剤について一連のサイクリング(凍結融解)試験を行った。凍結融解1サイクルとは、2〜3日間凍結条件(すなわち−20℃)にさらした後、2〜3日間解凍条件(すなわち25℃)にさらすことと定義される。強固な(robust)製剤であるほど、複数の凍結融解サイクルにさらされた後の粘度の増大が小さくなる。
【0056】
数種の製剤を開発して、凍結融解サイクルにかけた。実施例5に概要を示した方法を使用してベースラインおよび各凍結融解サイクル後の粘度を測定した。
【0057】
下記製剤について収集したデータから、水とPVAとの比率が凍結/融解にさらされることに対する抵抗性に影響を与えることが示される。水:PVA比が2.5を超える製剤は、下記表に示すように、複数の凍結/融解サイクルにさらされた後の粘度の増大がさほど顕著でないことが実証された。
【0058】
【表6】
【0059】
(実施例9)
2種の固体を形成する局所麻酔製剤を作製した。その組成を以下の表に示す。その2種の製剤は、乳化剤として製剤20ではSpan40(ソビタンモノパルミテート(Sobitan Monopalmitate))を使用し、製剤21ではSpan60(ソルビタンモノステアレート)を使用したこと以外は同じである。約3カ月後、製剤20は、製剤21より(that)著しい相分離を示した。
【0060】
【表7】
【0061】
いくつかの好ましい実施形態を参照しながら本発明について記載してきたが、当業者であれば、本発明の精神を逸脱しない範囲で様々な修正、変更、省略および代用が実施可能であることを理解する。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されることを意図している。