【実施例1】
【0013】
図1および2に示すキックスケータにおいて、11は操作者Mが乗ることができるボードで、キックスケータの後側から平面を見たときに逆T字形に形成されている。すなわち、12は前側の中央板部、13,14は後側の左右のウイング板部である。15は前輪、16,17は左右一対の後輪である。
【0014】
18はハンドル支持部材であって、ボード11の前端部に取り付けられるとともに、ハンドルポスト19をその軸心まわりに回転自在に支持している。ハンドルポスト19の下端には、前輪15が回転自在に支持されている。ハンドルポスト19の上部は筒状に形成されており、この筒状の部分20には伸縮軸21が軸心方向にスライド自在にはめ込まれている。そして伸縮軸21の上端にハンドル22が取り付けられている。
【0015】
ハンドル22にはブレーキレバー10が設けられており、このブレーキレバー10に前輪15からの操作ワイヤ24が連結されている。このブレーキレバー10は、操作されることにより、操作ワイヤ24を引っ張って前輪15に制動力を付与するものである。すなわち、前輪15は、ブレーキレバー10の操作により制動可能とされている。
【0016】
ハンドルポスト19の上端には、ロック装置23が設けられている。このロック装置23は、伸縮軸21を固定して、その伸縮を阻止可能であるとともに、伸縮軸21をハンドルポスト19と一体に回転させることが可能である。またロック装置23は、ハンドルポスト19への伸縮軸21の固定を解除して、その伸縮を許容させることができる。固定を解除して伸縮軸21を伸縮させることで、操作者Mの身長に合わせてハンドル22の高さを調整可能である。
【0017】
一対の後輪16,17は、各ウイング板部13,14の先端側の位置に、すなわちウイング板部13,14におけるボード11の中心部から距離をおいた位置に、それぞれ設けられている。
図1〜
図4に示すように、後輪16,17は、いずれも首振り式のキャスタにて構成されており、その首振りの中心軸が前上がりに傾斜した傾斜軸となるように構成されている。これにより、右足を右側のウイング板部14に乗せるとともに左足を左側のウイング板部13に乗せた操作者Mが身体を左右に振ることで、ボード11は、接地した前輪15すなわちハンドルポスト19を中心として左右に旋回する。それによって、接地した後輪16,17が首振り動作を行うことになって、キックスケータに前方への推進力を発生させることができる。
【0018】
図3に示すように、後輪16,17を構成する首振り式のキャスタは、スラストベアリング25によってウイング板部13,14の下面に首振り自在に取り付けられている。26は車輪、27は車輪26を回転自在に支持するブラケットである。ブラケット27の基部28がスラストベアリング25に取り付けられている。車輪26は車軸29を介して回転自在にブラケット27に支持されている。
【0019】
35はレバー材であり、車軸29と平行の支軸30により、上下方向に傾動自在に支持されている。32は支持材であり、下端部でブラケット27に固定されるとともに、上端部で支軸30を保持する。レバー材35は、前部33および後部34で一体に形成され、前部33と後部34との境界部で下方に屈曲した長板状の部材である。詳細には、レバー材35の前部33は、その前端部がブラケット27の基部28の後端部下側に位置し、後端部が支軸30の後方から若干上方に位置するように配置されている。また、レバー材35の後部34は、その前端がレバー材35の前部33の後端から連続し、後端部が車輪26の車軸29の後方から若干上方に位置するように配置されている。すなわち、レバー材35は、前部33が車輪26の上方に位置するとともに、後部34が車輪26の後方に位置するように配置されている。レバー材35の後部34の後端には、接続板37および補強板36,38を介して、接地部39が取り付けられている。この接地部39は、接地し得る擦動面39Sを有するとともにブロック体とされることで、キックスケータの走行時の接地による摩耗に耐え得るように構成されている。なお、これらレバー材35、接続板37、補強板36,38、および接地部39により、レバー体35〜39が構成されている。言い換えれば、接地部39はレバー体35〜39の一端部であり、レバー材35の前端部はレバー体35〜39の他端部である。
【0020】
レバー体35〜39は、レバー材35の前部33が支軸30に支持されて、傾動可能とされている。このため、レバー体35〜39は、支軸30の前方よりも後方の方が重くなるものの、前部33の前端部上面がブラケット27の基部28に規制されて(基部28がストッパーとして作用して)、前輪15が後輪16,17とともに接地しているとき、接地部39が接地しないように構成されている[
図3および
図5(a)参照]。一方で、レバー体35〜39は、前輪15が地面から所定高さhまで浮き上がったとき、接地部39(正確には摺動面39S)が接地してレバー材35が傾動することで、前部33の前端部下面が車輪26の踏面31に接触するように構成されている[
図4および
図5(b)参照]。
【0021】
図1〜5に示す40は補助接地手段であり、ボード11の後端から後下方に設けられている。
図3〜
図5に示すように、補助接地手段40は、前輪15が後輪16,17とともに接地しているときに接地せず、前輪15が地面から所定高さhまで浮き上がったときに接地するように構成されている。補助接地手段40が接地する位置は、後輪16,17の車軸29の後方である。なお、補助接地手段40は必須の構成ではなく、特に設けられなくてもよい。
【0022】
以下、このキックスケータの作用について説明する。
操作者Mは、前輪ブレーキの操作時に、キックスケータの減速に備えて慣性で前側に転倒しないためにも、背筋を伸ばすことなどにより身体の重心を後退させる。しかし、これにより前輪15が地面から浮き上がったような場合には、後輪16,17は回転を続けるためにキックスケータは後輪16,17だけが接地した状態で前進し、これに対し身体は重心が後ろ向きに移動することになる。すると、前輪15がさらに浮き上がり、
図5(b)に示すように、前輪15が地面から所定高さhまで浮き上がるとき、接地部39が接地してレバー材35が傾動する。このため、
図4に示すように、レバー材35の前部33の前端部下面が車輪26の踏面31に接触して押し付けられるとともに、接地部39が地面に押し付けられる。これらによって、後輪16,17の車輪26および接地部39に制動力が付与され、確実にキックスケータを減速して停止させる。また、接地部39が車輪26の車軸29の後方で接地することによって、それ以上の前輪15の浮き上がり、すなわちキックスケータの後側への転倒が防止される。なお、車輪26および接地部39に制動力が付与されてキックスケータが減速すると、慣性により操作者Mの身体の重心が前方に移動し、前輪15の浮き上がりが解消される。
【0023】
また、車輪26および接地部39に付与される制動力が不十分であれば、操作者Mの身体の重心がさらに後退する。このため、一層大きな力で、レバー材35の前部33の前端部下面が車輪26の踏面31に接触して押し付けられるとともに、接地部39が地面に押し付けられる。これらによって、後輪16,17の車輪26および接地部39に一層大きな制動力が付与される。すなわち、前輪15の浮き上がりが解消されるまで、車輪26および接地部39に付与される制動力が増大する。
【0024】
なお、後輪16,17の首振りにレバー体35〜39も追随するので、キックスケータの旋回時にも、直進時と同様に、確実にキックスケータを停止させるとともに、キックスケータの後側への転倒が防止される。
【0025】
このように、本実施例1のキックスケータによると、ブレーキレバー10の操作により制動される前輪15が接地面から浮き上がり、操作による制動が不能となった場合でも、確実にキックスケータを停止させるとともに、キックスケータの後側への転倒が防止されるので、操作者Mによる後側への転倒の危険性を根本的に解決することができる。
【0026】
また、操作者Mの身体の重心が後退するほど、後輪16,17の車輪26および接地部39に付与される制動力が増大して、一層確実にキックスケータを停止させるとともに、キックスケータの後側への転倒が防止されるので、操作者Mによる後側への転倒の危険性を根本的に且つ確実に解決することができる。
【0027】
さらに、補助接地手段40が設けられる場合には、前輪15が地面から所定高さhまで浮き上がったとき、後輪16,17および接地部39が接地するだけでなく、補助接地手段40が後輪16,19の車軸29よりも後方で接地するので、安定性が向上し、操作者Mによる後側への転倒の危険性を根本的に解決することができる。
【実施例2】
【0028】
本発明の実施例2に係るキックスケータは、上記実施例1に係るキックスケータにおけるレバー材35の形状を変更したものである。
以下、本実施例2に係るキックスケータについて
図6および
図7に基づき説明するが、上記実施例1と異なる構成に着目して説明するとともに、上記実施例1と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図6に示すように、本実施例2に係るレバー材135は、前部33と後部134で一体に形成されている。この後部134は、前部の後端に連続するとともに後上方に向いた斜部と、鉛直部134’と、前端で斜部に連続するとともに下端で鉛直部134’に連続する湾曲部とからなる。このレバー材135の下端部、つまり鉛直部134’には、その下端に、接続部材137を介して、接地部39が取り付けられている。
図7に示すように、鉛直部134’(接地部39に連続する部分)の形状は、前部33の前端部下面が車輪26の踏面31に接触した状態で、接地部39に連続する部分で略鉛直状となるようにされている。すなわち、レバー材135は、接地部39が地面に押し付けられる力を十分に伝達して、車輪26に付与される制動力が増大するように構成されている。
【0030】
これによって、本実施例2に係るキックスケータの直進時および旋回時における車輪26に付与される制動力は、上記実施例1に係るキックスケータの直進時および旋回時における車輪26に付与される制動力と同等、またはそれ以上となる。
【0031】
このように、本実施例2のキックスケータによると、後輪16,17の車輪26および接地部39に付与される制動力が増大して、一層確実にキックスケータを停止させるとともに、キックスケータの後側への転倒が防止されるので、操作者Mによる後側への転倒の危険性を根本的に且つ確実に解決することができる。
【0032】
ところで、上記実施例1および2では、キックスケータに1輪の前輪15および左右1対の後輪16,17が備えられたものとして説明したが、この数に限定されるものではない。