(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る高炉設備の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0016】
〈第一番目の実施形態〉
本発明に係る高炉設備の第一番目の実施形態を
図1〜4に基づいて説明する。
【0017】
図2に示すように、鉄鉱石や石灰石や石炭等の原料1を定量供給する原料定量供給装置111は、当該原料1を搬送する装入コンベア112の搬送方向上流側に連絡している。この装入コンベア112の搬送方向下流側は、高炉本体110の頂部の炉頂ホッパ113の上方に連絡している。熱風101(1000〜1300℃)を送給する熱風送給装置114は、前記高炉本体110の羽口に設けられたブローパイプ115に連結されている。
【0018】
このような本実施形態においては、前記原料定量供給装置111、前記装入コンベア112、前記炉頂ホッパ113等により原料装入手段を構成し、前記熱風送給装置114、前記ブローパイプ115等により熱風吹込み手段を構成している。
【0019】
前記ブローパイプ115の途中には、インジェクションランス116の先端側が挿入されて接続されている。前記インジェクションランス116の基端側には、空気106を送給する空気送給手段であると共に空気送給量調整手段も兼ねるエアブロア117の送風口が供給ライン119を介して連結されている。前記供給ライン119の、前記エアブロア117の送風口と前記インジェクションランス116の基端側との間には、不活性ガスである窒素ガス102を送給する不活性ガス送給手段である窒素ガス供給源121(
図1参照)が不活性ガス送給量調整手段である流量調整バルブ118を介して連結されている。
【0020】
他方、
図1に示すように、前記高炉本体110の近傍には、無煙炭や瀝青炭等の高品位石炭12を内部に貯留する貯留タンク151が配設されている。前記貯留タンク151の下部には、当該貯留タンク151内の高品位石炭12を定量供給するフィーダ152の基端側が連結されている。前記フィーダ152の先端側は、前記高品位石炭12を微粉砕(直径100μm以下)するローラミル153の受入口に連結されている。
【0021】
前記ローラミル153の送出口は、搬送ライン155を介してサイクロンセパレータ156の受入口に連結されている。前記ローラミル153には、天然ガス108a等を燃焼させた燃焼ガス108を送給するバーナ154が連結されており、当該ローラミル153は、当該バーナ154から送給された燃焼ガス108によって、前記高品位石炭12を加熱(約250℃程度)して乾燥させながら微粉砕すると共に、微粉砕された微粉炭18を前記サイクロンセパレータ156に前記搬送ライン155を介して気流搬送することができるようになっている。
【0022】
また、前記高炉本体110の近傍には、亜瀝青炭や褐炭等の低品位石炭2中の水分3を蒸発させるスチームチューブドライヤ方式の乾燥装置122が配設されており、当該乾燥装置122は、前記窒素ガス供給源121から前記窒素ガス102が内部に送給されると共に、中心部分に配設されたコイル状の加熱管の内部に加熱媒体である水蒸気103が送給されることにより、内部を低酸素雰囲気(数%程度)にしつつ、ホッパ122aから供給された上記低品位石炭2を加熱して(100〜200℃)、水分3及び比較的低温で揮発する揮発成分4を当該低品位石炭2から除去して乾燥石炭5を製すると同時に、当該水分3及び当該揮発成分4を前記窒素ガス102と共に外部へ排出することができるようになっている。
【0023】
前記乾燥装置122の前記乾燥石炭5の排出口は、周囲を覆うシールドフード付きのコンベア141の搬送方向上流側にロータリバルブ131を介して接続している。前記コンベア141の前記シールドフードの内側には、前記窒素ガス供給源121からの窒素ガス102が送給されるようになっており、当該コンベア141の当該シールドフード内は、窒素ガス雰囲気となるようになっている。
【0024】
前記コンベア141の搬送方向下流側は、前記乾燥石炭5を乾留するロータリキルン方式の乾留装置123の当該乾燥石炭5の受入口にロータリバルブ132を介して接続しており、当該乾留装置123は、前記窒素ガス供給源121から前記窒素ガス102が内部に送給されると共に、固定支持されている外側のジャケットに加熱媒体である燃焼ガス104が送給されることにより、内部を窒素ガス雰囲気にしつつ上記乾燥石炭5を加熱して(400〜600℃)、高温で揮発する揮発成分6を当該乾燥石炭5から除去して乾留石炭7を製すると同時に、当該揮発成分6を前記窒素ガス102と共に外部へ排出することができるようになっている。
【0025】
前記乾留装置123の前記乾留石炭7の排出口は、周囲を覆うシールドフード付きのコンベア142の搬送方向上流側にロータリバルブ133を介して接続している。前記コンベア142の前記シールドフードの内側には、前記窒素ガス供給源121からの窒素ガス102が送給されるようになっており、当該コンベア142の当該シールドフード内は、窒素ガス雰囲気となるようになっている。
【0026】
前記コンベア142の搬送方向下流側は、前記乾留石炭7を冷却するスチームチューブドライヤ方式の冷却装置124の当該乾留石炭7の受入口にロータリバルブ134を介して接続しており、当該冷却装置124は、前記窒素ガス供給源121から前記窒素ガス102が内部に送給されると共に、中心部分に配設されたコイル状の冷却管の内部に冷却媒体である冷却水105が送給されることにより、内部を窒素ガス雰囲気にしつつ上記乾留石炭7を冷却(200℃以下)することができるようになっている。
【0027】
前記冷却装置124の前記乾留石炭7の排出口は、周囲を覆うシールドフード付きのコンベア143の搬送方向上流側にロータリバルブ135を介して接続している。前記コンベア143の前記シールドフードの内側には、前記窒素ガス供給源121からの窒素ガス102が送給されるようになっており、当該コンベア143の当該シールドフード内は、窒素ガス雰囲気となるようになっている。
【0028】
前記コンベア143の搬送方向下流側は、前記乾留石炭7を粉砕するミル形式の粉砕装置125の当該乾留石炭7の受入口にロータリバルブ136を介して接続しており、当該粉砕装置125は、当該乾留石炭7と共に送給される窒素ガスにより内部を窒素ガス雰囲気に保持しつつ当該乾留石炭7を粉砕して微粉炭8(直径100μm以下)とすることができるようになっている。
【0029】
前記粉砕装置125の下部は、前記微粉炭8を貯留する貯留タンク126の上部にロータリバルブ137を介して接続しており、当該貯留タンク126は、内部を窒素ガス雰囲気に保持することができるようになっている。前記貯留タンク126の下部には、当該貯留タンク126内の前記微粉炭8を定量供給するフィーダ127の基端側が連結されている。前記フィーダ127の先端側は、前記窒素ガス供給源121からの搬送ライン128の途中に接続されている。前記搬送ライン128は、サイクロンセパレータ129の受入口に接続している。
【0030】
前記サイクロンセパレータ129,156の下部は、前記微粉炭8,18を内部に入れられる供給タンク120の上方に接続されており、当該供給タンク120は、内部を窒素ガス雰囲気で保持することができると共に、前記微粉炭2,18を内部から落下供給することができるようになっている。
【0031】
図1,2に示すように、前記供給タンク120の下部は、前記供給ライン119の、前記エアブロア117及び前記流量調整バルブ118と前記インジェクションランス116との間に接続されており、当該供給ライン119は、前記エアブロアからの前記空気106と前記窒素ガス供給源121からの窒素ガス102とを合流させた搬送ガス107によって、前記供給タンク120の内部から落下供給された前記微粉炭8,18を前記インジェクションランス116から前記ブローパイプ115へ気流搬送して前記羽口へ供給することができるようになっている。
【0032】
図2に示すように、前記インジェクションランス116の基端側の近傍、すなわち、前記羽口の近傍には、当該インジェクションランス116内の温度を検知する搬送ガス状態検知手段である温度センサ161が設けられている。
図3に示すように、前記温度センサ161は、制御手段である制御装置160の入力部に電気的に接続されている。前記制御装置160の出力部は、前記エアブロア117、前記流量調整バルブ118、前記フィーダ127,152にそれぞれ電気的に接続されており、当該制御装置160は、前記温度センサ161等からの情報に基づいて、前記エアブロア117の送風量、前記流量調整バルブ118の開度、前記フィーダ127,152による前記微粉炭8,18の供給量をそれぞれ制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
【0033】
なお、本実施形態においては、前記窒素ガス供給源121、前記乾燥装置122、前記ロータリバルブ131等により、低品位石炭用水分除去手段を構成し、前記窒素ガス供給源121、前記乾留装置123、前記ロータリバルブ132,133、前記コンベア141等により、乾留手段を構成し、前記窒素ガス供給源121、前記冷却装置124、前記ロータリバルブ134,135、前記コンベア142等により冷却手段を構成し、前記窒素ガス供給源121、前記粉砕装置125、前記ロータリバルブ136、前記コンベア143等により、低品位石炭用粉砕手段を構成し、前記貯留タンク126、前記フィーダ127、前記ロータリバルブ136等により、低品位石炭用供給量調整手段を構成し、前記窒素ガス供給源121、前記搬送ライン128、前記サイクロンセパレータ129等により、低品位石炭用搬送手段を構成し、前記貯留タンク151、前記フィーダ152等により、高品位石炭用供給量調整手段を構成し、前記ローラミル153、前記バーナ154、前記搬送ライン155、前記サイクロンセパレータ156等により、高品位石炭用水分除去手段と高品位石炭用粉砕手段と高品位石炭用搬送手段とを兼ねて構成し、前記ブローパイプ115、前記インジェクションランス116、前記エアブロア117、前記流量調整バルブ118、前記供給ライン119、前記窒素ガス供給源121等により、微粉炭気流供給手段を構成している。また、
図1中、110aは、溶融した銑鉄(溶銑)9を取り出す出銑口である。
【0034】
このような本実施形態に係る高炉設備100の作動を次に説明する。
【0035】
前記原料定量供給装置111から前記原料1を定量供給すると、当該原料1が、前記装入コンベア112で前記炉頂ホッパ113内に供給されて前記高炉本体110内に装入される。
【0036】
これと併せて、前記制御装置160を作動させると、当該制御装置160は、前記エアブロア117からの空気106の送給量G1を規定量Gtで送給するように前記エアブロア117を作動制御すると共に、前記貯留タンク151内から高品位石炭12の供給量C1を規定量Ctで前記ローラミル153に供給するように前記フィーダ152の供給速度を作動制御する(
図4中、S11)。
【0037】
前記フィーダ152から供給された前記高品位石炭12は、前記ローラミル153で前記バーナ154からの燃焼ガス108(約250℃程度)によって加熱乾燥されながら微粉砕され、微粉炭18(直径100μm以下)となって前記搬送ライン155を介して前記サイクロンセパレータ156へ気流搬送される。前記サイクロンセパレータ156に気流搬送された前記微粉炭18は、前記燃焼ガス108と分離されて、前記供給タンク120内に入れられる。
【0038】
前記供給タンク120内に入れられた前記微粉炭18は、定量ずつ落下供給され、前記エアブロア117からの前記空気106からなる搬送ガス107によって前記供給ライン119を介して前記インジェクションランス116へ気流搬送され、前記搬送ガス107と共に前記ブローパイプ115の内部に供給され、前記熱風送給装置114からの前記熱風101中に供給されることにより燃焼する。
【0039】
前記ブローパイプ115の内部で燃焼した前記微粉炭18は、火炎となって前記羽口から前記高炉本体110の内部にレースウェイを形成し、前記高炉本体110内の前記原料1中の石炭等を燃焼させる。これにより、前記原料1中の鉄鉱石が還元されて銑鉄(溶銑)9となって前記出銑口110aから取り出される。
【0040】
他方、前記窒素ガス供給源121から窒素ガス102を送給すると共に、前記低品位石炭2を前記乾燥装置122の前記ホッパ122aから当該乾燥装置122の内部に供給すると、当該低品位石炭2は、低酸素雰囲気(数%程度)中で前記水蒸気103により前記加熱管を介して加熱(100〜200℃)され、前記水分3及び前記揮発成分4が蒸発して前記窒素ガス102と共に系外へ排出されることにより、乾燥されて乾燥石炭5となる。
【0041】
なお、上記揮発成分4を含有する上記窒素ガス102は、図示しない燃焼炉で燃焼処理されることにより前記燃焼ガス104として利用された後に浄化処理される。
【0042】
前記乾燥石炭5は、前記ロータリバルブ131を介して前記コンベア141に供給されて窒素ガス雰囲気中で搬送され、前記ロータリバルブ132を介して前記乾留装置123の内部に供給され、窒素ガス雰囲気中で前記燃焼ガス104により前記加熱管を介して加熱(400〜600℃)され、前記揮発成分6が蒸発して前記窒素ガス102と共に系外へ排出されることにより、乾留されて酸素との反応活性の高い乾留石炭7となる。
【0043】
なお、上記揮発成分6を含有する上記窒素ガス102は、図示しない燃焼炉で燃焼処理されることにより前記燃焼ガス104として利用された後に浄化処理される。
【0044】
前記乾留石炭7は、前記ロータリバルブ133を介して前記コンベア142に供給されて窒素ガス雰囲気中で搬送され、前記ロータリバルブ134を介して前記冷却装置124の内部に供給され、窒素ガス雰囲気中で前記冷却水105により前記冷却管を介して冷却(200℃以下)された後、前記ロータリバルブ135を介して前記コンベア143に供給されて窒素ガス雰囲気中で搬送され、前記ロータリバルブ136を介して前記粉砕装置125の内部に供給され、窒素ガス雰囲気中で粉砕(直径100μm以下)されることにより、微粉炭8となる。
【0045】
前記微粉炭8は、前記ロータリバルブ137を介して前記貯留タンク126の内部に供給され、窒素ガス雰囲気中で一旦保持される。
【0046】
このようにして前記高品位石炭12からなる前記微粉炭18を前記高炉本体110に吹き込みながら当該高炉本体110を操業して、所定時間経過すると、前記制御装置160は、前記貯留タンク126内から前記微粉炭8を供給量C2で供給するように前記フィーダ127の供給速度を作動制御すると共に、前記貯留タンク151内からの前記微粉炭18の供給量C1を、前記微粉炭8の供給量C2分だけ減少させる(C1=Ct−C2)ように前記フィーダ152の供給速度を作動制御する(
図4中、S12)。
【0047】
前記フィーダ127から供給量C2で供給された前記微粉炭8は、前記窒素ガス供給源121からの窒素ガス102によって前記搬送ライン128を介して前記サイクロンセパレータ129へ気流搬送されて、前記窒素ガス102を分離された後、前記供給タンク120内に入れられる。
【0048】
これにより、前記供給タンク120内には、前記高品位石炭12からなる供給量C1の前記微粉炭18と前記低品位石炭2からなる供給量C2の前記微粉炭8との混合物が規定量Ct(=C1+C2)で入れられるようになる。
【0049】
前記供給タンク120内で混合された前記微粉炭8,18は、先の説明と同様に、定量ずつ落下供給され、前記エアブロア117からの前記空気106からなる前記搬送ガス107によって前記供給ライン119を介して前記インジェクションランス116へ気流搬送される。
【0050】
このとき、前記低品位石炭2からなる前記微粉炭8は、乾留されることにより反応活性が高くなっていると共に、前記搬送ガス107が酸素を含有していることから(約21体積%)、その一部が、気流搬送中に酸素と反応して燃焼する。このため、上記搬送ガス107及び上記微粉炭8,18は、自己加熱によって温度上昇する。
【0051】
そして、前記制御装置160は、前記温度センサ161からの情報に基づいて、前記搬送ガス107の温度Tgが上限値Tu以下であるか否か判断する(
図4中、S13)。
【0052】
前記搬送ガス107の温度Tgが上限値Tu以下である場合(Tg≦Tu)には、前記制御装置160は、前記貯留タンク126内からの前記微粉炭8の供給量C2をさらに増加させるように前記フィーダ127の供給速度を作動制御すると共に、前記貯留タンク151内からの前記微粉炭18の供給量C1を上記微粉炭8のさらなる増加分だけ減少させる(C1=Ct−C2)ように前記フィーダ152の供給速度を作動制御する(
図4中、S14)。
【0053】
他方、前記搬送ガス107の温度Tgが上限値Tuよりも大きい場合(Tg>Tu)には、前記制御装置160は、前記窒素ガス供給源121から前記窒素ガス102を送給量G2で送給するように前記流量調整バルブ118の開度を作動制御すると共に、前記エアブロア117からの前記空気106の送給量G1を、前記窒素ガス102の送給量G2分だけ減少させる(G1=Gt−G2)ように当該エアブロア117を作動制御する(
図4中、S15)。
【0054】
これにより、前記微粉炭8,18を気流搬送する前記搬送ガス107の酸素濃度が低減し、気流搬送中に酸素と反応して燃焼する前記微粉炭8の量が減少することから、上記搬送ガス107及び上記微粉炭8,18の上昇温度が抑制される。
【0055】
そして、前記制御装置160は、前記温度センサ161からの情報に基づいて、前記搬送ガス107の温度Tgが下限値Td以上であるか否か判断する(
図4中、S16)。
【0056】
前記搬送ガス107の温度Tgが下限値Td以上である場合(Tg≧Td)には、前記制御装置160は、前記窒素ガス供給源121からの前記窒素ガス102の送給量G2をさらに増加させるように前記流量調整バルブ118の開度を作動制御すると共に、前記エアブロア117からの前記空気106の送給量G1を上記窒素ガス102のさらなる増加分だけ減少させる(G1=Gt−G2)ように前記エアブロア117を作動制御する(
図4中、S17)。
【0057】
他方、前記搬送ガス107の温度Tgが下限値Tdよりも小さい場合(Tg<Td)には、前記制御装置160は、前記貯留タンク126内からの前記微粉炭8の供給量C2が前記規定量Ctである(C2=Ct)か否か、すなわち、前記貯留タンク151内からの前記微粉炭18の供給量C1がゼロである(C1=0)か否か、判断する(
図4中、S18)。
【0058】
前記供給量C2が前記規定量Ctである(C2=Ct)、すなわち、前記供給量C1がゼロである(C1=0)、言い換えれば、前記高炉本体110の前記羽口への吹込み炭(PCI炭)を前記高品位石炭12の前記微粉炭18から前記低品位石炭2の前記微粉炭8に切り替え終えた場合には、前記制御装置160は、前記温度センサ161からの情報に基づいて、前記搬送ガス107の温度Tgが上限値Tuと下限値Tdとの間の範囲となるように、前記流量調整バルブ118及び前記エアブロア117を作動制御して、前記搬送ガス107を規定量Gtで送給しつつ、当該搬送ガス107の酸素濃度を調整する(
図4中、S19)。
【0059】
他方、前記供給量C2が前記規定量Ctではない(C2≠Ct)、すなわち、前記供給量C1がゼロではない(C1≠0)場合には、前記制御装置160は、前記ステップS14に戻り、上述したステップを繰り返す。
【0060】
つまり、従来の高炉設備は、高品質で高価な無煙炭や瀝青炭等の高品位石炭12の微粉炭18のみを吹込み炭(Pulverized Coal Injection:PCI炭)として使用するものであったが、本実施形態に係る高炉設備100は、亜瀝青炭や褐炭等の低品位石炭2を乾燥させて乾留することにより酸素との反応活性の高い乾留石炭7(酸素との反応性が低品位石炭2の約20倍)にして、窒素ガス雰囲気において、冷却して微粉砕した微粉炭8を窒素ガス気流で搬送して窒素ガス雰囲気の前記供給タンク120内に供給し、前記高品位石炭12の微粉炭18の供給量C1と前記低品位石炭2の微粉炭8の供給量C2との合計量を規定量Ctで維持しつつ、前記低品位石炭2の微粉炭8の供給量C2を順次増加させながら前記供給タンク120内から前記搬送ガス107によって気流搬送することにより、廉価な低品位石炭2に高燃焼性能を付与した前記微粉炭8に前記微粉炭18を徐々に切り替えながら吹込み炭(PCI炭)として安全に使用することができるようにしたのである。
【0061】
このため、本実施形態に係る高炉設備100においては、前記高炉本体110を操業しながらも、当該高炉本体110の前記羽口への吹込み炭(PCI炭)を前記高品位石炭12の前記微粉炭18から前記低品位石炭2の前記微粉炭8に切り替えることが、当該微粉炭8に異常燃焼を生じさせることなく実施できる。
【0062】
したがって、本実施形態に係る高炉設備100によれば、廉価な低品位石炭2の微粉炭8を吹込み炭(PCI炭)として安全に使用することができるので、銑鉄9の製造コストを低減することができる。
【0063】
また、前記微粉炭8の酸素と反応に伴う自己加熱によって前記搬送ガス107及び前記微粉炭8,18を予熱することができるので、当該微粉炭8,18の着火性を速めて、燃え切り性を向上させることができる。
【0064】
また、吹込み炭(PCI炭)の着火性(燃え切り性)の向上に伴って、吹込み炭(PCI炭)の供給量を削減することができ、銑鉄9の製造コストのさらなる低減を図ることができる。逆に、吹込み炭(PCI炭)の着火性(燃え切り性)の向上に伴って、吹込み炭(PCI炭)の供給量を増加させることもできるので、高炉本体110の頂部に原料1として供給する石炭(コークス)の量を削減することもでき、銑鉄9の製造コストのさらなる低減を図ることができる。
【0065】
なお、前記搬送ガス107の温度Tgの前記上限値Tuとしては、前記低品位石炭2の乾留温度(400〜600℃)が好ましく、特に、当該乾留温度よりも100℃程度低い温度(300〜500℃)であるとさらに好ましい。なぜなら、前記上限値Tuが前記乾留温度を超えると、前記微粉炭8からタール等の熱分解物を生じてしまい、当該熱分解物が前記インジェクションランス116の内壁面等に付着して、当該インジェクションランス116等を閉塞させてしまうおそれがあるからである。
【0066】
また、前記搬送ガス107の温度Tgの前記下限値Tdとしては、200℃が好ましく、特に、前記上限値Tuよりも50〜100℃程度低い温度(200〜450℃)であるとさらに好ましい。なぜなら、前記下限値Tdが200℃未満であると、前記微粉炭8の着火性(燃え切り性)の向上を十分に図ることが難しくなってしまうおそれがあるからである。ここで、前記上限値Tuよりも50〜100℃程度低い温度(200〜450℃)であると、温度の昇降管理幅を必要十分な範囲にすることができ、エネルギ的及び時間的な無駄を減らすことができる。
【0067】
また、前記微粉炭8の供給量C2(増加量)及び前記窒素ガス102の送給量G2(増加量)、言い換えれば、前記微粉炭18の供給量C1(減少量)及び前記空気106の送給量G1(減少量)は、前記搬送ガス107の温度Tgの単位時間当たりの上昇温度(昇温速度)が所定の範囲内となるように、前記温度センサ161からの情報に基づいて、前記制御装置160が前記フィーダ127,152及び前記流量調整バルブ118並びにエアブロア117を制御しながら調整すると好ましい。
【0068】
〈第二番目の実施形態〉
本発明に係る高炉設備の第二番目の実施形態を
図5,6に基づいて説明する。なお、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態での説明と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0069】
図5に示すように、前記供給ライン119の、前記インジェクションランス116と前記供給タンク120との間の当該インジェクションランス116の基端近傍には、分取ライン263の基端側が連結されている。前記分取ライン263の先端側は、三方バルブ264の一つの口に接続されている。前記三方バルブ264の残りの二つの口は、フィルタ装置265A,265Bの受入口にそれぞれ接続している。
【0070】
前記フィルタ装置265A,265Bの送出口は、吸引ポンプ266の吸引口に接続されている。前記吸引ポンプ266の送出口は、前記分取ライン263の基端側と前記インジェクションランス116の基端側との間に戻しライン267を介して接続されている。前記フィルタ装置265A,265Bの送出口と前記吸引ポンプ266の吸引口との間には、前記分取ライン263から分取した前記搬送ガス107中の一酸化炭素濃度を検知するCOセンサ261が設けられている。
【0071】
図6に示すように、前記COセンサ261は、制御手段である制御装置260の入力部に電気的に接続されている。前記制御装置260の出力部は、前記エアブロア117、前記流量調整バルブ118、前記フィーダ127,152にそれぞれ電気的に接続されており、当該制御装置260は、前記COセンサ261等からの情報に基づいて、前記エアブロア117の送風量、前記流量調整バルブ118の開度、前記フィーダ127,152による前記微粉炭8,18の供給量をそれぞれ制御することができるようになっている(詳細は後述する)。
【0072】
なお、本実施形態においては、前記COセンサ261、前記分取ライン263、前記三方バルブ264、前記フィルタ装置265A,265B、前記吸引ポンプ266、前記戻しライン267等により、搬送ガス状態検知手段を構成している。
【0073】
このような本実施形態に係る高炉設備200においては、前述した実施形態の場合と同様にして、前記高炉本体110内に前記原料1を装入する一方、前記フィルタ装置265A,265Bの一方(例えばフィルタ装置265A)のみを前記分取ライン263と前記戻しライン267とに接続するように前記三方バルブ264を開閉操作すると共に、前記吸引ポンプ266を作動させて、前記制御装置260を作動させると、当該制御装置260は、前述した実施形態の場合と同様に、前記エアブロア117からの空気106の送給量G1を規定量Gtで送給するように前記エアブロア117を作動制御すると共に、前記貯留タンク151内から高品位石炭12の供給量C1を規定量Ctで前記ローラミル153に供給するように前記フィーダ152の供給速度を作動制御する。
【0074】
前記フィーダ152から供給された前記高品位石炭12は、前述した実施形態の場合と同様にして、微粉炭18となって気流搬送され、前記サイクロンセパレータ156を介して前記燃焼ガス108と分離されて、前記供給タンク120内に入れられる。
【0075】
前記供給タンク120内に入れられた前記微粉炭18は、前述した実施形態の場合と同様にして、定量ずつ落下供給され、前記エアブロア117からの前記空気106からなる搬送ガス107によって前記供給ライン119を介して前記インジェクションランス116へ気流搬送され、前記搬送ガス107と共に前記ブローパイプ115の内部に供給され、前記熱風送給装置114からの前記熱風101中に供給されることにより燃焼する。
【0076】
前記ブローパイプ115の内部で燃焼した前記微粉炭18は、前述した実施形態の場合と同様に、火炎となって前記羽口から前記高炉本体110の内部にレースウェイを形成し、前記高炉本体110内の前記原料1中の石炭等を燃焼させる。
【0077】
他方、前述した実施形態の場合と同様にして、前記低品位石炭2を乾燥、乾留、冷却、粉砕することにより前記微粉炭8を製造し、当該微粉炭8を前記貯留タンク126の内部に窒素ガス雰囲気下で一旦保持する。
【0078】
そして、前記高品位石炭12からなる前記微粉炭18を前記高炉本体110に吹き込みながら当該高炉本体110を操業して、所定時間経過すると、前記制御装置260は、前述した実施形態の場合と同様に、前記貯留タンク126内から前記微粉炭8を供給量C2で供給するように前記フィーダ127の供給速度を作動制御すると共に、前記貯留タンク151内からの前記微粉炭18の供給量C1を、前記微粉炭8の供給量C2分だけ減少させる(C1=Ct−C2)ように前記フィーダ152の供給速度を作動制御する。
【0079】
前記フィーダ127から供給量C2で供給された前記微粉炭8は、前述した実施形態の場合と同様にして、窒素ガス102によって気流搬送され、前記サイクロンセパレータ129を介して前記窒素ガス102と分離されて、前記供給タンク120内に入れられる。
【0080】
これにより、前記供給タンク120内には、前述した実施形態の場合と同様に、前記高品位石炭12からなる供給量C1の前記微粉炭18と前記低品位石炭2からなる供給量C2の前記微粉炭8との混合物が規定量Ct(=C1+C2)で入れられるようになる。
【0081】
前記供給タンク120内で混合された前記微粉炭8,18は、前述した実施形態の場合と同様に、定量ずつ落下供給され、前記エアブロア117からの前記空気106からなる前記搬送ガス107によって前記供給ライン119を介して前記インジェクションランス116へ気流搬送される。
【0082】
このとき、前記低品位石炭2からなる前記微粉炭8は、前述した実施形態でも説明したように、乾留されることにより反応活性が高くなっていると共に、前記搬送ガス107が酸素を含有していることから(約21体積%)、その一部が、気流搬送中に酸素と反応して燃焼する。このため、上記搬送ガス107及び上記微粉炭8,18は、自己加熱によって温度上昇する。
【0083】
ここで、前記インジェクションランス116の基端側の近傍へ気流搬送された前記搬送ガス107は、前記吸引ポンプ266によって、そのごく一部が前記供給ライン119から前記分取ライン263に分取され、前記三方バルブ264を経由して前記フィルタ装置265Aで前記微粉炭8,18等を除去された後、前記COセンサ261で一酸化炭素濃度を検知され、前記吸引ポンプ266を経由して前記戻しライン267から前記供給ライン119へ戻される。
【0084】
そして、前記制御装置260は、前記COセンサ261からの情報に基づいて、前記エアブロア117の送風量及び前記流量調整バルブ118の開度を制御する。すなわち、前記搬送ガス107中の一酸化炭素濃度は、前記微粉炭8,18の種類(炭種)、前記微粉炭8,18の供給量、当該搬送ガス107中の酸素濃度、当該搬送ガス107の温度によって、ほぼ決まる値である。
【0085】
このため、前記微粉炭8,18の種類(炭種)及び供給量が予め決まっていると共に、上記搬送ガス107中の酸素濃度を算出できることから、上記搬送ガス107中の一酸化炭素濃度を検知することにより、当該搬送ガス107の温度Tgを求めることができるのである。
【0086】
これにより、前記制御装置260は、前記COセンサ261からの情報、すなわち、サンプリングした前記搬送ガス107の一酸化炭素濃度、言い換えれば、前記羽口の近傍の前記搬送ガス107の一酸化炭素濃度等に基づいて、当該搬送ガス107の温度Tgを算出することにより、前述した実施形態の場合と同様にして、当該搬送ガス107の温度Tgの上限値Tu及び下限値Td並びに前記微粉炭8の供給量C2等に基づいて、前記エアブロア117、前記流量調整バルブ118、前記フィーダ127,152を制御する。
【0087】
なお、前記搬送ガス107をサンプリングするに伴って、前記フィルタ装置265Aが次第に目詰まりしてくるため、サンプリングが所定時間経過したら、前記フィルタ装置265Bのみを前記分取ライン263と前記戻しライン267とに接続するように前記三方バルブ264を開閉操作した後、前記フィルタ装置265Aを新しく交換することにより、前記搬送ガス107のサンプリングを連続して行うことができる。
【0088】
つまり、前述した実施形態に係る高炉設備100においては、前記インジェクションランス116の基端側の近傍に設けた前記温度センサ161によって前記搬送ガス107の温度を直接的に検知するようにしたが、本実施形態に係る高炉設備200においては、前記インジェクションランス116の基端側の近傍の前記搬送ガス107をサンプリングラインにサンプリングして前記COセンサ261によって一酸化炭素濃度を検知することにより、前記搬送ガス107の温度を前記制御装置260で算出して求めるようにしたのである。
【0089】
このため、本実施形態に係る高炉設備200においては、大部分の前記搬送ガス107が流通するライン中にセンサの検出部等を突出させることなく当該搬送ガス107の温度を検知することができる。
【0090】
したがって、本実施形態に係る高炉設備200によれば、前述した実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、センサの検出部への前記微粉炭8,18の付着等を防止することができるので、より正確な制御を行うことができると共に、前記インジェクションランス116の基端側の近傍での閉塞等を未然に抑えることができる。
【0091】
〈他の実施形態〉
なお、前述した第一,二番目の実施形態においては、乾燥装置122及び冷却装置124にスチームチューブドライヤ方式を適用した場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、前記乾留装置123と同様なロータリキルン方式を乾燥装置や冷却装置に適用することも可能である。
【0092】
また、前述した第一,二番目の実施形態においては、前記窒素ガス供給源121から窒素ガス102を送給する場合について説明したが、他の実施形態として、前記窒素ガス102に代えて、例えば、前記高炉本体110から排出された高炉オフガス(約200℃)や、当該高炉オフガスを空気と共に燃焼させて前記熱風101の熱源として利用した後の高炉オフガスの燃焼排ガス(約100℃程度)を不活性ガスとして利用する、すなわち、前記高炉本体110や、前記熱風送給装置114等を不活性ガス送給源として利用することも可能である。
【0093】
また、前述した第一,二番目の実施形態においては、前記天然ガス108aを前記バーナ154で燃焼させた燃焼ガス108を前記ローラミル153に送給して前記高品位石炭12の乾燥を行うと共に前記微粉炭18の気流搬送用のガスとして利用するようにしたが、他の実施形態として、例えば、前記乾留装置123で乾留用の加熱に利用された前記燃焼ガス104を熱交換器等で熱回収すると共に水分除去した後に、前記ローラミル153に送給する、すなわち、前記燃焼ガス108に代えて前記燃焼ガス104を利用するようにすれば、前記天然ガス108aの消費量を大幅に削減することができ、さらなる低コスト化を図ることができて好ましい。
【0094】
また、前述した第二番目の実施形態においては、前記COセンサ261によって前記搬送ガス107中の一酸化炭素を検知することにより、当該搬送ガス107の温度Tgを求めるようにしたが、他の実施形態として、前記COセンサ261に代えて、例えば、前記搬送ガス107中の二酸化炭素濃度を検知するCO
2センサや酸素濃度を検知するO
2センサ等を適用することにより、前記搬送ガス107の温度Tgを求めるようにすることも可能である。
【0095】
また、前記高品位石炭12を貯留する前記貯留タンク151が非常に大きく、前記フィーダ152や前記ローラミル153や前記バーナ154や前記サイクロンセパレータ156等を並列的に複数(例えば2つ)備えた場合には、例えば、前記サイクロンセパレータ156のうちの少なくとも一つを前記サイクロンセパレータ129に代えて利用できるように前記搬送ライン128等を連絡させることにより、前記サイクロンセパレータ129を省略して設置スペースの削減を図ることができる。
【0096】
このとき、例えば、下記のようにすると好ましい。
(1)前記サイクロンセパレータ129に代えて利用する前記サイクロンセパレータ156から排出される窒素ガス102を再利用できるように、ブロア等を有する循環ラインを介して前記搬送ライン128に上記サイクロンセパレータ156のガス送出口を接続する。
【0097】
(2)上記(1)において、前記サイクロンセパレータ129に代えて利用する前記サイクロンセパレータ156に対して、前記高品位石炭12の前記微粉炭18から前記低品位石炭2の前記微粉炭8に切り替える際に、前記搬送ライン128中への酸素ガスの混入を防止するため、前記循環ラインにO
2センサを設け、当該循環ラインを流通するガス中のO
2濃度が規定値以下になるまで前記窒素ガス供給源121からの前記窒素ガス102を流通させてから、前記搬送ライン128に前記微粉炭8を供給するようにする。
【0098】
(3)上記(1)において、前記サイクロンセパレータ129に代えて利用する前記サイクロンセパレータ156に対して、前記高品位石炭12の前記微粉炭18と前記低品位石炭2の前記微粉炭8とを並行して供給する場合には、前記循環ラインにO
2センサやCOセンサやCO
2センサや温度センサ等を設けると共に、上記サイクロンセパレータ156に上記微粉炭18を気流搬送する前記燃焼ガス108を発生させる前記バーナ154や前記搬送ライン155中に窒素ガス102を追加供給できるようにし、前記センサからの情報に基づいて、前記サイクロンセパレータ129内や前記搬送ライン128内等の酸素濃度(温度)を規定値以下にするようにする。