(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015924
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】貯湯給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 1/18 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
F24H1/18 503R
F24H1/18 G
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-240015(P2012-240015)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-89009(P2014-89009A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰介
(72)【発明者】
【氏名】福井 秀和
(72)【発明者】
【氏名】森本 量
(72)【発明者】
【氏名】金城 貴信
(72)【発明者】
【氏名】藤川 泰
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 向生
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−074736(JP,A)
【文献】
特開2010−133610(JP,A)
【文献】
特開2010−255986(JP,A)
【文献】
特開2010−197016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽の下部から取り出した湯水を外部熱源装置で加熱して貯湯槽の上部に戻す加熱循環回路と、前記貯湯槽の上部から取り出した湯水を外部に設けられた給湯栓に出湯するための出湯回路と、この出湯回路から分岐して前記貯湯槽の下部に戻る熱利用循環回路とを備え、前記熱利用循環回路には補助熱源装置と熱利用対象を加熱するための熱交換器とが介装され、前記貯湯槽の下部から延びる前記加熱循環回路の上流端部位と、前記貯湯槽の下部に戻る前記熱利用循環回路の下流端部位とが、前記貯湯槽の下部から延びる共通の下部配管部により構成されて互いに連通接続されている貯湯給湯システムにおいて、
前記加熱循環回路による加熱運転が停止している状態で凍結予防運転が実行されるとき、前記補助熱源装置を作動させつつ前記熱利用循環回路による循環運転を行う一方、前記加熱循環回路の循環運転を行い、かつ、前記下部配管において、前記熱利用循環回路から戻される循環湯水の全量が前記加熱循環回路に対する循環湯水として導入されるように流量設定されている、
ことを特徴とする貯湯給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の貯湯給湯システムであって、
前記凍結予防運転が実行されるとき、前記加熱循環回路から前記貯湯槽の上部に戻される循環湯水の循環流量が、前記貯湯槽の上部から前記熱利用循環回路に対し取り出される取出流量以上になるように設定されている、貯湯給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯槽を備えた貯湯給湯システムに関し、特に貯湯槽の下部から湯水を取り出して外部熱源の排熱等を利用して加熱した上で貯湯槽の上部に戻すという循環加熱のための加熱循環回路を対象にして、凍結予防運転が実施される貯湯給湯システムに係る。
【背景技術】
【0002】
次に示す特許文献1には、燃料電池の冷却水の有する熱(発電により生じる排熱)により暖房用媒体を加熱する一方、冷却水の一部を貯留して蓄熱するための貯湯槽を備えたシステムが記載されている。このものにおいては、熱交換器の一次側に燃料電池からの冷却水を冷却水循環路を通して循環供給する一方、熱交換器の二次側に暖房装置からの暖房用媒体を暖房用媒体循環路を通して循環供給するようにし、冷却水循環路に貯湯槽を介装し、暖房用媒体循環路に補助熱源装置を介装している。そして、凍結予防運転の必要が生じたら、補助熱源装置を作動させつつ暖房用媒体循環路に暖房用媒体を循環させるという凍結予防運転を行うことにより、補助熱源装置により加熱された暖房用媒体の熱を、熱交換器を介して冷却水循環路内の冷却水に伝熱させ、これによって冷却水循環路の凍結予防を果たさせることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−132612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池等の外部熱源の排熱を利用して貯湯槽内の湯水を熱交換加熱することにより貯湯槽に蓄熱し、この貯湯を給湯のために出湯させたり、暖房用媒体等の熱交換加熱の熱源として利用したりする貯湯給湯システムが考えられている。例えば
図4に示すように、熱交換器22の熱源側に排熱を供給するための外部熱源装置2と、その熱交換器22の被加熱側に対し貯湯槽300内の湯水を下部から取り出して供給し、熱交換加熱された湯水を貯湯槽300の上部に戻して貯留するための加熱循環回路900と、貯湯槽300の上部から取り出した高温の湯水を給湯のために出湯する出湯回路500と、この出湯回路500の途中から分岐して高温の湯水を例えば暖房用媒体を加熱するための熱交換器801に対し熱源として供給した上で熱交換後の温度低下した湯水を貯湯槽300の下部に戻すというように貯湯槽300内の湯水の熱を利用する熱利用循環回路800とを備えたものである。この貯湯給湯システムにおいては、貯湯槽3との関係において、加熱循環回路900と、熱利用循環回路800とは互いに独立して別々の回路として設けられている。
【0005】
しかしながら、この貯湯給湯システムにおいて、加熱循環回路900による加熱運転が停止されているときに凍結予防運転を実施すると、凍結予防のために補助熱源装置600で加熱した湯水が貯湯槽300の下部に一旦流入してしまうことに起因して、貯湯槽300内において形成されていた温度成層が崩されてしまい、以後の加熱循環回路900による加熱運転の再開時や、給湯のための出湯回路500への出湯時に運転不能になるなどの不都合を招くおそれがある。すなわち、出湯回路500(熱利用循環回路800)に介装された補助熱源装置600を作動させて貯湯槽300の上部から取り出した湯水を加熱した上で、熱利用循環回路800を通して貯湯槽300の下部に流入させる。そして、この貯湯槽300の下部に一旦流入した加熱後の湯水を、加熱循環回路900の循環ポンプ901を作動させることで加熱循環回路900内に通すようにして、凍結予防運転を実施する。通常、加熱循環回路900による加熱運転により、貯湯槽300内は上部ほど高温の湯水が貯留され下部にいくに従い低温の湯水になるというように温度成層が形成されている。このため、給湯のためには貯湯槽300の上部から出湯させれば高温の湯水を利用し得る一方、加熱運転のためには貯湯槽300の下部から低温の湯水を外部熱源装置2に供給して効率よく排熱回収が可能になる、という作用効果が得られることになる。ところが、補助熱源装置600により加熱された湯水が熱利用循環回路800から貯湯槽300の下部に流入されると、貯湯槽300内の温度成層が崩されてしまい、出湯のために貯湯槽300の上部から取り出される湯水の温度が低下してしまうとともに、再加熱運転のために貯湯槽300の下部から取り出される湯水の温度が上昇してしまい外部熱源装置2で効率よく熱交換加熱し得ないという事態を招くことになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貯湯槽内の湯水を下部から取り出して外部熱源装置により加熱した上で貯湯槽の上部に貯留するための加熱循環回路と、貯湯槽の上部から取り出した高温の湯水を例えば暖房用媒体の熱交換加熱のための熱源として利用して温度低下した湯水を貯湯槽の下部に戻すための熱利用循環回路とを備えた貯湯給湯システムにおいて、加熱循環回路による加熱運転停止時における加熱循環回路内の凍結予防運転として、補助熱源装置により加熱されて熱利用循環回路により導かれる高温の湯水を、貯湯槽内の温度成層を崩すことなく、加熱循環回路に循環させ得るようにした貯湯給湯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明では、貯湯槽の下部から取り出した湯水を外部熱源装置で加熱して貯湯槽の上部に戻す加熱循環回路と、前記貯湯槽の上部から取り出した湯水を外部に設けられた給湯栓に出湯するための出湯回路と、この出湯回路から分岐して前記貯湯槽の下部に戻る熱利用循環回路とを備え、前記熱利用循環回路には補助熱源装置と熱利用対象を加熱するための熱交換器とが介装され、前記貯湯槽の下部から延びる前記加熱循環回路の上流端部位と、前記貯湯槽の下部に戻る前記熱利用循環回路の下流端部位とが、前記貯湯槽の下部から延びる共通の下部配管部により構成されて互いに連通接続されている貯湯給湯システムを対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、前記加熱循環回路による加熱運転が停止している状態で凍結予防運転が実行されるとき、前記補助熱源装置を作動させつつ前記熱利用循環回路による循環運転を行う一方、前記加熱循環回路の循環運転を行い、かつ、前記下部配管部において、前記熱利用循環回路から戻される循環湯水の全量が前記加熱循環回路に対する循環湯水として導入されるように流量設定することとした(請求項1)。
【0008】
本発明の場合、補助熱源装置により加熱された湯水が熱利用循環回路を通して戻され、その加熱された湯水の全量が、下部配管部で連通接続されている加熱循環回路に対し導入されることになる。つまり、加熱循環回路の凍結予防運転のために循環供給させる循環湯水として、熱利用循環回路を通して戻される加熱された湯水の全量を、加熱循環回路側に流入させて循環させることが可能となる。これにより、補助熱源装置により加熱された湯水が貯湯槽の下部に一旦流入するような事態の発生を確実に回避することが可能となり、このため、貯湯槽内の温度成層を崩すことなく、温度成層を維持させることが可能となる。そして、温度成層が維持されていることにより、貯湯槽の上部から出湯させれば高温の湯水を給湯のために利用し得る一方、加熱運転のために貯湯槽の下部から取り出せば外部熱源装置に対し低温の湯水を供給して効率よく加熱運転することが可能になる、という温度成層に基づく作用が確実に得られることになる。しかも、このような作用を、新規な機器類の追加等を必要とすることなく、下部配管部により熱利用循環回路の下流端部位と、加熱循環回路の上流端部位とを共通化して連通可能にするという構造と、熱利用循環回路から戻される循環湯水の全量が加熱循環回路に対する循環湯水として導入されるように循環流量の設定を行うという容易な構成によって実現させることになる。
【0009】
本発明の貯湯給湯システムにおいて、凍結予防運転が実行されるとき、加熱循環回路から貯湯槽の上部に戻される循環湯水の循環流量が、貯湯槽の上部から熱利用循環回路に対し取り出される取出流量以上になるように流量設定することができる(請求項2)。このようにすることにより、熱利用循環回路を通して戻される加熱された湯水の全量を、確実に、加熱循環回路側に流入させて循環させることが可能となる。これにより、補助熱源装置により加熱された湯水が貯湯槽の下部に一旦流入するような事態の発生をより確実に回避することが可能となって、貯湯槽内の温度成層を確実に維持させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上、説明したように、本発明に係る貯湯給湯システムによれば、加熱循環回路の凍結予防運転のために循環供給させる循環湯水として、熱利用循環回路を通して戻される加熱された湯水の全量を、加熱循環回路側に流入させて循環させることができ、これにより、補助熱源装置により加熱された湯水が貯湯槽の下部に一旦流入するような事態の発生を確実に回避することができる。このため、貯湯槽内の温度成層を崩すことなく、温度成層を維持させることができるようになる。そして、温度成層が維持されることにより、貯湯槽の上部から出湯させれば高温の湯水を給湯のために利用し得る一方、加熱運転のために貯湯槽の下部から取り出せば外部熱源装置に対し低温の湯水を供給して効率よく加熱運転することができる、という温度成層に基づく効果を確実に得ることができるようになる。しかも、このような効果を、新規な機器類の追加等を必要とすることなく、下部配管部により熱利用循環回路の下流端部位と、加熱循環回路の上流端部位とを共通化して連通可能にするという構造と、熱利用循環回路から戻される循環湯水の全量が加熱循環回路に対する循環湯水として導入されるように流量設定を行うという容易な構成によって実現させることができる。
【0011】
特に請求項2の貯湯給湯システムによれば、凍結予防運転が実行されるとき、加熱循環回路から貯湯槽の上部に戻される循環湯水の循環流量が、貯湯槽の上部から熱利用循環回路に対し取り出される取出流量以上になるように流量設定することにより、熱利用循環回路を通して戻される加熱された湯水の全量を、確実に、加熱循環回路側に流入させて循環させることができる。これにより、補助熱源装置により加熱された湯水が貯湯槽の下部に一旦流入するような事態の発生をより確実に回避することができ、貯湯槽内の温度成層を確実に維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯湯給湯システムの模式図である。
【
図2】凍結予防運転の第1段階における湯水の流れを太線で表した
図1対応図である。
【
図3】凍結予防運転の第2段階における湯水の流れを太線で表した
図1対応図である。
【
図4】本発明と対比される貯湯給湯システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る貯湯給湯システムを示す。同図中の符号2は外部熱源装置、3は貯湯槽、4は外部から水道水等を貯湯槽3等に給水するための給水回路、5は貯湯槽3の上部から取り出される湯水又は補助熱源装置6で補助加熱後の湯水を用いて給湯栓7等への給湯のために出湯する出湯回路、8は補助熱源装置6で補助加熱後の湯水又は貯湯槽3の上部から取り出される湯水を熱源として利用して外部熱負荷に対し循環供給する熱利用循環回路、9は前記外部熱源装置2からの排熱を回収することで貯湯槽3の湯水を加熱する加熱循環回路、10は熱利用循環回路8により戻された湯水を貯湯槽3に入れることなく補助熱源装置6に供給し補助熱源装置6と前記外部熱負荷との間に循環させるためのバイパス循環回路、11はこの貯湯給湯システムの作動制御を行うコントローラである。ここで、符号12が貯湯槽3の下部取出口31から外部に延びる1つの下部配管部であり、この下部配管部12によって、貯湯槽3の下部取出口31から延びる加熱循環回路9の上流端部位と、貯湯槽3の下部取出口31に戻る熱利用循環回路8の下流端部位とが、共通の流路として構成されて互いに連通接続されている。つまり、合流点13で熱利用循環回路8の戻り路86と加熱循環回路9の導出路91とが合流して連通接続され、合流点13から下部取出口31までの下部配管部12が戻り路86及び導出路91の各一部を兼ねることになる。
【0015】
外部熱源装置2は、本実施形態では燃料電池(例えばSOFC;固体酸化物型燃料電池)21の発電作動により発生する排熱を熱源として貯湯槽3内の湯水を熱交換加熱するためのものである。燃料電池21から発生する排熱が排熱回収用熱交換器22の熱源側に供給される一方、加熱循環回路9により供給される貯湯槽3内の湯水が前記熱交換器22の被加熱側に供給されるようになっている。
【0016】
すなわち、加熱循環回路9は、上流端が下部配管部12を介して貯湯槽3の下部取出口31に接続されて下流端が排熱回収用熱交換器22の被加熱側入口に接続された導出路91と、上流端が前記熱交換器22の被加熱側出口に接続されて下流端が貯湯槽3の上部に接続された導入路92と、循環ポンプ93とを備えたものである。そして、コントローラ11の後述の加熱運転制御部による加熱運転が開始されると、循環ポンプ93が作動され、これにより、貯湯槽3の下部から導出路91を通して取り出された湯水が、排熱回収用熱交換器22において燃料電池21からの排熱により熱交換加熱され、熱交換加熱後の湯水が導入路92を通して貯湯槽3の上部に戻されて、貯湯槽3内で温度成層を形成しつつ蓄熱されることになる。循環ポンプ93は、DCポンプにより構成されて、循環流量を可変とし得るようになっている。
【0017】
前記導入路92の途中位置には三方切換弁94が介装される一方、この三方切換弁94に対し導出路91の途中位置から貯湯槽3をバイパスするように分岐したバイパス路95が接続されている。排熱回収用熱交換器22の入口側の導出路91には入口温度センサ96が介装され、排熱回収用熱交換器22の出口側の導入路92には出口温度センサ97が介装されている。
【0018】
貯湯槽3は密閉式に構成され、貯湯槽3の所定の上下各位置には、内部の貯湯温度を検出するための貯湯温度センサ32,33が設置されている。
【0019】
給水回路4は、主給水路41の上流端が外部の水道管等に接続され、下流端が熱利用循環回路8の下流端部位及び下部配管部12に合流するように接続されている。この主給水路41からは、貯湯槽3内の湯水が消費されれば、その消費された分だけ給水圧に基づいて貯湯槽3に給水されるようになっている。
【0020】
出湯回路5は、主給湯路51の上流端52に出湯される補助加熱出湯路60経由の湯水か、貯湯槽3の上部から直接に取り出される上部接続路53経由の湯水かの2種類の湯水のいずれかを給湯栓7に対し給湯するようになっている。すなわち、補助加熱出湯路60は、上流端が貯湯槽3の上部に接続され、下流端が間に流量調整機能付きの三方切換弁61,循環ポンプ62,流量センサ63,入口側温度センサ64,補助熱源装置6,出口温度センサ65及び流量調整弁66を介して前記上流端52に接続されたものであって、補助熱源装置6の燃焼作動により熱交換加熱された湯水を上流端52に対し出湯可能となっている。三方切換弁61にはバイパス循環回路10の下流側が接続されており、三方切換弁61はコントローラ11により作動制御されて、補助熱源装置6に供給される湯水として、前記の補助加熱出湯路60を通した湯水か、バイパス循環回路10を通した湯水か、あるいは双方かの切換え、及び、その通過流量の調整機能を果たすようになっている。なお、出湯回路5の下流側には図示を省略するが、給水回路4からの分岐路が接続されて混水による温度調整が可能とされている他、浴槽85に注湯するための分岐路も接続されている。
【0021】
又、前記補助熱源装置6と流量調整弁66との間の補助加熱出湯路60からは熱利用循環回路8の熱源供給路81が分岐し、前記の循環ポンプ62の作動により熱源供給路81を通して外部熱負荷加熱用の液−液熱交換器82,83に対し湯水を熱源として供給し得るようになっている。外部熱負荷(熱利用対象)としては図例の如く温水暖房装置84の熱源となる暖房用媒体や、風呂85の追い焚き用の浴槽水が挙げられ、これら暖房用媒体や浴槽水を液−液熱交換器82,83で液−液熱交換加熱した後、熱交換加熱により温度低下した湯水が戻り路86を通して下部配管部12に合流し、貯湯槽3の下部に戻されることになる。なお、戻り路86の下流側はバイパス循環回路10の上流端にも合流可能に接続されており、戻り路86から戻された湯水を再加熱のために補助熱源装置6に対し直接に供給して循環可能となっている。このようにバイパス循環回路10は、上流端が熱利用循環回路8の戻り路86の下流側と接続され、下流端が貯湯槽3をバイパスして三方切換弁61に接続され、三方切換弁61の切換制御により補助熱源装置6に対し供給可能となっている。
【0022】
以上の貯湯給湯システムは、リモコン111からの入力設定信号や操作信号の出力や、種々の温度センサ等からの検出信号の出力を受けて、コントローラ(運転制御手段)11により作動制御されるようになっている。コントローラ11は、そのような作動制御のために、加熱運転制御部、給湯運転制御部、熱利用運転制御部、及び、凍結予防運転制御部等を備えている。
【0023】
以下、主として本実施形態の特徴的な制御部分である凍結予防運転制御部による凍結予防運転について説明する。まず、前提として、外部熱源装置2が定期点検等により運転を停止していること、あるいは、貯湯槽3内が満蓄状態(上部から下部に至るまで所定温度(例えば65℃)以上の貯湯で満たされている状態)となってもはや排熱回収による加熱運転が不能となって加熱運転が停止されていることの条件が成立し、さらに、凍結予防のための所定の温度条件が成立することで、凍結予防運転が開始される。所定の温度条件としては、外部温度が凍結のおそれが懸念されるものとして設定されている温度以下に低下したこと、あるいは、加熱循環回路9内の湯水温度(入口温度センサ96及び出口温度センサ97により検出される湯水温度)が凍結の懸念があるとして設定されている温度以下に低下したことの条件が挙げられる。なお、外部熱源装置2の側のコントローラからの警告信号に基づいて凍結予防運転を開始させるようにしてもよい。
【0024】
凍結予防運転として、まず、第1段階として、加熱循環回路9の循環ポンプ93を作動させて貯湯槽3の下部から取り出した湯水を導出路91,熱交換器22及び導入路92を通して貯湯槽の上部に戻すという循環運転を実行する。所定時間継続しても入口温度センサ96及び出口温度センサ97の検出温度が前記の設定温度よりも高く上昇しなければ、加熱循環回路9での循環運転を継続しつつ、次に、補助熱源装置6により加熱した湯水を循環供給させる。
【0025】
補助熱源装置6により加熱した湯水を加熱循環回路9に循環供給するには次の処理を行う。すなわち、まず、三方切換弁61をバイパス循環回路10と補助熱源装置6とが連通する状態に切換制御し、液−液熱交換器82用の開閉弁を開切換制御し、そして、循環ポンプ62を作動させて補助熱源装置6を燃焼作動させて、循環湯水の予熱を行う。 これにより、
図2に太線で示すようにバイパス循環回路10,補助熱源装置6,熱利用循環回路8の熱源供給路81,液−液熱交換器82,戻り路86を通る循環経路内の湯水が補助熱源装置6により加熱されつつ循環する。循環経路内の湯水全体の予熱が完了すれば、次に、第2段階として、補助加熱出湯路60に連通する三方切換弁61内の流路を所定開度まで徐々に開いていき、貯湯槽3の上部から所定の流量分だけ取り出して補助熱源装置6に供給し、本格的に加熱後の湯水を加熱循環回路9に循環供給させる。この際に、加熱循環回路9内の循環流量Qjを貯湯槽3の上部からの取出流量Qt以上になるように制御する。この流量制御は、加熱循環回路9の側は循環ポンプ93の吐出流量を所定のものに変更設定する一方、熱利用循環回路8の側は三方切換弁61の流量調整機能を用いて所定のものに設定すればよい。なお、循環ポンプ62をDCポンプにより構成し吐出流量を可変とし得るようにし、三方切換弁61による流量調整機能を使わずに循環ポンプ62により吐出流量が所定のものになるように変更設定してもよい。
【0026】
前記の如く加熱循環回路9内の循環流量Qjを貯湯槽3の上部からの取出流量Qt以上になるように流量制御することにより、貯湯槽3の上部から取り出され補助熱源装置6で加熱された湯水(以下「加熱湯水」という)の流れは、
図3に太線で示すようになる。すなわち、熱源供給路81,液−液熱交換器82及び戻り路86を通過した加熱湯水は、合流点13でその全量(全流量)が加熱循環回路9の導出路91に流入し、貯湯槽3の下部取出口31の側に流れることはない。つまり、加熱湯水が貯湯槽3の下部に流入する事態を、回避することができるようになる。
【0027】
加熱湯水が合流点13から加熱循環回路9の導出路91に流入する際に、循環流量Qjと取出流量Qtとの差分(Qj−Qt)に相当する流量分の湯水が貯湯槽3の下部取出口31から下部配管部12及び導出路91に流出する。そして、加熱湯水と混合された状態で加熱循環回路9の導出路91,熱交換器22及び導入路92を通して貯湯槽3の上部に戻される。
【0028】
以上の実施形態の場合、加熱循環回路9の凍結予防運転のために循環供給させる循環湯水として、熱利用循環回路8を通して供給される加熱湯水の全量を、合流点13から加熱循環回路9側に流入させることができ、これにより、
図4の例の場合の如く加熱湯水が貯湯槽の下部に一旦流入するような事態の発生を確実に回避することができる。このため、貯湯槽3内の温度成層を崩すことなく、温度成層を維持させることができる。そして、温度成層が維持されていることにより、給湯のために貯湯槽3の上部から出湯させれば高温の湯水を利用し得る一方、加熱運転のために貯湯槽3の下部から取り出せば外部熱源装置2の熱交換器22に対し低温の湯水を供給して効率よく排熱回収が可能になる、という作用・効果を確実に得ることができる。しかも、このような作用・効果を、新規な機器類の追加等を必要とすることなく、下部配管部12により熱利用循環回路8の下流端部位と、加熱循環回路9の上流端部位とを共通化して、合流点13において三方に分岐・連通可能にするという構造と、加熱循環回路9の循環流量と貯湯槽3の上部からの取出流量との関係を所定の設定にするという流量制御との容易な構成によって実現させることができる。
【0029】
<他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、前記実施形態では外部熱源装置2が排熱を熱源としてその排熱を回収する燃料電池21により構成された場合を示したが、これに限らず、排熱を熱源とするものとしてヒートポンプ(冷媒の排熱)又はガスエンジン(エンジン冷却水排熱)、あるいは、自然エネルギーを熱源とするものとして太陽熱を集熱するソーラーパネル等のいずれか1種を用いて、又は、複数種のものを組み合わせて外部熱源装置を構成し、これらの外部熱源装置により貯湯槽3に貯湯として蓄熱する貯湯給湯システムに対し、本発明を適用することができる。又、補助熱源装置6の代わりに、電気ヒータを補助熱源装置として用いて構成してもよい。
【0030】
前記実施形態では、凍結予防運転に用いる加熱湯水が、熱利用循環回路8の暖房用の液−液熱交換器82を通る例を示したが、これに限らず、ふろ追焚用の液−液熱交換器83に通してもよく、さらに、図示省略の他の外部熱負荷に熱源を供給するための経路を利用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
2 外部熱源装置
3 貯湯槽
5 出湯回路
6 補助熱源装置
8 熱利用循環回路
9 加熱循環回路
11 コントローラ
12 下部配管部
61 流量調整機能付き三方切換弁
62 循環ポンプ
82,83 液−液熱交換器(熱交換器)
93 循環ポンプ