【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、フロントピラートリムが膨張、収縮により変形することを防止できる。
しかしながら、前記前側突起は前側係合孔に、後側突起は後側係合孔にそれぞれ緩やかに係合し、さらに、上下方向で互いに同一位置に位置する前側係合孔の側縁と後側係合孔の側縁に前側突起の側面と後側突起の側面が各別に線接触しているために、フロントピラートリムが前記側縁を中心にして車室内側や車室外側に回転し、車室内側や車室外側に傾くことがあった。
その結果、フロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ部に隙間やズレが発生し、外観品質が低下していた。
本発明の目的は、フロントピラートリムが車室内側や車室外側に傾くことを防止することができ、合わせ部における隙間の発生やズレを防止できて外観品質を向上させることができるフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
フロントピラートリムの下端部にインストルメントパネルの側部が重ね合わされているフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造であって、
インストルメントパネル本体の車室外側の側部に車両前後方向に沿う溝部が設けられ、
前記溝部の底壁に差し込み孔が形成され、
前記差し込み孔に差し込まれる差し込み片が前記フロントピラートリムの下端部から下方に突出し、
前記差し込み片の車室外側の面にリブが突設され、
前記差し込み片が前記差し込み孔に差し込まれた組み付け状態で、前記リブの頂部が前記溝部の車室外側の側壁の内面に当接するとともに、前記差し込み片の車室内側の面が前記溝部の車室内側の側壁の内面に当接
し、
前記溝部の車室内側の側壁の内面と車室外側の側壁の内面とは上側になるにつれて互いの間隔が広くなるように傾斜し、
前記溝部の車室内側の側壁の内面が前記溝部の溝深さ方向に対して成す第1傾斜角と、前記組み付け状態で前記フロントピラートリムの下端部の意匠面が前記溝深さ方向に対して成す第2傾斜角とが略同一に設定されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、前記差し込み片が前記差し込み孔に差し込まれた組み付け状態で、前記リブの頂部が前記溝部の車室外側の側壁の内面に当接するとともに、前記差し込み片の車室内側の面が前記溝部の車室内側の側壁の内面に当接する。従って、フロントピラートリムが車室内側や車室外側に傾くことを防止することができ、フロントピラートリムの下端部とインストルメントパネルの側部との合わせ部の隙間を一定に保つことができる。その結果、前記合わせ部における隙間の発生やズレを防止して外観品質を向上させることができる。
例えば、フロントピラートリムの下端部の意匠面が縦断面において折曲し、意匠面の車両前後方向に沿う折曲線とインストルメントパネルの上面とが車室の内外方向(車幅方向)で重なっている構造では、フロントピラートリムが上方にずれた場合、前記折曲線が現れて見栄えが低下する。
これに対して、本発明の上記の構成によれば、前記第1傾斜角と第2傾斜角が略同一に設定されているから、フロントピラートリムが上下方向にずれても、フロントピラートリムの下端部とインストルメントパネルの側部との合わせ部のズレが目立つことがない。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記溝部の車室外側の側壁の内面が前記溝深さ方向に対して成す第3傾斜角は前記第1傾斜角よりも大きく設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記溝部の車室内側の側壁の内面と車室外側の側壁の内面とは上側になるにつれて互いの間隔が広くなるように傾斜し、前記溝部の車室外側の側壁の内面が前記溝深さ方向に対して成す第3傾斜角は前記第1傾斜角よりも大きく設定されているから、成形型を用いて溝部を成形する際に必要な抜き勾配を十分確保することができる。
ところで、前記溝深さ方向に対して第3傾斜角を成す溝部の車室外側の側壁の内面側は、フロントピラートリムに覆い隠されて露出しない。他方、前記溝深さ方向に対して第1傾斜角を成す溝部の車室内側の側壁の内面側は意匠側として車室内に露出する。そのために、前記第1傾斜角がデザインの面で制限を受けて小さい値にしか設定できないことがある。このような場合であっても、前記第1傾斜角が小さくなった分だけ前記第3傾斜角を大きく設定することで、前記抜き勾配を十分確保することができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記差し込み孔の車室外側に位置する前記溝部の側壁部分に、この側壁部分の内面の下端に高低差をつける切り欠きが前記差し込み孔に連続して形成され、
前記リブは前記差し込み片の車室外側の面に複数個配置されて、前記複数個のリブが、前記側壁部分の内面の上下位置が異なる複数の下端に各別に当接していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記複数個のリブが、前記側壁部分の内面の上下位置が異なる複数の下端に各別に当接しているから、フロントピラートリムがいずれか一方の下端側を中心として車室外側に回転しようとすると、他方の下端がリブを受け止めて回転を阻止する。その結果、フロントピラートリムが車室外側に傾くことをより確実に防止することができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記切り欠きの周縁部の上端と下端との間の周縁部分は、前記下端側から上端側になるにつれて上方に位置するように傾斜していると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
前記側壁部分の内面の下端に高低差をつける手段として、切り欠きの周縁部の上端と下端との間の周縁部分に段部を設ける構造に比べると、切り欠きの一部分に応力が集中することを回避できて、切り欠きに割れが生じにくくすることができる。これにより、前記溝部の耐久性を向上させることができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記溝部の車室内側の側壁の内面に、前記差し込み片の車室内側の面が当接する段部が突設され、
前記溝部の車室内側の側壁の上下方向中間部に前記段部の上端が位置していると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
前記溝部の車室内側の側壁の上下方向中間部に前記段部の上端が位置しているから、差し込み片の車室内側の面と前記段部との擦れによって生じる粉吹きが乗員から見える位置に発生するのを防ぐことができる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記差し込み片よりも車両前方側に位置する第2の差し込み片が前記フロントピラートリムの下端前側から下方に突出し、
前記第2の差し込み片が差し込まれる第2の差し込み孔が前記溝部の底壁の前端部に形成され、
前記第2の差し込み片は、前記溝部の底壁の前端部の上下両面に係合する係合部を備えて、前記第2の差し込み片の上下方向への移動が規制され、
前記第2の差し込み片の車室外側の面にリブが突設され、
前記第2の差し込み片のリブの頂部は、前記溝部の車室外側の側壁の内面に上下方向所定の長さに渡って当接すると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
一般に、フロントピラートリムは上部が車体に固定されている。そのために、フロントピラートリムの下端部をインストルメントパネル本体の溝部に上下移動不能に固定すると、車体・樹脂の公差ばらつきや温度伸縮によりフロントピラートリムが変形しやすくなる。その結果、フロントガラス側のフロントピラートリムの端縁と、フロントガラスの周部に施されているセラミック塗装の端縁との間の車幅方向の距離が一定にならず、見栄えが低下するという問題がある。しかしながら、フロントピラートリムの下端部の車両前方側の端部には、下側になるにつれて車室内側に位置するように円弧状に湾曲する曲面部が設けられており、フロントピラートリムの前側の下端部をインストルメントパネル本体の溝部に上下移動不能に固定しても、前記曲面部が撓んでフロントピラートリムの前記変形を吸収することができる。
そこで、本発明の上記の構成では、前記第2の差し込み片の係合部が前記溝部の底壁の前端部の上下両面に係合して、第2の差し込み片の上下方向への移動が規制されている。これにより、フロントガラスに臨むフロントピラートリムの下端部の車両前方側の端部とインストルメントパネルの側部との間に段差が生じるのを回避することができる。その結果、外観品質を向上させることができる。
また、第2の差し込み片のリブは、溝部の車室外側の側壁の内面に対して上下方向に移動可能に構成しなくてもよいことから、第2の差し込み片のリブの頂部は、前記溝部の車室外側の側壁の内面に上下方向所定の長さに渡って当接している。これにより、フロントピラートリム
の車室外側への転びをより確実に防止することができる。(請求項6)