特許第6015932号(P6015932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6015932フロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015932
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】フロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   B60R13/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-273072(P2012-273072)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-117987(P2014-117987A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097386
【弁理士】
【氏名又は名称】室之園 和人
(72)【発明者】
【氏名】安原 良太郎
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263011(JP,A)
【文献】 実開平05−034055(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 37/00
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントピラートリムの下端部にインストルメントパネルの側部が重ね合わされているフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造であって、
インストルメントパネル本体の車室外側の側部に車両前後方向に沿う溝部が設けられ、
前記溝部の底壁に差し込み孔が形成され、
前記差し込み孔に差し込まれる差し込み片が前記フロントピラートリムの下端部から下方に突出し、
前記差し込み片の車室外側の面にリブが突設され、
前記差し込み片が前記差し込み孔に差し込まれた組み付け状態で、前記リブの頂部が前記溝部の車室外側の側壁の内面に当接するとともに、前記差し込み片の車室内側の面が前記溝部の車室内側の側壁の内面に当接し、
前記溝部の車室内側の側壁の内面と車室外側の側壁の内面とは上側になるにつれて互いの間隔が広くなるように傾斜し、
前記溝部の車室内側の側壁の内面が前記溝部の溝深さ方向に対して成す第1傾斜角と、前記組み付け状態で前記フロントピラートリムの下端部の意匠面が前記溝深さ方向に対して成す第2傾斜角とが略同一に設定されているフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造。
【請求項2】
前記溝部の車室外側の側壁の内面が前記溝深さ方向に対して成す第3傾斜角は前記第1傾斜角よりも大きく設定されている請求項1記載のフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造。
【請求項3】
前記差し込み孔の車室外側に位置する前記溝部の側壁部分に、この側壁部分の内面の下端に高低差をつける切り欠きが前記差し込み孔に連続して形成され、
前記リブは前記差し込み片の車室外側の面に複数個配置されて、前記複数個のリブが、前記側壁部分の内面の上下位置が異なる複数の下端に各別に当接している請求項2記載のフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造。
【請求項4】
前記切り欠きの周縁部の上端と下端との間の周縁部分は、前記下端側から上端側になるにつれて上方に位置するように傾斜している請求項3記載のフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造。
【請求項5】
前記溝部の車室内側の側壁の内面に、前記差し込み片の車室内側の面が当接する段部が突設され、
前記溝部の車室内側の側壁の上下方向中間部に前記段部の上端が位置している請求項1〜4のいずれか一つに記載のフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造。
【請求項6】
前記差し込み片よりも車両前方側に位置する第2の差し込み片が前記フロントピラートリムの下端前側から下方に突出し、
前記第2の差し込み片が差し込まれる第2の差し込み孔が前記溝部の底壁の前端部に形成され、
前記第2の差し込み片は、前記溝部の底壁の前端部の上下両面に係合する係合部を備えて、前記第2の差し込み片の上下方向への移動が規制され、
前記第2の差し込み片の車室外側の面にリブが突設され、
前記第2の差し込み片のリブの頂部は、前記溝部の車室外側の側壁の内面に上下方向所定の長さに渡って当接する請求項1〜5のいずれか一つに記載のフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
フロントピラートリムの下端部にインストルメントパネルの側部が重ね合わされているフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、従来、上記のフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造では、フロントピラートリムの下端部から前側突起と後側突起が突出していた(特許文献1の図面の図1参照)。
フロントピラートリムの装着状態において、前記後側突起の前端は、インストルメントパネルの取り付け面に形成された後側係合孔の前端に当接し、後端は後側係合孔の後端から離間している(特許文献1の明細書の段落(0022)参照)。そして、前記前側突起の前端及び後端は、前記取付面に形成された前側係合孔の前端と後端から離間している。
これにより、フロントピラートリムが熱によって膨張又は収縮した場合でも、フロントピラートリムが車室内側又は車室外側に向かって変形するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造によれば、フロントピラートリムが膨張、収縮により変形することを防止できる。
しかしながら、前記前側突起は前側係合孔に、後側突起は後側係合孔にそれぞれ緩やかに係合し、さらに、上下方向で互いに同一位置に位置する前側係合孔の側縁と後側係合孔の側縁に前側突起の側面と後側突起の側面が各別に線接触しているために、フロントピラートリムが前記側縁を中心にして車室内側や車室外側に回転し、車室内側や車室外側に傾くことがあった。
その結果、フロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ部に隙間やズレが発生し、外観品質が低下していた。
本発明の目的は、フロントピラートリムが車室内側や車室外側に傾くことを防止することができ、合わせ部における隙間の発生やズレを防止できて外観品質を向上させることができるフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
フロントピラートリムの下端部にインストルメントパネルの側部が重ね合わされているフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造であって、
インストルメントパネル本体の車室外側の側部に車両前後方向に沿う溝部が設けられ、
前記溝部の底壁に差し込み孔が形成され、
前記差し込み孔に差し込まれる差し込み片が前記フロントピラートリムの下端部から下方に突出し、
前記差し込み片の車室外側の面にリブが突設され、
前記差し込み片が前記差し込み孔に差し込まれた組み付け状態で、前記リブの頂部が前記溝部の車室外側の側壁の内面に当接するとともに、前記差し込み片の車室内側の面が前記溝部の車室内側の側壁の内面に当接し、
前記溝部の車室内側の側壁の内面と車室外側の側壁の内面とは上側になるにつれて互いの間隔が広くなるように傾斜し、
前記溝部の車室内側の側壁の内面が前記溝部の溝深さ方向に対して成す第1傾斜角と、前記組み付け状態で前記フロントピラートリムの下端部の意匠面が前記溝深さ方向に対して成す第2傾斜角とが略同一に設定されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、前記差し込み片が前記差し込み孔に差し込まれた組み付け状態で、前記リブの頂部が前記溝部の車室外側の側壁の内面に当接するとともに、前記差し込み片の車室内側の面が前記溝部の車室内側の側壁の内面に当接する。従って、フロントピラートリムが車室内側や車室外側に傾くことを防止することができ、フロントピラートリムの下端部とインストルメントパネルの側部との合わせ部の隙間を一定に保つことができる。その結果、前記合わせ部における隙間の発生やズレを防止して外観品質を向上させることができる。
例えば、フロントピラートリムの下端部の意匠面が縦断面において折曲し、意匠面の車両前後方向に沿う折曲線とインストルメントパネルの上面とが車室の内外方向(車幅方向)で重なっている構造では、フロントピラートリムが上方にずれた場合、前記折曲線が現れて見栄えが低下する。
これに対して、本発明の上記の構成によれば、前記第1傾斜角と第2傾斜角が略同一に設定されているから、フロントピラートリムが上下方向にずれても、フロントピラートリムの下端部とインストルメントパネルの側部との合わせ部のズレが目立つことがない。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記溝部の車室外側の側壁の内面が前記溝深さ方向に対して成す第3傾斜角は前記第1傾斜角よりも大きく設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
前記溝部の車室内側の側壁の内面と車室外側の側壁の内面とは上側になるにつれて互いの間隔が広くなるように傾斜し、前記溝部の車室外側の側壁の内面が前記溝深さ方向に対して成す第3傾斜角は前記第1傾斜角よりも大きく設定されているから、成形型を用いて溝部を成形する際に必要な抜き勾配を十分確保することができる。
ところで、前記溝深さ方向に対して第3傾斜角を成す溝部の車室外側の側壁の内面側は、フロントピラートリムに覆い隠されて露出しない。他方、前記溝深さ方向に対して第1傾斜角を成す溝部の車室内側の側壁の内面側は意匠側として車室内に露出する。そのために、前記第1傾斜角がデザインの面で制限を受けて小さい値にしか設定できないことがある。このような場合であっても、前記第1傾斜角が小さくなった分だけ前記第3傾斜角を大きく設定することで、前記抜き勾配を十分確保することができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記差し込み孔の車室外側に位置する前記溝部の側壁部分に、この側壁部分の内面の下端に高低差をつける切り欠きが前記差し込み孔に連続して形成され、
前記リブは前記差し込み片の車室外側の面に複数個配置されて、前記複数個のリブが、前記側壁部分の内面の上下位置が異なる複数の下端に各別に当接していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記複数個のリブが、前記側壁部分の内面の上下位置が異なる複数の下端に各別に当接しているから、フロントピラートリムがいずれか一方の下端側を中心として車室外側に回転しようとすると、他方の下端がリブを受け止めて回転を阻止する。その結果、フロントピラートリムが車室外側に傾くことをより確実に防止することができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記切り欠きの周縁部の上端と下端との間の周縁部分は、前記下端側から上端側になるにつれて上方に位置するように傾斜していると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
前記側壁部分の内面の下端に高低差をつける手段として、切り欠きの周縁部の上端と下端との間の周縁部分に段部を設ける構造に比べると、切り欠きの一部分に応力が集中することを回避できて、切り欠きに割れが生じにくくすることができる。これにより、前記溝部の耐久性を向上させることができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記溝部の車室内側の側壁の内面に、前記差し込み片の車室内側の面が当接する段部が突設され、
前記溝部の車室内側の側壁の上下方向中間部に前記段部の上端が位置していると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
前記溝部の車室内側の側壁の上下方向中間部に前記段部の上端が位置しているから、差し込み片の車室内側の面と前記段部との擦れによって生じる粉吹きが乗員から見える位置に発生するのを防ぐことができる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記差し込み片よりも車両前方側に位置する第2の差し込み片が前記フロントピラートリムの下端前側から下方に突出し、
前記第2の差し込み片が差し込まれる第2の差し込み孔が前記溝部の底壁の前端部に形成され、
前記第2の差し込み片は、前記溝部の底壁の前端部の上下両面に係合する係合部を備えて、前記第2の差し込み片の上下方向への移動が規制され、
前記第2の差し込み片の車室外側の面にリブが突設され、
前記第2の差し込み片のリブの頂部は、前記溝部の車室外側の側壁の内面に上下方向所定の長さに渡って当接すると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
一般に、フロントピラートリムは上部が車体に固定されている。そのために、フロントピラートリムの下端部をインストルメントパネル本体の溝部に上下移動不能に固定すると、車体・樹脂の公差ばらつきや温度伸縮によりフロントピラートリムが変形しやすくなる。その結果、フロントガラス側のフロントピラートリムの端縁と、フロントガラスの周部に施されているセラミック塗装の端縁との間の車幅方向の距離が一定にならず、見栄えが低下するという問題がある。しかしながら、フロントピラートリムの下端部の車両前方側の端部には、下側になるにつれて車室内側に位置するように円弧状に湾曲する曲面部が設けられており、フロントピラートリムの前側の下端部をインストルメントパネル本体の溝部に上下移動不能に固定しても、前記曲面部が撓んでフロントピラートリムの前記変形を吸収することができる。
そこで、本発明の上記の構成では、前記第2の差し込み片の係合部が前記溝部の底壁の前端部の上下両面に係合して、第2の差し込み片の上下方向への移動が規制されている。これにより、フロントガラスに臨むフロントピラートリムの下端部の車両前方側の端部とインストルメントパネルの側部との間に段差が生じるのを回避することができる。その結果、外観品質を向上させることができる。
また、第2の差し込み片のリブは、溝部の車室外側の側壁の内面に対して上下方向に移動可能に構成しなくてもよいことから、第2の差し込み片のリブの頂部は、前記溝部の車室外側の側壁の内面に上下方向所定の長さに渡って当接している。これにより、フロントピラートリム車室外側への転びをより確実に防止することができる。(請求項6)
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、
フロントピラートリムが車室内側や車室外側に傾くことを防止することができ、合わせ部における隙間の発生やズレを防止できて外観品質を向上させることができるフロントピラートリムとインストルメントパネルの合わせ構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】フロントピラートリムとインストルメントパネルの側部とを示す斜視図
図2図1のZ矢視図
図3図1のY矢視図
図4】フロントピラートリムとインストルメントパネルの分解斜視図
図5】差し込み片のリブと溝部の切り欠きとの係合状態を示す斜視図
図6図4のX矢視図
図7図6のX1矢視部
図8】(a)は図3のA−A断面図、(b)は図3のB−B断面図(c)は第1傾斜角と第2傾斜角と第3傾斜角を示す図
図9】(a)は第2差し込み片と第2差し込み孔との係合構造を車室外側から見た斜視図、(b)は第2差し込み片と第2差し込み孔との係合構造を上方から見た斜視図
図10図9(a)のC−C断面図
図11図1のD−D断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1図2に示すように、自動車の車室の前部にインストルメントパネル1が設けられ、インストルメントパネル1の側部1Sの前半部側からフロントピラー11が後ろ上方に延びている。インストルメントパネル1の上壁30(図2参照)の上面にはエアバッグリッド17が取り付けられている。図1の符号Gはフロントガラスである。
【0020】
[フロントピラートリム15の構造]
図11に示すように、フロントピラー11は、サイドボディアウタパネル12とフロントピラーリンフォース13とフロントピラーインナパネル14と樹脂製のフロントピラートリム15とから成る。そして、サイドボディアウタパネル12とフロントピラーリンフォース13とフロントピラーインナパネル14との車両後方側Rrの側部にオープニングトリム16の取り付け基部16Kが外嵌している。フロントピラートリム15は、横断面において車室内側W1に膨出した屈曲形状に成形されている。図2に示すように、フロントピラートリム15の下端部にはインストルメントパネル1の側部1Sが重ね合わされている。
【0021】
[フロントピラートリム15とインストルメントパネル1の合わせ構造]
図4に示すように、インストルメントパネル本体9の車室外側W2の側部に車両前後方向に沿う断面U字状の溝部51が設けられている。そして、溝部51の底壁52に、車両前方側Frから順に第2差し込み孔41B(第2の差し込み孔に相当)・第1差し込み孔41A・第3差し込み孔41C・第4差し込み孔41Dが形成されている。
【0022】
前記第1差し込み孔41A〜第4差し込み孔41Dは溝部51の底壁52の全幅にわたって形成されるとともに、溝部51の長手方向に長い長孔に形成されている。そして、前記第1差し込み孔41A〜第4差し込み孔41Dに各別に差し込まれる第1差し込み片31A〜第4差し込み片31Dが、フロントピラートリム15の下端部から下方に突出している。
【0023】
次に、前記第1差し込み孔41Aへの第1差し込み片31Aの挿入係合構造について説明する。
図5図8(a),図8(b)に示すように、第1差し込み片31Aの車室外側W2の面31Nに、上下方向に沿う第1リブ32と第2リブ33が突設されている。第1リブ32と第2リブ33は、第1差し込み片31Aの上方のフロントピラートリム本体部側まで延びている。これにより、第1リブ32と第2リブ33の強度を強くすることができる。第1リブ32は第2リブ33よりも車両前方側Frに位置する。第1リブ32と第2リブ33は溝部51の長手方向(車両前後方向)に間隔を空けて互いに平行に位置している。
【0024】
そして、前記第1差し込み片31Aが第1差し込み孔41A(図4図6参照)に差し込まれた組み付け状態(図8(a),図8(b)参照)で、第1リブ32と第2リブ33の頂部32T,33Tが、溝部51の車室外側W2の側壁54の内面54Mに当接するとともに、第1差し込み片31Aの車室内側W1の面31Mが、溝部51の車室内側W1の側壁56の内面56Mに当接している。
【0025】
これにより、フロントピラートリム15が車室内側W1に傾くこと(図8(b)に示す矢印C1方向に回転すること)や、車室外側W2に傾くこと(図8(a)に示す矢印C2方向に回転すること)を防止することができ、フロントピラートリム15の下端部とインストルメントパネル1の側部1Sとの合わせ部の隙間を一定に保つことができる。その結果、前記合わせ部における隙間の発生やズレを防止して外観品質を向上させることができる。
【0026】
フロントピラートリム15の下端部を溝部51に挿入する場合、フロントピラートリム15を車室内側W1に傾斜させて、フロントピラートリム15の下端部を溝部51に挿入する。図8(a),図8(b)に示すように、第1差し込み片31Aの下端部31Kは、下側ほど車室内側W1に位置するように傾斜しており、前記下端部31Kを真っ直ぐ下を向くようにして溝部51に挿入することができる。これにより、前記下端部31Kを溝部51に円滑に挿入することができる。
図8(a),図8(b)に示すように、第1リブ32の下端面32Kと第2リブ33の下端面33Kとは、下側ほど車室内側W1に位置するように傾斜している。これにより、前記第1差し込み片31Aを前記第1差し込み孔41Aに差し込む際に、第1リブ32の下端面32Kと第2リブ33の下端面33Kとが、溝部51の車室外側W2の側壁54にガイドされやすくなる。その結果、組み付け性を向上させることができる。
【0027】
[フロントピラートリム15とインストルメントパネル1の合わせ構造の詳細構造]
図8(a),図8(b)に示すように、前記溝部51の車室内側W1の側壁56の内面56Mと、車室外側W2の側壁54の内面54Mとは、上側になるにつれて互いの間隔が広くなるように傾斜している。従って、成形型を用いて溝部51を成形する際に必要な抜き勾配を十分確保することができる。
【0028】
詳述すると、図8(a),図8(b),図8(c)に示すように、溝部51の車室内側W1の側壁56の内面56Mが溝部51の溝深さ方向(略鉛直方向である)に対して成す第1傾斜角θ1と、組み付け状態でフロントピラートリム15の下端部の意匠面15Mが溝深さ方向に対して成す第2傾斜角θ2とは略同一に設定されている。さらに、溝部51の車室外側W2の側壁54の内面54Mが前記溝深さ方向に対して成す第3傾斜角θ3は、前記第1傾斜角θ1よりも大きく設定されている。
【0029】
前記第1傾斜角θ1と第2傾斜角θ2が略同一に設定されているから、フロントピラートリム15が上下方向にずれても、フロントピラートリム15の下端部とインストルメントパネル1の側部1Sとの合わせ部のズレが目立つことがない。
【0030】
前記溝深さ方向に対して第3傾斜角θ3を成す溝部51の車室外側W2の側壁54の内面54M側は、フロントピラートリム15に覆い隠されて露出しない。他方、前記溝深さ方向に対して第1傾斜角θ1を成す溝部51の車室内側W1の側壁56の内面56M側は意匠側として車室内に露出する。そのために、前記第1傾斜角θ1がデザインの面で制限を受けて小さい値にしか設定できないことがある。このような場合であっても、前記第1傾斜角θ1が小さくなった分だけ前記第3傾斜角θ3を大きく設定することで、前記抜き勾配を十分確保することができる。
【0031】
図6に示すように、前記第1差し込み孔41Aの車室外側W2に位置する溝部51の側壁部分54Aに、この側壁部分54Aの内面54Mの下端に高低差をつける切り欠き42が、第1差し込み孔41Aに連続して形成されている。
【0032】
前記切り欠き42は前側周縁部44(切り欠きの周縁部の上端と下端との間の周縁部分に相当)と後側周縁部43とを備えている。前側周縁部44は、車両後方側Rrになるにつれて上方に位置するように傾斜した直線状に形成されている。前側周縁部44の前端は第1差し込み孔41Aの前端よりも車両後方側Rrに位置する。後側周縁部43は、前側周縁部44の後端から車両後方側Rrに略水平に延びている。
【0033】
そして、図5図8(a),図8(b)に示すように、第1リブ32と第2リブ33が、前記側壁部分54Aの内面54Mの上下位置が異なる複数の下端54K1,54K2に各別に当接している。
【0034】
これにより、フロントピラートリム15がいずれか一方の下端(54K1又は54K2)側を中心として車室外側W2に回転しようとすると、他方の下端(54K2又は54K1)がリブ(32又は33)を受け止めて回転を阻止する。その結果、フロントピラートリム15が車室外側W2に傾くことをより確実に防止することができる。
【0035】
前記側壁部分54Aの内面54Mの下端に高低差をつける手段として、例えば、切り欠き42の周縁部の上端と下端との間の周縁部分に段部を設ける構造が考えられる。しかしながら、この構造では、切り欠き42の一部分に応力が集中して、切り欠き42に割れが生じる。これに対して、本発明によれば、前側周縁部44は、切り欠き42の周縁部(前側周縁部44と後側周縁部43)の下端側から上端側になるにつれて上方に位置するように傾斜しているから、切り欠き42の一部分に応力が集中することを回避できて、切り欠き42に割れが生じにくくすることができる。その結果、前記溝部51の耐久性を向上させることができる。
【0036】
図7図8(a),図8(b)に示すように、溝部51の車室内側W1の側壁56の内面56Mに、第1差し込み片31Aの車室内側W1の面31Mが当接する段部60が突設されている。前記段部60は溝部51の長手方向に長い長方形状に形成され、第1差し込み孔41Aの略全長にわたる長さに設定されている。段部60の上端60J(図7参照)は、溝部51の車室内側W1の側壁56の上下方向中間部に位置し、前記側壁56の上面よりも長さL2だけ下方に位置している。これにより、第1差し込み片31Aの車室内側W1の面31Mと段部60との擦れによって生じる粉吹きが乗員から見える位置に発生するのを防ぐことができる。
【0037】
図4に示すように、第2差し込み片31B(第2の差し込み片に相当)は、第1差し込み片31Aよりも車両前方側Frに位置し、フロントピラートリム15の下端前側から下方に突出している。図9(a),図9(b)に示すように、第2差し込み片31Bは、溝部51の底壁52の前端部52Aの上下両面に係合する係合部38を備えて、第2差し込み片31Bの上下方向への移動が規制されている。前記係合部38は、第2差し込み片31Bに、車両前方側Frに開放する断面U字状の係合溝28を形成して構成されている。この係合溝28に溝部51の底壁52の前端部52Aが挿入される。
【0038】
図10に示すように、第2差し込み片31Bの車室外側W2の面31Pには車両前後方向から見て台形状の第3リブ35が突設されている。第3リブ35の頂部35Tは、溝部51の車室外側W2の側壁54の内面54Mに、この内面54Mの上下方向全長にわたって当接している。前記第2差し込み片31Bは、車両前後方向から見た断面において、上半部が車室内側W1に凸の円弧状に形成され、下半部が下側になるにつれて車室内側W1に位置するように直線状に傾斜している。
【0039】
前記フロントピラートリム15は上部が車体と固定されている。そのために、例えば、フロントピラートリム15の下端部をインストルメントパネル本体9の溝部51に上下移動不能に固定すると、車体・樹脂の公差ばらつきや温度伸縮によりフロントピラートリム15が変形しやすくなる。その結果、フロントガラスG側のフロントピラートリム15の端縁15E(図11参照)と、フロントガラスGの周部に施されているセラミック塗装の端縁Eとの間の車幅方向の距離L1が一定にならず、見栄えが低下するという問題がある。
この問題を解消するために、前記第1差し込み片31A・第3差し込み片31C・第4差し込み片31Dは、第1差し込み孔41A・第3差し込み孔41C・第4差し込み孔41Dに上下移動可能に挿入されている。さらに、図8(a),図8(b)に示すように、第1リブ32と第2リブ33の頂部32T,33Tは、フロントピラートリム15の意匠面15Mと略平行に設定されて、フロントピラートリム15の下端部が、インストルメントパネル1の溝部51に対して上下移動可能に構成されている。
しかしながら、フロントピラートリム15の下端部の車両前方側Frの端部には、下側になるにつれて車室内側W1に位置するように円弧状に湾曲する曲面部R(図1参照)が設けられており、フロントピラートリム15の前側の下端部をインストルメントパネル1の溝部51に上下移動不能に固定しても、前記曲面部Rが撓んでフロントピラートリム15の前記変形を吸収することができる。
そこで、本発明の上記の構成では、前述のように、前記第2差し込み片31Bの係合部38が溝部51の底壁52の前端部52Aの上下両面に係合して、第2差し込み片31Bの上下方向への移動が規制されるよう構成されている。これにより、フロントガラスGに臨むフロントピラートリム15の下端部の車両前方側Frの端部とインストルメントパネル1の側部1Sとの間に段差が生じるのを回避することができる。その結果、外観品質を向上させることができる。
また、第2差し込み片31Bの第3リブ35は、溝部51の車室外側W2の側壁54の内面54Mに対して上下方向に移動可能に構成しなくてもよいことから、前述のように、第3リブ35の頂部35T(図10参照)は、溝部51の車室外側W2の側壁54の内面54Mに、この内面54Mの上下方向全長にわたって当接している。これにより、フロントピラートリム15の車室外側W2への転びをより確実に防止することができる。
【0040】
図8(a)に示すように、第1差し込み片31Aの下端部31Kの折曲点Pと溝部51の車室内側W1の側壁56の下端56Kとの間、及び、第2リブ33の傾斜した下端面33Kの上端と、前記側壁部分54Aの内面54Mの下端54K2との間に、フロントピラートリム15とインストルメントパネル1の上下方向のばらつき(組み付け誤差、製作誤差、車室内の温度変化による膨張・収縮に起因する上下方向のばらつき)を吸収するための距離L5,L4が確保されている。
【符号の説明】
【0041】
1 インストルメントパネル
1S インストルメントパネルの側部
9 インストルメントパネル本体
15 フロントピラートリム
31A 差し込み片(第1差し込み片)
31B 第2の差し込み片(第2差し込み片)
31M 差し込み片の車室内側の面
31N 差し込み片の車室外側の面
32 リブ(第1リブ)
32T リブの頂部(第1リブの頂部)
33 リブ(第2リブ)
33T リブの頂部(第2リブの頂部)
35 リブ(第3リブ)
35T リブの頂部(第3リブの頂部)
38 係合部
41A 差し込み孔(第1差し込み孔)
41B 第2の差し込み孔(第2差し込み孔)
42 切り欠き
44 切り欠きの周縁部の上端と下端との間の周縁部分(前側周縁部)
51 溝部
52 底壁
52A 底壁の前端部
54 溝部の車室外側の側壁
54A 側壁部分
54K1,54K2 側壁部分の内面の上下位置が異なる複数の下端
54M 溝部の車室外側の側壁の内面(側壁部分の内面)
56 溝部の車室内側の側壁
56M 溝部の車室内側の側壁の内面
60 段部
60J 段部の上端
Fr 車両前方側
W1 車室内側
W2 車室外側
θ1 第1傾斜角
θ2 第2傾斜角
θ3 第3傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11