(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、シーンから観測された色情報を手掛かりに、シーン中の照明と物体の分光特性を推定する分光画像処理技術に関し、特に、高い波長分解能を持つカメラで観測された分光スペクトルを用いて、シーン中の物体色または照明色に関する仮定を置くことなく、照明の分光分布と物体の表面反射率を推定する分光画像処理技術に関する。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明による第1の実施の形態の概要を示すブロック図である。
図1に示す第1の実施の形態は、マルチスペクトル情報取得手段11と、照明・反射率制約範囲保持メモリ12と、色仮定なし分光推定手段13を備える。
【0019】
本発明による第1の実施の形態を構成する各手段の概要を説明する。
【0020】
マルチスペクトル情報取得手段11は、シーンから取得したマルチスペクトル情報をもとに、最適化に十分な数のスペクトル情報を抽出し、出力する。
【0021】
照明・反射率制約範囲保持メモリ12は、照明の分光分布と物体の表面反射率の制約範囲を保持する。
【0022】
色仮定なし分光推定手段13では、マルチスペクトル情報取得手段11で算出された最適化に十分な数のスペクトル情報をもとに、照明・反射率制約範囲保持メモリ12に保持された照明の分光分布と物体の表面反射率の制約範囲を満たすように、観測方程式を生成し、この観測方程式を解くことで、照明の分光分布と物体の表面反射率とを算出する。そして、色仮定なし分光推定手段13は、算出した照明の分光分布と物体の表面反射率とを出力する。
【0023】
本発明による第1の実施の形態は、上述した関連技術の構成と比較して、マルチスペクトル情報取得手段11と、照明・反射率制約範囲保持メモリ12と、色仮定なし分光推定手段13が異なる。以下、マルチスペクトル情報取得手段11と、照明・反射率制約範囲保持メモリ12と、色仮定なし分光推定手段13の構成の詳細を説明する。
【0024】
マルチスペクトル情報取得手段11は、
図11における色情報取得手段1と同様に、シーンからマルチスペクトル情報を得る。ただし、色情報取得手段1では、出力する色情報の数を考慮しないのに対し、マルチスペクトル情報取得手段11は、後段の色仮定なし分光推定手段13での処理を考慮し、最適化に必要な数のスペクトル情報を出力する点で異なる。ここでNは観測される分光スペクトルのバンド数、Mは観測される分光スペクトルの数、P
allは推定する全パラメタ数、P
Iは一つの照明の分光分布を再現するのに必要なパラメタ数、P
Rは一つの物体の表面反射率を再現するのに必要なパラメタ数を示すとすると、例えば、式(1)を満たす十分な数の線形独立なスペクトル情報を出力する。
【0025】
【数1】
図2は、本発明による第1の実施の形態を示すブロック図である。マルチスペクトル情報取得手段11の内部の構成を説明する。
図2に示すマルチスペクトル情報取得手段11は、マルチスペクトル画像撮影手段111とスペクトル選択手段112とを備える。
【0026】
マルチスペクトル画像撮影手段111は、シーンのマルチスペクトル情報が記録されたマルチスペクトル画像を出力する。
【0027】
スペクトル選択手段112は、マルチスペクトル画像撮影手段111によって得たマルチスペクトル画像のデータの中から、例えば、式(1)の条件を満たす、線形独立な関係にある複数のスペクトル情報を選択し出力する。
【0028】
図11における分光推定手段3では、予め設定した物体色または照明色に関する仮定に基づいて、シーン中の照明の分光分布および物体の表面反射率を推定する。具体的には、設定した物体色または照明色に関する仮定を満たすのに必要なエネルギーを定義し、これを最適化することにより、シーン中の照明の分光分布および物体の表面反射率を推定する。例えば、「物体色の平均が灰色である」(グレイワールド仮説)、「画像中の最も明るい物体は白色である」、「画像中に肌の色が含まれる」、「照明は白色である」などの仮定を満たすために必要なエネルギーを算出し、算出されたエネルギーが最適となるときの照明の分光分布および物体の表面反射率を推定値として出力する。
【0029】
一方、第1の実施の形態における色仮定なし分光推定手段13は、物体色または照明色に関する仮定を用いることなく、照明の分光分布および物体の表面反射率を算出する。ここで、照明の分光分布と物体の表面反射率の制約範囲を用いて照明の分光分布および物体の表面反射率を高精度に推定する。これら分光特性の推定には、式(1)を満たす十分な数の線形独立なスペクトル情報と、照明の分光分布および物体の表面反射率のモデル式から観測方程式を生成し、この観測方程式を解くことで照明の分光分布および物体の表面反射率を推定値として出力する。
【0030】
色仮定なし分光推定手段13の内部の構成を説明する。
図2に示す色仮定なし分光推定手段13は、観測方程式生成手段131と方程式計算手段132とを備える。
【0031】
観測方程式生成手段131では、N次元のベクトルである、照明の分光分布Iおよび物体の表面反射率R のモデルを、照明の分光分布の基底ベクトルI
pIbasisと物体の表面反射率の基底ベクトルR
pRbasisそれぞれに対し、可変な重み係数a
pI,b
pRを用いて式(2)のように生成し、モデル式(2)における基底ベクトルの各波長成分I
pIbasis (λ
n)、R
pRbasis (λ
n)と、式(1)を満たす最適化に十分な数の線型独立なスペクトル情報E
m(λ
n)(m=1,…,M, n=1,…,N)が与えられるとき、式(3)のような観測方程式を生成する。式(1)の条件から方程式の数が未知数の数以上となり、かつ、線形独立なスペクトル情報で構成されるため、照明の分光分布I(λ
n)と物体の表面反射率R(λ
n)の最適解が得られることになる。
【0033】
【数3】
方程式計算手段132は、式(3)に示す観測方程式を解く。
【0034】
第1の実施の形態の照明・反射率制約範囲保存メモリ12は、照明分光分布や物体表面反射率の基底ベクトルを保持し、これら基底ベクトルを用いて、様々な制約方法によって制約された範囲に分布する照明分光分布および物体表面反射率を出力する。例えば、照明の分光分布の場合には、
図8に示すように、日射モデルから計算される日射スペクトルの成分である、直達成分I
1basis、散乱成分I
2basisを基底ベクトルに用いることが考えられる。この日射モデルでは日時や場所などの容易に取得可能な照明条件によって、照明の分光分布の分布範囲が制約することが可能である。また、非特許文献1(新編色彩科学ハンドブック第2版 p69-72)に示すCIE昼光における、自然昼光の相対分光分布の平均ベクトルおよび主成分ベクトルを、照明の分光分布の基底ベクトルに用いることが考えられる。この主成分ベクトルの数を制限することや、非特許文献1に示される方法を用いて、主成分ベクトルの係数を相関色温度に基づいて計算することで、照明分光分布の分布範囲を制約できる。物体の表面反射率の場合には、被写体として計測される物体の反射率データベースの平均ベクトルおよび主成分ベクトルを基底ベクトルとして用いることが考えられ、この主成分ベクトルの数を制限することで物体の反射率の分布範囲を制約できる。例えば、
図9に示すマクベスカラーチャートから生成した、平均ベクトルおよび主成分ベクトルを基底ベクトルとして用いることが考えられる。
【0035】
照明・反射率制約範囲保存メモリ12の内部の構成を説明する。
図2に示す照明・反射率制約範囲保存メモリ12は、日射スペクトル成分計算手段121と表面反射率基底ベクトル保存メモリ122と有限次元線型和生成手段123とを備える。
【0036】
日射スペクトル成分計算手段121は、日射モデルなどを用いて算出される日射スペクトル成分などを算出し、各成分を、P
I(< N)個の基底ベクトルI
pIbasis (
p
I =1,…, P
I)として保持する。
【0037】
表面反射率基底ベクトル保存メモリ122は、P
R(<N)個の、物体表面反射率の基底ベクトルR
pRbasis (
p
R =1,…, P
R)を保持する。
【0038】
有限次元線型和生成手段123では、照明分光分布の基底ベクトルとして保持された日射スペクトル成分I
pIbasisと物体表面反射率の基底ベクトルR
pRbasisそれぞれに対し、可変な重み係数a
pI,b
pRを用いて、式(2)に示すように、線型和をとることで、照明の分光分布I、物体の表面反射率RをN次元のベクトルとして生成する。
【0039】
図10は照明分光分布の制約範囲のイメージを表した図である。例えば、Nが3、P
Iが2のとき、
図10に示すように、照明の分光分布の波長毎の強度を各次元の座標の値とし、一つの照明の分光分布が座標上の一点として表わされる照明の分光分布が取り得る分布空間では、基底ベクトルの線型和として表わされる照明の分光分布は平面となる。
【0040】
すなわち、これは、照明の分光分布の取り得る範囲が制約されることを意味する。同様にして、式(2)の方法で、照明の分光分布I、物体の表面反射率Rを生成することで、照明の分光分布I、物体の表面反射率R がN次元の空間において取り得る範囲についても制約される。このようにして照明の分光分布Iと物体の表面反射率Rの制約範囲を算出する。
【0041】
図3は、本発明を実施するための第1の実施の形態における分光画像処理方法の動作を示すフローチャートである。
【0042】
マルチスペクトル画像撮影手段111は、シーンからマルチスペクトル情報を獲得し、マルチスペクトル画像を出力する(ステップS101)。
【0043】
スペクトル選択手段112は、マルチスペクトル画像からスペクトルを選択し、十分な数の線型独立なスペクトル情報を出力する(ステップS102)。
【0044】
日射スペクトル成分計算手段121は、自動で取得可能な照明条件を自動で取得する(ステップS103)。
【0045】
日射スペクトル成分計算手段121は、日射スペクトル成分を計算し、出力する(ステップS104)。
【0046】
限次元線型和生成手段123は、日射スペクトル成分と表面反射率基底ベクトル保存メモリ122に保持してある表面反射率の基底ベクトルをもとに、有照明の分光分布と物体の表面反射率の制約範囲をそれぞれ生成する(ステップS105)。
【0047】
観測方程式生成手段131は、十分な数の線型独立なスペクトル情報と照明分光分布と物体表面反射率の制約を用いて、最適解の得られる観測方程式を生成する(ステップS106)。
【0048】
方程式計算手段132は、最適解の得られる観測方程式を解き、物体の表面反射率および照明の分光分布を出力する(ステップS107)。
【0049】
第1の実施の形態は、マルチスペクトル情報取得手段11によってシーンから十分な数の線型独立なスペクトル情報を獲得し、照明・反射率制約範囲保存メモリ12に保持される照明の分光分布および物体の表面反射率の制約範囲を得ることで、色仮定なし分光推定手段13を用いて物体色や照明色の仮定を用いずに、照明の分光分布と物体の表面反射率を推定することを可能としている。そのため、特定の仮定を満たすようなシーンでなくとも、安定して照明の分光分布および物体の表面反射率を精度よく推定することが可能となる。
【0050】
第1の実施の形態における分光画像処理方法は、日射スペクトル成分計算手段121を用いて日射スペクトル成分を計算することで、照明において狭い制約範囲を出力することを可能とする。照明において狭い範囲の制約を得ることで、観測方程式生成手段131は、推定するパラメタの数が減り計算の容易な観測方程式の生成が可能となり、その結果、方程式計算手段132は、高精度に推定された物体表面反射率および照明分光分布を出力することが可能となる。
【0051】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明を実施するための第2の実施の形態を示すブロック図である。
図4にも示されるように、本発明を実施するための第2の実施の形態における分光画像処理方法では、色仮定なし分光推定手段23が第1の実施の形態における色仮定なし分光推定手段13と異なり、その他の構成要素については第1の実施の形態と同様である。第1の実施の形態と同様の構成要素については、
図2と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0052】
第2の実施の形態では、色仮定なし分光推定手段23は、照明・反射率推定値算出手段231と観測スペクトル推定値算出手段232と誤差算出手段233と誤差最適化手段234を備える。
【0053】
照明・反射率推定値算出手段231は、式(2)のような照明の分光分布I(λ
n)と、物体の表面反射率R(λ
n)の制約範囲のもと、照明の分光分布および物体の表面反射率の重み係数に初期パラメタを与えることで、照明の分光特性および物体の表面反射率の推定値を算出する。
【0054】
推定観測スペクトル推定値算出手段232は、照明・反射率推定値算出手段231で算出された照明の分光特性および物体の表面反射率の推定値を式(3)の右辺に代入し観測スペクトルの推定値を算出する。
【0055】
誤差算出手段233は、観測方程式(3)の誤差を考慮し、推定観測スペクトル推定値算出手段232で算出された観測スペクトル推定値(式(3)の右辺)と、最適化に十分な数の色情報として与えられた複数のマルチスペクトルから得られる観測値E
m(λ
n)を用いて、誤差を算出する。照明の分光分布、物体の表面反射率、観測スペクトルの計測誤差をそれぞれ、ε
I(λ
n), ε
R(λ
n), ε
L(λ
n)とすると、観測方程式(3)は式(4)のように表せる。これらの計測誤差の最適化を近似する方法として、例えば、式(5)に示すような最小二乗誤差エネルギーを定義し、このエネルギーを最小化する方法がある。
【0058】
誤差最適化手段234は、例えばLevenberg-Marquardt法などの非線型最適化方法や、粗密探索法を用いて、誤差算出手段233で算出される誤差を最適化する。具体的には、誤差が最小となるように、照明・反射率推定値算出手段231に与えるパラメタの更新を繰り返し、最終的に最適なパラメタから算出される物体の表面反射率および照明の分光分布を最適解として出力する。
【0059】
色仮定なし分光推定手段13では、誤差最適化手段234で算出された照明の分光分布と物体の表面反射率の推定値を出力する。
【0060】
図5は、本発明を実施するための第2の実施の形態における分光画像処理方法動作の一例を示すフローチャートである。第1の実施の形態と同様の動作については
図3と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0061】
第2の実施の形態は、以下の点で第1の実施の形態と異なる。
【0062】
照明・反射率推定値算出手段231は初期パラメタと照明の分光分布と物体の表面反射率の制約範囲をもとに、照明の分光分布と物体の表面反射率の推定値を算出する(ステップS206)。
【0063】
観測スペクトル推定値算出手段232は照明の分光分布と物体の表面反射率の推定値をもとに、観測スペクトルの推定値を算出する(ステップS207)。
【0064】
誤差算出手段233は、観測スペクトルの推定値と、観測された十分な数の線型独立なスペクトル情報の誤差を算出する(ステップS208)。
【0065】
誤差最適化手段234は、誤差を用いて、誤差最適化手段ごとに設定された値を算出し、算出した値が予め規定された値より小さければステップS108に、小さくなければステップS210の動作に移動する(ステップS209)。
【0066】
誤差最適化手段234は、誤差を最小化するように照明・反射率推定値算出手段231に与えるパラメタを更新して、S206の動作に戻る(ステップS210)。
【0067】
[第3の実施の形態]
図6は、本発明を実施するための第3の実施の形態を示すブロック図である。
図6にも示されるように、本発明を実施するための第3の実施の形態における分光画像処理方法では、マルチスペクトル情報取得手段21が第1の実施の形態のマルチスペクトル情報取得手段11と異なり、その他の構成要素については第1の実施の形態と同様である。第1の実施の形態と同様の構成要素については、
図2と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0068】
第3の実施の形態では、マルチスペクトル情報取得手段21は、マルチスペクトル複数回数計測手段211を備える。
【0069】
マルチスペクトル複数回数計測手段211は、観測されたシーン中に十分な数の線形独立なスペクトル情報が含まれない場合に対応できるように、照明色が同一とみなせる範囲で、式(1)に示される条件を満たす十分な数の線形独立なスペクトル情報に達するまで異なるシーンを撮影し、後段の最適化に十分な数の線形独立な関係にある複数のスペクトル情報を出力する。
【0070】
即ち、複数回数計測手段211は、例えば、シーン中に十分な線形独立な観測スペクトルが存在しないような均一シーンの撮影において、十分な線形独立な観測スペクトルが得られるまでシーン撮影を繰り返す(動画撮影も含む)際に使用することができる。
【0071】
図7は、本発明を実施するための第3の実施の形態における分光画像処理方法動作の一例を示すフローチャートである。第1の実施の形態と同様の動作については
図3と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0072】
第3の実施の形態は、以下の点で第1の実施の形態と異なる。
【0073】
マルチスペクトル複数回数計測手段211は、シーンからマルチスペクトル情報を計測する(ステップS301)。
【0074】
マルチスペクトル複数回数計測手段211は、シーンから計測されたマルチスペクトル情報が、十分な数の線型独立なマルチスペクトル情報である場合はステップS106に、そうでない場合はステップS301に移動する(ステップS302)。
【0075】
第3の実施の形態における分光画像処理方法は、マルチスペクトル複数回計測手段211を備え、式(1)に示される条件を満たす十分な数の線形独立なスペクトル情報に達するまで異なるシーンを撮影することで、観測されたシーン中に十分な数の線形独立なスペクトル情報が含まれない場合でも、十分な数の線形独立なスペクトル情報を得るといった効果が得られる。
【0076】
尚、上述した説明からも明らかなように、各部をハードウェアで構成することも可能であるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。この場合、プログラムメモリに格納されているプログラムで動作するプロセッサによって、上述した各実施の形態と同様の機能、動作を実現させる。また、上述した実施の形態の一部の機能のみをコンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【0077】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0078】
(付記1) シーンのマルチスペクトル画像から観測スペクトル情報を選択し、
照明の基底ベクトルと表面反射率の基底ベクトルを用いて、照明の分光分布の制約範囲と物体の表面反射率の制約範囲を生成し、
前記観測スペクトル情報と、前記照明の分光分布の制約範囲と、前記物体の表面反射率の制約範囲とを用いて、前記照明の基底ベクトルの重み係数と前記表面反射率の基底ベクトルの重み係数とをパラメタとする観測方程式を生成し、
前記観測方程式から前記シーンの照明の分光分布と物体の表面反射率とを算出する
分光画像処理方法。
【0079】
(付記2) 前記照明の分光分布の制約範囲と前記物体の表面反射率の制約範囲のもと、前記観測方程式の重み係数に初期パラメタを与えて、前記観測スペクトルの推定値を算出し、
前記観測スペクトル情報と前記観測スペクトルの推定値の誤差に基づき、前記重み係数を更新し、
前記誤差が所定内となったときの前記観測スペクトルの推定値を構成する照明の分光分布と物体の表面反射率とを、前記シーンにおける照明の分光分布と物体の表面反射率として算出する
付記1に記載の分光画像処理方法。
【0080】
(付記3) 前記観測スペクトル情報として、前記マルチスペクトル画像から線形独立なスペクトル情報を選択する
付記1又は付記2に記載の分光画像処理方法。
【0081】
(付記4) 前記照明の基底ベクトルとして、日射スペクトルの直達成分ベクトルと散乱成分ベクトルとを用いる
特徴とする付記1から付記3のいずれかに記載の分光画像処理方法。
【0082】
(付記5) 前記線形独立なスペクトル情報が前記照明の基底ベクトルの重み係数の個数と前記表面反射率の基底ベクトルの重み係数の個数の総和と同数かそれより多く観測できるまで複数回計測する
付記3又は付記4に記載の分光画像処理方法。
【0083】
(付記6) シーンのマルチスペクトル画像から観測スペクトル情報を選択するスペクトル情報選択手段と、
照明の基底ベクトルと表面反射率の基底ベクトルを用いて、照明の分光分布の制約範囲と物体の表面反射率の制約範囲を生成する制約範囲生成手段と、
前記観測スペクトル情報と、前記照明の分光分布の制約範囲と、前記物体の表面反射率の制約範囲とを用いて、前記照明の基底ベクトルの重み係数と前記表面反射率の基底ベクトルの重み係数とをパラメタとする観測方程式を生成する観測方程式生成手段と、
前記観測方程式から前記シーンの照明の分光分布と物体の表面反射率とを算出する算出手段と
を有する分光画像処理装置。
【0084】
(付記7) 前記算出手段は、
前記照明の分光分布の制約範囲と前記物体の表面反射率の制約範囲のもと、前記観測方程式の重み係数に初期パラメタを与えて、前記観測スペクトルの推定値を算出する手段と、
前記観測スペクトル情報と前記観測スペクトルの推定値の誤差に基づき、前記重み係数を更新する手段と、
前記誤差が所定内となったときの前記観測スペクトルの推定値を構成する照明の分光分布と物体の表面反射率とを前記シーンにおける照明の分光分布と物体の表面反射率として算出する手段と
を有する付記6に記載の分光画像処理装置。
【0085】
(付記8) 前記スペクトル情報選択手段は、前記マルチスペクトル画像から線形独立なスペクトル情報を選択する
付記6又は付記7に記載の分光画像処理装置。
【0086】
(付記9) 前記スペクトル情報選択手段は、前記照明の基底ベクトルとして、日射スペクトルの直達成分ベクトルと散乱成分ベクトルとを用いる
特徴とする付記6から付記8のいずれかに記載の分光画像処理装置。
【0087】
(付記10) 前記スペクトル情報選択手段は、前記線形独立なスペクトル情報が前記照明の基底ベクトルの重み係数の個数と前記表面反射率の基底ベクトルの重み係数の個数の総和と同数かそれより多く観測できるまで複数回計測する
付記8又は付記9に記載の分光画像処理装置。
【0088】
(付記11) コンピュータに、
シーンのマルチスペクトル画像から観測スペクトル情報を選択する処理と、
照明の基底ベクトルと表面反射率の基底ベクトルを用いて、照明の分光分布の制約範囲と物体の表面反射率の制約範囲を生成する処理と、
前記観測スペクトル情報と、前記照明の分光分布の制約範囲と、前記物体の表面反射率の制約範囲とを用いて、前記照明の基底ベクトルの重み係数と前記表面反射率の基底ベクトルの重み係数とをパラメタとする観測方程式を生成する処理と、
前記観測方程式から前記シーンの照明の分光分布と物体の表面反射率とを算出する処理と
を実行させるプログラム。
【0089】
以上、これまで述べてきた各実施の形態は、本発明の好的な実施形態であり、上記実施の形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲に置いて種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0090】
本出願は、2011年12月28日に出願された日本出願特願2011−288886号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。