特許第6015965号(P6015965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6015965副原料投入用旋回シュートおよび副原料投入方法
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  • 特許6015965-副原料投入用旋回シュートおよび副原料投入方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6015965
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】副原料投入用旋回シュートおよび副原料投入方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/46 20060101AFI20161013BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20161013BHJP
   B65G 11/12 20060101ALI20161013BHJP
   B65G 11/20 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   C21C5/46 103E
   C21C7/04 P
   B65G11/12
   B65G11/20 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-16439(P2014-16439)
(22)【出願日】2014年1月31日
(65)【公開番号】特開2015-143373(P2015-143373A)
(43)【公開日】2015年8月6日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高垣 壮平
(72)【発明者】
【氏名】横山 英樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 智之
(72)【発明者】
【氏名】中込 理欧
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−199019(JP,A)
【文献】 特開2002−220617(JP,A)
【文献】 特開2001−192121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/46
C21C 7/04
B65G 11/12
B65G 11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精錬容器から取鍋へ出湯される溶融金属の流れに副原料を投入する旋回シュートであって、副原料の流れ方向に向けて気体を噴射する気体噴射ノズルを、前記旋回シュートの副原料通路内部の副原料の流れ方向に2段以上の位置に、少なくとも2個設けるとともに、少なくとも1段の気体噴射ノズルが、副原料の流れ方向に対して並行して、2つ以上の吹き出し口を有することを特徴とする副原料投入用旋回シュート。
【請求項2】
前記旋回シュートの先端から500〜1000mmの位置に、少なくとも1段の気体噴射ノズルが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の副原料投入用旋回シュート。
【請求項3】
請求項1または2に記載の副原料投入用旋回シュートを用いて、各気体噴射ノズルから噴射する気体の単位時間当たりの流量を変化させて、前記旋回シュートの副原料通路内部において副原料の流れ方向に向けて噴射する気体の噴射速度を変更することにより、副原料の投入位置を変更することを特徴とする副原料投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は副原料投入設備に係わり、特に溶融金属精錬容器から別容器へ溶融金属を移す際に、該溶融金属へ副原料を精度良く投入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼工場においては、従来、精錬容器に保持した溶鋼の精錬を効率良く行うため、転炉から取鍋などへの出鋼時に、該溶鋼に精錬用副原料(溶鋼やスラグの還元剤、酸化剤、組成調整剤等であり、以下、単に副原料という)を投入することがある。その際、投入された副原料は、溶鋼と十分に攪拌されるように処置され、その投入歩留まりの向上が図られていた。
【0003】
ところが、溶鋼より比重の軽い副原料(例えばAl等の脱酸材)は、溶鋼中に溶解する前に、溶鋼上に存在するスラグにトラップされる場合や、比重が軽いために飛距離が短く目的位置に投入できず、スラグ上に浮上した状態になる場合が多い。そこで、副原料投入シュートの先端を可動式にして副原料投入位置を制御することで、出鋼時に他の容器との間で生じている溶鋼流に、該副原料を直接当てるようにして接触機会を増し、前記投入歩留まりを高めることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−199019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような方法では、まず、設備改造コストが高いことが難点である。シュートの先端部を可動式にする場合、動作させるシリンダーの設置工事や操作盤の改造等が必要となり、設備改造コストの増加は必至である。また、シュート先端部の角度を浅くした場合、転がり摩擦力が増加することで副原料の飛距離が短くなり、所定の位置に到達しない場合が考えられる。先の文献では、これを回避するために副原料通過促進手段を設けるとしているが、角度変更による転がり摩擦力の増加は避けられないため、その分の飛距離は短くなる。
【0006】
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、副原料を加速でき、副原料の飛距離を向上させ、副原料を目的位置に投入することができる副原料投入用旋回シュートおよび副原料投入方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の副原料投入用旋回シュートは、前記課題を解決するために、精錬容器から取鍋へ出湯される溶融金属の流れに副原料を投入する旋回シュートであって、副原料の流れ方向に向けて気体を噴射する気体噴射ノズルを、前記旋回シュートの副原料通路内部の副原料の流れ方向に2段以上の位置に、少なくとも2個設けるとともに、少なくとも1段の気体噴射ノズルが、副原料の流れ方向に対して並行して、2つ以上の吹き出し口を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の副原料投入方法は、前記課題を解決するために、上述した副原料投入用旋回シュートを用いて、各気体噴射ノズルから噴射する気体の単位時間当たりの流量を変化させて、前記旋回シュートの副原料通路内部において副原料の流れ方向に向けて噴射する気体の噴射速度を変更することにより、副原料の投入位置を変更することを特徴とするものである。
【0009】
なお、前記のように構成される本発明に係る副原料投入用旋回シュートにおいては、
(1)前記旋回シュートの先端から500〜1000mmの位置に、少なくとも1段の気体噴射ノズルが設けられていること
より好ましい解決手段となるものと考えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シュート長手方向に2段以上の気体噴射ノズルを配置して副原料の流れ方向に気体を噴射することで、副原料を加速し、副原料の飛距離を向上させ、副原料を目的位置に投入することができる。また、副原料の鉛直下向きの速度も加速するために、取鍋等の浴への侵入速度も大きくなり、溶融金属の攪拌も向上することが期待できる。さらに、シュート垂直断面内に複数個の気体噴射ノズルを配置した場合は、副原料の飛距離向上と左右方向への分散抑止効果による目的位置への投入精度向上が可能となる。加えて、気体の噴射速度を変更することで投入位置を変化させることができる。さらにまた、特許文献1にあるような先端可動式のシュートのようにシリンダー設置等が必要ないため、設備投資コストも比較的安価である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の副原料投入用旋回シュートの一例を説明するための図である。
図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の副原料投入用旋回シュートの好適な一例を説明するための図である。
図3】本発明による脱酸材(Al)の歩留まり向上を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の副原料投入用旋回シュートの一例を説明するための図である。図1に示す例において、本発明の副原料投入用旋回シュート1は、上方の旋回部2と旋回部2と一体で傾斜を有して形成された旋回シュート3とから構成されている。旋回部2は、旋回用モータ4により、図中両矢印方向に旋回する。この副原料投入用旋回シュート1は、好ましくは鋼製で筒状である。上述した副原料投入用旋回シュート1の構成は、引用文献1などに開示された旋回シュートと同じ構成である。
【0013】
図1に示す本発明の副原料投入用旋回シュート1の特徴は、旋回シュート3の副原料通路内部に、副原料の流れ方向に向けて気体を噴射する気体噴射ノズル5を設けた点である。本例では、副原料通路内部の上段および下段にそれぞれ1つ、合計で2個の気体噴射ノズル5を設けている。気体噴射ノズル5の数は2段すなわち2個に限定されるものではない。
【0014】
図1に示す例において、副原料は、旋回部2の上部から投入され、旋回シュート3の傾斜により旋回シュート3の先端まで移動し、旋回シュート3の先端から所定の位置に投入される。本実施例によれば、複数の気体噴射ノズル5を設置してあるため、副原料加速効果が大きくなり飛距離が向上することで、目的位置に副原料を投入することが可能となる。
【0015】
なお、旋回シュート3は上下方向に30°〜40°の傾斜角を有していることが好ましい。この角度より浅くなるとすなわち30°未満であると、副原料の転がり摩擦抵抗が大きくなる。逆に、これよりも深くなるとすなわち40°を超えると、副原料の加速方向が下方向に近くなるため飛距離向上につながりにくい。
【0016】
気体噴射ノズル5の少なくとも1つは旋回シュート3の下端から500mm〜1000mmの位置に設置することが好ましい。これは、前記範囲よりも下端近くに設置すると、溶融金属の飛散により閉塞する可能性が高くなり、前記範囲よりも上部側に配置すると、副原料が転がり摩擦抵抗を受ける時間が長くなり減速されるためである。
【0017】
また、旋回シュート3が屈曲部を有し角度が浅くなる場合は、少なくとも1つの気体噴射ノズル5が屈曲部上部に位置していることが好ましい。これは屈曲部における副原料の減速・詰まり防止が可能であるからである。
【0018】
図2(a)、(b)はそれぞれ本発明の副原料投入用旋回シュートの好適な一例を説明するための図である。図2(a)、(b)に示す例では、ある一段の旋回シュート3の構成を示しており、旋回シュート3の垂直断面内に複数個ここでは2個並列に気体噴射ノズル5を設けている。本例のように、気体噴射ノズル5を垂直断面内に2個以上設置する場合は、旋回シュート3の断面鉛直下方向から左右に60°の範囲内で対称位置にあることが好ましい。副原料は旋回シュート3内の底面を流れ落ちるため、前記範囲内でないと加速効果が減少する。また、左右対称位置にない場合は、副原料が旋回シュート3の下端から出た後に分散してしまい、目的位置に投入できない副原料の割合が増加する。
【0019】
上述した図1または図2(a)、(b)に示す本発明の旋回シュート3を用いた副原料投入方法では、各気体噴射ノズル5から噴射する気体の単位時間当たりの流量を変化させることで、旋回シュート3の先端からの飛距離を変更することができる。さらに、図2(a)、(b)に示すように、旋回シュート3の垂直断面内に例えば2個並列に気体噴射ノズル5を設けた場合は、並列に並んだ2個の気体噴射ノズル5のおのおのから噴射する気体の単位時間当たりの流量を変化させることで、旋回シュート3の先端から左右方向への噴射位置を制御することができる。上述した気体噴射の制御により、特許文献1のように可動式の先端部を設けることなく、目的位置に副原料をより精確に投入することが可能となる。
【実施例】
【0020】
<実施例1>
本発明例および従来例における副原料の飛距離向上効果について調べた。まず、直径
500mm、長さ5100mmの同じ形状の旋回シュートを準備し、気体噴射ノズルを設けなかった従来例1と、旋回シュートの先端から500mmの位置に1個の気体噴射ノズルを設けた従来例2と、旋回シュートの先端から500mmと2300mmの位置にそれぞれ1個の気体噴射ノズルを設けた本発明例1と、旋回シュートの先端から500mmと2300mmの位置にそれぞれ鉛直方向に対し対称に45°で2個の気体噴射ノズルを設けた本発明例2と、を準備した。
【0021】
準備した各旋回シュートに対し、旋回シュートを基準面に対し40°傾けて、気体噴射ノズルから気体として窒素を200m/minの流量で流した状態において、副原料として200kgのAlを旋回シュートの投入口から投入し、基準面から6000mmの高さに位置する旋回シュートの先端からの飛距離を求めた。結果を以下の表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1の結果から、旋回シュート内に気体噴射ノズルを1つ設置し副原料を加速する従来例2でも気体噴射ノズルを設けずに副原料を加速しない従来例1に対して、飛距離は約31%向上していることがわかる。しかし、旋回シュート内に気体噴射ノズルを2つ設置し副原料を加速する本発明例1の場合の方が、従来例1に対して飛距離は75%向上し、従来例2に対して飛距離は33%向上していることがわかる。さらに、気体噴射ノズルを旋回シュート断面内に2つ、副原料投入方向に2つの計4つ設置する本発明例2は、従来例1に対して飛距離は81%の向上し、従来例2に対して飛距離は38%向上していることがわかる。以上のことから、本発明例1、2は、気体噴射ノズルを設けなかった従来例1のみならず気体噴射ノズルを1個設けた従来例2と比べても、飛距離が大幅に向上することがわかる。
【0024】
<実施例2>
上述した本発明例1および従来例2について、溶鋼への副原料の投入効果について調べた。図3は溶鋼へ副原料として脱酸材(Al)を投入した結果を示すものである。なお、Alペレットとしては、いずれの例においても3〜30mm粒のものを使用した。また、Alロスは、(投入したAlが100%歩留まったときの計算Al量(kg/t))−(実分析によるAl量(kg/t))として求めた。
【0025】
図3の結果から、本発明例1の副原料投入用旋回シュートの方が従来例2の副原料投入用旋回シュートと比較して、Alロスは9%低下していることがわかる。Alロスは(kg/t)で示しているが、これは溶鋼1tあたりのAl量を示している。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の副原料投入用旋回シュートは、副原料を加速し、副原料の飛距離を向上させ、副原料を目的位置に投入することができ、例えば溶融金属精錬容器から別容器へ溶融金属を移す際に用いる副原料投入設備として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 副原料投入用旋回シュート
2 旋回部
3 旋回シュート
4 旋回用モータ
5 気体噴射ノズル
図1
図2
図3