(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録紙の搬送路に沿って上流側から順番に配置される給紙ローラー及び搬送ローラーと、前記給紙ローラー及び前記搬送ローラーに回転動力を伝達させる駆動源と、前記搬送ローラー近傍に配置されて前記搬送路を搬送される記録紙の搬送速度を測定する搬送センサーとを有している画像形成装置であって、
前記搬送路上における記録紙の搬送遅れ量を算出し、該搬送遅れ量と所定の閾値と比較する搬送遅れ判断部を有しており、
前記搬送遅れ判断部において、前記搬送遅れ量が前記閾値を超えたことを確認したとき、前記駆動源により前記給紙ローラーの回転速度を増速させ、
前記搬送センサーからの入力情報に基づいて前記駆動源を制御する搬送制御部を更に有しており、前記搬送遅れ判断部は、前記搬送制御部による前記駆動源への制御信号に基づいて前記搬送遅れ量を算出することを特徴とする画像形成装置。
前記給紙ローラーの回転速度を増速させた後、前記搬送遅れ判断部において、前記搬送遅れ量が前記閾値を下回ったことを確認すると、前記給紙ローラーの回転速度を増速前の回転速度に減速させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記搬送遅れ判断部において、前記給紙ローラーの回転速度を増速させる際の閾値と、前記給紙ローラーの回転速度を増速前の速度に減速させる閾値とを異なる値とすることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
前記搬送遅れ判断部において、前記搬送遅れ量が前記閾値を超えたことを確認して、前記給紙ローラーの回転速度を増速させると、所定時間経過した後に、前記給紙ローラーの回転速度を増速前の回転速度に減速させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記搬送遅れ判断部において、前記搬送遅れ量が前記閾値を超えたことを確認して、前記給紙ローラーの回転速度を増速させると、所定位置を記録紙後端が通過するまでの時間を推定し、当該推定時間が経過した後に、前記給紙ローラーの回転速度を増速前の回転速度に減速させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
前記搬送遅れ判断部が、前記搬送センサーからの測定信号による測定値と目標値とを比較して、記録紙に搬送遅れが生じているものと判断した場合、前記測定値と前記目標値との関係に基づいて、前記搬送ローラーの回転速度を増速させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、
図2で紙面に直交する方向を正面視とし、この方向を基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
<画像形成装置の構成>
まず、本願発明の以下の各実施形態において共通となる画像形成装置の全体構成について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の外観斜視図であり、
図2は、当該画像形成装置の内部構成を示す概略図である。
【0023】
画像形成装置1は、
図1及び
図2に示すように、原稿P1から画像を読み取る画像読取部3と、画像が形成される記録紙P2を収納する給紙トレイ4と、給紙トレイ4から給紙された記録紙P2にトナー画像を転写する転写部5と、転写部5で転写されたトナー画像を記録紙P2に定着させる定着部6と、定着部6で定着されて画像が形成された記録紙P2が排紙される排紙トレイ7と、画像形成装置1への操作を受け付ける操作パネル9と、を備える。この画像形成装置1において、その装置本体2上部に画像読取部3が設けられるとともに、この画像読取部3の下側に転写部5が設けられる。
【0024】
そして、排紙トレイ7が、転写部5及び定着部6で画像記録されて排紙された記録紙P2を受けるために、装置本体2における転写部5の上側に設けられるとともに、給紙トレイ4が、装置本体2における転写部5の下側で挿抜可能に構成される。このように構成されることで、後述するように、給紙トレイ4に収納された記録紙P2が装置本体2内部に給紙された後、上昇搬送されることによって、給紙トレイ4の上部に配置された転写部5で画像が転写されて定着部6で定着された後、画像読取部3と転写部5との間の空間(凹みスペース)に設けられた排紙トレイ7に排紙される。
【0025】
装置本体2上部に設けられる画像読取部3は、原稿P1からの画像を読み取るスキャナー部31と、スキャナー部31の上部に設けられるとともにスキャナー部31に原稿P1を1枚ずつ搬送させる自動原稿搬送部(ADF:Auto Document Feeder)32とを備える。又、装置本体2の正面側(前面側)には、操作パネル9が設けられる。そして、ユーザーは、この操作パネル9の表示画面等を見ながらキー操作をすることで、画像形成装置1の各種機能の中から選択した機能について設定操作をしたり、画像形成装置1に作業実行を指示したりできる。
【0026】
次に、
図2を参照して、装置本体2の内部構造について説明する。装置本体2の上部にある画像読取部3のうちスキャナー部31は、上面側にプラテンガラス(不図示)を有する原稿台33と、原稿P1に対して光を照射する光源部34と、原稿P1からの反射光を画像データに光電変換するイメージセンサー35と、反射光をイメージセンサー35上に結像させる結像レンズ36と、原稿P1からの反射光を順次反射させて結像レンズ36に入射させるミラー群37とを備えている。光源部34、イメージセンサー35、結像レンズ36及びミラー群37は原稿台33の内部に設けられるともに、光源部34及びミラー群37は原稿台33に対して左右方向に移動可能に構成される。
【0027】
又、スキャナー部31の上面側には、ADF32が原稿台33に対して開閉可能に設けられている。ADF32は、原稿台33のプラテンガラス(不図示)上の原稿P1に覆い被さることによって原稿P1をプラテンガラス(不図示)に密着させる働きも有する。ADF32は、原稿載置トレイ38と原稿排出トレイ39とを備えている。
【0028】
このような構成の画像読取部3において、原稿台33のプラテンガラス(不図示)上の原稿P1を読み取る場合は、右方向(副走査方向)に移動する光源部34から原稿P1に光が照射される。原稿P1から反射した反射光は、光源部34と同じく右方向に移動するミラー群37で順次反射されて結像レンズ36に入射し、イメージセンサー35上に結像される。イメージセンサー35は、入射光の強さに応じて画素毎に光電変換を実行して、原稿P1の画像に対応した画像信号(RGB信号)を生成する。
【0029】
一方、原稿載置トレイ38に載置された原稿P1を読み取る場合、当該原稿P1は複数のローラー等で構成される原稿搬送機構40によって読取位置に搬送される。このとき、スキャナー部31の光源部34及びミラー群37は、原稿台33内部の所定位置に固定される。従って、光源部34により原稿P1の読取位置部分に光が照射され、その反射光がスキャナー部31のミラー群37及び結像レンズ36を介してイメージセンサー35上に結像される。そして、イメージセンサー35が原稿P1の画像に対応した画像信号(RGB信号)に変換する。その後、原稿P1は原稿排出トレイ39に排出される。
【0030】
トナー画像を記録紙P2に転写する転写部5は、Y(Yellow)、M(Magenta)、C(Cyan)、K(Key tone)各色のトナー画像を生成する作像部51と、作像部51それぞれの下方に設けられた露光部52と、水平方向に並んだ各色の作像部51と当接することで作像部51から各色のトナー画像が転写される中間転写ベルト53と、作像部51と中間転写ベルト53を挟持するように各色の作像部51それぞれに対して上側に対向する位置に設けられた一次転写ローラー54と、中間転写ベルト53を回動させる駆動ローラー55と、駆動ローラー55の回転が中間転写ベルト53を通じて伝達することで回転する従動ローラー56と、中間転写ベルト53を挟んで駆動ローラー55と対向する位置に設置される二次転写ローラー57と、中間転写ベルト53を挟んで従動ローラー56と対向する位置に設置されるクリーナー部58とを、備える。
【0031】
作像部51は、中間転写ベルト53の外周面と当接する感光体ドラム61と、感光体ドラム61の外周面をコロナ放電により帯電させる帯電器62と、攪拌して帯電させたトナーを感光体ドラム61の外周面に付着させる現像器63と、トナー画像を中間転写ベルト53に転写した後に感光体ドラム61の外周面に残留するトナーを除去するクリーナー部64と、を備える。このとき、感光体ドラム61は、中間転写ベルト53を挟んで、一次転写ローラー54と対向する位置に設置されるとともに、
図2における時計回りの方向に回転する。そして、感光体ドラム61の周囲には、一次転写ローラー54、クリーナー部64、帯電器62、及び現像器63が、感光体ドラム61の回転方向に沿って、順番に配置されている。
【0032】
又、中間転写ベルト53は、例えば導電性を有する無端状のベルト部材から構成され、駆動ローラー55及び従動ローラー56に緩みの無い状態で巻き掛けられることで、駆動ローラー55の回転に従って、
図2において反時計回りの方向に回動する。そして、中間転写ベルト53の周囲には、中間転写ベルト53の回転方向に沿って、二次転写ローラー57、クリーナー部58、YMCK各色の作像部51それぞれが順番に配置されている。
【0033】
更に、記録紙P2に転写されたトナー画像を定着させる定着部6は、記録紙P2上のトナー画像を定着させるべく加熱するハロゲンランプなどを備えた加熱ローラー59と、記録紙P2を加熱ローラー59と共に挟持して記録紙P2を加圧する加圧ローラー60とを備える。尚、加熱ローラー59は、電磁誘導によりその表面に渦電流を生じさせることによって、加熱ローラー59表面が加熱されるものであってもよい。
【0034】
記録紙P2を搬送させる搬送装置は、給紙トレイ4に収納された記録紙P2を最上層から給紙路R1に繰り出す繰り出しローラー81と、繰り出された記録紙P2を給紙路R1に更に送り出す給紙ローラー対82と、給紙ローラー対82により給紙された記録紙P2を主搬送路R0で縦搬送させる搬送ローラー対83と、主搬送路R0における搬送ローラー対83の下流側に配置されて記録紙P2を転写部5に向かって搬送させるタイミングローラー対84と、を備える。主搬送路R0は画像形成(印刷)の工程を経る記録紙P2の主たる通り道である。又、給紙路R1は給紙トレイ4毎に設けられるとともに、各給紙路R1は主搬送路R0に合流している。
【0035】
各給紙トレイ4内の記録紙P2は、対応する繰り出しローラー81の回転駆動によって、最上層のものから1枚ずつ、給紙路R1に送り出された後、給紙ローラー対82により主搬送路R0に向けて送り出される。主搬送路R0では、給紙ローラー対82から搬送された記録紙P2を、搬送ローラー対83の回転駆動により、転写部5手前に配置されたタイミングローラー対84に向けて搬送させる。タイミングローラー対84は、転写部5でトナー画像を記録紙P2に正常に転写させるため、転写部5でのトナー画像の形成タイミングに同期させて、記録紙P2を転写部5へ搬送する。すなわち、搬送ローラー対83で記録紙をタイミングローラー対84まで搬送すると、タイミングローラー対84を停止した状態とすることで記録紙P2が弛んでループを形成させ、そのループにより用紙スキューを補正してから二次転写ローラー57に搬送される。
【0036】
主搬送路R0において、搬送ローラー対83の上方(搬送方向下流側)に、搬送ローラー対83により縦搬送された記録紙P2を検出する搬送センサー(記録紙検出部)85を設置している。また、タイミングローラー対84の下方(搬送方向上流側)には、タイミングローラー対84手前に到達した記録紙P2の先端を検出するタイミング前センサー(記録紙検出部)86を設置している。搬送センサー85及びタイミング前センサー86それぞれの検出信号に基づき、主搬送路R0における用紙搬送及びループ制御を実行している。
【0037】
更に、主搬送路R0の最下流となる終端部分には、印刷済の記録紙P2を排出する排紙ローラー対91が配置される。印刷済の記録紙P2は、排紙ローラー対91の回転駆動によって排紙トレイ7に排出される。そして、主搬送路R0において、この排紙ローラー対91の下方(搬送方向上流側)には、記録紙P2の後端を検出する排紙センサー(記録紙検出部90が配置されている。従って、排紙センサー90で記録紙P2の後端を検出することで、排紙ローラー対91から記録紙P2が排紙トレイ7に正常に排出されたことが確認できる。
【0038】
画像形成装置1は、
図3に示す構成の制御部10を備え、この制御部10によって、画像形成装置1を構成する各部が制御され、記録紙P2への印字動作や原稿P1からの画像読取動作などの各種動作が実行される。この制御部10は、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)101と、制御プログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)102と、演算データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)103と、転写部5で形成させるトナー画像の基となる画像データを生成する画像処理部104と、画像処理部104で得られた画像データを一時的に記憶する画像メモリ105と、画像形成装置1を構成する各部との間で信号の送受信を行う入出力インターフェース106と、を備える。
【0039】
このように構成される制御部10は、操作パネル9が受け付けた操作に応じた信号を受信すると、CPU101は、操作パネル9で受け付けた操作に基づく動作を認識する。同様に、制御部10は、入出力インターフェース106により、LAN(Local Area Network)等の通信ネットワーク110を介して外部端末などから送信される信号を受信すると、外部端末で指定された動作を認識する。これにより、CPU101は、操作パネル9又は外部端末を介して指定された動作に基づく制御プログラムをROM102から読み出し、該制御プログラムに基づいてCPU101が動作する。
【0040】
このとき、CPU101は、ROM102から読み出した制御プログラムに基づき、画像読取部3、露光部52、転写部5、定着部6、及び給紙装置8のそれぞれを駆動制御する画像読取制御部113、露光制御部114、転写制御部115、定着制御部116、及び搬送制御部118それぞれに信号を出力する。従って、画像形成装置1は、制御部10から、画像読取制御部113、転写制御部115、及び定着制御部116それぞれに信号が与えられることにより、指定された動作に応じて、画像読取部3、露光部52、転写部5、及び定着部6のそれぞれを駆動させる。又、画像形成装置1は、制御部10から搬送制御部118に信号が与えられることで、搬送装置における繰り出しローラー81、及びローラー対82〜84,90を回転駆動させる。
【0041】
<画像形成装置の印刷動作>
次に、画像形成装置1による印刷動作について、以下に説明する。画像形成装置1は、操作パネル9又は外部端末によって、印刷動作を行うように指示を受けると、制御部10において、CPU101が印刷動作のための制御プログラムをROM102から読み出して、印刷動作のための制御動作を開始する。まず、CPU101は、搬送制御部118を通じて、搬送装置を駆動制御することで、給紙トレイ4から最上層の記録紙P2を繰り出して、主搬送路R0へ送り出す。
【0042】
又、CPU101は、主搬送路R1へ送り出された記録紙P2へトナー画像を転写すべく、露光制御部114及び転写制御部115に制御信号を与え、露光部52及び転写部5を駆動制御する。このとき、CPU101は、画像読取制御部113を通じて画像読取部3で原稿P1より読み取られた画像信号、又は、入出力インターフェース106を通じて外部端末より受信した画像信号を、画像処理部103に与える。
【0043】
これにより、画像処理部103では、与えられた画像信号に基づいて、Y、M、C、K各色のトナー画像を形成するための画像データを生成し、画像メモリ105に記憶させる。画像メモリ105に記憶されたY、M、C、K各色の画像データは、CPU101より読み出されて、露光制御部114に与えられる。従って、露光制御部114が、Y、M、C、K各色の画像データに基づいて、露光部52内の発光素子(不図示)を駆動させることで、Y、M、C、K各色の感光体ドラム61に静電潜像を形成する。即ち、転写制御部115が転写部5を駆動させるため、Y、M、C、K各色の作像部51において、帯電器62によって帯電させた感光体ドラム61の表面に露光部52からレーザー光が照射され、Y、M、C、K各色の画像に対応した静電潜像が形成される。
【0044】
この静電潜像が形成された感光体ドラム61の表面に、現像器63で帯電したトナーが移り、第1の像担持体となる感光体ドラム61にトナー画像が形成される。そして、感光体ドラム61の表面に担持されたトナー画像が、中間転写ベルト53と接触する際、一次転写ローラー54の静電気力によって、中間転写ベルト53に転写されるため、第2の像担持体となる中間転写ベルト53の表面に、Y、M、C、K各色が重なったトナー画像が形成される。一方、トナー画像を中間転写ベルト53に転写した感光体ドラム61に残った未転写トナーは、クリーナー部64にて掻き取られ、感光体ドラム61上から取り除かれる。
【0045】
又、主搬送路R0に搬送された記録紙P2は、その先端がタイミング前センサー86で検出されると、その検出結果が転写制御部115に与えられるため、記録紙P2がタイミングローラー対84に到達したことを、転写制御部115が認識する。転写制御部115は、中間転写ベルト53にトナー画像が転写されるタイミングに合わせて、タイミングローラー対84を動作させる。このとき、中間転写ベルト53に転写されたトナー画像は、駆動ローラー55及び従動ローラー56によって中間転写ベルト53が回転することで、二次転写ローラー57と当接する転写位置まで移動し、主搬送路R0上の転写位置まで搬送される記録紙P2に転写される。トナー画像を記録紙P2に転写した中間点転写ベルト53に残った未転写トナーは、クリーナー部58にて掻き取られ、中間点転写ベルト53上から取り除かれる。
【0046】
そして、二次転写ローラー57との当接位置でトナー画像が転写された記録紙P2は、加熱ローラー59及び加圧ローラー60による定着部6に搬送される。このとき、CPU101は、定着部6に搬送される記録紙P2上のトナー画像を定着させるべく、定着制御部116を通じて定着部6を駆動制御する(STEP123)。即ち、定着制御部116が、加熱ローラー59及び加圧ローラー60の回転動作を制御すると同時に、加熱ローラー59の加熱動作を制御する。
【0047】
これにより、未定着トナー像を載せた記録紙P2は、定着部6の定着ニップ部を通過する際に、加熱ローラー59による加熱及び加圧ローラー60による加圧が施されて、未定着トナー像が紙面に定着される。そして、トナー像定着後(片面印刷後)の記録紙P2は、排紙ローラー対91まで搬送されると、排紙ローラー対91により排紙トレイ7に排出される。このとき、排紙センサー90で記録紙P2の後端を検出し、その検出結果が制御部10に与えられる。これにより、制御部10は、排紙トレイ7に正常に記録紙P2が排出されたことを確認する。
【0048】
<記録紙検出部の構成>
次に、搬送センサー85等の記録紙検出部800の構成を、図面を参照して以下に簡単に説明する。記録紙検出部800は、
図4に示すように、記録紙P2に対して光を照射する発光部801と、記録紙P2からの反射光を電気信号に光電変換する受光部802とを備えており、受光部802の電気信号を検出信号として、制御部10又は搬送制御部118に出力する。
【0049】
発光部801は、搬送経路中の記録紙P2から所定距離(例えば、5〜10mm)及び所定の角度をもって設置され、内蔵する光源803からの光を、光学系804を介して記録紙P2上に照射する。又、受光部802は、搬送経路中の記録紙P2から所定距離(例:7〜12mm)の距離を置いて配置されており、内蔵されているイメージセンサー805が記録紙P2と略平行となるように配置され、記録紙P2表面からの反射光を光学系806を介してイメージセンサー805で受光する。即ち、
図5に示すように、記録紙P2表面上において、発光部801からの光が照射される照射領域A1内側に、受光部802のイメージセンサー805に結像される検出領域B1が形成される。
【0050】
上記構成の記録紙検出部800をLED方式センサーとするとき、発光部801が光源803として発光ダイオード(LED)を内蔵し、記録紙P2表面の凹凸等による光の明暗パターンを受光部802が受光する。受光部802では、光学系806を介してイメージセンサー805表面上に、明暗パターンが結像される。そして、イメージセンサー805が、結像した明暗パターンに基づく電気信号(画像信号)を、検出信号として出力する。明暗パターンは、記録紙P2表面に描かれた文字あるいは模様に限らず、通常の白い紙にも存在する表面の凹凸、紙繊維のパターン、漉きむら等によっても形成される。
【0051】
イメージセンサー805は、光電変換素子を具備した画素をマトリクス状に配置して構成されており、その検出周期は、例えば、100μ秒に設定されている。尚、イメージセンサー805の検出周期は、用紙の種類等に対応させて適宜変更可能であり、例えば、最大80μ秒程度まで変更できる。又、記録紙P2からの反射光は、正反射成分と散乱反射成分に分類可能である。従って、発光部801による光の記録紙P2に対する照射方向を、記録紙P2の法線方向に対して入射角θ(例えば、16度)だけ傾斜させるとともに、受光部802による受光方向を記録紙P2の法線方向に一致させることで、受光部802で散乱反射成分を受光可能に構成できる。
【0052】
又、記録紙検出部800をレーザー方式センサーとするとき、発光部801が光源803としてレーザーダイオードを内蔵し、記録紙P2表面の凹凸等によるレーザー光の干渉縞パターンを受光部802が受光する。干渉縞パターンは、記録紙P2表面の微妙な凹凸により、記録紙P2表面と受光部802との距離に差ができ、記録紙P2の検出領域B1の各位置から反射する拡散光に位相差が生じることで形成される。記録紙P2表面の凹凸だけでなく、紙繊維のパターン、漉きむら等によっても形成される。
【0053】
制御部10(又は搬送制御部118)が、記録紙検出部800から出力される検出信号となる電気信号(画像信号)を、イメージセンサー805の検出周期毎に受け、隣接周期の電気信号の差分に基づいて、記録紙P2の移動量又は移動速度(搬送速度)を算出する。即ち、制御部10(又は搬送制御部118)は、n回目の検出動作により、
図6(a)に示すような検出信号Snを記録紙検出部800から受けた後に、n+1回目の検出動作により、
図6(b)に示すような検出信号Sn+1を記録紙検出部800から受ける。そして、制御部10(又は搬送制御部118)は、検出信号Sn,Sn+1それぞれを比較して、同一パターン(明暗パターン又は干渉稿パターン)PT1の移動量M1を演算し、記録紙P2の移動量又は移動速度(搬送速度)を算出する。
【0054】
記録紙検出部800は、上記構成以外に、レーザードップラー速度計で構成され、記録紙P2からの被測定波の周波数が移動速度に比例して偏移(シフト)するいわゆるドップラー効果を利用して、記録紙P2の移動速度を測定するものとしても構わない。レーザードップラー速度計で構成する場合、記録紙検出部800は、二本の照射光を記録紙P2の速度方向で前後となる位置に照射させ、前後それぞれの照射位置から反射された散乱光を、同一の受光部で受けて、記録紙P2の移動速度(搬送速度)を検出する。受光部で受ける散乱光の中には、記録紙P2の速度情報が、光の波長変化という形で含まれている。それぞれの照射光からの散乱光は、前方側では波長が短くなる方向、後方側では長くなる方向に変化しており、記録紙検出部800は、その互いの波長の差をヘテロダイン検波して速度を検出し、制御部10又は搬送制御部118に出力する。
【0055】
レーザードップラー速度計の構成例を、
図7に示す。
図7に示すレーザードップラー速度計850は、半導体レーザー851から発せられたレーザー光を回折格子(diffraction grating)853により2つのビーム光に分け、この2つのビーム光を使用して計測を行なう。又、レーザードップラー速度計850は、周波数シフタを構成する電気光学素子855を使用して2つのビーム光間に所定の周波数差(周波数変調)を与え、この周波数差に基づくドップラー効果を利用して記録紙P2の速度情報を高精度に検出する。
【0056】
レーザー光源851は、出射するレーザー光(光束)が
図7中のZ軸(記録紙P2の搬送方向に直角なスキュー方向)に対して直線偏光となるように配置されている。半導体レーザー851からのレーザー光は、コリメータレンズ852により平行光束となり、透過型回折格子853に対して、その格子配列方向に垂直に入射する。回折格子853を透過する回折光のうち、0次以外の+n次及び−n次(nは、1以上の整数)の2つの回折光が、所定の回折角を持って電気光学素子855に向かって出射する。回折格子853からの2つの回折光はそれぞれ、回折格子853から光学距離Z1だけ隔てて配された集光光学系(a focal optical system)854を経由して、各電気光学素子855の入射端面に入射する。集光光学系854としては、例えば、所定の焦点距離F1を有する薄肉の凸レンズが使用される。
【0057】
電気光学素子855は、電気光学結晶の平板で構成されており、Y軸に光軸を持つように配置され、Y軸方向に位置する両端面に設けられた電極に、鋸歯波電圧が印加されることで、電気光学周波数シフタを構成する。従って、各電気光学素子855に入射した2つの光束は、歯波電圧駆動(セロダイン駆動)により周波数シフトを受けるため、2つの光束間に周波数差を付与して、集光光学系856に入射させる。
【0058】
集光光学系856では、周波数差を有する2つの光束を、所定角度に偏向すると同時に平行光束にして、光学距離Z2だけ隔てた位置にてX方向に移動している記録紙P2表面に対して、出射させる。集光光学系856から出射する2つの光束は、所定の入射角θで互いに交差するように、2方向から記録紙P2表面に入射する。集光光学系856は、例えば、所定の焦点距離F2を有する薄肉の凸レンズが使用される。そして、電気光学素子855の出射端面と集光光学系856との間の光学距離を焦点距離F2に設定することで、集光光学系856からは、平行光束にされた2つの光束を出射する。
【0059】
集光光学系856を挟んで記録紙P2と逆側となる位置に、フォトダイオードなどからなる光検出器858が配されている。記録紙P2表面において、入射した周波数差を有する2つの光束から散乱光を生じ、この記録紙P2からの散乱光が、集光光学系856及び集光レンズ857を経由して光検出器858に入射する。集光レンズ857は、コンデンサレンズで構成されており、集光光学系856及び集光レンズ857により、ドップラー信号が含有された光信号(散乱光)が効率よく光検出器858へ集光される。
【0060】
即ち、記録紙P2に入射された2つの光束は、記録紙P2の移動速度Vに比例するドップラーシフトを受けた散乱光を生成させ、光検出器858に入射させるため、光検出器858の検出面上で互いに干渉しあって明暗の変化をもたらす。光検出器858における明暗の周波数(ドップラー周波数)DFは、波長λのレーザー光による周波数差fRの2光束が記録紙P2に入射されるとき、式(1)のようにして算出される。
DF=2×V×sinθ/λ+fR ・・・式(1)
(DF:ドップラー周波数、V:搬送速度、λ:レーザー光の波長、fR:2光束の周波数差、θ:入射角)
【0061】
このように、電気光学素子855による電気光学周波数シフタを導入することで、移動している記録紙P2の速度Vが遅い場合でも、周波数差fRを適当な値に設定することで、記録紙P2の搬送方向と共にその移動速度を測定できる。また、格子ピッチdとなる透過型の回折格子853から出射される±n次の光束を、回折角θ0の光束とすれば、式(2)の関係式が得られる。
sinθ0=±n×λ/d ・・・式(2)
(θ0:θ0の回折角、λ:レーザー光の波長、d:格子ピッチ)
【0062】
ここで、±n次の2光束の記録紙P2への入射角θと回折角θ0との間で、一定の対応関係を有するものとすることでと、周波数差fRを除いたドップラー周波数の基本成分DF0が、記録紙P2の移動速度Vのみに比例したものとして得ることができる。その結果、光検出器858で得られるドップラー周波数DFも、記録紙P2の移動速度Vのみに比例したものとして得られる。
【0063】
例えば、入射角θが回折角θ0と等しくなるように、±n次の2光束を照射すれば、式(1)及び式(2)から、基本成分DF0が式(3)で算出されるともに、光検出器858で得られるドップラー周波数DFが式(4)のようにして算出できる。
DF0=2×V×sinθ0/λ=2×n×V/d ・・・式(3)
DF=2×n×V/d+fR ・・・式(4)
(DF0:fRを除いたドップラー周波数、DF:ドップラー周波数、V:搬送速度、λ:レーザー光の波長、d:格子ピッチ、fR:2光束の周波数差)
【0064】
図7に示す構成とすることで、レーザー光源851から発せられたレーザー光を回折格子853により2つのビーム光に分けて計測を行なうため、その計測結果において、レーザー光における波長λの変化の影響を受けることがなくなる。よって、レーザー光源851として、レーザー光における波長λが温度依存性を持つような半導体レーザー素子で構成することができる。即ち、安価で且つ超小型で駆動も容易なレーザーダイオードをレーザー光源851に使用しても、記録紙P2の搬送速度Vを高精度に計測できる。
【0065】
記録紙検出部800は、上記構成以外に、記録紙P2に接触させた接触方式センサーで構成され、記録紙P2に接触して記録紙P2の移動量(搬送量)を測定により、記録紙P2の移動速度を測定するものとしても構わない。接触方式センサーで構成する場合、記録紙検出部800は、例えば、
図8に示すように、記録紙P2表面に接触して回転する移動量検出用ローラー871と、回転角度を電気信号として出力するポテンショメーター872と、検出用ローラー871及びポテンショメーター872それぞれの回転軸を連結する873とで構成される。ベルト873が掛け渡されることで、検出用ローラー871及びポテンショメーター872が回転可能に連結されている。
【0066】
図8に示す構成の記録紙検出部800は、記録紙P2の移動(搬送)に伴い、記録紙P2に接触している検出用ローラー871が回転する。検出用ローラー871の回転に連動して、ポテンショメーター872が回転することにより、ポテンショメーター872の回転角度が電気信号として出力される。尚、接触方式センサーを採用した記録紙検出部800として、
図8に示す構成におけるポテンショメーターの代わりに、エンコーダーを採用するものとしても構わないし、検出用ローラー871を省略した構成としても構わない。又、記録紙検出部800は、上述の各構成で限定されるものではなく、上述の各構成以外のものとして、反射型センサーをアレイ上に配置したものであってもよい。
【0067】
又、記録紙検出部800は、その測定結果を、電圧値や電流値等といった物理量によりアナログ出力するものであってもよいし、複数階調によるデジタル値によりデジタル出力するものであってもよい。そして、記録紙検出部800が記録紙P2の搬送速度を測定して出力する場合は、その測定結果そのものにより後述の搬送遅れ情報を算出する。又、記録紙検出部800が記録紙P2の移動量(搬送量)を測定して出力する場合は、測定結果となる移動量を測定時間で除して搬送速度を取得し、搬送遅れ情報を算出する。又、記録紙検出部800が搬送された記録紙P2の位置を測定して出力する場合は、前回の測定位置との差を求めた後に測定間隔時間で除して搬送速度を取得し、搬送遅れ情報を算出する。上記した搬送遅れ情報の算出において、計算を行うパラメータ間でスケールやオフセットを適切に合わせておく。
【0068】
以下に、本発明の各実施形態における画像形成装置について、図面を参照して説明する。尚、各実施形態の画像形成装置は、上記構成及び動作を共通とするものであり、以下の各実施形態においては、その特徴部分について詳細に説明する。
【0069】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、以下に、図面を参照して説明する。
図9は、本実施形態の画像形成装置における搬送装置の構成を示す概略図である。又、
図10は、本実施形態の画像形成装置における搬送装置による記録紙の搬送動作を示すタイミングチャートであり、
図11は、本実施形態の画像形成装置による記録紙搬送のための制御動作を示すフローチャートである。
【0070】
本実施形態の画像形成装置1における搬送装置は、
図9に示すように、主搬送路R0に沿って、記録紙P2の搬送方向上流側から、給紙ローラー対82、搬送ローラー対83、及びタイミングローラー対84を順に配置している。又、この搬送装置は、給紙ローラー対82の下流側に搬送センサー85を配置する一方、タイミングローラー対84の上流側にタイミング前センサー86を配置している。即ち、主搬送路R0における、給紙ローラー対82とタイミングローラー対84との間の位置に、搬送方向上流側から、搬送センサー86及びタイミング前センサー86を順に配置している。
【0071】
搬送制御部118は、
図9に示すように、給紙モーター87及び搬送モーター88それぞれに制御信号を与えて、給紙モーター87及び搬送モーター88それぞれの回転速度を制御する。給紙モーター87の回転軸は、給紙ローラー対82の駆動ローラー82aの回転軸と連結しており、給紙モーター87の回転に連動して駆動ローラー82aが回転駆動する。又、搬送モーター88の回転軸は、給紙ローラー対82の駆動ローラー83aの回転軸と連結しており、搬送モーター88の回転に連動して駆動ローラー83aが回転駆動する。尚、給紙ローラー対82及び搬送ローラー対83はそれぞれ、主搬送路R0を挟んで駆動ローラー82a,83aの逆側に、駆動ローラー82a,83aの回転により搬送される記録紙P2の移動に合わせて回転駆動する従動ローラー82b、83bを有する。
【0072】
搬送センサー85は、搬送ローラー対83を通過した記録紙P2を対象として、記録紙P2の位置又は移動速度を測定し、その測定信号を制御部10に送出する。タイミング前センサー86は、搬送ローラー対83によりタイミングローラー対84直前に搬送された記録紙P2の先端を検出し、その測定信号を制御部10に送出する。制御部10は、搬送センサー85及びタイミング前センサー86からの測定信号を受けると、それぞれの測定信号に基づいて搬送用指令信号を生成し、搬送制御部118に与える。従って、搬送制御部118は、制御部10からの指令信号に基づいて、給紙モーター87及び搬送モーター88それぞれの回転駆動を制御する。尚、記録紙P2の紙種に問わずスリップ率を抑制するべく、給紙モーター87により回転駆動する給紙ローラー対82の回転速度は、搬送モーター88により回転駆動する搬送ローラー対83の回転速度よりも高速に設定されている。
【0073】
このように構成される搬送装置は、繰り出しローラー81及び給紙ローラー対82の回転により記録紙P2を主搬送路R0に給紙させると、搬送ローラー対83近傍への記録紙P2の到達を、搬送センサー85で監視する。従って、制御部10は、搬送センサー85からの測定信号に基づいて、記録紙P2を給紙させた後に所定時間以内に記録紙P2が搬送ローラー対83近傍へ到達したか否かを検知する。そして、搬送センサー85で記録紙P2先端を検知すると、制御部10は、搬送制御部118を通じて給紙ローラー対82の回転速度を低速(停止を含む)に切り換え、給紙ローラー対82による記録紙P2の過剰送りを停止させ、主搬送路R0内での用紙折れ等を防止させる。
【0074】
同様に、搬送装置は、記録紙P2の給紙後、タイミングローラー対84手前への記録紙P2の到達を、タイミング前センサー86で監視する。従って、制御部10は、タイミング前センサー85からの測定信号に基づいて、記録紙P2を給紙させた後に所定時間以内に記録紙P2がタイミングローラー対84手前へ到達したか否かを検知する。そして、制御部10は、記録紙P2の給紙後に所定時間を経過しても、タイミング前センサー85により記録紙P2の先端が検出されなかった場合、タイマジャムと判定して、印刷動作を停止させる。
【0075】
本実施形態の搬送装置は、記録紙検出部800である搬送センサー85は、上述したように、記録紙P2の搬送速度を測定して制御部10に通知する。即ち、記録紙P2の先端が搬送ローラー対83を通過した後、搬送センサー85が、搬送ローラー対83を通過する記録紙P2の搬送速度を、制御部10に通知する。又、制御部10は、
図9に示すように、搬送遅れ判断部120を有しており、搬送遅れ判断部120に、搬送センサー85による測定信号が入力される。
【0076】
搬送遅れ判断部120は、搬送センサー85の測定信号から得られる記録紙P2の搬送速度(測定搬送速度)と、予め設定されて記憶した基準速度(設計搬送速度)とを比較することで、記録紙P2の搬送遅れ情報を算出する。制御部10は、この搬送遅れ情報に基づき、搬送ローラー対83を通過する記録紙P2の搬送遅れを判断し、搬送制御部118を通じて給紙モーター87を制御し、記録紙P2の搬送遅れに応じて給紙ローラー対82の回転駆動を制御する。
【0077】
搬送遅れ判断部120が算出する搬送遅れ情報は、例えば、以下の式(5)による搬送速度の速度遅れ量D1であってもよいし、以下の式(6)による搬送スリップ率D2であってもよいし、以下の式(7)による単位時間あたりの移動(搬送)遅れ量D3であってもよい。
[速度遅れ量D1]=V0−V ・・・式(5)
[搬送スリップ率D2]=(V0−V)/V0 ・・・式(6)
[移動遅れ量D3]=M0−M ・・・式(7)
(V0:設計搬送速度、V:測定搬送速度、M0:予め設定している単位時間あたりの移動(搬送)量、M:搬送センサー85の測定結果による単位時間の移動量)
【0078】
以下に、給紙ローラー対82の回転制御動作について、
図10のタイミングチャート及び
図11のフローチャートを参照して説明する。制御部10は、印刷動作を開始すると、搬送制御部118を通じて、搬送モーター88を駆動させて搬送ローラー対83を回転させるとともに、搬送センサー85をONとして記録紙P2の搬送状態を測定可能な状態とする(STEP1)。
【0079】
その後、制御部10は、搬送制御部118に対して給紙指令を与えると(STEP2でYes)、搬送制御部118は、給紙モーター87を駆動させて、繰り出しローラー81及び給紙ローラー対82を回転させる(STEP3)。これにより、給紙トレイ4における最上層の記録紙P2が、繰り出しローラー81により繰り出されると同時に、給紙ローラー対82によって、主搬送路R0に送り出される。即ち、
図10に示すように、時刻T1で給紙を開始するべく給紙モーター87を回転させると、給紙ローラー対82の回転速度が第1回転速度Vx1まで上昇する。
【0080】
記録紙P2の給紙開始後、制御部10は、搬送センサー85からの測定信号により、記録紙P2先端の搬送ローラー対83の通過を確認すると(STEP4でYes)、搬送制御部118は、給紙モーター87の回転速度を低下させる(STEP5)。このとき、給紙ローラー対82の回転速度は、第1回転速度Vx1から第2回転速度Vx2(0≦Vx2<Vx1)まで低下する。尚、
図10に示す例では、時刻T2で、搬送センサー85が、記録紙P2先端の通過を確認すると、給紙モーター87を停止させて、給紙ローラー対82の回転を停止(低下)させる。
【0081】
上述のように給紙モーター87の回転速度を低下させると、制御部10は、搬送遅れ判断部120において、搬送センサー85からの測定信号に基づき、記録紙P2の搬送遅れ量を算出する(STEP6)。このとき、搬送遅れ判断部120は、記録紙P2の搬送遅れ量とともに、記録紙P2の搬送速度を算出する。そして、制御部10は、搬送センサ−85により測定された記録紙P2の搬送速度を積算することで、主搬送路R0における搬送センサー85と記録紙P2先端との相対位置(記録紙P2の先端位置)を算出する(STEP7)。
【0082】
記録紙P2が搬送ローラー対83を通過した後、制御部10は、搬送遅れ判断部120による搬送遅れ情報に基づいて、記録紙P2の搬送遅れ量と閾値Th1とを比較する(STEP8)。制御部10は、搬送センサー85の測定結果に基づく記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th1を上回る場合(STEP8でYes)、給紙モーター87の回転速度を増速する(STEP9)。このとき、給紙ローラー対82の回転速度が、第2回転速度Vx2から第1回転速度Vx1まで上昇する(
図10の例における時刻T3,T5参照)。
【0083】
このように、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th1を超えて、遅れが許容できないレベル(例えば、用紙の遅れによるジャムとなる遅れ量に到達する直前)に達した場合、給紙モーター87を増速する。給紙モーター87を増速することで、給紙ローラー対82に記録紙P2を搬送する駆動力が生まれて、給紙ローラー対82を従動させる負荷や次用紙との摩擦負荷が搬送ローラー対83にかかることを防止できる。そのため、搬送ローラー対83でのスリップが解消されて、記録紙P2の搬送速度が回復する。又、給紙ローラー対82を搬送ローラー対83よりも速い速度で駆動することで、搬送ローラー対83と給紙ローラー対82間に記録紙P2のたるみを生じさせるため、主搬送経路R0と記録紙P2の摩擦負荷の解消によっても、スリップを解消できる。
【0084】
記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th1以下となる場合(STEP8でNo)、制御部10は、搬送遅れ判断部120による搬送遅れ情報に基づいて、記録紙P2の搬送遅れ量と閾値Th2(0<Th2≦Th1)とを比較する(STEP10)。制御部10は、搬送センサー85の測定結果に基づく記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th2を下回る場合(STEP10でNo)、給紙モーター87の回転速度をSTEP5の回転速度と同一速度に設定する(STEP11)。従って、前回の測定タイミングによる搬送センサー85の測定値により、給紙モーター87の回転速度を増速させている場合、このSTEP10及びSTEP11の制御動作により、給紙モーター87の回転速度が増速前の回転速度に減速される。即ち、
図10の例における時刻T4,T6に示すように、給紙ローラー対82の回転速度が、第1回転速度Vx1から第2回転速度Vx2まで低下する。
【0085】
給紙モーター87の回転速度を増速させた後に、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th2を下回った場合は、給紙ローラー86の回転速度を増速前の状態に戻すため、給紙側の駆動源(給紙モーター87等)の消費電力を低減できる。ところで、給紙ローラー対82において、給紙トレイ4からの記録紙P2の引き抜きでスリップ量が大きくなることから、上述したように、給紙モーター87による駆動速度を速めに設定する場合がある。そのため、給紙モーター85の回転速度を増速した状態で継続させた場合、搬送ローラー対83との間に過剰なループができて、記録紙P2に紙しわなどが生じてしまう恐れがある。従って、上述のSTEP10及びSTEP11における制御動作のように、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th2を下回ったときに、給紙モーター87の回転速度を増速前の状態に戻すことで、給紙ローラー対82の搬送送り量の増加に伴う記録紙P2の紙折れなどといった副作用を防ぐことができる。
【0086】
STEP10で、搬送センサー85の測定結果に基づく記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th2以上である場合、又は、STEP9又はSTEP11で給紙モーター87の回転速度を増減速させた場合、制御部10は、搬送センサー85の測定結果に基づき、記録紙P2の後端が所定位置(例えば、給紙ローラー対82によるニップ領域直前位置)を通過したか否かを判定する(STEP12)。このとき、制御部10は、搬送センサー85が記録紙P2先端を検知した後(STEP4)、搬送センサー85の測定結果の履歴に基づき記録紙P2の先端位置を取得することで(STEP7)、搬送方向に沿った記録紙P2の用紙長さと記録紙P2の先端位置とから、主搬送路R0における記録紙P2の後端位置を推定する。
【0087】
制御部10は、STEP12で記録紙P2後端が所定位置を通過したものと判断するまで、STEP6〜STEP12の制御動作を繰り返す。即ち、記録紙P2先端が搬送ローラー対83を通過してから、記録紙P2後端が給紙ローラー対82手前を通過するまでの間、搬送ローラー対83を通過する記録紙P2の搬送速度に遅れがない場合は、給紙ローラー対82の回転速度を第1回転速度Vx1に減速する一方、搬送ローラー対83を通過する記録紙P2の搬送速度に遅れが生じた場合は、給紙ローラー対82の回転速度を第2回転速度Vx2に増速する。
【0088】
STEP6〜STEP12における制御動作において、遅れ量に対して増速するときの閾値Th1と増速前の状態に戻すときの閾値Th2とを等しい値としても構わないが、回転速度の切換タイミングとなる閾値Th1,Th2を異なる値として、ヒステリシスを持たせることが好ましい。閾値Th1,Th2を異なる値とすることで、給紙モーター87の駆動制御において、搬送される記録紙P2の搬送状態や測定ノイズなどにより搬送センサー85の測定値に振動が生じた場合のバラツキを吸収し、給紙ローラー対82の回転速度切換が短時間で連続発生することを防止する。又、給紙モーター87の回転速度の切換間隔を長い時間とできるため、搬送ローラー対82に対する急激な負荷変動や、振動による速度ムラや騒音を抑制できる。
【0089】
制御部10は、記録紙P2後端が所定位置を通過したものと判断すると(STEP12でYes)、給紙モーター87を停止させる停止指令を搬送制御部118に与えて、給紙モーター87の回転駆動を停止させる(STEP13)。
図10の例のように、時刻T7において、記録紙P2後端が給紙ローラー対82のニップ領域を通過する場合、制御部10は、時刻T7の直前で、給紙モーター87の回転駆動を停止させる。即ち、制御部10は、推定した記録紙P2後端位置が給紙ローラー対82を通過する直前に、給紙モーター87の停止処理を開始する。尚、給紙モーター87の停止処理を開始するタイミングについて、記録紙P2後端位置が給紙ローラー対82を通過する直前に設定するものとしたが、記録紙P2の弛み量によっては、給紙ローラー対82を通過直後に設定するものであってもよく、上記タイミングに限定されるものではない。
【0090】
その後、制御部10は、給紙モーター87の回転駆動の停止を確認すると(STEP14でYes)、給紙トレイ4に具備されたセンサー(不図示)からの信号に基づいて、給紙トレイ4において記録紙P2が収容されているか否かを確認する(STEP15)。このとき、記録紙P2が給紙トレイ4に収容されていない場合は(STEP13でNo)、給紙トレイ4における記録紙P2の不足を外部に報知させるべく、制御動作を終了する一方、記録紙P2が給紙トレイ4に収容されている場合は、STEP2に移行する。
【0091】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、以下に、図面を参照して説明する。本実施形態における画像形成装置の構成は、第2の実施形態と同様、第1の実施形態と同様の構成であるため、その構成の詳細については、第1の実施形態を参照するものとし、搬送装置における制御動作について説明する。
図12が、本実施形態の画像形成装置における制御部の搬送装置に対する制御動作を示すフローチャートである。尚、
図12のフローチャートにおいて、
図11のフローチャートと同一となる部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0092】
以下に、給紙ローラー対82の回転制御動作について、
図12のフローチャートを参照して説明する。制御部10は、印刷動作を開始すると、第1の実施形態と同様、搬送制御部118が、搬送モーター88を駆動させるとともに搬送センサー85をONとした後、制御部10の給紙指令に従って、給紙モーター87を駆動させる(STEP1〜STEP3)。給紙モーター87の駆動開始後、搬送センサー85が記録紙P2先端を検知すると(STEP4でYes)、給紙モーター87の回転速度を低下させる(STEP5)。
【0093】
そして、本実施形態では、給紙モーター87の回転速度を減速させた後(STEP5)、搬送遅れ判断部120において、搬送センサー85からの測定信号に基づき、記録紙P2の搬送速度Vを取得する(STEP6A)。制御部10は、搬送遅れ判断部120で取得した記録紙P2の搬送速度に基づいて、搬送モーター88における回転速度の補正値を算出し、搬送制御部118に通知する。搬送制御部118は、搬送モーター88の回転速度を、記録紙P2の搬送速度が一定となるように速度調整する(STEP6B)。又、制御部10は、第1の実施形態と同様、記録紙P2の搬送速度を積算して、記録紙P2の先端位置を算出する(STEP7)。
【0094】
上述のように、搬送モーター88の回転速度を補正した後、制御部10は、搬送センサー85で測定された記録紙P2の搬送速度Vを、予め記録している搬送速度の閾値Vth1と比較する(STEP8A)。そして、測定された記録紙P2の搬送速度Vが閾値Vth1よりも低速の場合(STEP8AでYes)、記録紙P2の搬送速度に遅れが生じているものと判断して、給紙モーター87の回転速度を増速して、給紙ローラー対82の回転速度を第1回転速度Vx1に増速する(STEP9)。
【0095】
記録紙P2の搬送速度が閾値Vth1以上となる場合(STEP8AでNo)、制御部10は、測定された記録紙P2の搬送速度Vを、予め記録している搬送速度の閾値Vth2(0<Vth1≦Vth2)とを比較する(STEP10A)。このとき、測定された記録紙P2の搬送速度Vが閾値Vth1よりも高速の場合(STEP10AでYes)、給紙モーター87の回転速度をSTEP5の回転速度と同一速度に設定して、給紙ローラー対82を第2回転速度Vx2で回転させる(STEP11)。従って、前回の測定タイミングによる搬送センサー85の測定値により、給紙モーター87の回転速度を増速させている場合、このSTEP10A及びSTEP11の制御動作により、記録紙P2の搬送速度の遅れが解消されたものと判断して、給紙ローラー対82の回転速度を第1回転速度Vx1から第2回転速度Vx2に減速させる。
【0096】
STEP10で、記録紙P2の搬送速度Vが閾値Vth2以下である場合、又は、STEP9A又はSTEP9Bで給紙モーター87の回転速度を増減速させた場合、制御部10は、記録紙P2後端が所定位置を通過したか否かを判断する(STEP12)。そして、記録紙P2後端の通過がない場合は(STEP12でNo)、STEP6Aに移行して、上記制御動作(STEP6A〜STEP12)を繰り返す。一方、記録紙P2後端が通過した場合は(STEP12でYes)、給紙モーター87を停止させた後、給視トレイ4における記録P2の有無を確認する(STE13〜STEP15)。
【0097】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、以下に、図面を参照して説明する。本実施形態における画像形成装置の構成は、第2の実施形態と同様、第1の実施形態と同様の構成である。
図13が、本実施形態の画像形成装置における制御部の搬送装置に対する制御動作を示すフローチャートである。尚、
図13のフローチャートにおいて、
図12のフローチャートと同一となる部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0098】
以下に、給紙ローラー対82の回転制御動作について、
図13のフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態と異なり、搬送ローラー対83における記録紙P2の通過後に記録紙P2の搬送速度に遅れが生じた場合、給紙モーター87の回転速度を所定時間だけ増速させる。そして、この給紙モーター87の増速動作に関わるステップ以外の、STEP1〜STEP8及びSTEP12〜STEP15における動作については、第1の実施形態と同様となる。従って、
図13のフローチャートにおけるSTEP8〜STEP12における動作について、以下で説明する。
【0099】
STEP8において、制御部10が、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th1を上回ったことを確認すると(Yes)、記録紙P2の搬送速度に遅れが生じているものと判断し、給紙モーター87の回転速度を増速して、給紙ローラー対82の回転速度を第1回転速度Vx1に増速する(STEP9)。その後、制御部10は、不図示のタイマーによる計時動作を開始し(STEP80)、当該タイマーによる計時時間TXに基づいて、所定時間TX0の経過の有無を確認する(STEP81)。
【0100】
制御部10は、上記タイマーによる計時時間TXが所定時間TX0に到達し、給紙モーター87を増速してから所定時間TX0が経過したことを確認すると(STEP81でYes)、上記タイマーの計時動作を停止するとともに、上記タイマーによる計時時間を初期化する(STEP82)。又、制御部10は、所定時間T10の経過を確認し、上記タイマーをリセットさせると、給紙モーター87の回転速度をSTEP5の回転速度と同一速度に設定して、給紙ローラー対82の回転速度を第1回転速度Vx1から第2回転速度Vx2に減速させた後(STEP11)、STEP12に移行する。
【0101】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、以下に、図面を参照して説明する。本実施形態における画像形成装置の構成は、第3の実施形態と同様、第1の実施形態と同様の構成である。
図14が、本実施形態の画像形成装置における制御部の搬送装置に対する制御動作を示すフローチャートである。尚、
図14のフローチャートにおいて、
図13のフローチャートと同一となる部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0102】
以下に、給紙ローラー対82の回転制御動作について、
図14のフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、第3の実施形態と異なり、搬送ローラー対83における記録紙P2の通過後に記録紙P2の搬送速度に遅れが生じた場合、記録紙P2の搬送速度の遅れが解消されるまで、給紙モーター87の回転速度を徐々に増速させる。そして、この給紙モーター87の増速動作に関わるステップ以外の、STEP1〜STEP8及びSTEP12〜STEP15における動作については、第3の実施形態と同様となる。従って、
図14のフローチャートにおけるSTEP8〜STEP12における動作について、以下で説明する。
【0103】
STEP8において、制御部10が、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th1を上回ったことを確認すると(Yes)、記録紙P2の搬送速度に遅れが生じているものと判断し、給紙モーター87の回転速度を所定速度分dVだけ増速させた後(STEP90)、STEP6に移行する。即ち、STEP8において、記録紙P2の搬送速度の遅れを検知した場合、記録紙P2の搬送速度の遅れが解消されるまで、STEP6〜STEP90の動作を繰り返す。このとき、STEP6〜STEP90の動作をN回繰り返した後に、STEP8で記録紙P2の搬送速度の遅れが解消された場合、給紙モーター87の回転速度がN×dVだけ増速されることとなる。
【0104】
一方、STEP8において、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th1以下となる場合(No)、記録紙P2の搬送速度に遅れがないものと判断して、STEP90による給紙モーター87の増速の有無を確認する(STEP91)。給紙モーター87の回転速度を増速した場合は(STEP91でNo)、不図示のタイマーによる計時動作を開始させて、所定時間TX0の経過を確認したとき、当該タイマーを初期化するとともに、給紙モーター87の回転速度をSTEP5の回転速度と同一速度に設定する(STEP80〜STEP82,STEP11)。一方、給紙モーター87の回転速度を増速していない場合は(STEP91でYes)、STEP12に移行する。
【0105】
<第5の実施形態>
本発明の第5の実施形態について、以下に、図面を参照して説明する。本実施形態における画像形成装置の構成は、第3の実施形態と同様、第1の実施形態と同様の構成である。
図15が、本実施形態の画像形成装置における搬送装置の各動作を示すタイミングチャートである。尚、
図15のタイミングチャートにおいて、
図10のタイミングチャートと同一となる部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0106】
以下に、給紙ローラー対82の回転制御動作について、
図15のタイミングチャートを参照して説明する。本実施形態では、第3及び第4の実施形態と異なり、記録紙P2の搬送速度に遅れが生じたときに、記録紙P2の残りの搬送長さを算出し、残りの搬送長さに応じた時間だけ、給紙モーター87を増速させる。即ち、本実施形態では、記録紙P2の搬送速度に遅れが生じた場合、記録紙P2後端が所定位置(例えば、給紙ローラー対82によるニップ領域直前位置)を通過するまでの時間を算出し、算出した時間の間、給紙モーター87を増速させる。
【0107】
図15の例では、制御部10は、時刻T1で記録紙P2の給紙を開始する際、搬送制御部118を通じて、給紙ローラー対82を第1回転速度Vx1で回転駆動させる。その後、制御部10は、時刻T2で、搬送センサー85により、記録紙P2先端の搬送ローラー対83の通過を確認すると、搬送制御部118を通じて、給紙モーター87を減速させて、給紙ローラー対82の回転速度を、第1回転速度Vx1から第2回転速度Vx2(
図15の例では、停止状態)に減速させる。そして、搬送センサー85の測定結果に基づく記録紙P2の搬送遅れ量が、閾値Th1を上回ると、制御部10は、搬送制御部118を通じて、給紙モーター87を増速させて、給紙ローラー対82の回転速度を第1回転速度Vx1に増速させる(
図15の例における時刻T3A)。
【0108】
又、制御部10は、記録紙P2の搬送に遅れが生じたことを検知すると、まず、搬送センサー85の測定結果の履歴に基づいて、記録紙P2の搬送位置を確認することで、給紙ローラー対82による搬送量(記録紙P2の移動量)L1を算出する。尚、給紙ローラー対82による搬送量は、例えば、搬送センサー85を通過した記録紙P2の移動量に、給紙ローラー対82から搬送センサー85までの経路長を加算して算出することができる。又、制御部10は、記録紙P2の搬送方向長さL0より搬送量L1を減算することで、記録紙P2後端が給紙ローラー対82を抜けるまでの残り搬送量(L0−L1)を算出できる。
【0109】
そして、制御部10は、算出した残り搬送量(L0−L1)を給紙ローラー対82による搬送速度(例えば、第1回転速度Vx)で除することで、給紙モーター87の増速期間TYを算出する。制御部10は、時刻T3Aで、給紙モーター87を増速させると、この増速期間TYが経過するまで、給紙モーター87を増速させた状態に維持し、給紙ローラー対82の回転速度を第1回転速度Vxで回転させる。その後、増速期間TYが経過した時刻T4Aにおいて、記録紙P2後端が給紙ローラー対82を通過するため、制御部10は、給紙モーター87を停止させる。
【0110】
上述の第3〜第5の実施形態では、給紙ローラー対82における増速と増速解除を繰り返すがなく、給紙ローラー対82の増減速に基づく振動や負荷変動、それによる速度ムラ(画像形成系への振動伝達による画質悪化)を防止できる。尚、この場合、給紙ローラー対82から搬送ローラー83までの間に、記録紙P2に過剰なたるみが発生しないように、増速時に給紙ローラー対82における搬送速度を、給紙開始後に記録紙P2が搬送センサー85に到達するまでの搬送速度よりも抑え気味(搬送ローラー対83による搬送速度と同じか、若干速め)に設定できることが更に好ましい。
【0111】
<第6の実施形態>
本発明の第6の実施形態について、以下に、図面を参照して説明する。本実施形態における画像形成装置の構成は、第1の実施形態と同様の構成である。
図16が、本実施形態の画像形成装置における制御部の搬送装置に対する制御動作を示すフローチャートである。尚、
図16のフローチャートにおいて、
図12のフローチャートと同一となる部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0112】
以下に、給紙ローラー対82の回転制御動作について、
図16のフローチャートを参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態と異なり、記録紙P2の搬送速度に遅れが生じたときに、搬送ローラー対83の回転速度を増速させるとともに、給紙ローラー対82の回転速度を搬送モーター対83に追従して増減速させる。即ち、記録紙P2の搬送遅れを解消するべく、搬送モーター88の回転速度をΔVだけ増速したとき、給紙モーター87の回転速度もΔVだけ増速させる。一方、記録紙P2の搬送遅れが解消したときは、給紙モーター87及び搬送モーター88それぞれの回転速度を、増速分ΔVだけ同時に減速させる。
【0113】
本実施形態では、
図16のフローチャートに示すように、制御部10が、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th1を上回ったことを確認すると(STEP8でYes)、記録紙P2の搬送遅れを解消するための増速量ΔVを算出し(STEP95)、搬送モーター88及び給紙モーター87それぞれの回転速度をΔVだけ増速させる(STEP96)。又、制御部10が、記録紙P2の搬送遅れ量が閾値Th2を下回ったことを確認すると(STEP10でYes)、搬送モーター88及び給紙モーター87それぞれの回転速度を増速前の回転速度に減速させる(STEP111)。
【0114】
<第7の実施形態>
本発明の第7の実施形態について、以下に、図面を参照して説明する。本実施形態における画像形成装置の構成は、第6の実施形態と同様、第1の実施形態と同様の構成である。
図17が、本実施形態の画像形成装置における搬送装置の各動作を示すタイミングチャートである。尚、
図17のタイミングチャートにおいて、
図10のタイミングチャートと同一となる部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0115】
以下に、給紙ローラー対82の回転制御動作について、
図17のタイミングチャートを参照して説明する。本実施形態では、第6の実施形態と異なり、制御部10が、搬送センサー85の測定結果に基づいて記録紙P2の搬送速度と搬送位置とを確認し、搬送制御部118が、記録紙P2が一定速度で搬送されるように、常に搬送ローラー対83の回転速度を制御する。そして、記録紙P2の搬送遅れ量が大きくなったときに、給紙ローラー対82及び搬送ローラー対83それぞれの回転速度を共に増速することで、記録紙P2の搬送遅れを解消させる。
【0116】
即ち、本実施形態では、
図17の例に示すように、制御部10が、時刻T1で記録紙P2の給紙を開始すると、記録紙P2の搬送位置と搬送速度を算出して速度情報を取得し、所定の搬送速度で記録紙P2が搬送されるように、速度補正演算を行い、PI制御やPID制御を用いて、搬送モーター88の速度を調整する。一方、給紙ローラー対82は、時刻T1における給紙開始直後には、第1回転速度Vx1で回転駆動するものの、時刻T2で、搬送センサー85が記録紙P2先端の搬送ローラー対83の通過を検知すると、第2回転速度Vx2に減速する。
【0117】
その後、時刻T3Bで、搬送センサー85の測定結果に基づく記録紙P2の搬送遅れ量が、閾値Th1を上回ると、制御部10は、搬送制御部118を通じて、搬送モーター88と共に給紙モーター87を増速させて、給紙ローラー対82及び搬送ローラー対83それぞれの回転速度を増速分ΔVだけ増速させる。このとき、搬送ローラー対83の回転速度は、搬送センサー85の測定結果に基づく記録紙P2の搬送位置と理想の搬送位置との差が0となるように増速されることとなる。このように、記録紙P2の搬送位置を制御対象として記録紙P2を搬送することで、ローラーのスリップやローラー径の誤差による記録紙P2の搬送位置のバラツキを抑制することができ、記録紙P2の搬送間隔を短縮できる。
【0118】
そして、時刻T4Bにおいて、記録紙P2の後端が給紙ローラー対82のニップ領域を通過すると、搬送制御部118が、給紙モーター87を停止させて、給紙ローラー対82の回転駆動を停止させる。一方、搬送モーター88については、搬送制御部118は、記録紙P2の搬送位置と搬送速度に基づいて制御されるため、記録紙P2の後端が搬送センサー85を通過するまで、搬送ローラー対83の回転速度が最適な値に設定される。
【0119】
尚、搬送モーター88を制御するための制御対象となる記録紙P2の搬送位置は、例えば、給紙トレイ4にセットされた初期位置を0とし、そこから理想速度で搬送された場合の位置を理想の搬送位置として随時算出されるものであってもよい。又、搬送遅れが閾値Th1を超えた場合に、搬送モーター88の回転速度が最大となる場合であっても、給紙モーター87を増速して、搬送ローラー対83の駆動源である搬送モーター88の負荷を軽減できるため、記録紙P2の搬送速度を理想値まで増速できる。
【0120】
上述の各実施形態において、給紙ローラー対82の回転速度を第1及び第2回転速度Vx1,Vx2で切り換える場合、
図18の例に示すように、第1回転速度Vx1を、搬送ローラー対83の理想回転速度Vx0に対してΔVxだけ高速となる回転速度(Vx0+ΔVx)とする一方で、第2回転速度Vx2を、理想回転速度Vx0に対してΔVxだけ低速となる回転速度(Vx0−ΔVx)に設定するものとしても構わない。尚、理想回転速度Vx0は、給紙ローラー対82及び搬送ローラー対83を同一径とした場合でスリップよる遅れも含めたときの搬送ローラー対83の回転速度である。このとき、ΔVxの値を小さくすることにより、給紙ローラー対82の増速速度に到達する時間が短くて済み、応答性が向上するため、急激にスリップが増大するような場合などでも、増速が素早く可能である。
【0121】
又、上述の各実施形態において、
図19の例に示すように、搬送遅れ量により給紙ローラー対82の回転速度を制御するための閾値を3つ以上備え、増速させる給紙ローラー対82の回転速度を複数切り換えることができるものとしても構わない。
図19の例では、閾値を4つ備えており、記録紙P2先端が搬送ローラー対83を通過した後、記録紙P2の搬送遅れ量と各閾値とを比較することにより、その搬送遅れ量の大きさに基づいて、給紙ローラー対82の回転速度を4段階で設定可能としている。このように、搬送遅れ量と比較する閾値の数を増やすことで、記録紙P2の搬送制御を潤滑に行うことができるようになり、記録紙P2搬送時における振動や騒音を抑制できる。又、記録紙P2の搬送遅れ量0を目標値として、PI制御等を利用して、搬送センサー85による測定結果に基づき、連続して給紙ローラー対82の遅れ量を補正するものであってもよい。
【0122】
<搬送遅れ量測定のための別例1>
上述の各実施形態において、
図9に示す構成のように、搬送センサー85の測定信号から得られる記録紙P2の搬送速度(測定搬送速度)に基づいて、搬送遅れ量を算出するものとしたが、
図9以外の構成で測定することも可能である。本例では、
図20に示すように、搬送モーター88に対して、搬送モーター88の回転速度を計測するロータリーエンコーダー88aを設けており、ロータリーエンコーダー88aからのエンコーダパルスを搬送制御部118が受ける構成となっている。この場合、搬送制御部118で受けたエンコーダパルス信号を制御部10に与えることで、搬送遅れ判断部120は、搬送モーター88の回転速度に基づいて、記録紙P2の搬送遅れ量を測定する。
【0123】
即ち、例えば、搬送モーター88を直流モーターで構成する場合、ロータリーエンコーダー88aから取得したエンコーダパルスの周波数と、設計上の理想周波数との差を算出して、記録紙P2の搬送遅れ量とする。尚、搬送モーター88をステッピングモーターで構成する場合、搬送遅れ判断部120は、搬送制御部118から搬送モーター88の回転速度を指示する矩形波信号のパルスレートにより、記録紙P2の搬送遅れ量を測定できるため、ロータリーエンコーダー88aを省略できる。このとき、搬送モーター88に与える矩形波信号パルスレートと、設計上の理想パルスレートとの差を算出して、記録紙P2の搬送遅れ量とする。このように、本例の構成においては、搬送遅れ判断部120は、搬送センサー85の制御系から得られるパラメータに基づいて、記録紙P2の搬送遅れを判断できるため、搬送センサー85からの情報の処理を省略できる。
【0124】
本例の構成によれば、搬送センサー85から得られる記録紙P2の搬送状態を監視して、ローラの径ばらつきや用紙のスリップにより、実際の搬送速度が理想搬送速度に対してずれている場合、搬送モーター88の回転速度を補正して理想搬送速度になるように、搬送制御部118が搬送モーター88をフィードバック制御する。このような構成においては、スリップの増加が過剰になり、搬送モータ−88による記録紙P2の搬送速度補正が限界(設計上のモータ増速上限)に達する、あるいは近づくことで、これ以上記録紙P2のスリップが補正できなくなると判断したとき、搬送遅れが発生したものと見なすことができる。この判断により、給紙ローラー対82の増速を行うことで限界を超える前に過剰なスリップ状態からの回復させることができる。
【0125】
尚、搬送速度補正の限界を判断するパラメータは、搬送制御部118内で処理されており、補正限界を直接的、あるいは間接的に判断できるパラメータである。例えば、搬送モーター88がステッピングモーターである場合、パルスレート(モーターの回転数を指示する矩形波信号の周波数)である。又、搬送モーター88が直流モータである場合、そのモーターの回転数を直接検出しているエンコーダー88aから得られるモーター速度情報に限らず、あるいはモーターの回転数を指示する信号の電圧(上限電圧)、PWM信号のデューティー比、更には、モータの回転数制御演算系の演算値であってもよい。
【0126】
<搬送遅れ量測定のための別例2>
搬送遅れ量を算出するための別構成の2例目として、
図21の構成例を示す。
図21の構成例では、搬送センサー85からの測定信号が、搬送制御部118及び搬送遅れ判断部120それぞれに与えられる構成となっている。この構成においては、搬送遅れ判断部120は、搬送センサー85からの情報を直接取得できると同時に搬送制御部120による搬送モーター88の制御情報を取得できる。そのため、記録紙P2のスリップが急激に増大した場合でも、搬送制御部118の応答を待たずに給紙モーター87を増速させることができる。
【0127】
即ち、搬送遅れ判断部120は、式(8)に示すように設計上の記録紙P2の搬送速度に、搬送制御部118による搬送モーター88の増減速量を加算した基準速度を算出した後、算出した基準速度より搬送センサー85での測定した記録紙P2の搬送速度を減算し、搬送遅れ量を算出する。
搬送遅れ量=(設計上の用紙搬送速度+搬送モーターの増速量)−用紙移動量センサーの検出速度 ・・・式(8)
【0128】
又、スリップが比較的小さい範囲であれば、搬送センサー85からの情報を見て搬送モーター88を増速して記録紙P2の搬送速度を理想値に近づける制御を行える。この場合、搬送遅れ判断部120では、例えば、搬送センサー85が検出する速度情報から、搬送モーター88のスリップ補正制御による増速分(駆動制御部から得られる情報)を除くことで、実際に搬送ローラー対83で補正不可能となる搬送遅れ(スリップ)が生じているかどうかを判断できる。そして、補正不可能となる搬送遅れ(スリップ)が生じている場合にのみ、給紙モーター87を増速するよう制御すれ
ば良い。これにより、搬送モーター88のスリップ補正制御と、搬送モーター88の制御のみで補正しきれない程度のスリップが生じた場合に実行される給紙モーター87の増速制御とを、協調させることができる。
【0129】
<搬送遅れ量測定のための別例3>
搬送遅れ量を算出するための別構成の3例目として、
図22の構成例を示す。
図22の構成例では、搬送遅れ判断部120が、搬送センサー85からの記録紙P2の搬送状態と、搬送制御部118により駆動される搬送モーター88の回転速度とに基づいて、記録紙P2の搬送遅れ量を取得する。このとき、搬送遅れ判断部120は、搬送制御部118からの制御信号を受けて、現在駆動している搬送モーター88の回転速度に基づく設計上の記録紙P2の搬送速度から、搬送センサー85で測定した記録紙P2の搬送速度を減算して、記録紙P2の搬送遅れ量を算出する。従って、搬送遅れ判断部120は、搬送モーター88の回転速度が変速中であっても、正確な記録紙P2の搬送遅れ量を算出できる。
【0130】
例えば、搬送モーター88をステッピングモーターで構成した場合や、複数の搬送速度を切り替えたりする場合や、搬送位置調整のために増減速を行う場合がある。これらの場合において、記録紙P2の搬送遅れを判断するためには、搬送センサー85からの測定情報だけでは不足するため、搬送制御部118による制御信号を受けて、搬送モーター88の回転速度をリアルタイムで取得し、現状の搬送モーター88の回転速度に基づく搬送遅れ量を算出する。即ち、本校政令においては、現在の搬送モーター88の狙い送り速度と、搬送センサー85からの情報を比較して、記録紙P2の搬送遅れを判断している。そのため、搬送モーター88の変速中に記録紙P2の搬送遅れが大きくなった場合においても、その搬送遅れを正確に判断できる。
【0131】
<搬送装置の別構成例>
上述の各実施形態の画像形成装置における搬送装置において、
図9に示すように、給紙モーター87及び搬送モーター88それぞれと給紙ローラー対82及び搬送ローラー対83それぞれとが直接連結した構成としたが、このような構成に限ら
れるものではない。搬送装置の別構成例として、例えば、
図23に示すように、給紙ローラー対82が、クラッチ95を介して連結するものとしても構わない。又は、
図24に示すように、1つの駆動モーター87の動力系統をギアやベルトにより駆動分岐させるとともに、分岐された動力系統に、クラッチ95,96それぞれを介して、給紙ローラー対82及び搬送ローラー対83それぞれが連結する
ものとしても構わない。
【0132】
上記の各構成例では、記録紙P2が搬送ローラー対83を通過した後に、給紙ローラー対82を停止させる(第2回転速度Vx2を0とする)場合、クラッチ95を開放させて、給紙ローラー対82を停止させる。更に、記録紙P2の搬送遅れが生じて、給紙ローラー対82を第1回転速度Vx1で回転駆動させる場合、クラッチ95を連結して、給紙ローラー対82に給紙モーター87からの回転を伝達させる。
【0133】
尚、本願発明における画像形成装置として、コピー機能、スキャナー機能、プリンター機能、ファックス機能を有するMFP(Multifunction Peripheral)であっても構わないし、プリンター、コピー機、ファクシミリ等であっても構わない。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。