【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、経済産業省、ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、原則として同一の符号で表し、これらの構成要素についての重複説明は、適宜省略する。また、図面中に注記された「前」「後」「左」「右」「上」「下」の方向は、本明細書中の説明において「前」「後」「左」「右」「上」「下」と記述される方向にそれぞれ対応する。但し、スリングシート及び移乗補助装置の各構成の位置関係は、「前」「後」「左」「右」「上」「下」の概念に限定されるものではない。
【0011】
<1.第1実施形態>
まず、第1実施形態について説明する。
【0012】
(1−1.スリングシートの構成の例)
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態のスリングシートの構成の一例について説明する。なお、
図1中では、スリングシートのシート本体の、当該シート本体に載置される被介護者の頭部、臀部、脚部等に対応する側・部位の理解が容易になるように、被介護者を想像線で図示している(後述の
図7も同様)。
【0013】
図1に示すように、スリングシート1は、被介護者50の移乗(「移乗動作」ともいう。)を補助する移乗補助装置100(後述の
図2等参照。詳細は後述)に用いられる。
【0014】
「移乗」とは、現在の位置・姿勢から別の位置・姿勢に移る動作をいう。移乗としては、例えば、ある位置(例えば
ベッド)での横たわった姿勢(「臥位姿勢」ともいう。)から別の位置(例えば車椅子)での座った姿勢(「座位姿勢」ともいう。)に移る動作やその逆の動作等が挙げられる。また、位置はそのままで姿勢が別の姿勢に移る動作や姿勢はそのままで位置が別の位置に移る動作も、移乗の一例である。
【0015】
スリングシート1は、被介護者50が載置される長方形状のシート本体2を有する。なお、シート本体2の形状は、長方形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0016】
シート本体2の長手方向一方側、つまり当該シート本体2に載置される被介護者50の脚部52に対応する側(以下「脚部対応側」ともいう。)には、二股状に分岐した2つの分岐部20,20が形成されている。なお、シート本体2の脚部対応側とは、シート本体2の長手方向のうち、被介護者50の脚部52を載置すべき側である。
【0017】
分岐部20,20は、シート本体2の脚部対応側のうち、シート本体2に載置される被介護者50の臀部54に対応する部位22(以下「臀部対応部位22」ともいう。)近傍から脚部対応側の端部24に向けて形成されている。なお、シート本体2の臀部対応部位22とは、シート本体2のうち、被介護者50の臀部54を載置すべき部分であり、長手方向中心部近傍を指す。分岐部20,20は、シート本体2を平面状にした際にシート本体2の長手方向に延在した形状に形成されている。
【0018】
なお、分岐部20,20は、シート本体2を平面状にした際に相互に交差するように相互に近づく方向に湾曲した形状に形成されたり、シート本体2を平面状にした際に相互に遠ざかる方向に湾曲した形状に形成されてもよい。また、分岐部20,20は、シート本体2の臀部対応部位22よりも脚部対応側の部位から脚部対応側の端部24に向けて形成されてもよい。また、分岐部20,20は、シート本体2の臀部対応部位22よりもシート本体2に載置される被介護者50の頭部56に対応する側(以下「頭部対応側」ともいう。)の部位から脚部対応側の端部24に向けて形成されてもよい。なお、シート本体2の頭部対応側とは、シート本体2の長手方向のうち、被介護者50の頭部56を載置すべき側である。また、分岐部20,20は、シート本体2の頭部対応側に形成されてもよい(この場合、シート本体2の頭部対応側が、長手方向一方側の一例に相当することとなる。)。
【0019】
また、シート本体2の長手方向両端、つまり脚部対応側の端部24及び頭部対応側の端部26には、被保持部の一例である円筒部21,23がそれぞれ配置されている。具体的には、シート本体2の脚部対応側の端部24は、分岐部20,20のそれぞれに配置されており、円筒部21は、分岐部20,20の脚部対応側の端部24,24のそれぞれに配置されている。
【0020】
円筒部21,23は、例えばシートの端部が円筒状にされて縫合されることでシート本体2と一体として配置され、移乗補助装置100のアーム部材106a,106b(後述の
図2等参照。詳細は後述)が挿入可能に形成されている。また、円筒部21,23は、クッション性を有することが好ましい。そして、円筒部21にアーム部材106a,106bの一方が挿入されると共に、円筒部23にアーム部材106a,106bの他方が挿入されることで、円筒部21,23は、アーム部材106a,106bにより保持される(後述の
図6参照)。
【0021】
なお、円筒部21,23は、予め円筒状に形成されたシートがシート本体2の端部に縫合されることでシート本体2と別体として配置されてもよい。また、シート本体2の短手方向両端に円筒部が形成されてもよい。
【0022】
また、シート本体2は、分岐部20,20が
相互に交差した状態で、円筒部21,21の両方にアーム部材106a,106bの一方が挿入され、円筒部23にアーム部材106a,106bの他方が挿入されることで、アーム部材106a,106bにより保持される(後述の
図6参照)。
【0023】
なお、シート本体2は、分岐部20,20が
相互に交差しない状態で、円筒部21,23にアーム部材106a,106bが挿入されることで、アーム部材106a,106bにより保持されてもよい。また、シート本体2に分岐部20,20を連結又は分離可能な連結具が配置されてもよい。
【0024】
(1−2.移乗補助装置の構成の例)
次に、
図2〜
図5を参照しつつ、移乗補助装置100の構成の一例について説明する。
【0025】
図2〜
図5に示すように、移乗補助装置100は、回動部102と、本体部104と、一対の保持部材の一例であるアーム部材106a,106b(以下適宜「アーム部材106」と総称する。)とを有する。
【0026】
回動部102は、本体部104により片持ち梁状に支持されている。具体的には、回動部102は、鉛直方向(この例では上下方向)に沿って昇降し(
図3参照)、且つ水平方向(この例では前後方向)に沿う中心軸Ax1周りに回動する(
図4参照)ように、本体部104により支持されている。なお、本明細書中では、回動部102の前側から見て時計回り(右回り)となる回動方向を「回動方向一方側」、前側から見て反時計回り(左回り)となる回動方向を「回動方向他方側」と定義する。
【0027】
なお、回動部102は、斜めの方向に沿って昇降するように本体部104により支持されてもよい。
【0028】
アーム部材106a,106bは、回動部102の回動に連動して回動するように、回動部102の周方向一方側(この例では左側)及び他方側(この例では右側)にそれぞれ連結され、上記スリングシート1の円筒部21,23に挿入可能に形成されている。具体的には、アーム部材106a,106bは、各々の基端側が中心軸Ax1方向に垂直な方向(この例では左右方向)に延在し、且つ各々の先端側が前後方向に延在するように湾曲した形状に形成され、各々の先端側が円筒部21,23に挿入可能である。そして、アーム部材106aの先端側が円筒部21,23の一方に挿入されると共に、アーム部材106bの先端側が円筒部21,23の他方に挿入されることで、アーム部材106a,106bは、円筒部21,23を保持する。
【0029】
また、アーム部材106a,106bは、当該アーム部材106a,106bの間隔を伸縮する伸縮機構130a,130b(以下適宜「伸縮機構130」と総称する。後述の
図6も参照)をそれぞれ備え、伸縮機構130a,130bにより各々の間隔を伸縮可能である(
図5参照)。伸縮機構130a,130bの構成は、アーム部材106a,106bの間隔を伸縮することが可能な構成であれば特に限定されるものではないが、例えば回動型モータ及びボールねじ機構を備えた機構等により実装可能である。
【0030】
なお、アーム部材106a,106bの一方のみに伸縮機構130が備えられてもよい。また、アーム部材106とは別の部分(例えば本体部104等)に伸縮機構が備えられてもよい。また、アーム部材106a,106bの間隔を伸縮する必要がない場合には、伸縮機構は必ずしも必要ではない。また、アーム部材106a,106bの形状は、基端側が左右方向に延在し、且つ先端側が前後方向に延在するように湾曲した形状に限定されるものではなく、円筒部21,23に挿入されて円筒部21,23を保持することが可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0031】
また、被保持部及び保持部材は、円筒部21,23及びアーム部材106a,106bである場合に限定されるものではなく、他の組み合わせであってもよい。例えば、被保持部を、スリングシートのシート本体の端部に設けられたループ状のストラップとし、保持部材を、移乗補助装置の一対のアーム部材に設けられた鉤状のフックとしてもよい。
【0032】
本体部104は、筐体本体110と、回動部102を昇降する昇降機構120と、回動部102を中心軸Ax1周りに回動する回動機構(図示せず)とを備える。
【0033】
昇降機構120の構成は、回動部102を昇降することが可能な構成であれば特に限定されるものではないが、例えば次のように構成される。すなわち、昇降機構120は、回転型モータ及びボールねじ機構を備えたアクチュエータ(図示せず)と、回動部102を片持ち梁状に支持しつつアクチュエータの動作に連動して筐体本体110に対し昇降する昇降部122とを有する。このような昇降機構120は、アクチュエータの駆動により、昇降部122を筐体本体1110に対し昇降させることで、回動部102をアーム部材106a,106bと共に昇降することが可能である。
【0034】
回動機構の構成は、回動部102を中心軸Ax1周りに回動することが可能な構成であれば、特に限定されるものではないが、例えば次のように構成される。すなわち、回動機構は、回転型モータと、回転型モータの回転力を回動部102に伝達する例えばベルトドライブ機構等の伝達機構とを有する。このような回動機構は、回転型モータの回転力を伝達機構を介して回動部102に伝達することで、回動部102をアーム部材106a,106bと共に中心軸Ax1周りに回動することが可能である。
【0035】
また、本体部104には、移乗補助装置100を移動するための例えばキャスター部等の部材(図示せず)が設置されている。なお、移動補助装置100を移動する必要がない場合には、移乗補助装置100を移動するための部材は、必ずしも必要ではない。
【0036】
(1−3.移乗補助方法の例)
次に、
図6を参照しつつ、スリングシート1及び移乗補助装置100を用いて被介護者50の移乗を補助する移乗補助方法の一例について説明する。ここでは、ベッドに横たわった被介護者50を車椅子に座らせる場合を例にとって説明する。
【0037】
図6において、まず、介護者(図示せず)が、ベッド(図示せず)に横たわった被介護者50をベッド上で適宜に動かしつつ、被介護者50がシート本体2に載置されるように、スリングシート1をベッド上に敷く。この際、被介護者50の脚部52側にシート本体2の脚部対応側、頭部56側にシート本体2の頭部対応側が配置されるように、スリングシート1を敷く。
【0038】
その後、移乗補助装置100をベッド近傍に移動させる。例えば、移乗補助装置100は、アーム部材106aの先端側が脚部52側、アーム部材106bの先端側が頭部56側となるように、ベッド近傍に配置される。
【0039】
そして、伸縮機構130a,130bを適宜駆動し、アーム部材106a,106bの先端側を、円筒部21,23にそれぞれ対向させる。
【0040】
その後、移乗補助装置100を適宜移動させつつ、アーム部材106aの先端側を円筒部21、アーム部材106bの先端側を円筒部23にそれぞれ挿入して、アーム部材106a,106bにより円筒部21,23を保持させる。この際、シート本体2の脚部対応側の分岐部20,20を
相互に交差させた状態で、アーム部材106aを円筒部21,21の両方に挿入する。
【0041】
そして、昇降機構120を適宜駆動し、昇降部122を筐体本体110に対し上昇させることで、回動部102を、円筒部21,23を保持したアーム部材106a,106bと共に上昇させ、被介護者50が載置されたシート本体2を持ち上げさせる。
【0042】
その後、伸縮機構130a,130bを適宜駆動し、アーム部材106a,106bの間隔を伸縮させて、シート本体2の臀部対応部位22に、被介護者50の臀部54を支持する臀部支持部の一例である窪み25を形成させる。これにより、持ち上げられた被介護者50の臀部54を窪み25により支持することが可能である。
【0043】
そして、回動機構を適宜駆動し、回動部102をアーム部材106a,106bと共に回動方向一方側に回動させることで、シート本体2を傾斜させて、シート本体2に載置された被介護者50の脚部52が低く、頭部56が高くなるように姿勢を変更させる(
図6の状態)。
【0044】
その後、移乗補助装置100を車椅子(図示せず)近傍に移動させる。
【0045】
そして、昇降機構120を適宜駆動し、昇降部122を筐体本体110に対し下降させることで、回動部102を、円筒部21,23を保持したアーム部材106a,106bと共に下降させ、被介護者50をシート本体2と共に車椅子に着地させる。
【0046】
その後、介護者が、被介護者50の脚部52の両側から分岐部20,20をそれぞれ引き出し、頭部56側に向けて分岐部20,20を交互に引っ張ることで、スリングシート1を取り除く。
【0047】
なお、上記で説明した移乗補助方法の内容は、あくまで一例であり、上記以外の内容であってもよい。
【0048】
(1−4.本実施形態による効果の例)
以上説明したように、本実施形態のスリングシート1では、シート本体2の長手方向一方側(上記の例では脚部対応側)に二股状の分岐部20,20が形成される。これにより、被介護者50の移乗を終えた後、被介護者50の身体の両側から分岐部20,20をそれぞれ引き出し、例えば被介護者50の端部側(上記の例では頭部56側)に向けて分岐部20,20を交互に引っ張る等により、被介護者50の姿勢(臥位姿勢や座位姿勢等)を変更することなく保持した状態で、スリングシート1を容易に取り除くことができる。
【0049】
また、本実施形態では、次のような効果を得ることができる。すなわち、スリングシート1に載置され持ち上げられた被介護者50は、臀部54がスリングシート1に対し滑る場合には、移乗補助装置100によりスリングシート1の角度を調節しても所望の姿勢となりにくく、被介護者50の姿勢が不安定となる可能性がある。本実施形態のスリングシート1は、シート本体2の臀部支持部(上記の例では窪み25)により、載置された被介護者50の臀部54を支持するので、臀部52の滑りを防止できる。これにより、被介護者50が持ち上げられた際の姿勢を安定化することができる。その結果、被介護者50の姿勢を持ち上げた状態で所望の姿勢に変更することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態の移乗補助装置100は、昇降機構120により回動部102を昇降させることでスリングシート1に載置された被介護者50を上げ下げし、回動部102の回動によりアーム部材106a,106bを回動させてスリングシート1を傾斜させる。これにより、被介護者50の姿勢を持ち上げた状態で変更することができる。
【0052】
また、本実施形態では特に、被保持部を、移乗補助装置100のアーム部材106a,106bが挿入される円筒部21,23とする。これにより、被保持部の構成を簡素化できると共に、移乗補助装置100に対するスリングシート1の着脱が容易となる。
【0053】
また、本実施形態では特に、シート本体2を長方形状とする。これにより、シート本体2を複雑な形状とする場合に比べて裁断工程等を少なくできるので、製造コストを低減できる。
【0054】
また、本実施形態では特に、分岐部20,20を、シート本体2の脚部対応側に形成する。これにより、例えば車椅子への移乗を終えた後に、被介護者50の脚部52の両側からシート本体2の分岐部20,20をそれぞれ引き出し、被介護者50の頭部56側に向けて分岐部20,20を交互に引っ張る等により、被介護者50の座位姿勢を保持した状態でスリングシート1を容易に取り除くことができる。
【0055】
また、本実施形態では特に、分岐部20,20を、シート本体2の臀部対応部位22近傍から脚部対応側の端部24に向けて形成する。これにより、シート本体2のうち被介護者50の脚部52が載置される部分のほぼ全てを被介護者50の両側に引き出すことができるので、スリングシート1をさらに取り除き易くすることができる。
【0056】
なお、上記で説明した被介護者50の移乗を終えた後にスリングシート1を容易に取り除く効果を得るには、シート本体2に必ずしも窪み25等の臀部支持部が配置(形成)される必要はない。また、上記で説明した被介護者50が持ち上げられた際の姿勢を安定化する効果を得るには、シート本体2が必ずしも二股状の分岐部20,20を備えなくてもよい。
【0057】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
【0058】
(2−1.スリングシートの構成の例)
まず、
図7を参照しつつ、本実施形態のスリングシートの構成の一例について説明する。
【0059】
図7に示すように、スリングシート1Aは、前述の移乗補助装置100に用いられ、前述のシート本体2と同様に構成されたシート本体2Aを有する。
【0060】
シート本体2Aは、前述の分岐部20,20を連結又は分離可能な連結具28を有する点が、シート本体2と異なっている。連結具28は、分岐部20,20を連結又は分離可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば点ファスナや線ファスナ、面ファスナ等により実装可能である。
【0061】
また、シート本体2Aは、分岐部20,20が
相互に交差せずに連結具28により連結された状態で、前述の円筒部21,21の両方にアーム部材106a,106bの一方が挿入され、前述の円筒部23にアーム部材106a,106bの他方が挿入されることで、アーム部材106a,106bにより保持される(後述の
図8参照)。
【0062】
なお、シート本体2Aは、必ずしも連結具28を備えなくてもよい。また、シート本体2Aは、分岐部20,20が
相互に交差した状態で、円筒部21,23にアーム部材106a,106bが挿入されることで、アーム部材106a,106bにより保持されてもよい。
【0063】
また、シート本体2Aには、当該シート本体2Aに載置される被介護者50(後述の
図8参照)の臀部54を支持するように、一端が前述の円筒部21,23に連結され、他端が前述の臀部対応部位24に連結されたストラップ30が配置されている。つまり、ストラップ30は、臀部支持部及び支持部材の一例に相当する。
【0064】
ストラップ30は、伸縮性を備えた2つの第1ストラップ31,31と、伸縮性を備えた2つの第2ストラップ32,32とを有する。なお、第1及び第2ストラップ31,32とは、一体であってもよいし別体であってもよい。
【0065】
第1ストラップ31,31は、シート本体2Aの短手方向両端にそれぞれ配置され、各々の一端31aが円筒部21,21の各々に連結され、各々の他端31bが円筒部23に連結されている。
【0066】
第2ストラップ32,32は、シート本体2Aの短手方向両端にそれぞれ配置され、各々の一端32aが第1ストラップ31,31の各々に連結され、各々の他端32bがシート本体2Aの臀部対応部位22に連結されている。具体的には、各第2ストラップ32の他端32bは、シート本体2Aの被介護者50が載置される面2aとは反対側の面2bの短手方向端部側において臀部対応部位22に連結されている。
【0067】
なお、各第2ストラップ32の他端32bは、シート本体2Aの被介護者50が載置される面2aにおいて臀部対応部位22に連結されてもよい。また、第2ストラップは、両端が第1ストラップ31,31の各々に連結され、中間部がシート本体2Aの面2a又は面2bにおいて臀部対応部位22に連結されてもよい。
【0068】
また、第1及び第2ストラップ31,32は、必ずしも伸縮性を備えなくてもよい。また、支持部材は、ストラップ30に限定されるものではなく、例えばシート本体2Aの短手方向の両端に配置されたネット等の他の部材であってもよい。また、臀部支持部は、ストラップ30等の支持部材に限定されるものではなく、例えばシート本体2Aの臀部対応部位に形成される窪みや突起等であってもよい。
【0069】
(2−2.移乗補助方法の例)
次に、
図8を参照しつつ、スリングシート1A及び移乗補助装置100を用いて被介護者50の移乗を補助する移乗補助方法の一例について説明する。ここでは、ベッドに横たわった被介護者50を車椅子に座らせる場合を例にとって説明する。
【0070】
図8において、まず、介護者が、ベッドに横たわった被介護者50をベッド上で適宜に動かしつつ、被介護者50がシート本体2Aに載置されるように、スリングシート1Aをベッド上に敷く。この際、連結具28を操作し、シート本体2Aを分岐部20,20が連結部28により連結された状態として、被介護者50の脚部52側にシート本体2Aの脚部対応側、頭部56側にシート本体2Aの頭部対応側が配置されるように、スリングシート1Aを敷く。
【0071】
その後、移乗補助装置100をベッド近傍に移動させる。例えば、移乗補助装置100は、前述のアーム部材106aの先端側が脚部52側、前述のアーム部材106bの先端側が頭部56側となるように、ベッド近傍に配置される。
【0072】
そして、前述の伸縮機構130a,130bを適宜駆動し、アーム部材106a,106bの先端側を、円筒部21,23にそれぞれ対向させる。
【0073】
その後、移乗補助装置100を適宜移動させつつ、アーム部材106aの先端側を円筒部21、アーム部材106bの先端側を円筒部23にそれぞれ挿入して、アーム部材106a,106bにより円筒部21,23を保持させる。
【0074】
そして、前述の昇降機構120を適宜駆動し、前述の昇降部122を前述の筐体本体110に対し上昇させることで、前述の回動部102を、円筒部21,23を保持したアーム部材106a,106bと共に上昇させ、被介護者50が載置されたシート本体2Aを持ち上げさせる。
【0075】
その後、伸縮機構130a,130bを適宜駆動し、アーム部材106a,106bの間隔を伸縮させて、シート本体2Aの臀部対応部位22に、前述の窪み25を形成させる。これにより、持ち上げられた被介護者50の臀部54をストラップ30及び窪み25により支持することが可能である。
【0076】
そして、前述の回動機構を適宜駆動し、回動部102をアーム部材106a,106bと共に回動方向一方側に回動させることで、シート本体2Aを傾斜させて、シート本体2Aに載置された被介護者50の脚部52が低く、頭部56が高くなるように姿勢を変更させる(
図8の状態)。
【0077】
その後、移乗補助装置100を車椅子近傍に移動させる。
【0078】
そして、昇降機構120を適宜駆動し、昇降部122を筐体本体110に対し下降させることで、回動部102を、円筒部21,23を保持したアーム部材106a,106bと共に下降させ、被介護者50をシート本体2Aと共に車椅子に着地させる。
【0079】
その後、介護者が、連結具28を操作し、シート本体2Aを分岐部20,20が連結具28により分離された状態として、被介護者50の脚部52の両側から分岐部20,20をそれぞれ引き出し、頭部56側に向けて分岐部20,20を交互に引っ張ることで、スリングシート1を取り除く。
【0080】
なお、上記で説明した移乗補助方法の内容は、あくまで一例であり、上記以外の内容であってもよい。
【0081】
(2−3.本実施形態による効果の例)
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施形態のスリングシート1Aでは、シート本体2Aの長手方向一方側(上記の例では脚部対応側)に二股状の分岐部20,20が形成されることにより、被介護者50の姿勢を変更することなく保持した状態で、スリングシート1Aを容易に取り除くことができる。また、本実施形態のスリングシート1Aは、シート本体2Aの臀部支持部(上記の例ではストラップ30及び窪み25)により、被介護者50が持ち上げられた際の姿勢を安定化することができる。
【0082】
また、本実施形態では特に、シート本体2Aが、分岐部20,20を連結又は分離可能な連結具28を有する。これにより、被介護者50の移乗を行う際には、分岐部20,20を連結することでシート本体2Aの強度を確保し、被介護者50の姿勢を安定させることができる。また、移乗を終えた後には、分岐部20,20を分離させることで、スリングシート1Aを容易に取り除くことができる。
【0083】
また、本実施形態では特に、臀部支持部を、一端が円筒部21,23に連結され、他端がシート本体2Aの臀部対応部位22に連結された支持部材(上記の例ではストラップ30)とする。ストラップ30により、スリングシート1Aを持ち上げた際にシート本体2Aの臀部対応部位22を支持することができるので、被介護者50の姿勢を安定化することができる。また、支持部材にストラップ30を用いることで、被介護者50の臀部54の支持構造を簡素化でき、コストを抑えることができる。
【0084】
また、本実施形態では特に、ストラップ30が、円筒部21,23の各々に連結された第1ストラップ31,31と、一端32aが第1ストラップ31に連結され、他端32bがシート本体2Aの臀部対応部位22に連結された第2ストラップ32,32とを有する。第1及び第2ストラップ31,32により、シート本体2Aの臀部対応部位22を支持することができるので、被介護者50の姿勢を安定化することができる。また、第1及び第2ストラップ31,32をシート本体2Aの短手方向両側にそれぞれ配置するので、シート本体2Aの短手方向における被介護者50のずれ落ちを防止できる。
【0085】
また、本実施形態では特に、第1及び第2ストラップ31,32を、伸縮性を備えたストラップとする。これにより、第1及び第2ストラップ31,32の反力による被介護者50への衝撃を緩和でき、スリングシート1Aの乗り心地を向上できる。また、体格や体重の異なる被介護者50に柔軟に対応可能なスリングシート1Aを実現できる。
【0086】
また、本実施形態では特に、伸縮機構130a,130bによりアーム部材106a,106bの間隔を伸縮させることで、例えば第1及び第2ストラップ31,32の張り具合を調節する等によって、スリングシート1Aに被介護者50の臀部54を支持する臀部支持部(上記の例では窪み25)を形成することができる。また、被介護者50の体格に応じアーム部材106a,106b材の間隔を伸縮させることで、体格の異なる被介護者50に柔軟に対応することができる。
【0087】
なお、上記で説明した被介護者50の移乗を終えた後にスリングシート1Aを容易に取り除く効果を得るには、シート本体2Aに必ずしもストラップ30や窪み25等の臀部支持部が配置(形成)される必要はない。また、上記で説明した被介護者50が持ち上げられた際の姿勢を安定化する効果を得るには、シート本体2Aが必ずしも二股状の分岐部20,20を備えなくてもよい(この場合には、連結具28は不要となる)。
【0088】
<3.変形例等>
なお、実施形態は、上記内容に限定されるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、移乗補助装置100の構成は、回動部102を備える構成に限定されるものではなく、回動部102を備えない構成であってもよい。
【0089】
また、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」等とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」等という意味である。
【0090】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」等とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」等という意味である。
【0091】
また、以上既に述べた以外にも、上記各実施形態や変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0092】
その他、一々例示はしないが、上記各実施形態や変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。