(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状信号伝送媒体の端末部分が導電性シェルから突出するように取り付けられた状態で、相手コネクタに差し込まれて嵌合されるように構成されたプラグコネクタにおいて、
前記導電性シェルが、前記板状信号伝送媒体の端末部分が挿入される媒体収容空間を備えるように形成されているとともに、
前記導電性シェルには、前記相手コネクタへの差し込み嵌合時に当該相手コネクタの一部に係合して差し込み嵌合状態を保持する嵌合ロック部と、前記相手コネクタに対する前記嵌合ロック部の係合状態を解除するように操作されるロック解除部と、が一体的に設けられていることを特徴とするプラグコネクタ。
前記導電性シェルには、前記嵌合ロック部及びロック解除部の過剰変位を規制するロックストッパ及びロック解除ストッパが一体的に設けられていることを特徴とする請求項1記載のプラグコネクタ。
前記ロックストッパは、前記ロック解除部による前記ロック部用アームの過剰変位を規制する解除規制部と、前記嵌合ロック部が係合状態にある状態で前記相手コネクタが抜去されようとした際における前記ロック部用アームの誤変位を規制する無理抜き規制部と、を備えていることを特徴とする請求項5記載のプラグコネクタ。
前記導電性シェルには、前記板状信号伝送媒体に形成された穴部及び切欠き部にそれぞれ係合することで、当該板状信号伝送媒体の挿入位置を規制する第1及び第2の位置規制片が一体的に設けられていることを特徴とする請求項1記載のプラグコネクタ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、部品点数を低減した簡易な構成で、相手コネクタに対する電気的な接続性を良好かつ効率的に維持することが出来るようにしたプラグコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明にかかるプラグコネクタにおいては、 板状信号伝送媒体の端末部分が導電性シェルから突出するように取り付けられた状態で、相手コネクタに差し込まれて嵌合されるように構成されたプラグコネクタにおいて、前記導電性シェルが、前記板状信号伝送媒体の端末部分が挿入される媒体収容空間を備えるように形成されているとともに、前記導電性シェルには、前記相手コネクタへの差し込み嵌合時に当該相手コネクタの一部に係合して差し込み嵌合状態を保持する嵌合ロック部と、前記相手コネクタに対する前記嵌合ロック部の係合状態を解除するように操作されるロック解除部と、が一体的に設けられている。
【0009】
このような請求項1にかかる発明によれば、絶縁基体(絶縁ハウジング)等が省略されることによって生産性の向上が図られるとともに、相手コネクタへの差し込み嵌合時には嵌合ロック部が相手コネクタの一部に係合することで、従来のような操作レバーの回動操作を行うことなく差し込み嵌合状態が安定的に保持されることとなり、想定外の外力付加や使用が行われた際にあっても、電気的な接続状態が嵌合ロック部により良好に維持され、同時に嵌合作業の効率化が図られる。
【0010】
また、請求項2にかかる発明のように、前記導電性シェルには、前記相手コネクタに対する差し込みの方向を規制する挿入ガイド部が一体的に設けられていることが望ましい。
【0011】
このような請求項2にかかる発明によれば、相手コネクタへの差し込み操作が挿入ガイド部によって安定的に行われる。
【0012】
さらに、請求項3にかかる発明のように、前記導電性シェルは、単一の導電性金属板の折曲げ体から形成されていることが望ましい。
【0013】
このような請求項3にかかる発明によれば、導電性シェルの部品点数が低減されることによって、生産性の向上が更に図られる。
【0014】
さらにまた、請求項4にかかる発明のように、前記導電性シェルが、前記板状信号伝送媒体の端末部分を挟んで重合するように折り返されて形成されたものであって、 その導電性シェルの折り返し部分に前記挿入ガイド部が形成されているとともに、前記導電性シェルの折り返し部分と反対側の自由端縁部には、ロック部用アーム及びロック解除用アームが片持ち状をなして延出するように設けられ、それらロック部用アーム及びロック解除用アームにおける片持ち状延出部分の先端側に、前記嵌合ロック部及びロック解除部が弾性変位可能に設けられていることが望ましい。
【0015】
また、請求項5にかかる発明のように、前記導電性シェルには、前記嵌合ロック部及びロック解除部の過剰変位を規制するロックストッパ及びロック解除ストッパが一体的に設けられていることが望ましい。
【0016】
このような請求項4及び請求項5にかかる発明によれば、嵌合ロック部及びロック解除部の弾性変位が過度に行われることが防止される。
【0017】
さらに、請求項6にかかる発明のように、前記ロックストッパは、前記ロック解除部による前記ロック部用アームの過剰変位を規制する解除規制部と、前記嵌合ロック部が係合状態にある状態で前記相手コネクタが抜去されようとした際における前記ロック部用アームの誤変位を規制する無理抜き規制部と、を備えていることが望ましい。
【0018】
このような請求項6にかかる構成によれば、ロック解除操作が行われた際における嵌合ロック部及びロック部用アームの過度な変位がロックストッパの解除規制部によって規制が行われるとともに、嵌合ロック部が相手コネクタ側に係合されているにもかかわらず相手コネクタが誤って抜去されようとした際における嵌合ロック部及びロック部用アームの誤変位が無理抜き規制部によって防止される。
【0019】
さらにまた、請求項7にかかる発明のように、前記導電性シェルには、前記板状信号伝送媒体に形成された穴部及び切欠き部にそれぞれ係合することで、当該板状信号伝送媒体の挿入位置を規制する第1及び第2の位置規制片が一体的に設けられていることが望ましい。
【0020】
加えて、請求項8にかかる発明のように、前記第1及び第2の位置規制片は、前記板状信号伝送媒体の挿入方向において並列するように配置されていることが望ましい。
【0021】
このような請求項7及び請求項8にかかる構成によれば、導電性シェル内に挿入された板状信号伝送媒体が、第1及び第2の位置規制片の係止作用によって安定的に保持される。
【発明の効果】
【0022】
上述のように本発明は、板状信号伝送媒体の端末部分が挿入される媒体収容空間を備えた導電性シェルに、相手コネクタへの差し込み嵌合時に当該相手コネクタの一部に係合して差し込み嵌合状態を保持する嵌合ロック部と、相手コネクタに対する嵌合ロック部の係合状態を解除するように操作されるロック解除部とを一体的に設けることで、絶縁基体(絶縁ハウジング)等を省略して生産性の向上が図られるとともに、想定外の外力が付与され或いは想定外の環境下での使用が行われた際にあっても電気的な接続状態が嵌合ロック部により良好に維持されるように構成したものであるから、部品点数を低減した簡易な構成で、相手コネクタに対する電気的な接続性を良好に維持することが出来、電気コネクタの生産性及び信頼性を低廉かつ大幅に高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[電気コネクタ装置について]
【0025】
図1〜
図10に示された本発明の一実施形態にかかるプラグコネクタ10には、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)や、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる板状信号伝送媒体PSの端末部分が連結され、そのように板状信号伝送媒体PSの端末部分が連結されたプラグコネクタ10が、
図11〜
図16に示されているように、相手コネクタとしてのリセプタクルコネクタ20に略水平方向に差し込まれることにより嵌合状態になされることによって電気コネクタ装置が構成される。
【0026】
上述した相手コネクタとしてのリセプタクルコネクタ20は、図示を省略した印刷配線基板上に形成された配線パターンに半田接続された実装状態で使用され、これらのプラグコネクタ10と、リセプタクルコネクタ20とからなる電気コネクタ装置を介して、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSが、印刷配線基板側に電気的に接続されるようになっている。
【0027】
以下において、印刷配線基板の表面の延在方向を「水平方向」とし、その印刷配線基板の表面に垂直な方向を「高さ方向」とする。また、プラグコネクタ10においては、リセプタクルコネクタ20に対する嵌合時の差し込み方向における先端側の端縁部を「前端縁部」とし、それとは反対側の板状信号伝送媒体PSの端末部分が差し込まれて連結される側の端縁部を「後端縁部」とする。また、リセプタクルコネクタ20においては、プラグコネクタ10が嵌合時に差し込まれる側の端縁部を「前端縁部」、その反対側の端縁部を「後端縁部」とする。さらに、これらのプラグコネクタ10及びリセプタクルコネクタ20は、細長状をなすように延在しているが、その延在方向を「コネクタ長手方向」と呼ぶこととする。
【0028】
さらにまた、プラグコネクタ10の後端縁部から後方側に延出している板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSは、上述した「コネクタ長手方向」を「板幅方向」として連結されているとともに、その「板幅方向」に直交する方向に長尺状をなして延在する板状部材から構成されていて、複数本の信号線及びグランド線(シールド線)が、「板幅方向」に沿って多極状をなすように隣接して配列されている。
【0029】
[プラグコネクタについて]
このような電気コネクタ装置の一方側の電気コネクタを構成している本発明にかかるプラグコネクタ10は、一般的な電気コネクタが備えている合成樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁基体(絶縁ハウジング)を有しておらず、電磁波ノイズ等を遮断するための導電性シェル11の内部に形成された媒体収容空間に、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの端末部分が挿入されて固定された構成になされている。
【0030】
このときの導電性シェル11は、単一の導電性金属板を適宜に折曲加工した折曲げ体から形成されており、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの端末部分を上下から挟むように構成された上部シェル体11a及び下部シェル体11bを備えた一体的な構造体から形成されている。これらの上部シェル体11a及び下部シェル体11bの詳細な構造については後段において説明する。
【0031】
一方、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSは、上述したように板幅方向に沿って複数本の信号線及びグランド線が、可撓性を有する絶縁被覆材の内部に多極状をなすように配列されているが、本実施形態における絶縁被覆部材としては、上述した信号線及びグランド線上に下層を構成するように貼着された絶縁性カバーフィルムが用いられているとともに、さらにその絶縁性カバーフィルム上からシールドテープが上層を構成するように積層された構造になされている。
【0032】
そして、このような絶縁被覆部材は、プラグコネクタ10の媒体収容空間内に挿入される先端縁側の一定領域で剥がされた状態になされており、それによって多極状の電極部が形成されている。すなわち、当該板状信号伝送媒体PSの端末部分においては、複数本のグランド線が上面側に露出された状態になされているとともに、多数本の信号線が下面側に露出された状態になされていて、それらの信号線及びグランド線の露出部分によって複数の接続端子部(コンタクト部)PS1からなる多極状電極部が形成されている。なお、これらの接続端子部PS1を除いた領域(非露出側部分)には絶縁被覆材が被着されている。
【0033】
このような複数の接続端子部PS1を有する板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの端末部分は、上述した導電性シェル11の内部に挿入されて固定されるが、当該板状信号伝送媒体PSの固定状態においては、特に
図6に示されているように、接続端子部(多極状電極部)PS1が、導電性シェル11の前端縁から前方に向かって突出するように配置され、相手コネクタとしてのリセプタクルコネクタ20内に挿入されて電気的な接触が行われるようになっている。
【0034】
また、このような板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの板幅方向における両側端縁部分には、上述した接続端子部(多極状電極部)PS1の両側外方部分に、位置決め穴部PS2がそれぞれ設けられているとともに、それらの位置決め穴部PS2のやや後方側に相当する部分には、位置決め切欠き部PS3がそれぞれ設けられている。位置決め穴部PS2は、板状信号伝送媒体PSの絶縁被覆部材を貫通するように形成された平面矩形状を有する角穴から構成されており、後述するようにプラグコネクタ10の導電性シェル11に形成された第1の位置規制片11rが、板状信号伝送媒体PSの位置決め穴部PS2に食い込むように挿通されることで係合される構成になされている。
【0035】
また、位置決め切欠き部PS3は、上述した位置決め穴部PS2に対して、プラグコネクタ10の挿入方向の後方側にやや離れた位置に並列するように配置されているが、当該位置決め切欠き部PS3は、板状信号伝送媒体PSの幅方向の両側側縁部分において、平面略矩形状をなしてコネクタ中心側に向かって切り込まれた切り欠き部から形成されている。この位置決め切欠き部PS3に対しては、後述するようにプラグコネクタ10の導電性シェル11に形成された第2の位置規制片11sが設けられており、その導電性シェル11側の第2の位置規制片11sが、板状信号伝送媒体PS側の位置決め切欠き部PS3の切り欠き空間内に挿通され、当該位置決め切欠き部PS3の切り欠き空間を形成している端縁部に係合されるようになっている。
【0036】
このように、プラグコネクタ10側に設けられた第1の位置規制片11r及び第2の位置規制片11sが、板状信号伝送媒体PS側に設けられた位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3に各々係合されることによって、板状信号伝送媒体PSの全体が、予め定められた所定の位置に保持されることとなる。
【0037】
[導電性シェルについて]
前述したように導電性シェル11は、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの端末部分を上下から挟む導電性の金属板状部材からなる上部シェル体11a及び下部シェル体11bの重合体から構成されている。これらの上部シェル体11a及び下部シェル体11bにおける前端縁部分は、コネクタ長手方向の両側部分に配置された一対の帯板状部材からなる挿入ガイド部11c,11cにより一体的に繋げられている。これらの挿入ガイド部11c,11cは、上述した上部シェル体11aと下部シェル体11bとの間において、側面視において「U」字形状を90°回転した形状又は略「C」字形状に折り返された曲げ形状をなすように延在している。
【0038】
一方、このような導電性シェル11の折り返し部に設けられた挿入ガイド部11c,11cに対応して、相手コネクタであるリセプタクルコネクタ20の前端縁部分には、図示を省略したガイド受け部が傾斜面をなすように形成されており、プラグコネクタ10をリセプタクルコネクタ20に挿入・嵌合する際に、当該挿入ガイド部11c,11cがガイド受け部に当接することによって、プラグコネクタ10の差し込み挿入方向が予め定められた方向に規制されて案内が行われるようになっている。
【0039】
また、上述したように一対の挿入ガイド部11c,11cを介して、上部シェル体11aと下部シェル体11bとが一体的に連結されているが、これらの上部シェル体11a及び下部シェル体11b同士が対向している領域には、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSを挿入するための媒体収容空間が形成されている。
【0040】
ここで、それらの上部シェル体11aと下部シェル体11bとは、上述した挿入ガイド部11c,11cを中心として開閉される構成になされている。より具体的には、それらの上部シェル体11aと下部シェル体11bとは、挿入ガイド部11c,11cと反対側の自由端縁部分同士が上下方向に離間した初期状態である開放状態と、互いに近接した閉塞状態との間において揺動される構成になされている。そして、
図1〜
図6に示されているように、導電性シェル11の初期状態である開放状態になされた上部シェル体11aと下部シェル体11bとの間の媒体収容空間内に、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSが、接続端子部PS1側から挿通されるようになっている。
【0041】
一方、前述したように挿入ガイド部11c,11cは、導電性シェル11の前端側部分における両側部分に配置されているが、これらの両挿入ガイド部11c,11c同士の間部分には、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの接続端子部PS1が貫通する横長状開口部が、コネクタ長手方向に沿って細長状に延在するように形成されている。このように導電性シェル11の前端縁部分に設けられた横長状開口部に対して、その反対側に対向する部分、つまり媒体収容空間における後端側の部分には、板状信号伝送媒体PSの位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3を含めた当該板状信号伝送媒体PSの板幅全体を挿入可能とする挿入開口部がコネクタ長手方向に細長状に延在するように形成されている。
【0042】
そして、その導電性シェル11における後方側の挿入開口部を通して、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの接続端子部PS1が媒体収容空間に挿入された後、さらに前方側に挿入されていくことによって、当該板状信号伝送媒体PSの接続端子部PS1が、上述した横長状開口部を通して前方側に向かって突き出すように突出する。すなわち、導電性シェル11に設けられた横長状開口部は、板状信号伝送媒体PSを媒体収容空間内に挿入し終える側の前端部分に形成されており、当該導電性シェル11の媒体収容空間内に挿通された板状信号伝送媒体PSは、位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3を含めた端末部分が媒体収容空間内に収納されるとともに、接続端子部PS1が横長状開口部から外方側に向かって露出される構成になされている。
【0043】
また、上述した導電性シェル11の上部シェル体11a及び下部シェル体11bにおけるコネクタ長手方向の両側端縁部分には、当該両シェル体11a,11b同士の固定手段が設けられている。より具体的には、上部シェル体11a側の両側端縁部分の各々には、一対の上側固定側板11d,11eが、コネクタ前後方向に所定の間隔をあけて設けられているとともに、下部シェル体11b側の両側端縁部分の各々には、上述した上側固定側板11d,11eに対応した位置に、一対の下側固定側板11f,11gが設けられている。これら上下の固定側板11d〜11gは、上部シェル体11a及び下部シェル体11bにおけるコネクタ長手方向の端縁部分を、各々下方側及び上方側に向かって略直角に折り曲げ形成した板状片から形成されている。
【0044】
そして、前述したように上部シェル体11aと下部シェル体11bとを重ね合わせるようにして、挿入ガイド部11cを側面視において「U」字形状を90°回転した形状又は略「C」字形状に折り曲げ、それによって導電性シェル11を閉塞状態とした際に、上述した上側固定側板11d,11eが下側固定側板11f,11gの内側部分に重合する。このとき、上側固定側板11dと下側固定側板11gに設けられた係合突起が、上側固定側板11eと下側固定側板11fに設けられた係止穴に嵌合され、それによって上部シェル体11aと下部シェル体11bとが強固に固定されるとともに、そのような閉塞状態で固定された上部シェル体11aと下部シェル体11bとの間に前述した媒体収容空間が形成されるようになっている。
【0045】
さらに、下部シェル体11bのコネクタ後端縁部分、すなわち導電性シェル11の折り返し部分である挿入ガイド部11cの反対側部分には、一対の帯板状部材からなるロック部用アーム11h,11hが、コネクタ長手方向の両側部分からコネクタ前方側に向かって片持ち状をなすように延出している。これらの各ロック部用アーム11hは、細長の帯板状部材から形成されており、前述した挿入ガイド部11cの近傍まで延びている先端側の自由端部分には、嵌合ロック部11iが一体的に設けられている。この嵌合ロック部11iは、当該嵌合ロック部11iを支持しているロック部用アーム11hとともに導電性シェル11と同一の金属板材料を打ち抜くようにして形成されている。
【0046】
このときの各嵌合ロック部11iは、上述したロック部用アーム11hのコネクタ前端側(先端側)の自由端部分において略直角に折り曲げられて、コネクタ長手方向の外方側に向かって張り出すように形成されている。これらの各嵌合ロック部11iは、平面視において略三角形状をなすように形成されており、前方側から後方側に向かって連続的に幅広となる傾斜状案内辺部を有しているとともに、その傾斜案内辺部の頂部から下方に向かって略直線状に下降する直線状保持辺部を有している。そして、相手コネクタであるリセプタクルコネクタ20に対してプラグコネクタが挿入・嵌合された際に、上述した嵌合ロック部11iの傾斜状案内辺部が、リセプタクルコネクタ20側に設けられたロック係止部(図示省略)に当接し、当該嵌合ロック部11iの全体が、ロック部用アーム11hの弾性に抗して弾性変位した後に元の位置に復帰することで、上述した嵌合ロック部11iの直線状保持辺部が、リセプタクルコネクタ20側に設けられたロック係止部(図示省略)に係合され、それによって両コネクタ10,20同士の嵌合状態が保持されるようになっている。
【0047】
このとき、特に
図6に示されているように、上述した導電性シェル11には、嵌合ロック部11iの弾性変位量を規制するロックストッパ11jが一体的に設けられている。このロックストッパ11jは、嵌合ロック部11iを支持しているロック部用アーム11hの延在方向における途中位置に設けられており、当該ロック部用アーム11hの下端縁部から下方に向かって突出する板状部材から形成されている。一方、このようなロックストッパ11jに対応して、前述した下部シェル体11bのコネクタ長手方向における両端縁部分には、平面略矩形状をなすように切り欠き形成されたストッパ受け部11kが設けられており、当該ストッパ受け部11kの内方空間にロックストッパ11jが収容配置された構成になされている。
【0048】
すなわち、上述したロックストッパ11jは、ストッパ受け部11kに収容されたときの位置規制作用によって、嵌合ロック部11iの過剰変位及び誤変位を規制するものであるが、そのロックストッパ11jによる嵌合ロック部11iの規制作用は、コネクタ長手方向と、それに直交する方向の2方向に機能することとなる。すなわち、後述するロック解除部11nによりロック部用アーム11hがコネクタ中心側に過剰に押し込まれようとした場合にあっては、ロックストッパ11jがストッパ受け部11kに対してコネクタ中心側に向かって当接することにより同方向に位置規制が行われる。また、嵌合ロック部11iが係合状態にある状態において、相手コネクタとしてのリセプタクルコネクタ20からリセプタクルコネクタ10が無理に抜去されようとする場合にあっては、ロックストッパ11jがストッパ受け部11kに対してコネクタ前方側に向かって当接し、それによって同方向の位置規制が行われる。
【0049】
このように、本実施形態におけるロックストッパ11jは、ロック解除時におけるロック部用アーム11hの過剰変位を規制する解除規制部と、ロック状態でのリセプタクルコネクタ20の無理抜き時におけるロック部用アーム11hの誤変位を規制する無理抜き規制部とを備えた構成になされている。
【0050】
一方、上部シェル体11aのコネクタ後端縁部分、すなわち導電性シェル11の折り返し部分である挿入ガイド部11cの反対側におけるコネクタ長手方向の両側部分からは、一対の帯板状部材からなる解除部用アーム11m,11mが、コネクタ前方側に向かって片持ち状をなすように延出している。これらの各解除部用アーム11mは、細長帯板状部材から形成されており、コネクタ長手方向に弾性的に変位するように配置されている。当該解除部用アーム11mのコネクタ前後方向における略中央部分まで延びた先端側の自由端部分には、ロック解除操作部11nが一体的に設けられている。このロック解除操作部11nは、当該ロック解除操作部11nを支持している解除部用アーム11mとともに本発明にかかる「ロック解除部」を構成するものであるが、導電性シェル11と同一の金属板材料を打ち抜くようにして一体的に形成されている。
【0051】
このときのロック解除操作部11nは、上述したロック部用アーム11hに対してコネクタ長手方向の外方側に対向するように配置されており、そのロック解除操作部11nから、コネクタ中心側に向かって突出する解除作動板11pの先端縁部が、上述したロック部用アーム11hの途中部分に対して、コネクタ長手方向の外方側に近接するように配置されている。
【0052】
そして、コネクタ長手方向における両側一対のロック解除操作部11n,11nを、作業操作者の、例えば親指と人差し指との間に挟むようにして把持し、両ロック解除操作部11n,11n同士を互いに近付けるようにコネクタ中心側に向かって押し込むと、当該ロック解除操作部11nの解除作動板11pの先端部が、ロック部用アーム11hの途中部分をコネクタ中心側に押し込むこととなる。そして、そのときのロック部用アーム11hの弾性変位に従って、上述した嵌合ロック部11iがコネクタ中心側に移動して、リセプタクルコネクタ20のロック係止部(図示省略)から嵌合ロック部11iが外れてロック解除状態になされる。このようなロック解除状態において、プラグコネクタ10がリセプタクルコネクタ20から抜去可能な状態になされる。
【0053】
一方、このようなロック解除操作部11nに対応して、当該ロック解除操作部11nの弾性変位量を規制するロック解除ストッパ11qが、導電性シェル11に一体的に設けられている。このロック解除ストッパ11qは、特に
図5に示されているように、前述した上側固定側板11eが兼用するようにして設けられており、上部シェル体11aのコネクタ長手方向における両端縁部分から略直角下方に向かって折り曲げ形成された板状部材から形成され、上述したロック解除操作部11nに対してコネクタ長手方向の内方側から対面する配置関係になされている。
【0054】
そして、上述したようにロック解除操作部11nがコネクタ中心側に押し込まれた際に、当該ロック解除操作部11nの押し込み量が過度になる手前において、ロック解除ストッパ11qに対してロック解除操作部11nが当接する位置関係になされていることで、ロック解除操作部11nの押し込み操作時における過剰な弾性変位が規制されるようになっている。
【0055】
さらに、導電性シェル11の上部シェル体11aには、前述したようにプラグコネクタ10内に挿入された板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3に対応する位置に、第1の位置規制片11r及び第2の位置規制片11sが一体的に形成されている。これらの第1の位置規制片11r及び第2の位置規制片11sは、上部シェル体11aの一部をコネクタ内方側である下方側に向かって略直角に切り起こすようにして形成されており、当該第1の位置規制片11r及び第2の位置規制片11sが、導電性シェル11の閉塞時に、板状信号伝送媒体PS側に設けられた位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3に係合し、それによって板状信号伝送媒体PSの全体が、予め定められた所定の位置に保持されるようになっている。
【0056】
さらにまた、導電性シェル11の上部シェル体11aには、複数体(5体)のグランドコンタクト11tが形成されている。それらの各グランドコンタクト11tは、上部シェル体11aから、下方側の媒体収容空間に向かって片持ち状をなして突出するように切り起こし加工により形成されている。これらの各グランドコンタクト11tは、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSのグランド端子に接触する配置関係になされており、板状信号伝送媒体PSが最終位置まで挿入された際に、グランド接続が行われるようになっている。
【0057】
[リセプタクルコネクタについて]
一方、電気コネクタ装置における他方の相手コネクタを構成しているリセプタクルコネクタ20は、特に
図11〜
図16に示されているように、合成樹脂等の絶縁材料によって形成された絶縁ハウジング21を有しているとともに、その絶縁ハウジング21の外表面を覆って外部からの電磁波ノイズ等を遮断する導電性シェル22を備えている。
【0058】
絶縁ハウジング21には、複数の導電コンタクト23が、コネクタ長手方向に沿って多極状をなすようにして適宜のピッチ間隔で配列されている。それらの各導電コンタクト23は、弾性を有するビーム状の金属材料が屈曲されて形成されており、前記絶縁ハウジング21に設けられた溝状部内に前後方向に延在するように配置されている。これらの各導電コンタクト23は、隣接するもの同士が略同一形状をなすように形成されている。
【0059】
一方、前記各導電コンタクト23の後端側部分には、下方側に向かって階段状をなすように折り曲げ形成された接続脚部23aが設けられており、その接続脚部23aが、図示を省略した印刷配線基板上に形成された信号伝送用の印刷配線パターン(導電路)上に半田接合されて電気的に接続されている。このときの半田接合は、多極配列方向の全てのものに対して一括して行われる。
【0060】
また、上述した各導電コンタクト23の前端側部分には、図示を省略した接点部が設けられており、それらの各接点部が、リセプタクルコネクタ20に嵌合されたプラグコネクタ10の接続端子部PS1の各接続端子に対して下方側から弾性的に接触される配置関係になされており、それによって前記接点部から接続脚部を介して印刷配線基板に至る信号伝送回路が形成される構造になされている。
【0061】
さらに、導電性シェル22の上面側部分には、複数体のグランドコンタクト22aがコネクタ長手方向に並列するように設けられている。これらの各グランドコンタクト22aは、導電性シェル22の前方側の端縁部からコネクタ内方側(下方側)に折り返すように形成されており、当該リセプタクルコネクタ20に嵌合されたプラグコネクタ10の上部シェル体11aの上面部分に対して弾性的に接触する構成になされている。
【0062】
また、その導電性シェル22におけるコネクタ長手方向の両端部分には、一対のホールドダウン22b,22bが設けられており、各ホールドダウン22bの下端縁からコネクタ長手方向の外方側に向かって略水平に延出する基板接続部が、印刷配線基板上に形成された接地用の印刷配線パターン(導電路)上に半田接合されて電気的に接続され、それによって、導電性シェル22から印刷配線基板に至るグランド回路が形成されるとともに、リセプタクルコネクタ20の全体が固定されるようになっている。
【0063】
このような実施形態にかかるプラグコネクタ10においては、まず板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの端末部分が、上部シェル体11aと下部シェル体11bとが開放状態にある導電性シェル11の後端側挿入開口部を通して媒体収容空間内に挿入される(
図5及び
図6参照)。次いで、導電性シェル11の上部シェル体11aと下部シェル体11bとが閉塞状態になされることで(
図7〜
図10参照)、プラグコネクタ10側に設けられた第1の位置規制片11r及び第2の位置規制片11sが、板状信号伝送媒体PS側の位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3に係合し、板状信号伝送媒体PSの全体が予め定められた所定の位置に保持される。その際、板状信号伝送媒体PSに設けられた位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3は、当該板状信号伝送媒体PSの挿入方向において並列するように配置されていることから、導電性シェル11内に挿入された板状信号伝送媒体PSが、位置決め穴部PS2及び位置決め切欠き部PS3の係止作用によって安定的に保持される。
【0064】
上述したようにして板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSを連結されたプラグコネクタ10は、相手コネクタとしてのリセプタクルコネクタ20の内方に向かって差し込むようにして挿入される(
図11〜
図16参照)。このように、本実施形態にかかるプラグコネクタ10においては、絶縁基体(絶縁ハウジング)等が省略されており、部品点数の低減等により生産性の向上が図られるようになっている。
【0065】
また、上述したリセプタクルコネクタ20に対するプラグコネクタ10の差し込み挿入操作は、挿入ガイド部11cによる差し込み方向の規制案内作用によって安定的に行われる。そして、そのリセプタクルコネクタ20への差し込み嵌合時においては、嵌合ロック部11iが、リセプタクルコネクタ20の一部に係合することで、従来のような操作レバーの回動操作を行うことなく、差し込み嵌合状態が安定的に保持される。そして、電気コネクタ装置に対して想定外の外力が付与され或いは想定外の環境下で使用が行われた際にあっても、電気コネクタ装置における電気的な接続状態が嵌合ロック部により良好に維持され、同時に嵌合作業の効率化が図られる。
【0066】
一方、本実施形態にかかるプラグコネクタ10は、導電性シェル11の全体が単一の導電性金属板の折曲げ体から形成されていることから、導電性シェル11自体においても部品点数が低減されており、それによって生産性の向上が更に図られる。
【0067】
さらに、本実施形態においては、ロックストッパ11j及びロック解除ストッパ11qによって、嵌合ロック部11i及びロック解除操作部11nの弾性変位が過度に行われることが防止される。より具体的には、まずロック解除操作部11nがコネクタ中心側に押し込まれた際にあっては、当該ロック解除操作部11nが同方向にロック解除ストッパ11qに当接するとともに、ロックストッパ11jの解除規制部が、ストッパ受け部11kに対してコネクタ中心側に向かって当接することとなる。このようにして、ロック解除操作が行われた際における嵌合ロック部11i及びロック部用アーム11hの過度な変位が規制される。
【0068】
また、嵌合ロック部11iの係合状態において、リセプタクルコネクタ(相手コネクタ)20からプラグコネクタ10が無理に抜去されようとした場合には、ロックストッパ11jの抜去規制部が、ストッパ受け部11kに対してコネクタ前方側に向かって当接し、それによって同方向の位置規制が行われることとなり、これによって、いわゆる無理抜き時における嵌合ロック部11i及びロック部用アーム11hの過度な変位が規制される。
【0069】
さらにまた、本実施形態において採用された導電性シェル11は、上部シェル体片11a及び下部シェル体片11bを含む全体が一体的に形成されていることから、複数体の導電性シェル11,11,・・・が、例えばキャリア等によって連続的に繋げられた中間工程を採用することが可能となっており、このようにすれば、導電性シェル11の製造が一括して行われることから、極めて効率的な製造が可能となる。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0071】
例えば、上述した実施形態においては、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSに設けられた位置決め切欠き部PS3が、板幅方向の内方側に窪む切り欠き形状になされているが、板幅方向外方へ突出する形状とすることも可能であり、また板厚方向に突出する柱状形状のものや、窪む穴形状とすることも可能である。
【0072】
また、上述した実施形態におけるグランド端子は、板状信号伝送媒体(FPC,FFC)PSの片面上に形成されているが、信号端子の外側に配置した構成や、その他の配置関係とすることも当然に可能である。また、グランド端子を廃止した信号端子のみの構成とすることもできる。
【0073】
さらにまた、上述した実施形態は、水平嵌合型のプラグコネクタに対して本発明を適用したものであるが、垂直嵌合型のプラグコネクタに対しても同様に適用することができる。