特許第6016007号(P6016007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 桜井 孝幸の特許一覧

<>
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000002
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000003
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000004
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000005
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000006
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000007
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000008
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000009
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000010
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000011
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000012
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000013
  • 特許6016007-マイクロ水力発電システム 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016007
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】マイクロ水力発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/06 20060101AFI20161013BHJP
   F03B 17/06 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   F03B13/06
   F03B17/06
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-45935(P2012-45935)
(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公開番号】特開2012-193730(P2012-193730A)
(43)【公開日】2012年10月11日
【審査請求日】2015年2月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-43654(P2011-43654)
(32)【優先日】2011年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511054422
【氏名又は名称】桜井 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147740
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 俊
(72)【発明者】
【氏名】桜井 孝幸
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−136168(JP,U)
【文献】 米国特許第06051892(US,A)
【文献】 特開昭58−131372(JP,A)
【文献】 特開平07−336967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/06
F03B 17/06
H02K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

水を貯留する貯水槽と、前記貯水槽の下方に配置され、一端が前記貯水槽に連通し他端に向かって下降している導水管と、一端が該導水管の前記他端に連通しており、他端に向かって上昇している復水管と、前記導水管の途中に設けられ、該導水管を流れる水流を利用して発電する複数の発電ユニットと、前記復水管の前記他端に接続されており、該復水管内の水を前記貯水槽内に排出するポンプと、前記複数の発電ユニットに接続されており、該複数の発電ユニットからの電力によって充電されると共に前記ポンプに電力を供給する電源装置とを備えており、前記ポンプが前記復水管内の水を排出することによって生じる吸引力により、該復水管及び前記導水管内に一様な吸引流を発生させ、前記導水管を流れる前記水流を形成するように構成されているマイクロ水力発電システムであって、
前記複数の発電ユニットの各々は、前記水流によって回転するように構成された水車羽根を有する水車部と、該水車羽根の回転力を電気に変換する発電機部とを備えており、
前記発電機部は、複数の第1の極性の永久磁石を有する回転磁石板と、該複数の第1の極性の永久磁石の一部に対向し静止している複数の第1の極性の永久磁石と、一端が前記回転磁石板の前記C永久磁石の一部に対向し静止している複数の磁心付コイルと、該複数の磁心付コイルの他端に対向し静止している複数の第2の極性の永久磁石を備えており、該静止している複数の第1の極性の永久磁石によってコギングトルクを減少させるように構成されていることを特徴とするマイクロ水力発電システム。
【請求項2】
水を貯留する貯水槽と、前記貯水槽の下方に配置され、一端が前記貯水槽に連通し他端に向かって下降している導水管と、一端が該導水管の前記他端に連通しており、他端に向かって上昇している復水管と、前記導水管の途中に設けられ、該導水管を流れる水流を利用して発電する複数の発電ユニットと、前記復水管の前記他端に接続されており、該復水管内の水を前記貯水槽内に排出するポンプと、前記複数の発電ユニットに接続されており、該複数の発電ユニットからの電力によって充電されると共に前記ポンプに電力を供給する電源装置とを備えており、前記ポンプが前記復水管内の水を排出することによって生じる吸引力により、該復水管及び前記導水管内に一様な吸引流を発生させ、前記導水管を流れる前記水流を形成するように構成されているマイクロ水力発電システムであって、前記ポンプは、前記復水管内の水面と前記貯水槽内の水面との高さの差だけ前記復水管内の水を揚水するように構成されており、
前記複数の発電ユニットの各々は、前記水流によって回転するように構成された水車羽根を有する水車部と、該水車羽根の回転力を電気に変換する発電機部とを備えており、
前記発電機部は、複数の第1の極性の永久磁石を有する回転磁石板と、該複数の第1の極性の永久磁石の一部に対向し静止している複数の第1の極性の永久磁石と、一端が前記回転磁石板の前記C永久磁石の一部に対向し静止している複数の磁心付コイルと、該複数の磁心付コイルの他端に対向し静止している複数の第2の極性の永久磁石を備えており、該静止している複数の第1の極性の永久磁石によってコギングトルクを減少させるように構成されていることを特徴とするマイクロ水力発電システム。
【請求項3】
前記静止している複数の第1の極性の永久磁石と前記静止している複数の磁心付コイルは交互に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロ水力発電システム。
【請求項4】
前記回転磁石板に配置された永久磁石の数は、前記静止している第1の極性の永久磁石の数と前記静止している磁芯付コイルの数との和に等しいことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のマイクロ水力発電システム。
【請求項5】
前記電源装置は、前記複数の発電ユニットによって生成された電力を充電可能な蓄電池を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のマイクロ水力発電システム。
【請求項6】
前記発電ユニットは導水管内の水流により回転する水車羽根の回転力を電力に変換する機構であり、前記水車羽根は導水管の側壁に取り付けられたハウジング内に設置され、前記水車羽根の一部は導水管内に突出して、導水管内の水流により回転駆動するように構成され、ハウジング内部は導水管の水流により負圧になっていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のマイクロ水力発電システム。
【請求項7】
前記発電ユニットは導水管内の水流により回転する水車羽根の回転力を電力に変換する機構であり、前記導水管の内側に突出した突出部を設け、当該突出部の下流側に水車羽根が前記導水管内に配置されており、前記突出部によって偏移された水流によって水車羽根が回転駆動するように構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のマイクロ水力発電システム。
【請求項8】
前記水車羽根は回転シャフトの回りに45°の等角度間隔で8枚の羽根で構成されていることを特徴とする、請求項6または7に記載のマイクロ水力発電システム。
【請求項9】
前記導水管は、傾斜部、垂直部、水平部の組合せから構成されている屈曲管路であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載のマイクロ水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模の水力発電システムに係り、特に、上方に設けた貯水槽から落下し配管を通過する水流を利用して発電を行う揚水式のマイクロ水力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水力発電システムは、高所から水を落下させて、落下水の速度衝撃と、水の重力圧力とにより水車を回転させ、水車の軸回転力を発電機に伝達して発電を行う構成を有している。水車を回転した後の落下水は、位置エネルギを失っているため、放水される。
【0003】
近年、建築物に設けられた水道管、工場の給水管や排水管等の流水路を流れる流水の水力を利用する小規模の発電システムが提案され、注目されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の発電システムは、建築物の外部に設けられている上水道管に接続されるポンプと、建築物の屋上に設置された屋上貯水槽と、ポンプと屋上貯水槽とを接続する水路と、屋上貯水槽から建築物の任意の位置に上水を導く水路と、水路の途中に設けた複数の発電機とを備えている。ポンプにより汲み上げた水が建築物内で使用される際に、屋上貯水槽からの落水により発電が行われる。
【0005】
また、この発電システムでは、発電機が発電した電気を蓄える蓄電装置を設けている。得られた電気エネルギを建築物で消費される電気エネルギの一部に充当することで、省電力化が図れ、建築物の維持コストを低減することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−273466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発電システムにおいては、ポンプの駆動に商用電源を利用しているため、地震等の災害時に停電した場合は継続的に発電することができなかった。また、ポンプが建築物の地下に配置されているため、水を屋上貯水槽に汲み上げるために大量のエネルギが必要であった。さらに、建築物内で水を使用する際は、屋上貯水槽からの落水により発電が可能となるが、水を使用していないときには発電することができなかった。さらにまた、建築物内で使用された後の水は、排水として排出されるのみであり、全く再利用できないものであった。
【0008】
従って、本発明は従来技術の上述した問題点を解消するものであり、本発明の目的は、停電時に、ある程度継続的に発電して電力を供給することができ、かつ水を循環利用できるマイクロ水力発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、マイクロ水力発電システムは、水を貯留する貯水槽と、貯水槽の下方に配置され、一端が貯水槽に連通し他端に向かって下降している導水管と、一端が導水管の他端に連通しており、他端に向かって上昇している復水管と、導水管の途中に設けられ、導水管を流れる水流を利用して発電する複数の発電ユニットと、復水管の他端に接続されており、復水管内の水を貯水槽内に排出するポンプと、複数の発電ユニットに接続されており、複数の発電ユニットからの電力によって充電されると共にポンプに電力を供給する電源装置とを備えている。特に本発明によれば、ポンプが復水管内の水を排出することによって生じる吸引力により、復水管及び導水管内に一様な吸引流を発生させ、導水管を流れる上述の水流を形成するように構成されている。
【0010】
このように、復水管内の水をポンプが排出することによってあたかも生じる空隙に吸引される力により、復水管及び導水管内の水が動き、この復水管及び導水管内の水は、サイホンの原理によって平衡状態に復帰するまで、減圧状態で一様な吸引流となって管内を循環する。このため、比較的に小さいエネルギで循環水流を形成することができ、また、ポンプによって生じた負圧に吸引されて水が管内を循環するため、発電ユニットにおいては、水流によって回転する水車羽根の回転を阻害しない真空に近い空間を形成することができる。その結果、貯水槽の水を用い、非常に少ないエネルギ消費で効率的に発電を行い、その発電後の水を貯水槽に戻して循環利用するマイクロ発電システムとして、災害時の非常用電源はもちろんのこと、エネルギ変換過程を、シンプルでコンパクトにパッケージングすることにより、スマートコミニティにおける地域分散型発電装置として、用途に応じた必要量の電気を供給できると共に、高度なメンテナンス技能を必要としない、装置組立を地域別企業が施行し周期保守点検を実施する装置として、より多くの人々がエネルギ供給過程に参加することを可能となる。
【0011】
ポンプは、復水管内の水面と貯水槽内の水面との高さの差だけ復水管内の水を揚水するように構成されていることが好ましい。このように、復水管内の水面と貯水槽内の水面とが、逆サイホンの原理により、同一平面内にあって平衡状態を保っており、ポンプは、わずかな高さだけ揚水すれば良い。このため、ポンプによって消費されるエネルギ量は非常に少ない。
【0012】
複数の発電ユニットの各々は、水流によって回転するように構成された水車羽根を有する水車部と、水車羽根の回転力を電気に変換する発電機部とを備えていることも好ましい。水車羽根は、水流の有する運動エネルギを効率良く受け取って、回転運動に変換することができるように構成されている。
【0013】
この場合、発電機部は、複数の第1の極性の永久磁石を有する回転磁石板と、これら複数の第1の極性の永久磁石の一部に対向し静止している複数の第1の極性の永久磁石と、一端が回転磁石板のC永久磁石の一部に対向し静止している複数の磁心付コイルと、複数の磁心付コイルの他端に対向し静止している複数の第2の極性の永久磁石とを備えており、回転磁石板の複数の第1の極性の永久磁石によるコギングトルクを減少させるように構成されていることがより好ましい。発電機部が、コギングトルクを減少させて永久磁石による回転抵抗をできるだけ低減させるように構成されているため、回転運動をより効率良く電力に変換することが可能となる。
【0014】
電源装置は、複数の発電ユニットによって生成された電力を充電可能な蓄電池を備えていることも好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、貯水槽の水面より高い位置に設置されているポンプで配管中の水を汲み上げ貯水槽に戻し、循環水流を形成することで、比較的に小さいエネルギで循環水流を形成することができ、より効率的に発電することができる。また、地震等の災害時に商用電源を利用できない場合、発電することができる。さらに、水を循環利用でき、コストを削減することができる。
【0016】
また、本発明は、流体の流動を電気エネルギに変換するものであり、大掛かりな工事が不要であり環境にやさしく、スマートグリッドにおける地域分散形発電システムとして、小容量の電力を必要とする用途に対応でき、安全性に優れており、かつ管理が容易にできる。また、本発明のマイクロ水力発電システムは、コンパクトであり、建築物の上部(例えば、屋上)等にも容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態として、マイクロ水力発電システムの構成を概略的に示す図である。
図2図1に実施形態における発電ユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図3図2に示した発電ユニットにおける水車部の構成を概略的に示す図である。
図4図3に示した水車部における水車羽根の構造を説明する図である。
図5図2に示した発電ユニットにおける発電機部の構成を概略的に示す図である。
図6図5に示した発電機部における磁石の配列及び作用を説明する図である。
図7】本発明の他の実施形態として、マイクロ水力発電システムの構成を概略的に示す図である。
図8】導水管の構造及び発電ユニットの配置の一例を示す図である。
図9】導水管の構造及び発電ユニットの配置の他の例を示す図である。
図10】導水管の構造及び発電ユニットの配置のさらに他の例を示す図である。
図11】導水管の構造及び発電ユニットの配置のまたさらに他の例を示す図である。
図12図11に示した発電ユニットにおける水車部の構成を概略的に示す図である。
図13図12のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るマイクロ水力発電システムの実施形態を、図を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態として、マイクロ水力発電システムの構成を概略的に示している。
【0020】
同図に示すように、本実施形態のマイクロ水力発電システムは、システムの上方に設けられ、内部に水11が貯留されている貯水槽10と、一端がこの貯水槽10の底面近傍に連通しており、他端に向かって下降している導水管12と、一端がこの導水管12の最低位にある他端に連通しており他端に向かってほぼ垂直に上昇している復水管13と、この復水管13の最上位である他端に弁14aを介して接続されている揚水ポンプ14と、導水管12の途中に設けられておりそれぞれがユニット化されている複数の発電ユニット15と、これら発電ユニット15及び揚水ポンプ14に電気的に接続された電源装置16と、初期時に貯水槽10に水11を供給する給水管17と、復水管13の他端に設けられており、最初に復水管13に水が導入された時のみ開いて残留空気及び水を外部に排出する水抜き弁18とを備えている。
【0021】
貯水槽10は、循環する例えば水道水等の水11をその内部に貯留するためのものであり、その初期時の水11として、給水管17を介して水道水等が供給され貯留される。この貯水槽10の貯留容量は、システム全体の発電量に基づいて定められる。
【0022】
導水管12は、貯水槽10の下方に配置されており、その上端である一端から斜めに直線状に下降して最低位の他端となっている。導水管12の長さは、必要とされる数の発電ユニット15が組み込みできる長さに設定されている。導水管12のこの他端には、復水管13の最低位にあるその一端が連通しており、この復水管13はその最高位にある他端に向かってほぼ垂直に上昇している。導水管12及び復水管13はその全長に渡って貯水槽10以外には水密状態に保たれている。導水管12の径は必要とされる流量が得られるように設定されるが、復水管13の径は導水管12の径より大きく設定されている。
【0023】
揚水ポンプ14は、復水管13の上端に接続され、復水管13内に上昇している水11を汲み上げて貯水槽10に戻し、循環水流を形成するものである。この揚水ポンプ14としては、例えばエフ・オー・ケー(FOK)株式会社の循環型ポンプHB−1500が適用可能である。このポンプは、最大揚水量が35〜40m/H、消費電力が127〜165W、最大揚程が25cm、最大揚程時の揚水量が30〜35m/Hの仕様を有するものである。この揚水ポンプ14は、自吸式ポンプであり、運転前にこの揚水ポンプ14にのみ呼び水をすることにより、運転が始まった後はポンプ自身の力でその吸込管の空気を排出して揚水することができる。
【0024】
本実施形態においては、揚水ポンプ14が復水管13の上方の水面よりやや高い位置に設置されており、揚水すべき高さが非常に低くなるように設定されている。復水管13内の水面と貯水槽10内の水面とは、揚水ポンプ14を作動させていない状態では、逆サイホンの原理により、同一平面内にあって平衡状態を保っている。従って、揚水ポンプ14は、わずかな高さのみ、例えば高さH=10〜20cmだけ揚水することにより、復水管13の上部の水11を貯水槽10内に排出する。この復水管13内の水11を揚水ポンプ14が排出することによってあたかも生じる空隙に吸引される力により、復水管13及び導水管12内の水が動き、循環が行われる。
【0025】
復水管13及び導水管12内の水は、サイホンの原理によって平衡状態に復帰するまで、減圧状態で一様な吸引流となって管内を循環する。なお、揚水ポンプ14の排出流量を調整することで、導水管12内の水流の速度を変化させて発電量を調整することができる。
【0026】
複数の発電ユニット15は、導水管12の途中に順次設けられ、この導水管12内の水流を利用して発電するものである。各発電ユニット15は、導水管12内の水流をできるだけ効率良くとらえて回転するように構成された水車部と、この水車部に連結されており、水車部の回転力を電力に変換する発電機部とを有する。各発電ユニット15の構成については、詳細に後述する。本実施形態においては、3つの発電ユニット15が導水管12に沿って設けられている。この発電ユニットの数は、必要とする発電量に基づいて設定される。
【0027】
電源装置16は、充電回路と、充放電可能な蓄電池とから主として構成されており、複数の発電ユニット15によって発電された電力をこの蓄電池に充電すると共に、この蓄電池の出力電力を揚水ポンプ14の駆動に使用し、さらに外部に出力するように構成されている。電源装置16の充電用電力として、複数の発電ユニット15からの電力に加えて、太陽光発電システム及び/又は風力発電システムからの電力をも利用することが可能である。電源装置16を商用電源に直接接続しても良い。深夜電力等経済的なエネルギを利用して蓄電池に充電し、運転する際に、蓄電池により揚水ポンプ14を駆動するようにしても良い。
【0028】
図2は本実施形態における発電ユニット15の構成を概略的に示しており、図3はこの発電ユニット15における水車部20の構成を概略的に示しており、図4はこの水車部20における各水車羽根の構造を説明している。
【0029】
図2に示すように、発電ユニット15は、水車部20と、回転シャフト21aがこの水車部20の回転シャフト20aに連結されており、水車部20の発生した回転力を電力に変換する発電機部21とを備えている。
【0030】
水車部20は、上述した回転シャフト20aと、ハウジング20bと、このハウジング20bの互いに対向する側壁内側に設けられ、上述の回転シャフト20aを回動自在に支持する1対のベアリング部材(シールベアリング)20cと、回転シャフト20aに同軸に固着された水車羽根20dとを備えている。水車羽根20dは、その一部が導水管12内に突出しており、その内部を流れる水流11aによって回転駆動されるように構成されている。この水流11aは、揚水ポンプ14の作動によって生じた負圧に水が吸引されることによって導水管12内に生じる。しかも、粘性がなく非圧縮性であり定常の流れとなっているため、ベルヌーイの定理が成立する流れとなって循環する。
【0031】
図3に示すように、この導水管12内を流れるベルヌーイの定理が成立する同一流線上の水流11aにより、水車部20におけるハウジング20bの内部20eに負圧が発生し、この内部20eがより真空に近くなることから、水車羽根20dの回転抵抗が減少する。
【0032】
図4に示すように、本実施形態においては、回転シャフト20aの回りに45°の等角度間隔で8枚の水車羽根20d〜20dが設けられており、これら水車羽根20d〜20dの各々は、適度の曲率半径を有する断面を有する平板状の軽量の金属材料又は樹脂材料から構成されている。図4に示すごとく、1つの水車羽根20dの導水管12内の水流11aに対する受圧面積が最大となった際に他の1つの水車羽根20dがハウジング20bから導水管12内に突出するように構成されており、これによって水車羽根20dは水流11aの有する運動エネルギを効率良く受け取って、回転運動に変換することができる。
【0033】
図5は本実施形態の発電ユニット15における発電機部21の構成を概略的に示しており、図6はこの発電機部21における磁石の配列及び作用を説明している。
【0034】
図5に示すように、発電機部21は、水車部20の回転シャフト20aに連結された回転シャフト21aと、この回転シャフト21aに固着されており、これと同軸に回転する回転磁石板21bとを備えている。この回転磁石板21bには、S極のみが表面に現れるように軸の周囲方向に45°の等間隔で配置された8つの永久磁石21c〜21cが設けられている。
【0035】
この回転磁石板21bの永久磁石21c〜21cに一端が対向するように複数の磁心21d〜21dが設けられている。ただし、これら複数の磁心21d〜21dは、固定部21eに固定されて静止している。本実施形態において、複数の磁心21d〜21dは軸の周囲方向に90°の等間隔で配置された4つの磁心21d〜21dから構成されている。これら複数の磁心21d〜21dには、複数のコイル21f〜21fがそれぞれ巻回されている。さらに、回転磁石板21bの永久磁石に対向しS極のみが表面に現れる4つの永久磁石21g〜21gが固定部21eに固定されて静止して設けられている。これら4つの永久磁石21g〜21gは軸の周囲方向に90°の等間隔で配置されており、4つの磁心21d〜21d間にそれぞれ設けられている。従って、回転磁石板21bの45°の等間隔で配置された8つの永久磁石21c〜21cに対向して、4つの磁心21d〜21dと4つの永久磁石21g〜21gとが交互に45°の等間隔で静止して配置されていることとなる。
【0036】
さらに、本実施形態の発電機部21においては、4つの磁心21d〜21dの他端に対向してN極のみが表面に現れるように軸の周囲方向に90°の等間隔で配置された4つの永久磁石21h〜21hが設けられている。ただし、これら4つの永久磁石21h〜21hは、固定部21eに固定されて静止している。4つの磁心21d〜21d及び4つのコイル21f〜21fは、それぞれの一端が回転磁石板21bの8つの永久磁石21c〜21cに対向し、それぞれの他端が1つおきに4つの永久磁石21h〜21hに対向するように軸の周囲方向に90°の等間隔でかつ軸に平行に配置されており、各コイル21f〜21fから得られる起電力が合成されて発電機出力となるように接続がなされている。
【0037】
この発電機部21は、コギングトルクを減少させて永久磁石による回転抵抗をできるだけ低減させた発電機であり、その原理は例えば国際公開第WO2003/056688号公報に開示されている。以下、本実施形態の発電機部21の作用の概略を説明する。
【0038】
回転磁石板21bの8つの永久磁石21c〜21cが回転することによって、4つの磁心21d〜21dに印加される磁極が交互に変化し、この磁心を軸方向に横切る磁束の方向が交互に反転することで4つのコイル21f〜21fに継続的に起電力が発生する。
【0039】
図6は発電機部21の断面の一部を模式的に示しており、4つの磁心21d〜21dと4つの永久磁石21g〜21gと4つの永久磁石21h1〜21h4は静止しており、回転磁石板21bの永久磁石21c〜21cは回転により移動している。回転磁石板21bの永久磁石21c〜21cの回転移動方向(下から上方向)が矢印で示されている。
【0040】
図6に示した状態では、回転磁石板21bの永久磁石21c、21c、21c及び21cが磁心21d〜21dの一端にそれぞれ正対しており、これら磁心21d〜21dに最大の引力が印加されている。一方、回転磁石板21bの永久磁石21c、21c、21c及び21cが永久磁石21g〜21gにそれぞれ正対しており、回転磁石板21bには永久磁石21g〜21gから最大の反発力が印加されている。
【0041】
回転磁石板21bがこの状態から回転する際に、永久磁石21g〜21gからの反発力及び次の永久磁石21c、21c、21c及び21cと磁心21d〜21dとの吸引力により、回転シャフト21aに印加される引力であるコギングトルクが減少することになる。同様のことが、回転磁石板21bの他の永久磁石と磁心との間においても発生する。言い換えると、回転シャフト21aに印加されるコギングトルクの最大値は減少しないが、永久磁石21c〜21cが磁心21d〜21dに強い引力で引かれる時間が短くなる。
【0042】
このように、本実施形態の発電機部21によれば、回転シャフト21aに印加されるコギングトルクの最大値は変動しないが、コギングトルクが回転シャフト21aに強く影響を与える時間が短くなるので、コギングトルクの周期が半分になることと相まって、その回転シャフト21aの回転抵抗が減少し、回転がスムーズとなる。なお、本実施形態における永久磁石及び磁心の数は、上述した値に限定されるものではない。
【0043】
以上説明したように、本実施形態においては、復水管13内の水面と貯水槽10内の水面とが、逆サイホンの原理により、同一平面内にあって平衡状態を保っており(揚水ポンプ14を作動させていない状態)、揚水ポンプ14により揚水すべき高さが非常に低くなるように設定されているため、揚水ポンプ14は、わずかな高さのみ、例えば高さH=10〜20cmだけ揚水すれば良い。このため、揚水ポンプ14によって消費されるエネルギ量は非常に少ない。復水管13内の水11を揚水ポンプ14が排出することによってあたかも生じる空隙に吸引される力により、復水管13及び導水管12内の水が動き、この復水管13及び導水管12内の水は、サイホンの原理によって平衡状態に復帰するまで、減圧状態で一様な吸引流となって管内を循環する。即ち、粘性がなく非圧縮性であり定常の流れであるため、ベルヌーイの定理が成立する流れとなって循環する。このため、比較的に小さいエネルギで循環水流を形成することができ、また、揚水ポンプ14によって生じた負圧に吸引されて水が管内を循環するため、発電ユニット15における水車部20では、水車羽根20dの回転を阻害しない真空に近い空間を形成することができる。また、水車羽根20dは、水流11aの有する運動エネルギを効率良く受け取って、回転運動に変換することができるように構成されている。さらに、発電ユニット15における発電機部21が、コギングトルクを減少させて永久磁石による回転抵抗をできるだけ低減させるように構成されている。
【0044】
その結果、本実施形態のマイクロ水力発電システムは、貯水槽10の水を用い、非常に少ないエネルギ消費で効率的に発電を行い、その発電後の水を貯水槽10に戻して循環利用するマイクロ発電システムとして、災害時の非常用電源はもちろんのこと、エネルギ変換過程を、シンプルでコンパクトにパッケージングすることにより、スマートコミニティにおける地域分散型発電装置として、用途に応じた必要量の電気を供給できると共に、高度なメンテナンス技能を必要としない、装置組立を地域別企業が施行し周期保守点検を実施する装置として、より多くの人々がエネルギ供給過程に参加することを可能となる。
【0045】
また、太陽光や深夜電力など、他の様々なマイクロエネルギと併用することで、自然エネルギを背景とした製品として息の長い利用が期待される。さらに、本実施形態のマイクロ発電システムは、システム全体の規模を拡大しても有効であり、より大きな水資源の活用により、大規模発電への応用も可能である。さらに、本実施形態のマイクロ発電システムは、水を循環利用しているためコストを削減することも可能である。
【0046】
図7は本発明の他の実施形態として、マイクロ水力発電システムの構成を概略的に示している。
【0047】
本実施形態のマイクロ水力発電システムは、復水管13と貯水槽10との間に吐出量調整ポンプ19が追加されていることを除いて、図1の実施形態におけるマイクロ水力発電システムの場合と、全く同じ構成を有している。従って、図7において、図1と同じ構成要素には同一の参照番号が付されている。
【0048】
吐出量調整ポンプ19は、揚水ポンプ14によって排出された水に適切な流れを与えるために吐出量調整を行うためのものであり、吐出量と水管内に発生する自然な水流との調整を行う役割を有している。吐出量の調整により適切な水流(吸引力と押す力(落ちてくる力)とのバランスのとれた水流)が発生すると、導水管12の途中に設けた発電ユニット15における水車部20において、水車羽根20dの回転を阻害しない真空に近い空間を形成することができる。
【0049】
本実施形態におけるその他の作用効果は図1の実施形態の場合と同様である。
【0050】
図8は上述した実施形態の一変更態様として、導水管の構造及び発電ユニットの配置の一例を示している。
【0051】
本変更態様においては、前述の実施形態の場合と同様の発電ユニット85が7つ、導水管82に沿って設けられている。導水管82の形態及び発電ユニット85の配置以外の構成は、上述した実施形態におけるマイクロ水力発電システムの場合と同様であり、従って詳細な説明は省略する。
【0052】
導水管82は、貯水槽10の直下の垂直部82aと、これに続く第1の水平部82bと、これに続く第1の傾斜部82cと、これに続く第2の水平部82dと、これに続く第2の傾斜部82eと、これに続く第3の水平部82fとを有する屈曲管路である。導水管82の第1の水平部82b、第1の傾斜部82c及び第2の傾斜部82eにはそれぞれ2つの発電ユニット85が、第2の水平部85dには1つの発電ユニット85が配置されている。導水管82の第1の傾斜部82c及び第2の傾斜部82eにも発電ユニット85を配置することにより、その配置場所をより多く確保することができる。
【0053】
導水管82全体の長さは、必要とされる発電ユニット85を組み込める程度に適宜に設計される。また、導水管82の太さは、発電量に応じた水流量に基づいて設計される。
【0054】
図9は上述した実施形態の他の変更態様として、導水管の構造及び発電ユニットの配置の一例を示している。
【0055】
本変更態様においては、前述の実施形態の場合と同様の発電ユニット95が6つ、導水管92に沿って設けられている。導水管92の形態及び発電ユニット95の配置以外の構成は、上述した実施形態におけるマイクロ水力発電システムの場合と同様であり、従って詳細な説明は省略する。
【0056】
導水管92は、貯水槽10の直下の第1の垂直部92aと、これに続く第1の水平部92bと、これに続く第2の垂直部92cと、これに続く第2の水平部92dと、これに続く第3の垂直部92eと、これに続く第3の水平部92fと、これに続く第4の垂直部92gと、これに続く第4の水平部92hとを有する屈曲管路である。導水管92の第1の水平部92b、第2の水平部92d及び第3の水平部92fにはそれぞれ2つの発電ユニット95が配置されている。
【0057】
導水管92全体の長さは、必要とされる発電ユニット95を組み込める程度に適宜に設計される。また、導水管92の太さは、発電量に応じた水流量に基づいて設計される。
【0058】
図10は上述した実施形態のさらに他の変更態様として、導水管の構造及び発電ユニットの配置の一例を示している。
【0059】
本変更態様においては、前述の実施形態の場合と同様の発電ユニット105が8つ、導水管102に沿って設けられている。導水管102の形態及び発電ユニット105及び115の配置以外の構成は、上述した実施形態におけるマイクロ水力発電システムの場合と同様であり、従って詳細な説明は省略する。
【0060】
導水管102は、貯水槽10の直下の垂直部102aと、これに続く単一の長い傾斜部102bと、これに続く単一の水平部102cとを有する屈曲管路である。導水管102の傾斜部102bには4つの発電ユニット105が配置されており、水平部102cには4つの発電ユニット115が配置されている。各発電ユニット115の構成については、次の図11の変更態様において説明する。
【0061】
導水管102全体の長さは、必要とされる発電ユニット105及び115を組み込める程度に適宜に設計される。また、導水管102の太さは、発電量に応じた水流量に基づいて設計される。
【0062】
図11は上述した実施形態のまたさらに他の変更態様として、導水管の構造及び発電ユニットの配置の一例を示しており、図12図11の変更態様の発電ユニットにおける水車部の構成を概略的に示しており、図13図12のA−A線断面を示している。
【0063】
本変更態様においては、前述の実施形態の場合と異なる構造の発電ユニット115が導水管112に沿って6つ設けられている。導水管112の形態並びに発電ユニット115の構成及び配置以外の構成は、上述した実施形態におけるマイクロ水力発電システムの場合と同様であり、従って詳細な説明は省略する。
【0064】
導水管112は、貯水槽10の直下の第1の垂直部112aと、これに続くコ字状の第1の水平部112bと、これに続く第1の傾斜部112cと、これに続くコ字状の第2の水平部112dと、これに続く第2の傾斜部112eと、これに続くコ字状の第3の水平部112fと、これに続く第2の垂直部112gと、これに続く第4の水平部112hとを有する3次元屈曲管路である。導水管112の第1の水平部112b、第2の水平部112d及び第3の水平部112fにはそれぞれ2つの発電ユニット115が配置されている。導水管112を3次元屈曲管路にすることで、発電ユニット115を配置する場所を多く確保することができる。
【0065】
導水管112全体の長さは、必要とされる発電ユニット115を組み込める程度に適宜に設計される。また、導水管112の太さは、発電量に応じた水流量に基づいて設計される。
【0066】
図13に示すように、発電ユニット115は、水車部120と、回転シャフト21aがこの水車部120の回転シャフト120aに連結されており、水車部120の発生した回転力を電力に変換する発電機部21とを備えている。本変更態様においては、発電ユニット115の特に水車部120の構成が前述の実施形態の場合と異なっているが、発電機部21自体の構成は前述の実施形態の場合と同様である。
【0067】
水車部120は、上述した回転シャフト120aと、この回転シャフト120aに同軸に固着された水車羽根120dとを備えている。この水車部120の回転シャフト120aは、導水管112の底面壁を貫通しており、発電機部21の回転シャフト21aに同軸に連結されている。水車羽根120dは、その全体が導水管112の底面に沿って設けられており、図12に示すように、導水管112の内部を流れ、その内壁から突出している突出部119によって偏移された水流11aによって回転駆動されるように構成されている。この水流11aは、揚水ポンプ14の作動によって生じた負圧に水が吸引されることによって導水管112内に生じる。
【0068】
水車羽根120dは、図12に示すように、回転シャフト120aの回りに45°の等角度間隔で8枚の水車羽根が設けられており、これら水車羽根の各々は、適度の曲率半径を有する断面を有する平板状の軽量の金属材料又は樹脂材料から構成されている。
【0069】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、スマートグリッドにおける地域分散形発電システムとして、小容量の電力を必要とする用途に対応できる流体の流動を電気エネルギに変換する発電システムに利用できる。
【符号の説明】
【0071】
10 貯水槽
11 水
11a 水流
12、82、92、102、112 導水管
13 復水管
14 揚水ポンプ
14a 弁
15、85、95、105、115 発電ユニット
16 電源装置
17 給水管
18 水抜き弁
19 吐出量調整ポンプ
20、120 水車部
21 発電機部
20a、21a、120a 回転シャフト
20b ハウジング
20c ベアリング部材
20d、20d〜20d、120d 水車羽根
20e 内部
21b 回転磁石板
21b〜21b、21c〜21c 永久磁石
21c 固定磁石板
21d、21d〜21d 磁心
21e コイル
82a、102a 垂直部
82b、92b、112b 第1の水平部
82c、112c 第1の傾斜部
82d、92d、112d 第2の水平部
82e、112e 第2の傾斜部
82f、92f、112f 第3の水平部
92a、112a 第1の垂直部
92c、112g 第2の垂直部
92e 第3の垂直部
92g 第4の垂直部
92h、112h 第4の水平部
102b 傾斜部
102c 水平部
119 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13