(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の医療用容器と輸液チューブの接続に関し、以下の問題が存在する。
【0008】
一般にオペレーターは、接続用キャップにコネクターを接続する直前にポートを解放するため、医療用容器内の栄養剤が外気に触れる。このとき、栄養剤に外気由来の不純物や雑菌が混入し、汚染(コンタミネーション)を発生するおそれがある。
【0009】
また、ポート内が外気に解放されることにより、栄養剤が外部に漏れ出す問題もあり、衛生面・安全面の観点から、これを改善すべき余地が残されている。
【0010】
一方、栄養療法を正しく行うには、接続用キャップと輸液チューブ側とを正確に接続する必要があるが、他の目的で配された異なる輸液チューブ等に前記栄養剤容器側を誤接続するおそれがあり、この問題を確実に防止する必要もある。
【0011】
本発明は上記した各課題に鑑みてなされたものであって、医療用容器の液密性を保持したまま、医療用容器をチューブと確実に接続するとともに、医療用容器内に貯留された栄養剤等の液状物の汚染(コンタミネーション)や漏れを防止し、良好な栄養療法や経腸栄養療法の実施を期待できる、医療用投与セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するため、本発明は、医療用バッグと、輸液チューブと、前記2者を接続するコネクターとを備える医療用投与セットであって、前記医療用バッグは、液状物を貯留する貯留部と、ポートとを有し、前記ポートには、第一係合部を有する本体部と、前記液状物の流路と、前記流路を封止する封止部とが形成され、前記コネクターは、前記第一係合部と係合可能な第二係合部を有し、前記本体部及び前記コネクターを液密に接触させた状態で、前記本体部及び前記コネクターを相対移動させることで、前記第一係合部及び前記第二係合部を係合させるとともに、前記封止部による封止を破って前記流路の解放を行うものとした。
【0013】
ここで、前記ポートは舟形ポートであり、前記貯留部は袋状の樹脂フィルムであって、その内部と連通するように前記舟形ポートが配設される構成としてもよい。
【0014】
また、前記本体部は軸状であり、前記コネクターは前記軸状の本体部を挿入可能な筒状部を有し、前記コネクターの前記筒状部に前記本体部を挿入して前記2者を液密に接触させた状態で、前記軸周りに前記本体部及び前記コネクターを相対的に回転させることにより、前記第一係合部及び前記第二係合部の係合と、前記流路の解放とを行う構成としてもよい。
【0015】
また、前記封止部は、前記本体部よりも薄肉の連結部で前記本体部と連結され、前記本体部及び前記封止部、並びに前記連結部は、同一材料で一体的に形成され、前記回転とともに前記封止部が前記本体部に対して相対移動することにより、前記連結部が破断されて前記封止部による封止が破られ、前記流路が解放される構成とすることもできる。
【0016】
また、前記封止部は、1以上のリブを有し、当該リブにおいて前記本体部と前記連結部で連結され、前記コネクターの前記筒状部の内部には、前記コネクターと前記本体部を液密に接触させた際に前記リブと嵌合可能な嵌合溝が形成され、前記リブは、前記回転時に、前記コネクターとともに連れ回って破断する構成とすることもできる。
【0017】
また、記本体部は、前記コネクターの前記筒状部に挿入可能な突出部を有し、前記封止部は、前記突出部の上面と前記連結部で連結されている構成とすることもできる。
【0018】
また、本発明は、液状物を貯留し、当該液状物を輸液するための輸液チューブと接続される医療用バッグであって、液状物を貯留する貯留部と、ポートとを有し、前記ポートには、第一係合部を有する本体部と、前記液状物の流路と、前記流路を封止する封止部とが形成され、前記ポートは輸液チューブに対し、前記第一係合部と係合可能な第二係合部を備えるコネクターを用いて接続され、前記本体部及び前記コネクターを液密に接触させた状態で、前記本体部及び前記コネクターを相対移動させることで、前記第一係合部及び前記第二係合部を係合させるとともに、前記封止部による封止を破って前記流路の解放を行う構成とする。
【0019】
ここで、前記ポートは舟形ポートであり、前記貯留部は袋状の樹脂フィルムであって、その内部と連通するように前記舟形ポートが配設される構成とすることもできる。
【0020】
また、前記本体部は軸状であり、前記コネクターは前記軸状の本体部を挿入可能な筒状部を有し、前記コネクターの前記筒状部に前記本体部を挿入して前記2者を液密に接触させた状態で、前記軸周りに前記本体部及び前記コネクターを相対的に回転させることにより、前記第一係合部及び前記第二係合部の係合と、前記流路の解放とを行う構成とすることもできる。
【0021】
また、前記封止部は、前記本体部よりも薄肉の連結部で前記本体部と連結され、前記本体部及び前記封止部、並びに前記連結部は、同一材料で一体的に形成され、前記回転とともに前記封止部が前記本体部に対して相対移動することにより、前記連結部が破断されて前記封止部による封止が破られ、前記流路が解放される構成とすることもできる。
【0022】
また、前記封止部は、1以上のリブを有し、当該リブにおいて前記本体部と前記連結部で連結され、前記コネクターの前記筒状部の内部には、前記コネクターと前記本体部を液密に接触させた際に前記リブと嵌合可能な嵌合溝が形成され、前記リブは、前記回転時に、前記コネクターとともに連れ回って破断する構成としてもよい。
【0023】
また、前記リブは、前記本体部の上に複数にわたり放射状に展開するように、前記連結部で前記本体部と連結されている構成としてもよい。
【0024】
また、前記本体部は、前記コネクターの前記筒状部に挿入可能な突出部を有し、前記封止部は、前記突出部の上面と前記連結部で連結されている構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の医療用投与セットでは、医療用バッグに配されたポートの本体部に液状物の流路を封止する封止部が形成されている。本体部には第一係合部、輸液ポート側には第一係合部と係合可能なコネクターが配される。
【0026】
この医療用投与セットを用いる際には、オペレータはまずポートの本体部とコネクターを液密に当接させる。そして、前記液密な当接状態を保ちつつ、ポートとコネクターを所定方向に相対移動させることにより、互いの係合部(第一及び第二係合部)を係合させる。このような係合(ロック)動作を行うことで、封止部の流路の封止は外部と遮断された状態で解放され、医療用バッグ中の液状物がポートを通じてコネクター側(輸液チューブ側)に流通可能となる。
【0027】
従って本発明に係る医療用投与セットでは、少なくともポート及びコネクターを係合させるまでは、医療用バッグの液状物が外気に触れることはない。また、液状物が流通する流路が輸液チューブ側に解放されるときは、常に、ポート及びコネクターが係合した状態になり、前記流路は外気より遮断され、液密状態に保たれている。
【0028】
よって本発明に係る医療用投与セットでは、液状物が外気と触れて不純物の混入し、汚染(コンタミネーション)を発生する問題を低減できるとともに、流路解放時に液状物が漏れて外部が汚れる問題も抑制でき、高度な衛生管理による栄養投与療法を実施できる。
【0029】
特に本発明は従来のように、使用に先立ち、ポートの先端に配された封止用のシールをはがしたり、ポートを開口する等の操作が不要のため、これらの開封操作によって液状物が汚染されてしまう恐れを回避できる。
【0030】
また、本発明の医療用バッグは、特別なキャップ等を用いなくてもポートを直接コネクターに固定できるため、部品点数を低減でき、生産コストを抑制することができる。さらに、本発明に係る医療用投与セットは、部品点数が比較的少ないため、医療用バッグやコネクター等の液状物に対する接触面積が小さく、この点においても汚染(コンタミネーション)の発生を防止する効果も期待できる。
【0031】
また、ポート及びコネクターは、互いに専用の組み合わせである第一及び第二係合部を用いて、初めて両者を係合(ロック)可能に接続できる。このように各々のコネクターが接続対象を厳格に選択することにより、オペレーターが舟形ポートを別の輸液チューブ側と誤接続する問題を未然に防止できる。本発明に係る医療用投与セットは、このような点においても高い安全性を発揮するものである。
【0032】
なお、本発明に係る医療用投与セットは、上記のようにポート及びコネクターを組み合わせて用いると上記した高い効果を発揮するが、舟形ポートに封止部を配設していることで、当該ポートを単独で用いる場合においても、医療用バッグに貯留された液状物を外気から遮断して液密に保持できる点において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、当然ながら本発明はこれらの実施形式に限定されるものではない。本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0035】
<実施の形態>
(栄養剤投与セット1)
図1は、実施の形態1の医療用投与セット(栄養剤投与セット1)の構成を示す図である。
図2は、栄養剤投与セット1中の舟形ポート15とコネクター20の各構成及び接続方法を示す図である。なお、ここでは栄養剤を投与するものとしているが、これは厳密な栄養剤のみに限定するものではなく、液状の食事や生理食塩水等の溶液も含む概念である。
【0036】
図1に示される栄養剤投与セット1は、医療用容器(栄養剤容器)の一例である医療用バッグ10と、コネクター20、輸液チューブ30を構成要素としている。
【0037】
医療用バッグ10は、貯留部100及び舟形ポート15で構成される。
【0038】
貯留部100は2枚の矩形の樹脂フィルムをその周縁で熱圧着にて貼り合わせてなる、袋状の柔軟な容器で構成され、内部に液状物の経腸栄養剤が貯留されている。
【0039】
舟形ポート15は樹脂材料で一体成型され、
図3(b)に示すように内部に液状物を流すための流路159が形成されているが、通常は封止されている。医療用バッグ10において、舟形ポート15は貯留部100の一辺に当たる樹脂製フィルムの貼り合わせ部において挟設され、流路159が貯留部100の内部と連通するように配されている。使用前の医療用バッグ10は内部が密閉され、経腸栄養剤は無菌状態に保たれている。
【0040】
輸液チューブ30は適度な柔軟性を有するシリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料で構成された輸液ラインである。
図1に示すように、上流側端部には舟形ポート15と接続するためのコネクター20が配される。下流側端部には患者側へ栄養剤を投与するため、所定のポートが形成された差込部33が配される。輸液チューブ30の中途には、公知の点滴筒31、流量を調節するためのクレンメ32が配設される。
【0041】
栄養剤投与セット1を使用する際には、
図1のように舟形ポート15を下方に向けて貯留部100を所定のスタンドに吊下げる。そして
図2のように舟形ポート15に接続されている舟形ポート15にコネクター20を接続し、当該接続状態をロックする。その後、輸液チューブ30を介して貯留部100内部の栄養剤を患者側に輸液する。
【0042】
ここで医療用バッグ10の特徴として、舟形ポート15は貯留部100側をコネクター20と接続するための役割も兼ねている。
図2に示される栄養剤投与セット1では、舟形ポート15とコネクター20が互いに接続される一対のコネクターセットを構成する。使用時にオペレーターが後述する所定のロック動作を行う際、ポート15はコネクター20と組み合わされ、前記ロック動作に伴って医療用バッグ10の内部封止が破られるので、貯留部100内部の栄養剤が舟形ポート15を介して輸液チューブ30側に輸液可能となる。
【0043】
このため栄養剤投与セット1では、使用時に舟形ポート15及びコネクター20を接続する際、貯留部100内の栄養剤が外気に触れることはない。よって投与直前及び投与中のいずれでも栄養剤を極めて衛生的に保つことができ、患者に安全性の高い栄養剤を投与できる。
【0044】
以下、舟形ポート15とコネクター20の各構成について、それぞれ詳細に説明する。
(舟形ポート15)
図3(a)は、舟形ポート(オス型コネクター付ポート)15及び保護カバー16の外観を示す図である。
図3(b)は舟形ポート15の内部構成を示す断面図である。当図では説明のため、
図2に示す舟形ポート15を上下逆に図示している。
【0045】
舟形ポート15は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等、各種公知の樹脂材料を射出成形して一体的に作製されている。
【0046】
舟形ポート15は、外観的には軸状のポート本体部150を基本構造とし、当該ポート本体部150と封止部155が連結部1550a〜1550cで連結されてなる。
【0047】
軸状のポート本体部150の内部は
図3(b)に示すように中空であり、流路159が形成されている。流路159は栄養剤投与時には貯留部100の栄養剤を外部に輸液するために機能するが、栄養剤投与(使用)前は流路159は封止部155によって封止されている。
【0048】
ポート本体部150は、一定の高さを持つ舟形のポート基部151を有する。ポート基部151の天井面152には、段部162、突出部160が同順に連出して形成されている。
【0049】
段部162はポート基部151よりも径の小さい円柱状体である。段部162の上縁付近の側面には、一対の係合ツメ153、154が突設されている。
【0050】
各々の係合ツメ153、154は、天井面152と平行な主面が配された板状体であり、その各々の天井面152と対向する主面には、天井面152に向かって、凸部1531、1541(1541は不図示)が突設されている。
【0051】
段部162の天井面は、コネクター20の当接面200と当接するための当接面161として機能する。
【0052】
突出部160は当接面161の中央で円錐台状に突出して形成されている。この突出部160の周面形状は、コネクター本体部21の内面形状に合わせて挿入可能に形成され、舟形ポート15がコネクター20の内部に挿入された際に、舟形ポート15とコネクター20とが突出部160の接触部位において互いに液密に接触できるように調整されている。
【0053】
ポート本体部150の上面(突出部160の上面)において、封止部155は、1以上(ここでは3個)のリブ155a〜155cが各一端を突出部160の軸芯上において突き合わせ、互いの主面の間で120°の角度をなすように放射状(三矢状)に展開して立設された構成を有する。この封止部155は、具体的には
図3(b)に示されるように、各リブ155a〜155cの根元領域において、ポート本体部150の部材厚みよりも薄い厚みで形成された連結部(薄肉部)1550a〜1550cによって、ポート本体部150側の突出部160の上面と互いに連結されている。
【0054】
なお、各リブ155a〜155cの直下には、流路159と連通する、短冊状の断面形状を持つスリット156a〜156cが設けられている(
図6(b)参照)。
【0055】
さらに舟形ポート15の内部には、流路159と連通する開口部158が設けられる。
【0056】
続いて保護カバー16は、使用前の医療用バッグ10における舟形ポート15を保護するためのものであって、突出部160及び段部162、封止部155を被覆するカバー本体部165と、係合ツメ153、154と係合可能な係合フランジ166、167を備える。保護カバー16も舟形ポート15と同じように樹脂材料を射出成形して一体的に構成される。
図3(a)に示すように、保護カバー16は段部162の周りを矢印の向き(
図2の第二の方向と逆方向)に回転させることで、舟形ポート15から離間させることができる。
(コネクター20)
図2に戻ってコネクター20は、舟形ポート15と同様に同一材料(ここでは樹脂材料)を射出成形して一体的に構成される。先端に向けてテーパー加工された外観を持ち、内部が中空の筒状部である、コネクター本体部21を有する。その外周面にはオペレーターが指で挟んで操作する板状の一対の操作部205、206が配設される。コネクター本体部21の内部は、これに液密に挿入されるコネクター20のポート本体部150の形状に合わせて形成されている。コネクター本体部21の先端部2033(
図2では下端部)からは輸液チューブ30が延出される。一方、輸液方向上流側におけるコネクター本体部21の上端部には、板状のコネクター基部22が、その各主面をコネクター20の軸芯と直交させて配されている。コネクター基部22の一方の主面(
図2中、上方の主面)は、舟形ポート15の当接面161に対して当接する当接面200として機能する。
【0057】
図4(a)は、当接面200側から見たコネクター20の構成を示す外観図である。
図4(b)は、コネクター20の内部構成を示す断面図(嵌合溝2030bを通り、コネクター本体部21の軸芯周りの角度を180°とする断面図)である。
図5(a)、(b)、(c)は、舟形ポート15の軸芯側から見た、係合ツメ153と係合フランジ202との係合過程を示す図(説明上、係合ツメ153は段部160との連続部分を断面で示す)である。
【0058】
図4(a)に示すように、コネクター基部22は中央にコネクター本体部21と連通する開口部2031が設けられた円盤体を基本構造とし、コネクター本体部21の軸芯を対称軸として、円周部分が外部に突出した構成を有する。この突出した円周部分の各々に、舟形ポート15の一対の係合ツメ153、154と係合可能な一対の係合フランジ201、202が形成されている。
【0059】
係合フランジ201、202は、
図4、
図5に示すように、フランジ本体2012、2022、庇部2013、2023、係合ツメ当接部2011、2021等で構成されている。フランジ本体2012、2022は、当接面200の縁に沿って立設されたリブである。
【0060】
庇部2013、2023は、フランジ本体2012、2022と、当接面200との間で係合ツメ153、154の侵入を許容するため、フランジ本体2012、2022の側面に沿って、当接面200に対して必要な高さに設けられた板体である。
【0061】
係合ツメ当接部2011、2021は、庇部2013、2023と連続するとともに、フランジ本体2012、2022からコネクター20の軸芯に向けて突出して配された角柱である。
【0062】
ここで、係合ツメ当接部2011、2021と庇部2013、2023との連続部分には、庇部2013、2023を厚み方向に向かって切り欠くことで、凹部2014、2024(2014は配置関係により不図示)が形成されている。この凹部2014、2024は、係合ツメ153、154の凸部1531、1541を誘い入れて嵌合する部位である。
【0063】
なお、コネクター20を樹脂成型する際に用いる金型の都合上、庇部2013、2023直下の当接面200の部分には開口部2010、2020が形成される。
【0064】
また、当接面200の裏面に当たる表示面204には、オペレーターが舟形ポート15にコネクター20をロックさせる方向を正しく認識できるように、「止」の文字及び回転方向を示す矢印等が表示されている。なお当然ながら、表示面204に表示される内容はこの記載に限定されず、表示を省いてもよい。
【0065】
一方、コネクター本体部21の内部は、前記ポート本体部150を挿入可能な形状に形成されている。さらに
図4(a)(b)に示すように、開口部2031の付近において、内壁を厚み方向に切り欠くことにより、3つの嵌合溝2030a〜2030cが等間隔で(互いにコネクター本体部21の軸芯周りの角度がそれぞれ120°をなす間隔で)形成されている。この嵌合溝2030a〜2030cは、舟形ポート15に設けられた各リブ155a〜155cの各々と嵌合する手段である。
【0066】
コネクター本体部21の開口部2031と先端部2033の間には、先端部2033側に向けて内径をステップ状に絞ることで係止段部2032が設けられている。この係止段部2032は、輸液チューブ30の端部を脱落防止するものであり、これによってコネクター20は輸液チューブ30と一体的に連結される。
(栄養剤投与時の効果について)
以上の構成の栄養剤投与セット1を用いて患者に栄養剤投与を行う手順を説明する。
【0067】
まず、医師や看護師等のオペレーターは、
図1に示す要領で医療用バッグ10の一端をスタンドに吊下げ、舟形ポート15を下方に向ける。一方、輸液チューブ30の一端をコネクター20に通し、コネクター本体部21内部の係止段部2032に輸液チューブ30の端部を係止させ、輸液チューブ30を先端部2033より延出させる。または製造段階、或いは出荷前において、コネクター20と輸液チューブ30とを予め接続しておいてもよい。
【0068】
一方、輸液チューブ30の他端側に設けられた差込部33を、患者側に配設した所定のチューブ先に接続する。
【0069】
次に、オペレーターは
図2に示す配置関係で、コネクター20をその当接面200を上方に向けて持つ。そして、係合フランジ201、202と係合ツメ153、154との干渉を避けてコネクター20の軸芯周りの角度に注意しつつ、コネクター20の当接面200を舟形ポート15の当接面161に当接させる(
図2中、垂直方向の矢印で示された第一の方向を参照)。このようにして、オペレーターはコネクター20と舟形ポート15とを接触させ、相対的に移動させる。このときコネクター本体部21の内部に、舟形ポート15の突出部160及び封止部155(リブ155a〜155c)が挿入される。
【0070】
以上の操作を行うと、突出部160の外周面は、コネクター本体部21の内面と液密に接した状態となり、コネクター本体部21の内部と舟形ポート15の突出部160及び封止部155は外気と遮断され、コネクター20及び舟形ポート15の接続状態が形成される。
【0071】
次にオペレーターは、コネクター20と舟形ポート15の接続状態を固定(ロック)する。具体的には操作部205、206を指で挟み、コネクター20の軸芯周りに沿って、コネクター20を舟形ポート15に対して相対的に60°の角度まで回転させる(
図2中、曲線状の矢印で示された第二の方向を参照)。このとき、突出部160の外周面とコネクター本体部21の内周面とは、液密状態を維持しながら互いに摺動し、コネクター20の軸芯の周りを相対的に回転する。そして前記回転操作前には庇部2013、2023より回転方向上流側にあった係合ツメ153、154は(
図5(a)参照)、前記回転操作に伴って、当接面200と庇部2013、2023の間に侵入し、庇部2013、2023を当接面200から遠ざかる方向に押し上げながら進む(
図5(b)の各矢印を参照)。そして、係合ツメ153、154は、最終的に係合ツメ当接部2011、2021と当接し、その進行が阻止される。このとき係合ツメ153、154の凸部1531、1541が、庇部2013、2023に設けられた凹部2014、2024と嵌合する(
図5(c))。この嵌合をもって、コネクター20と舟形ポート15の係合(ロック)動作が完了する。
【0072】
ロック動作完了後は、コネクター20と舟形ポート15は互いに接続状態で強固に係合されるので、容易に外れることはない。
【0073】
ここで
図6(a)はロック前、
図6(b)はロック状態における、それぞれのコネクター20及び舟形ポート15の配置関係と、リブ155a〜155c(封止部155)による輸液解放機構を説明するための図である。当図では、嵌合溝3020b、3020cを通る、コネクター本体部21の軸芯周りの角度120°を通る線でカットした断面構造としてコネクター20を示す。また
図7(a)、(b)は、それぞれロック前、ロック状態のコネクター20及び舟形ポート15の配置関係を示す、コネクター先端部2033からコネクター20の軸芯に沿って見下ろした正面図である。
図7(a)、(b)では、係合フランジ201、202の輪郭を点線で図示している。
【0074】
前述の
図2のように、舟形ポート15に対してコネクター20を接続した直後は、リブ155a〜155cは単にコネクター本体部21の内部において、嵌合溝2030a〜2030cに嵌合されただけの状態になっている(
図6(a)、
図7(a)を参照)。この状態で、オペレーターが操作部205、206を操作し、前述のロック動作を行う。すなわち、コネクター20を舟形ポート15に対して、コネクター本体部21の軸芯を回転軸として、当該軸周りに60°の角度まで回転させる。これにより、各リブ155a〜155cは嵌合溝2030a〜2030cに嵌合された状態でコネクター20とともに連れ回り、元の位置から60°ずれた位置まで前記回転軸周りを回転する。この回転に伴い、リブ155a〜155cの根元にある連結部1550a〜1550cが押し切られて破断する。そして、スリット156a〜156cがコネクター本体部21の内部に臨む位置に現れる(
図6(b)、
図7(b))。ここで
図6(b)では、コネクター本体部21の軸芯を回転軸として、各リブ155a〜155cが元の位置から60°ずれた角度まで回転し、連結部1550a〜1550cが破断した結果、スリット156a〜156cが現れた状態の舟形ポート15を図示している。
【0075】
以上のようにロック動作に伴って、リブ155a〜155cが回転し、連結部1550a〜1550cが破断することにより、流路159は封止部155による封止が破られ、スリット156a〜156cを介して初めてコネクター20側と連通される。この間、突出部160の外周面とコネクター本体部21との内周面の間の液密状態は保持される。
図1の如く、使用時に医療用バッグ10は舟形ポート15を下方に向けて吊下げられるので、貯留部100内の栄養剤は自重で舟形ポート15及びコネクター本体部21の内部を流通し、輸液チューブ30を介して患者側へ投与される。このように栄養剤投与セット1では、コネクター20と舟形ポート15のロック動作の完了とともに、栄養剤の投与を開始可能となるので、舟形ポート15の流路159が解放されるときも、栄養剤は常に外気と遮断されている。
【0076】
よって患者に栄養剤を投与する際にスリット156a〜156cを通じて外気から栄養剤中への不純物の混入が確実に回避されるので、衛生管理上、非常に有効である。栄養剤投与セット1は、コネクター20へ医療用バッグのポートを接続する前に、ポートに孔を開けたりシールを剥がす必要があった従来構成とは異なり、コネクター20と舟形ポート15を接続した上で、しかもコネクター20と舟形ポート15のロック完了と同時に舟形ポート15の封止を解放できる点において、飛躍的に優れた衛生管理上の安全性を発揮できる。
【0077】
また、栄養剤投与セット1では、上記した所定の操作を行うだけで、舟形ポート15を直接コネクター20側に接続・固定することができ、特別なキャップ等を用いる必要がない。このため部品点数を低減でき、生産コストを抑制できる。さらに部品点数が比較的少ないことで、液状物に接触する医療用バッグ10、コネクター20等の接触面積を抑制できるので、この点においても汚染(コンタミネーション)の発生を防止し、高い信頼性を発揮できるものである。
【0078】
また、コネクター20と舟形ポート15は、互いに専用の組み合わせで厳密に構成された各係合部(ここでは係合ツメ153、154及び係合フランジ201、202、封止部155及び嵌合溝2030a〜2030c)を用いることによって、初めて正常に接続及びロック可能となる。このように厳密な接続選択性が存在することから、オペレーターが誤って舟形ポート15を患者に配された別の輸液ラインと接続しようとしても、誤接続の問題発生を確実に防止できる。このように栄養剤投与セット1は人為的な医療ミス発生を防止する観点においても、高い安全性を発揮できるものである。
【0079】
なお舟形ポート15では、コネクター20の回転によって連結部1550a〜1550cが完全に破断し、封止部155が分離する場合もあるが、リブ155a〜155cは嵌合溝2030a〜2030cに嵌合したままで保持されるため、舟形ポート15から分離した封止部155が輸液チューブ30側に流されることはない。
【0080】
また、コネクター20と舟形ポート15の係合動作と、これに伴う流路159の解放動作については、これらを互いに相対的に移動させて行えばよい。従って、コネクター20に対して舟形ポート15を移動させる場合や、舟形ポート15に対してコネクター20を移動させる場合のいずれで動作を行っても良い。
【0081】
<実施の形態2>
次に実施の形態2として、コネクター20A側をオス型コネクター、舟形ポート15A側をメス型コネクターとした各構成を
図8にそれぞれ示す。
図8では説明上、コネクター20Aを上方、舟形ポート15Aを下方にそれぞれ図示しているが、使用時には
図1、2に示すように、両者の上下配置が逆となる。
【0082】
実施の形態1と異なる点として、舟形ポート15Aでは舟形のポート基部151Aにおいて、その上面である当接面152Aの周囲を取り囲むように筒状部163が立設されている。筒状部163の内径はコネクター20Aの本体部21Aの外径と合うように調整されており、使用時には筒状部163の内部にコネクター20Aの本体部21Aが挿入(または圧入)される。
【0083】
筒状部163の開口部164の周囲には、前述の153、154と同様の構成の一対の係合ツメ153A、154Aが形成されている。当接面161Aの中央には、155と同様の封止部155Aが1550a〜1550cと同様の連結部を介して形成され、各々のリブ155a〜155cの直下に舟形ポート15Aの流路と連通するスリットが形成されている。前記流路と前記スリットは、それぞれ159及び156a〜156cと同様の構成である。
【0084】
一方、コネクター20Aは、本体部21Aと一対の係合フランジ201A、202Aを有する。
【0085】
本体部21Aは円柱状体であり、その下方の面には舟形ポート15Aの当接面161Aと当接される当接面200Aが配され、上方の面には表示面204Aが配されている。
【0086】
表示面204Aの表面には、204と同様の文字及び矢印が施され、その中央には輸液チューブ30が接続されている。
【0087】
係合フランジ201A、202Aは201、202と同様の機構で係合ツメ153、154と係合可能な構成であり、本体部21Aの側面において等間隔に形成されている。
図8に示す構成では、係合フランジ201A、202Aの構成要素は箱型の筐体に覆われており、外部から見えない。
【0088】
なお、
図8に示す構成では、表示面204Aの周囲を囲む円周状リブ(筒状部)が立設されているが、これは必須ではない。
【0089】
当接面200Aの中央には、封止部155の各リブ155a〜155cと嵌合可能な形状を持つ、放射状(三矢状)の嵌合溝2030Aが形成されている。
【0090】
さらに本体部21Aには、その円柱の軸方向に沿って、当接面200Aと表示面204Aを貫通するように合計3つのコネクター孔L1、L2、L3が形成されている。このコネクター孔L1、L2、L3は、当接面200A側の各開口部がコネクター20Aを舟形ポート15Aにロックした後、封止部155の直下に形成された前記スリットと連通するとともに、表示面204A側の各開口部が輸液チューブ30の内部と連通可能に形成されている。
【0091】
コネクター孔L1、L2、L3は、ここでは円形断面形状としているが、矩形断面形状にしたり、コネクターの孔数を増やすなどの調節を行ってもよい。
【0092】
以上の構成を有する舟形ポート15A及びコネクター20Aを使用する際にも、栄養剤投与セット1とほぼ同様の諸効果が奏される。
【0093】
すなわち、オペレーターが舟形ポート15Aにコネクター20Aを接続する際には、係合ツメ153A、154Aと係合フランジ201A、202Aとが互いに干渉しないように注意し、コネクター20Aの本体部21Aを舟形ポート15Aの筒状部163の中に押し込む。そして、嵌合溝2030Aに封止部155Aを嵌合させ、当接面200A、161A同士が当接するまで完全にコネクター本体部21Aを筒状部163に押し込む。
【0094】
この操作により、コネクター本体部21Aの側面は筒状部163の内面と液密に接触し、コネクター20Aと舟形ポート15Aの接続がなされる。
【0095】
続いて、この接続状態を維持したまま、オペレーターはコネクター20Aを当該コネクター20Aの軸芯の周りに沿って60°の角度まで回転させ、係合ツメ153A、154Aをそれぞれ係合フランジ201A、202Aに係合させることでロック動作を行う。このロック動作に伴い、嵌合部2030Aに嵌合された封止部155Aが回転移動し、前記連結部が破断して、前記スリットがコネクター孔L1〜L3に臨んで現れる。これにより、貯留部100内の栄養剤が、コネクター孔L1〜L3を介して輸液チューブ30側に流通可能となる。
【0096】
以上の動作により、実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、使用時には貯留部100内の栄養剤が外気に触れることなく舟形ポート15Aの封止を解放できる。よって、異物混入による栄養剤の汚染(コンタミネーション)を防止して、衛生的に栄養剤を患者に投与できる。また、舟形ポート15Aの封止の解放は、常に舟形ポート15Aがコネクター20Aと接続した状態でなされるので、舟形ポート15Aから栄養剤が外に漏れる問題も防止できる。
【0097】
さらに実施の形態2では、舟形ポート15Aとコネクター20Aとが構成上、互いに厳密な接続選択性を有するので、異なる輸液チューブに舟形ポート15Aを誤接続する問題を確実に防止する効果も奏される。
【0098】
なお、
図8ではコネクター20Aに嵌合溝2030A及びコネクター孔L1〜L3を形成する構成を例示した。このほか、実施の形態1のコネクター20のように、コネクター本体部21Aの内部に輸液チューブ30と連通する円筒状の空間(流路)を形成し、この円筒状の内壁に、リブ155a〜155cと嵌合可能な嵌合溝2030a〜2030cを形成してもよい。
<その他の事項>
上記実施の形態では、3本のリブ155a〜155cを放射状(三矢状)に組み合わせてなる封止部155を示したが、リブの本数はこれに限定されず、1本又は2本でも良いし、4本以上であってもよい。
【0099】
さらにリブを設ける代わりに、コネクターの軸芯と平行に長手方向を揃えてロッド(柱状体)を立設し、当該ロッドの根元部分の周囲に薄肉部からなる連結部を形成し、ロッドの直下に、前記スリットに相当する孔を形成することもできる。この場合、コネクターには前記嵌合溝の代わりにロッドを挿入可能な凹部を形成し、ロック動作に伴って各ロッドが根元で折れ、スリット(孔)が現れることによりポートの封止が解放される等の工夫を行う。または、単純な立体形状(直方体状、多角柱状等)を持つ封止部と、これに嵌合可能な嵌合溝の組み合わせを利用することもできる。但し、いずれの構成を採用する場合も、舟形ポートにコネクターを接続した後においても液密状態を保持し、流路が解放されるコネクター本体部の内部が外気に触れないように注意する。
【0100】
なお、舟形ポートとコネクターの間の液密性を向上させるため、例えば舟形ポートの当接面や突出部の表面等のいずれかにパッキンやシリコン素材のシーリング部材を配設してもよい。また、舟形ポートとコネクターの互いの接触面を平坦にするための表面処理を行うことも有効である。
【0101】
また、舟形ポートに関しては当接面の上に前記突出部を設けず、当接面の上に直接、封止部を設けても、流路解放時に流路と外気が接触するのを防止できる。しかしながら、ロック前でも舟形ポートとコネクターの間で優れた液密性を確保するためには前記突出部を設け、舟形ポートとコネクターの液密な接触面積を増大させることが望ましい。このため、実施の形態2のように筒状部とコネクター本体部とを液密に接触させる等の工夫を行うことが好適である。
【0102】
また、コネクターと舟形ポートは、係合ツメと係合フランジによって係合する構成に限定されず、これ以外の係合手段を用いてもよい。例えばコネクターと舟形ポートとを螺合で係合してもよい。
【0103】
本発明の医療用投与セットは、例示した舟形ポート15及びコネクター20のように、互いに専用の組み合わせとして作製されたオス型コネクターとメス型コネクターの両方を併せて用いる場合に最も高い効果を発揮する。しかしながら、舟形ポート15が設けられた貯留部100を単体で用いる場合でも、封止部155の採用により、コネクター20へのロックを行う際までバック100内部の高い封止性を発揮できる点で大きなメリットを有している。
【0104】
実施の形態では、貯留部100として柔軟な樹脂フィルムからなる容器を例示したが、これは医療用容器の一例にすぎず、素材を限定しない。紙パックや、ガラス瓶、金属容器、シリンジ等、その他公知の医療用容器を用いてもよい。
【0105】
また、当然ながら前記容器内に貯留する液状物は経腸栄養剤に限定されず、静脈へ投与する物以外であって、患者に投与すべき各種栄養材等、様々な液状物であってもよい。