(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記技術では、バック部の上下辺にストレッチテープを配置することが想定されている。そのため、前記技術においては、バック部の上下辺での締め付けが強く、バック部が身体に食い込むのを防ぐことができなかった。また、前記技術は、身体の脇全体の引き締めを目的としており、着用時の圧迫感については、解決できていなかった。さらに、体型補整機能のさらなる向上も望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、十分な体型補整機能を有し、圧迫感がなく、身体への食い込みが生じにくい、カップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、土台部、バック部および肩ストラップを含み、
前記土台部は、前記一対のカップ部の下縁部に取り付けられ、
さらに、前記土台部の脇部において、前記土台部の幅方向に沿って芯材が配置され、
前記バック部は、前記土台部の脇部に、前記芯材を介して取り付けられ、
前記肩ストラップの一端が、前記カップ部の上部に取り付けられ、前記肩ストラップの他端が、前記バック部の上部に取り付けられ、
前記バック部は、テープ状の補強部を含み、
前記テープ状の補強部の一端が、前記肩ストラップと前記バック部との連結部付近に取り付けられ、前記テープ状の補強部の他端が、前記芯材の上端から一定距離を置いた下側の位置で、前記芯材に取り付けられ、
前記バック部の上辺部の肌側および下辺部の肌側は、平坦であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分な体型補整機能を有し、圧迫感がなく、身体への食い込みが生じにくい、カップ部を有する衣類を提供することができる。このため、本発明は、体型補整機能と着用感の良さとを実現することができ、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1および
図2に、本発明のカップ部を有する衣類の第1の実施形態に係るブラジャー100を示す。
図1は、ブラジャー100の斜視図、
図2は、ブラジャー100のバック部付近の拡大図である。本実施形態のブラジャー100は、一対のカップ部101、土台部110、バック部103および肩ストラップ104を備えた、いわゆる3/4カップタイプのブラジャーである。本実施形態において、土台部110は、一対のカップ部101の下縁部に取り付けられ、肩ストラップ104の一端が、カップ部101の上部に取り付けられ、肩ストラップ104の他端が、バック部103の上部に取り付けられている。また、本実施形態では、カップ部101と土台部110との連結部に、ワイヤー部102を有する。本発明において、ワイヤー部102は必須の構成要素ではないが、ブラジャーの保形性を高めるためには、ワイヤー部102を有することが好ましい。土台部110の脇部には、土台部110の幅方向に沿って芯材105が配置されている。ここで、「幅方向」とは、着用時における上下方向をいう。そして、バック部103は、土台部110の脇部に、芯材105を介して取り付けられている。
【0012】
図2に示すように、本実施形態において、バック部103は、テープ状の補強部(以下、「補強部」ともいう。)106を含む。補強部106の一端は、肩ストラップ104とバック部103との連結部S付近に取り付けられ、その他端は、芯材105の上端から一定距離を置いた下側の位置である、芯材105の略中央部に取り付けられている。ここで、「上」「下」とは、着用時における上下を意味する。これにより、バック部103において補強部106よりも上側を構成する部分103Aは、バック部103上辺と、芯材105と、補強部106とで囲まれる三角形状となる。
【0013】
本実施形態において、補強部106は、前述のとおり、肩ストラップ104と、土台部110の脇部に取り付けられている芯材105とに連結されている。これにより、補強部106が肩ストラップ104および土台部110の両方から引かれ、補強部106が、身体の脇部分を押さえて引き締める。
【0014】
本実施形態において、バック部103の上辺部L1の肌側および下辺部L2の肌側は平坦であり、端始末が凹凸のない仕様となっている。ここで、「上辺部」とは、バック部103における上辺を含む周辺部、「下辺部」とは、バック部103における下辺を含む周辺部を意味する。従来のテープづかいによる端始末の場合には、着用者の肌への跡つきによる不快感や、部分的な圧迫による強い締め付け感があった。本実施形態のように、肌側が平坦で凹凸のない端始末とすることにより、補強部106で押さえた身体脇部分の肉を上下に分散させることができ、バック部103が身体に食い込んで段差が生じるのを防ぐことができる。
【0015】
具体的には、本実施形態において、上辺部L1は、肌側と反対側への折り返し始末(ワサ始末)となっている。そして、前述のとおり、補強部106よりも上側を構成する部分103Aは、バック部103上辺と芯材105と補強部106とで囲まれた三角形状となっている。これにより、補強部106が身体の脇部分を押さえる力を、上方向に分散させることができる。ここで、補強部106が、バック部103の長さ方向と平行に配置され、補強部106よりも上側を構成する部分103Aが三角形状にならない場合には、補強部106が身体の脇部分に食い込み、段差が生じてしまう。そこで、本実施形態のように、補強部106を斜めに配置し、三角形状の前記部分103Aを形成することによって、力を分散させ、補強部106が身体に食い込むのを防ぐことができる。また、本実施形態において、下辺部L2には、ヘムパワーネットが使用されている。このように、バック部103の下辺部をテープレス始末にすることによって、補強部106が押さえた肉を、下方向に分散することができる。
【0016】
本実施形態において、身体の脇部分を押さえているのは補強部106であり、バック部103の上下辺の締め付け力は強くない。そのため、着け心地が軽く、圧迫感が生じない。また、本実施形態において、三角形状の前記部分103Aは、身体の脇部分において、脇付近の肉が最もやわらかい箇所に配置される。これにより、肉のやわらかい部分を前記部分103Aでやさしく押さえることができ、やわらかい着け心地を得ることができる。
【0017】
図3(a)に、本実施形態のブラジャー100のバック部103を、
図2におけるI−I方向に見た断面図を示す。図示のように、肌側から、補強部106よりも下側を構成する部分103B、補強部106よりも上側を構成する部分103A、補強部106の順に配置され、これらの部材は、補強部106の上辺および下辺に沿って長さ方向に縫着することで互いに固着されている。図示のとおり、前記部分103Aは、バック部103の上辺部L1を形成しており、生地を肌側と反対側に向けて二つに折り返す折り返し始末によって形成されている。ただし、本実施形態のように、生地が完全に重なるように折り返されている場合には、生地を折り返す方向は、肌側でも、肌側と反対側でもよい。なお、本発明は、例えば、
図3(b)に示すように、前記部分103Aおよび前記部分103Bが一つの部材で形成されていてもよい。この場合には、前記部分103Aに相当する部分と前記部分103Bに相当する部分とを縫着する工程が不要となるため、縫製の便宜上好適である。
【0018】
本実施形態において、補強部106よりも上側を構成する部分103Aに使用される素材は、特に制限されないが、例えば、パワーネットまたはレース編地等があげられる。また、補強部106よりも下側を構成する部分103Bに使用される素材は、特に制限されないが、例えば、フリーカット、幅広のゴム素材、レース編地、パワーネット、ヘムパワーネット等があげられる。本実施形態では、前記部分103Aには、パワーネット、前記部分103Bには、ヘムパワーネットが使用されており、両者が別の素材となっているが、本発明はこれに限られず、同じ素材で形成されていてもよい。なお、前記部分103Bも、前記部分103Aと同様に、下辺部L2を折り返し始末としても良い。また、前記部分103Aに端始末が不要であるヘムパワーネットを用い、前記部分103Bにパワーネットを用いて下辺部L2を折り返す構成としてもよい。
【0019】
本実施形態では、前述のとおり、バック部103の上辺部L1は折り返し始末がされており、締め付け感がないが、補強部106によって脇部分を押さえるため、着用時にバック部103の上辺部に不安定感を感じることはない。
【0020】
本実施形態において、補強部106の一端は、肩ストラップ104とバック部103との連結部S付近に取り付けられている。ここで、連結部S付近とは、バック部103の上辺上における、肩ストラップ104が引く力を失わない位置の範囲をいう。補強部106の一端の取り付け位置は、肩ストラップ104との連結部Sから半径2cmの円の範囲内が好ましく、特に好ましくは、前記連結部Sである。なお、本実施形態では、肩ストラップ104は、金具を介してバック部103と連結される構成であるが、後述のとおり、金具を介さずに直接バック部103に連結される構成としてもよい。
【0021】
本実施形態において、補強部106の他端は、芯材105の長さ方向の略中央部に取り付けられている。しかし、本発明はこれに限られず、補強部の他端は、芯材の上端から一定距離を置いた下側の位置で、芯材に取り付けられていればよい。ただし、補強部の芯材との取り付け位置がバック部の上辺に近すぎると、補強部が身体の脇部分を押さえる力を適切に分散させることができず、補強部が身体に食い込み、段差が生じてしまう。そこで、前記「一定距離」とは、バック部の幅に応じて、食い込みが生じ難い適切な距離をいい、例えば、芯材の上端から芯材の全長の1/3よりも下側が好ましく、さらに好ましくは、芯材の中央部である。
【0022】
本実施形態において、芯材105は、上端側がカップ部101側に傾斜して配置されている。これにより、芯材105がバック部103の長さ方向に対して直交するように配置される場合と比較して、広い範囲で身体の脇部分を押さえることができるため、好ましい。芯材105の傾斜角度は、特に制限されず、デザインに応じて、補強部106の位置との調整を図りながら、適宜設定することができる。
【0023】
本実施形態において、補強部106に使用できる素材は、特に制限されないが、例えば、テープ素材、ストレッチレース(ナローレース)等があげられる。また、本実施形態において、芯材105は、例えば、芯地、テープ状部材、可撓性を有する樹脂または金属等により形成することができる。
【0024】
本実施形態において、バック部103の幅は、ワイヤー部102の最下点から脇側上端までの高さの1/2程度の幅から、前記高さと同程度の幅となるように設定されており、より好ましくは前記高さと同程度の幅である。このように、本実施形態において、前記幅は、従来のブラジャーと比較して、広く設定されている。これにより、バック部103で覆われる範囲が広くなり、バック部103による体型補整効果を十分に得ることができるため、好ましい。
【0025】
本実施形態において、バック部103は、背中心端部に連結係止部107を有している。ここで、「背中心」とは、本実施形態のブラジャーを着用者が着用したときに、着用者の背中の中央付近となる位置をいう。本実施形態のブラジャーでは、連結係止部107として、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))を使用することができるが、他の種類の係止具を使用してもよい。また、バック部103が連結係止部107を有していなくてもよい。例えば、連結係止部を前中心に設けてフロントホックタイプとしてもよい。また、連結係止部がないタイプ、バック部を結んで係止するタイプであってもよい。
【0026】
連結係止部107としては、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))、グリッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどを、デザインや用途に応じて適宜選択して使用することができる。なお、上記のフック・アンド・アイやグリッパー、ボタンを用いる場合には、複数の留め位置を予め設けておくことにより、締め付け具合を微調整できるようにしておくことも好ましい。なお、上記以外の他の種類の係止具を使用してもよい。
【0027】
本実施形態においては、肩ストラップ104の一端は一対のカップ部101に取り付けられ、他端はバック部103の上部に取り付けられた円環、Z環、エイト環などの係止具108Aを通って反転し、エイト環からなる長さ調節具108Bに導入されることによって、肩ストラップ104の長さ調製が可能な状態で、バック部103の上部に取り付けられている。また、肩ストラップ104の一端は、バック部103の上部に直接固着されても良い。肩ストラップ104の取り付け位置は、カップ部101の形状やブラジャーのデザインによって決定することができる。肩ストラップ104は、カップ部101を肩から吊り下げるものであればよい。紐や布テープであってもよいし、タンクトップのような幅の広い、いわゆるラウンドタイプのストラップであってもよい。肩ストラップ104の態様は、一対のカップ部101に対応して一対の肩ストラップ104をそれぞれカップ部101上部とバック部103に取り付ける態様に限定されず、例えば、スポーツタイプのブラジャーの肩ストラップのように、背中側で2本の肩ストラップ104が一体となりバック部103に取り付けられる態様であってもよい。
【0028】
本実施形態では、バック部103の上辺部L1が折り返し始末となっており、下辺部L2にヘムパワーネットが使用されている態様について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明において、バック部の上辺部および下辺部は、肌側に対して平坦であればよい。肌側に対して平坦で端始末が凹凸のない仕様としては、例えば、外側へテープを貼り付けたり、また、バック部の上辺部および下辺部を肌側と反対側に折り返した状態で、上辺部および下辺部より少し内側部分でそれぞれ縫着し、端部を補強するようにしてもよい。前記「内側」とは、上辺部においては、上辺部よりも下側、下辺部においては、下辺部よりも上側を意味する。また、
図3(c)に示すように、上辺部を肌側に折り返し、前記部分103Aの肌側全面に裏打ち布103Xを設け、上辺部よりも内側の部分で、裏打ち布103Xと前記部分103Aとを縫着してもよい。また、下辺部を肌側に折り返し、裏打ち布103Xを前記部分103Bの肌側にも設けてもよい。その他組合せにより様々なものが可能である。
【0029】
以上、第1の実施形態としては、3/4カップのブラジャーを例示して説明したが、本発明は、フルカップや1/2カップのブラジャー等にも適用することができる。ただし、1/2カップのブラジャーでは、肩ストラップがカップ部およびバック部を引く力が弱いため、補強部が肩ストラップに引かれて脇部分を押さえる力が弱くなる。したがって、本発明は、フルカップや3/4カップのブラジャーにおいて、好適に用いることができる。また、本発明において、カップ部の態様は制限されない。カップ部には、上下の部材を接ぎ合わせて形成されているもの、モールド成形のもの、パッドが装着されているもの等、種々のタイプを使用することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
図4に、本発明のカップ部を有する衣類の第2の実施形態に係るブラジャー200を示す。
図4は、ブラジャー200のバック部203付近の拡大図である。
【0031】
本実施形態において、バック部203は、バック部203の脇側端部Mから連結係止部107に至るまで、幅が一定である。その他は、前記第1の実施形態と同様である。前記第1の実施形態で説明したように、本実施形態においても、バック部203の幅は、従来のブラジャーと比較して広いことが好ましい。このように、バック部203の幅全体を一定に、かつ、広く設定することにより、着用時の安定感を高めることができる。バック部203の幅全体を一定にするか否かは、実現したいデザインまたは着用感によって、決定することができる。
【0032】
(第3の実施形態)
次に、
図5(a)に、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ブラキャミソール300の斜視図を示す。
【0033】
このブラキャミソール300のブラジャー相当部分は、
図1で説明したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。
図1に示したブラジャー100と同一部分には、同一の符号を付して、重複する説明を省略している。本態様においては、ブラキャミソール300が、ブラジャー100の下側に、身頃301を有している。ここでは、第1の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラキャミソールとすることもできる。
【0034】
(第4の実施形態)
図5(b)に本発明のカップ部を有する衣類のその他の例として、ブラキャミソール400の斜視図を示す。このブラキャミソール400は、キャミソールの身頃内側にブラジャー相当部分が設けられており、前記ブラジャー相当部分は、
図1で示したブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本実施形態においては、ブラキャミソール400は、ブラジャー相当部分を覆うように身頃401を有している。そして、バック部103は連結係止部を有しておらず、連結係止部の操作をすることなく着脱ができる態様である。ここでは、第1の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するブラキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するブラキャミソールとすることもできる。本実施形態の構成にすることにより、カップ部のデザインにかかわらず、着用時の外観のバリエーションを多様にすることができる。また、カップ部が、アウター着用時において、アウターのシルエットに影響を及ぼすことを軽減できる。
【0035】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャーおよびブラキャミソールをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のようなファンデーション衣類以外にも、ボディスーツ、ブラスリップ、水着、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。