特許第6016075号(P6016075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016075
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】車体中央部のフロア構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20161013BHJP
   B60N 2/44 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B62D25/20 H
   B60N2/44
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-128971(P2012-128971)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-252771(P2013-252771A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】定直 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋場 優
(72)【発明者】
【氏名】河合 桂介
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−076600(JP,A)
【文献】 特開2011−084122(JP,A)
【文献】 特開2009−298186(JP,A)
【文献】 特開2004−352078(JP,A)
【文献】 特開2011−173507(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0027383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60N 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に沿って設けられるメインフロアパネルとリヤフロアパネルとを備え、前記メインフロアパネルの後部に前記リヤフロアパネルが接合され、前記メインフロアパネルの左右両側の下部に車両前後方向へ延びるフロアサイドメンバが設けられ、前記リヤフロアパネルの前方側に上方へ延びる縦壁が形成され、前記リヤフロアパネルの上部にリヤシートが設置されているとともに、前記リヤシートの前方側の下部から前記リヤフロアパネルの縦壁に沿ってリヤシートレッグが下方へ向かって延び、かつ前記リヤシートレッグの下端部が前記リヤフロアパネルの前方側の底部に取付けられている車体中央部のフロア構造において、
前記メインフロアパネル及び前記リヤフロアパネルの左右両側の上部には、車両前後方向へ延びるリヤシートレッグリンフォース部材が配置され、
前記リヤシートレッグの下端部は、前記リヤシートレッグリンフォース部材の後端部及びレッグブラケットを介して前記リヤフロアパネルの上面に取付けられ、前記リヤシートレッグリンフォース部材の前端部は、リンフォース部材用ブラケットを介して前記メインフロアパネル及び前記フロアサイドメンバに連結され、
前記メインフロアパネルと前記リヤフロアパネルとの接合箇所は、前記レッグブラケットと前記リンフォース部材用ブラケットとの間に位置していることを特徴とする車体中央部のフロア構造。
【請求項2】
前記リヤフロアパネルの前方側部分は、前記縦壁の下部から連続して下方へ湾曲した曲線を描きながら、前端部が車両前方へ向かって水平方向に延びる形状に形成され、前記リヤフロアパネルの曲線部分には、底面部を前記リヤフロアパネルの曲線部分に沿う曲線形状に形成した前記レッグブラケットが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車体中央部のフロア構造。
【請求項3】
前記リヤシートレッグリンフォース部材と前記メインフロアパネル及び前記リヤフロアパネルとの上下間には、クリアランスが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体中央部のフロア構造。
【請求項4】
前記リヤシートレッグリンフォース部材の車両幅方向の辺部には、車両前後方向へ沿って延び、かつ上方もしくは下方へ突出するフランジ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車体中央部のフロア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤシートが取付けられる車体中央部のフロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車などの車両における車体中央部のフロア構造は、車両前後方向に沿って設けられるメインフロアパネルとリヤフロアパネルとを備えており、メインフロアパネルの後部にリヤフロアパネルの前部が接合されている。そして、リヤフロアパネルの前方側には、上方へ延びる縦壁が形成されているとともに、当該縦壁の後方に位置するリヤフロアパネルの上部には、リヤシートが設置されている。また、当該縦壁の後方に位置するリヤフロアパネルの下方には、フューエルタンクが配置されている。このため、リヤフロアパネルは、開断面構造となっている。
【0003】
このようなフロア構造において、リヤシートには、前方側の下部からリヤフロアパネルの縦壁に沿って下方へ延びるリヤシートレッグが設けられており、リヤシートは、当該リヤシートレッグの下端部をリヤフロアパネルの前方側の底部に締結することによって、リヤフロアパネルの上面に取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の車体中央部のフロア構造では、リヤフロアパネルが開断面構造であり、リヤフロアパネルの前方側部分の剛性が不足しているので、車両前方からの衝撃荷重によってリヤシートが車両前方側へ向かって変位する際にリヤシートの上部に掛かる荷重がモーメントとなり、リヤシートレッグの取付部に位置するリヤフロアパネルが局所的に変形して、リヤシートレッグの取付部が車両前方へ向かって回動してしまい、リヤシートを支えきれなくなり、当該リヤシートが車両前方へ大きく移動するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、リヤシートレッグの取付部の剛性を向上させることにより、リヤシートの上部に掛かる荷重がモーメントとなってリヤシートレッグの取付部に伝達されるときに、当該荷重を効率良く吸収して拡散させることができ、リヤシートレッグの取付部に位置するリヤフロアパネルの局所変形や、リヤシートレッグの取付部の車両前方への回動を抑え、リヤシートの車両前方への移動量を低減させることが可能な車体中央部のフロア構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両前後方向に沿って設けられるメインフロアパネルとリヤフロアパネルとを備え、前記メインフロアパネルの後部に前記リヤフロアパネルが接合され、前記メインフロアパネルの左右両側の下部に車両前後方向へ延びるフロアサイドメンバが設けられ、前記リヤフロアパネルの前方側に上方へ延びる縦壁が形成され、前記リヤフロアパネルの上部にリヤシートが設置されているとともに、前記リヤシートの前方側の下部から前記リヤフロアパネルの縦壁に沿ってリヤシートレッグが下方へ向かって延び、かつ前記リヤシートレッグの下端部が前記リヤフロアパネルの前方側の底部に取付けられている車体中央部のフロア構造において、前記メインフロアパネル及び前記リヤフロアパネルの左右両側の上部には、車両前後方向へ延びるリヤシートレッグリンフォース部材が配置され、前記リヤシートレッグの下端部は、前記リヤシートレッグリンフォース部材の後端部及びレッグブラケットを介して前記リヤフロアパネルの上面に取付けられ、前記リヤシートレッグリンフォース部材の前端部は、リンフォース部材用ブラケットを介して前記メインフロアパネル及び前記フロアサイドメンバに連結され、前記メインフロアパネルと前記リヤフロアパネルとの接合箇所は、前記レッグブラケットと前記リンフォース部材用ブラケットとの間に位置している。
【0008】
また、本発明において、前記リヤフロアパネルの前方側部分は、前記縦壁の下部から連続して下方へ湾曲した曲線を描きながら、前端部が車両前方へ向かって水平方向に延びる形状に形成され、前記リヤフロアパネルの曲線部分には、底面部を前記リヤフロアパネルの曲線部分に沿う曲線形状に形成した前記レッグブラケットが配置されている
【0009】
そして、本発明において、前記リヤシートレッグリンフォース部材と前記メインフロアパネル及び前記リヤフロアパネルとの上下間には、クリアランスが設けられている。
また、本発明において、前記リヤシートレッグリンフォース部材の車両幅方向の辺部には、車両前後方向へ沿って延び、かつ上方もしくは下方へ突出するフランジ部が設けられている。
【発明の効果】
【0010】
上述の如く、本発明に係る車体中央部のフロア構造は、車両前後方向に沿って設けられるメインフロアパネルとリヤフロアパネルとを備え、前記メインフロアパネルの後部に前記リヤフロアパネルが接合され、前記メインフロアパネルの左右両側の下部に車両前後方向へ延びるフロアサイドメンバが設けられ、前記リヤフロアパネルの前方側に上方へ延びる縦壁が形成され、前記リヤフロアパネルの上部にリヤシートが設置されているとともに、前記リヤシートの前方側の下部から前記リヤフロアパネルの縦壁に沿ってリヤシートレッグが下方へ向かって延び、かつ前記リヤシートレッグの下端部が前記リヤフロアパネルの前方側の底部に取付けられているものであって、前記メインフロアパネル及び前記リヤフロアパネルの左右両側の上部には、車両前後方向へ延びるリヤシートレッグリンフォース部材が配置され、前記リヤシートレッグの下端部は、前記リヤシートレッグリンフォース部材の後端部及びレッグブラケットを介して前記リヤフロアパネルの上面に取付けられ、前記リヤシートレッグリンフォース部材の前端部は、リンフォース部材用ブラケットを介して前記メインフロアパネル及び前記フロアサイドメンバに連結され、前記メインフロアパネルと前記リヤフロアパネルとの接合箇所は、前記レッグブラケットと前記リンフォース部材用ブラケットとの間に位置しているので、リヤシートレッグの取付部の剛性を向上させることができる。
したがって、本発明のフロア構造によれば、車両前方からの衝撃で生じたリヤシートの上部に掛かる荷重が起き上がりモーメントとなってリヤシートレッグを介してリヤフロアパネルの取付部に伝達されると、リヤシートレッグの取付部と相俟ってL字構造を形成するリヤシートレッグリンフォース部材が当該モーメントを車両前方のメインフロアパネル及びフロアサイドメンバに円滑に伝えることが可能となるため、当該モーメントを効率的に吸収及び拡散することができ、リヤシートレッグの取付部に位置するリヤフロアパネルの局所変形を低減させ、かつリヤシートレッグの取付部が車両前方へ回動するのを確実に抑えることができるとともに、リヤシートの上部が車両前方へ移動する量を低減させることができる。
また、本発明のフロア構造によれば、リヤシートレッグ及びリヤシートレッグリンフォース部材のリヤフロアパネル及びメインフロアパネルへの取付作業が容易となる。さらに、リヤシートレッグの取付部周辺のフロアパネルの剛性を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記リヤフロアパネルの前方側部分は、前記縦壁の下部から連続して下方へ湾曲した曲線を描きながら、前端部が車両前方へ向かって水平方向に延びる形状に形成され、前記リヤフロアパネルの曲線部分には、底面部を前記リヤフロアパネルの曲線部分に沿う曲線形状に形成した前記レッグブラケットが配置されいるので、リヤシートレッグの取付部に伝達される斜め下方の荷重を起き上がりモーメントに効率良く変換することができる
【0013】
そして、本発明において、前記リヤシートレッグリンフォース部材と前記メインフロアパネル及び前記リヤフロアパネルとの上下間には、クリアランスが設けられているので、起き上がりモーメントが発生しても、かさ上げされた高剛性のリヤシートレッグリンフォース部材の存在によって、かさ上げの分高い位置で荷重を受け、荷重をメインフロアパネルやフロアサイドメンバに分散することが可能となり、リヤシートレッグの取付部の車両前方への回動を抑えることができる。
【0014】
また、本発明において、前記リヤシートレッグリンフォース部材の車両幅方向の辺部には、車両前後方向へ沿って延び、かつ上方もしくは下方へ突出するフランジ部が設けられているので、リヤシートレッグリンフォース部材の剛性を高め、起き上がりモーメントによるリヤシートレッグリンフォース部材の変形を抑えることができるとともに、リヤシートレッグリンフォース部材による荷重分散効果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るフロア構造が適用された車体中央部を斜め前方の上から見たものであり、リヤシートがリヤシートレッグを介してリヤフロアパネルに取付けられている状態を示す斜視図である。
図2】(a)は図1のリヤシートがリヤフロアパネルに取付けられる前の状態を示す斜視図、(b)は(a)のX部を拡大して示す斜視図である。
図3図1のリヤシートレッグの取付部付近を拡大して示す側面図である。
図4】(a)は図1におけるA−A線断面図、(b)は図1におけるB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1図4は本発明の実施形態に係る車体中央部のフロア構造を示すものである。
【0017】
本発明の実施形態に係る車両の車体中央部のフロア構造は、図1図4に示すように、車両前後方向に設けられるメインフロアパネル1とリヤフロアパネル2とを備えており、メインフロアパネル1の後部とリヤフロアパネル2の前部とは、互いに重ね合わせられた状態で接合されている。メインフロアパネル1の車両幅方向の左右両側の下部には、車両前後方向へ延びる剛性部材のフロアサイドメンバ3がそれぞれ設けられている。これらフロアサイドメンバ3は、断面ハット型形状に形成されており、左右両側の上部フランジ3aをメインフロアパネル1の下面に接合することによって固定されている。
メインフロアパネル1の車両幅方向の中間部には、車両上方へ向かって突出する断面ハット型形状のフロアトンネル4が車両前後方向へ沿って設けられている。また、リヤフロアパネル2の前方側には、上方へ延びる縦壁5が前面に向かって形成されている。なお、図1及び図2において、矢印F方向は車両前方を示している。
【0018】
本実施形態のリヤフロアパネル2の後部は、図1及び図2に示すように、縦壁5などの存在によって、メインフロアパネル1と比べて一段高くなるように設定されており、リヤフロアパネル2の上部には、分割タイプである左右一対のリヤシ−ト6がそれぞれ設置されている。これらリヤシート6は、乗員が着座するシートクッション6aと、乗員の背を受ける回動可能なシートバック6bとを有している。
また、リヤシート6の前方側には、シートクッション6aの前方側の下部からリヤフロアパネル2の縦壁5に沿ってリヤシートレッグ7が下方へ向かって延在して設けられており、当該リヤシートレッグ7の下端部7aは、断面コ字形状の支持片8及びピン9を介して、リヤフロアパネル2の前方側の底部に回動自在に取付けられている。すなわち、リヤシートレッグ7の下端部7aは、ピン9によって支持片8の対向壁に回動自在に連結されている。また、支持片8は、底部に設けた左右一対のボルト孔10に挿入した締結ボルト11によって、後述のリヤシートレッグリンフォース部材及びレッグブラケットに締付け固定されている。
【0019】
本実施形態のフロア構造におけるメインフロアパネル1及びリヤフロアパネル2の左右両側の上部には、図1図4に示すように、車両前後方向へ延びるリヤシートレッグリンフォース部材12がそれぞれ配置されており、このリヤシートレッグリンフォース部材12は、リヤシートレッグ7の取付部から車両前方のフロアサイドメンバ3の後端部の前方側付近まで延在し、上下方向で重合することが可能な長さに設定されている。そして、リヤシートレッグリンフォース部材12の後端部12bは、リヤシートレッグ7の支持片8に連結され、リヤシートレッグリンフォース部材12の前端部12aは、メインフロアパネル1及びフロアサイドメンバ3に連結されている。
【0020】
このため、リヤシートレッグリンフォース部材12は、リヤシートレッグ7の下端部7aの支持片8及び後述の前後ブラケットとほぼ同一の幅を有する1枚のパネル部材を用いて形成されており、車両幅方向の左右両側部を下方へほぼ直角に折り曲げるとともに、その下端部を外方へほぼ直角に折り曲げることにより、断面ハット型形状を有している。しかも、リヤシートレッグリンフォース部材12の車両幅方向の左右両側の辺部には、図2(a)及び図4(a)に示すように、車両前後方向へ沿って延び、かつ上方もしくは下方(本実施形態では上方)へ突出するフランジ部13が設けられており、これらフランジ部13によって、リヤシートレッグリンフォース部材12の剛性を高め、起き上がりモーメントによる変形を抑えるとともに、入力した荷重を分散する効果の向上を図っている。
そして、リヤシートレッグリンフォース部材12の前後端部12a,12bは、図2(a)及び図4(b)に示すように、平坦面に形成されているとともに、後端部12bは、取付箇所の高さに対応させて、前端部12aよりも上下方向の位置が高くなるように形成されている。さらに、リヤシートレッグリンフォース部材12の前後端部12a,12bには、締結ボルト11を挿入する左右一対の挿入孔14がそれぞれ穿設されている。
【0021】
また、本実施形態のフロア構造において、リヤシートレッグ7の下端部7aは、図2及び図4(b)に示すように、リヤシートレッグリンフォース部材12の後端部12b及びレッグブラケット15を介してリヤフロアパネル2の上面に取付けられ、リヤシートレッグリンフォース部材12の前端部12aは、リンフォース部材用ブラケット16を介してメインフロアパネル1及びフロアサイドメンバ3に連結されている。
そのため、リヤフロアパネル2の前方側部分は、縦壁5の下部から連続して下方へ湾曲した曲線を描きながら、前端部が車両前方へ向かって水平方向に延びる形状に形成された曲線部分2aを有している。このリヤフロアパネル2の曲線部分2aには、底面部15aをリヤフロアパネル2の曲線部分2aに沿う曲線形状に形成したレッグブラケット15が配置されており、当該レッグブラケット15の底面部15aの形状によって、リヤシートレッグ7の下端部7aの取付部に伝達される斜め下方の入力荷重を起き上がりモーメントに効率良く変換できるように構成されている。レッグブラケット15の底面部15aは、リヤフロアパネル2の曲線部分2aの上面にスポット溶接の溶接部W1によって接合されるようになっている。
【0022】
さらに、レッグブラケット15の車両幅方向の左右両側部には、底面部15aから上方へ突出する左右一対の締結部15bが設けられており、これら締結部15bには、支持片8のボルト孔10及びリヤシートレッグリンフォース部材12の挿入孔14と対応して、締結ボルト11を挿通させる取付孔17が穿設されている。そして、取付孔17と対応する締結部15bの裏面側には、締結ボルト11と螺合する溶接ナット18が固着されている。したがって、リヤシートレッグ7の下端部7aは、締結ボルト11及び溶接ナット18により、支持片8及びリヤシートレッグリンフォース部材12の後端部12bを介してレッグブラケット15に締付け固定されるようになっている。
【0023】
一方、リンフォース部材用ブラケット16は、図2及び図4(b)に示すように、フロアサイドメンバ3の上部フランジ3aの間隔と同一の幅を有する1枚のパネル部材を用いて形成されており、取付箇所の高さに対応させて、後部16bが前部16aよりも上下方向の位置が高くなるように前後中間部分で上方へ折り曲げられ、全体が断面略クランク形状に形成されている。リンフォース部材用ブラケット16の前部16aは、平面視で左右両側に分かれたコ字形状に形成されており、フロアサイドメンバ3の上部フランジ3a及びメインフロアパネル1と3枚合わせに重ね合わせた状態で、スポット溶接の溶接部W2によって接合され、接合強度の向上が図られている。
また、リンフォース部材用ブラケット16の後部16bは、リヤシートレッグリンフォース部材12の挿入孔14と対応して、締結ボルト11を挿通させる左右一対の取付孔19が穿設されている。そして、取付孔19と対応する後部16bの裏面側には、締結ボルト11と螺合する溶接ナット18が固着されている。したがって、リヤシートレッグリンフォース部材12の前端部12aは、締結ボルト11及び溶接ナット18により、リンフォース部材用ブラケット16の後部16bに締付け固定されるようになっている。
【0024】
すなわち、本実施形態のフロア構造におけるリヤシートレッグリンフォース部材12とメインフロアパネル1及びリヤフロアパネル2との上下間には、図4(a)に示すように、クリアランスSが設けられており、クリアランスSの相当分がかさ上げされて配置されたリヤシートレッグリンフォース部材12によって、リヤシートレッグ7の下端部7aの取付部分が車両前方へ回動するのを抑えるように構成されている。
また、本実施形態のフロア構造では、図4(b)に示すように、メインフロアパネル1の後部とリヤフロアパネル2の前部とのスポット溶接による接合部W3が、レッグブラケット15とリンフォース部材用ブラケット16との間に位置している。このような配置関係によって、メインフロアパネル1とリヤフロアパネル2との接合箇所周辺の剛性向上が図られている。
【0025】
このように本発明の実施形態に係る車体中央部のフロア構造においては、リヤシートレッグ7の下端部7aとリヤシートレッグリンフォース部材12とによって形成される車両側面視でL字状の構造体を有しているため、車両前方からの衝撃によってリヤシート6の上部に車両前方への荷重が掛かり、起き上がりモーメントとなってリヤシートレッグ7の下端部7aを介してリヤフロアパネル2の取付部に伝達されるときに、リヤシートレッグリンフォース部材12が当該モーメントを車両前方のメインフロアパネル1及びフロアサイドメンバ3に円滑かつ確実に伝え、当該モーメントを効率的に吸収及び拡散することができ、リヤシートレッグ7の取付部に位置するリヤフロアパネル2の局所変形を低減させることができる。したがって、本発明の実施形態のフロア構造によれば、リヤシートレッグ7の取付部が車両前方へ回動するのを確実に抑えることが可能となり、リヤシート6の上部が車両前方へ移動する量を低減させることができる。
しかも、本実施形態のフロア構造においては、リヤシートレッグリンフォース部材12の後端部12bがリヤフロアパネル2に接合したレッグブラケット15に締付け固定され、リヤシートレッグリンフォース部材12の前端部12aがメインフロアパネル1に接合したリンフォース部材用ブラケット16に締付け固定され、リヤシートレッグリンフォース部材12とメインフロアパネル1及びリヤフロアパネル2との上下間にクリアランスSが設けられているため、リヤシートレッグリンフォース部材12をメインフロアパネル1及びリヤフロアパネル2に迅速かつ確実に取付けることができるとともに、リヤシートレッグ7の取付部が車両前方へ回動するのをより一層抑えることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態では、リヤシートレッグリンフォース部材12の左右両側の辺部に上方へ突出するフランジ部13を設けたが、下方へ突出するフランジ部13を設けても良い。また、左右両側のフランジ部13に代えて、リヤシートレッグリンフォース部材12の全体が上方もしくは下方へ突出する断面ハット型形状またはコ字形状に形成しても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 メインフロアパネル
2 リヤフロアパネル
2a 曲線部分
3 フロアサイドメンバ
3a 上部フランジ
4 フロアトンネル
5 リヤフロアパネルの縦壁
6 リヤシート
7 リヤシートレッグ
7a リヤシートレッグの下端部
8 支持片
9 ピン
10 ボルト孔
11 締結ボルト
12 リヤシートレッグリンフォース部材
12a 前端部
12b 後端部
13 フランジ部
14 挿入孔
15 レッグブラケット
15a 底面部
15b 締結部
16 リンフォース部材用ブラケット
16a 前部
16b 後部
17 取付孔
18 溶接ナット
19 取付孔
W1〜W3 溶接部
S クリアランス
図1
図2
図3
図4