特許第6016080号(P6016080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016080
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】電池モジュールの支持構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20161013BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/10 S
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-158933(P2012-158933)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-22157(P2014-22157A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柳 健次
(72)【発明者】
【氏名】中森 洋治
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−079511(JP,A)
【文献】 特開2012−101663(JP,A)
【文献】 特開2009−083673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルからなる電池モジュールと、当該電池モジュールを内方に収容するとともに、縁部が車体本体に固定された中空の電池ケースと、を備えた電池パックにおける電池モジュールの支持構造であって、
隣接する前記電池モジュール同士を保持して前記電池ケース内に載置されるロワホルダと、
前記ロワホルダに保持された複数の前記電池モジュール上に架け渡されるとともに、両縁部がそれぞれ前記電池ケースに固定されて前記電池モジュールを前記電池ケースに支持するアッパホルダと、を備え
前記ロワホルダ及びアッパホルダは、前記隣接する前記電池モジュール同士を、当該電池モジュール間を仕切る部材を介さず一体に支持することを特徴とする電池モジュールの支持構造。
【請求項2】
前記ロワホルダに保持された前記複数の前記電池モジュール間を前記アッパホルダの長手方向と略直交する方向に沿って跨るとともに前記アッパホルダ上に配置されるサポートホルダを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電池モジュールの支持構造。
【請求項3】
車両の車幅方向に沿って前記電池ケース内に設けられ、一端が前記電池ケースの一方側内周面に接続され、他端が前記一方側内周面に対向する位置の他方側内周面に接続されたインナークロスメンバを備えており、
前記サポートホルダの前記電池モジュールの短手方向両縁部は、前記インナークロスメンバに固定されていることを特徴とする請求項2に記載の電池モジュールの支持構造。
【請求項4】
前記電池モジュールは、車両前後方向に位置する側面の上部に上側爪部を有し、
前記アッパホルダは、前記上側爪部に係脱自在なアッパ側係合手段を有しており、
前記アッパホルダは、前記アッパ側係合手段を前記上側爪部に係合することで前記電池モジュールに取り付けられることを特徴とする請求項1から3のうち何れか一項に記載の電池モジュールの支持構造。
【請求項5】
前記電池モジュールは、車両前後方向に位置する側面の下部に下側爪部を有し、
前記ロワホルダは、前記下側爪部に係脱自在なロワ側係合手段を有しており、
前記ロワホルダは、前記ロワ側係合手段を前記下側爪部に係合することで前記電池モジュールに取り付けられることを特徴とする請求項1から3のうち何れか一項に記載の電池モジュールの支持構造。
【請求項6】
前記サポートホルダは、前記電池モジュールの上面と対向する部位に形成された補強ビートを有することを特徴とする請求項3に記載の電池モジュールの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルからなる電池モジュールを複数備えた電池パックにおける当該電池モジュールの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載される電池パックは、複数の電池セルから構成された電池モジュールと、当該電池モジュールを収容する電池ケースとを備えている。
電池パックは、一般的に車両のフロアパネルの下面に取り付けられている。フロアパネルの上面は、車室の一部を形成しているため、電池パックは、車室の外に配置される。
電池モジュールの電力は、当該電池モジュールと走行用モータとを接続する電力ケーブルにより走行用モータに供給される。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の電池セルからなる電池モジュールと、複数の電池モジュールを収容する電池ケースとを備えた電池パックが開示されている。電池モジュールは、電池パック内の車幅方向に2列、車両前後方向に6列配置されている。各電池モジュールは、その長手方向が車幅方向と一致するように配置されている。また、各電池モジュールは、側断面形状が略U字状で、各電池モジュールを上方から覆うホルダによって電池ケースに固定されている。具体的には、車幅方向に互いに隣接する電池モジュール間には、仕切り板が設けられている。そして、ホルダの両縁部をそれぞれ仕切板、電池ケースにボルトで接続することにより、各電池モジュールは電池ケースに固定されている。
また、電池ケースの車幅方向の両縁部は、ブラケットを介してフロアパネルに接続されている。これにより、電池パックは車体本体に固定されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数の電池セルからなる電池モジュールと、複数の電池モジュールを収容する電池ケースと、電池ケース内に冷却空気を供給する冷却装置と、電池ケース内の車幅方向両端部にそれぞれ設けられ、冷却空気が通過可能な空間部とを備えた電池パックが開示されている。電池モジュールは、電池パック内の車幅方向及び車両前後方向にそれぞれ3列ずつ配置されている。各電池モジュールは、その長手方向が車両前後方向と一致するように配置されている。また、各電池モジュールは、側断面形状が略U字状で、各電池モジュールを上方から覆うホルダによって電池ケースに固定されている。具体的には、車両前後方向に互いに隣接する電池モジュール間には、仕切部が設けられている。そして、ホルダの両縁部をそれぞれ仕切部や電池ケースにボルトで接続することにより、各電池モジュールは電池ケースに固定されている。
また、電池ケースの車両前後方向の両縁部及び車幅方向の両縁部は、連結アームを介してフロアパネルに接続されている。これにより、電池パックは車体本体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−101663号公報
【特許文献2】特開2012−79511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電池パックでは、車幅方向に互いに隣接する電池モジュール間に仕切り板が設けられているため、電池ケースの車幅方向の長さが大きくなってしまう。したがって、電池パックを小型化することへの弊害となっていた。
また、特許文献2に記載の電池パックでは、電池モジュールの長手方向が車両前後方向と一致するように配置されているとともに、車両前後方向に隣接する電池モジュール間に仕切部が設けられているため、電池パックの車両前後方向の長さが大きくなってしまう。さらに、電池ケース内の車幅方向両端部にそれぞれ冷却空気が通過するための空間部が設けられているため、電池パックの車幅方向の長さも大きくなってしまう。このため、特許文献2に記載の電池パックは、車両前後方向の両縁部及び車幅方向の両縁部を連結アームでフロアパネルに接続している。したがって、車幅方向の両縁部のみがフロアパネルに接続されている、例えば特許文献1の電池パックと比べて、特許文献2に記載の電池パックでは、連結アームの材料費が増加するとともに、電池パックの取付け手間も増加するという問題点があった。
そして、特許文献1及び2に記載の電池モジュールを支持する方法では、1つの電池モジュールを1つのホルダで支持しているため、複数の電池モジュールを支持するには、電池モジュールと同じ数のホルダを設けて、電池モジュールを1つずつ支持しなければならない。このため、取付けの手間及び時間がかかるという問題点があった。なお、1つのホルダで複数の電池モジュールを電池ケースに支持する方法について、両特許文献には何ら記載されていない。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決するものであって、車幅方向に隣接する電池モジュール間の仕切板や仕切部を無くして、車幅方向に隣接する電池モジュール同士を一体に支持することで、電池パックを小型化可能な電池モジュールの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明に係る電池モジュールの支持構造は、複数の電池セルからなる電池モジュールと、当該電池モジュールを内方に収容するとともに、縁部が車体本体に固定された中空の電池ケースと、を備えた電池パックにおける電池モジュールの支持構造であって、
隣接する前記電池モジュール同士を保持して前記電池ケース内に載置されるロワホルダと、
前記ロワホルダに保持された複数の前記電池モジュール上に架け渡されるとともに、両縁部がそれぞれ前記電池ケースに固定されて前記電池モジュールを前記電池ケースに支持するアッパホルダと、を備え
前記ロワホルダ及びアッパホルダは、前記隣接する前記電池モジュール同士を、当該電池モジュール間を仕切る部材を介さず一体に支持することを特徴とする。
【0009】
上記電池モジュールの支持構造によれば、ロワホルダ及びアッパホルダを備えているため、複数の電池モジュールをまとめて電池ケースに支持することができる。各電池モジュールを1つずつホルダで支持する場合と比べて短時間で複数の電池モジュールを電池ケースに支持することができる。
また、隣接する電池モジュール同士をロワホルダ及びアッパホルダで支持するため、隣接する電池モジュール同士を仕切る仕切板等は不要となる。したがって、電池ケースの長さを小さくすることができる。これにより、電池パックを小型化することができる。
また、アッパホルダは、複数の電池モジュールを支持するとともに、両縁部がそれぞれ電池ケースに固定されているため、電池モジュールを電池ケースの剛性部材とみなすことができる。したがって、電池ケースの剛性を高めることができて、車両が受ける外力によって電池ケースが変形することを抑制できる。これにより、絶縁性能を向上させることができる。
【0010】
また、前記ロワホルダに保持された前記複数の前記電池モジュール間を前記アッパホルダの長手方向と略直交する方向に沿って跨るとともに前記アッパホルダ上に配置されるサポートホルダを更に備えていてもよい。
【0011】
このように、車幅方向に隣接する電池モジュール間を跨るサポートホルダを備えており、このサポートホルダがアッパホルダの曲げを防止する補強部材として機能するため、複数の電池モジュールの各上面同士が互いに離れる方向へ折れ曲がることを防止することができる。
【0012】
また、車両の車幅方向に沿って前記電池ケース内に設けられ、一端が前記電池ケースの一方側内周面に接続され、他端が前記一方側内周面に対向する位置の他方側内周面に接続されたインナークロスメンバを備えており、
前記サポートホルダの前記電池モジュールの短手方向両縁部は、前記インナークロスメンバに固定されていてもよい。
【0013】
このように、インナークロスメンバを備えているため、電池ケースの剛性を向上させることができる。したがって、車両の側方等からの外力作用時の車体変形によって電池ケースが変形することを抑制できる。
また、サポートホルダがインナークロスメンバに固定されているため、隣接する電池モジュール同士が電池モジュール間で折れ曲がろうとする際に、サポートホルダに作用する当該サポートホルダを曲げたり、押し上げたりする荷重をインナークロスメンバで支持することができる。これにより、電池モジュール間における折れ曲がりを確実に防止することができる。
【0014】
また、前記電池モジュールは、車両前後方向に位置する側面の上部に上側爪部を有し、
前記アッパホルダは、前記上側爪部に係脱自在なアッパ側係合手段を有しており、
前記アッパホルダは、前記アッパ側係合手段を前記上側爪部に係合することで前記電池モジュールに取り付けられていてもよい。
【0015】
このように、アッパホルダは、電池モジュールの上側爪部に係脱自在なアッパ側係合手段を有しているため、電池モジュールにアッパホルダを容易に取り付けることができる。
【0016】
また、前記電池モジュールは、車両前後方向に位置する側面の下部に下側爪部を有し、
前記ロワホルダは、前記下側爪部に係脱自在なロワ側係合手段を有しており、
前記ロワホルダは、前記ロワ側係合手段を前記下側爪部に係合することで前記電池モジュールに取り付けられていてもよい。
【0017】
このように、ロワホルダは、電池モジュールの下側爪部に係脱自在なロワ側係合手段を有しているため、電池モジュールにロワホルダを容易に取り付けることができる。
【0018】
また、前記サポートホルダは、前記電池モジュールの上面と対向する部位に形成された補強ビートを有していてもよい。
【0019】
このように、サポートホルダは、電池モジュールの上面と対向する部位に形成された補強ビートを有するため、サポートホルダの剛性を高めることができる。これにより、隣接する電池モジュールが当該電池モジュール間で折れ曲がることを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車幅方向に隣接する電池モジュール間の仕切板や仕切部を無くして、車幅方向に隣接する電池モジュール同士を一体に支持することで、電池パックを小型化可能な電池モジュールの支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る電池パックを備えた車両の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る電池パックから電池カバー等を取り外した状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る第1支持体の分解斜視図である。
図4図2のA−A断面図である。
図5図3のB矢視図である。
図6】本発明の実施形態に係る第2支持体の分解斜視図である。
図7図2のC部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る電池モジュールの支持構造について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る電池パックを備えた車両の構成を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、車両100は、車体110の下部にフロアパネル111を有しており、フロアパネル111の下面に電池パック10が取り付けられている。フロアパネル111の上面は、車室の一部を形成しているため、電池パック10は車室外に配置される。
【0024】
電池パック10は、電池モジュール20と、当該電池モジュール20を収容する電池ケース50とを有している。電池ケース50は、当該電池ケース50の下部を構成する電池トレイ30と、電池ケース50の上部を構成する電池カバー40とを有している。
電池パック10は、電池ケース50の長手方向が車両100の前後方向と一致するとともに、電池ケース50の短手方向が車幅方向と一致するように配置されている。以下の説明では、電池ケース50の長手方向を車両前後方向といい、電池ケース50の短手方向を車幅方向という。
【0025】
電池パック10が搭載される車両100としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。
電池パック10は、前輪120及び後輪130を回転させるための走行用モータ150に接続されている。走行用モータ150は、電池パック10の出力を受けて、車両100を走行させるための運動エネルギを生成する。走行用モータ150の出力は前輪120及び後輪130に伝達される。
電池パック10の構造について以下で説明する。
【0026】
<電池パック10の構造について>
図2は、本発明の実施形態に係る電池パック10から電池カバー40等を取り外した状態を示す斜視図である。なお、図2では、本発明を実施するにあたって無関係の部材の一部については図示を省略している。
図2に示すように、電池パック10は、複数の電池モジュール20と、電池ケース50と、電池ケース50内に冷風を供給する冷却ユニット51とを備えている。
【0027】
複数の電池モジュール20は、電池トレイ30と電池カバー40(図1参照)とで形成される空間内に収容される。本実施形態では、車幅方向に電池モジュール20が2個、車両前後方向に電池モジュール20が5個ずつ配置されている。
【0028】
各電池モジュール20は、複数の電池セル21から構成されている。本実施形態では、各電池モジュール20は8個の電池セル21から構成されているが、この数に限定されるものではない。
【0029】
各電池モジュール20は、電池トレイ30に支持されている。各電池モジュール20の支持構造について以下で説明する。
【0030】
<電池モジュール20の支持構造について>
電池モジュール20の支持構造60は、車幅方向に互いに隣接する2個の電池モジュール20を支持する第1支持体61と、車幅方向及び車両前後方向にそれぞれ2列ずつ配置された4個の電池モジュール20を支持する複数の第2支持体81と、を備えている。
【0031】
第1支持体61の車両前側、車両前後方向に隣り合う第1支持体61と第2支持体81との間、車両前後方向に隣り合う第2支持体81間、及び車両後部に配置された第2支持体81の車両後側には、車幅方向に沿って配置されたインナークロスメンバ31が設けられている。インナークロスメンバ31は、一端が電池ケース50の車幅方向の一方側内周面30aに接続され、他端が一方側内周面30aに対向する位置の他方側内周面30bに接続されている。
【0032】
以下で、第1支持体61及び第2支持体81について説明する。まず、第1支持体61について説明し、次に第2支持体81について説明する。
【0033】
<第1支持体61について>
図3は、本発明の実施形態に係る第1支持体61の分解斜視図である。また、図4は、図2のA−A断面図である。
図3及び図4に示すように、第1支持体61は、電池モジュール20の下部を保持する第1ロワホルダ62と、電池モジュール20の上部を保持する第1アッパホルダ68と、第1アッパホルダ68上に配置される第1サポートホルダ75と、を備えている。
【0034】
第1ロワホルダ62は、車幅方向に互いに隣接する2個の電池モジュール20を保持する。電池モジュール20を保持した第1ロワホルダ62は、電池トレイ30内に載置される。
【0035】
第1ロワホルダ62は、2個の電池モジュール20が載置される略長方形状の第1ホルダ本体部63と、当該第1ホルダ本体部63の車両前後方向の縁部から一体に立設されて両電池モジュール20の移動を規制するロワ前後側規制部64と、を備えている。
【0036】
各電池モジュール20は、車両前後方向に位置する側面の上部及び下部に、それぞれ面外方向へ突出した上側爪部22、下側爪部23を有している。
上側爪部22及び下側爪部23は、各電池モジュール20の周方向に所定の間隔で複数設けられている。
【0037】
第1ロワホルダ62のロワ前後側規制部64は、各電池モジュール20の下側爪部23と係脱自在なロワ側係合手段65を有している。
ロワ側係合手段65は、ロワ前後側規制部64に形成されて下側爪部23と係合可能な係合孔である。この係合孔に各電池モジュール20の下側爪部23を係合することで、第1ロワホルダ62を両電池モジュール20の下部に取り付けることができる。
【0038】
また、第1ロワホルダ62は、第1ホルダ本体部63の車幅方向の縁部から各電池モジュール20の上部付近まで一体に立設されたロワ車幅側規制部66を更に備えている。
ロワ車幅側規制部66は、ロワ前後側規制部64と同様に、両電池モジュール20の移動を規制する。
また、ロワ車幅側規制部66の上部には、第1ロワホルダ62で保持した両電池モジュール20を運搬する際に使用する吊り具を係止するための吊り用孔67が設けられている。
【0039】
第1アッパホルダ68は、第1ロワホルダ62に保持された2個の電池モジュール20上に架け渡されている。具体的に、第1アッパホルダ68は、両電池モジュール20の上面と対向する位置に配置される第1カバー本体部69と、当該第1カバー本体部69の車両前後方向の縁部から下方へ向かって一体に延設されて両電池モジュール20の移動を規制するアッパ前後側規制部70と、を備えている。
【0040】
第1カバー本体部69の車両後側の両端部及び中央部には、各電池モジュール20の電極端子24を露出させるための切欠き状の端子露出部71が形成されている。図2に示すように、各電池モジュール20の電極端子24同士を接続するバスバー25、26が、車幅方向中央部及び車幅方向両端部に、車両前後方向に沿って配設される。
【0041】
また、図3及び図4に示すように、アッパ前後側規制部70は、各電池モジュール20の上側爪部22に係脱自在なアッパ側係合手段72を有している。
アッパ側係合手段72は、アッパ前後側規制部70に形成されて上側爪部22と係合可能な係合孔である。この係合孔に各電池モジュール20の上側爪部22を係合することで、第1アッパホルダ68を両電池モジュール20の上部に取り付けることができる。
【0042】
また、第1アッパホルダ68は、第1ホルダ本体部63の車幅方向の縁部から下方へ向かって一体に延設されたアッパ車幅側規制部73を更に備えている。
アッパ車幅側規制部73の下端部は、電池ケース50内に敷設されているインナケース32にボルト74で固定されている。インナケース32は、電池ケース50に固定されているため、アッパ車幅側規制部73をインナケース32に固定することで2個の電池モジュール20は電池トレイ30に支持される。
【0043】
第1サポートホルダ75は、下側に開口した略U形の断面形状を有し、2個の電池モジュール20間を、車両前後方向に沿って跨るように第1アッパホルダ68上に配置されている。
そして、第1サポートホルダ75の車両前後方向の両縁部76a、76bは、それぞれインナークロスメンバ31の上面にボルト77で固定されている。
第1サポートホルダ75の車両後側の中央部には、第1アッパホルダ68と同様に、各電池モジュール20の電極端子24を露出させるための端子露出部78が形成されている。具体的には、第1アッパホルダ68の端子露出部71と対応する位置に形成されている。
第1サポートホルダ75の車両後側の中央部には端子露出部78が形成されているため、車両前後方向の縁部76bは図5に示すように、略H形状を有しており、両側下端部がボルト77でインナークロスメンバ31に固定される。一方、縁部76aは、中央下端部のみがボルト77でインナークロスメンバ31に固定される。
第1サポートホルダ75を設けることにより、車幅方向に配置された2個の電池モジュール20の各上面同士が互いに離れる方向へ折れ曲がることを確実に防止できる。なお、第1サポートホルダ75の上面に補強ビートを設けてもよい。
【0044】
<第2支持体81について>
次に、第2支持体81について説明する。
【0045】
図6は、本発明の実施形態に係る第2支持体81の分解斜視図である。また、図7は、図2のC部拡大図である。
図6及び図7に示すように、第2支持体81は、4個の電池モジュール20の下部を保持する第2ロワホルダ82と、4個の電池モジュール20の上部を保持する第2アッパホルダ88と、第2アッパホルダ88上に配置される第2サポートホルダ95と、を備えている。
以下で説明する第2ロワホルダ82、第2アッパホルダ88及び第2サポートホルダ95において、上述した第1ロワホルダ62、第1アッパホルダ68、第1サポートホルダ75と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0046】
第2ロワホルダ82は、4個の電池モジュール20を保持する。第2ロワホルダ82は、4個の電池モジュール20が載置される略長方形状の第2ホルダ本体部83と、ロワ前後側規制部64と、を備えている。
第1ロワホルダ62と同様に、ロワ前後側規制部64に形成されたロワ側係合手段65である係合孔に各電池モジュール20の下側爪部23を係合することで、第2ロワホルダ82を4個の電池モジュール20の下部に取り付けることができる。
【0047】
また、第2ロワホルダ82は、第2ホルダ本体部83の車幅方向の両縁部にそれぞれ複数のロワ車幅側規制部66を備えている。本実施形態では、車両前後方向の電池モジュール20の配列数と同じ2つのロワ車幅側規制部66を各縁部に設けた。
【0048】
第2アッパホルダ88は、第2ロワホルダ82に保持された4個の電池モジュール20上に架け渡されている。具体的に、第2アッパホルダ88は、4個の電池モジュール20の上面と対向する位置に配置される第2カバー本体部89と、アッパ前後側規制部70と、を備えている。
【0049】
第2カバー本体部89の四隅部及び車両前後側の中央部には、各電池モジュール20の電極端子24を露出させるための端子露出部71が形成されている。
【0050】
第1アッパホルダ68と同様に、アッパ前後側規制部70に形成されたアッパ側係合手段72である係合孔に各電池モジュール20の上側爪部22を係合することで、第2アッパホルダ88を4個の電池モジュール20の上部に取り付けることができる。
【0051】
また、第2アッパホルダ88は、第2ホルダ本体部83の車幅方向の両縁部にそれぞれ複数のアッパ車幅側規制部73を備えている。本実施形態では、車両前後方向の電池モジュール20の配列数と同じ2つのアッパ車幅側規制部73を各縁部に設けた。
アッパ車幅側規制部73の下端部は、電池ケース50内に敷設されているインナケース32にボルト74で固定されている。これにより、4個の電池モジュール20は電池ケース50に支持される。
【0052】
第2サポートホルダ95は、下側に開口した略U形の断面形状を有し、車幅方向に配置された電池モジュール20間を、車両前後方向に沿って跨るように第2アッパホルダ88上に配置されている。
そして、第2サポートホルダ95の車両前後方向の両縁部76b、76bが、それぞれインナークロスメンバ31にボルト77によって固定されている。
第2サポートホルダ95の車両前後側の中央部には端子露出部78が形成されている。具体的には、第2アッパホルダ88の端子露出部71と対応する位置に形成されている。
また、第2サポートホルダ95は、中央面97に車両前後方向に沿って形成された補強ビート98を有している。
【0053】
<効果について>
上述した本実施形態に係る電池モジュール20の支持構造60によれば、第1及び第2ロワホルダ62、82、並びに第1及び第2アッパホルダ68、88を備えているため、複数の電池モジュール20をまとめて電池ケース50に支持することができる。従来の各電池モジュール20を1つずつホルダで支持する場合と比べて短時間で複数の電池モジュール20を電池ケース50に支持することができる。
【0054】
また、隣接する電池モジュール20同士を第1及び第2ロワホルダ62、82、並びに第1及び第2アッパホルダ68、88で支持するため、隣接する電池モジュール20同士を仕切る仕切板等は不要となる。したがって、電池ケース50の車幅方向の長さを小さくすることができる。これにより、電池パック10を小型化することができる。
【0055】
さらに、車幅方向を電池モジュール20の長手方向として、車幅方向に沿って電池モジュール20を複数配置するため、従来の車両前後方向を電池モジュール20の長手方向として電池モジュール20を配置した場合と比べて車両前後方向の長さを小さくすることができる。このため、電池ケース50をフロアパネル111に固定する際は、電池ケース50の車幅方向の両縁部をフロアパネル111に接続するだけで良い。したがって、特許文献2に記載の電池ケースの車幅方向及び車両前後方向の両縁部を共にフロアパネル111に接続する場合と比べて電池ケース50を取り付ける手間や取付け部材等の材料費を省くことができる。
【0056】
また、第1及び第2アッパホルダ68、88は、複数の電池モジュール20を支持するとともに、車幅方向のアッパ車幅側規制部73がそれぞれ電池ケース50の電池トレイ30に固定されているため、複数の電池モジュール20を電池ケース50の車幅方向の剛性部材とみなすことができる。したがって、電池ケース50の剛性を高めることができて、車両100の側方等からの外力によって電池ケース50が変形することを抑制できる。これにより、絶縁性能を向上させることができる。
【0057】
そして、隣接する電池モジュール20間を跨る第1及び第2サポートホルダ75、95を備えており、第1及び第2サポートホルダ75、95が第1及び第2アッパホルダ68、88の曲げを防止する補強部材として機能するため、複数の電池モジュール20の各上面同士が互いに離れる方向へ折れ曲がることを防止することができる。
【0058】
また、インナークロスメンバ31を備えているため、電池ケース50の剛性を向上させることができる。したがって、車両100の側方等からの外力作用時の車体110変形によって電池ケース50が変形することを抑制できる。
さらに、第1及び第2サポートホルダ75、95がインナークロスメンバ31に固定されているため、隣接する電池モジュール20同士が電池モジュール20間で折れ曲がろうとする際に、第1及び第2サポートホルダ75、95に作用する当該第1及び第2サポートホルダ75、95を曲げたり、押し上げたりする荷重をインナークロスメンバ31で支持することができる。これにより、電池モジュール20間における折れ曲がりを確実に防止することができる。
【0059】
また、第1及び第2アッパホルダ68、88は、電池モジュール20の上側爪部22に係脱自在なアッパ側係合手段72を有しているため、電池モジュール20に第1及び第2アッパホルダ68、88を容易に取り付けることができる。
【0060】
そして、第1及び第2ロワホルダ62、82は、電池モジュール20の下側爪部23に係脱自在なロワ側係合手段65を有しているため、電池モジュール20に第1及び第2ロワホルダ62、82を容易に取り付けることができる。
【0061】
さらに、第2サポートホルダ95は、車両前後方向に沿って形成された補強ビート98を有するため、第2サポートホルダ95の剛性を高めることができる。これにより、隣接する電池モジュール20が当該電池モジュール20間で折れ曲がることを確実に防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、車幅方向に2列で配置された電池モジュール20をまとめて支持する場合について説明したが、この数に限定されるものではなく、3列以上の電池モジュール20を支持する場合にも本発明を適用可能である。
また、車両前後方向に1列及び2列で配置された電池モジュール20をそれぞれまとめて支持する場合について説明したが、この数に限定されるものではなく、3列以上の電池モジュール20を支持する場合にも本発明を適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
車両走行用の電池モジュールが収容された電池パックを備えた電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
10 電池パック
20 電池モジュール
21 電池セル
22 上側爪部
23 下側爪部
24 電極端子
25 バスバー
26 バスバー
30 電池トレイ
30a 一方側内周面
30b 他方側内周面
31 インナークロスメンバ
32 インナケース
40 電池カバー
50 電池ケース
51 冷却ユニット
60 支持構造
61 第1支持体
62 第1ロワホルダ
63 第1ホルダ本体部
64 ロワ前後側規制部
65 ロワ側係合手段
66 ロワ車幅側規制部
67 吊り用孔
68 第1アッパホルダ
69 第1カバー本体部
70 アッパ前後側規制部
71 端子露出部
72 アッパ側係合手段
73 アッパ車幅側規制部
74 ボルト
75 第1サポートホルダ
76a 縁部
76b 縁部
77 ボルト
78 端子露出部
81 第2支持体
82 第2ロワホルダ
83 第2ホルダ本体部
88 第2アッパホルダ
89 第2カバー本体部
95 第2サポートホルダ
97 中央面
98 補強ビート
100 車両
110 車体
111 フロアパネル
120 前輪
130 後輪
150 走行用モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7