(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、医薬品、化粧品に代表される、酸素の影響を受けて変質あるいは劣化しやすい各種物品の酸素酸化を防止し、長期に保存する目的で、これらを収納した包装体内の酸素除去を行う酸素吸収剤が使用されている。
【0003】
酸素吸収剤としては、酸素吸収能力、取り扱い易さ、安全性の点から、鉄粉を反応主剤とする酸素吸収剤が一般的に用いられている。しかし、この鉄系酸素吸収剤は、金属探知機に感応するために、異物検査に金属探知機を使用することが困難であった。また、鉄系酸素吸収剤を同封した包装体は、発火の恐れがある為に電子レンジによる加熱ができない。さらに、鉄粉の酸化反応には水分が必須であるため、被保存物が高水分系であるものでしか、酸素吸収の効果を発現することができなかった。
【0004】
また、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を配した多層材料で容器を構成することにより、容器のガスバリア性の向上を図るとともに容器自体に酸素吸収機能を付与した包装容器の開発が行われている(特許文献1参照)。しかし、これも同様に金属探知機に使用できない、電子レンジによる加熱ができない、被保存物が高水分系のものしか効果を発現しない、といった課題を有している。さらに、不透明性の問題により内部視認性が不足するといった課題を有している。
【0005】
上記のような事情から、有機系の物質を反応主剤とする酸素吸収剤が望まれている。有機系の物質を反応主剤とする酸素吸収剤としては、アスコルビン酸を主剤とする酸素吸収剤が知られている(特許文献2参照)。
【0006】
他方、樹脂と遷移金属触媒からなり、酸素捕捉特性を有する酸素吸収性樹脂組成物が知られている。例えば、酸化性有機成分としてポリアミド、特にキシリレン基含有ポリアミドと遷移金属触媒からなる樹脂組成物が知られている。そして、これらを用いた酸素吸収剤、包装材料、包装用多層積層フィルムの例示もある(特許文献3参照)。
【0007】
また、酸素吸収に水分を必要としない酸素吸収樹脂組成物として、炭素−炭素不飽和結合を有する樹脂と遷移金属触媒からなる酸素吸収樹脂組成物が知られている(特許文献4参照)。
【0008】
さらに、酸素を捕集する組成物として、置換されたシクロヘキセン官能基を含むポリマーまたは該シクロヘキセン環が結合した低分子量物質と遷移金属とからなる組成物が知られている(特許文献5参照)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0019】
[酸素吸収性樹脂組成物]
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、上記一般式(1)〜(4)からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環を有する構成単位を含有するポリエステル化合物と遷移金属触媒を含有する。
【0020】
[ポリエステル化合物]
本実施形態のポリエステル化合物は、上記一般式(1)〜(4)からなる群より選択される少なくとも1種のテトラリン環を有する構成単位を含有する。
【0021】
本願の一般式(1)〜(4)及び(8)〜(15)においてRで表される一価の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数が1〜15、より好ましくは炭素数が1〜6個の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、アリール基(好ましくは炭素数が6〜16、より好ましくは炭素数が6〜10のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基)、複素環基(好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の5員環或いは6員環の芳香族又は非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除くことによって得られる一価の基、例えば、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、2−フリル基)、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の直鎖状、分岐状又は環状アルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基)、アシル基(ホルミル基を含む。好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が2〜6のアルキルカルボニル基、好ましくは炭素数が7〜12個、より好ましくは炭素数が7〜9のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルアミノ基、好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアニリノ基、好ましくは炭素数が1〜12、より好ましくは炭素数が2〜6の複素環アミノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、アニリノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1〜10、より好ましくは炭素数が1〜6のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6〜12、より好ましくは炭素数が6〜8のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が1〜6の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基)、イミド基(好ましくは炭素数が2〜10、より好ましくは炭素数が4〜8のイミド基、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)等が例示されるが、これらに特に限定されない。
【0022】
なお、上記の一価の置換基Rが水素原子を有する場合、その水素原子が置換基T(ここで、置換基Tは、上記の一価の置換基Rで説明したものと同義である。)でさらに置換されていてもよい。その具体例としては、例えば、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基(例えば、ヒドロキシエチル基)、アルコキシ基で置換されたアルキル基(例えば、メトキシエチル基)、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル基)、第1級或いは第2級アミノ基で置換されたアルキル基(例えば、アミノエチル基)、アルキル基で置換されたアリール基(例えば、p−トリル基)、アルキル基で置換されたアリールオキシ基(例えば、2−メチルフェノキシ基)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記の一価の置換基Rが一価の置換基Tを有する場合、上述した炭素数には、置換基Tの炭素数は含まれないものとする。例えば、ベンジル基は、フェニル基で置換された炭素数1のアルキル基と看做し、フェニル基で置換された炭素数7のアルキル基とは看做さない。また、上記の一価の置換基Rが置換基Tを有する場合、その置換基Tは複数あってもよい。
【0023】
Xは、芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基及び複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を表す。芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基及び複素環基は、置換されていても無置換でもよい。Xは、ヘテロ原子を含有していてもよく、エーテル基、スルフィド基、カルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホキシド基、スルホン基等を含有していてもよい。ここで、芳香族炭化水素基としては、例えば、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基、メチルフェニレン基、o−キシリレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、ビフェニレン基、フルオニレン基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基や、シクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基が挙げられるが、これらに特に限定されない。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、イソブチリデン基、sec‐ブチリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖状又は分枝鎖状アルキレン基や、ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1,3−ブタジエニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基等のアルケニレン基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、さらに置換基を有していてもよく、その具体例としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、アミノ基、アシル基、チオ基(例えばアルキルチオ基、フェニルチオ基、トリルチオ基、ピリジルチオ基等)、アミノ基(例えば非置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0024】
上記一般式(1)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物は、テトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)、及びジオールまたはその誘導体(II)、を重縮合することで得られる。
【0025】
本実施形態で用いるテトラリン環を有するジカルボン酸またはその誘導体(I)は、下記一般式(8)で表される。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【化3】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基及びイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは0〜3、nは0〜7の整数を表し、テトラリン環のベンジル位に少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。Yは水素原子又はアルキル基を表す。)
【0026】
上記一般式(8)で表される化合物は、下記一般式(9)で表されるナフタレン環を有するジカルボン酸またはその誘導体を水素と反応させて得ることが出来る。
【化4】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基及びイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。Yは水素原子又はアルキル基を表す。)
【0027】
本実施形態で用いるジオールまたはその誘導体(II)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−フェニルプロパンジオール、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアルコール、α,α−ジヒドロキシ−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α−ジヒドロキシ−1,4−ジイソプロピルベンゼン、o-キシレングリコール、m-キシレングリコール、p-キシレングリコール、ヒドロキノン、4,4−ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、またはこれらの誘導体が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0028】
また、上記一般式(2)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物は、テトラリン環を有するジオールまたはその誘導体(III)、及び、ジカルボン酸またはその誘導体(IV)を重縮合することによって得られる。
【0029】
本実施形態で用いるテトラリン環を有するジオールまたはその誘導体(III)は、下記一般式(10)で表される。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【化5】
(式中、それぞれ独立して、水素原子または一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基及びイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは0〜3、nは0〜7の整数を表し、テトラリン環のベンジル位に少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。)
【0030】
上記一般式(10)で表される化合物は、下記一般式(11)で表されるナフタレン環を有するジオールまたはその誘導体を水素と反応させて得ることが出来る。
【化6】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基及びイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。)
【0031】
本実施形態で用いるジカルボン酸またはその誘導体(IV)としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェニルマロン酸、フェニレンジ酢酸、フェニレンジ酪酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、p-フェニレンジカルボン酸、またはこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0032】
上記一般式(3)又は(4)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物は、テトラリン環を有するヒドロキシカルボン酸またはその誘導体(V)を重縮合することで得られる。
【0033】
本実施形態で用いるテトラリン環を有するヒドロキシカルボン酸またはその誘導体(V)は、下記一般式(12)又は(13)で表される。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
【化7】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基及びイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mは0〜3、nは0〜7の整数を表し、テトラリン環のベンジル位に少なくとも1つ以上の水素原子が結合している。Yは水素原子又はアルキル基を表す。)
【0034】
上記一般式(1)または(2)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物は、下記一般式(14)または(15)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物の水添反応によって得ることも出来る。
【化8】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基及びイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。Xは芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基及び複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を表す。)
【化9】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子または一価の置換基を示し、一価の置換基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基及びイミド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、これらはさらに置換基を有していてもよい。mはそれぞれ独立して0〜3の整数を表す。Xは芳香族炭化水素基、飽和または不飽和の脂環式炭化水素基、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基及び複素環基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を含有する2価の基を表す。)
【0035】
本実施形態のポリエステル化合物には、性能に影響しない程度で、テトラリン環を有さない構成単位を共重合成分として組み込んでもよい。具体的には、前記ジオールまたはその誘導体(II)や、前記ジカルボン酸またはその誘導体(IV)に示した化合物を共重合成分として用いることが出来る。
【0036】
前記一般式(1)で表される構成単位を含有するポリエステル化合物の好ましい具体例としては、上記式(5)〜(7)及び、下記式(16)〜(18)が挙げられるが、これらに限定されない。
【化10】
【0037】
本実施形態に用いるポリエステル化合物を製造する方法は特に制限はなく、従来公知のポリエステルの製造方法をいずれも適用することができる。例えばエステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法、又は溶液重合法等を挙げる事ができる。上記したポリエステル化合物の製造方法の中で、原料入手の容易さの点から、エステル交換法が好適に使用される。
【0038】
ポリエステル化合物の製造時に用いるエステル交換触媒、エステル化触媒、重縮合触媒等の各種触媒、エーテル化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の各種安定剤、重合調整剤等も従来公知のものをいずれも用いることができ、これらは反応速度やポリエステル化合物の色調、安全性、熱安定性、耐候性、自身の溶出性などに応じて適宜選択される。例えば上記各種触媒としては、亜鉛、鉛、セリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、アルミニウム、チタン、アンチモン、スズ等の金属の化合物(例えば、脂肪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、水酸化物、塩化物、酸化物、アルコキシド)や金属マグネシウムなどが挙げられ、これらは単独で用いることもできるし、複数のものを組み合わせて用いることもできる。
【0039】
上述したポリエステル化合物は、いずれも、テトラリン環のベンジル位に水素を有するものであり、上述した遷移金属触媒と併用することでベンジル位の水素が引き抜かれ、これにより優れた酸素吸収能を発現する。
【0040】
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収後の臭気発生が抑制されたものである。その理由は明らかではないが、例えば以下の酸化反応機構が推測される。すなわち、ポリエステル化合物においては、まずテトラリン環のベンジル位にある水素が引き抜かれてラジカルが生成し、その後、ラジカルと酸素との反応によりベンジル位の炭素が酸化され、ヒドロキシ基又はケトン基が生成すると考えられる。そのため、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物においては、上記従来技術のような酸化反応による酸素吸収主剤の分子鎖の切断がなく、ポリエステル化合物の構造が維持されるため、臭気の原因となる低分子量の有機化合物が酸素吸収後に生成し難く、その結果、酸素吸収後の臭気強度の増大が抑制されているものと推測される。
【0041】
本実施形態のポリエステル化合物の極限粘度(フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとの質量比6:4の混合溶媒を用いた25℃での測定値)は特に限定されないが、ポリエステル化合物の成形性の面から、0.1〜2.0dL/gが好ましく、0.5〜1.5dL/gがより好ましい。
【0042】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物において使用される遷移金属触媒としては、上記ポリエステル化合物の酸化反応の触媒として機能し得るものであれば、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
【0043】
かかる遷移金属触媒の具体例としては、例えば、遷移金属の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩、亜燐酸塩、次亜燐酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。ここで、遷移金属触媒に含まれる遷移金属としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅が好ましい。また、有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、オクタノイック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、アセチルアセトン、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、カプリン酸、ナフテン酸が挙げられるが、これらに限定されない。遷移金属触媒は、これらの遷移金属と有機酸とを組み合わせたものが好ましく、遷移金属がマンガン、鉄、コバルト、ニッケル又は銅であり、有機酸が酢酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸又はナフテン酸である組み合わせがより好ましい。なお、遷移金属触媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
遷移金属触媒の配合量は、使用する前記ポリエステル化合物や遷移金属触媒の種類及び所望の性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。酸素吸収性樹脂組成物の酸素吸収量の観点から、遷移金属触媒の配合量は、前記ポリエステル化合物100質量部に対し、遷移金属量として0.001〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.002〜2質量部、さらに好ましくは0.005〜1質量部である。
【0045】
ポリエステル化合物及び遷移金属触媒は、公知の方法で混合する事が出来るが、好ましくは押出機により混練することにより、分散性の良い酸素吸収性樹脂組成物として使用することができる。また、酸素吸収性樹脂組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、乾燥剤、顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等を添加しても良いが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合することができる。
【0046】
なお、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収反応を促進させるために、必要に応じて、さらにラジカル発生剤や光開始剤を含有していてもよい。ラジカル発生剤の具体例としては、各種のN−ヒドロキシイミド化合物が挙げられ、例えば、N−ヒドロキシコハクイミド、N−ヒドロキシマレイミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノンとその誘導体、チアジン染料、金属ポルフィリン誘導体、アントラキノン誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらのラジカル発生剤及び光開始剤は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、本実施形態の目的を阻害しない範囲で他の熱可塑性樹脂と押出機で混練することも出来る。混練に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、あるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダムまたはブロック共重合体等のポリオレフィン、無水マレイン酸グラフトポリエチレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やそのイオン架橋物(アイオノマー)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイド等のポリエーテル等あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物の使用形態は、粉体状、顆粒状、ペレット状、フィルム状またはその他の小片状に加工し、通気性包装材料に充填し、小袋状の酸素吸収剤包装体として使用することができる。また、フィルム状に成形して、ラベル、カード、パッキング等の形態の酸素吸収体として用いることができる。
【0049】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、単層の形で包装材料および包装容器として使用できるのは勿論のこと、酸素吸収性樹脂組成物から成る少なくとも一層と、他の樹脂からなる少なくとも一層の積層物の形で酸素吸収性多層包装材料および酸素吸収性多層包装容器として使用できる。一般に、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、容器等の外表面に露出しないように容器等の外表面よりも内側に設けるのが好ましく、また内容物との直接的な接触を避ける目的で、容器等の内表面より外側に設けるのが好ましい。このように、多層の少なくとも1つの中間層として、酸素吸収性樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0050】
また、本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、フィルム状またはシート状として、少なくとも、熱可塑性樹脂を含有するシーラント層、酸素吸収性樹脂組成物を含有する酸素吸収層およびガスバリア性物質を含有するガスバリア層の酸素吸収性多層体として用いることができる。さらに、得られた酸素吸収性多層体は、ガスバリア層の外層に紙基材を積層して、酸素吸収性紙容器として用いることができる。
【0051】
ガスバリア層に用いるガスバリア性物質としては、ガスバリア性熱可塑性樹脂や、ガスバリア性熱硬化性樹脂、シリカ、アルミナ、アルミ等の各種蒸着フィルム、アルミ箔等の金属箔を用いることが出来る。ガスバリア性熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体、MXD6、ポリ塩化ビニリデン等が例示できる。また、ガスバリア性熱硬化性樹脂としては、ガスバリア性エポキシ樹脂、例えば、三菱ガス化学株式会社製「マクシーブ」等が例示できる。
【0052】
酸素吸収性多層体の製造方法については、各種材料の性状、加工目的、加工工程等に応じて、共押出法、各種ラミネート法、各種コーティング法などの公知の方法を利用することができる。例えば、フィルムやシートの成形については、Tダイ、サーキュラーダイ等を通して溶融させた樹脂組成物を付属した押出機から押し出して製造する方法や、酸素吸収フィルムまたはシートに接着剤を塗布し、他のフィルムやシートと貼り合わせることで製造する方法がある。また、射出機を用い、溶融した樹脂を、多層多重ダイスを通して射出金型中に共射出または逐次射出することによって所定の形状の多層容器または容器製造用のプリフォームに成形することができる。プリフォームは、延伸温度に加熱し、軸方向に延伸するとともに、流体圧によって周方向にブロー延伸することにより、延伸ブローボトルが得られる。
【0053】
得られた酸素吸収性多層体は、フィルムとして作製し、袋状、蓋材に加工して用いることができる。また、酸素吸収多層体は、シートとして作製し、真空成形、圧空成形、プラグアシスト成形等の成形方法によりトレー、カップ、ボトル、チューブ等の所定の形状の酸素吸収性多層容器に熱成形することができる。また、袋状容器に食品等の内容物を充填し、開封口を設け、電子レンジ加熱調理時にその開封口から蒸気を放出する、電子レンジ調理対応の易通蒸口付パウチに好ましく用いることができる。
【0054】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物を使用するにあたり、エネルギー線を照射して、酸素吸収反応の開始を促進したり、酸素吸収速度を高めたりすることができる。エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線、γ線等を利用可能である。照射エネルギー量は、用いるエネルギー線の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0055】
本実施形態の酸素吸収性樹脂組成物は、酸素吸収に水分を必要としないので、低湿度から高湿度までの広範な湿度条件下(相対湿度0%〜100%)での酸素吸収性能に優れ、かつ内容物の風味保持性に優れるため、種々の物品の包装に適している。
被保存物の具体例としては、牛乳、ジュース、コーヒー、茶類、アルコール飲料等の飲料;ソース、醤油、ドレッシング等の液体調味料、スープ、シチュー、カレー等の調理食品;ジャム、マヨネーズ等のペースト状食品;ツナ、魚貝等の水産製品;チーズ、バター等の乳加工品;肉、サラミ、ソーセージ、ハム等の畜肉加工品;にんじん、じゃがいも等の野菜類;卵;麺類;調理前の米類、調理された炊飯米、米粥等の加工米製品;粉末調味料、粉末コーヒー、乳幼児用粉末ミルク、乳幼児用調理食品、粉末ダイエット食品、介護調理食品、乾燥野菜、せんべい等の乾燥食品(水分活性の低い食品);農薬、殺虫剤等の化学品;医薬品;ペットフード;洗剤等、種々の物品を挙げることができるが、これらに特に限定されない。特に、酸素存在下で劣化を起こしやすい内容品、例えば、飲料ではビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等、食品では果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品類等、その他では医薬品、化粧品等の包装材に好適である。なお、水分活性とは物品中の自由水含有量を示す尺度で、0〜1の数字で示され、水分のない物品は0、純水は1となる。すなわち、ある物品の水分活性Awは、その物品を密封し平衡状態に到達した後の空間内の水蒸気圧をP、純水の水蒸気圧をP
0、同空間内の相対湿度をRH(%)、とした場合、
Aw=P/P
0=RH/100
と定義される。
【0056】
また、これらの被保存物の充填前後に、被保存物に適した形で、容器や被保存物の殺菌を施すことができる。殺菌方法としては、100℃以下での熱水処理、100℃以上の加圧熱水処理、130℃以上の超高温加熱処理等の加熱殺菌、紫外線、マイクロ波、ガンマ線等の電磁波殺菌、エチレンオキサイド等のガス処理、過酸化水素や次亜塩素酸等の薬剤殺菌等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に記載が無い限り、NMR測定は室温で行った。
【0058】
[モノマー合成例]
(合成例1)
内容積18Lのオートクレーブに、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジメチル2.20kg、2−プロパノール11.0kg、5%パラジウムを活性炭に担持させた触媒350g(50wt%含水品)を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内の空気を窒素と置換し、さらに窒素を水素と置換した後、オートクレーブ内の圧力が0.8MPaとなるまで水素を供給した。次に、撹拌機を起動し、回転速度を500rpmに調整し、30分かけて内温を100℃まで上げた後、さらに水素を供給し圧力1MPaとした。その後、反応の進行による圧力低下に応じ、1MPaを維持するよう水素の供給を続けた。7時間後に圧力低下が無くなったので、オートクレーブを冷却し、未反応の残存水素を放出した後、オートクレーブから反応液を取り出した。反応液を濾過し、触媒を除去した後、分離濾液から2−プロパノールをエバポレーターで蒸発させた。得られた粗生成物に、2−プロパノールを4.40kg加え、再結晶により精製し、テトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチルを80%の収率で得た。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl
3)δ7.76-7.96(2H m)、7.15(1H d)、3.89(3H s)、3.70(3H s)、2.70-3.09(5H m)、1.80-1.95(1H m)。
【0059】
(合成例2)
内容積18Lのオートクレーブに、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸無水物1.90kg、酢酸エチル10.0kg、5%パラジウムを活性炭に担持させた触媒300g(50wt%含水品)を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内の空気を窒素と置換し、さらに窒素を水素と置換した後、オートクレーブ内の圧力が3.0MPaとなるまで水素を供給した。次に、撹拌機を起動し、回転速度を500rpmに調整し、30分かけて内温を80℃まで上げた後、反応の進行による圧力低下に応じ、3.0MPaを維持するよう水素の供給を続けた。3時間後に圧力低下が無くなったので、オートクレーブを冷却し、未反応の残存水素を放出した後、オートクレーブから反応液を取り出し、反応液を濾過した。濾別した残渣(析出した粗生成物と触媒の混合物)にエタノールを40.0kg加え75℃で撹拌し、粗生成物を溶解させた後、エタノール溶液を濾過し、触媒を除去した。回収した反応液とエタノール溶液を混合した後、酢酸エチル及びエタノールをエバポレーターで蒸発させた。得られた粗生成物をアセトンで洗浄し、テトラリン−1,8−ジカルボン酸を51%の収率で得た。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CD
3OD)δ7.82(1H d)、7.20-38(2H m)、4.51-4.59(1H m)、2.80-2.97(2H m)、2.22-2.32(1H m)、1.93-2.04(1H m)、1.75-1.88(2H m)。
【0060】
次いで、5Lフラスコに、テトラリン−1,8−ジカルボン酸300g、メタノール3.0kg、濃硫酸50gを仕込み、65℃で35時間還流し、エステル化した。その後、炭酸水素ナトリウムで中和し、析出した粗成生物を濾過により分離後、2−プロパノールを加え、再結晶により精製し、テトラリン−1,8−ジカルボン酸ジメチルを86%の収率で得た。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。1H‐NMR(400MHz CDCl
3)δ7.76-7.82(1H d)、7.20-7.30(2H m)、4.42-4.48(1H m)、3.82(3H s)、3.69(3H s)、2.78-2.96(2H m)、2.21-2.28(1H m)、1.90-1.99(1H m)、1.70-1.84(2H m)。
【0061】
[ポリマー製造例]
(製造例1)
充填塔式精留等、分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置および窒素導入管を備えたポリエステル樹脂製造装置に、合成例1で得たテトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチル543g、1,4−ブタンジオール315g、テトラブチルチタネート0.171gを仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温してエステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を85%以上とした後、テトラブチルチタネート0.171gを添加し、昇温と減圧を徐々に行い、245℃、133Pa以下で重縮合を行い、ポリエステル化合物(1)を得た。
【0062】
得られたポリエステル化合物(1)の重量平均分子量と数平均分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行った結果、ポリスチレン換算の重量平均分子量は8.7×10
4、数平均分子量は3.1×10
4であった。ガラス転移温度と融点をDSCにより測定を行った結果、ガラス転移温度は36℃、融点は145℃であった。
【0063】
(製造例2)
製造例1の1,4−ブタンジオールをエチレングリコールとし、その重量を217gとした以外は、製造例1と同様にしてポリエステル化合物(2)を合成した。ポリエステル化合物(2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.5×10
4、数平均分子量は3.0×10
4、ガラス転移温度は67℃、融点は非晶性のため認められなかった。
【0064】
(製造例3)
製造例1の1,4−ブタンジオールを1,6−ヘキサンジオールとし、その重量を413gとした以外は、製造例1と同様にしてポリエステル化合物(3)を合成した。ポリエステル化合物(3)のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.9×10
4、数平均分子量は3.3×10
4、ガラス転移温度は16℃、融点は137℃であった。
【0065】
(製造例4)
製造例1の1,4−ブタンジオールを227gとし、更にエチレングリコール52gを仕込み、製造例1と同様にしてエチレングリコールと1,4−ブタンジオールのモル比が10:90のポリエステル化合物(4)を合成した。ポリエステル化合物(4)のポリスチレン換算の重量平均分子量は1.1×10
5、数平均分子量は4.0×10
4、ガラス転移温度は38℃、融点は135℃であった。
【0066】
(製造例5)
製造例1のテトラリン−2,6−ジカルボン酸ジメチルを、合成例2で得たテトラリン−1,8−ジカルボン酸ジメチルとした以外は、製造例1と同様にしてポリエステル化合物(5)を合成した。ポリエステル化合物(5)のポリスチレン換算の重量平均分子量は8.3×10
4、数平均分子量は2.8×10
4、ガラス転移温度は35℃、融点は非晶性のため認められなかった。
【0067】
(実施例1)
ポリエステル化合物(1)100質量部に対し、ステアリン酸コバルト(II)をコバルト量が0.02質量部となるようドライブレンドし、直径20mmのスクリューを2本有する2軸押出機により、押出温度220℃、スクリュー回転数60rpm、フィードスクリュー回転数16rpm、引き取り速度1.3m/minで製膜し、幅130mm、厚み95〜105μmの酸素吸収性フィルムを作製した。
次に、アルミ箔積層フィルムからなるガスバリア袋を2つ用意した。そして、得られたフィルム(100mm×100mm)2枚を、空気500ccとともにガスバリア袋内にそれぞれ充填し、一方の袋内の相対湿度を100%に調整し、他方の袋内の相対湿度を30%に調整した後、それぞれ密封した。このようにして得られた密封体を40℃下で14日間保管して、その間に吸収した酸素の総量を測定した。また、一方で、40℃下、相対湿度100%で1ヶ月間、保管した後のフィルムの外観を目視で確認し、臭気を確認した。これらの結果を表1に示した。
【0068】
(実施例2)
ポリエステル化合物(1)をポリエステル化合物(2)とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し酸素吸収量の測定及び外観の目視確認、臭気確認を行った。その結果を表1に示した。
【0069】
(実施例3)
ポリエステル化合物(1)をポリエステル化合物(3)とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し酸素吸収量の測定及び外観の目視確認、臭気確認を行った。その結果を表1に示した。
【0070】
(実施例4)
ポリエステル化合物(1)をポリエステル化合物(4)とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し酸素吸収量の測定及び外観の目視確認、臭気確認を行った。その結果を表1に示した。
【0071】
(実施例5)
ポリエステル化合物(1)をポリエステル化合物(5)とした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製し酸素吸収量の測定及び外観の目視確認、臭気確認を行った。その結果を表1に示した。
【0072】
(比較例1)
N−MXD6(三菱ガス化学株式会社製、商品名:MXナイロン S6011)を用いて実施例1と同様にしてフィルムを作製し、酸素吸収量の測定及び外観の目視確認、臭気確認を行った。その結果を表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
実施例1〜5から明らかなように、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、高湿度下、低湿度下いずれにおいても良好な酸素吸収性能を示し、かつ酸素吸収後もフィルムの形状が保持し崩壊することが無く、臭気が無かった。