特許第6016101号(P6016101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016101
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】パーツフィーダ
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20161013BHJP
   B65G 27/02 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B65G47/14 101B
   B65G27/02
   B65G47/14 101C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-246500(P2012-246500)
(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-94797(P2014-94797A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】迎 邦暁
【審査官】 岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−055213(JP,U)
【文献】 特開2002−284336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/14
B65G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1振動源から振動が伝達される第1振動部材と、前記第1振動源とは異なる第2振動源から振動が伝達される第2振動部材とを備え、
前記各振動部材は、前記伝達された振動により被搬送物が搬送される縦断面V字状の搬送溝を有し、当該搬送溝は、被搬送物が当接しつつ移動する面である二つの支持面から構成された当接部を備え、
前記両振動部材は、前記第2振動部材の搬送溝に対し、前記第1振動部材の搬送溝から被搬送物が移送されるようにして、前記第1振動部材が上流側に、前記第2振動部材が下流側に位置し、
前記第1振動部材の搬送方向下流側の端部には上流側対向面が形成され、前記第2振動部材の搬送方向上流側の端部には下流側対向面が形成され、
前記第1振動部材と前記第2振動部材の間隔は、前記各振動部材のうち一方につき、同他方の振動を絶縁できる程度の隙間が前記各対向面の間に確保される間隔であり、
前記第1振動部材が有する前記上流側対向面は、前記第1振動部材が有する各支持面に対して、交差角が鋭角となるよう傾斜した面であり、
前記第2振動部材が有する前記下流側対向面は、前記第2振動部材が有する各支持面に対して、交差角が鈍角となるよう傾斜した面であり、
前記各振動部材における前記各支持面と前記各対向面とにより形成される交線は、前記当接部において、搬送方向に対して傾斜して現れているパーツフィーダ。
【請求項2】
記各振動部材が有する前記各支持面と前記各対向面とにより形成される交線は、当該各支持面の全てにおいて、搬送方向に対して傾斜して現れている請求項1に記載のパーツフィーダ。
【請求項3】
前記各振動部材にて、前記各支持面に交差する前記対向面が同一の平面を構成する請求項2に記載のパーツフィーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により被搬送物を搬送するパーツフィーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品等の被搬送物(ワーク)を搬送するためにパーツフィーダが用いられる。このパーツフィーダは、搬送経路を構成する搬送溝に振動が加えられることにより、この搬送溝に沿ってワークを一方向に搬送できる。
【0003】
このパーツフィーダとして、二つ以上の振動源を備えたパーツフィーダが存在する。例えば、ワークが円周状に搬送されるボウルフィーダと、ワークが直線状に搬送されるリニアフィーダとが組み合わされたパーツフィーダが存在する(特許文献1の従来例に係る図8及び図9参照)。前記ボウルフィーダとリニアフィーダとは別個の振動源を備えている。
【0004】
このパーツフィーダにおいて、ボウルフィーダとリニアフィーダとでは生じる振動(振幅、振動数等)が異なるため、各フィーダを直接接続すると、例えば振動が干渉してワークの搬送に支障が生じたり、応力の集中によりパーツフィーダの故障を招いたりする可能性がある。このため、特許文献1の図8及び図9に記載のパーツフィーダでは、各フィーダ間に振動を絶縁できる程度の隙間が存在している。これにより、各フィーダのうち一方の振動が他方に対し悪影響を与えない。
【0005】
しかし、前記隙間が大きいと、ワークが隙間に落ち込む可能性がある。また、ワークが例えば小さい突起を有する形状である場合、この突起が隙間に落ち込むことによりワークが隙間に引っ掛かってしまう可能性がある。
【0006】
この問題に対し、ボウルフィーダの下流端をリニアフィーダの上流部分における上方に位置させた(オーバーハングさせた)構造のパーツフィーダが存在する(例えば特許文献1の図1及び図6参照)。このパーツフィーダによると、ボウルフィーダとリニアフィーダとの間にワークが落ち込むような隙間が生じないため、ワークがボウルフィーダとリニアフィーダとの間で引っ掛かる可能性を小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−171826号公報(図1図6図8図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このようにボウルフィーダの下流端がリニアフィーダの上流部分における上方に位置する構造では、ボウルフィーダとリニアフィーダとの乗継部分(オーバーハングさせた部分)に上下方向の段差ができてしまうことが避けられない。このため、前記段差をワークが通過した際に、当該ワークが落下して姿勢が崩れてしまうことがある。このようにワークの姿勢が崩れると、後工程で種々の問題が引き起こされる可能性がある。よって、リニアフィーダ上、または、リニアフィーダよりも下流側にワークの姿勢を修正する機構が必要であった。
【0009】
なお、前記段差を小さくするため、ボウルフィーダの下流端の上下寸法を小さく(薄く)することが考えられるが、このようにすると部材強度が低下してしまうため問題がある。
【0010】
そこで本発明は、二つのフィーダの乗継部分で被搬送物(ワーク)が引っ掛かることを抑制しつつ、被搬送物の姿勢が崩れにくいパーツフィーダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1振動源から振動が伝達される第1振動部材と、前記第1振動源とは異なる第2振動源から振動が伝達される第2振動部材とを備え、前記各振動部材は、前記伝達された振動により被搬送物が搬送される縦断面V字状の搬送溝を有し、当該搬送溝は、被搬送物が当接しつつ移動する面である二つの支持面から構成された当接部を備え、前記両振動部材は、前記第2振動部材の搬送溝に対し、前記第1振動部材の搬送溝から被搬送物が移送されるようにして、前記第1振動部材が上流側に、前記第2振動部材が下流側に位置し、前記第1振動部材の搬送方向下流側の端部には上流側対向面が形成され、前記第2振動部材の搬送方向上流側の端部には下流側対向面が形成され、前記第1振動部材と前記第2振動部材の間隔は、前記各振動部材のうち一方につき、同他方の振動を絶縁できる程度の隙間が前記各対向面の間に確保される間隔であり、前記第1振動部材が有する前記上流側対向面は、前記第1振動部材が有する各支持面に対して、交差角が鋭角となるよう傾斜した面であり、前記第2振動部材が有する前記下流側対向面は、前記第2振動部材が有する各支持面に対して、交差角が鈍角となるよう傾斜した面であり、前記各振動部材における前記各支持面と前記各対向面とにより形成される交線は、前記当接部において、搬送方向に対して傾斜して現れているパーツフィーダである。
【0012】
この構成によれば、第1振動部材の搬送溝と第2振動部材の搬送溝との間で、従来のようなオーバーハング構造をとる必要がないため、上下方向の段差が構造上必ず発生することはない。また、各対向面が各支持面に対して傾斜した面であるため、各対向面の法線方向における面間寸法に比べ、直角三角形の斜辺に対応する、各対向面の間の、搬送溝に沿う方向の寸法を大きく取れる。このことから、各対向面の間に、振動を絶縁できる隙間を有効に確保できる。これらのことから、第1振動部材の搬送溝と第2振動部材の搬送溝との間で上下方向の段差を小さくできる(または段差なしとできる)。また、段差を小さくするためにオーバーハングする側の部材を一律に小さく(薄く)する必要がないため、二つのフィーダの乗継部分において部材強度の低下を抑制できる。しかも、前記当接部において、前記交線が搬送方向に対して傾斜して現れている。このため、被搬送物が第1振動部材の搬送溝から第2振動源の搬送溝へと順次移送されていく。よって被搬送物を、姿勢を保ったままスムーズに第1振動部材から第2振動部材へと移送できる。
【0013】
そして、前記各振動部材が有する前記各支持面と前記各対向面とにより形成される交線は、当該各支持面の全てにおいて、搬送方向に対して傾斜して現れているものとできる。
【0014】
この構成によれば、搬送溝における二つの支持面全てにおいて、前記交線が搬送方向に対して傾斜して現れている。このため各支持面にて、被搬送物が第1振動部材の搬送溝から第2振動源の搬送溝へと、搬送に伴い順次移送されていく。よって被搬送物を、姿勢を保ったまま更にスムーズに第1振動部材から第2振動部材へと移送できる。
【0015】
そして、前記各振動部材にて、前記各支持面に交差する前記対向面が同一の平面を構成するものとできる。
【0016】
この構成によれば、各振動部材の端部を一回切断するだけで前記対向面を形成できる。よって、前記対向面を形成する工程を簡略化できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、姿勢を保ったまま、被搬送物(ワーク)をスムーズに第1振動部材から第2振動部材へと移動させることができる。このため、二つのフィーダの乗継部分で被搬送物が引っ掛かることを抑制しつつ、被搬送物の姿勢が崩れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るパーツフィーダを示す斜視図である。
図2】同パーツフィーダにおけるボウルフィーダの下流端部分とリニアフィーダの上流端部分を示す要部拡大斜視図である。
図3】同パーツフィーダにおける接続用ブロックを示す、下流側から見た斜視図である。
図4】同パーツフィーダにおけるトラフの上流端部分を示す斜視図である。
図5】(A)(B)とも、同パーツフィーダにおける接続用ブロックの下流端部分とトラフの上流端部分との位置関係を示す縦断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明につき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。なお、以下の上流・下流との表現は、パーツフィーダにおける被搬送物(ワーク)の搬送方向M(図1及び図2に示す)を基準とした表現である。
【0020】
−パーツフィーダの構成−
図1に示すように、本実施形態のパーツフィーダ1は、例えばICチップ、微小なコイル等のワークW(図2参照)を整列させるボウルフィーダ2と、ボウルフィーダ2により搬送されてきたワークWを、さらに一定方向に搬送するリニアフィーダ3とを備える。各フィーダ2,3は台座4上に配置されている。
【0021】
−ボウルフィーダ−
ボウルフィーダ2は、図示しない供給手段から供給されたワークWを収容できるボウル21と、ボウル21の下方に位置する第1振動源としてのボウル側振動源22(図には形態が表れていない)とを備える。ボウル21は、中央が膨出した、平面視円形の底部211と、底部211の周縁部から上傾斜する壁面212と、この壁面212に周方向に形成された螺旋状の搬送溝213とを有する。
【0022】
搬送溝213は、下流端では、図2に示すように径方向断面でV字状とされている。前記V字を構成する二つの平面は、いずれもワークWが当接しつつ移動する支持面である。本実施形態では、二つの支持面によりワークWが当接する当接部が構成されている。前記各支持面のうち、図上にて手前側の面が緩斜面である走行面213aとされ、同奥側の面が急斜面である壁面213bとされている。この壁面213bは、走行面213aの幅方向端部(図示奥側端縁部)に対し径方向にて直交する面である。ワークWは、壁面213bに案内されつつ走行面213a上を移動する。
【0023】
ボウル側振動源22は電磁石と、ボウル21を下方から支持する板ばねとを有し、電磁石の励磁によりボウル側振動源22からボウル21に振動が伝達され、ボウル21がねじり振動する。ボウル側振動源22を駆動させてボウル21を振動させることにより、ワークWが周方向に順次搬送される。
【0024】
−接続用ブロック−
前記ボウルフィーダ2の下流端には、第1振動部材の一部としての接続用ブロック23が位置する。なお、本発明の「第1振動部材」は、本実施形態ではボウル21及び接続用ブロック23が相当する。ボウル21が上流側部材であり、接続用ブロック23が下流側部材である。図2に示すように、この接続用ブロック23はボウル21にボルト固定されており、ボウル側振動源22によりボウル21と共に振動させられる。この接続用ブロック23の、リニアフィーダ3に対する位置関係の調節は、ボウル21及び接続用ブロック23を台座4に対して移動させることでなされる。
【0025】
このように、ボウル21とは別体である接続用ブロック23を形成することにより、ワークWの走行によりボウルフィーダ2の下流端に発生する磨耗に対して、耐摩耗性の高い素材を選択する等して適切に対応できる。また、接続用ブロック23、及び、リニアフィーダ3のトラフ31の形状(具体的には接続用ブロック側対向面232及びトラフ側対向面312の形状)を変更するだけで、所望の搬送状態に適するパーツフィーダ1を製造することも可能である。
【0026】
接続用ブロック23の上部には水平方向に延びる一本の搬送溝231が形成されている。この搬送溝231は、図2に示すように縦断面でV字状とされている。この搬送溝231は、ボウル21の搬送溝213と同様、前記V字を構成する二つの平面のうち、図上にて手前側の面が緩斜面である走行面231aとされており、同奥側の面が急斜面である壁面231bとされている。壁面231bは、走行面231aの幅方向端部に対し直交する面である。各面231a,231bの機能はボウル21の搬送溝213と同じである。ワークWはボウル21から接続用ブロック23を介してリニアフィーダ3のトラフ31へと水平方向に移送される。
【0027】
図3に示すように、接続用ブロック23における下流側端面の一部として接続用ブロック側対向面(上流側対向面)232が形成されている。また、この接続用ブロック側対向面232を挟んで図示左右に存在する面は調整面233,233であり、接続用ブロック側対向面232から離れるにつれ上流側に傾斜した平面である。この調整面233,233は、接続用ブロック23とリニアフィーダ3のトラフ31との間の隙間Sを調整する際の調整代を確保するための逃げ面であり、接続用ブロック23とトラフ31とが干渉しないようにするため形成されている。なお、この調整面233,233は本発明において必須ではなく、形成されなくてもよい。
【0028】
接続用ブロック側対向面232は、搬送溝231における走行面231a及び壁面231bのいずれに対しても傾斜した平面である。また、接続用ブロック側対向面232は、搬送方向Mに対して傾斜した平面である。そして、接続用ブロック側対向面232のうち、走行面231aに交わる面と壁面231bに交わる面とは同一の平面を構成している。このため、接続用ブロック23の製造の際に、下流側端部を一回切断するだけで接続用ブロック側対向面232を形成できる。よって、接続用ブロック23の製造工程を簡略化できる。なお、接続用ブロック側対向面232のうち、走行面231aに交わる面と壁面231bに交わる面とが別の平面(角度をもって交差する平面)であってもよい。
【0029】
また、図5(A)(B)に示すように、接続用ブロック側対向面232の、搬送溝231における走行面231a及び壁面231bとの交差角θ1(接続用ブロック23の内部を通る側の角である)は鋭角である。なお、前記「交差角」とは、各面(接続用ブロック側対向面232と走行面231a、または、接続用ブロック側対向面232と壁面231b)の交線234aに対して直交する切断面における角を指す(後述のトラフ31に関しても同じ)。そして、前記各面231a,231bと接続用ブロック側対向面232とが交わる角部234は、図2に示すように、前記各面が交差して形成された交線234aが、前記各面231a,231bに、搬送方向Mに対して傾斜して現れるように位置している。より詳しく述べると、この角部234における交線234aは、前記各面231a,231bの境界線(V字状の谷底部)において上流側に位置し、前記境界線から離れるに従い、下流側に向かうように傾斜して現れている。なお、前記「傾斜」には、直交(傾き90度)は含まれない。これらの構成により奏される作用は後述する。
【0030】
−リニアフィーダ−
リニアフィーダ3は、搬送方向Mに沿って直線状に延びるトラフ31と、このトラフ31の下方に位置する第2振動源(前記第1振動源とは異なる振動源である)としてのリニア側振動源32(図には構成要素である板ばねの一部しか表れていない)とを有する。トラフ31の上流側端部は、接続用ブロック23に対して隙間S分の間隔が確保されるように、間隔をおいて隣接している。
【0031】
トラフ31の上部には長手方向に、水平方向に延びる一本の搬送溝311が形成されている。この搬送溝311は、図2に示すように縦断面でV字状とされている。この搬送溝311は、ボウルフィーダ2の搬送溝213,231と同様、前記V字を構成する二つの平面のうち、図上にて手前側の面が緩斜面である走行面311aとされており、同奥側の面が急斜面である壁面311bとされている。壁面311bは、走行面311aの幅方向端部に対し直交する面である。各面311a,311bの機能はボウル21及び接続用ブロック23の搬送溝213,231と同じである。
【0032】
リニア側振動源32は電磁石と、トラフ31を支持する板ばねとを有し、電磁石の励磁によりリニア側振動源32からトラフ31に振動が伝達され、トラフ31が往復振動する。リニア側振動源32を駆動させてトラフ31を振動させることにより、接続用ブロック23から移送されたワークWが、搬送方向下流側に順次搬送される。
【0033】
ここで、接続用ブロック側対向面232とトラフ側対向面312(下記)との間には隙間Sが存在するため、両者232,312の間で振動が絶縁される。つまり、ボウル側振動源22の振動はトラフ31に伝達されず、リニア側振動源32の振動は接続用ブロック23及びボウル21に伝達されない。これにより、例えば振動が干渉してワークWの搬送に支障が生じたり、応力の集中によりパーツフィーダ1の故障を招いたりする可能性を小さくできる。
【0034】
トラフ31は、上流側端面の一部としてトラフ側対向面(下流側対向面)312が形成されている。また、このトラフ側対向面312を挟んで図示左右に存在する面は調整面313,313であり、トラフ側対向面312から離れるにつれ下流側に傾斜した平面である。この調整面313,313は、トラフ31と接続用ブロック23との間の隙間Sを調整する際の調整代を確保するための逃げ面であり、トラフ31と接続用ブロック23とが干渉しないようにするため形成されている。なお、この調整面313,313は本発明において必須ではなく、形成されなくてもよい。
【0035】
トラフ側対向面312は、搬送溝311における走行面311a及び壁面311bのいずれに対しても傾斜した平面である。また、トラフ側対向面312は、搬送方向Mに対して傾斜した平面である。そして、トラフ側対向面312のうち、走行面311aに交わる面と壁面311bに交わる面とは同一の平面を構成している。このため、トラフ31の製造の際に、上流側端部を一回切断するだけでトラフ側対向面312を形成できる。よって、トラフ31の製造工程を簡略化できる。なお、トラフ側対向面312のうち、走行面311aに交わる面と壁面311bに交わる面とが別の平面(角度をもって交差する平面)であってもよい。
【0036】
また、図5(A)(B)に示すように、トラフ側対向面312の搬送溝311における走行面311a及び壁面311bとの交差角θ2(トラフ31の内部を通る側の角である)は鈍角である。そして、前記各面311a,311bとトラフ側対向面312とが交わる角部314は、図2に示すように、前記各面が交差して形成された交線314aが、前記各面311a,311bに、搬送方向Mに対して傾斜して現れるように位置している。より詳しく述べると、この角部314における交線314aは、前記各面311a,311bの境界線(V字状の谷底部)において上流側に位置し、前記境界線から離れるに従い、下流側に向かうように傾斜して現れている。図2にこの現れた傾斜を示しており、走行面311aに現れた交線314aは前記境界線に対して角度θ3で傾斜している。そして、壁面311bに現れた交線314aは前記境界線に対して角度θ4で傾斜している。この角部314における交線314aは、前記接続用ブロック23の角部234における交線234aと平行の関係にある。なお、前記「傾斜」には、直交(傾き90度)は含まれない。これらの構成により奏される作用は後述する。
【0037】
−各対向面の作用−
次に、接続用ブロック側対向面232とトラフ側対向面312とにより奏される作用について説明する。前記した構成によれば、接続用ブロック23の搬送溝231とトラフ31の搬送溝311との間で上下方向の段差をなしとできる(図5(A)参照)。または、段差を小さくできる(図5(B)参照)。この段差は、従来(例えば特許文献1の図1及び図6参照)のように、上流側に位置するフィーダの上下方向寸法に依存しないため、段差を設ける場合であっても、段差を極めて小さくすることが可能である。また、段差を設ける場合には、段差を大きくするにつれ、トラフ31に対して接続用ブロック23が覆い被さるようになるため、搬送溝213,311の走行面213a,311a及び壁面213b,311bの各面を法線方向から見た場合での隙間Sの幅寸法を小さく(あるいはゼロに)できる。前記のように段差を小さくできる(または段差をなしとできる)ことにより、接続用ブロック23からトラフ31にワークWが移動する際に、ワークWが段差から落下して、ワークWの姿勢が崩れてしまうことを抑制できる。そして、ワークの姿勢を修正する機構が不要になることから、パーツフィーダ1の製造コストを低減できる。
【0038】
また、図5(B)に示すようにオーバーハングする側の部材である接続用ブロック23は、走行面231aと壁面231bとが交差角θ1をもって交わる断面三角形の形状である。このため従来のように、段差を小さくするためにオーバーハングする側の部材を一律に小さく(薄く)する必要がないため、二つのフィーダ2,3の乗継部分において部材強度の低下を抑制できる。
【0039】
また、トラフ31に対して接続用ブロック23を斜面方向(各対向面232,312に沿う方向)に沿ってずらすことにより、隙間Sの大きさを容易に調整できる。より具体的には、搬送方向Mに沿う隙間Sの幅寸法(つまり、搬送溝213,311の走行面213a,311a及び壁面213b,311bの各面を法線方向から見た場合での隙間Sの幅寸法)を容易に調整できる。この隙間Sは、ワークWの大きさ、ボウルフィーダ2及びリニアフィーダ3の振幅及び振動数に応じ、所望の搬送状態を実現すべく、最適値に調整される。
【0040】
前記調整について更に述べると、各対向面232,312は搬送溝231,311における走行面及び壁面に対して傾斜した面であるため、各対向面232,312の法線方向における面間寸法S1(図5(A)参照)に比べ、直角三角形の斜辺に対応する方向であり、各対向面232,312の間の搬送溝231,311に沿う方向である、水平方向寸法S2(図5(A)参照)を大きく取れる。各フィーダ2,3の振動は水平方向成分が多いため、このように水平方向寸法S2を大きく取れると、各対向面232,312の間に、振動を絶縁できる隙間Sを有効に確保できる。
【0041】
また、前記と同様に、接続用ブロック側対向面232とトラフ側対向面312の平行度の調整も容易である。なおこの調整は、前記のようにボウル21と接続用ブロック23とが固定されており、両者相互は不動であるため、トラフ31に対して前記両者を移動させることで行う。
【0042】
また、図2に示すように、接続用ブロック23及びトラフ31における各角部234,314の交線234a,314aは、搬送溝231,311の走行面231a,311a及び壁面231b,311bに、搬送方向Mに対して傾斜して現れるように位置している。このため、図2に示した三つのワークWのうちで最も左側のワークWのように、ワークWが前記隙間Sを斜めに横切ることにより、接続用ブロック23の搬送溝231からトラフ31の搬送溝311へと、搬送に伴い順次移動していく。つまり、ワークWは常に各搬送溝231,311の両方に当接しつつ(ワークWの幅部分(搬送方向Mに直交する部分)が各搬送溝231,311の両方に跨りつつ)移動し、当該ワークWは接続用ブロック23の搬送溝231からトラフ31の搬送溝311へと順次移送されていく。よって、ワークWは各搬送溝231,311間の移送中にて、例えばワークWの幅部分のうち一方側部分(例えば搬送方向Mを各搬送溝231,311の走行面231a,311aの法線方向から見た場合の、搬送方向Mを中心とした幅方向における左側部分)が接続用ブロック23の走行面231aに当接しているとすると、他方側部分(例えば同右側部分)はトラフ31の走行面311aに当接している。このようにして移送がなされるため、二つのフィーダ2,3の乗継部分である隙間SにワークWが引っ掛かることを抑制でき、ワークWの姿勢を保ったまま、ワークWをスムーズに接続用ブロック23からトラフ31へと移送できる。
【0043】
−実施形態の変形例−
以上、本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、搬送溝213,231,311については、参考例として、支持面が3面である四角溝や、支持面が1面である半円溝とすることができる。また、搬送溝における走行面及び壁面についても、前記実施形態のような平面に限定されず、凹面や凸面とすることができる。また、走行面と壁面とは直交する関係に限られない。
【0045】
また、前記実施形態では、搬送溝213,231,311の上方が開放されているが、ワークWを当接しつつ移動させる蓋部材等を当該搬送溝の上方に備えていてもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、被搬送物の搬送経路が、それぞれ1本ずつ形成された搬送溝213,231,311が上流位置から下流位置まで直列に配置されて構成されているが、これに限定されず、搬送経路が並列して構成されたものや、途中で分岐したり集合したりして構成されたものであってもよい。
【0047】
また、各対向面232,312は、前記実施形態では平面であるが、これに限定されず、各対向面232,312のうち一方が凹面、他方が凸面であり、接続用ブロック23とトラフ31との間に隙間Sが存在するようにされていてもよい。
【0048】
また、前記実施形態では、接続用ブロック23及びトラフ31における各角部234,314の交線234a,314aは、各搬送溝231,311の走行面231a,311aと壁面231b,311bの全てにおいて、搬送方向Mに対して傾斜して現れているがこれに限定されない。つまり、各搬送溝231,311の走行面231a,311aと壁面231b,311bのうちいずれか一方のみ交線234a,314aが傾斜して現れており、他方では交線234a,314aが搬送方向Mに対して直交して現れていてもよい。ただし、この構造では、前記交線234a,314aが搬送方向Mに対して直交して現れている部分の隙間SにワークWが引っ掛かる可能性がある(傾斜した対向面232,312の存在により、当該対向面に相当する部分が搬送方向Mに対して直交する面である形態に比べると、当該可能性は低減されてはいる)ため、前記実施形態のように、走行面231a,311aと壁面231b,311bの全てに各交線234a,314aが傾斜して現れる構造の方が好ましい。
【0049】
また、前記実施形態では、各角部234,314の交線234a,314aが、接続用ブロック23の各面231a,231bの境界線及びトラフ31の各面311a,311bの境界線(V字状の谷底部)において上流側に位置し、前記境界線から離れるに従い、下流側に向かうように傾斜して現れているがこれに限定されない。つまり、各角部234,314の交線234a,314aが、前記各面の境界線(V字状の谷底部)において下流側に位置し、前記境界線から離れるに従い、上流側に向かうように傾斜して現れていてもよい。
【0050】
また、前記実施形態のパーツフィーダ1は、ボウルフィーダ2とリニアフィーダ3とを備えているが、これに限定されず、例えば二台のリニアフィーダを備えたパーツフィーダでもよい。
【0051】
また、前記実施形態のパーツフィーダ1は微小な被搬送物(ワーク)に特に適したものであるが、これに限定されず、巨大な被搬送物等、種々の大きさの被搬送物に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 パーツフィーダ
2 ボウルフィーダ
21 第1振動部材、ボウル
22 第1振動源、ボウル側振動源
23 第1振動部材、接続用ブロック
231 搬送溝(第1振動部材)
231a 当接部、支持面(第1振動部材)、走行面(接続用ブロック)
231b 当接部、支持面(第1振動部材)、壁面(接続用ブロック)
232 上流側対向面、接続用ブロック側対向面
234 角部(接続用ブロック)
234a 交線(第1振動部材)
3 リニアフィーダ
31 第2振動部材、トラフ
311 搬送溝(第2振動部材)
311a 当接部、支持面(第2振動部材)、走行面(トラフ)
311b 当接部、支持面(第2振動部材)、壁面(トラフ)
312 下流側対向面、トラフ側対向面
314 角部(トラフ)
314a 交線(第2振動部材)
32 第2振動源、リニア側振動源
S 隙間
W 被搬送物、ワーク
M 搬送方向
θ1 交差角(第1振動部材)
θ2 交差角(第2振動部材)
θ3 当接部に現れた傾斜の角度(第2振動部材)、走行面に現れた傾斜の角度(トラフ)
θ4 当接部に現れた傾斜の角度(第2振動部材)、壁面に現れた傾斜の角度(トラフ)
図1
図2
図3
図4
図5