【実施例】
【0014】
図1〜
図6に実施例の搬送システム2を示す。
図1は搬送システム2のレイアウトを示し、4〜12はイントラベイルートで、これ以外にイントラベイルート4〜12を互いに接続するインターベイルートを備えても良い。そして図示しない天井走行車がこれらのルートを走行する。14,15はストッカで、FOUP,SMIFポッド等の物品を一時保管すると共に、イントラベイルート4〜6とイントラベイルート7〜12を中継する。ストッカ14,15は、天井走行車用のロードポート16と作業者用のロードポート17とを備えている。そして作業者用のロードポート17には、物品が到着するまでの残り時間等を表示し、かつ作業者が種々の入力をするための、端末18が備えられている。
【0015】
20は半導体等の処理装置、21は半導体等の検査装置で、処理装置20はロードポート24を備えて天井走行車との間で物品をやり取りし、検査装置21は、ストッカ14,15と同様に、作業者用のロードポート17と端末18とを備えている。25はイントラベイルート4〜12の直下あるいは側部に設けられたバッファで、物品を一時保管する。なお搬送装置の種類と搬送システムのレイアウトは任意で、例えば無人搬送車、自動倉庫のスタッカークレーン等により搬送しても良い。また搬送する物品の種類は任意で、例えばフラットパネルディスプレイの基板、医薬品等を搬送しても良い。
【0016】
図2に搬送システム2の制御系を示す。ストッカ内搬送装置30はストッカコントローラ31からの指令により、ストッカの内部で物品を搬送する。また天井走行車コントローラ33の指令により、イントラベイルート及びインターベイルート等に沿って、天井走行車32が物品を搬送する。なお天井走行車コントローラ33と天井走行車32との間に、中継用のローカルコントローラを介在させても良い。システムコントローラ34は、図示しない生産管理コントローラ等から搬送要求を受信し、ストッカコントローラ31,天井走行車コントローラ33等を介して、搬送システム2による物品の搬送を制御する。さらに搬送システム2の各部にIDリーダが設けられ、搬送中の物品のIDを確認する。
【0017】
システムコントローラ34の搬送指令管理部35は、搬送要求に応じて搬送指令を作成し、ストッカ内搬送装置30,天井走行車32等に実行させる。搬送指令では例えば、搬送する物品を荷積みする位置(From位置)と荷下ろしする位置(To位置)とを指定し、その間の走行ルートを指定する。さらに物品のID等も搬送指令に記述する。搬送指令管理部35は、所定の時間毎に搬送装置の位置と状況等を確認し、搬送装置等に異常が生じ搬送指令を実行不能になると、異常として検出する。
【0018】
所要時間推定部36は搬送指令の実行開始から実行完了までの所要時間を推定し、この推定に、例えばログファイル記憶部37に記憶している過去の搬送実績のデータを使用する。ログファイル記憶部37は、過去の搬送指令を複数のイベントに分解し、イベント毎の所要時間を記憶している。所要時間推定部36は、搬送指令管理部35が生成した搬送指令の内で、実行中の指令の個数と実行待ちの指令の個数、あるいは実行中の指令でのTo位置の分布等から、搬送指令の実行までの待ち時間を推定しても良い。所要時間推定部36は、搬送指令の実行状況から、搬送指令の進捗率、即ち、搬送指令中の実行済みの部分の所要時間と搬送指令全体の所要時間との割合、を推定する。所要時間推定部36はさらに物品がロードポートに到着するまでの残り時間を推定する。また所要時間推定部36は、現在までの搬送指令の所要時間と過去の搬送実績での所要時間の分布とから、搬送指令が正常に実行されているか遅延しているかを判別する。例えば所要時間の分布の平均値あるいはメディアンから、分布の標準偏差に所定の倍率を乗じた時間以上遅れているものを、遅延とする。
【0019】
なおこの明細書では、搬送指令を天井走行車等の搬送装置に割り付け、搬送装置から確認信号をコントローラが受信した時点で、搬送指令の実行を開始したものとする。また仮に、搬送指令を実行するまでに待ち時間が必要な搬送装置に搬送指令を割り付けることを認める場合、搬送指令の実行を開始したことを搬送装置からコントローラが受信した時点で、搬送指令の実行を開始したものとする。
【0020】
表示画面生成部38は、作業者の端末18に表示する画面等を生成し、図示しない通信部を介して作業者の端末18へ表示画面のデータを送信する。作業者の端末18からは各種の問い合わせ、検索の依頼、データの入力等ができ、例えば端末18が置かれているロードポート17に到着する予定の物品のリストを要求できる。表示画面生成部38は、これに応じて
図3の表示画面を生成し、端末18に表示する。また作業者が個々の搬送指令に関して問い合わせを行うと、表示画面生成部38は
図3のHostID、搬送物等の詳細データを生成し、端末18に表示する。
【0021】
実施例ではシステムコントローラ34が搬送指令を管理する例を示すが、搬送指令をストッカコントローラ31,天井走行車コントローラ33等が作成して管理しても良い。その場合、搬送指令管理部35〜表示画面生成部38を各コントローラ31,33に設けて、端末18へ表示画面を送信する。端末18は
図1のロードポート17に固定の端末に限らず、作業者が携帯する端末等でも良く、さらに
図1での通常のロードポート24にも設けても良い。またシステムコントローラ34は、搬送システム2の状況を監視しているオペレータに、搬送システムの状況に関するデータを提供する。
【0022】
図3に、作業者用の端末18での表示画面の例を示す。
図1の作業者用のロードポート17は、検査が必要、物品のIDが不明等のため、作業者が直接取り扱うことが必要な物品のロードポートである。このため作業者はロードポート17で物品の到着を待つことになり、物品が到着するまでの残り時間が不明であると、作業者はストレスを感じる。そこで端末18に、ロードポートへ搬送する予定の物品のリストを、搬送物(物品)のID、物品毎の進捗率のグラフ、及び到着までの残り時間の推定値の形で表示する。進捗率のグラフは例えば棒グラフもしくは円グラフである。さらに端末18は、搬送指令の状況に応じて、進捗率のグラフを、
・ 正常(正常に実行中)、
・ 異常発生(ハードウェア的あるいはソフト的なエラーが発生し、メンテナンス等が必要なため、到着時間を推定できない)、
・ 遅延(実行中であるが、予定値に対して無視できない遅れが生じている)、
・ 実行待ち(搬送指令の実行を開始していない)、
等に表示色を変えて表示する。実行待ちでの残り時間は、例えば搬送指令の実行を開始するまでの所要時間と実行開始から到着までの所要時間の和であるが、実行開始から到着までの所要時間を表示しても良い。実施例では進捗率と残り時間とを表示するが、一方のみを表示しても良い。また残り時間のみを表示する場合、正常/遅延/異常の種別を、残り時間の表示色を変えることにより表示する。さらに異常の場合、残り時間は不明として扱う。
【0023】
図3の表示画面に対して、作業者が個々の搬送指令を指定すると、搬送指令の詳細と搬送指令の実行状況の詳細とをポップアップ表示する。これによって例えば
図3の場合、異常が発生したため残り時間が不明な搬送物111111が、どのような状態にあるのかが分かる。
【0024】
図4に、正常な場合への残り時間の推定機構を示す。1個の搬送指令は複数のイベントの列に分解できる。
図4の例では、搬送指令は、天井走行車が現在地からFrom位置へ走行する(イベントe1、所要時間t1)、From位置で物品を荷積みする(イベントe2、所要時間t2)、分岐合流部40の入口まで走行する(イベントe3、所要時間t3)、分岐と合流とを行う(イベントe4、所要時間t4)、To位置まで走行する(イベントe5、所要時間t5)、To位置で荷下ろしする(イベントe6、所要時間t6)等に分解できる。なおより詳細に各イベントを分解することもでき、イベントへの分解の仕方は任意である。例えばイベントe2をFrom位置に停止し移載確認信号を交換、From位置で移載を開始、From位置で移載を完了し移載完了信号を交換、の3つのイベントに分解することもできる。またイベントe3,e4,e5を1個のイベントにまとめることもできる。
【0025】
これらのイベントの所要時間の総和が搬送指令の総所要時間Tであり、完了済みのイベントの所要時間の和と総所要時間Tとの割合等が進捗率である。また正常な場合、例えば完了していないイベントの所要時間の和、あるいは未実行のイベントの所要時間の和と実行中のイベントの残り時間との和が、
図3の表示画面での残り時間である。なお各搬送装置は、現在位置、状態等を、所定の時間間隔で、天井走行車コントローラ、ストッカコントローラ等へ送信する。従ってコントローラ34の搬送指令管理部35と所要時間推定部36は、各搬送装置が実行中のイベントのどの部分までを完了したかを把握している。
【0026】
図5はログファイルでの所要時間の実績の分布を示す。例えば
図4の搬送指令に対し、現在地からFrom位置への走行と、From位置からTo位置への物品の搬送に搬送指令を2分し、2個の部分毎に実績を求めても良い。しかしFrom位置とTo位置とを指定すると、実績の個数が少なくなる場合、
図4のイベントを単位として実績を求めても良い。過去の実績での所要時間の分布から、所要時間が長い側の例えば10%と短い側の例えば10%等を除いたものを有効範囲とし、有効範囲での所要時間の平均値、あるいは中央値(メディアン値)等を所要時間とする。また有効範囲での所要時間の分散もしくは標準偏差等の分布の広さを表す量を求め、正常/遅延の判別に用いる。
【0027】
搬送指令を複数のイベントに分解し、イベント毎に所要時間とその分布とを求める場合、イベント毎の所要時間の総和を総所要時間とし、イベント毎の分散の和等を搬送指令全体での所要時間の分散とする。所要時間が極端に長いデータを無視するのは、異常に対応するデータを無視すると共に、著しく遅延した例によって所要時間が長くなることを防止するためである。なお所要時間が長い側及び短い側の何%を無視するかは任意である。実施例では、所要時間が極端に短いデータを無視したが、このデータを有効範囲に加えても良い。
【0028】
例えば最初のイベントから実行中のイベントまでの範囲で、各イベントの所要時間の平均値もしくはメディアンに、所要時間の分散の和の1/2乗、即ち実行中のイベントまでの所要時間の標準偏差、に1等の所定の倍率を加えたを加えたものを求める。この値は正常/遅延の境界と見なすことができる。そして現在までの所要時間がこの値よりも長いものを遅延とする。例えば前記の倍率を1とすると、搬送指令の10%程度を遅延として扱うことになる。なお正常/遅延の境界の定め方は任意で、例えば実行中のイベントまでの所要時間の分布を求め、現在までの所要時間がこの分布での長い側の10%以内に含まれるものを遅延としても良い。
【0029】
図6に進捗状況の表示アルゴリズムを示す。端末が置かれた作業者用のロードポートへ搬送予定の物品に対し、搬送指令の状況を正常/遅延/異常/実行待ち等に分類し、それぞれ表示色を異ならせる(ステップ1)。正常/遅延の判別では、例えば最初のイベントから実行中のイベントまでの実際の所要時間が、実行中のイベントまでの平均値あるいはメディアンの和に、実行中のイベントまでの分散の和の1/2乗以上を加えたものを越えると、遅延とする。ただしこの判別条件は任意である。
【0030】
正常に実行中の搬送指令に対し、例えば実行済みのイベントの所要時間と、総所要時間との割合を進捗率とする。なお実行済みのイベントの所要時間に実行中のイベント中の実行済みの部分の所要時間を加えて、進捗率を求めても良い(ステップ2)。そして未実行のイベントの所要時間の和、あるいは未実行のイベントの所要時間の和に実行中のイベントの未実行部分の所要時間を加えたものを、残り時間として表示する(ステップ3)。
【0031】
遅延中の搬送指令に対し、ステップ2と同様にして進捗率を表示する(ステップ4)。次ぎに遅延中のイベントの残り時間を推定し、これに未実行のイベントの所要時間の和を加えて、残り時間として表示する(ステップ5)。例えば遅延している天井走行車が、
図4のイベントe5を実行中で、イベントe5の所要時間は20秒で、現在イベントe5の実行開始から15秒経過して、イベントe5の走行距離の1/2を走行したとすると、イベントe5の残り時間は15秒と推定できる。
【0032】
この状況でより正確に残り時間を推定するには、To位置までに位置する先行の天井走行車の数、あるいはTo位置までの範囲で停止する予定の先行の天井走行車の数、To位置までの範囲で合流もしくは分岐する予定の先行の天井走行車の数、等をカウントすると良い。これらの数は渋滞の起こり易さを表し、これらの数により定まる遅延時間を所要時間の平均値等に加えることによっても、イベントe5の残り時間を推定できる。
【0033】
未実行の場合、実行開始までの待ち時間の推定値+実行開始から完了までの所要時間、あるいは待ち時間を無視して実行開始から完了までの所要時間を残り時間として表示する(ステップ6)。異常の場合(ステップ7)、天井走行車、IDリーダ、ロードポート等にトラブルが生じているので、残り時間は表示しない。いずれの場合も、作業者の問い合わせに対し、
図3の詳細表示を行い、状況を作業者が理解できるようにする(ステップ8)。
【0034】
これらの処理により、ロードポートへ物品が到着するまでの残り時間等を作業者は視覚的に理解でき、物品の到着を待つことによるストレスを最小にできる。