(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の実施形態)
本発明の実施形態に係る可変容量型斜板式圧縮機(以下、単に圧縮機とする)を
図1〜
図7に基づいて説明する。
なお、
図1における左側を前方とし、右側を後方とする。
図1に示す圧縮機10のハウジング11は、複数のシリンダボア15が形成されたシリンダブロック12と、そのシリンダブロック12の前部側に接合されるフロントハウジング13と、シリンダブロック12の後部側に接合されるリヤハウジング14とから構成されている。
フロントハウジング13からリヤハウジング14まで通される通しボルト16の前後方向の締め付けにより、フロントハウジング13、シリンダブロック12及びリヤハウジング14が一体的に固定され、ハウジング11が形成される。
【0014】
シリンダブロック12及びフロントハウジング13により区画形成された空間は、斜板室17を形成している。
回転軸18が斜板室17の中央付近を貫通するように備えられており、回転軸18はフロントハウジング13に設けられるラジアル軸受19と、シリンダブロック12に設けられる別のラジアル軸受43により回転可能に支持されている。
回転軸18の前部を支持するラジアル軸受19の前方に、回転軸18の周面に亘って摺接する軸封装置20が備えられている。軸封装置20は、リップシールであり、斜板室17内の冷媒ガスが、フロントハウジング13と回転軸18の間から漏洩することを防止している。
回転軸18の前端は、図示しない動力伝達機構を介して外部駆動源に連結されており、回転軸18は外部駆動源により回転可能となっている。
【0015】
斜板室17における回転軸18には、ラグプレート21が一体回転可能に固着されている。
ラグプレート21の後方における回転軸18には、斜板22が、回転軸18の軸線方向へスライド可能及び傾動可能に支持されている。なお、ラグプレート21とフロントハウジング13との間にはスラスト軸受23が介在されている。
斜板22とラグプレート21との間にはヒンジ機構24が介在されている。ヒンジ機構24は、斜板22から突出して形成された一対の斜板アーム25がラグプレート21から突出して形成された一対のラグアーム26の間に挿入され、結合されることにより構成されている。従って、斜板22はヒンジ機構24によってラグプレート21に連結され、回転軸18との同期回転及び回転軸18の軸方向への傾動が可能となる。
【0016】
回転軸18におけるラグプレート21と斜板22との間にはコイルスプリング27が巻装されているほか、コイルスプリング27の押圧により後方へ付勢される摺動自在の筒状体28が回転軸18に嵌挿されている。
斜板22は、コイルスプリング27の付勢力を受けた筒状体28により常に後方、すなわち、斜板22の傾斜角度が減少する方向(斜板22が立つ方向)へ向けて押圧される。なお、斜板22の傾斜角度とは、ここでは回転軸18と直交する面と斜板22の面により成す角度を意味している。
【0017】
図1に示すように、斜板22の前部にはストッパ部22Aが突設され、このストッパ部22Aがラグプレート21に当接することにより、斜板22の最大傾斜角位置が規制される。斜板22の後方における回転軸18にはシリンダブロック12に規制されたコイルスプリング29が巻装されている。斜板22の後部がコイルスプリング29の前部に当接することにより、斜板22の最小傾斜角位置が規制される。また、コイルスプリング29は、圧縮機の最小容量運転から中間容量運転へ切り換わる時に、斜板22を傾斜する方向へ復帰させる補助機能を有する。なお、中間容量運転とは最小容量運転と最大容量運転との間の運転状態を指し、斜板22の傾斜角が最小傾斜角位置と最大傾斜角位置との間の中間傾斜角位置にある。
【0018】
図2に示すように、本実施形態では、シリンダブロック12の複数のシリンダボア15は、6個のシリンダボア15(15A、15B、15C、15D、15E、15F)より構成されている。シリンダボア15(15A〜15F)は、回転軸18の周りで周方向に等間隔(60°間隔)に並ぶように形成されている。シリンダボア15(15A〜15F)内には、片頭型のピストン30(30A、30B、30C、30D、30E、30F)が往復動可能に収容されている。
図1に示すようにピストン30の首部がシュー31を介して斜板22の外周に係留されている。
そして、回転軸18の回転に伴って斜板22が回転運動されるとき、シュー31を介して各ピストン30が往復移動される。なお、ピストン30の構成は後述する。
【0019】
一方、
図1に示されるように、リヤハウジング14の前部側とシリンダブロック12の後部側との間は、バルブプレート32、吸入弁プレート33、吐出弁プレート34及びリテーナ35よりなる弁形成体36が介在されている。
シリンダボア15内におけるピストン30と弁形成体36間には圧縮室38がそれぞれ区画されている。シリンダボア15A〜15Fに対応する圧縮室をそれぞれ38A、38B、38C、38D、38E、38Fとする。
リヤハウジング14内の中心側には、吸入室37が形成されており、吸入室37はバルブプレート32に設けられる各吸入ポート32Aによりシリンダボア15内の圧縮室38と連通されている。
また、リヤハウジング14の外周側には、吐出室39が形成されており、吐出室39はバルブプレート32に設けられる各吐出ポート32Bによりシリンダボア15内の圧縮室38と連通されている。吐出室39と吸入室37は隔壁14Aにより隔絶されている。
【0020】
各吸入ポート32Aには、吸入ポート32Aを閉塞可能な吸入弁33Aが設けられ、各吐出ポート32Bには、吐出ポート32Bを閉塞可能な吐出弁34Aが設けられている。
また、吸入室37は吸入通路40を介して図示しない外部冷媒回路と接続されており、吐出室39は吐出通路41を介して外部冷媒回路と接続されている。
【0021】
吸入通路40を介して外部冷媒回路から吸入室37へ吸入された冷媒ガスは、ピストン30の上死点位置から下死点位置への移動により、吸入ポート32Aを通じて圧縮室38(38A〜38F)内に吸入される。
圧縮室38A〜38F内に吸入された冷媒ガスは、ピストン30の下死点位置から上死点位置への移動により所定の圧力にまで圧縮され、吐出ポート32Bを通じて吐出室39へ吐出される。
【0022】
シリンダブロック12には、吸入室37と斜板室17とを連通する図示しない抽気通路が形成されている。また、シリンダブロック12及びリヤハウジング14には、吐出室39と斜板室17とを連通する図示しない給気通路が設けられると共に、この給気通路には容量制御弁42が配設されている。
この容量制御弁42の弁開度に応じて吐出室39から斜板室17に導入される高圧の冷媒ガスの導入量が決定される。吐出室39から斜板室17に導入される高圧の冷媒ガスの導入量と、斜板室17から吸入室37へ導出させる冷媒ガスの導出量とのバランスにより、斜板室17内の斜板室圧力が決定される。
これにより、ピストン30を挟んだ斜板室17内と圧縮室38内の圧力の差が変更されて、斜板22の傾斜角が変更され、斜板22の傾斜角に応じてピストン30のストロークが変えられ、ピストン30のストロークが変えられることにより吐出容量が調整される。
【0023】
図4に示すように、ピストン30は、ヘッド部45とヘッド部45の前部側に延在したシュー支持部46とから構成されている。ヘッド部45は、シリンダボア15の内周面と摺接し、前後方向に移動する。シュー支持部46は一対のシュー31を支持し、シュー31介して斜板22の回転運動をヘッド部45に伝達する。ヘッド部45の周面上には、周方向に延在する環状溝45Aと、軸方向に延在し環状溝45Aと連通する直線溝45Bとが形成されている。環状溝45Aは、周方向の全周にわたり形成され、ヘッド部45における圧縮室38側の後部側に形成されている。環状溝45Aの溝断面は円弧状である。直線溝45Bは、ヘッド部45における軸方向の中間領域に形成され所定の軸方向長さを有しており、直線溝45Bの後端部が環状溝45Aと連通している。直線溝45Bの形成されている円周方向の位置は、ピストン30の側方部分に形成されている。直線溝45Bの溝断面は円弧状である。環状溝45A及び直線溝45Bは、圧縮室38から漏洩するブローバイガスを捕捉し一時的に貯留するためのものである。
【0024】
図2及び
図3に示すように、シリンダブロック12には、複数のシリンダボア15A〜15Fをそれぞれ個別に吸入室37に連通させる複数のシリンダボア側連通路47が形成されている。シリンダボア側連通路47は、シリンダボア15から径方向に斜めになっている通路の部分と、斜めになっている通路と接続されて前後方向に形成された通路の部分を備えている。また、弁形成体36には、各シリンダボア側連通路47と吸入室37とを繋ぐ弁形成体側連通孔48が形成されている。
ここで、シリンダボア15A〜15Fと吸入室37を連通させる6個のシリンダボア側連通路47をそれぞれ順に47A、47B、47C、47D、47E、47Fとし、6個の弁形成体側連通孔48をそれぞれ順に48A、48B、48C、48D、48E、48Fとする。連通路は、シリンダボア側連通路47(47A〜47F)と弁形成体側連通孔48(48A〜48F)とを備えている。
【0025】
シリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48Aを介してシリンダボア15Aと吸入室37とは連通される。シリンダボア側連通路47B及び弁形成体側連通孔48Bを介してシリンダボア15Bと吸入室37とは連通される。シリンダボア側連通路47C及び弁形成体側連通孔48Cを介してシリンダボア15Cと吸入室37とは連通される。シリンダボア側連通路47D及び弁形成体側連通孔48Dを介してシリンダボア15Dと吸入室37とは連通される。シリンダボア側連通路47E及び弁形成体側連通孔48Eを介してシリンダボア15Eと吸入室37とは連通される。シリンダボア側連通路47F及び弁形成体側連通孔48Fを介してシリンダボア15Fと吸入室37とは連通される。
【0026】
図2に示すように、回転軸18の回転方向をR方向とする。回転軸18と一体回転可能に連結された斜板22の回転方向は同様にR方向となる。
ところで、ピストン30のシュー支持部46がシュー31を介して斜板22の外周に係留されており、回転軸18の回転に伴って斜板22がR方向に回転運動されるとき、シュー31を介して各ピストン30が前後方向(
図2における図面と直角方向)に往復移動される。
【0027】
図2において、回転軸18の軸心とピストン30(30A〜30F)の中心とを通る平面Lを考えたとき、平面Lに対して斜板22の回転方向前方側の領域に、シリンダボア側連通路47(47A〜47F)はそれぞれ形成されている。すなわち、シリンダボア15(15A〜15F)の周面における斜板22の回転方向前方側の領域に、シリンダボア側連通路47(47A〜47F)のシリンダボア15(15A〜15F)周面側の開口は形成されている。この周面側の開口を開口49とする。なお、
図2では、回転方向前方側とは平面Lよりも左回り方向側を指し、回転方向後方側とは平面Lよりも右回り方向側を指す。
また、
図2において、回転軸18の軸心を中心としてピストン30(30A〜30F)の中心を通る円筒面Mを考えたとき、各開口49は、シリンダボア15(15A〜15F)周面と円筒面Mとが交差する部位に設けられている。すなわち、各開口49は、シリンダボア15(15A〜15F)の周面における斜板22の回転方向前方側の領域であって、且つ、シリンダボア15(15A〜15F)周面と円筒面Mとが交差する部位に設けられている。
よって、シリンダボア15(15A〜15F)の周面における斜板22の回転に伴いピストン30(30A〜30F)に作用する荷重により、ピストン30(30A〜30F)の押し付けられる領域に、各開口49は、形成されていることになる。
【0028】
図1及び
図3に示すように、圧縮行程にあるシリンダボア15A内のピストン30Aの周面上に延在する直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとは連通している。直線溝45Bにおける前部側の一部と、シリンダボア側連通路47Aにおけるシリンダボア15A周面側の開口49とが連通している。なお、直線溝45Bの軸方向の長さは、最大容量運転から最小容量運転における可変容量運転時において、各ピストン30A〜30Fの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47A〜47Fの開口49とがそれぞれ連通する長さに設定されている。また、直線溝45Bを設ける範囲は、可変容量に伴いピストン30(30A〜30F)下死点の変動範囲に対応するよう設けられている。下死点については後述する。
【0029】
ところで、直線溝45Bは、吸入室37と、連通路としてのシリンダボア側連通路47及び弁形成体側連通孔48を経由して連通可能である。
本実施形態においては、シリンダボア15Aと吸入室37間において、シリンダボア15A内にある直線溝45Bは、シリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48Aを介して吸入室37と連通可能である。よって、圧縮行程にあるシリンダボア15A内のブローバイガスは、環状溝45A、直線溝45B、シリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48Aを経由して吸入室37に流入し回収される。
各シリンダボア15B〜15Fと吸入室37間においてもシリンダボア15Aと吸入室37間と同様にブローバイガスの吸入室37への回収が行われる。
【0030】
次に、上記構成を有する圧縮機10につき
図5〜
図7を参照して作用説明を行う。
図5(a)〜
図5(d)は、圧縮機10が中間容量運転をしている場合において、各回転角度(
図7における回転角度d1〜d4)における直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとの連通の状況を示している。
図5では、斜板22の傾斜角度は最小傾斜角位置と最大傾斜角位置の中間的な位置にある。
【0031】
図7は、回転軸18の回転角度とシリンダボア15内(圧縮室38A〜38F)の圧力の関係を示すグラフである。横軸は回転軸18の回転角度(deg.)を表し、縦軸はシリンダボア内の圧力を示す。ピストン30A〜30Fが上死点位置にあるときの回転角度を0°、360°とし、下死点位置にあるときの回転角度を180°としている。回転角度0°〜180°間が吸入行程に相当し、回転角度180°〜360°間が圧縮行程に相当する。なお、
図7において、回転角度d1を上死点位置(0°)とし、回転角度d2を下死点位置(180°)とする。また、回転角度d3を圧縮行程におけるシリンダボア内の圧力がある程度上昇した状態における回転角度とし、回転角度d4を圧縮行程におけるシリンダボア内の圧力が最大値となり吐出弁34Aが閉じた状態から開いた状態に変化する回転角度とする。この場合には、d3=240°、d4=300°に設定している。
図5において、
図5(a)は、回転角度d1(0°)のときのピストン30Aの直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとの連通状態(以下、略して連通状態)を示し、
図5(b)は、回転角度d2(180°)のときの連通状態を示し、
図5(c)は、回転角度d3のときの連通状態を示し、
図5(d)は、回転角度d4のときの連通状態を示している。
【0032】
図5(a)に示すように、回転角度d1のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通していない。直線溝45Bは、シリンダボア側連通路47Aの開口49に対し、後方側に大きくずれた位置にある。このとき、回転角度d1でピストン30Aは上死点位置(0°)にあるので、シリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩するブローバイガスは少量である。
【0033】
図5(b)に示すように、回転角度d2のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aの開口49とは、対向する位置にあり、直線溝45Bの長手方向の中間位置と連通している。回転角度d2でピストン30Aは下死点位置(180°)にあるので、シリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩するブローバイガスは殆ど発生していない。
なお、回転角度がd2より大きくなると、圧縮室38A内の圧力は
図7に示すように、次第に上昇し、ブローバイガスは徐々に増加する。
【0034】
図5(c)に示すように、回転角度d3のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aの開口49とは、対向する位置にあり、直線溝45Bの長手方向の中間位置よりやや前方側で連通している。このとき、圧縮室38A内の冷媒ガスは、圧縮されることにより圧力が上昇するが、冷媒ガスの一部は、ブローバイガスとしてシリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩する。このブローバイガスは、環状溝45Aによって捕捉された後、直線溝45Bに流入する。そして、直線溝45Bに流入したブローバイガスはシリンダボア側連通路47A、弁形成体側連通孔48Aを経由して吸入室37へ流れ込み回収される。
【0035】
図5(d)に示すように、回転角度d4のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aの開口49とは、対向する位置にあり、直線溝45Bの長手方向の前方側端部で連通している。このとき、圧縮室38A内の冷媒ガスは、圧力が最大値となり、冷媒ガスの一部は、ブローバイガスとしてシリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩するが、このブローバイガスの量は最も多くなる。しかし、
図5(c)の場合と同様に、このブローバイガスは、環状溝45Aによって捕捉された後、直線溝45Bに流入し、シリンダボア側連通路47A、弁形成体側連通孔48Aを経由して吸入室37へ流れ込み回収される。
なお、図示しないが、回転角度がd4より大きくなると、吐出弁34Aが開き、圧縮室38A内の高圧の冷媒ガスは、吐出室39へ吐出されるので、ブローバイガスは少なくなる。
【0036】
このように、中間容量運転時においては、ピストン30Aが回転角度d2〜d4の範囲にあるとき、直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。
図7に示すように、このとき、シリンダボア15内の圧力は急激に上昇し、ブローバイガスも急激に多くなる。しかし、直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとが連通していることにより、ブローバイガスは直線溝45B、シリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48Aを経由して吸入室37へ効率よく回収することができる。
【0037】
なお、各ピストン30B〜30Fの直線溝45Bと、各シリンダボア側連通路47B〜47F及び弁形成体側連通孔48B〜48F間についても、ピストン30Aの直線溝45Bとシリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48Aの場合と同様である。
なお、最小容量運転時においては、斜板22の傾斜角度は0°ではなく、若干の角度を有している。この場合には、中間容量運転時と同様の作用となる。
【0038】
図6(a)〜
図6(d)は、圧縮機10が最大容量運転をしている場合において、各回転角度における直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとの連通の状況を示している。このとき、斜板22の傾斜角度は最大傾斜角位置にある。
図6において、
図6(a)は、回転角度d1(0°)のときの連通状態を示し、
図6(b)は、回転角度d2(180°)のときの連通状態を示し、
図6(c)は、回転角度d3のときの連通状態を示し、
図6(d)は、回転角度d4のときの連通状態を示している。
【0039】
図6(a)に示すように、回転角度d1のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通していない。直線溝45Bは、シリンダボア側連通路47Aの開口49に対し、後方側に大きくずれた位置にある。このとき、回転角度d1でピストン30Aは上死点位置(0°)にあるので、シリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩するブローバイガスは少量である。
【0040】
図6(b)に示すように、回転角度d2のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通していない。直線溝45Bは、シリンダボア側連通路47Aの開口49に対し、前方側に大きくずれた位置にある。このとき、回転角度d2でピストン30Aは下死点位置(180°)にあるので、シリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩するブローバイガスは殆ど発生していない。
【0041】
図6(c)に示すように、回転角度d3のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aの開口49とは、対向する位置にあり、直線溝45Bの長手方向の後方側端部で連通している。このとき、圧縮室38A内の冷媒ガスは、圧縮されることにより圧力が上昇するが、冷媒ガスの一部は、ブローバイガスとしてシリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩する。このブローバイガスは、環状溝45Aによって捕捉された後、直線溝45Bに流入する。そして、直線溝45Bに流入したブローバイガスはシリンダボア側連通路47A、弁形成体側連通孔48を経由して吸入室37へ流れ込み回収される。
【0042】
図6(d)に示すように、回転角度d4のときは、ピストン30Aの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aの開口49とは、対向する位置にあり、直線溝45Bの長手方向の前方側端部で連通している。このとき、圧縮室38A内の冷媒ガスは、圧力が最大値となり、冷媒ガスの一部は、ブローバイガスとしてシリンダボア15Aの内周面とピストン30Aの外周面との間の微小な隙間を通って斜板室17側へ漏洩するが、このブローバイガスの量は最も多くなる。しかし、
図6(c)の場合と同様に、このブローバイガスは、環状溝45Aによって捕捉された後、直線溝45Bに流入し、シリンダボア側連通路47A、弁形成体側連通孔48を経由して吸入室37へ流れ込み回収される。
なお、図示しないが、回転角度がd4より大きくなると、吐出弁34Aが開き、圧縮室38A内の高圧の冷媒ガスは、吐出室39へ吐出されるので、ブローバイガスは少なくなる。
【0043】
このように、最大容量運転時においては、ピストン30Aが回転角度d3〜d4の範囲にあるとき、直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。
図7に示すように、このとき、シリンダボア15内の圧力は急激に上昇し、ブローバイガスも急激に多くなる。しかし、直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとが連通していることにより、ブローバイガスは直線溝45B、シリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48を経由して吸入室37へ効率よく回収することができる。ところで、直線溝45Bの軸方向の長さは、直線溝45Bを介してシリンダボア側連通路47Aと斜板室17とが連通しない長さに設定されている。
なお、各ピストン30B〜30Fの直線溝45Bと、各シリンダボア側連通路47B〜47F及び弁形成体側連通孔48B〜48F間についても、ピストン30Aの直線溝45Bとシリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48Aの場合と同様である。
【0044】
ところで、斜板22がR方向(
図2で左回り方向)に回転していることにより、斜板22の回転に伴い、ピストン30にはシュー31を介して荷重が作用する。ピストン30が受ける荷重はピストン30をシリンダボア15の周面における回転方向前方側に押し付ける。このため、ピストン30とシリンダボア15周面との間のクリアランスは、回転方向前方側と回転方向後方側とで異なり、回転方向前方側のクリアランスが小さくなり、回転方向後方側のクリアランスが大きくなる。
【0045】
ところで、回転方向前方側の領域にシリンダボア側連通路47のシリンダボア15周面側の開口49は形成されているので、開口49は、ピストン30とシリンダボア15周面との間のクリアランスが小さくなる領域に開口していることになる。よって、吸入室37から斜板室17へのピストン30とシリンダボア15周面との間のクリアランスを介した冷媒ガスの流入を抑制することが可能である。
【0046】
本発明の実施形態に係る圧縮機10によれば以下の効果を奏する。
(1)ピストン30A〜30Fには環状溝45Aと直線溝45Bがそれぞれ形成され、各直線溝45Bは対応するシリンダボア側連通路47A〜47F及び弁形成体側連通孔48A〜48Fを経由して吸入室37と個別に連通可能である。そして、直線溝45Bの軸方向の長さは、最大容量運転時から最小容量運転時において各ピストン30A〜30Fの直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47A〜47Fとがそれぞれ連通する長さに設定されている。よって、直線溝45Bを設けることにより、さまざまな吐出容量においてシリンダボア15と吸入室37間を連通させることが可能となり、さまざまな吐出容量において斜板室17側へ漏洩するブローバイガスを効率よく低減できる。
(2)中間容量運転時においては、ピストン30Aが回転角度d2〜d4の範囲にあるとき、直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。また、最大容量運転時においては、ピストン30Aが回転角度d3〜d4の範囲にあるとき、直線溝45Bと、シリンダボア側連通路47Aとは連通している。このとき、シリンダボア15内の圧力は急激に上昇し、ブローバイガスも急激に多くなる。しかし、直線溝45Bとシリンダボア側連通路47Aとが連通していることにより、ブローバイガスは直線溝45B、シリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48を経由して吸入室37へ効率よく回収することができる。このように幅広い回転角度の範囲でブローバイガスを回収できるので、ブローバイガスの回収効率を向上可能である。なお、各ピストン30B〜30Fの直線溝45Bと、各シリンダボア側連通路47B〜47F及び弁形成体側連通孔48B〜48F間についても、ピストン30Aの直線溝45Bとシリンダボア側連通路47A及び弁形成体側連通孔48Aの場合と同様である。
(3)回転方向前方側の領域にシリンダボア側連通路47のシリンダボア15周面側の開口49は形成されているので、開口49は、ピストン30とシリンダボア15周面との間のクリアランスが小さくなる領域に開口していることになる。よって、吸入室37から斜板室17へのピストン30とシリンダボア15周面との間のクリアランスを介した冷媒ガスの流入を抑制することが可能である。
【0047】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更しても良い。
○ 本発明の実施形態では、ピストン30の環状溝45Aは全周にわたり形成されているとして説明したが、全周にわたり形成されておらず、周方向の一部に未形成の部分があっても良い。
○ 本発明の実施形態では、圧縮機が6気筒(シリンダボア及びピストンが6個)として説明したが、6気筒以外の気筒数であっても構わない。