特許第6016140号(P6016140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016140
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】ハンド、ロボット、及び加工システム
(51)【国際特許分類】
   B27D 5/00 20060101AFI20161013BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20161013BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B27D5/00
   B27M3/00 N
   C09J7/00
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-535335(P2014-535335)
(86)(22)【出願日】2012年9月14日
(86)【国際出願番号】JP2012073701
(87)【国際公開番号】WO2014041693
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】古澤 文明
(72)【発明者】
【氏名】工藤 辰之
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−102704(JP,A)
【文献】 特開平9−19904(JP,A)
【文献】 実開平7−15305(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 5/00
B27M 1/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が載せられるテーブル部と、
ハンドをそれぞれ有し、前記対象物の長手方向にそれぞれ移動する第1及び第2のロボットと、を備え、
前記ハンドは、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断されたテープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を前記対象物に貼付する吸着器と、を有する加工システム。
【請求項2】
請求項1記載の加工システムにおいて、
前記カッター部は、前記保持部によって押さえられた前記テープの先端側を保持する1対の保持部材と、
前記保持部材によって保持された前記テープを切断する刃と、を有している加工システム。
【請求項3】
請求項2記載の加工システムにおいて、
前記対象物はシートであり、
前記ハンドが、前記シートの歪みを抑えるためのエアを該シートに噴出する噴出部を更に有している加工システム。
【請求項4】
請求項3記載の加工システムにおいて、
前記シートに貼付された前記テープ片に孔を開ける孔開けパンチと、
装填されたつづり針にて、前記シートに貼付された前記テープ片を前記シートに留めるステープラーと、を更に備えた加工システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加工システムにおいて、
前記テーブル部は、移動可能な上段テーブルと、
前記上段テーブルの下側に潜り込むことが可能な下段テーブルと、を有する加工システム。
【請求項6】
シートを案内するガイド部と、
前記シートの一方の側の面にテープ片を貼付する第1のテープ貼付機構と、
前記ガイド部を挟んで前記第1のテープ貼付機構と反対の側に設けられ、前記シートの他方の側の面にテープ片を貼付する第2のテープ貼付機構と、を備え、
前記第1及び第2のテープ貼付機構は、それぞれ、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断された前記テープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を前記シートに貼付する吸着器と、を有するロボットのハンド。
【請求項7】
ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断されたテープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を対象物に貼付する吸着器と、を備えたロボットのハンド。
【請求項8】
シートを案内するガイド部、前記シートの一方の側の面にテープ片を貼付する第1のテープ貼付機構、及び前記ガイド部を挟んで前記第1のテープ貼付機構と反対の側に設けられ、前記シートの他方の側の面にテープ片を貼付する第2のテープ貼付機構を有するハンドを備え、
前記第1及び第2のテープ貼付機構は、それぞれ、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断された前記テープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を前記シートに貼付する吸着器と、を有するロボット。
【請求項9】
ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断されたテープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を対象物に貼付する吸着器と、を有するハンドを備えたロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンド、ロボット、及び加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4017131号公報には、ポリエステル化粧合板の製法が記載されている。このポリエステル化粧合板の製法は、i)板状の基材に化粧紙を貼着するステップ、ii)該化粧紙の表面に不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂液を塗布するステップ、iii)表面がポリ塩化ビニルシートで被覆された金属製の枠に融着手段により張設された化粧表面仕上げ用のポリエチレンテレフタレートフィルムで塗布面を被覆し、脱泡するステップ、iv)不飽和ポリエステル樹脂が硬化した後、該ポリエチレンテレフタレートフィルムを硬化面から剥がすステップに基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4017131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、対象物に、テープ片を貼り付けるためのハンド、ロボット、及び加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、対象物が載せられるテーブル部と、
ハンドをそれぞれ有し、前記対象物の長手方向にそれぞれ移動する第1及び第2のロボットと、を備え、
前記ハンドは、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断されたテープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を前記対象物に貼付する吸着器と、を有する加工システムが適用される。
【0006】
また、他の観点によれば、シートを案内するガイド部と、
前記シートの一方の側の面にテープ片を貼付する第1のテープ貼付機構と、
前記ガイド部を挟んで前記第1のテープ貼付機構と反対の側に設けられ、前記シートの他方の側の面にテープ片を貼付する第2のテープ貼付機構と、を備え、
前記第1及び第2のテープ貼付機構は、それぞれ、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断された前記テープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を前記シートに貼付する吸着器と、を有するロボットのハンドが適用される。
【0007】
また、他の観点によれば、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断されたテープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を対象物に貼付する吸着器と、を備えたロボットのハンドが適用される。
【0008】
また、他の観点によれば、シートを案内するガイド部、前記シートの一方の側の面にテープ片を貼付する第1のテープ貼付機構、及び前記ガイド部を挟んで前記第1のテープ貼付機構と反対の側に設けられ、前記シートの他方の側の面にテープ片を貼付する第2のテープ貼付機構を有するハンドを備え、
前記第1及び第2のテープ貼付機構は、それぞれ、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断された前記テープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を前記シートに貼付する吸着器と、を有するロボットが適用される。
【0009】
また、他の観点によれば、ロール状に巻かれたテープを回転可能に保持するテープ保持器と、
前記テープ保持器に保持された前記テープの端部を引き出す引き出し器と、
前記引き出し器に引き出された前記テープの基端側を押さえる保持部と、
前記保持部によって押さえられた前記テープを切断するカッター部と、
前記カッター部によって切断されたテープ片の粘着面とは反対側の面を吸着し、該テープ片を対象物に貼付する吸着器と、を有するハンドを備えたロボットが適用される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象物に、テープ片を貼り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の一実施例に係る加工システムの平面図である。
図1B】同加工システムの側面図である。
図1C】同加工システムの正面図である。
図2】同加工システムによって加工されたシートを用いて製造される内装用化粧板の説明図である。
図3A】同加工システムによって加工されたシートが型として構成された状態を示す説明図である。
図3B図3AのX部拡大図である。
図4】同加工システムが有するロボットのハンドを正面から見た模式図である。
図5】同加工システムが有するロボットのハンドに設けられたガイド部の説明図である。
図6】同加工システムが有するロボットのハンドに設けられたテープ保持器の説明図である。
図7】同加工システムが有するロボットのハンドに設けられた引き出し器の説明図である。
図8】同加工システムが有するロボットのハンドに設けられた保持部の説明図である。
図9A】同加工システムが有するロボットのハンドに設けられたカッター部を正面から見た説明図である。
図9B図9Aの矢視Yである。
図10A】同加工システムが有するロボットのハンドに設けられた吸着器の説明図である。
図10B】同加工システムが有するロボットのハンドに設けられた吸着器の吸着面の説明図である。
図11A】同加工システムによるシートの加工方法のステップSA1を示す説明図である。
図11B】同加工システムによるシートの加工方法のステップSA2を示す説明図である。
図11C】同加工システムによるシートの加工方法のステップSA3を示す説明図である。
図11D】同加工システムによるシートの加工方法のステップSA4を示す説明図である。
図11E】同加工システムによるシートの加工方法のステップSA5を示す説明図である。
図11F】同加工システムによるシートの加工方法のステップSA7において、ロッドが進出した状態を示す説明図である。
図11G】同加工システムによるシートの加工方法のステップSA7において、ロッドが後退した状態を示す説明図である。
図12】同加工システムによるシートの加工方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0013】
本発明の一実施例に係る加工システム(図1A図1B、及び図1C参照)10は、図2に示す建築用物の内装用化粧板Pを製造するために用いられるシートS(図3A及び図3B参照)に対し、テープ片TPを貼付し、孔Hを開け、つづり針STPを打つ等の加工を行う。
図2に示す内装用化粧板Pは、化粧紙と合板等を貼り合わせた基材20の上にポリエステル樹脂を塗布し、シートSをかけた後、ロールを用いて塗布されたポリエステル樹脂を延ばしてポリエステル樹脂層22として硬化させた板材である。
ポリエステル樹脂層22の表面には、内装用化粧板Pとしての質感を高めるために、凹凸が形成されている。シートSは、この凹凸を形成するための型28(図3A及び図3B参照)の一部として使用されるため、表面に微小な凹凸(不図示)が形成されている。
【0014】
シートSは、例えば矩形状である。シートSはPET(Polyethylene terephthalate)材で形成されている。シートSの幅方向の寸法は、例えば1000〜1500mmである。シートSの長さ方向の寸法は、例えば1900〜2700mmである。シートSの厚みは、例えば、70〜400μmである。
【0015】
シートS(対象物の一例)は、ゴム体29を介して矩形状の金属枠32の内側に設けられたフック34に取り付けられ、型28として構成される。そのために、シートSには補強用のテープ片TPが貼付される。詳細には、シートSは、加工システム10により、各辺に沿って、間隔を空けてテープ片TPが両面に貼付される。テープ片TPは、例えば50〜92箇所に貼付される。また、シートSは、テープ片TPとともに、テープ片TPの中央部にて孔Hが開けられる。更に、シートSは、貼付されたテープ片TPの上から、孔Hを挟んでシートSの端部とは反対の側にてつづり針STPが打たれ、補強される。
【0016】
加工システム10は、図1A図1B、及び図1Cに示すように、テーブル部30、第1のロボット40a、及び第2のロボット40bを備えている。
テーブル部30は、それぞれシートSが載せられる上段テーブル30a及び下段テーブル30bを有している。各テーブル30a、30bには、アタッチメント302を介して載せられたシートSを位置決めする位置決め機構(不図示)が搭載されている。位置決めされたシートSは、磁石(不図示)により各テーブル30a、30bに固定される。
【0017】
上段テーブル30aは、シートSの長手方向に沿って延びるレール304aの上に載った架台306(図1C参照)の上に設けられ、図1A及び図1Bに示す矢印の方向に移動できる。
下段テーブル30bは、レール304aの内側に設置されたレール304bに乗って移動できる。下段テーブル30bは、図1Cに示すように、幅方向及び高さ方向の寸法が、それぞれ架台306の幅方向及び高さ方向の寸法よりも小さく、上段テーブル30aの下側に潜り込むことが可能となっている。
【0018】
従って、第1及び第2のロボット40a、40bが、一方のテーブルに載ったシートSを加工位置P1(図1A参照)にて加工している間に、作業者WMが準備位置P2にある他方のテーブルに次に加工するシートSを載せることができるので、タクトタイムが短縮される。
【0019】
第1のロボット40a及び第2のロボット40bは、例えば6軸の垂直多関節型の産業用ロボットである。
第1のロボット40a及び第2のロボット40bは、それぞれ、レール304aの外側にて、レール304aに沿って配置されたレール402a及びレール402bの上を独立に移動できる。
【0020】
第1のロボット40aは、レール402a上を移動しながら、シートSを幅方向の中心線で2つに分けた際の一方の側に対して、加工を行う。第2のロボット40bは、レール402b上を移動しながら、シートSを幅方向の中心線で2つに分けた際の他方の側に対して、加工を行う。
【0021】
なお、第1のロボット40aが、レール402a上を移動しながら、シートSの一方の側の短辺部分及び一方の側の長辺部分に対して加工を行い、第2のロボット40bが、レール402b上を移動しながら、シートSの他方の側の短辺部分及び他方の側の長辺部分に対して加工を行ってもよい。
【0022】
第1のロボット40a及び第2のロボット40bは、それぞれ同じ構成とすることができるので、以下、第2のロボット40bについての説明は省略する。
第1のロボット40aはアームの先端部に、図4に示すハンド404を有している。なお、図1A図1Cにおいて、第1のロボット40aのハンドは図示されていない。
ハンド404は、第1のロボット40aのアームの先端部に設けられているので、任意の位置及び姿勢をとることが可能である。以下、シートSを加工する際のハンド404の姿勢(図4参照)に基いて、ハンド404について説明する。
【0023】
ハンド404のフレーム406には、ガイド部410、シートSにテープ片TPを貼付するための第1及び第2のテープ貼付機構430a、430bと、シートSに貼付されたテープ片TPとともにシートSに孔Hを開ける孔開けパンチ510と、シートSに貼付されたテープ片TPを、つづり針STPにて更にシートSに留めるステープラー520と、が設けられている。
【0024】
ガイド部410は、図5に示すように、挿入されたシートS(図4及び図5に記載の矢印参照)を案内し、シートSの上下方向の位置を規制できる。なお、第1のロボット40a及び第2のロボット40bによってそれぞれ加工されるシートSは、各ロボット40a、40bがアームを動かしてハンド404を移動させることによって、又は第1のロボット40a自身及び第2のロボット40b自身が、それぞれレール402a、レール402b上を移動することによって、ハンド404から見た場合に、ガイド部420に沿って送られる。
【0025】
ガイド部410は、シートSの上面側及び下面側にそれぞれ位置する上側ガイド部材410U及び下側ガイド部材410Lを有している。上側ガイド部材410Uと下側ガイド部材410Lとは、間隔を空けて対向して配置されている。
下側ガイド部材410Lは、上側ガイド部材410Uよりも長くなっている。上側ガイド部材410U及び下側ガイド部材410Lの端部は、互いに反対の側に反っている。上側ガイド部材410U及び下側ガイド部材410Lの中央部には、テープ片TPが通過する孔(不図示)が形成されている。
【0026】
ガイド部410の両端部には、下側ガイド部材410Lに向かってエアを噴出させる噴出部412a、412bが設けられている。噴出部412a、412bが下側ガイド部材410Lの上に載ったシートSに向かってエアを噴出させることにより、ガイド部410によって案内されるシートSの反り(上下方向の歪み)が抑えられる。
【0027】
シートSの一方の側の面にテープ片TPを貼付する第1のテープ貼付機構430a及びシートSの他方の側の面にテープ片TPを貼付する第2のテープ貼付機構430bは、図4に示すように、ガイド部410を挟んで互いに反対側に設けられている。各テープ貼付機構430a、430bは、テープ保持器440と、引き出し器450と、保持部460と、カッター部470と、吸着器490と、を有している。
テープ保持器440は、図6に示すように、ロール状に巻かれたテープ442を中心軸J1回りに回転可能に保持できる。テープ442は、例えばガムテープである。
【0028】
引き出し器450は、図4に示すように、ハンド404を正面視して、テープ442の引き出し方向に配置されている。引き出し器450は、先端部が開閉可能なチャック452及びこのチャック452を進退させるシリンダ454を有している。引き出し器450は、図7に示すように、チャック452によりテープ保持器440に保持されたテープ442の端部を把持した後、チャック452を後退させて、テープ442を引き出すことができる。
【0029】
保持部460は、引き出し器450によって引き出されたテープ442の基端側を押さえることができる。保持部460は、図4に示すように、テープ保持器440と引き出し器450との間に配置されている。
保持部460は、図8に示すように、ロッド462及びローラ464を有し、テープ442を挟み込むことができる。
ロッド462は、上下方向に延びている。ロッド462は、上下方向に進退できる。ロッド462の先端部には、ローラ464に接触する接触部材466が設けられている。
ローラ464は、ロッド462の接触部材466の下側に配置されている。ローラ464は、回転軸J2回りに自由に回転できる。
【0030】
カッター部470(図4参照)は、テープ442を保持した後に、保持したテープ442を切断できる。
カッター部470は、図9Aに示すように、保持部460によって押さえられたテープ442の先端側を保持する1対の保持部材472a、472bと、保持部材472a、472bによって保持されたテープ442に向かって進出する刃474と、を有している。
各保持部材472a、472bは、図9Bに示すように、基端部が、テープ442が引き出される方向に延びる軸J3a、J3b(図9A参照)回りに回転することによって先端部が開閉する。すなわち、各保持部材472a、472bは、開いた状態では、基部476から上方向及び下方向に延びている。各保持部材472a、472bは、閉じた状態では、テープ442が延びる方向と交差する方向に延びている。
【0031】
刃474は、図9Aに示すように、保持部材472bに設けられ、保持部材472bとともに回転移動できる。刃474は各保持部材472a、472bの先端部が閉じてテープ442を保持すると(図9Bに示した矢印A参照)、テープ442の粘着面の下方の切断位置に移動することになる。切断位置に移動した刃474は、上方向に進出することによってテープ442を切断できる(図9Bに示した矢印B参照)。
刃474は、ハンド404を正面視して保持部材472bよりも引き出し器450の側の位置であって、保持部材472bよりも例えば1〜5mm離れた近傍の位置に設けられている。刃474が、各保持部材472a、472bによって保持された部分の傍らのテープ位置で切断できるので、テープ442は安定して切断される。
【0032】
吸着器490(図4参照)は、カッター部470の保持部材472a、472b(図9A及び図9B参照)によって保持されたテープ442を吸着できる。また、吸着器490は、カッター部470の刃474によって切断されたテープ片TPの粘着面とは反対側の面をエア吸着し、吸着したテープ片TPをシートSに貼付できる。
【0033】
吸着器490は、図10A及び図10Bに示すように、先端部493に例えば4つの吸着パッド492が設けられたロッド494及びロッド494を上下方向に進退させるエアシリンダ496を有している。吸着器490の先端部493の、吸着パッド492が設けられている面とは反対の側の面には、負圧を発生するエアチューブ495が接続される。
吸着器490は、カッター部470の保持部材472a、472bに設けられた対向部材(図9B参照)478にテープ片TPを押し付け、エアによりテープ片TPを吸着できる。
吸着パッド492の形状は、図10Bに示すように、ロッド494の先端側から見て円形状である。
【0034】
なお、吸着器は、変形例として、次のような構成としてもよい。
第1の変形例として、先端部493の平坦な底面に、エアチューブ495に通じる丸い形状の吸込口を設けることができる。この第1の変形例における吸着器には、吸着パッド492は設けられていない。
第2の変形例として、第1の変形例の構成として示した吸込口に、先端部493の底面と同形状の板状のパッドを固着等させて設けることができる。この板状のパッドには、吸込口に対応する位置に、エアチューブ495に通じる孔が形成されている。
【0035】
図4に示した孔開けパンチ510は、シートSに貼付されたテープ片TPの上からシートSに孔Hを開けることができる。孔開けパンチ510は、第1のロボット40aのハンド404の進行方向において、平面視してテープ片TPをシートSに貼り付ける吸着器490よりも後方側、つまりテープ保持器440の側に配置されている。
【0036】
図4に示したステープラー520は、シートSに貼付されたテープ片TPを、装填されたつづり針STPにてシートSに留めることができる。ステープラー520は、第1のロボット40aのハンド404の進行方向において、孔開けパンチ510よりも後方側、つまりテープ保持器440の側に配置されている。
【0037】
次に、加工システム10によるシートSの加工方法について説明する。なお、第1のテープ貼付機構430a及び第2のテープ貼付機構430bは、それぞれ同様に動作するので、第2のテープ貼付機構430bについての説明は省略する。
【0038】
(ステップSA1)
第1のロボット40aが、図4に示すハンド404を移動させることによって、ガイド部410にシートSの短辺部が挿入される。シートSは、噴出部412a、412bから供給されるエアによって、反りが抑制される。
図11Aに示すように、保持部460のロッド462が進出し、ローラ464との間でテープ442を保持する。
引き出し器450のチャック452が進出し、テープ442の端部を把持する。
【0039】
(ステップSA2)
図11Bに示すように、保持部460のロッド462が後退する。引き出し器450のチャック452が後退し、把持したテープ442を引き出す。
【0040】
(ステップSA3)
図11Cに示すように、保持部460のロッド462が進出し、テープ442を押さえる。
【0041】
(ステップSA4)
図11Dに示すように、カッター部470の各保持部材472a、472bが閉じ、テープ442を保持する。保持部材472bが閉じるとともに対向部材478もテープ442の下方の切断位置に移動する。
吸着器490のロッド494が下方向に進出し、対向部材478にテープ442を押し付けた後、テープ442をエア吸着する。
【0042】
(ステップSA5)
カッター部470の刃474が上方向に進出し、テープ442を切断する。図11Eに示すように、テープ442が切断された後、引き出し器450のチャック452が開き、テープ片TPの端部を解放する。テープ片TPは、吸着器490のみによって保持される。
吸着器490のロッド494が一旦上方向に後退し、テープ片TPを上方に退避させる。
【0043】
(ステップSA6)
カッター部470の各保持部材472a、472bが開く。
【0044】
(ステップSA7)
図11Fに示すように、吸着器490のロッド494が下方に進出し、上側ガイド部材410Uに形成された孔を通って貼付位置PpにてシートSにテープ片TPが貼付される。
テープ片TPが貼付された後、図11Gに示すように、吸着器490のロッド494が後退する。
【0045】
(ステップSB1)
ステップSA7が実行された後、図1A図1B、及び図1Cに示す第1のロボット40aがハンド404を移動させる。つまり、ハンド404から見ると、ガイド部410に挿入されたシートSが送られる。シートSに貼付されたテープ片TPは、孔開け位置に送られる。孔開けパンチ510(図4参照)は、テープ片TPの上から、シートSに穿孔する。
【0046】
(ステップSB2)
図1A図1B、及び図1Cに示す第1のロボット40aがハンド404を移動させる。つまり、ハンド404から見ると、ガイド部410に挿入されたシートSが送られる。前ステップSB1にて孔が開けられたテープ片TPは、留め位置に送られる。ステープラー520(図4参照)は、テープ片TPにつづり針STPを打つ。テープ片TPは、つづり針STPによって、シートSに留められる。つまり、テープ片TPは、自身の粘着力に加え、つづり針STPによって、シートSに固定される。
【0047】
なお、タクトタイムを短縮する観点から、図12に示すように、1枚目のテープ片TPについてステップSB1及びステップSB2が実行されている間に、後続する2枚目のテープ片TPを準備するためのステップSA1〜SA6が並行して実行される。
【0048】
第1のロボット40aは、順次、ハンド404を加工位置P1へ移動させて、前述のステップSA1〜SA6並びにステップSB1、SB2を繰り返し実行し、テープ片TPをシートSに貼付し、シートSに穿孔し、シートS及びテープ片TPにつづり針STPを留める。その結果、テープ片TPは順次、シートSの短辺上に間隔を空けて貼付される。
シートSの短辺の部分について加工がなされた後、第1のロボット40aは、ハンド404を移動させる代わりに、自身がレール402a上を移動することによって、シートSの長辺の部分を加工する。その結果、長辺上にもテープ片TPが間隔を空けて貼付される。
【0049】
なお、本発明は、前述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施例や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0050】
対象物は、PET材のシートに限定されるものではない。対象物の他の例として、紙や板、及び組み立てられたダンボール箱が挙げられる。
ロボットは、垂直多関節型の産業用ロボットに限定されるものではない。
ロボットのハンドが、第1のテープ貼付機構又は第2のテープ貼付機構のみを備え、ロボットが、対象物の一方の側の面にのみテープ片を貼付してもよい。
テープ片TPは、シートSの長辺の部分から順次貼付され、続いて短辺の部分に貼付されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10:加工システム、20:基材、22:ポリエステル樹脂層、28:型、29:ゴム体、30:テーブル部、30a:上段テーブル、30b:下段テーブル、32:金属枠、34:フック、302:アタッチメント、304a、304b:レール、306:架台、40a:第1のロボット、40b:第2のロボット、402a、402b:レール、404:ハンド、406:フレーム、410:ガイド部、410L:下側ガイド部材、410U:上側ガイド部材、412a、412b:噴出部、430a:第1のテープ貼付機構、430b:第2のテープ貼付機構、440:テープ保持器、442:テープ、450:引き出し器、452:チャック、454:シリンダ、460:保持部、462:ロッド、464:ローラ、466:接触部材、470:カッター部、472a、472b:保持部材、474:刃、476:基部、478:対向部材、490:吸着器、492:吸着パッド、493:先端部、494:ロッド、495:エアチューブ、496:エアシリンダ、510:孔開けパンチ、520:ステープラー、H:孔、P:内装用化粧板、S:シート、STP:つづり針、TP:テープ片、WM:作業者
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図11G
図12