【文献】
吉川 智康 他,Rate−Compatible LDPC符号のレート推定法,電子情報通信学会論文誌,2006年12月 1日,第J89-A巻、第12号,pp.1175-1184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも第1の伝送方式及び第2の伝送方式を含む複数の伝送方式の中から選択された伝送方式を用いて送信された制御シンボルと変調シンボルとを受信する受信装置であって、
前記変調シンボルは、互いに異なる複数の変調方式の中から選択された変調方式を用いて第2の符号語ビット系列に含まれる所定数のビットに対してマッピングを施して生成されたものであり、
前記第2の符号化ビット系列は、互いに異なる複数のインタリーブパターンの中から選択されたインタリーブパターンを用いて第1の符号語ビット系列に対してインタリーブを施して生成されたものであり、
前記第1の符号語ビット系列は、符号長及び符号化率の少なくともいずれか一方が互いに異なる複数のLDPC符号化方式の中から選択されたLDPC符号化方式を用いて送信データを符号化して生成されたものであり、
前記制御シンボルは、前記送信データの送信に用いるLDPC符号化方式、インタリーブパターン、及び変調方式を示す情報を含む制御情報から生成されたものであり、
前記第1の伝送方式は、第1のLDPC符号方式と第1のインタリーブパターンと第1の変調方式を用いる方式であり、前記第2の伝送方式は、第1のLDPC符号化方式と第2のインタリーブパターンと第1の変調方式を用いる方式であり、前記第1のインタリーブパターンと前記第2のインタリーブパターンとは互いに異なり、
前記情報に基づいて、前記変調シンボルを復調する復調部を備える、
受信装置。
少なくとも第1の伝送方式及び第2の伝送方式を含む複数の伝送方式の中から選択された伝送方式を用いて送信された制御シンボルと変調シンボルとを受信する受信方法であって、
前記変調シンボルは、互いに異なる複数の変調方式の中から選択された変調方式を用いて第2の符号語ビット系列に含まれる所定数のビットに対してマッピングを施して生成されたものであり、
前記第2の符号化ビット系列は、互いに異なる複数のインタリーブパターンの中から選択されたインタリーブパターンを用いて第1の符号語ビット系列に対してインタリーブを施して生成されたものであり、
前記第1の符号語ビット系列は、符号長及び符号化率の少なくともいずれか一方が互いに異なる複数のLDPC符号化方式の中から選択されたLDPC符号化方式を用いて送信データを符号化して生成されたものであり、
前記制御シンボルは、前記送信データの送信に用いるLDPC符号化方式、インタリーブパターン、及び変調方式を示す情報を含む制御情報から生成されたものであり、
前記第1の伝送方式は、第1のLDPC符号方式と第1のインタリーブパターンと第1の変調方式を用いる方式であり、前記第2の伝送方式は、第1のLDPC符号化方式と第2のインタリーブパターンと第1の変調方式を用いる方式であり、前記第1のインタリーブパターンと前記第2のインタリーブパターンとは互いに異なり、
前記情報に基づいて、前記変調シンボルを復調して受信データを生成する、
受信方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、無線LAN規格として今後普及が拡大すると予測されるIEEE802.11n、屋外無線ブロードバンドサービスのIEEE802.16e、及び電力線通信システムの一部の規格では、誤り訂正符号としてLDPC(Low−Density Parity−Check)符号が採用されている。LDPC符号は、低密度なパリティ検査行列によって定義される誤り訂正符号であり、シャノン限界に迫る高い誤り訂正能力を持つ誤り訂正符号として知られている。なお、低密度とは、パリティ検査行列中の非零の要素数が零の要素数に比べて非常に少ないと言うことを意味する。
【0010】
LDPC符号の復号には信頼度伝搬アルゴリズムに基づいたsum−product復号が一般的に使用される。以下では、平均0、分散σ
2のAWGN通信路におけるsum−product復号について説明する。
【0011】
図1にAWGN通信路における符号・復号のモデルを示す。K個の送信情報ビット(b
1、・・・、b
K)は、LDPC符号器1100によってパリティ検査行列Hを用いてLDPC符号化され、N個の符号語ビット(c
1、・・・、c
N)が得られる。パリティ検査行列Hの一例を式(1)に示す。
【0012】
【数1】
式(1)に示されるパリティ検査行列Hは、符号長10、符号化率1/2のLDPC符号を定義する5行10列のパリティ検査行列である。但し、式(1)のパリティ検査行列Hは、表記し易くするために小さいサイズの行列としているので低密度な行列になっていない。
【0013】
式(1)のパリティ検査行列Hを用いたLDPC符号の符号化は、HC
T=0を満たす符号語C=(c
1、・・・、c
N)を得る任意のアルゴリズムによって実施され、組織符号の場合、(c
1、・・・、c
N)=(b
1、・・・、b
K、p
1、・・・、p
M)である。ここで、(p
1、・・・、p
M)は、LDPC符号化により生成されるパリティビットである。
【0014】
式(1)のパリティ検査行列Hをタナーグラフ表現したものを
図2に示す。タナーグラフとは、パリティ検査行列Hの列数と同数の変数ノードと、パリティ検査行列Hの行数と同数の検査ノードと、パリティ検査行列Hに含まれる非零の要素数と同数のエッジから構成される2部グラフである。変数ノード及び検査ノードは、それぞれ独立した演算器である。タナーグラフでは、パリティ検査行列Hにおいて、m行n列目の要素が非零である場合、m番目の検査ノードとn番目の変数ノードがエッジで接続される。
【0015】
N個の符号語ビット(c
1、・・・、c
N)は、変調器1200によって変調される。BPSK(Binary Phase Shift Keying)の場合、符号語ビットc
nに対応する変調シンボルx
nは、x
n=−2c
n+1で与えられる。すなわち、c
nが0の時、x
nは1であり、c
nが1の時、x
nは−1となる。
【0016】
変調シンボルは、AWGN通信路1300において平均0、分散σ
2のAWGNの影響を受けた後、受信側の装置において受信される。受信シンボルy
nは、y
n=x
n+z
nで与えられる。z
nは、AWGN成分である。
【0017】
復調器1400は、受信シンボルy
nから、各符号語ビットの対数尤度比(LLR: Log Likelihood Ratio)λ
nを求める。BPSKの場合、λ
nは、λ
n=2y
n/σ
2で与えられる。
【0018】
LDPC復号器1500は、LLRを入力としてsum−product復号を行う。M行N列のパリティ検査行列Hを、復号したいLDPC符号のパリティ検査行列とする。但し、K=N−Mである。また、パリティ検査行列Hのm行n列目の要素をH
m,nと表記する。集合[1、N]の部分集合A(m)、B(n)を式(2)、式(3)のように定義する。
【0019】
【数2】
【0020】
【数3】
すなわち、部分集合A(m)はパリティ検査行列Hのm行目において値が1である列インデックスの集合を表し、部分集合B(n)はパリティ検査行列Hのn列目において値が1である行インデックスの集合を表す。また、部分集合A(m)から要素nを除いた残りの要素n’を式(4)と表す。
【0021】
【数4】
同様に、部分集合B(n)から要素mを除いた残りの要素m’を式(5)と表す。
【0022】
【数5】
sum−product復号は以下のステップ1−6で実施される。
【0023】
#ステップ1(初期化)
LDPC復号器1500は、反復回数のカウンタである変数qをq=1に設定し、最大反復回数をQに設定する。
【0024】
#ステップ2(列処理・変数ノードでの処理)
LDPC復号器1500において、各変数ノードは、入力されるLLRλ
nと、外部値α
m,nを使って繰り返し符号の復号を行い、事前値β
m,nを求める。各変数ノードは、n=1、2、・・・、Nの順にH
m,n=1を満たす全ての組(m、n)に対して、次の更新式(6)を利用して事前値β
m,nを更新する。ただし、q=1の場合のみ、各変数ノードは、α
m,n=0として式(6)の計算を行い、q≠1の場合は後述のステップ3で更新された外部値α
m,nの値を用いて式(6)の計算を行う。
【0025】
【数6】
図3にタナーグラフ上での変数ノード処理の例を示す。
図3において、n=5番目の変数ノードに接続されるのはm=1、2、3番目の検査ノードである。これは、式(1)のパリティ検査行列Hの5列目において、H
m,n=1を満たすのは、1、2、3行目であることに相当する。n=5番目の変数ノードは、m=1、2、3それぞれについて、式(6)を用いて事前値β
1,5、β
2,5、β
3,5を求める。事前値β
1,5、β
2,5、β
3,5は式(7)となる。但し、
図3はm=1の計算例を示す。
【0026】
【数7】
LLRλ
nは、通信路から得られるn番目の符号語ビットが0であるか1であるかのビット尤度(確からしさ)であり、外部値α
m,nは、m番目の検査ノードから得られるn番目の符号語ビットが0であるか1であるかの尤度である。
【0027】
n番目の変数ノードは、LLRλ
nとα
m’,nからn番目の符号語ビットが0であるか1であるかの尤度を求め、その結果を事前値β
m,nとしてm番目の検査ノードに送るという処理を行っている。
【0028】
#ステップ3(行処理・検査ノードでの処理)
LDPC復号器1500において、各検査ノードは、変数ノードから送られてくる事前値β
m,nを用いて、単一パリティ検査符号の復号を行い、外部値α
m,nを求める。各検査ノードは、m=1、2、・・・、Mの順にH
m,n=1を満たす全ての組(m、n)に対して、次の更新式(8)を利用して外部値α
m,nを更新する。
【0029】
【数8】
図4にタナーグラフ上での検査ノード処理の例を示す。
図4において、m=3番目の検
査ノードに接続されるのはn=1、3、5、7、9、10番目の変数ノードである。これは、式(1)のパリティ検査行列Hの3行目において、H
m,n=1を満たすのは、1、3、5、7、9、10列目であることに相当する。m=3番目の検査ノードは、n=1、3、5、7、9、10それぞれについて、式(8)を用いて外部値α
3,1、α
3,3、α
3,5、α
3,7、α
3,9、α
3,10を求める。但し、
図4はn=1の計算例を示す。
【0030】
#ステップ4(一時推定語の計算)
LDPC復号器1500は、n∈[1、N]について事後LLRΛ
nを式(9)により求め、続いて式(10)を演算する。このようにして、LDPC復号器1500は、一時推定語(c’
1,・・・,c’
N)を計算する。
【0031】
【数9】
【0032】
【数10】
#ステップ5(パリティ検査)
LDPC復号器1500は、一時推定語(c’
1,・・・,c’
N)が符号語になっているかどうかを検査する。つまり、LDPC復号器1500は、一時推定語(c’
1、・・・、c’
N)が式(11)を満たすかを判定する。
【0033】
【数11】
一時推定語(c’
1,・・・,c’
N)が式(11)を満たせば、一時推定語(c’
1、・・・、c’
N)は符号語になっているため、LDPC復号器1500は一時推定語(c’
1、・・・、c’
N)を推定語として出力し、アルゴリズムを終了する。
【0034】
#ステップ6(反復回数のカウント)
一時推定語(c’
1,・・・,c’
N)が式(11)を満たさない場合において、q<Qであるとき、qをインクリメントしてステップ2に戻る。q=Qならば、LDPC復号器1500は一時推定語(c’
1、・・・、c’
N)を推定語として出力し、アルゴリズムを終了する。
【0035】
LDPC復号器1500は、上記のステップ1−6の復号アルゴリズムの実施によって得られた推定語(c’
1、・・・、c’
N)を出力する。LDPC符号器1100で組織符号化を行っている場合、受信情報ビット(b’
1、・・・、b’
N)は、(b’
1、・・・、b’
N)=(c’
1、・・・、c’
N)で得られる。
【0036】
以上説明したsum−product復号の主たる計算は、変数ノードにおける加算処理と、検査ノードにおけるtanh/tanh
−1の演算処理である。tanh/tanh
−1の演算処理にかかるコストは加算処理に比べて高いため、実装の際には、このような演算処理にかかる計算コストを下げることが復号法の高速化、コンパクト化につながる。高速化、コンパクト化の一つの方法として、sum−product復号におけるtanh/tanh
−1の演算処理を、最小値で近似する方法がある。この方法はmin−sum復号と呼ばれ、検査ノードでは式(8)の代わりに、式(12)を用いる。
【0037】
【数12】
また、変数ノードでは、式(6)の代わりに、式(13)を用いる。
【0038】
【数13】
ここで、wは、1以下の正の実数である。(3、6)の正則LDPC符号の場合、wとして0.8程度の値を与えればsum−product復号と同等の誤り率特性が得られることが確認されている。但し、wの最適な値はパリティ検査行列Hによって異なる。
【0039】
ここで、外来性雑音の影響を除去するために、すでに説明したように外来性雑音の影響を受けていると予想されるビットのビット尤度を0にして復号器に入力することを考える。以下では、ビット尤度が0であることを「消失」と表現して説明する。同様に、ビット尤度を0にすることを、「消失させる」、「消失を与える」、ビット尤度が0とされたビットを「消失ビット」と表現する。
【0040】
図4において、n=1、5番目の変数ノードに対応するビットが消失ビットである場合を例に用いて説明する。LDPC復号器1500の変数ノードに入力されたビット尤度は、復号の開始時にはそのままの値で接続される複数の検査ノードに事前値β
m,nとして送られる。ここで、
図4で示した検査ノード3での処理を考えると、検査ノード3には、5つの事前値β
3,1、β
3,3、β
3,5、β
3,7、β
3,9、β
3,10が入力され、そのうち、事前値β
3,1と事前値β
3,5は0である。式(8)で示される検査ノード演算は、検査ノードに入力されるβ
m,n’のtanhを取った値の乗算であるため、検査ノードに入力される事前値β
m,nに2つ以上0が含まれると、結果として得られるα
m,nは全て0になってしまう。
【0041】
tanh(0)=tanh
−1(0)=0
そのため、m=3番目の検査ノードでの演算では外部値が更新されず、結果として反復復号の利得が低下してしまう。また、この現象は、tanh/tanh
−1の代わりに最小値探索を用いる式(12)の場合でも、同様に発生する。外部値α
m,nとしてβ
m,n’の絶対値の最小値が返されるため、β
m,nに2つ以上0があると、結果として得られるα
m,nは全て0になる。
【0042】
以降の反復処理におけるn=1、5番目の変数ノードの処理によって、事前値β
3,1と事前値β
3,5が更新され0以外の値を持つようになれば、上記の局所的な問題は解決するが、所望のビット誤り率を得るために必要な反復回数が増えるといった問題や、所定の回数の反復を実行した後の到達可能なビット誤り率が劣化するといった復号性能に関わる問題は残る。
【0043】
さらに、最悪の場合を考えると、全ての検査ノードから出力される外部値が0となるようなパターンで消失が発生する場合、外部値の更新がされず、復号性能が大幅に劣化してしまう。例えば、非特許文献3で定義されているストッピングセットと呼ばれる符号語ビットの集合に含まれる全てのビットが消失となった場合にこの現象が起こる。また、ストッピングセットの一部となっている複数のビットが消失となった場合にも、全てが消失した場合ほどではないにしろ復号性能は劣化する。
【0044】
一例を、計算機シミュレーション結果を用いて示す。
図5は、式(1)のパリティ検査行列Hにおいて、2、4、8番目のビットを消失として復号した場合の復号後のビット誤り率特性のシミュレーション結果(ケース(a))と、式(1)のパリティ検査行列Hにおいて、4、5、7番目のビットを消失として復号した場合のビット誤り率特性のシミュレーション結果(ケース(b))とを示すグラフである。ここで、ケース(a)の場合に消失とした2、4、8番目のビットの組み合わせはパリティ検査行列Hのストッピングセットであり、ケース(b)の場合に消失とした4、5、7番目のビットの組み合わせはパリティ検査行列Hのストッピングセットではない。シミュレーションで用いた復号方式は、最大反復回数を30回、w=0.8としたmin−sum復号である。ケース(a)の場合は、消失ビットがストッピングセットを構成しているため、Eb/N0を高くしてもビット誤り率が改善しない。それに対し、ケース(b)の場合は、消失ビットがストッピングセットを構成していないため、Eb/N0の増大に応じてビット誤り率の改善が見られる。
【0045】
上記のシミュレーションにより確認したように、外来性雑音環境下で、外来性雑音の影響を回避するために、外来性雑音の影響を受けているビットを消失として復号する従来の構成には、消失ビットの数が同じであっても、消失ビットの組み合わせによっては復号性能が大幅に劣化してしまうという課題がある。
【0046】
また、外来性雑音環境下での誤り訂正符号を考慮した従来の性能改善手段としては、特許文献1や特許文献2がある。
【0047】
特許文献1は、信号送信前に、インパルス性雑音の発生回数をカウントし、その発生回数に応じて送信信号の送信回数を変えるというものである。この方法において、送信回数を変えるということは、繰り返し符号の繰り返し回数(符号化率)を変えることに相当する。この方法を用いることで、インパルス性雑音が多く発生している場合でも、送信が成功する確率を上げることができる。
【0048】
また、特許文献2は、一つのリードソロモン符号のブロック内に含まれる周期的インパ
ルス性雑音のインパルスの数が、リードソロモン符号の訂正可能誤り個数以内になるように、インパルス性雑音の発生周期とリードソロモン符号のブロック長を制御するものである。この方法を用いることで、リードソロモン符号のブロック長内に訂正可能な個数以上の誤りが発生することを避けることができ、誤り訂正の効果を効率よく得ることができる。
【0049】
しかし、これら二つの方法では、ビット単位で与えられた消失の組み合わせによる復号性能の劣化という課題を解決することはできない。
【0050】
そこで、本発明は、ビット単位で与えられる消失の組合せによる復号性能の劣化を抑えることを可能にする送信装置及び受信装置、並びに、送信方法及び受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0051】
上記の課題を解決するため、本発明の送信装置は、同じ符号長及び同じ符号化率を有し、且つ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式のうち外来性雑音の発生状況に対応したLDPC符号化方式を、使用するLDPC符号化方式に決定する決定部と、前記決定部で決定された前記LDPC符号化方式を用いて送信データの符号化を行うことによって符号語ビット系列を生成する符号化部と、を備える。
【発明の効果】
【0052】
これによれば、外来性雑音の影響により消失とされる符号語ビットの組合せがあるLDPC符号化方式において受信装置の復号性能を劣化させるものであっても、送信データの符号化に用いるLDPC符号化方式を別のLDPC符号化方式に変更することができるため、符号長及び符号化率を変更することなく受信装置での復号性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の一態様である第1の送信装置は、同じ符号長及び同じ符号化率を有し、且つ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式のうち外来性雑音の発生状況に対応したLDPC符号化方式を、使用するLDPC符号化方式に決定する決定部と、前記決定部で決定された前記LDPC符号化方式を用いて送信データの符号化を行うことによって符号語ビット系列を生成する符号化部と、を備える。
【0055】
本発明の一態様である第1の受信装置は、同じ符号長及び同じ符号化率を有し、且つ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式のうちの外来性雑音の発生状況に対応したLDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することにより生成された符号語ビット系列を伝送する信号を受信する受信部と、前記受信部によって受信された信号を復調することによって、前記符号語ビット系列に対応する受信符号語ビット系列を生成する復調部と、前記受信符号語ビット系列に対して前記送信データの符号化に用いられた前記LDPC符号化方式に対応した復号処理を行う復号部と、を備える。
【0056】
本発明の一態様である第1の送信方法は、同じ符号長及び同じ符号化率を有し、且つ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式のうち外来性雑音の発生状況に対応したLDPC符号化方式を、使用するLDPC符号化方式に決定する決定ステップと、前記決定ステップにおいて決定された前記LDPC符号化方式を用いて送信データの符号化を行うことによって符号語ビット系列を生成する符号化ステップと、を備える。
【0057】
本発明の一態様である第1の受信方法は、同じ符号長及び同じ符号化率を有し、且つ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式のうちの外来性雑音の発生状況に対応したLDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することにより生成された符号語ビット系列を伝送する信号を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された信号を復調することによって、前記符号語ビット系列に対応する受信符号語ビット系列を生成する復調ステップと、前記受信符号語ビット系列に対して前記送信データの符号化に用いられた前記LDPC符号化方式に対応した復号処理を行う復号ステップと、を備える。
【0058】
第1の送信装置、第1の受信装置、第1の送信方法、及び第1の受信方法によれば、外来性雑音の影響により消失とされる符号語ビットの組合せがあるLDPC符号化方式において受信装置の復号性能を劣化させるものであっても、送信データの符号化に用いるLDPC符号化方式を別のLDPC符号化方式に変更することができるため、符号長及び符号化率を変更することなく受信装置での復号性能の向上を図ることができる。
【0059】
本発明の一態様である第2の送信装置は、第1の送信装置において、前記LDPC符号化方式には、少なくとも第1のパリティ検査行列で定義される第1のLDPC符号化方式と、第2のパリティ検査行列で定義される第2のLDPC符号化方式とが含まれており、前記第1のパリティ検査行列に対してストッピングセットを構成するが、前記第2のパリティ検査行列に対してストッピングセットを構成しない所定数の符号語ビットの組合せが存在する。
【0060】
第2の送信装置によれば、外来性雑音の影響により消失とされる符号語ビットの組合せが第1のパリティ検査行列に対してストッピングセットを構成する場合であっても、その組合せがストッピングセットを構成しない第2のパリティ検査行列で定義される第2のLDPC符号化方式を用いることによって、受信装置での復号性能を良くすることができる。
【0061】
本発明の一態様である第3の送信装置は、第2の送信装置において、外来性雑音の発生
状況に基づいて、符号化により生成される符号語ビット系列を構成する各符号語ビットのうち受信装置が復号処理前に消失させる可能性の高い符号語ビットである消失候補ビットの数及び消失候補ビットの夫々の符号語内の位置を示す消失パターンを推定する消失パターン推定部を更に備え、前記決定部は、前記消失パターン推定部によって推定された前記消失パターンと前記LDPC符号化方式の前記パリティ検査行列との関係からこのパリティ検査行列での復号性能を推定し、推定結果に基づいて前記複数のLDPC符号化方式から前記使用するLDPC符号化方式を決定する。
【0062】
第3の送信装置によれば、外来性雑音の発生状況に基づいて推定した消失パターンに対して復号性能のよいパリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式で送信データの符号化を行うことが可能になる。
【0063】
本発明の一態様である第4の送信装置は、第3の送信装置において、前記決定部は、前記消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しない前記パリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式を前記使用するLDPC符号化方式に決定する。
【0064】
第4の送信装置によれば、消失候補ビットパターンの夫々の符号語内の位置の組合せに対して復号性能のよいストッピングセットを構成しないパリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式により送信データの符号化を行うことが可能になる。
【0065】
本発明の一態様である第5の送信装置は、第4の送信装置において、前記消失パターンで示される消失候補ビットパターンの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しないパリティ検査行列とは、このパリティ検査行列から前記消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置に対応する列を抽出した部分行列において行重みが1である行が少なくとも1つ存在することである。
【0066】
本発明の一態様である第6の送信装置は、第3の送信装置において、前記決定部は、前記消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しない前記パリティ検査行列のうち、前記消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置に対応する列を抽出した部分行列の行重みが0又は1である行の数がより多いパリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式を前記使用するLDPC符号化方式に決定する。
【0067】
第6の送信装置によれば、消失候補ビットパターンの夫々の符号語内の位置の組合せに対して復号性能のよいストッピングセットを構成しないパリティ検査行列の中でもより復号性能のよいパリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式により送信データの符号化を行うことが可能になる。
【0068】
本発明の一態様である第7の送信装置は、第3の送信装置において、前記決定部は、前記消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しない前記パリティ検査行列のうち、前記消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置に対応する列を抽出した部分行列の行重みの最大値がより小さいパリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式を前記使用するLDPC符号化方式に決定する。
【0069】
第7の送信装置によれば、消失候補ビットパターンの夫々の符号語内の位置の組合せに対して復号性能のよいストッピングセットを構成しないパリティ検査行列の中でもより復号性能のよいパリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式により送信データの符号化を行うことが可能になる。
【0070】
本発明の一態様である第8の送信装置は、第3の送信装置において、通信路から受信した受信信号に基づいて外来性雑音の発生状況を推定する雑音発生状況推定部を更に備え、前記消失パターン推定部は、雑音発生状況推定部で推定された前記外来性雑音の発生状況に基づいて前記消失パターンの推定を行う。
【0071】
第8の送信装置によれば、他の装置から外来性雑音の発生状況を得ることなく、送信装置のみで外来性雑音の発生状況に対応したLDPC符号化方式を送信データの符号化に用いるLDPC符号化方式に決定することが可能になる。
【0072】
本発明の一態様である第9の送信装置は、第1の送信装置において、符号語ビット系列を構成する各符号語ビットのうち受信装置において復号処理前に消失ビットとされた符号語ビットの夫々の符号語内の位置を示す消失パターンを含む信号を受信する受信部を更に備え、前記決定部は、前記受信部によって受信された前記消失パターンと前記LDPC符号化方式の前記パリティ検査行列との関係からこのLDPC符号化方式での復号性能を推定し、推定結果に基づいて前記複数のLDPC符号化方式から前記使用するLDPC符号化方式を決定する。
【0073】
第9の送信装置によれば、送信装置で観測した外来性雑音の発生状況から推定できる消失候補ビットの夫々の符号語内の位置を示す消失パターンと受信側で消失させた消失ビットの夫々の符号語の位置を示す消失パターンとが異なるような通信環境下でも、送信データの符号化に用いるLDPC符号化方式を受信装置において復号性能の良いLDPC符号化方式にすることができる。
【0074】
本発明の一態様である第10の送信装置は、第1の送信装置において、符号語ビット系列を構成する各符号語ビットのうち受信装置において復号処理前に消失ビットとされた符号語ビットの夫々の符号語内の位置を示す消失パターンと前記LDPC符号化方式のパリティ検査行列との関係から当該受信装置が決定したLDPC符号化方式を含む信号を受信する受信部を更に備え、前記決定部は、前記受信したLDPC符号化方式を含む信号に基づいて前記使用するLDPC符号化方式の決定を行う。
【0075】
第10の送信装置によれば、送信装置で観測した外来性雑音の発生状況から推定できる消失候補ビットの夫々の符号語内の位置を示す消失パターンと受信側で消失させた消失ビットの夫々の符号語の位置を示す消失パターンとが異なるような通信環境下でも、送信データの符号化に用いるLDPC符号化方式を受信装置において復号性能の良いLDPC符号化方式にすることができる。
【0076】
本発明の一態様である第11の送信装置は、第1の送信装置において、前記LDPC符号化方式には、少なくとも第1のパリティ検査行列で定義される第1のLDPC符号化方式と、第2のパリティ検査行列で定義される第2のLDPC符号化方式とが含まれており、前記第2のパリティ検査行列は、前記第1のパリティ検査行列の列置換を施して得られるパリティ検査行列の何れかに等しい行列である。
【0077】
本発明の一態様である第12の送信装置は、第1の送信装置において、前記LDPC符号化方式には、少なくとも第1のパリティ検査行列で定義される第1のLDPC符号化方式と、第2のパリティ検査行列で定義される第2のLDPC符号化方式とが含まれており、前記第2のパリティ検査行列は、前記第1のパリティ検査行列に対して独立した行列である。
【0078】
本発明の一態様である第13の送信装置は、第1の送信装置において、前記符号化部で
生成された符号語ビット系列を変調することによって変調信号を生成する変調部と、前記変調信号に前記符号化部で前記送信データの符号化に用いられた前記LDPC符号化方式を示す情報を付加して送信する送信部と、を更に備える。
【0079】
第13の送信装置によれば、受信装置は送信装置で送信データの符号化に用いられたLDPC符号化方式に基づく復号処理を実施することが可能になる。
【0080】
本発明の一態様である第14の送信装置は、符号語内での符号語ビットの複数の入れ替え規則のうち外来性雑音の発生状況に対応した入れ替え規則を、使用する入れ替え規則に決定する決定部と、LDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することによって第1の符号語ビット系列を生成し、前記第1の符号語ビット系列に対して前記決定部で決定された前記入れ替え規則に従って符号語内での符号語ビットの入れ替えを行うことによって第2の符号語ビット系列を生成する符号化部と、を備える。
【0081】
本発明の一態様である第2の受信装置は、LDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することにより生成された第1の符号語ビット系列に対して、符号語内での符号語ビットの複数の入れ替え規則のうちの外来性雑音の発生状況に対応した入れ替え規則で符号語内での符号語ビットを入れ替えた第2の符号語ビット系列を伝送する信号を受信する受信部と、前記受信部によって受信された信号を復調することによって、前記第2の符号語ビット系列に対応する第2の受信符号語ビット系列を生成する復調部と、前記第2の受信符号語ビット系列に対して符号語ビットの入れ替えに用いた前記入れ替え規則と逆の入れ替え規則でビットの入れ替えを行うことによって第1の受信符号語ビット系列を生成し、前記第1の受信符号語ビット系列に対して前記LDPC符号化方式に対応した復号処理を行う復号部と、を備える。
【0082】
本発明の一態様である第2の送信方法は、符号語内での符号語ビットの複数の入れ替え規則のうち外来性雑音の発生状況に対応した入れ替え規則を、使用する入れ替え規則に決定する決定ステップと、LDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することによって第1の符号語ビット系列を生成し、前記第1の符号語ビット系列に対して前記決定ステップで決定された前記入れ替え規則に従って符号語内での符号語ビットの入れ替えを行うことによって第2の符号語ビット系列を生成する符号化ステップと、を備える。
【0083】
本発明の一態様である第2の受信方法は、LDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することにより生成された第1の符号語ビット系列に対して、符号語内での符号語ビットの複数の入れ替え規則のうちの外来性雑音の発生状況に対応した入れ替え規則で符号語内での符号語ビットを入れ替えた第2の符号語ビット系列を伝送する信号を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された信号を復調することによって、前記第2の符号語ビット系列に対応する第2の受信符号語ビット系列を生成する復調ステップと、前記第2の受信符号語ビット系列に対して符号語ビットの入れ替えに用いた前記入れ替え規則と逆の入れ替え規則でビットの入れ替えを行うことによって第1の受信符号語ビット系列を生成し、前記第1の受信符号語ビット系列に対して前記LDPC符号化方式に対応した復号処理を行う復号ステップと、を備える。
【0084】
第14の送信装置、第2の受信装置、第2の送信方法、及び第2の受信方法によれば、外来性雑音の影響により消失とされる符号語ビットの組合せがある符号語内の符号語ビットの入れ替え規則において受信装置の復号性能を劣化させるものであっても、使用する入れ替え規則を別の入れ替え規則に変更することができるため、LDPC符号化方式を替えることなく受信装置での復号性能の向上を図ることができる。
【0085】
本発明の一態様である第15の送信装置は、符号語ビット系列に対する複数のインタリ
ーブパターンのうち外来性雑音の発生状況に対応したインタリーブパターンを、使用するインタリーブパターンに決定する決定部と、LDPC符号化方式を用いて送信データの符号化を行うことによって符号語ビット系列を生成する符号化部と、前記符号化部で生成された前記符号語ビット系列に対して前記決定部によって決定された前記インタリーブパターンでインタリーブを行うことによって送信ビット系列を生成するインタリーブ部と、を備える。
【0086】
本発明の一態様である第3の受信装置は、LDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することにより生成された符号語ビット系列を複数のインタリーブパターンのうちの外来性雑音の発生状況に対応したインタリーブパターンでインタリーブした送信ビット系列を伝送する信号を受信する受信部と、前記受信部によって受信された信号を復調することによって、前記送信ビット系列に対応する受信ビット系列を生成する復調部と、前記受信ビット系列に対して前記符号語ビット系列のインタリーブに用いた前記インタリーブパターンと逆のデイタリーブパターンでデインタリーブを行うことによって、受信符号語ビット系列を生成するデインタリーブ部と、前記受信符号語ビット系列に対して前記LDPC符号化方式に対応した復号処理を行う復号部と、を備える。
【0087】
本発明の一態様である第3の送信方法は、符号語ビット系列に対する複数のインタリーブパターンのうち外来性雑音の発生状況に対応したインタリーブパターンを、使用するインタリーブパターンに決定する決定ステップと、LDPC符号化方式を用いて送信データの符号化を行うことによって符号語ビット系列を生成する符号化ステップと、前記符号化ステップで生成された前記符号語ビット系列に対して前記決定ステップにおいて決定された前記インタリーブパターンでインタリーブを行うことによって送信ビット系列を生成するインタリーブステップと、を備える。
【0088】
本発明の一態様である第3の受信方法は、LDPC符号化方式を用いて送信データを符号化することにより生成された符号語ビット系列を複数のインタリーブパターンのうちの外来性雑音の発生状況に対応したインタリーブパターンでインタリーブした送信ビット系列を伝送する信号を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された信号を復調することによって、前記送信ビット系列に対応する受信ビット系列を生成する復調ステップと、前記受信ビット系列に対して前記符号語ビット系列のインタリーブに用いた前記インタリーブパターンと逆のデイタリーブパターンでデインタリーブを行うことによって、受信符号語ビット系列を生成するデインタリーブステップと、前記受信符号語ビット系列に対して前記LDPC符号化方式に対応した復号処理を行う復号ステップと、を備える。
【0089】
第15の送信装置、第3の受信装置、第3の送信方法、及び第3の受信方法によれば、外来性雑音の影響により消失とされる符号語ビットの組合せがあるインタリーブパターンにおいて受信装置の復号性能を劣化させるものであっても、使用するインタリーブパターンを別のインタリーブパターンに変更することができるため、LDPC符号化方式を替えることなく受信装置での復号性能の向上を図ることができる。
【0090】
本発明の一態様である第16の送信装置は、通信に用いる複数のサブキャリアのうち、外来性雑音の発生状況に基づいて、符号化により生成される符号語ビット系列を構成する各符号語ビットのうち受信装置が復号処理前に消失させる可能性の高い符号語ビットである消失候補ビットを伝送するサブキャリアを推定し、推定したサブキャリアの少なくとも一部の各サブキャリアで用いる変調方式を複数の変調方式のうち多値数の小さい変調方式としたトーンマップを使用するトーンマップに決定する決定部と、LDPC符号化方式を用いて送信データの符号化を行うことによって符号語ビット系列を生成する符号化部と、前記決定部で決定されたトーンマップに基づいて前記符号化部で生成された前記符号語ビ
ット系列を変調することによって変調信号を生成する変調部と、を備える。
【0091】
本発明の一態様である第4の送信方法は、通信に用いる複数のサブキャリアのうち、外来性雑音の発生状況に基づいて、符号化により生成される符号語ビット系列を構成する各符号語ビットのうち受信装置が復号処理前に消失させる可能性の高い符号語ビットである消失候補ビットを伝送するサブキャリアを推定し、推定したサブキャリアの少なくとも一部の各サブキャリアで用いる変調方式を複数の変調方式のうち多値数の小さい変調方式としたトーンマップを使用するトーンマップに決定する決定ステップと、LDPC符号化方式を用いて送信データの符号化を行うことによって符号語ビット系列を生成する符号化ステップと、前記決定ステップで決定されたトーンマップに基づいて前記符号化ステップで生成された前記符号語ビット系列を変調することによって変調信号を生成する変調ステップと、を備える。
【0092】
第16の送信装置、及び第4の送信方法によれば、外来性雑音の影響により消失とされる符号語ビットの数を減少させることができるため、LDPC符号化方式を替えることなく受信装置での復号性能の向上を図ることができる。
【0093】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0094】
≪実施の形態1≫
以下、実施の形態1について、図面を参照しつつ説明する。
【0095】
実施の形態1における送信側の通信装置は、通信路で発生している外来性雑音の発生状況を観測し、観測した外来性雑音の発生状況から受信側の通信装置で復号前に消失させる可能性の高いビットである消失候補ビットを推定する。その後、実施の形態1における送信側の通信装置は、推定した消失候補ビットの符号語中の位置とパリティ検査行列との関係からこのパリティ検査行列を用いて送信データを符号化したときの受信側の通信装置で得られる復号性能(以下、適宜、「パリティ検査行列を用いたときの復号性能」と記載する。)を推定し、推定結果に基づいて所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列を求め、求めたパリティ検査行列を用いて送信データのLDPC符号化を行う。但し、送信側の通信装置は、互いに同じ行数及び同じ列数の複数のパリティ検査行列から、送信データのLDPC符号化に使用するパリティ検査行列を求める。これは、送信側の通信装置は、同じ符号長及び同じ符号化率を有し、かつ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式から、送信データの符号化に使用するパリティ検査行列で定義されるLDPC符号化方式を求めることである。
【0096】
なお、ここで、消失候補ビットについて、受信側の通信装置において消失させる可能性の高いビットと表現しているのは、送信側の通信装置によって消失候補ビットと判定されたビット以外のビットも、例えば外来性雑音の発生状況を観測した期間には発生していなかった外来性雑音の影響により受信側の通信装置において消失させる可能性があること、及び消失候補ビットと判定されたビットも受信状態によっては受信側の通信装置において消失させられない可能性があることを考慮しているためである。通信路で発生している外来性雑音の発生状況に基づいて、どの程度の強度及び頻度で外来性雑音の影響を受けているビットを消失候補ビットと判定するかといった判定基準は、実施の形態1の通信システムや、その他の実施の形態、変形例の通信システムで想定される外来性雑音の種類や想定される消失候補ビットの数等に応じて予め設定されていても良いし、複数の判定基準を受信状況に応じて選択するようにしても良い。
【0097】
図6は、実施の形態1における通信システムのシステム構成の一例を示す図である。
図6における通信システム1は、複数の通信装置がそれぞれ同じ電力線網に接続され、複数
の通信装置間が電力線通信を行う電力線通信システムである。
【0098】
通信システム1は、通信装置2と通信装置3と雑音源4とを備え、通信装置2と通信装置3はそれぞれ電力線5に接続されている。通信装置2と通信装置3との間で電力線通信が行われる。
【0099】
通信装置2は、通信路で発生している外来性雑音の発生状況を観測し、観測した外来性雑音の発生状況から受信側の通信装置において復号前に消失させる可能性の高いビットである消失候補ビットを推定する。そして、通信装置2は、パリティ検査行列を変更しながら、推定した消失候補ビットの符号語中の位置とパリティ検査行列との関係からこのパリティ検査行列を用いたときの復号性能を推定し、推定結果に基づいて所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列を求め、求めたパリティ検査行列を用いて送信データのLDPC符号化を行う。但し、通信装置2は、互いに同じ行数及び同じ列数の複数のパリティ検査行列から、送信データのLDPC符号化に使用するパリティ検査行列を求める。
【0100】
なお、通信装置2は、同じ符号長及び同じ符号化率を有し、かつ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式から、外来性雑音の発生状況に対応したLDPC符号化方式を決定して、決定したLDPC符号化方式を用いて送信データを符号化して符号化ビット系列を生成する送信装置の一形態となっている。
【0101】
通信装置3は、外来性雑音環境下で信号を受信した際に、外来性雑音の影響を受けていると推測されるビットを消失させた上で、通信装置2で送信データのLDPC符号化に用いられたパリティ検査行列に基づくLDPC復号処理を行う。
【0102】
雑音源4は、通信装置2と通信装置3と同じ電力線5に接続されている外来性雑音の発生源となる電気機器である。
【0103】
図7は、
図6の通信装置2から送信される信号の周波数スペクトルを示す図である。通信装置2は、送信信号として総帯域幅fw(Hz)、サブキャリア間隔fsc(Hz)のマルチキャリア変調信号を使用する。マルチキャリア変調信号としては、マルチキャリア変調に逆離散フーリエ変換を用いるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)や、逆離散ウェーブレット変換を用いるWavelet−OFDMなどがあるが、いかなるマルチキャリア変調の種類に対しても適用できる。なお、マルチキャリア変調信号を使用する他の実施の形態や変形例においても同様である。
【0104】
図8は、
図6の雑音源4が発生している雑音スペクトルの一例を示す図である。なお、
図8では、
図7で示したマルチキャリア変調信号の各サブキャリアの中心周波数における雑音電力レベルのみを示している。
【0105】
図9は、
図6の通信装置2の構成を示す図である。通信装置2は、カップリング回路10、受信部11、復調部12、復号部13、受信特性推定部14、伝送方式決定部15、符号化部16、変調部17、及び送信部18を備える。
【0106】
カップリング回路10は、通信路である電力線に重畳された送信信号の抽出を行って受信部11へ送る。また、カップリング回路10は、送信部18から送られてきた送信信号を通信路である電力線に重畳する。
【0107】
受信部11は、通信路である電力線を通じて送られてきた信号(カップリング回路10によって抽出された送信信号)のキャリア検出、フィルタリング処理、周波数変換、同期
、A/D変換等の受信処理を行う。
【0108】
なお、電力線に他の通信装置によって送信された信号のキャリアがない場合には、カップリング回路10及び受信部11は電力線上の雑音に対して処理を行って、受信部11から復調部12へ雑音に関する信号が送られることになる。
【0109】
復調部12は、受信部11から送られてきた受信信号に対してマルチキャリア復調処理を行い、受信信号の送信元の通信装置で用いられたマルチキャリア変調信号の各サブキャリアの変調方式を指定するトーンマップに従ってサブキャリア毎の復調処理を行い、送信された各符号語ビットのビット尤度を算出する。ここで、復調部12は、前述のように、外来性雑音の影響を強く受けていると判断した符号語ビットを、そのビット尤度を0として消失させる。復調部12はビット尤度系列を復号部13に送る。なお、復調部12は、例えば、ビット尤度が予め決めた閾値より大きければ、そのビットは電力の大きな外来性雑音の影響を受けていると判断する。また、復調部12は、他の通信装置によって送信された信号のキャリアがない場合における受信部11の出力信号に対してマルチキャリア復調処理を行い、マルチキャリア復調の結果から得られる信号を、雑音状況推定用信号として受信特性推定部14に送る。
【0110】
復号部13は、復調部12から送られてくるビット尤度系列を用いて送信側の通信装置で用いられたLDPC符号の符号長、符号化率及びパリティ検査行列に基づいたLDPC復号処理を行い、その結果として得られるビット系列を受信データとして出力する。
【0111】
受信特性推定部14は、復調部12から送られてきた雑音状況推定用信号を基に、受信側の通信装置において復号前に消失させる可能性の高いビットである消失候補ビットを推定する。そして、受信特性推定部14は、列置換を行うことによってパリティ検査行列を変更しながら、推定した消失候補ビットの符号語中の位置とパリティ検査行列との関係からこのパリティ検査行列を用いたときの復号性能を推定し、推定結果に基づいて所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列を求める。但し、受信特性推定部14は、後述する伝送方式決定部15に入力される制御信号で指定される可能性のある全てのLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、トーンマップに対して、所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列の決定を行う処理を行う。
【0112】
なお、受信特性推定部14は、「制御信号で指定される可能性のある全てのLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、トーンマップに対して、所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列の決定を行う」代わりに、「最小ストッピングセットのサイズ(ストッピングセットを構成するビット数の最小値)や、ストッピングセットのサイズの平均値、数が最も多いストッピングセットのサイズが、推定した消失候補ビットの数より少ないLDPC符号の符号長と符号化率に対して、所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列の決定を行う」ようにしてもよい。この場合、パリティ検査行列の決定の処理数を削減できる。
【0113】
受信特性推定部22は、求めたパリティ検査行列と、これを求める際に使用したLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、及びトーンマップとを含む伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式決定部15に送る。
【0114】
図9に示す例では、符号語ビット系列のインタリーブパターンはインタリーブなしのみとなるが、符号語ビット系列のインタリーブパターンとしてインタリーブなし以外のインタリーブパターンも含めたいときには、符号化部16と変調部17との間に符号化ビット列に対してインタリーブパターンに基づくインタリーブ処理を行うインタリーブ部を設けるようにすればよい。
【0115】
なお、列置換によってパリティ検査行列を変更しているため、復号性能の推定対象のパリティ検査行列は、互いに同じ行数及び同じ列数を有する。
【0116】
なお、「列置換を行うことによってパリティ検査行列を変更する」ことは、「同じ符号長及び同じ符号化率を有し、且つ異なるパリティ検査行列で定義される複数のLDPC符号化方式において、LDPC符号化方式を変更する」ことの一形態である。
【0117】
伝送方式決定部15は、制御信号で指定される可能性のある全てのLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、及びトーンマップに対する受信特性推定部14から送られてくるパリティ検査行列等を含む推奨伝送方式と、入力される制御信号での指示内容(LDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、トーンマップ)とから、送信データの伝送の際に実際に使用するパリティ検査行列などを含む伝送方式を決定する。そして、伝送方式決定部15は、決定した伝送方式に含まれるLDPC符号の符号長、符号化率、及びパリティ検査行列で送信データのLDPC符号化処理を行うように符号化部16に指示する。また、伝送方式決定部15は、決定した伝送方式に含まれるトーンマップに従って各サブキャリアの変調を行うように変調部17に指示する。
【0118】
符号化部16は、送信データに対して伝送方式決定部15から指示されるLDPC符号の符号長、符号化率、及びパリティ検査行列を用いてLDPC符号化処理(誤り訂正符号化処理)を行うことによって符号化ビット系列を生成して変調部17に出力する。
【0119】
変調部17は、伝送方式決定部15から指示されるトーンマップで指定される各サブキャリアの変調方式で、符号化部16から送られてきた符号語ビットを変調シンボルにマッピングする(サブキャリア毎の変調)。さらに、変調部17は、複数の変調シンボルに対してマルチキャリア変調を行ってマルチキャリア変調信号を生成して送信部18へ出力する。
【0120】
送信部18は、変調部17によって生成されたマルチキャリア変調信号にヘッダ等を付加し、更に、D/A変換、周波数変換等の送信処理を行うことによって送信信号を生成してカップリング回路10へ送る。
【0121】
なお、受信側の通信装置が実際の送信に用いられたLDPC符号の符号長、符号化率及びパリティ検査行列と、インタリーブパターンと、トーンマップ等の情報を取得できるように、通信装置2は、それらの情報をヘッダに格納して受信側の通信装置に送信する。なお、通信装置2は、それらの情報をヘッダに格納して受信側の通信装置に送信する代わりに、例えば、予め送信信号とは別の信号を用いてそれらの情報を受信側の通信装置へ送信するようにしてもよい。
【0122】
図10は、
図9の受信特性推定部14の内部構成を示す図である。受信特性推定部14は、雑音発生状況推定部20、消失パターン推定部21、及び復号性能推定部22を備える。
【0123】
雑音発生状況推定部20は、復調部12から送られてくる雑音状況推定用信号を基に雑音発生状況を推定する。雑音発生状況としては、強い外来性雑音が発生している周波数(サブキャリア番号)や、発生している外来性雑音の周波数間隔、外来性雑音の発生時間間隔などがあるが、以下では、強い外来性雑音が発生しているサブキャリア番号を推定する場合を例にして説明する。
【0124】
雑音発生状況推定部20は、雑音状況推定用信号を基に、強い外来性雑音が発生している周波数帯域を検出し、その周波数帯域に対応するサブキャリア番号fsc1、fsc2、・・・、fscnを求める。そして、雑音発生状況推定部20は、求めたサブキャリア番号fsc1、fsc2、・・・、fscnを消失パターン推定部21に送る。
【0125】
消失パターン推定部21は、雑音発生状況推定部20から送られてきたサブキャリア番号fsc1、fsc2、・・・、fscnを基に、受信側の通信装置の復号処理時にビット尤度が0とされる可能性のあるビット(受信側の通信装置が復号前に消失させる可能性の高い符号語ビットである消失候補ビット)の数及び消失候補ビットの夫々の符号語中の位置(または位置のインデックス)を推定する。以降では、消失候補ビットの数及び消失候補ビットの夫々の符号語中の位置を表す並びを消失パターンと呼ぶ。但し、消失パターン推定部21は、外来性雑音の影響を受けるサブキャリア番号と、各サブキャリアの変調方式を指定するトーンマップと、LDPC符号の符号長及び符号化率と、符号語ビット系列のインタリーブパターンとから、消失パターンを推定する。消失パターン推定部21は、推定した消失パターンを復号性能推定部22に送る。なお、消失パターン推定部21は、伝送方式決定部15に入力される制御信号で指定される可能性のある全てのLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、及びトーンマップに対して、消失パターンを推定する。
【0126】
復号性能推定部22は、列置換を行うことによってパリティ検査行列を変更しながら、消失パターン推定部21から送られてくる消失パターンとパリティ検査行列との関係からこのパリティ検査行列を用いたときの復号性能を推定し、推定結果に基づいて所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列を求める。但し、復号性能推定部22は、消失パターン推定部21から送られてくる全ての消失パターンに対して所定の復号性能が得られるようなパリティ検査行列を求める。そして、受信特性推定部14は、求めたパリティ検査行列と、これを求める際に使用されたLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、及びトーンマップとを含む伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式決定部15に送る。
【0127】
以下、通信装置2が行う推奨伝送方式の決定動作の一例について説明する。
【0128】
受信部11は、非通信時にカップリング回路10から送られてきた信号に対して受信処理を施した後、受信処理を施した信号を復調部12に送る。復調部12は、非通信時の受信部11の出力信号に対してマルチキャリア復調処理を行う。非通信時の受信部11の出力信号には他の通信装置からの送信信号が含まれないため、復調部12は、マルチキャリア復調処理の結果から、各サブキャリアにおける雑音レベルを取得することができる。復調部12は、マルチキャリア復調処理の結果に基づいて取得したサブキャリア毎の雑音レベルを雑音状況推定用信号として受信特性推定部14に送る。なお、ここで、雑音レベルとして、単一のマルチキャリア変調信号シンボル区間の受信部11の出力信号から求めた値を使用しても良いし、複数のマルチキャリア変調信号シンボル区間の受信部11の出力信号から求めた値を平均した値や分散などの統計値を使用しても良い。
【0129】
また、通信時は、受信部11の出力信号では、マルチキャリア変調信号に雑音が重畳されて現れるため、非通信時に比べて雑音の推定精度は劣化するが、例えば特許文献3に記載の方法などを使用して、通信時に雑音レベルを取得することもできる。
【0130】
受信特性推定部14内の雑音発生状況推定部20は、復調部12からの雑音状況推定用信号を基に、強い外来性雑音が発生しているサブキャリア番号を推定する。ここでは、
図8で示される雑音レベルの場合を例に挙げて説明する。雑音発生状況推定部20は、雑音状況推定用信号により示される各サブキャリアにおける雑音レベルと雑音閾値Nthとの
比較を行う。雑音発生状況推定部20は、雑音レベルが雑音閾値Nthより高いサブキャリアの番号をfsc1、fsc2、・・・、fscnとして導出する。
図8の例では、サブキャリア総数10で、周波数の低い方から順に1、2、・・・、10とサブキャリア番号を与えたとすると、fsc1=2、fsc2=4、fsc3=8となる。雑音発生状況推定部20は、雑音レベルが雑音閾値Nthより高いサブキャリア番号の情報(
図8の例では、fsc1=2、fsc2=4、fsc=8)を雑音発生状況として消失パターン推定部21に送る。
【0131】
消失パターン推定部21は、雑音発生状況推定部20から送られてきた雑音発生状況(雑音レベルが雑音閾値Nthより高いサブキャリア番号の情報)から、受信側の通信装置が復号前に消失させる可能性の高い符号語ビットである消失候補ビットの数及び消失候補ビットの夫々の符号語中の位置を推定し(消失パターンを推定し)、推定した消失パターンを復号性能推定部22へ送る。但し、消失パターン推定部21は、外来性雑音の影響を受けるサブキャリア番号と、各サブキャリアの変調方式を指定するトーンマップと、LDPC符号の符号長及び符号化率と、符号語ビット系列のインタリーブパターンとから、消失パターンを推定する。なお、消失パターン推定部21は、伝送方式決定部15に入力される制御信号で指定される可能性のある全てのLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、及びトーンマップに対して消失パターンを推定する。
【0132】
以下では、マルチキャリア変調信号は全てのサブキャリアでBPSKを使用し、LDPC符号の符号長が10で、インタリーブは行わない、という条件下での説明を行う。
【0133】
符号長10のLDPC符号を使ったLDPC符号化により得られる符号語は、第1列に対応する符号語ビットから順に周波数の低い方からサブキャリアの変調に使用される。すなわち、第1列に対応する符号語ビットはサブキャリア1に、第2列に対応する符号語ビットはサブキャリア2に、・・・、第10列に対応する符号語ビットはサブキャリア10に割り当てられる。ここで、
図8で示される雑音レベルでは強い外来性雑音が発生しているサブキャリア番号がfsc1=2、fsc2=4、fsc3=8であるので、符号語の2番目、4番目、8番目の符号語ビットが受信側の通信装置が復号前に消失させる可能性が高い符号語ビットである消失候補ビットとされる。これを式(14)に示すような形式の消失パターンで表す。
【0134】
【数14】
式(14)に示す消失パターンにおいて、値が1となっている位置の符号語ビットは消失候補ビットであり、値が0となっている位置の符号語ビットは消失候補ビットではないことを表す。
【0135】
復号性能推定部22は、式(1)のパリティ検査行列H(符号長10、符号化率1/2)から、消失パターン推定部21から送られてくる式(14)の消失パターンにおいて値が1となっている符号語ビットに対応する列(2列、4列、8列)のみを抽出して、抽出した列から部分行列Hpを作成する。作成される部分行列Hpは式(15)のようになる。
【0136】
【数15】
式(15)に示す部分行列Hpは、行重み(各行の1の数)が1の行が1行もなく、行重みが0または2以上となっている。非特許文献3では作成される部分行列に行重みが1の行が存在しない場合に、その消失パターンはストッピングセットであると定義しており、式(14)の消失パターンはストッピングセットを構成している。そのため、式(14)の消失パターンとなった場合、
図5で示したように誤り訂正復号後のビット誤り率は大幅に劣化する。復号性能推定部22は、このように式(14)の消失パターンに対して式(1)のパリティ検査行列Hを用いたときの復号性能が悪い(所定の復号性能が得られない)と判断する。復号性能推定部22は、パリティ検査行列Hを用いたときの復号性能が悪いと判断すると、列置換を行うことによってパリティ検査行列を変更することによって復号性能の改善を図る。具体的には、消失ビットの組合せがストッピングセットを構成する場合に復号性能が劣化することが知られているため、復号性能推定部22は、消失ビットの組み合わせがストッピングセットを構成しないように、パリティ検査行列Hの列置換を行う。
【0137】
復号性能推定部22は、式(1)で表されるパリティ検査行列Hにおいて、消失パターンにおいて1となっている符号語ビットに対応する2列目と消失パターンにおいて0となっている符号語ビットに対応する5列目とを列置換し、消失パターンにおいて1となっている符号語ビットに対応する8列目と消失パターンにおいて0となっている符号語ビットに対応する7列目とを列置換し、式(16)に示すパリティ検査行列H1を作成する。
【0138】
【数16】
復号性能推定部22は、式(16)のパリティ検査行列H1から、式(14)の消失パターンにおいて1となっている符号語ビットに対応する列(2列、4列、8列)のみを抽出して、抽出した列から部分行列H1pを作成する。作成される部分行列H1pは式(17)のようになる
【0139】
【数17】
式(17)に示す部分行列H1pは、行重み1の行が2行あるため、パリティ検査行列H1に対して式(14)の消失パターンが示す消失候補ビットの組み合わせはストッピングセットを構成していない。そのため、列置換したパリティ検査行列H1を用いることで、復号性能は改善される。復号性能推定部22は、式(14)の消失パターンに対して式(16)のパリティ検査行列H1を用いたときの復号性能が良い(所定の復号性能が得られる)と判断する。
【0140】
復号性能推定部22は、列置換したパリティ検査行列H1と、これを求める際に使用したLDPC符号の符号長10、その符号化率1/2、符号語ビット系列のインタリーブを行わないこと、及び全サブキャリアでBPSKを使用することを含む推奨伝送方式を伝送方式決定部15に送る。なお、復号性能推定部22は、パリティ検査行列H1そのものを伝送方式決定部15に対して送る構成としているが、これに限定されるものではなく、パリティ検査行列H1を示すインデックスを送信するようにしてもよく、パリティ検査行列Hに対する列置換の規則のみ(例えば、置換する列の組合せを示す情報等)を送るようにしてもよい。
【0141】
但し、復号性能推定部22は、消失パターン推定部21から送られてくる全ての消失パターンに対して所定の復号性が得られるようなパリティ検査行列を求めて推奨伝送方式を伝送方式決定部15に送る。
【0142】
ここで、復号性能推定部22の処理をまとめる。
【0143】
#ステップA1
復号性能推定部22は、パリティ検査行列(最初はパリティ検査行列H、2回目以降はステップA3で列置換することによって得られたパリティ検査行列)から消失パターンにおいて1となっている符号語ビットに対応する列のみを抽出して、抽出した列から部分行列を作成する。
【0144】
#ステップA2
復号性能推定部22は、ステップA1で作成した部分行列に基づいて、消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成するかどうかを判断する。
【0145】
#ステップA3
復号性能推定部22は、消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しない場合には、ステップA1での処理対象のパリティ検査行列を含む推奨伝送方式を伝送方式決定部15に送る。一方、復号性能推定部22は、消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成する場合には、パリティ検査行列Hの列置換を行い、ステップA1の処理を行う。但し、パリティ検査行列の列置換
は、消失パターンにおいて1となっている符号語ビットに対応する少なくとも1つの列と、消失パターンにおいて0となっている符号語ビットに対応する少なくとも1つの列と、を入れ替えることによって行われる。なお、列置換の対象のパリティ検査行列は、常にパリティ検査行列Hとする場合の他、例えば、最初の列置換ではパリティ検査行列Hに対して列置換を行い、2回目以降は前回の列置換により得られたパリティ検査行列に対して列置換を行うようにしてもよい。
【0146】
なお、消失パターンによってはストッピングセットを構成しない列置換のパターンが存在しない場合もあり、この場合には、例えば、デフォルト(置換なし)のパリティ検査行列を使用する、または、最後にストッピングセットを構成するか否かの判断を行ったパリティ検査行列を使用する。または、その符号長と符号化率は使用しないというフラグを立て、使用しないフラグは次に受信特性推定部14が次回のパリティ検査行列の決定まで有効にする。
【0147】
なお、実施の形態1では、受信特性推定部14の構成として、列置換を行うことによってパリティ検査行列を変更しながら、消失パターンとパリティ検査行列との関係からこのパリティ検査行列を用いたときの復号性能を推定し、所定の復号性能が得られるパリティ検査行列を求める構成を採用しているが、受信特性推定部14の構成はこれに限るものではなく、例えば、次のようなものであってもよい。同じ行数及び同じ列数を有し、且つ行列要素の少なくとも一部が異なる複数のパリティ検査行列の夫々について、複数の消失パターンの夫々に対するパリティ検査行列での復号性能を予め求めておき、受信特性推定部14は、各消失パターンに対して複数のパリティ検査行列のうち復号性能が最良となるパリティ検査行列を対応させてテーブルに保持するようにする。そして、受信特性推定部14は、復調部12からの雑音状況推定用信号に基づいて雑音発生状況を推定し、推定した雑音発生状況から消失パターンを推定し、テーブルを参照して推定した消失パターンに対して復号性能が最良となるパリティ検査行列を読み出すという構成にしてもよい。このようにすることで、通信装置2は、消失パターンに応じて部分行列を作成して復号性能を推定するという処理を、雑音発生状況の観測の度に行う必要がなく、通信装置2での処理負荷の軽減が図られる。
【0148】
通信装置2は、推奨パリティ検査行列の決定処理を非通信時や通信中の必要な時に行う。通信中の必要な時とは、例えば、誤りの発生頻度が高い場合や、通信遮断が起こった場合などである。
【0149】
以下、受信特性推定部14から伝送方式決定部15に送られた推奨伝送方式を使った通信装置2が行う送信データの送信動作の一例について説明する。
【0150】
通信装置2が送信データを送信する際、まず、伝送方式決定部15は、受信特性推定部14内の復号性能推定部22からの入力内容と、制御信号での指示内容とにより実際に使用するパリティ検査行列に決定する。
【0151】
例えば、制御信号によってLDPC符号の符号長が10で符号化率が1/2、全てのサブキャリアの変調方式がBPSKであり、インタリーブを行わないことが指定され、それに対して受信特性推定部14が送らてくる推奨伝送方式に含まれるパリティ検査行列がパリティ検査行列H1であるとする。この場合、伝送方式決定部15は、LDPC符号の符号長10、符号率1/2及びパリティ検査行列H1で送信データのLDPC符号化処理を行うように符号化部16に指示する。また、伝送方式決定部15は、各サブキャリアの変調をBPSKによって行うように変調部17に指示する。
【0152】
符号化部16は、送信データを伝送方式決定部15から指示されたLDPC符号の符号
長及び符号化率に基づいて情報ブロック長ごとに区切り、情報ブロック長毎に送信データに対して伝送方式決定部15から指示されたパリティ検査行列H1を使ってLDPC符号化処理を行うことによって符号語ビット系列を生成する。そして、符号化部16は、生成した符号語ビット系列を変調部17に送る。
【0153】
変調部17は、伝送方式決定部15から指示された全てのサブキャリアの変調方式がBPSKであることから、符号化部16から送られてきた符号語ビット系列に対して全てのサブキャリアでBPSKを行い、その結果をマルチキャリア変調することによってマルチキャリア変調信号を生成する。そして、変調部17は生成したマルチキャリア変調信号を送信部18に送る。
【0154】
送信部18は、マルチキャリア変調信号に対して、送信処理を施した後、カップリング回路10に送る。カップリング回路10は、送信信号を電力線に重畳して、通信装置3に送信する。
【0155】
図11は、
図6の通信装置3の構成を示す図である。通信装置3は、カップリング回路30、受信部31、復調部32、及び復号部33を備える。なお、
図11では、実施の形態1の説明に必要な構成のみを示しているが、実際には信号を送信するための構成も備えても良い。さらに、
図9で示した通信装置2と同様の構成であっても良い。
【0156】
カップリング回路30は、通信路である電力線に重畳された送信信号の抽出を行って受信部31へ送る。
【0157】
受信部31は、通信路である電力線を通じて送られてきた信号(カップリング回路30によって抽出された送信信号)のキャリア検出、フィルタリング処理、周波数変換、同期、A/D変換等の受信処理を行う。
【0158】
復調部32は、受信部31から送られてきた受信信号に対してマルチキャリア復調処理を行う。
【0159】
復調部32は、ヘッダ部分に対してサブキャリア毎の復調処理を行う。不図示のヘッダ解析部は、復調部32によるヘッダ部分に対する処理結果を解析して、ヘッダ部分で伝送された情報を取得する。例えば、実際の送信に用いられたLDPC符号の符号長、その符号化率、そのパリティ検査行列、インタリーブパターン、及びトーンマップ等の情報がヘッダに付加して送信された場合には、ヘッダ解析部による解析の結果、通信装置3は実際の送信に用いられたLDPC符号の符号長、その符号化率、そのパリティ検査行列、インタリーブパターン、及びトーンマップを取得できる。なお、
図9に示す通信装置2及び
図10に示す通信装置3の構成では、インタリーブパターンはインタリーブなしとなるが、インタリーブパターンとしてインタリーブなし以外のインタリーブパターンも含めたいときには、復調部32と復号部33との間にビット尤度系列に対してインタリーブパターンと逆のデインタリーブパターンに基づくデインタリーブ処理を行うデインタリーブ部を設けるようにすればよい。
【0160】
復調部32は、ペイロード部分に対して送信側の通信装置において使われたトーンマップに従ってサブキャリア毎の復調処理を行い、受信した各符号語ビットのビット尤度を算出する。ここで、復調部32は、前述のように、外来性雑音の影響を強く受けていると判断した符号語ビットを、そのビット尤度を0として消失させる。復調部32はビット尤度系列を復号部33に送る。なお、復調部32は、例えば、ビット尤度が予め決めた閾値より大きければ、そのビットは電力の大きな外来性雑音の影響を受けていると判断する。
【0161】
復号部33は、復調部32から送られてくるビット尤度系列を用いて送信側の通信装置で用いられたLDPC符号の符号長、符号化率及びパリティ検査行列に基づいたLDPC復号処理を行い、その結果として得られるビット系列を受信データとして出力する。ここで、通信装置3が影響を受ける外来性雑音は、その雑音発生の原理上、通信装置2が影響を受ける外来性雑音と相関がある。そして、通信装置2は、自身で推定した外来性雑音の状況から、通信装置3の復調部32で与えられる消失のパターンを考慮した上で、実際に送信データの符号化に用いるパリティ検査行列を決定し、決定したパリティ検査行列を用いて送信データの符号化を行って送信信号を送っている。そのため、復調部32で外来性雑音の影響を受けているビットを消失させたとしても(ビット尤度を0としても)、復号部33での復号性能の劣化は少なくなる。
【0162】
以上説明した通信装置2及び通信装置3によれば、外来性雑音の影響により消失とされる符号語ビットの組合せがあるパリティ検査行列において受信装置の復号性能を劣化させるものであっても、送信データの符号化に用いるパリティ検査行列を別のパリティ検査行列に変更することができるため、符号長及び符号化率を変更することなく受信装置での復号性能の向上を図ることができる。
【0163】
以下、実施の形態1の補足内容及び変形例を記載する。
【0164】
(1)パリティ検査行列を使ったLDPC符号化処理及びパリティ検査行列に基づくLDPC復号処理の実装方法について説明する。
【0165】
(1−1)パリティ検査行列を使った符号化処理の実装方法として、符号化部16は、使用する可能性のある全てのパリティ検査行列を保持して、伝送方式決定部15からの指示により、保持してあるパリティ検査行列の中から使用する一つを選択して送信データをLDPC符号化するという構成を採用することができる。
【0166】
また、パリティ検査行列に基づく復号処理の実装方法として、復号部33は、使用する可能性のある全てのパリティ検査行列を保持して、送信側の通信装置から送られてくる内容により、保持してあるパリティ検査行列の中から使用する一つを選択して尤度ビット系列に対するLDPC復号処理を行うという構成を採用することができる。
【0167】
但し、この実装方法では、符号化部16、復号部33は使用される可能性のある全てのパリティ検査行列を保持する必要があり、符号化部16、復号部33の回路規模が大きくなるため、例えば、以下に記載する2つの他の実装方法(1−2)、(1−3)を採用してもよい。
【0168】
(1−2)符号化部は基本となるパリティ検査行列Hのみを保持し、伝送方式決定部15は、パリティ検査行列Hに対する列置換の規則(パリティ検査行列Hから実際の送信データのLDPC符号化に用いるパリティ検査行列を得るための列置換の規則)を送る。符号化部は、伝送方式決定部15から送られてきたパリティ検査行列Hに対する列置換の規則に従ってパリティ検査行列Hに列置換を施し、列置換を施したパリティ検査行列を用いて送信データのLDPC符号化を行う。
【0169】
復号部は基本となるパリティ検査行列Hのみを保持し、送信側の通信装置はパリティ検査行列Hに対する列置換の規則(パリティ検査行列Hから実際の送信データの符号化に用いたパリティ検査行列を得るための列置換の規則)を送る。復号部は、送信側の通信装置から送られてきたパリティ検査行列に対する列置換の規則に従ってパリティ検査行列Hに列置換を施し、列置換を施したパリティ検査行列に基づく尤度ビット系列に対するLDPC復号処理を行う。
【0170】
このようにすることで、符号化部、復号部は基本となるパリティ検査行列Hのみを保持すればよくなるので、符号化部、復号部の回路規模を小さくすることができる。
【0171】
(1−3)符号化部は、基本となるパリティ検査行列Hに列置換を施したパリティ検査行列を使ってLDPC符号化処理を行うのではなく、基本となるパリティ検査行列Hを使ったLDPC符号化処理を施し、これによって得られた符号語ビット系列に対して、伝送方式決定部15から送られてくるパリティ検査行列Hに対する列置換の規則に対応した入れ替え規則に従って符号語内で符号語ビットの入れ替えを行うようにしてもよい。このようにすることで、符号化部で実施するLDPC符号化処理は、基本となるパリティ検査行列Hを使ったLDPC符号化処理のみとなり、符号化部の回路規模を小さくすることができる。例えば、パリティ検査行列Hに対する列置換の規則がK列目とL(K≠L)列目とを列置換するという規則であれば、この列置換の規則に対応する入れ替え規則は符号語内のK番目の符号語ビットとL番目の符号語ビットとを入れ替えるという規則になる。
【0172】
但し、この実装方法は、「複数の符号語内での符号語ビットの入れ替え規則のうち、雑音発生状況に対応した符号語内の符号語ビットの入れ替え規則を用いて符号語ビット系列の符号語内での符号号ビットの入れ替え規則を決定し、送信データをLDPC符号化して符号化ビット系列を生成し、生成した符号化ビット系列に対して決定した入れ替え規則に従って符号語内での符号語ビットの入れ替えを行う」ことの一形態となっている。なお、基本となるパリティ検査行列Hに対する列置換の規則が符号語内での符号語ビットの入れ替え規則に相当する。
【0173】
また、復号部は、基本となるパリティ検査行列Hに列置換を施したパリティ検査行列に基づくLDPC復号処理を行うのではなく、送信側の通信装置から送られてくる基本となるパリティ検査行列Hに対する列置換の規則に対応したビットの入れ替え規則と逆の入れ替え規則に従って尤度ビット系列に対してビットの入れ替えを行い、ビットの入れ替えがなされたビット尤度系列を用いてパリティ検査行列Hに基づくLDPC復号処理を行うという構成にしても良い。このようにすることで、復号部で実施する復号処理は、基本となるパリティ検査行列Hに基づくLDPC復号処理のみとなり、復号部の回路規模を小さくすることができる。
【0174】
但し、この変形例は、「ビット尤度系列に対して符号語ビットの入れ替えに用いた入れ替え規則と逆の入れ替え規則でビットの入れ替えを行い、ビットの入れ替えがなされたビット尤度系列に対してパリティ検査行列に基づくLDPC復号処理を行う」ことの一形態となっている。
【0175】
なお、(1−2)、(1−3)では、基本となるパリティ検査行列は1つのみとしたが、基本となるパリティ検査行列が2つ以上の場合であっても、容易に拡張できる。
【0176】
(2)実施の形態1では、パリティ検査行列に対する消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成する場合に、列置換を行うことによってパリティ検査行列を変更してその組合せがストッピングセットを構成しないようにする構成を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。
【0177】
例えば、パリティ検査行列に対する消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しない場合でも復号性能の改善を図るためにパリティ検査行列を変更するようにしても良い。
【0178】
具体的には、復号性能は、部分行列の行重みが0または1の行が多く、また行重みが2
以上の行でも行重みが少ない方が良くなる傾向があるため、この傾向に基づいて部分行列の行重みが0または1の行がより多くなるよう、または、部分行列の行重みの最大値がより小さくなるよう、パリティ検査行列の列置換を行う方法等が考えられる。
【0179】
これを実現する例を記載する。通信装置2は、複数のパリティ検査行列の夫々に対して、パリティ検査行列から消失パターンで示される消失候補ビットの夫々に対応する列を抽出して部分行列を作成する。そして、通信装置2は、複数のパリティ検査行列の夫々に対する部分行列を基に、消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しないパリティ検査行列のうち、部分行列の行重みが0または1である行がより多いパリティ検査行列を送信データのLDPC符号化に使うように決定する。または、通信装置2は、複数のパリティ検査行列の夫々に対する部分行列を基に、消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しないパリティ検査行列のうち、部分行列の行重みの最大値がより小さいパリティ検査行列を送信データのLDPC符号化に使うように決定する。
【0180】
(3)実施の形態1では、パリティ検査行列の列置換により復号性能の改善を回る構成について説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、推定された消失パターンに対する復号性能が悪いと判定された場合に、符号語ビット系列のインタリーブパターンを変更することにより、消失候補ビットと判定される符号語ビットを他の符号語ビットに入れ替え、復号性能の改善を回るという構成にしても良い。このようにすることで、通信装置の符号化部はパリティ検査行列を複数保持する必要がなくなり、同様に通信装置の復号部はパリティ検査行列を複数保持する必要がなくなる。
【0181】
以下、符号語ビット系列のインタリーブパターンを変更する機能を有する通信装置2Aと、通信装置2Aと電力線通信を行う通信装置3Aについて
図12及び
図13を参照して説明する。
【0182】
図12に示す符号語ビット系列のインタリーブパターンを変更する機能を有する通信装置2Aは、
図9及び
図10を参照して説明した通信装置2と比べて、受信特性推定部14を復号性能推定部22の代わりに復号性能推定部22Aを備えた受信特性推定部14Aに置き換え、伝送方式決定部15を伝送方式決定部15Aに置き換え、デインタリーブ部51、及びインタリーブ部52を追加した構成である。但し、符号語ビット系列のインタリーブパターンの変更をするものであるので、説明を簡単にするため、以下では、受信特性推定部14A内の消失パターン推定部21はインタリーブを行わないとしたときの消失パターンを推定するものとして説明する。
【0183】
復号性能推定部22Aは、消失パターン推定部21から送られてくる消失パターンに対してデインタリーブパターンに従ってデインタリーブ処理を施す。復号性能推定部22Aは、デインタリーブパターンに従ってデインタリーブが施された消失パターンとパリティ検査行列との関係からこのデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンに従って符号語ビット系列にインタリーブを施したときの受信側の通信装置での復号性能を推定する。復号性能推定部22Aは、推定した復号性能が悪い場合には(所定の復号性能が得られない場合には)、異なるデインタリーブバターンを使用してデインタリーブ処理が施された消失パターンを変えることで復号性能の改善を図る。復号性能推定部22Aは、復号性能の改善が図られた(所定の復号性能が得られた)デインタリーブバターンを求め、求めたデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを求める。但し、復号性能推定部22Aは、消失パターン推定部21から送られてくる全ての消失パターンに対して所定の復号性能が得られるようなインタリーブパターンを求める。そして、受信特性推定部14Aは、求めたインタリーブパターンと、これを求める際に使用されたLDPC符号の符号長、その符号化率、及びトーンマップとを含む伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式
決定部15Aに送る。
【0184】
以下に、復号性能推定部22Aの処理をさらに説明する。
【0185】
#ステップB1
復号性能推定部22Aは、デインタリーブパターンに従って消失パターンに対してデインタリーブ処理を施す。デインタリーブパターンは、ステップB1が行われる毎に異なったデインタリーブパターンが用いられる。
【0186】
#ステップB2
復号性能推定部22Aは、パリティ検査行列HからステップB1でデインタリーブされた消失パターンにおいて1となっている符号語ビットに対応する列のみを抽出して、抽出した列から部分行列を作成する。
【0187】
#ステップB3
復号性能推定部22Aは、ステップB2で作成した部分行列に基づいて、消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成するかどうかを判断する。
【0188】
#ステップB4
復号性能推定部22Aは、消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しない場合には、ステップB1で消失パターンのデインタリーブに用いたデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを求め、求めたインタリーブパターンを含む推奨伝送方式を伝送方式決定部15Aに送る。一方、復号性能推定部22Aは、消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成する場合には、ステップB1の処理を行う。
【0189】
なお、消失パターンによってはストッピングセットを構成しないデインタリーブパターンが存在しない場合もあり、この場合には、例えば、デフォルトの(最初にストッピングセットを構成するか否かの判断を行った)デインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを使用する、または、最後にストッピングセットを構成するか否かの判断を行ったデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを使用する。または、パリティ検査行列Hの符号長と符号化率は使用しないというフラグを立て、使用しないフラグは次に受信特性推定部14Aが次回のデインタリーブパターンの決定まで有効にする。
【0190】
なお、パリティ検査行列Hに対するデインタリーブ後の消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成する場合に、デインタリーブパターンを変えることによってその組合せがストッピングセットを構成しないようにする構成を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。
【0191】
例えば、パリティ検査行列Hに対するデインタリーブ後の消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しない場合でも復号性能の改善を図るために消失パターンのデインタリーブパターン(つまり、符号語ビット系列のインタリーブパターン)を変えるようにしても良い。
【0192】
具体的には、復号性能は、部分行列の行重みが0または1の行が多く、また行重みが2以上の行でも行重みが少ない方が良くなる傾向があるため、この傾向に基づいて部分行列の行重みが0または1の行がより多くなるよう、または、部分行列の行重みの最大値がより小さくなるよう、消失パターンのデインタリーブパターン(つまり、符号語ビット系列のインタリーブパターン)を変える方法等が考えられる。
【0193】
これを実現する例を記載する。通信装置2Aは、複数のデインタリーブパターンの夫々に対して、パリティ検査行列Hからデインタリーブ後の消失パターンで示される消失候補ビットの夫々に対応する列を抽出して部分行列を作成する。そして、通信装置2Aは、複数のデインタリーブパターンの夫々に対する部分行列を基に、デインタリーブ後の消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しないデインタリーブパターンのうち、部分行列の行重みが0または1である行がより多いデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを符号語ビット系列のインタリーブに使うように決定する。または、通信装置2Aは、デインタリーブ後の消失パターンで示される消失候補ビットの夫々の符号語内の位置の組合せがストッピングセットを構成しないデインタリーブパターンのうち、部分行列の行重みの最大値がより小さいデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを符号語ビット系列のインタリーブに使うように決定する。
【0194】
なお、上記では、受信特性推定部14Aの構成として、デインタリーブパターンを変更しながら、デインタリーブ後の消失パターンとパリティ検査行列との関係から復号性能を推定し、所定の復号性能が得られるデインタリーブパターンを求め、求めたデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを求める構成を採用しているが、受信特性推定部14Aの構成はこれに限るものではなく、例えば次のようなものであってもよい。複数の消失パターンの夫々について、複数のデインタリーブパターンの夫々に基づくデインタリーブ後の消失パターンに対するパリティ検査行列での復号性能を予め求めておき、受信特性推定部14Aは、各消失パターンに対して複数のデインタリーブパターンのうち復号性能が最良となるデインタリーブパターンを対応させてテーブルに保持するようにする。そして、受信特性推定部14Aは、復調部12からの雑音状況推定用信号に基づいて雑音発生状況を推定し、推定した雑音発生状況から消失パターンを推定し、テーブルを参照して推定した消失パターンに対して復号性能が最良となるデインタリーブパターンを読み出し、読み出したデインタリーブパターンと逆のインタリーブパターンを求めるという構成にしてもよい。このようにすることで、通信装置2Aは、消失パターンに応じて部分行列を作成して復号性能を推定するという処理を、雑音発生状況の観測の度に行う必要がなく、通信装置2Aでの処理負荷の軽減が図られる。なお、消失パターンに対応させる情報を、消失パターンに施すデインタリーブのパターンの代わりに、例えば、符号語ビット系列に施すインタリーブのパターン(消失パターンに施すデインタリーブのパターンと逆のパターン)としてもよい。
【0195】
伝送方式決定部15Aは、制御信号での指示内容に対応する推奨伝送方式を実際に使用する伝送方式に決定する。そして、伝送方式決定部15Aは、決定した伝送方式に含まれるLDPC符号の符号長、符号化率、及びパリティ検査行列で送信データのLDPC符号化処理を行うように符号化部16に指示する。また、伝送方式決定部15Aは、決定した伝送方式に含まれるインタリーブパターンで符号語ビット系列のインタリーブを行うようにインタリーブ部52に指示する。更に、伝送方式決定部15Aは、伝送方式に含まれるトーンマップに従って各サブキャリアの変調を行うように変調部17に指示する。
【0196】
インタリーブ部52は、符号化部16から出力される符号語ビット系列に対して、伝送方式決定部14から指示されたインタリーブパターンに従ってインタリーブを行う。インタリーブ部52は、インタリーブした符号語ビット系列を変調部17に送る。
【0197】
デインタリーブ部51は、復調部12から出力されるビット尤度系列を、受信信号の送信元の通信装置のインタリーブ部で用いられたインタリーブパターンと逆のデインタリーブパターンを用いてデインタリーブ処理を行い、インタリーブされた系列を元に戻す。デインタリーブ部51は、デインタリーブされたビット尤度系列を復号部13に送る。
【0198】
図13に示す受信装置3Aは、
図12に示す通信装置2Aと電力線通信を行うものであり、
図11の通信装置3に対してデインタリーブ部56を追加した構成である。デインタリーブ部56は、復調部12から出力されるビット尤度系列を、送信側の通信装置2Aのインタリーブ部52で用いられたインタリーブパターンと逆のデインタリーブパターンを用いてデインタリーブ処理を行い、インタリーブされた系列を元に戻す。デインタリーブ部56は、デインタリーブされたビット尤度系列を復号部33に送る。なお、インタリーブパターンは通信装置2Aから通信装置2Bにヘッダに格納されて通知される。通知方法はこれに限られるものではなく、例えば、インタリーブパターンは送信信号と別の信号を利用して通信装置2Aから通信装置2Bに通知されてもよい。
【0199】
(4)上記の例では、トーンマップは全てのサブキャリアでBPSKを用いることを指定している場合について説明したが、これに限られるものではなく、多値のPSK(Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)、PAM(Pulse Amplitude Modulation)を用いる場合や、サブキャリア毎に異なる変調方式を用いる場合であっても良い。この場合、雑音発生状況から消失個数、消失パターンの長さ、消失ビット位置を推測する際の基準が変調方式によって異なる。例えば、QPSKを使用している場合、1サブキャリアで2ビット伝送しているので、そのサブキャリアが外来性雑音の影響を受けた場合に、2ビット同時に消失となる可能性がある。消失パターン推定部21は、送信時に使用する各サブキャリアの変調方式(伝送ビット数)を考慮して消失パターンを推定する。
【0200】
(5)実施の形態1の通信装置2では、非通信時に雑音発生状況を観測し、制御信号で指定される可能性のある全ての符号長、その符号化率、インタリーブパターン、及びトーンマップに対して、観測した雑音発生状況から消失パターン及び復号性能を推定して所定の復号性能が得られるパリティ検査行列を求め、データ送信時に利用するという構成を採用したが、この構成に限られるものではない。例えば、非通信時には雑音発生状況の観測までを行い、データ送信時に、制御信号で指定された符号長、その符号化率、インタリーブパターン、及びトーンマップに応じて、雑音の発生状況から消失パターンを求め、復号性能がよいパリティ検査行列を決定するという構成にしても良い。このようにすることで、非通信時に、制御信号で指定される可能性のある全ての符号長、その符号化率、インタリーブパターン、及びトーンマップに対して所定の復号性能が得られるパリティ検査行列を求める必要がなく、データ送信に使用する条件下での所定の復号性能が得られるパリティ検査行列のみを求めるだけで良くなる。なお、例えば、上記の(3)で説明した符号語ビット系列のインタリーブパターンを決定する形態に対して同様の変形を施すことができる。
【0201】
(6)実施の形態1の通信装置2では、消失パターン推定部21で推定した消失パターンの条件下で復号性能の改善が図れるように基本となるパリティ検査行列の列置換または符号語ビット系列の並び替え(例えば、上記の(1−3)の説明が該当する。)を行う構成について説明したが、この構成に限られるものではない。例えば、符号長及び符号化率が同じで互いに独立な複数のパリティ検査行列から、復号性能が最良となるパリティ検査行列を推奨するパリティ検査行列とする構成にしても良い。ここでは、列置換や行置換、および複数行の加算処理を施しても同一とならない行列同士の関係を独立と呼んでいる。この場合、通信装置2は、複数の独立したパリティ検査行列を保持しておく必要があるが、列置換だけでは復号性能の劣化が回避できない場合など、独立したパリティ検査行列を用いることで、復号性能の改善を回ることができる。
【0202】
(7)実施の形態1では、通信装置2と通信装置3で観測される外来性雑音に相関があ
ることを利用して、通信装置2は、非通信時の受信部11の出力信号をマルチキャリア復調して得られる各サブキャリアの雑音レベルから消失パターンを推定して、自装置で推定した消失パターンを使用して復号性能の推定に使用している。
【0203】
以下では、送信側の通信装置と受信側の通信装置で観測される外来性雑音の相関が低い場合に、受信側の通信装置での雑音発生状況を送信側の通信装置にフィードバックする通信システムについて説明する。
【0204】
図14は、実施の形態1の変形例の通信システムのシステム構成図である。
図14における通信システム1Bは、電力線5Aに接続された通信装置2Bと電力線5Bに接続された通信装置3Bとが分電盤7をまたいで通信する場合の例を示したものである。このとき、外来性雑音の雑音源4は、通信装置2Bと同一の系統に存在している。電力線通信では、分電盤を経由しての伝送は、信号レベルが大きく減衰することが知られている。さらに、電力線通信の信号伝送に高周波数帯を用いる場合、雑音源から通信装置までの伝送路特性が、通信装置毎に異なってくるため、送信側の通信装置2Bでは伝送路特性の影響で観測できなかった外来性雑音が、受信側の通信装置3Bには大きな影響を与える可能性がある。この場合、通信装置2Bと通信装置3Bで観測される外来性雑音の相関は低くなる。その結果、通信装置2Bで推定した消失候補ビットの配置を示す消失パターンと、通信装置3Bが復号を行う際に消失させたビットの配置を示す消失パターンとが異なり、通信装置2Bで観測される外来性雑音に基づくパリティ検査行列の制御では復号性能の改善が得られない場合が発生する。この問題を解決するため、通信装置3Bは、復号結果が良くない場合、復号の際に用いた消失パターンを、通信装置2Bにフィードバックする構成を備える。
【0206】
図15に示す通信装置2Bは、
図9及び
図10に示す通信装置2と比べて、受信特性推定部14を復号性能推定部22の代わりに復号性能推定部22Bを備える受信特性推定部14Bに置き換えた構成をしている。復号性能推定部22Bは、通信装置3Bから通信装置3B内の後述する復調部12Bが消失させたビットに対応した消失パターン(復調部12Bが消失させた符号語ビットの数及び消失させた符号語ビットの夫々の符号語内の位置を示す消失パターン)がフィードバックされてくる前までは、消失パターン推定部21から送られてきた消失パターンを用いて復号性能のよい(所定の復号性能が得られる)パリティ検査行列をもとめ、求めたパリティ検査行列を含む推奨伝送方式を伝送方式決定部15に送る。また、復号性能推定部22Bは、通信装置2Bが通信装置3Bから通信装置3B内の後述する復調部12Bが消失させたビットに対応した消失パターンをフィードバック情報として受信した後、受信した消失パターンを用いて復号性能のよい(所定の復号性能が得られる)パリティ検査行列をもとめ、求めたパリティ検査行列を含む推奨伝送方式を伝送方式決定部15に送る。
【0207】
図16に示す通信装置3Bは、実施の形態1の通信装置2と比べて、復調部12を復調部12Bに置き換えた構成である。復調部12Bは、受信部11から送られてきた受信信号に対してマルチキャリア復調処理を行い、受信信号の送信元の通信装置で用いられたマルチキャリア変調信号の各サブキャリアの変調方式を指定するトーンマップに従ってサブキャリア毎の復調処理を行い、送信された各符号語ビットのビット尤度を算出する。ここで、復調部12Bは、前述のように、外来性雑音の影響を強く受けていると判断した符号語ビットを、そのビット尤度を0として消失させる。復調部12Bはビット尤度系列を復号部13に送る。これとともに、復調部12Bは、消失させた符号語ビットに対応した消失パターン(消失させた符号語ビットの数及び消失させた符号語ビットの夫々の符号語内
の位置を表す消失パターン)を作成し、作成した消失パターンを出力する。
【0208】
通信装置3Bは、復調部12Bが出力した消失パターンを、次回通信装置2Bへ信号を送信する際まで保持しておく。通信装置3Bは、例えば確認応答信号(ACK)や非確認応答信号(NACK)、通信装置2B宛の送信データを送信する際に、通信装置2Bからの信号受信の際に復調部12Bが出力した消失パターンをこれらの信号に含めて送信する。
【0209】
通信装置2Bは、通信装置3Bからの消失パターンを含んだデータを受信し、カップリング回路10、受信部11、復調部12及び復号部13の処理により消失パターンを得る。この得られた消失パターンは、次回通信装置3Bへの通信時に使用するパリティ検査行列を決定するために、受信特性推定部14B内の復号性能推定部22Bに入力される。そして、復号性能推定部22Bは、入力された消失パターン(通信装置3Bから送られてきた消失パターン)を用いて所定の復号性能が得られるパリティ検査行列を求める。
【0210】
通信装置2Bは、通信装置3Bへの通信時、復号性能推定部22Bの処理結果を基に送信データの符号化に用いるパリティ検査行列を決定して、送信データのLDPC符号化等を行って通信装置3Bへ信号を送信する。
【0211】
これによって、通信装置2Bで観測される外来性雑音と通信装置3Bで観測される外来性雑音との間に相関が低い場合であっても、受信装置3Bでの復号性能の良い伝送を実現することができる。
【0212】
なお、例えば、符号語ビット系列の符号語内での符号語ビットを入れ替える形態(例えば、上記の(1−3)が該当する。)や、符号語ビット系列をインタリーブする形態(例えば、上記の(3)が該当する。)に対しても、受信側の通信装置の復調部から出力される消失パターンをフィードバックする構成を適用することができる。
【0213】
また、通信装置3Bから通信装置2Bへ送信される情報は消失パターンそのものではなくてもよい。例えば、通信装置3Bの受信特性推定部内の復号性能推定部において復調部12Bが出力した消失パターンから復号性能のよい(所定の復号性能が得られる)パリティ検査行列を求める。そして、復号性能推定部は、求めたパリティ検査行列と、これを求める際に使用したLDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン、及びトーンマップとを含む伝送方式を推奨伝送方式とし、推奨伝送方式に関する情報を送信データに含めて通信装置2Bへ送信しても良い。通信装置2Bは、推奨伝送方式を含んだ送信データを受信したら、次回の通信装置3Bへの送信時は、推奨伝送方式を制御信号に含めて、かつその制御信号で指定された推奨伝送方式に含まれる情報で送信処理を行うことを指示する信号を伝送方式決定部に入力する。伝送方式決定部は、この信号で指示された推奨伝送方式を伝送方式に決定し、決定した伝送方式を用いて符号化や変調するように符号化部15と変調部16に指示を出す。
【0214】
≪実施の形態2≫
実施の形態1では、LDPC符号化に使用するパリティ検査行列や、符号語ビット系列のインタリーブパターンなどを変更して、復号性能の改善を図る構成について説明したが、実施の形態2では、マルチキャリア変調信号の各サブキャリアの変調方式を指定するトーンマップを変更して復号性能の改善を図る構成について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1の構成要素と実質的に同じ構成要素は同じ符号を付し、その説明が適用できるため、実施の形態2ではその説明を省略する。
【0215】
外来性雑音環境下では、外来性雑音の影響を強く受けている符号語ビットのビット尤度
を0にして復号することで、復号時の外来性雑音の影響を軽減できることはすでに述べた。
【0216】
実施の形態1では、具体例としてマルチキャリア変調信号の全サブキャリアでBPSKを使用する場合について説明したが、この場合は1つのサブキャリアで伝送する符号語ビットの数は1つなので、外来性雑音の影響を受けているサブキャリア1つにつき消失ビットは1つになる。
【0217】
一方、QPSK、QAMなどの多値変調方式を使用している場合、1つのサブキャリアで伝送する符号語ビットは2ビット以上となるため、外来性雑音の影響を受けたサブキャリアがある場合、1つのサブキャリアにつき2ビット以上消失ビットが発生する。そのため、トーンマップにより変調多値数の高い変調方式の使用を指定されているサブキャリアが外来性雑音を受けた場合と、変調多値数の低い変調方式の使用を指定されているサブキャリアが外来性雑音の影響を受けた場合とでは、消失ビット数が変わってくる。消失ビット数が多くなるにつれて、復号性能は悪くなる傾向がある。特に、消失ビット数が使用するLDPC符号のパリティビット数に近い数である場合、復号性能は大幅に劣化する。
【0218】
実施の形態2の通信装置は、外来性雑音の発生状況を観測し、外来性雑音の影響の強いサブキャリアに低い変調多値数の変調方式を用いるトーンマップを使用することで、外来性雑音環境下での復号性能の向上を図るものである。
【0219】
図17は、実施の形態2におけるトーンマップを変更する機能を有する通信装置2Dの構成を示す図である。通信装置2Dは、通信装置2と比べて、受信特性推定部14及び伝送方式決定部15を受信特性推定部14D及び伝送方式決定部15Dに置き換えた構成である。
【0220】
受信特性推定部14Dは、
図18に示すように、雑音発生状況推定部20、消失パターン推定部21D、及び復号性能推定部22Dを備える。
【0221】
消失パターン推定部21Dは、雑音発生状況推定部20から送られてきた外来性雑音の影響を受けているサブキャリアの情報と、マルチキャリア変調信号1シンボルで送信するビット数の情報から、消失候補ビットの数が少なくなるトーンマップを作成する。そして、消失パターン推定部21Dは、作成したトーンマップを用いた場合の消失パターンを推定する。但し、消失パターン推定部21Dは、外来性雑音の影響を受けるサブキャリア番号と、各サブキャリアの変調方式を指定するトーンマップと、LDPC符号の符号長及び符号化率と、符号語ビット系列のインタリーブパターンとから、消失パターンを推定する。消失パターン推定部21Dは、消失候補ビットの数が少なくなるトーンマップとこのトーンマップで推定した消失パターンとを復号性能推定部22Dに送る。
【0222】
復号性能推定部22Dは、消失パターン推定部21Dから送られてきた消失パターンを使って復号した場合の復号性能の推定を行う。復号性能推定部22Dは、推定した復号性能が良ければ、その消失パターンの作成の基となったトーンマップ、LDPC符号の符号長及び符号化率、並びに符号語ビット系列のインタリーブパターンと、復号性能の推定に使用されたパリティ検査行列を含む推奨伝送方式を伝送方式決定部15Dに送る。
【0223】
伝送方式決定部15Dは、制御信号で指定される可能性のある全てのLDPC符号の符号長、その符号化率、及び符号語ビット系列のインタリーブパターンに対する受信特性推定部14Dから送られてくるトーンマップ等を含む推奨伝送方式と、入力される制御信号での指示内容(LDPC符号の符号長、その符号化率、符号語ビット系列のインタリーブパターン)とから、送信データの伝送の際に実際に使用するトーンマップなどを含む伝送
方式を決定する。そして、伝送方式決定部15はD、決定した伝送方式に含まれるLDPC符号の符号長、符号化率、及びパリティ検査行列で送信データのLDPC符号化処理を行うように符号化部16に指示する。また、伝送方式決定部15Dは、決定した伝送方式に含まれるトーンマップに従って各サブキャリアの変調を行うように変調部17に指示する。
【0224】
以下、
図19に示される雑音レベルにおける通信装置2Dの動作について説明する。ここで、通信装置2Dは、1つのマルチキャリア変調信号シンボルで20ビットの符号語ビットを伝送するものと仮定する。このとき、式(1)に示すパリティ検査行列Hを使うとすると、パリティ検査行列Hの符号長は10であるため、2つの符号語(符号語1、符号語2)を1つのマルチキャリア変調信号シンボルで伝送することになる。
【0225】
受信特性推定部14D内の雑音発生状況推定部20は、雑音状況推定用信号により示される各サブキャリアにおける雑音レベルと雑音閾値Nthとの比較を行う。雑音発生状況推定部20は、雑音レベルが雑音閾値Nthより高いサブキャリアの番号をfsc1、fsc2、・・・、fscnとして導出する。
図19の例では、サブキャリア総数10で、周波数の低い方から順に1、2、・・・、10とサブキャリア番号を与えたとすると、fsc1=2、fsc2=4、fsc3=8、fsc4=10となる。雑音発生状況推定部20は、雑音レベルが雑音閾値Nthより高いサブキャリア番号の情報(
図19の例では、fsc1=2、fsc2=4、fsc3=8、fsc4=10)を雑音発生状況として消失パターン推定部21Dに送る。
【0226】
消失存在時の復号性能を向上するためには、雑音レベルが雑音閾値Nthより高いサブキャリア番号のサブキャリアで伝送する符号語ビットの数を少なくすればよい。そこで、消失パターン推定部21Dは、2、4、8、10番目のサブキャリアではBPSKを使用し、1、3、7、9番目のサブキャリアではQPSKを使用し、5、6番目のサブキャリアでは16QAMを使用するトーンマップを作成し、各符号語の消失パターンを推定する。
【0227】
符号語ビット系列のインタリーブを行わないとし、符号語1の1番目の符号語ビット、符号語1の2番目の符号語ビット、・・・、符号語1の10番目の符号語ビット、符号語2の1番目の符号語ビット、符号語2の2番目の符号語ビット、・・・、符号語2の10番目の符号語ビットの順で、作成したトーンマップに番号の小さいサブキャリアから順に割り当てていくと、符号語1の消失パターンは式(18)に示すものとなり、符号語2の消失パターンは式(19)に示すものとなる。
【0229】
【数19】
消失パターン推定部21Dが作成した上記のトーンマップを用いることで、消失ビットの数を例えば全サブキャリアでQPSKを用いる場合(消失ビット数8)に比べて少なくすることができる。
【0230】
消失パターン推定部21Dは、作成したトーンマップと、各符号語の消失パターン(式(18)に示される符号語1の消失パターン、式(19)に示される符号語2の消失パターン)とを復号性能推定部22Dに送る。
【0231】
復号性能推定部22Dは、それぞれの消失パターンについて復号性能を推定する。
【0232】
式(1)のパリティ検査行列Hを使用する場合、復号性能推定部22Dは、式(1)のパリティ検査行列Hから、消失パターン推定部21Dから送られてくる式(18)の符号語1の消失パターンにおいて値が1となっている符号語ビットに対応する列(3列、6列)のみを抽出して、抽出した列から部分行列Hp1を作成する。作成される部分行列Hp1は式(20)のようになる。
【0233】
【数20】
復号性能推定部22Dは、式(1)のパリティ検査行列Hから、消失パターン推定部21Dから送られてくる式(19)の符号語2の消失パターンにおいて値が1となっている符号語ビットに対応する列(7列、10列)のみを抽出して、抽出した列から部分行列Hp2を作成する。作成される部分行列Hp2は式(21)のようになる。
【0234】
【数21】
式(20)に示す部分行列Hp1、及び式(21)に示す部分行列Hp2は、行重みが1の行が1行もなく、行重みが2の行が2つであり、大きな復号性能の劣化はない(所定の復号性能が得られる)。
【0235】
復号性能推定部22Dは、式(18)、式(19)の消失パターンの基となったトーンマップを含む推奨伝送方式を伝送方式決定部15Dに送る。
【0236】
実施の形態2における通信装置2Dは、以上説明したように、外来性雑音の影響の強いサブキャリアの変調多値数を低くしたトーンマップを用いた伝送を行うことで、外来性雑音環境下での伝送における復号性能の劣化を軽減することができる。なお、通信装置2Dと電力線通信を行う通信装置として、
図11の構成の通信装置を利用することができる。
【0237】
なお、上記の説明では、式(20)、式(21)で与えられる部分行列は行重みが2の行が2つであるため大きな復号性能の劣化がないとしたが、その他の部分行列が得られるように符号語のインタリーブを行う構成を採っても良い。例えば、式(18)で与えられる符号語1の消失パターンが、式(22)になるように符号語のインタリーブを行うと、部分行列Hp3は、式(23)となる。
【0239】
【数23】
部分行列Hp3は、重み2の行が1行のみであるため、この部分行列が得られるトーンマップとインタリーブパターンを含む伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式決定部15Dに送る。また、符号語2の消失パターンについても、同様である。
【0240】
なお、部分行列Hp1と部分行列Hp3は、ストッピングセットを構成しないという点でどちらも大幅な劣化を抑えることができるが、消失ビットを含んだ場合の復号性能が必ず部分行列Hp3の方が良いとは限らない。そのため、部分行列Hp1と部分行列Hp3のように各消失パターンがストッピングセットを構成しない複数の伝送方式について、復号性能を予めシミュレーション等で確認しておき、復号性能推定部22Dが、その情報に基づいて復号性能の高い伝送方式を判定して推奨伝送方式として伝送方式決定部15Dに通知するよう構成してもよい。
【0241】
なお、実施の形態2では、消失パターン推定部21Dが、消失候補ビットの数が少なくなるトーンマップと、そのトーンマップを用いた場合の消失パターンを推定するという構成を採ったが、この構成に限るものではない。例えば、消失パターン推定部21Dが、消失候補ビットの数が少なくなるトーンマップに加えて符号長及び符号化率を推定し、その
トーンマップと符号長及び符号化率を用いた場合の消失パターンを推定するという構成でも良い。このようにすることで、トーンマップだけでなく、符号長及び符号化率といった符号の種類も変更することができるため、復号性能の劣化が少ない伝送方式を推定する際の自由度が向上する。
【0242】
なお、実施の形態2では、消失パターン推定部21Dが、外来性雑音の影響を受けると推定される全てのサブキャリアでBPSKを用いるようトーンマップを作成する構成について説明したが、この構成に限られるものではない。
【0243】
例えば、消失パターン推定部21Dは、強い外来性雑音の影響を受けたサブキャリアの変調方式の変調多値数が、強い外来性雑音の影響を受けていないサブキャリアの変調方式の変調多値数より少なくなるように、トーンマップを作成すればよい。
【0244】
また、例えば、消失パターン推定部21Dが、外来性雑音の影響を受けると推定されるサブキャリアの一部でQPSKのような多値変調方式を用いた場合の消失パターンを作成し、復号性能推定部22Dがその消失パターンについて復号性能の判定を行った結果、復号性能の劣化が許容できる範囲であれば、外来性雑音の影響を受けると推定されるサブキャリアの一部でQPSK等の多値変調方式を用いるよう構成してもよい。これにより、1シンボルで伝送されるビット数が多くなり、伝送効率が向上する。
【0245】
このように、外来性雑音の影響を受けると推定されるサブキャリアでQPSKのような多値変調方式を用いる場合、復号性能の劣化が許容できる消失候補ビットの数を予め算出して閾値として設定しておき、消失パターン推定部21Dは、1符号語内の消失候補ビットの数、または1シンボルあたりの消失候補ビットの数が、当該閾値を超えない範囲で、外来性雑音の影響を受けると推定されるサブキャリアでもQPSKのような多値変調方式を用いたトーンマップを推定するように構成してもよい。
【0246】
なお、実施の形態2では、消失パターン推定部21Dが、外来性雑音の影響を受けると推定されるサブキャリアでBPSKを用いる場合に、外来性雑音の影響の少ないサブキャリアの少なくとも一部で16QAMを用いることにより、1シンボルで伝送される符号語ビットの数を符号長のN倍(Nは任意の自然数であり、実施の形態2の場合はN=2)とする構成を例に挙げて説明している。この構成によると、複数のシンボルを連続して送信する場合、いずれのシンボルにもN個の符号語が同じ配置規則でサブキャリアに配置されて伝送されるため、使用される伝送方式が同じであれば、推定される消失パターンはどのシンボルで伝送される符号語の場合も同じN種類の消失パターン(実施の形態2の場合は、式(18)及び式(19)で示される2つの消失パターン)になるため、受信特性推定部14Dは推定されたN種類の消失パターンのみを考慮して推奨伝送方式を決定することができ、推奨伝送方式の推定が容易になる。この場合、受信特性推定部14Dは、実施の形態2のように、N種類の消失パターンのいずれに対しても復号性能の劣化が少ない一つの伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式決定部15Dに通知してもよいし、推奨伝送方式として復号性能の劣化が少ないパリティ検査行列をN個の消失パターン毎に推定して伝送方式決定部15Dに通知し、伝送方式決定部15Dが符号語毎にパリティ検査行列を切替えるよう構成してもよい。
【0247】
なお、実施の形態2は、1シンボルで伝送される符号語ビットの数を符号長のN倍とする構成に限定されるものではない。例えば、1シンボルで伝送される符号語ビットの数を符号長の1/M倍(Mは任意の自然数)とする構成にしてもよい。この場合、1つの符号語がM個のシンボルの各サブキャリアに同じ配置規則で配置されることになるため、どのM個のシンボルで伝送される符号語に対しても推定される消失パターンは常に同じになる。この構成によると、受信特性推定部14Dは推定した消失パターンに対して復号性能の
劣化が少ない一つの伝送方式を推定し、推定した伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式決定部15Dに通知すれば、全ての符号語に対して復号性能の劣化を抑えることができるため、推奨伝送方式の推定が容易になる。
【0248】
また、実施の形態2は、1シンボルで伝送される符号語ビットの数と符号長とが、一方が他方で割り切れる関係でない構成であってもよい。この場合、シンボル毎に符号語をサブキャリアに配置する配置規則が異なるため、同じ伝送方式を用いていても符号語毎に消失パターンが変化するが、各符号語の消失パターンはトーンマップ、及びインタリーブパターンに基づいて算出することができるため、受信特性推定部14Dは、送信する符号語毎に推定された複数種類の消失パターンを考慮して推奨伝送方式を決定すればよい。この場合、受信特性推定部14Dは、推定された全ての消失パターンに対して復号性能の劣化が少ない一つの推奨伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式決定部15Dに通知してもよいし、推奨伝送方式として復号性能の劣化が少ない伝送方式を符号語毎に推定して伝送方式決定部14Dに通知し、伝送方式決定部14Dが符号語毎に伝送方式を切替えるよう構成してもよい。
【0249】
上記の実施の形態1および実施の形態2では、送信信号としてマルチキャリア変調された変調信号を用いる構成を例に挙げて説明を行ったが、シングルキャリア変調を用いる通信装置に対して適用することもできる。例えば、強い外来性雑音が特定の時間間隔で発生している環境では、外来性雑音の発生間隔に応じた周期で消失候補ビットが配置されると予想されるため、受信特性推定部14などは外来性雑音の発生間隔に応じた周期で配置される符号語ビットの組み合わせを消失パターンとして推定するように構成することもできる。この場合、外来性雑音の発生間隔に応じた周期で配置される符号語ビットの組み合わせは複数存在し、どの消失パターンとなるかは外来性雑音の発生するタイミングと変調信号の送信を開始するタイミングとの関係により異なると予想される。そのため、受信特性推定部14などは、複数の消失パターンのいずれにおいても復号性能の劣化が少なくなる伝送方式を推定し、推定された伝送方式を推奨伝送方式として伝送方式決定部15などに通知すれば良い。
【0250】
なお、実施の形態1では、パリティ検査行列や符号語ビット系列のインタリーブパターン等を変更することによって消失パターンを変えて復号性能の改善を図ったものであり、実施の形態2では、強い外来性雑音の影響を受けたサブキャリアの変調方式を変調多値数が最も小さいBPSKとしたトーンマップを変更することによって消失候補ビットの数を減らして復号性能の改善を図ったものである。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば、次のようなものであってもよい。トーンマップを変更すれば消失パターンが変更され、仮に消失候補ビットの数が変わらなくても、また消失候補ビットの数が増加しても、符号語内での消失候補ビットの位置の組合せによってはよい復号性能が得られる場合がある。そこで、複数のトーンマップ(例えば、複数のトーンマップの間では、互いに、各変調方式を指定するサブキャリアの数が同じになっている。)の夫々について消失パターンを推定して復号性能を推定し、復号性能がよいトーンマップを使用するトーンマップに決定するようにしてもよい。
【0251】
なお、上記の実施の形態1および実施の形態2では、通信システム1、1Cで示される電力線通信システムを対象として説明を行ったが、無線LANなどの無線通信システムに対しても適用できる。
【0252】
また、上記の実施の形態1および実施の形態2やそれらの変形例で説明した通信装置(送信側の通信装置及び受信側の通信装置)が備える各機能ブロックは、典型的には、集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違
いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィグラブル・プロセッサを利用してもよい。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。