【実施例】
【0022】
≪概要≫
以下に説明するように、本発明に係る光学製品に属するものとして、実施例1〜5を作成した。又、実施例1〜5と対比させるため、本発明に属さない比較例1〜2を作成した。そして、実施例1〜5及び比較例1〜2のそれぞれに関し、可視光領域における分光反射率特性の測定と、反射を防止してなお反射された反射光の各CIE表色系の色度図(x,y,Y)の測定を実施した。
【0023】
≪構成≫
実施例1〜5及び比較例1〜2のレンズ基体はプラスチック製のフラットレンズとし、何れにおいても屈折率1.60のポリウレタン樹脂を用いた。これらのレンズ基体は、眼鏡プラスチックレンズ基体として用いることが可能であり、眼鏡プラスチックレンズにおける標準的な大きさとした。
【0024】
そして、それぞれのレンズ基体の表面に、各種の反射防止膜を形成した。何れも7層構造の光学多層膜であり、レンズ基体側から順に1〜7層目とすると、奇数層を二酸化ケイ素(低屈折率材料)で形成すると共に偶数層を二酸化チタン(高屈折率材料)で形成した。そして、次に示す[表1]〜
[表7]のような光学膜厚をそれぞれ有するように、1〜7層目を順に蒸着した。ここで、[表1]〜[表5]は順に実施例1〜5における各層の光学膜厚等を示し、[表6]〜[表7]は順に比較例1〜2における各層の光学膜厚等を示す。なお、以下では設計波長(中心波長)λとして主に500nmを想定しているが、480〜520nmの範囲において任意に変更することが可能である。又、λ=500nmの場合、二酸化ケイ素の屈折率は1.4693であり、二酸化チタンの屈折率は2.4176である。
【0025】
【表1】
【表2】
【表3】
【0026】
【表4】
【表5】
【0027】
【表6】
【表7】
【0028】
≪分光反射率特性・反射光の表色系の色度図(x,y,Y)≫
図1に、実施例1〜3及び比較例1の分光反射率特性を表すグラフを示し、
図2に、実施例4〜5及び比較例2の分光反射率特性を表すグラフを示す。又、
図3(a)に、実施例1〜3及び比較例1に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置を表す図を示し、
図3(b)に、実施例4〜5及び比較例2に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置を表す図を示し、
図3(c)に、実施例1〜5及び比較例1〜2に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置ないし視感度反射率Yを表す表を示す。
【0029】
分光反射率は、レンズ分光反射率測定器(オリンパス株式会社製USPM−RU)を使用して、レンズ片面を測定したものである。又、各色度座標値は、光源をD65光源とし、視野角を2度として、分光反射率から分光測色法により物体色として算出する。
【0030】
実施例1(3層目光学膜厚0.296λ・6層目光学膜厚0.532λ)では、(x,y)=(0.30,0,33)であり、反射防止膜のために可視光領域において僅かな強度となっている反射光の彩度は極めて低く殆ど無色である。更に、視感度反射率Yは0.27と、0.5%以下の極めて低い値となっている。なお、λ=500nmであり、以下特記のない限り同様である。
【0031】
実施例2(3層目光学膜厚0.251λ・6層目光学膜厚0.556λ)では、(x,y)=(0.31,0.33)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.24と極めて低い。実施例3(3層目光学膜厚0.204λ・6層目光学膜厚0.571λ)では、(x,y)=(0.31,0.35)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.22と極めて低い。
【0032】
実施例4(3層目光学膜厚0.191λ・6層目光学膜厚0.580λ)では、(x,y)=(0.30,0.33)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.27と極めて低い。実施例5(3層目光学膜厚0.162λ・6層目光学膜厚0.604λ)では、(x,y)=(0.30,0.30)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.34と極めて低い。
【0033】
これに対し、比較例1(3層目光学膜厚0.123λ・6層目光学膜厚0.508λ)では、視感度反射率Yが0.41となるものの、(x,y)=(0.35,0.27)と極めて低彩度とはいえずに反射光に僅かではあるものの色が着くこととなる。又、比較例2(3層目光学膜厚0.159λ・6層目光学膜厚0.629λ)では、(x,y)=(0.31,0.31)と極低彩度となるものの、視感度反射率Yが0.74となり、0.50以下という水準には達しないものとなる。
【0034】
≪評価等≫
上述の通り、実施例1〜
5によれば、奇数層が低屈折率層であり且つ偶数層が高屈折率層である合計7層の光学多層膜(反射防止膜)において、0.27≦x≦0.31且つ0.30≦y≦0.36であり、420〜680nmの波長範囲で反射率が常に1%であり、更に視感度反射率Yが0.5%以下である、反射光が極めて僅かにしか発生せずしかも反射光の色が無彩色であって反射光が極めて目立ち難い光学製品を提供することができる。この光学製品においては、比較例1〜2を合わせて考えれば、光学多層膜の第6層目の光学膜厚が、0.530λ以上0.605λ以下となるものである。
【0035】
このように、第6層目の光学膜厚が上記特定範囲となることは、僅かに反射される反射光について、極低彩度とし、視感度反射率も高い水準で低減する際に有効であるが、更に、第3層目の光学膜厚について、次の範囲とすると、更に有効である。即ち、第3層目の光学膜厚は、好適には、0.160λ以上0.296λ以下である。
【0036】
更に、特に実施例1〜
5によれば、第3層目と第6層目の光学膜厚を互いに関連したものとすると、更に反射光の無色化や視感度反射率の高水準化に資することが判明する。この関連性を説明するグラフを、
図4に示す。
図4に示されるように、第3層目の光学膜厚を設計波長λで除した値をpとし、第6層目の光学膜厚を設計波長λで除した値をqとすると、これらの光学膜厚は、好適には次式に示される相関を有する。
q=−0.50p+0.68
【0037】
尚、実施例1〜
5について、別途、密着性能や耐煮沸性能、耐汗性能、耐塩性能、耐湿性能をテストしたが、光学多層膜の第3層目や第6層目が他の層に比較して厚いか否かにかかわらず、何れも良好な性能を有するものであった。