特許第6016155号(P6016155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016155
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】光学製品及び眼鏡プラスチックレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20161013BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   G02B1/115
   G02C7/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-197689(P2012-197689)
(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公開番号】特開2014-52542(P2014-52542A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏寿
【審査官】 南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/023371(WO,A1)
【文献】 特開2005−275294(JP,A)
【文献】 特開2007−171735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10
G02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学製品基体の上に光学多層膜を設けた光学製品であって、
前記光学多層膜における反射光の色が、CIE表色系の色度図(x,y,Y)において、0.27≦x≦0.31、且つ、0.30≦y≦0.36の条件を満たし、
更に、420ナノメートル以上680ナノメートル以下の波長範囲で、反射率が常に1パーセント以下であり、
前記Yが0.5パーセント以下であって、
且つ、前記光学多層膜は、前記光学製品基体側を第1層とした場合に、奇数層を低屈折率層とすると共に、偶数層を高屈折率層とした合計7層を有するものであり、第6層の光学膜厚が、λを設計波長(480ナノメートル以上520ナノメートル以下の範囲内の何れかの値)として、0.530λ以上0.605λ以下であり、
前記光学多層膜の第3層の光学膜厚を前記λで除した値pと、前記光学多層膜の第6層の光学膜厚を前記λで除した値qとが、以下に示す式で表される関係を有してい
q=−0.50p+0.68
ことを特徴とする光学製品。
【請求項2】
前記光学多層膜の第3層の光学膜厚が、0.160λ以上0.296λ以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の光学製品。
【請求項3】
前記高屈折率層は、チタン酸化物である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学製品。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の光学製品にあって、前記光学製品基体が眼鏡プラスチックレンズ基体であることを特徴とする眼鏡プラスチックレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ等の光学製品ないし眼鏡プラスチックレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の光学製品において、表面における反射を低減するため、反射防止膜としての光学多層膜を表面に形成することが行われている。このような光学多層膜は、低屈折率層と高屈折率層を数層程度交互に積層することで形成され、加工安定性や外観上の観点から、反射率の極大点が520nm(ナノメートル)付近となる反射率の分光分布がW型の反射防止膜が多く用いられ、光の入射した光学多層膜付き光学製品を入射側から見ると、薄い緑色の反射像が見えることとなる(眼鏡プラスチックレンズにおいても見受けられる現象である)。
【0003】
このような薄緑の反射色に係る反射像を更に薄く目立たなくした光学製品として、下記特許文献1のものが本出願人により提案されている。下記特許文献1の光学製品では、反射色がCIE表色系の色度図(x,y,Y)において無色透明となる範囲内(0.27≦x≦0.30且つ0.30≦y≦0.36)に相当する色とされ、可視領域内で反射率が1%(パーセント)以下と極めて低くされる。そして、好適には、低屈折率層と高屈折率層を合計7層交互に積層した場合の第4層あるいは当該層及び第5層の合計物理膜厚を特定範囲内とすることにより、上記の色度図に係る範囲内となるようにされ、極低い反射率を呈するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−042830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の反射防止膜においては、反射色が無色で目立ち難いものの、例えば図1において450〜650nmの波長領域で反射率が0.5%付近を常に維持する状態となっているように、更に可視領域における反射率を低減して反射光を目立たなくする余地を残すものとなっている。
【0006】
そこで、請求項1に記載の発明は、可視光透過性が高く、反射率が十分に低減され、反射色が極めて目立ち難い光学製品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光学製品基体の上に光学多層膜を設けた光学製品であって、前記光学多層膜における反射光の色が、CIE表色系の色度図(x,y,Y)において、0.27≦x≦0.31、且つ、0.30≦y≦0.36の条件を満たし、更に、420ナノメートル以上680ナノメートル以下の波長範囲で、反射率が常に1パーセント以下であり、前記Yが0.5パーセント以下であって、且つ、前記光学多層膜は、前記光学製品基体側を第1層とした場合に、奇数層を低屈折率層とすると共に、偶数層を高屈折率層とした合計7層を有するものであり、第6層の光学膜厚が、λを設計波長(480ナノメートル以上520ナノメートル以下の範囲内の何れかの値)として、0.530λ以上0.605λ以下であり、前記光学多層膜の第3層の光学膜厚を前記λで除した値pと、前記光学多層膜の第6層の光学膜厚を前記λで除した値qとが、式「q=−0.50p+0.68」で表される関係を有していることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2〜に記載の発明は、上記目的に加えて、反射光の目立ち難い光学製品を比較的簡易に提供し、より一層反射光を目立ち難くする目的を達成するため、上記発明にあって、前記光学多層膜の第3層の光学膜厚を、0.160λ以上0.296λ以下としたりすることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記のような反射光の非常に目立ち難い美観に優れた光学製品に属する眼鏡プラスチックレンズを提供する目的を達成するため、眼鏡プラスチックレンズに関し、上記発明にあって、前記光学製品基体が眼鏡プラスチックレンズ基体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学製品にあって、光学多層膜により反射防止された面すら反射した僅かな反射光が、CIE表色系の色度図(x,y,Y)において、0.27≦x≦0.31及び0.30≦y≦0.36の条件を満たし、更に、420ナノメートル以上680ナノメートル以下の波長範囲で、反射率が常に1パーセント以下であり、前記Y(視感度反射率)が0.5パーセント以下であって、且つ、光学多層膜が、前記光学製品基体側を第1層とした場合に、奇数層を低屈折率層とすると共に、偶数層を高屈折率層とした合計7層を有するものであり、第6層の光学膜厚が、λを設計波長(480ナノメートル以上520ナノメートル以下の範囲内の何れかの値)として、0.530λ以上0.605λ以下であるようにし、更に前記光学多層膜の第3層の光学膜厚を前記λで除した値pと、前記光学多層膜の第6層の光学膜厚を前記λで除した値qとが、式「q=−0.50p+0.68」で表される関係を有するようにする。従って、反射光につき、反射率を極めて低い水準としながら、従来の反射色よりも非常に彩度が低く、色みが少ない無彩色に近いものとすることができ、誘目性が低い、即ち目立ち難いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1〜3及び比較例1の分光反射率特性を表すグラフである。
図2】実施例4〜5及び比較例2の分光反射率特性を表すグラフである。
図3】(a)は実施例1〜3及び比較例1に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置を表す図であり、(b)は実施例4〜5及び比較例2に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置を表す図であり、(c)は実施例1〜5及び比較例1〜2に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置ないし視感度反射率Yを表す表である。
図4】第3層目と第6層目の光学膜厚の好適な相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態につき説明する。なお、本発明の形態は、以下のものに限定されない。
【0013】
本発明における光学製品の一例としての光学レンズは、レンズ基体の表面に、ハードコート膜及び光学多層膜を、レンズ基体からこの順で有している。なお、レンズ基体表面とハードコート膜の間にプライマー層を形成したり、光学多層膜の表に防汚膜を形成したり、レンズ基体表面とハードコート膜の間やハードコート層と光学多層膜の間あるいは光学多層膜と防汚膜の間等に中間層を具備させたり、ハードコート膜を省略したりする等、膜構成を他のものに変更することができる。又、レンズ基体の裏面や表裏両面にハードコート膜や光学多層膜等を形成しても良い。なお、防汚膜は、好ましくはパーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物により形成される。
【0014】
レンズ基体の材質(基材)としては、例えばプラスチックやガラスを挙げることができ、プラスチックとしては、例えばポリウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂等が挙げられる。又、レンズとして屈折率が高く好適なものとして、例えばポリイソシアネート化合物とポリチオール及び/又は含硫黄ポリオールとを付加重合して得られるポリウレタン樹脂を挙げることができ、更に屈折率が高く好適なものとして、エピスルフィド基とポリチオール及び/又は含硫黄ポリオールとを付加重合して得られるエピスルフィド樹脂を挙げることができる。
【0015】
又、ハードコート膜は、特にオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子から構成されることが好ましい。そのためのハードコート液は、水あるいはアルコール系の溶媒にオルガノシロキサン系樹脂と無機酸化物微粒子ゾルを主成分として分散(混合)して調整される。
【0016】
オルガノシロキサン系樹脂は、アルコキシシランを加水分解し縮合させることで得られるものが好ましい。アルコキシシランの具体例として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルシリケートを挙げることができる。これらアルコキシシランの加水分解縮合物は、当該アルコキシシラン化合物あるいはそれらの組合せを、塩酸等の酸性水溶液で加水分解することにより製造される。
【0017】
一方、無機酸化物微粒子として、例えば、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ベリリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化セリウムの各ゾルを単独で又は2種以上を混晶化したものを使用することができる。無機酸化物微粒子の大きさは、ハードコート膜の透明性を確保するために、1〜100ナノメートル(nm)であることが好ましく、1〜50nmであることがより好ましい。又、無機酸化物微粒子の配合量は、ハードコート膜における硬さや強靭性の適切な度合での確保のために、ハードコート成分中40〜60重量%を占めることが好ましい。
【0018】
加えて、ハードコート液中には、必要に応じ、硬化触媒として、アセチルアセトン金属塩、エチレンジアミン四酢酸金属塩等を添加することが可能である。更に、ハードコート液中に、必要に応じ、界面活性剤、着色剤、溶媒等を添加することで、コーティング剤を調整することも可能である。
【0019】
ハードコート膜の膜厚は、0.5〜4.0μm(マイクロメートル)とするのが好ましく、1.0〜3.0μmとするのがより好ましい。この膜厚の下限に関し、薄すぎると実用的な硬度が得られないことから、薄すぎないように設定される。一方、上限については、厚くするとそれだけ硬度が上がるものの、厚くしすぎるとクラックの発生可能性が高まり、更に脆くなり易い等、物性面への問題が生ずる可能性が高まることから、厚すぎないように設定される。
【0020】
光学多層膜は、真空蒸着法やスパッタ法等により、低屈折率層と高屈折率層を交互に積層させて形成される。各層には無機酸化物が用いられ、無機酸化物として例えば酸化ケイ素や、これより屈折率の高い酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化インジウムが挙げられる。又、不足当量酸化チタン(TiOx,x<2で2に近い)を用いることができるし、少なくとも1層においてITO膜を用いることができる。
【0021】
光学多層膜は、反射防止膜として設計され、更に以下の特性を付与されている。即ち、僅かに反射される反射光の色につき、CIE表色系の色度図(x,y,Y)におけるxが0.27〜0.31の範囲内で、且つyが0.30〜0.36の範囲内となる、色が極めて目立ち難いものとなる。又、可視波長範囲である420〜680nmにおいて、反射率が1%以下となり、且つ視感度反射率Yが0.5%以下となるようにされている。
【実施例】
【0022】
≪概要≫
以下に説明するように、本発明に係る光学製品に属するものとして、実施例1〜5を作成した。又、実施例1〜5と対比させるため、本発明に属さない比較例1〜2を作成した。そして、実施例1〜5及び比較例1〜2のそれぞれに関し、可視光領域における分光反射率特性の測定と、反射を防止してなお反射された反射光の各CIE表色系の色度図(x,y,Y)の測定を実施した。
【0023】
≪構成≫
実施例1〜5及び比較例1〜2のレンズ基体はプラスチック製のフラットレンズとし、何れにおいても屈折率1.60のポリウレタン樹脂を用いた。これらのレンズ基体は、眼鏡プラスチックレンズ基体として用いることが可能であり、眼鏡プラスチックレンズにおける標準的な大きさとした。
【0024】
そして、それぞれのレンズ基体の表面に、各種の反射防止膜を形成した。何れも7層構造の光学多層膜であり、レンズ基体側から順に1〜7層目とすると、奇数層を二酸化ケイ素(低屈折率材料)で形成すると共に偶数層を二酸化チタン(高屈折率材料)で形成した。そして、次に示す[表1]〜[表7]のような光学膜厚をそれぞれ有するように、1〜7層目を順に蒸着した。ここで、[表1]〜[表5]は順に実施例1〜5における各層の光学膜厚等を示し、[表6]〜[表7]は順に比較例1〜2における各層の光学膜厚等を示す。なお、以下では設計波長(中心波長)λとして主に500nmを想定しているが、480〜520nmの範囲において任意に変更することが可能である。又、λ=500nmの場合、二酸化ケイ素の屈折率は1.4693であり、二酸化チタンの屈折率は2.4176である。
【0025】
【表1】
【表2】
【表3】
【0026】
【表4】
【表5】
【0027】
【表6】
【表7】
【0028】
≪分光反射率特性・反射光の表色系の色度図(x,y,Y)≫
図1に、実施例1〜3及び比較例1の分光反射率特性を表すグラフを示し、図2に、実施例4〜5及び比較例2の分光反射率特性を表すグラフを示す。又、図3(a)に、実施例1〜3及び比較例1に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置を表す図を示し、図3(b)に、実施例4〜5及び比較例2に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置を表す図を示し、図3(c)に、実施例1〜5及び比較例1〜2に係る、反射光のCIE表色系の色度図における各位置ないし視感度反射率Yを表す表を示す。
【0029】
分光反射率は、レンズ分光反射率測定器(オリンパス株式会社製USPM−RU)を使用して、レンズ片面を測定したものである。又、各色度座標値は、光源をD65光源とし、視野角を2度として、分光反射率から分光測色法により物体色として算出する。
【0030】
実施例1(3層目光学膜厚0.296λ・6層目光学膜厚0.532λ)では、(x,y)=(0.30,0,33)であり、反射防止膜のために可視光領域において僅かな強度となっている反射光の彩度は極めて低く殆ど無色である。更に、視感度反射率Yは0.27と、0.5%以下の極めて低い値となっている。なお、λ=500nmであり、以下特記のない限り同様である。
【0031】
実施例2(3層目光学膜厚0.251λ・6層目光学膜厚0.556λ)では、(x,y)=(0.31,0.33)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.24と極めて低い。実施例3(3層目光学膜厚0.204λ・6層目光学膜厚0.571λ)では、(x,y)=(0.31,0.35)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.22と極めて低い。
【0032】
実施例4(3層目光学膜厚0.191λ・6層目光学膜厚0.580λ)では、(x,y)=(0.30,0.33)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.27と極めて低い。実施例5(3層目光学膜厚0.162λ・6層目光学膜厚0.604λ)では、(x,y)=(0.30,0.30)とやはり極低彩度であり、視感度反射率Yも0.34と極めて低い。
【0033】
これに対し、比較例1(3層目光学膜厚0.123λ・6層目光学膜厚0.508λ)では、視感度反射率Yが0.41となるものの、(x,y)=(0.35,0.27)と極めて低彩度とはいえずに反射光に僅かではあるものの色が着くこととなる。又、比較例2(3層目光学膜厚0.159λ・6層目光学膜厚0.629λ)では、(x,y)=(0.31,0.31)と極低彩度となるものの、視感度反射率Yが0.74となり、0.50以下という水準には達しないものとなる。
【0034】
≪評価等≫
上述の通り、実施例1〜によれば、奇数層が低屈折率層であり且つ偶数層が高屈折率層である合計7層の光学多層膜(反射防止膜)において、0.27≦x≦0.31且つ0.30≦y≦0.36であり、420〜680nmの波長範囲で反射率が常に1%であり、更に視感度反射率Yが0.5%以下である、反射光が極めて僅かにしか発生せずしかも反射光の色が無彩色であって反射光が極めて目立ち難い光学製品を提供することができる。この光学製品においては、比較例1〜2を合わせて考えれば、光学多層膜の第6層目の光学膜厚が、0.530λ以上0.605λ以下となるものである。
【0035】
このように、第6層目の光学膜厚が上記特定範囲となることは、僅かに反射される反射光について、極低彩度とし、視感度反射率も高い水準で低減する際に有効であるが、更に、第3層目の光学膜厚について、次の範囲とすると、更に有効である。即ち、第3層目の光学膜厚は、好適には、0.160λ以上0.296λ以下である。
【0036】
更に、特に実施例1〜によれば、第3層目と第6層目の光学膜厚を互いに関連したものとすると、更に反射光の無色化や視感度反射率の高水準化に資することが判明する。この関連性を説明するグラフを、図4に示す。図4に示されるように、第3層目の光学膜厚を設計波長λで除した値をpとし、第6層目の光学膜厚を設計波長λで除した値をqとすると、これらの光学膜厚は、好適には次式に示される相関を有する。
q=−0.50p+0.68
【0037】
尚、実施例1〜について、別途、密着性能や耐煮沸性能、耐汗性能、耐塩性能、耐湿性能をテストしたが、光学多層膜の第3層目や第6層目が他の層に比較して厚いか否かにかかわらず、何れも良好な性能を有するものであった。
図1
図2
図3
図4