(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
経時により沈降する不溶解物質を含有したインキと撹拌体を軸筒に内蔵し、その軸筒の開口部と固着する前軸を備え、その前軸の内側には前記軸筒の開口部の内側に挿入される中筒を備えると共に、前記前軸の前方には塗布先部を備えた塗布具において、前記前軸の内部前方に複数のリブを形成すると共に、その複数のリブの内接円径を前記攪拌体の直径より小さく形成する一方、複数のリブの後方端面における前軸の内部の直径を攪拌体の直径よりも大きくし、また、前記中筒の端部における内径から軸筒の内径までの距離をx、前記中筒の内径をyとしたとき、x≦撹拌体の半径<0.5yを満たしている塗布具。
【背景技術】
【0002】
修正液やマーカー、化粧液などのような、経時により沈降する不溶解物質を含有したインキは、振動などの外力を与えずに保管しておくと徐々に不溶解物質が沈降を始める。そのためインキが分離を起こし下層部の粘度が上昇して流動性が悪くなる。さらには沈降物がハードケーキ層を形成してしまうこともある。
一般的に先端弁部の開口量は微少なので、不溶解物質が沈降すると先端弁部内で詰まりが発生してインキの出渋りや、最悪の場合は吐出しなくなるという問題が生じる。そこでこの様な特徴を持つインキを軸筒に内蔵した塗布具には、前記軸筒内に金属製あるいは金属粉を含有した樹脂性の撹拌体を入れている。これにより塗布具を振った際に沈降物を再分散させることができ、塗布を行うことができるようになっている。
【0003】
ところが、塗布具の軸筒開口部に固着した前軸や、前軸内側に形成した中筒は軸筒内に比べて内径が狭く成形されるため、撹拌体が進入しづらくなってしまう。消費者が塗布先を横向きもしくは下向きにして保管する場合も多く、さらに商品の流通段階において横向きもしくは下向きで保管されることも考えられる。これらの場合、前軸中筒内の空間に塗布液が流入し、時間が経過するとともに不溶解物質が沈降していくが、撹拌体が進入しづらいために十分に撹拌されず、出渋りや吐出不能に陥る可能性がある。
【0004】
この問題を解決するため、前軸中筒内に大径部・テーパー部・小径部を有する振動子を挿入するという提案がなされている(特許第3618620号)。塗布具を振ることで撹拌体を動かし、この振動子に衝突させることによって振動を起こし、前記小径部が撹拌体の進入しづらい空間まで振動を伝達することにより、撹拌効果を得るというものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を
図1〜
図3に示し説明する(第1実施例)。 以下、塗布先部の方向を前方、軸筒の底部の方向を後方と定義する。
参照符号1は軸筒であり、その軸筒1は有底形状をなしていると共に、修正液やマーキングインキ、化粧料などの不溶解物質1aを含有したインキを内蔵している。
この軸筒1は押圧によりインキを吐出できるように、熱可塑性樹脂を用いた可撓性を有するものである。ここで使用する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどが挙げられる。また、前記樹脂のリサイクル材料を使用してもよい。インキの種類によって材料は適宜使い分けることができる。成形法としては、ダイレクトブロー成形、多層ブロー成形、インジェクションブロー成形、射出成形などが挙げられる。本実施例においては可撓性を持つ軸筒としたが、硬質容器にも応用できる。軸筒1の樹脂の着色に関しては樹脂練り込みやマスターバッヂによる着色などが挙げられるが、透明、或いは、半透明な樹脂から成形しても良い。
また、軸筒1の後端部には、底部32が形成されており、その底部32から前方に向けて円柱状のストレート部34が形成されている。このストレート部34は、後述するキャップ21を嵌合する嵌合部ともなっている。一方、軸筒1の前端部にも円柱状のストレート部が形成されており、そのストレート部の外周面には、雄ネジ3が形成されている。さらに、前記円柱状のストレート部34のなかで最も前方方向に位置するストレート部終点35から前記雄ネジ3との間には、軸筒1の最大拡径部40が形成されているが、その最大拡径部40は徐々に拡径され、また、徐々に縮径する形状を有している。
つまり、軸筒1の形状はストレート部終点35から最大拡径部40まで拡径され、最大拡径部40から前方の軸筒1の開口部33の方向に向かって縮径し、前記雄ネジ3が形成される直前まで縮径されている(軸筒縮径終了部26)。これにより後述する撹拌体4は軸筒1の内面に沿って前方に進んでいくと、最終的に軸筒縮径終了部26と軸筒1内部の2点と接触し、塗布具の軸心に対してこの2点でなす角度が前軸中筒5の方向に向くように設計されている。尚、軸筒1の形状は撹拌体4が前軸中筒5内に向くような形状であれば良く、非円筒形状でもよい。また、本実施例では軸筒1は可撓性を持つ為、前記最大拡径部40は肉厚を薄くすることで、使用者が押圧しやすくすることができる。本実施例以外の形状においても、押圧させることを意図した部分の肉厚を薄くすることで、使用者が押圧しやすくすることができる。
また、前記雄ネジ3には、前軸2が螺着されている。もちろん、その前軸2の内面には、雌ネジ6が形成されており、その雌ネジ6と前記雄ネジ3とが螺合している。前記雄ネジ3と雌ネジ6が螺合することによって、軸筒1を密閉すると共に、インキを密閉するようになっている。そして、その前軸2の内側には前記前軸中筒5が一体に成形されている。尚、前記前軸2は軸筒1との螺合時にトルクがかかる為、ポリブチレンテレフタレートなどの剛性の高い材質の樹脂を使用しているが、その前軸2の剛性が軸筒1と比較して高い場合には、有効ネジ数が整数倍から離れていると、軸筒1の雄ネジ3の周辺部が柔らかい為、多く螺合している側に引っ張られ、湾曲する傾向にある。その結果、軸筒1と前軸2の軸心がずれ、前軸が傾いてしまう首曲がり現象が発生する。これを防止する為には、ネジ同士が接触する面積をできる限り均一にすることが望ましい。接触する面積を均一にすることによって、軸筒1が前軸2から受ける力を均一にすることができる。具体的な手段としては、多く螺合している方向に引っ張られてしまうことがないように、軸筒1と前軸2の有効ネジ数を整数倍にすることが好ましいが、その整数倍の±0.2周程度であれば、同様な効果が得られる。
【0011】
前記軸筒1の内部には沈降物38を撹拌する為の撹拌体4が内蔵されている。その撹拌体4は
円柱形状をしている。また、撹拌体4の端面を面取り、あるいは半球形に加工してもよい。攪拌体4の先端を先細りにすることによって、より前軸中筒5の前方部まで侵入させることができると共に、衝撃力によって沈降物を攪拌することができる。さらに、材質は内蔵するインキに比べて比重が大きい金属や高比重高分子、あるいは金属粉を含有した熱可塑性樹脂でもよい。尚、前記攪拌体4の重量であるが、生成された前記沈降物の重量に対して30パーセント以上にするのが好ましい。ただし、撹拌体4を重くしすぎると塗布具全体の重量が増加し、落下した際に軸筒1の破損につながる為、適切に設計する必要がある。そして、さらには、インキ中に含まれる微量の水分や、撹拌体4の製造から塗布具の組み立てまでの間に空気中の水分と触れることによる腐食を防止する為に、撹拌体4の表面に防錆処理を施したり、撹拌体4の材質をステンレス製などにしても良い。尚、撹拌体4の長さは、生成される沈降物38に埋没しないような長さに設定することが望ましい。また、攪拌体4の断面積は大きいほうが撹拌効率が高いが、大き過ぎると沈降物が接触する表面積が大きくなり、その結果、撹拌体4の動き出しが悪くなるため、適切に設計する必要がある。
【0012】
前記軸筒1の開口部33には、前述の通り内部に前軸中筒5を備える前軸2が螺合し固着するようになっているが、軸筒1と前軸2の固着方法は螺合に捉われることなく、リブを乗り越える接合などでも良い。
前記前軸2の外側には周状のリブ7が形成されている。一方、前軸2の内部前方にはリブ41が形成されている。そのリブ41の後方端面における前軸2の内部の直径(内接円径)は、撹拌体4の直径より大きく設計しており、これにより撹拌体4にて後述するインキ流通穴37を密閉することがないようにしてある。
前軸2の前方には周状の圧入用突起15が形成されている。また、前軸2の前方にはインキを吐出する塗布先部8が形成されている。前軸中筒5の内部と塗布先8との間にはインキ流通穴37が設けられている。また、そのインキ流通穴37の前方終了部付近には周状の前軸バネ座部36が設けられている。
前記塗布先部8はチップ9、芯体10、バネ11から構成されている。そのバネ11は芯体10の後方に設けたバネ座部20と前軸バネ座部36により、両端を保持されている。チップ9は芯体10とバネ11を内部に持つような配置になっている。尚、芯体10はバネ11による弾撥力を受け、チップ9と常に接触して弁構造をなしている。以下、詳細に構成を述べる。
前記チップ9は中空形状を有しており、先端吐出口12に向かって段階的に縮径している。その先端吐出口12が最も縮径されており、先端吐出口12の内部の後方には弁座部13が形成されている。また、チップ9の外側には、前記前軸2への圧入のための周状の溝14が形成されている。その周状溝14と、前記圧入用突起15が嵌合して固着している。尚、チップ9の材質は快削ステンレス鋼や洋白、真鍮など切削性のよいものが用いられている。
前記芯体10は中実形状で、先端にチップ9の先端から外部に突出した位置で保持されている塗布部16、中間部に拡径部17、後方に長く伸びた縮径部18の3つで構成されている。その拡径部17の前方には、球面状の弁部19が形成されており、後方にはバネ座部20が形成されている。この芯体10の材質もチップ9の材質と同様、快削ステンレス鋼など、切削性の良いものを用いることが望ましい。
前記バネ11は、内部に芯体10の縮径部18が入り込んでおり、後端が前記前軸バネ座部36に、先端が芯体拡径部17の後方の座部20により保持されている。
そして、前記芯体10の塗布部16が塗布対象物に押し当てられたときに、芯体10は前記インキ流通穴37の後方へと移動する。この時、芯体10が後方に移動することで、芯体の座部20に保持されていたバネ11の先端も後方に移動する。しかし、バネ11の後端はバネ座部36に保持されたままとなる。そのため、芯体10を前方に付勢する弾撥力は失われていない。
尚、不使用時においては、前記バネ11の弾撥力により芯体10は前方に付勢され、チップ9の内部に設けた弁座部13と芯体10に設けた弁部19が圧接することで弁が閉められている。使用時には、前記チップ9から突出した芯体10の塗布部16を紙面に押し付けることで、前記芯体10がバネ11の弾発力に抗しながらも後方に移動し、チップ9内部の弁座部13と芯体10の弁部19との圧接が解除されて弁が開くという構造をなしている。
尚、塗布先部8の構造はチップ9からボールが突出し、そのボールを後方からバネにて付勢して弁構造をなすような構造でもよい。
【0013】
前記前軸2の前方には、キャップ21が着脱自在に取り付けられており、前記チップ9などを覆っている。即ち、そのキャップ21はチップ9の周辺部に付着したインキの乾燥を防止すると共に、不溶解物質の衣服などへの付着を防止している。そのキャップ21は一方が開口しており、内側に中筒22が設けられていると共に、この中筒22は前軸2のテーパー部23と密着することにより塗布先部8を密閉する役割を果たしている。具体的に説明すると、開口部39の周辺には同心円上にリブ24を複数個設け、このリブ24が前軸2の外側に形成された周状のリブ7を乗り越えることにより嵌合するようになっている。また、キャップ22はクリップ25を一体に成形している。
尚、キャップ25の材質については、塗布先8の保護の観点から、例えば、ポリカーボネートのような耐衝撃性が高い樹脂を用いるのが望ましい。さらに、前記軸筒1の中に内蔵したインキに含有されている有機溶剤などに対して高い耐性を持つグレードのポリカーボネートを使用することで、キャップ25を装着した塗布具を高温環境下に置いた際に前記有機溶剤が気化しキャップと接触する場合においても、白濁やクラックなどの劣化を起こしにくくしている。そのため、ポリカーボネートの特徴である高い透明性を保つことでき、強いては、ペン先の視認性を低下させることがなく、耐衝撃性も保つことができる。その具体的なポリカーボネートとしては、パンライトL−1225L(帝人化成株式会社製)などが挙げられる。
【0014】
上記塗布具を使用して、前軸中筒5内に経時による沈降物38が発生した場合、使用者は塗布具全体を振って撹拌体4を動かす。
前軸中筒5の
端部における内径から軸筒1の内径までの距離をx、、前軸中筒の内径をyとしたとき、x≦撹拌体の半径<0.5yを満たしているので、使用者が前述の塗布具を塗布先8を下向きにして垂直に振った場合、撹拌体4は前軸中筒5に直接入る、もしくは垂直に衝突する。前軸中筒5に対して垂直に衝突しても、撹拌体4の重心が前軸中筒5の内側にあるのでバランスを崩しやすい。そのため、塗布具の軸心をわずかに傾けることで撹拌体4は前軸中筒5内に落ち込み、沈降物38を再分散させることができる(
図6参照)。
紙面に対して角度を持たせて塗布具を振った場合、撹拌体4は軸筒1の内壁に沿って移動していく。さらに軸筒1の内部形状が中間部から前軸中筒5の方向に向かって徐々に縮径しており、軸筒2の前方部断面は曲線になっている。これにより撹拌体4は軸筒1に沿って進んでいくと、最終的に軸筒縮径終了部27と軸筒1の内部の2点と接触し、この2点のなす角度が撹拌体4の塗布具の軸線に対する角度となる。そのため撹拌体4は前軸中筒5の内側に向き、その前軸中筒5内に直接入るか、もしくは、撹拌体4は塗布具の軸心に対して角度を持ったまま、前記撹拌体4の端面が前軸中筒5の周縁部に衝突する(
図7参照)。この様に、撹拌体4の端面が衝突した場合も、垂直に衝突した場合と同様であり、塗布具の軸心をわずかに傾けることで撹拌体4は簡単にバランスを崩して前軸中筒5内に落ち、沈降物38を再分散させることができる。同じ角度を保持したまま繰り返し塗布具を振ったときでも、撹拌体4が前軸中筒5に衝突した際の衝撃により、その撹拌体4は簡単にバランスを崩し、前軸中筒5内に落ちるため、沈降物38を撹拌することができる。
【0015】
尚、x>撹拌体の半径となる場合、撹拌体4が前軸中筒5に対して垂直に衝突した際には撹拌体4の重心が
距離x上に乗ってしまう。すると、塗布具を大きく傾けない限り撹拌体4のバランスを崩すことができないため、特に、同じ角度を保持したまま繰り返し塗布具を振ったときには前軸中筒5内に撹拌体4が落ち込まず、沈降物38の再分散に至らない(
図8参照)。また、撹拌体の半径≧0.5yとなる場合は、前軸中筒5の半径よりも撹拌体4の半径が大きくなってしまう。そのため前軸中筒5内に撹拌体4が進入できず、沈降物38も再分散することができない(
図9参照)。
【0016】
次に、第2実施例について説明する。
図2は本発明における第2の実施例の断面図であり、前記第1例の軸筒1の形状が異なる例である。
本例における軸筒27は有底形状であり、修正液やマーキングインキ、化粧料などの不溶解物質1aを含有したインキを内蔵している。この軸筒27は、押圧によりインキを吐出することができるように、熱可塑性樹脂を用いた可撓性を有するものである。ここで使用する熱可塑性樹脂としては実施例1と同様に、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどが挙げられる。また、前記樹脂のリサイクル材料を使用してもよい。インキの種類によって材料は適宜使い分けることができる。成形法としては、ダイレクトブロー成形、多層ブロー成形、インジェクションブロー成形、射出成形などが挙げられる。本実施例においては可撓性を持つ軸筒としたが、硬質容器にも応用できる。
前記軸筒27には、前記実施例と同様に、沈降物38を撹拌するための撹拌体4がインキと共に内蔵されている。また、軸筒27の後端部には、底部42が形成されており、その底部42から前方に向けて円柱状のストレート部43が形成されている。前記実施例と同様に、ストレート部43はキャップ21を嵌合する嵌合部ともなっている。
また、軸筒27の前端部にも円柱状のストレート部が形成されており、そのストレート部の外周面には、雄ネジ44が形成されている。前記雄ネジ44は前記実施例と同様、前軸中筒5を一体に持つ前軸2の内面に形成された雌ネジ6と螺合し、軸筒27を密閉すると共に、インキを密閉するようになっている。
前記ストレート部43のなかで最も前方に位置するストレート部終点45から前記雄ネジ44の間は、横断面形状が楕円形状を有している。さらに前記ストレート部終点45から前記雄ネジ44の間には軸筒27の最大拡径部46が形成されているが、その最大拡径部46は徐々に拡径され、また、徐々に縮径する形状を有している。
つまり、軸筒27の形状はストレート部終点45から最大拡径部46まで拡径され、最大拡径部46から前方の軸筒27の開口部47の方向に向かって縮径し、前記雄ネジ44が形成される直前まで縮径されている(軸筒縮径終了部48)。
前記最大拡径部46付近は、その横断面形状が楕円形状をなしていると共に、軸筒27内面に曲線を描きながら一周する曲線状突起29が設けてあり、さらに前方側の楕円形状終了部30の内面にも周状突起31が設けてある。つまり、前記楕円形状終了部30と周状突起31は塗布具軸心方向に向かって軸筒27の内面に向けて突出している。本実施例ではダイレクトブロー成形を用いており、軸筒27の内面には、前記楕円形状終了部30と周状突起31が設けられているため、対応する軸筒の外面には溝が形成され、露出している。この溝によって、曲線状突起31は塗布具使用者の持ちやすさと押しやすさを考慮した形状としてあるが、もちろん、他の成形法を用いて軸筒27外面に溝が露出しないようにしても良い。
また、前記最大拡径部46の肉厚は、楕円形の短辺側が薄く、長辺側が厚く設計されている。これは使用者が軸筒27を押圧する際に短辺側を押しやすいよう、押圧部の剛性を下げる意図である。ただし、本実施例のように楕円形状であれば構造的に短辺側がたわみやすくなっているので、短辺の肉厚が長辺の肉厚より大きくなっても、短辺側を押しやすくすることができる。
【0017】
前記第1実施例と同様、塗布具を垂直に振った場合には、撹拌体4が前軸中筒5に直接入るか、もしくは、前軸中筒5の周縁部に垂直に衝突する。しかし、前軸中筒5に対して垂直に衝突しても、撹拌体4の重心が前軸中筒5の内側にあるのでバランスを崩しやすい。そのため、わずかに塗布具を傾けるだけで撹拌体4は前軸中筒5の内側に落ち込み、沈降物38を再分散させることができる(
図16、
図17参照)。
また、塗布具に角度を持たせて振ったとき、撹拌体4が軸筒27の楕円形状の長辺側を沿って進む場合には軸筒27の形状と周状突起31により案内される。つまり、軸筒27内面に沿って前方に向かって移動してきた撹拌体4は、周状突起31に乗り上げた際、撹拌体4は軸筒27内面と周状突起31の2点で接触する。ここで、その周状突起31は、撹拌体4の接触している軸筒27の内面より塗布具軸心方向に近い状態にある。よって、前記2点の塗布具軸心に対する垂直方向への高さの違いから、撹拌体4は前軸中筒5方向に向かう角度を持つようになる。また、周状突起31と前軸中筒5との距離も撹拌体4の全長に対して近いため、その撹拌体4は前軸中筒5の内側の方向に向かう様になる(
図18参照)。
また、撹拌体4が軸筒27の楕円形状の短辺側を沿って移動した場合について説明する。前記軸筒27内面に沿って前方に向かって移動してきた撹拌体4は、まず曲線状突起29に乗り上げる。その曲線状突起29を乗り上げることにより、軸筒27の内面と曲線状突起29との2点で接触する。その曲線状突起29は、撹拌体4の接触している軸筒27内面より塗布具軸心方向に近い状態にある。よって、前記2点の塗布具の軸心方向への高さの違いから、撹拌体4は前軸中筒5の内側に向かう角度を持つ様になる。また、曲線状突起29と前軸中筒5との距離も撹拌体4の全長に対して近いため、撹拌体4は前軸中筒5の内方向に向かう様になる(
図19参照)。
以上のように、軸筒27の形状、曲線状突起29、周状突起31のいずれかによって案内された撹拌体4は、前軸中筒5に直接入るか、もしくは、撹拌体4は塗布具の軸心に対して角度を持ったまま、前記撹拌体4の端面が前軸中筒5の周縁部に衝突する。この様に、撹拌体4の端面が前軸中筒5に衝突した場合も、第1実施例において垂直に衝突した場合と同様であり、塗布具軸心をわずかに傾けることで撹拌体4は、簡単にバランスを崩して前軸中筒5内に落ち込み、沈降物38を再分散させることができる。同じ角度を保持したまま繰り返し塗布具を振ったときでも、撹拌体が前軸中筒5に衝突した際の衝撃により撹拌体4は簡単にバランスを崩し、前軸中筒5内に落ちるため、沈降物38を撹拌することができる。
【0018】
尚、x>撹拌体の半径となる場合、撹拌体4が前軸中筒5に対して垂直に衝突した際には撹拌体4の重心が
距離x上に乗ってしまう。すると、前記比較例と同様に、塗布具を大きく傾けない限り撹拌体4のバランスを崩すことができないため、特に、同じ角度を保持したまま繰り返し塗布具を振ったときには、前軸中筒5内に撹拌体が落ち込まず、沈降物38の再分散に至らない(
図20参照)。
撹拌体の半径≧0.5yとなる場合は、前軸中筒5の半径よりも撹拌体4の半径が大きくなってしまう。そのため前軸中筒5内に撹拌体4が進入できず、沈降物38も再分散することができない(
図21参照)。