特許第6016188号(P6016188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TOTO株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6016188-樹脂成形品 図000003
  • 特許6016188-樹脂成形品 図000004
  • 特許6016188-樹脂成形品 図000005
  • 特許6016188-樹脂成形品 図000006
  • 特許6016188-樹脂成形品 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016188
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20161013BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B32B25/08
   B29C45/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-128641(P2012-128641)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-252638(P2013-252638A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】奥田 拓央
(72)【発明者】
【氏名】原田 亮一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】山田 征央
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−164588(JP,A)
【文献】 特開平08−072204(JP,A)
【文献】 特開2010−163557(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/155571(WO,A1)
【文献】 特開2002−355929(JP,A)
【文献】 特開平11−179850(JP,A)
【文献】 特開2009−184297(JP,A)
【文献】 特開2002−138274(JP,A)
【文献】 特開平09−195542(JP,A)
【文献】 標準技術集 ゴルフボール,日本,特許庁,2004年 3月26日,7−B−3−b ショアAとJIS−A,URL,http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/golf_ball/page145.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 45/00−45/84
E03C 1/12− 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサート部材となる軟質樹脂部と硬質樹脂基材部とを有する樹脂成形品であって、
前記軟質樹脂部と硬質樹脂基材部との境界を前記樹脂成形品の端面に露出させてなる樹脂成形品において、
前記軟質樹脂部は、自身の厚みが0.3mm以上1.5mm以下かつデュロメーターA型の押し込み硬さが30以上95以下であることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項2】
前記硬質の合成樹脂がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品。
【請求項3】
前記樹脂成形品が、浴室床の排水口に設置される蓋であることを特徴とした請求項2記載の樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、浴室などに好適に用いることができる樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の皮膚に触れる機器においては、皮膚との接触時のソフト感や温かみを持たせるため、機器の最表層に軟質の合成樹脂が使用された部材や商品などが提案されている。
【0003】
一方、合成樹脂成形品の表面に加飾する方法として、予め印刷などを施した樹脂フィルム等の印刷材を成形金型内にセットし、金型内に合成樹脂を射出して樹脂フィルムと合成樹脂と一体化する合成樹脂の成形方法(フィルムインサート成形)が知られている。
この方法は、成形物の表面に直接印刷や着色を施すことが困難な形状の成形物であっても、合成樹脂成形品の表面に加飾ができるため、各種機器表面の加飾に多く用いられている(特許文献1)。
ところが、インサート成形に用いられる樹脂フィルムは厚みが薄く(特許文献1においては、厚みが0.18mm程度)、そのため、最表層の硬度は、樹脂フィルムの下に存在する、樹脂シートよりも硬度が大きな基材樹脂の影響を受けてしまうこと、一般のフィルムはそのもの自体の硬度が高いことから、思うようなソフト感や温かみを持たせることができなかった。
【0004】
そこで、本出願人は、フィルムに代えて軟質シートを使用することによって、インサート成形により、所望のソフト感や温かみを持たせた部材を作製することが可能であることを見出した。また、その際、軟質シートに加飾層を付加することで、さまざまな色合いの表面を形成できることもわかった。ところが、加飾用合成樹脂製軟質シートをインサートするにあたっては、加飾の柄と製品形状の位置合わせやしわの発生防止のために、例えば金型の外側に保持機構を設けて位置決めをするなどの手法を実施する必要がある。しかし、この手法を用いたときには、成形後にトリミングという二次加工が必要になってしまう。一方、金型の外側に保持機構を設ける代わりに、金型内にシートを保持するための形状や機構を設けた場合は、成形品の形状に制約が出たり、シートの端面から表面に樹脂が回り込み成形不良を引き起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−262511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、インサート成形により得られる樹脂成形品において、トリミングなどの二次加工を必要とせず、複層化された端面の仕上がりが良好でソフト感や温かみを持つ成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、インサート部材となる軟質樹脂部と硬質樹脂基材部とを有する樹脂成形品であって、前記軟質樹脂部と硬質樹脂基材部との境界が前記樹脂成形品の端面に露出してなる樹脂成形品において、前記軟質樹脂部は、自身の厚みが0.3mm以上1.5mm以下かつデュロメーターA型の押し込み硬さが30以上95以下であることを特徴とする樹脂成形品である。

【0008】
これによれば、樹脂成形品の軟質樹脂部が0.3mm以上であれば、軟質の風合いを出すことが可能になる。また、軟質樹脂部を1.5mm以下にしておけば、端面からの樹脂の回り込みを抑えることができる。さらに、押し込み硬さを30以上にすれば、成形圧によって破れなどを防止することができ、95以下にすれば、端面からの樹脂の回り込みを抑えることができる。つまり、トリミングなどの二次加工を必要とせず、複層化された端面の仕上がりが良好な樹脂成形品を作製することができる。さらに、表面に軟質樹脂部が形成されているため加飾はもちろんソフト感や温かみをもった成形品を作製することができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、硬質樹脂基材部がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体のいずれかであることを特徴とする樹脂成形品である。
【0010】
これらの樹脂材料を選択することで、基材と同系統の材料の軟質樹脂シートをインサートすることで金型内で熱により硬質樹脂基材部と軟質樹脂部が良好に融着される。
【0011】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記樹脂成形品が、浴室床の排水口に設置される蓋であることを特徴とした樹脂成形品である。
【0012】
これによれば、浴室の床本体にソフト感がある材料が使われていても、同様のソフト感を排水口の蓋でも出すことが可能となりデザインの統一感を出すことができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様によれば、ソフト感や温かみが要求される樹脂成形品において、トリミングなどの二次加工を必要とせず、複層化された端面の仕上がりが良好な成形品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の樹脂成形品を示す断面図
図2】樹脂成形品を示す図であり、(a)は本発明にかかる樹脂成形品の斜視図、(b)は軟質樹脂部の厚みが0.3mm〜1.5mmとされた本発明の樹脂成形品の端面を示す拡大図、(c)は軟質樹脂部の厚みが1.5mmを超えている樹脂成形品の端面に樹脂が回り込んだ状態を示す拡大図
図3】本発明の樹脂成形品を、排水口蓋とした例を示す図
図4】本発明の樹脂成形品を、排水口蓋とした別の例を示す図
図5】本発明の樹脂成形品を、浴室用カウンターとした一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂成形品を示す断面図であり、樹脂成形品の積層構造を模式的に示す断面図である。
【0016】
本実施形態に係る樹脂成形品は、例えばポリプロピレン等の硬質樹脂材料からなる硬質樹脂基材部1と、基材部1よりも硬度が低く、基材部1の上に形成される軟質樹脂部2と、を有する。本実施形態においては、軟質樹脂部2は、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが選ばれる。このように、硬質樹脂基材部1と軟質樹脂部2の材料を同種の材料にしておくことで、インサート成形時に互いの接触部が融着しあい接着強度が良好な樹脂成形品となる。軟質樹脂部2は樹脂成形品の表面側を構成する。
【0017】
この樹脂成形品は、軟質樹脂部2の厚みが0.3mm以上1.5mm以下である。すなわち、従来、フィルムと呼ばれる0.18mm以下の厚みの軟質樹脂をインサート成形して得られた樹脂成形品よりも、軟質樹脂部2の厚みが厚くなっている。そのため、樹脂成形品の最表面に、ソフト感や温かみをもたらすことが可能である。さらに、表面側に凹凸のある形状が必要な場合においても、厚みがあることで凹凸形状に追従しやすく、特に軟質樹脂部2が伸ばされる凸部3などに破れが発生しないため、表面形状の自由度が広がる。
【0018】
また、軟質樹脂部2の厚みが従来よりも厚くなっている。そして、この軟質樹脂部2は、デュロメーターA型の押し込み硬さが30以上95以下である。すなわち、従来のフィルムを用いたインサート成形による樹脂成形品よりも、柔らかい表面である。そのため、樹脂成形品の最表面に、ソフト感や温かみをもたらすことが可能である。さらに、軟質樹脂部2が成形圧で破れるというような不具合や、端面部から樹脂の回り込みなどが発生せず、良好な樹脂成形品が得られる。
【0019】
図2は、樹脂成形品の一例である浴室の床に設置される排水口蓋を示す図であり、(a)は本発明にかかる樹脂成形品の斜視図、(b)は軟質樹脂部の厚みが0.3mm〜1.5mmとされた本発明の樹脂成形品の端面を示す拡大図、(c)は軟質樹脂部の厚みが1.5mmを超えている樹脂成形品の端面に樹脂が回り込んだ状態を示す拡大図である。
【0020】
図2(c)は、軟質樹脂部2の厚みが1.5mmを超えた場合であるが、樹脂成形品の端面部から樹脂が回り込んでしまい、硬質樹脂基材部1と軟質樹脂部2との境界が乱れてしまっている。これに対して、図2(b)は、軟質樹脂部2の厚みを0.3mm〜1.5mmに抑えているので、硬質樹脂基材部1と軟質樹脂部2との境界がすっきりとしたラインを形成することができ、良好な樹脂成形品が得られている。
【0021】
本発明における硬質樹脂基材部1と軟質樹脂部2の材料については、その要旨を逸脱しない範囲で各種の充填剤や添加材を配合することが可能である。ガラス繊維(チョップドストランド)、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、耐熱有機繊維、金属繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー等の繊維状充填材、タルク、マイカ、ガラスフレーク、グラファイトフレーク等の板状充填材、ガラス短繊維(ミルドファイバー)、炭短繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ等の粒子状充填材を使用することができる。添加材としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、内部滑材、難燃剤、顔料、染料などの添加材を使用することができる。
【0022】
また、軟質樹脂部2を形成する軟質樹脂シートは、柄や模様、色彩を加えるために、加飾フィルム層を適宜設けることができる。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、軟質樹脂シートの最表層に親水性塗料などの機能性塗装を施しても構わない。
【0023】
次に、本発明の樹脂成形品を用いた具体例について説明する。
図3図4は、本発明の樹脂成形品を用いて作製された、浴室の床に設けられた排水口に設置される排水口蓋を示す斜視図である。
【0024】
この排水口蓋4は、硬質樹脂材料であるポリプロピレンからなる硬質樹脂基材部5と、硬質樹脂基材部5よりも硬度が低く、硬質樹脂基材部5の上に形成される軟質樹脂部6と、を備える。本実施形態においては、軟質樹脂部6は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが選ばれる。このように、硬質樹脂基材部5と軟質樹脂部6の材料を同種の材料にしておくことで、インサート成形時に互いの接触部が融着しあい接着強度が良好な樹脂成形品となる。軟質樹脂部6は排水口蓋4の天面を形成する。この排水口蓋4は、軟質樹脂部6の厚みが0.5mmである。すなわち、従来、フィルムと呼ばれる0.18mm以下の厚みの軟質樹脂をインサート成形して得られた樹脂成形品よりも、軟質樹脂部6の厚みが厚くなっている。そのため、樹脂成形品の人の肌と接触する最表面に、ソフト感や温かみをもたらすことが可能である。このことから、浴室の床本体にソフト感がある材料が使用されていた場合にも、デザインの統一感が図れる。
【0025】
さらに、排水口蓋4は、表面側に乾きを良くするための凹凸のある導水溝7を賦型しているが、厚みがあることで形状に追従しやすく、軟質樹脂部6に破れが発生しない。また、軟質樹脂部6の厚みが従来よりも厚くなっているため、軟質樹脂部6は、デュロメーターA型の押し込み硬さが90である。そのため、樹脂成形品の最表面に、ソフト感や温かみをもたらすことが可能である。さらに、軟質樹脂部6が成形圧で破れるというような不具合や、端面部から樹脂の回り込みなどが発生せず、良好な樹脂成形品が得られる。
【0026】
また、図4のように、意匠性を向上させるために模様8をつけた軟質樹脂部を得る場合も、硬さを90であることで、軟質シートを金型サイズに合わせておけば、位置ずれなどが発生せず、導水溝7と模様8の位置関係が一定な樹脂成形品が得られる。
【0027】
図5は、本発明の樹脂成形品を用いた作製された、浴室に用いられるカウンターを示す斜視図である。
【0028】
本実施形態に係る浴室用カウンター10は、硬質樹脂材料であるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体からなる硬質樹脂基材部11と、硬質樹脂基材部11よりも硬度が低く、硬質樹脂基材部11の上に形成される、軟質樹脂部12とを備える。この浴室用カウンター10においては、軟質樹脂部12は、スチレン系熱可塑性エラストマーが選ばれる。このように、硬質樹脂基材部11と軟質樹脂部12の材料を同種の材料にしておくことで、インサート成形時に互いの接触部が融着しあい接着強度が良好な樹脂成形品となる。軟質樹脂部12は浴室用カウンター10の天面を形成する。この浴室用カウンター10は、軟質樹脂部12の厚みが1.0mmである。すなわち、従来、フィルムと呼ばれる0.18mm以下の厚みの軟質樹脂をインサート成形して得られた樹脂成形品よりも、軟質樹脂部12の厚みが厚くなっている。そのため、樹脂成形品の人の肌と接触する最表面に、ソフト感や温かみをもたらすことが可能である。このことから、浴室の床本体にソフト感がある材料が使用されていた場合にも、浴室全体としてのデザインの統一感が図れる。
【0029】
さらに、表面側に乾きを良くするために軟質シートの最表層に接触角が30°以下であるアクリル系の親水性コートを塗布している。また、軟質樹脂部12の厚みが従来よりも厚くなっており、軟質樹脂部12は、デュロメーターA型の押し込み硬さが70である。そのため、浴室用カウンター10の最表面に、ソフト感や温かみをもたらすことが可能である。さらに、軟質樹脂部12が成形圧で破れるというような不具合や、端面部から樹脂の回り込みなどが発生せず、良好な樹脂成形品が得られる。
【0030】
本発明の実施形態にかかる樹脂成形品を用いれば、上記の排水口蓋や浴室カウンターだけでなく、バスエプロンや風呂ふたなどにおいても、特に浴室床が本体にソフト感がある材料が使用されていた場合に、浴室全体としてのデザインの統一感を図ることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例と比較例により本発明を説明する。
【0032】
(実施例1)
厚さ0.5mm、タイプAのデュロメーターによる20℃環境下の硬さが90であるオレフィン系熱可塑性エラストマー製のシートを金型サイズに打ち抜き、インサートする軟質シートを得た。これを金型内にインサートし、硬質樹脂基材部の樹脂としてPP樹脂(プライムポリマー製)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、軟質樹脂部と硬質樹脂基材部よりなる樹脂成形品を得た。
【0033】
(実施例2)
厚さ1.0mm、タイプAのデュロメーターによる20℃環境下の硬さが70である軟質ポリ塩化ビニル製のシートを金型サイズに打ち抜き、インサートする軟質シートを得た。これを金型内にインサートし、硬質樹脂基材部の樹脂として硬質ポリ塩化ビニル樹脂(プラス・テク製)を樹脂温度180℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、軟質樹脂部と硬質樹脂基材部よりなる樹脂成形品を得た。
【0034】
(比較例1)
厚さ1.5mm、タイプAのデュロメーターによる20℃環境下の硬さが100であるオレフィン系熱可塑性エラストマー製のシートを金型サイズに打ち抜き、インサートする軟質シートを得た。これを金型内にインサートし、硬質樹脂基材部の樹脂としてPP樹脂(プライムポリマー製)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、軟質樹脂部と硬質樹脂基材部よりなる樹脂成形品を得た。
【0035】
(比較例2)
厚さ1.5mm、タイプAのデュロメーターによる20℃環境下の硬さが20である軟質ポリ塩化ビニル製のシートを金型サイズに打ち抜き、インサートする軟質シートを得た。これを金型内にインサートし、硬質樹脂基材部の樹脂として硬質ポリ塩化ビニル樹脂(プラス・テク製)を樹脂温度180℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、軟質樹脂部と硬質樹脂基材部よりなる樹脂成形品を得た。
【0036】
(比較例3)
厚さ0.2mm、タイプAのデュロメーターによる20℃環境下の硬さが90であるオレフィン系熱可塑性エラストマー製のシートを金型サイズに打ち抜き、インサートする軟質シートを得た。これを金型内にインサートし、硬質樹脂基材部の樹脂としてPP樹脂(プライムポリマー製)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、軟質樹脂部と硬質樹脂基材部よりなる樹脂成形品を得た。
【0037】
(比較例4)
厚さ2.0mm、タイプAのデュロメーターによる20℃環境下の硬さが90であるオレフィン系熱可塑性エラストマー製のシートを金型サイズに打ち抜き、インサートする軟質シートを得た。これを金型内にインサートし、硬質樹脂基材部の樹脂としてPP樹脂(プライムポリマー製)を樹脂温度200℃、金型温度40℃の条件で射出成形し、軟質樹脂部と硬質樹脂基材部よりなる樹脂成形品を得た。
【0038】
上記の実施例1〜2、比較例1〜4の樹脂成形品について、樹脂成形物の端面の樹脂回り込み状況、軟質樹脂部の表面の破れ状況、軟質樹脂部の表面のソフト感(やわらかさ)について、評価した結果を表1にまとめた。
表1によれば、樹脂成形品の軟質樹脂部の厚みが0.3mm〜1.5mm、且つ、タイプAのデュロメーター硬さが30〜95の場合には、樹脂成形物の端面の樹脂回り込み状況、軟質樹脂部の表面の破れ状況、軟質樹脂部の表面のソフト感(やわらかさ)のすべてが良好(記号:○)となった。一方、軟質樹脂部の厚みが0.3mm以下あるいは1.5mm以上、または、タイプAのデュロメーター硬さが30以下あるいは95以上のいずれかの条件を有する場合には、樹脂成形物の端面の樹脂回り込み状況、軟質樹脂部の表面の破れ状況、軟質樹脂部の表面のソフト感(やわらかさ)のうちのいずれかが悪化(記号:×)し、良好な樹脂成形品が得られないことがわかった。
【表1】
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ソフト感や温かみが要求される樹脂成形品において、トリミングなどの二次加工を必要とせず、複層化された端面の仕上がりが良好な成形品が提供される。
【0040】
なお、本発明は上記の実施形態の記述に限定されるものではない。前述の実施形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0041】
1 硬質樹脂基材部
2 軟質樹脂部
3 凸部
4 排水口蓋
5 硬質樹脂基材部
6 軟質樹脂部
7 導水溝
8 模様
10 カウンター
11 硬質樹脂基材部
12 軟質樹脂部
図1
図5
図2
図3
図4