特許第6016191号(P6016191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016191
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】車両用バッテリパックの車載構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20161013BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
   B60R16/04 D
   B62D25/20 G
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-167450(P2012-167450)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-24480(P2014-24480A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080056
【弁理士】
【氏名又は名称】西郷 義美
(72)【発明者】
【氏名】淡川 拓郁
(72)【発明者】
【氏名】三島 惇
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−013058(JP,A)
【文献】 特開2000−335313(JP,A)
【文献】 特開2010−064687(JP,A)
【文献】 特開平11−291955(JP,A)
【文献】 特開2008−280036(JP,A)
【文献】 特開2006−096214(JP,A)
【文献】 特開平03−284432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水抜き孔を有するサイドシルを備え、フロアパネルの上面に部分的に車両下方に窪んだマット側凹部を有するフロアマットを配置し、前記マット側凹部内にバッテリパックを配置し、前記バッテリパックの側に設けられる固定部を締結具によって前記フロアパネルの側に設けられる取付部に固定した車両用バッテリパックの車載構造において、前記マット側凹部の下方に配置される前記フロアパネルの上面側に上方へ立ち上がるブラケットを取り付け、このブラケットの上部に前記取付部を配置し、前記マット側凹部の下面と前記フロアパネルの上面との間に空間を形成するとともに前記マット側凹部に前記ブラケットの取付部に対して隙間を有する開口部を形成し、前記隙間によって前記マット側凹部の上下の空間を連絡したことを特徴とする車両用バッテリパックの車載構造。
【請求項2】
前記マット側凹部に隣接する部分の前記フロアマットの下面と前記フロアパネルの上面との間に発泡樹脂製のパッドを配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリパックの車載構造。
【請求項3】
前記バッテリパックの固定部を車両上方から見た場合、前記開口部全体を覆う大きさに形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリパックの車載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用バッテリパックの車載構造に係り、特に、フロアマットのマット側凹部内に配置したバッテリパック内に水が侵入することを防止した車両用バッテリパックの車載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、電機機器に電力を供給する車両用バッテリパックを搭載している。従来の車両用バッテリパックの車載構造には、フロアマットの下方に車両用バッテリパックを配置したもの、また、フロアマットの上方に車両用バッテリパックを配置したもの、などがある。
前者のフロアマットの下方に車両用バッテリパックを配置した車載構造には、特開2010−64687号公報に開示されるものがある。この公報に記載の車両用バッテリパックの車載構造は、車両用バッテリパックの上面に配置したフロアマットにシートなどの搭載物をフロアパネルに固定するための開口部を形成し、開口部の周縁から開口部および車両用バッテリパックの間に位置する突出部を突出させ、突出部の先端を車両用バッテリバックの上面よりも下方に位置させることで、バッテリバックの上面に水が到達することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−64687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して、フロアマットの上面を車両下方に窪ませてマット側凹部を形成し、このマット側凹部内に車両用バッテリパックを配置した車両用バッテリパックの車載構造では、マット側凹部内に水が流入した場合、車両用バッテリパック内に水が侵入するおそれがある。この場合、マット側凹部にフロアパネル側へ水を流出させる排水孔を形成することで、マット側凹部内に流入した水を排水できる。
しかし、マット側凹部に水を流出させる専用の排水孔を形成することは、フロアマットの加工工数を増加させることになり、また、この排水孔を通して車室内からフロアパネルを目視可能になるため、外観品質を損なわせるおそれがある。
【0005】
この発明は、フロアマットに形成されたマット側凹部内にバッテリパックを配置した車載構造について、専用の排水孔の加工を要することなくマット側凹部に流入した水を排水できる構造とし、マット側凹部内に水が侵入したとしても、バッテリパック内への水の侵入を防止することができる車両用バッテリパックの車載構造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、水抜き孔を有するサイドシルを備え、フロアパネルの上面に部分的に車両下方に窪んだマット側凹部を有するフロアマットを配置し、前記マット側凹部内にバッテリパックを配置し、前記バッテリパックの側に設けられる固定部を締結具によって前記フロアパネルの側に設けられる取付部に固定した車両用バッテリパックの車載構造において、前記マット側凹部の下方に配置される前記フロアパネルの上面側に上方へ立ち上がるブラケットを取り付け、このブラケットの上部に前記取付部を配置し、前記マット側凹部の下面と前記フロアパネルの上面との間に空間を形成するとともに前記マット側凹部に前記ブラケットの取付部に対して隙間を有する開口部を形成し、前記隙間によって前記マット側凹部の上下の空間を連絡したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、フロアマットのマット側凹部に形成した開口部にブラケットの取付部に対する隙間を有せしめることで、マット側凹部に専用の排水孔の加工を要することなくマット側凹部に流入した水を排水できる構造としており、マット側凹部の上面に水が流入した場合、水をバッテリパック直近に配置された開口部とブラケットの取付部との間の隙間を通してマット側凹部の下側の空間へ流し、サイドシルの水抜き孔から車外に排出させることができる。
このため、この発明は、周辺よりも窪んだ形状のマット側凹部内にバッテリパックを配置した場合であっても、マット側凹部からの排水性を高め、水がバッテリパック内へ侵入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は車両用バッテリパックを搭載した車両の前側側面図である。(実施例)
図2図2は車両用バッテリパックを搭載した車両の前側平面図である。(実施例)
図3図3図2に示す矢印Aによる車両の拡大側面図である。(実施例)
図4図4は車両用バッテリパックを搭載した車両の車室部分の斜視図である。(実施例)
図5図5図4に示すB−B線による車両の断面図である。(実施例)
図6図6は車両用バッテリパックを配置したマット側凹部の拡大平面図である。(実施例)
図7図7図6に示すC−C線による車両の断面図である。(実施例)
図8図8図6に示す矢印D部分のバッテリパックを除いたマット側凹部の拡大平面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1図8は、この発明の実施例を示すものである。図1図2において、1は車両、2は車体、3はダッシュパネル、4はフロアパネルである。車両1は、車体2の前部にダッシュパネル3を配置している。車体1のフロア部は、ダッシュパネル3の下部から車体2の後部に向かうフロアパネル4を配置しフロアパネル4幅方向中央に上方に突出して車体2の前後方向に伸びるフロアトンネル5を備え、フロアパネル4の右側部及び左側部に夫々サイドシル6・7を配置し、フロアトンネル5と右側部及び左側部のサイドシル6・7とを接続するクロスメンバ8を配置している。フロアパネル4の後部には、上方に立ち上がる段差部9を備え、段差部9の上部から後部に向かう後部パネル10を備えている。
車両1は、ダッシュパネル3の前側にエンジンルーム11を設け、ダッシュパネル3の後側のフロアパネル4及び後部パネル10上に車室12を設けている。車両1は、エンジンルーム11にエンジン13と変速機14とを配置し、車輪15を駆動する。変速機14の上部には、バッテリなどの電機機器16を配置している。また、車両1は、車室12のフロアパネル4、段差部9、後部パネル10の各上面にフロアマット17を配置している(図5参照)。フロアパネル4の上面に配置したフロアマット17上には、フロアトンネル5を挟むように右側及び左側にそれぞれ前部シート18・19を配置している。後部パネル10の上面に配置したフロアマット17上には、後部シート20を配置している。
【0011】
前記フロアパネル4とサイドシル6・7を含んで構成される車体1のフロア部は、図3図4に示すように、右側及び左側のサイドシル6・7に水抜き孔21を備えている。なお、図3図4においては、右側のサイドシル6の水抜き孔を省略し、左側のサイドシル7の水抜き孔21のみを図示している。水抜き孔21を有するフロアパネル4の上方に配置され、フロアトンネル5より左側の部分を覆うフロアマット17は、図5図6に示すように、車両下方に窪んだマット側凹部22を備えている。マット側凹部22は、図4に示すように、前記左側の前部シート19のクッション部23により覆われている。マット側凹部22内には、車両用バッテリパック24(以下「バッテリパック24」と記す。)を配置している。
バッテリパック24は、左側の前部シート19のクッション部23の下側で、フロアマット17のマット側凹部22内に配置されている。バッテリパック24は、図5図7に示すように、四角箱形状に形成されたケース25内にバッテリモジュール(図示せず)を収納している。バッテリパック24には、バッテリモジュールの電力を出力する電力ケーブル26が接続され、バッテリパック24の上側に電力ケーブル26を覆うケーブルカバー27を配置している。バッテリパック24から引き出され電力ケーブル26は、ケーブルカバー27に覆われた状態でフロアパネル4の下側に引き出され、エンジンルーム11に導かれ、電機機器16に接続している。
【0012】
前記バッテリパック24は、図7に示すように、ケース25下部の右側及び左側にそれぞれ固定部28を設けている。マット側凹部22の下方に配置されるフロアパネル4の上面側には、上方へ立ち上がる門型形状のブラケット29を取り付けている。このブラケット29の上部には、バッテリパック24の固定部28が締結具30によって固定される取付部31を設けている。
前記バッテリパック24を配置したマット側凹部22は、その底面がフロアパネル4の上面から上方に離れるように形成されている。これより、前部シート19のクッション部23の下側には、図7に示すように、マット側凹部22の上方にバッテリパック24を配置する空間32を形成し、マット側凹部22の下面とフロアパネル4の上面との間に排水のための空間33を形成している。
フロアマット17のマット側凹部22には、図8に示すように、固定部28を取付部31に固定するための開口部34を形成している。開口部34は、ブラケット29の取付部31に対して接しないように、隙間35を有して形成している。この隙間35は、マット側凹部22の上方の空間32とマット側凹部22の下方の空間33とを連絡している。
【0013】
このように、バッテリパック24の車載構造は、フロアマット17のマット側凹部22に形成した開口部34にブラケット29の取付部31に対する隙間35を有せしめることで、マット側凹部22に専用の排水孔の加工を要することなくマット側凹部22に流入した水を排水できる構造としている。これにより、この車載構造は、乗員の不注意による飲料容器の転倒や雨の吹き込みなどによってマット側凹部22の上面に水が流入した場合、図7に矢印で示すように、水をバッテリパック24直近に配置された開口部34とブラケット29の取付部31との間の隙間35を通して、マット側凹部22の下側の空間33へ流し、サイドシル6・7の水抜き孔21から車外に排出させることができる。
このため、バッテリパック24の車載構造は、周辺よりも窪んだ形状のマット側凹部22内にバッテリパック24を配置した場合であっても、マット側凹部22からの排水性を高め、水がバッテリパック24内へ侵入することを防止できる。
また、このバッテリパック24の車載構造は、図5に示すように、マット側凹部22の外側部に隣接する部分に位置するフロアマット4の下面とフロアパネル17の上面との間に、発泡樹脂製のパッド36を配置している。
これにより、バッテリパック24の車載構造は、フロアマット17の下面側に水が侵入した際、発泡樹脂製のパッド36が侵入した水に浮いてマット側凹部22を持ち上げることで、マット側凹部22の下面とフロアパネル4の上面との間の空間33の容積を増大させ、マット側凹部22の上下の空間32・33を連絡する隙間35を拡げてマット側凹部22からの排水を速くし、バッテリパック24内への水侵入を防止することができる。
さらに、このバッテリパック24の車載構造は、図8に示すように、バッテリパック24の固定部28を車両1の上方から見た場合、開口部34全体を覆う大きさに形成している。
このように、バッテリパック24の車載構造は、バッテリパック24の側に設けた固定部28を車両1上方から見た場合、マット側凹部21に形成した開口部34全体を覆う大きさに形成したため、開口部34に向かう乗員の視線を固定部28によって遮ることができ、開口部34を通して車室12内からフロアパネル4が目視されることを防止でき、車両1の外観性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明は、フロアマットのマット側凹部内に水が侵入したとしても、バッテリパック内への水侵入を防止することができるものであり、バッテリパック以外でも、フロアマットのマット側凹部内に浸水を回避すべき機器を配置した車両に適応が可能である。
【符号の説明】
【0015】
1 車両
2 車体
3 ダッシュパネル
4 フロアパネル
11 エンジンルーム
12 車室
17 フロアマット
18・19 前部シート
21 水抜き孔
22 マット側凹部
24 車両用バッテリパック(バッテリパック)
25 ケース
26 電力ケーブル
28 固定部
29 ブラケット
30 締結具
31 取付部
32 マット側凹部22の上側の空間
33 マット側凹部22の下側の空間
34 開口部
35 隙間
36 発泡樹脂製のパッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8