(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6016195
(24)【登録日】2016年10月7日
(45)【発行日】2016年10月26日
(54)【発明の名称】熱負荷計算データ作成方法
(51)【国際特許分類】
G06F 17/50 20060101AFI20161013BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20161013BHJP
【FI】
G06F17/50 680B
G06F17/50 608Z
E04B1/00ESW
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-222224(P2012-222224)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-75037(P2014-75037A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100095256
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】相賀 洋
【審査官】
合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−246844(JP,A)
【文献】
特開2007−017265(JP,A)
【文献】
特開平09−050468(JP,A)
【文献】
特開2010−197043(JP,A)
【文献】
特開2005−202550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
E04B 1/00
IEEE Xplore
CiNii
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BIMを実現する建築CADシステムと連携して熱負荷計算データの作成を行う方法であって、
前記建築CADシステムにより表計算ソフトにしたがって室毎にシート表示される熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成を全ての室について共通に設定することと、
前記表計算ソフトのシート間における一括コピー機能を用いて、任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力すること、とを含むことを特徴とする熱負荷計算データ作成方法。
【請求項2】
前記共通に設定することは、各熱負荷要素のデータセルブロックの数および配置される行位置を全ての室について共通に設定することを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱負荷計算データ作成方法。
【請求項3】
前記一括的にコピー入力することは、前記任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容の一部を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力することを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱負荷計算データ作成方法。
【請求項4】
前記コピー入力の対象となる熱負荷要素は、外壁、内壁、窓、すきま風および内部発熱のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱負荷計算データ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱負荷計算データ作成方法に関する。さらに詳細には、本発明は、BIMを実現する建築CADシステムと連携して熱負荷計算データの作成を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
BIM(Building Information Modeling:ビルディング インフォメーション モデリング)を実現する建築CAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計)システムが知られている。この種の建築CADシステムでは、コンピュータ上に建物の三次元デジタルモデルを作成し、設計から施工、維持管理に至るまで建築ライフサイクル全体でモデルに蓄積された情報を活用することにより、建築ビジネスの業務を効率化する。
【0003】
従来、BIMを実現する建築CADシステムと連携して熱負荷計算データを作成する際に、熱負荷要素別のデータセルブロックが、室毎に外壁数、内壁数などに応じて基本シートから倍数単位でコピーされて自動作成される。すなわち、表計算ソフトにしたがって室毎にシート表示される熱負荷要素別のデータセルブロックに、建築CADシステムから所要の建築データが自動入力される。建築CADシステムから自動入力されない空調設備用データについては、例えば設備技術者が手作業で入力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱負荷要素別のデータセルブロックに入力すべき空調設備用データの内容の一部は、全ての室について共通な場合が多い。しかしながら、従来技術では、この共通するデータ部分を室毎(すなわちシート毎)に手動でコピーする必要があり、特に室数が多い場合には膨大な手作業を要するという不都合があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたものであり、BIMを実現する建築CADシステムと連携して、比較的少ない手作業で迅速に且つ正確に熱負荷計算データを作成することのできる熱負荷計算データ作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明では、BIMを実現する建築CADシステムと連携して熱負荷計算データの作成を行う方法であって、
前記建築CADシステムにより表計算ソフトにしたがって室毎にシート表示される熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成を全ての室について共通に設定することと、
前記表計算ソフトのシート間における一括コピー機能を用いて、任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力すること、とを含むことを特徴とする熱負荷計算データ作成方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、建築CADシステムにより表計算ソフトにしたがって室毎にシート表示される熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成を全ての室について共通に設定しているので、表計算ソフトのシート間における一括コピー機能を用いて、任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力することができる。すなわち、本発明の熱負荷計算データ作成方法では、BIMを実現する建築CADシステムと連携して、比較的少ない手作業で迅速に且つ正確に熱負荷計算データを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態にかかる熱負荷計算データ作成方法において全ての室について共通に設定された熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成を概略的に示す図である。
【
図2】任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力する様子を示す図である。
【
図3】従来技術における不都合を本実施形態と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる熱負荷計算データ作成方法において全ての室について共通に設定された熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成を概略的に示す図である。
図1では、紙面の制限により、建物を構成する多数の室のうちの3つの室についてそれぞれシート表示された熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成例を示している。
【0010】
図1を参照すると、建築CADシステムにより表計算ソフトにしたがってシート表示される第1室の熱負荷要素別のデータセルブロックS1は、図中上から順に、1つの基本情報用のセルブロックBと、3つの外壁用のセルブロックEa,Eb,Ecと、3つの内壁用のセルブロックNa,Nb,Ncと、3つの窓用のセルブロックWa,Wb,Wcと、2つのすきま風用のセルブロックKa,Kbと、4つの内部発熱用のセルブロックHa,Hb,Hc,Hdとを備えている。
【0011】
各セルブロックは、必要に応じてデータ入力される複数のセルにより構成されている。具体的に、基本情報用のセルブロックBには、対応する室(データセルブロックS1の場合は第1室)を個別に特定するコード、面積などのデータが建築CADシステムから自動入力される。外壁用のセルブロックEには、外壁を個別に特定するコード、方位、面積などのデータが建築CADシステムから自動入力されるが、外壁の物性値(例えば日射吸収率)などのデータは自動入力されない。
【0012】
内壁用のセルブロックNには、内壁を個別に特定するコード、面積などのデータが建築CADシステムから自動入力されるが、隣室条件(例えば隣接する部屋の種別)などのデータは自動入力されない。窓用のセルブロックWには、窓を個別に特定するコード、方位、面積などのデータが建築CADシステムから自動入力されるが、窓の種別(例えば普通の透明ガラス窓、二重ガラス窓)、窓ガラスの厚さなどのデータは自動入力されない。
【0013】
すきま風用のセルブロックKには、すきま風発生部を個別に特定するコードなどのデータが建築CADシステムから自動入力されるが、すきま特性(気密性など)のデータは自動入力されない。内部発熱用のセルブロックHには、内部発熱部を個別に特定するコードなどのデータが建築CADシステムから自動入力されるが、照明機器の発熱量、人体の発熱量などのデータは自動入力されない。
【0014】
本実施形態では、
図1に示すように、第2室および第3室の熱負荷要素別のデータセルブロックS2およびS3の配列構成が、第1室のデータセルブロックS1の配列構成と同じである。すなわち、各データセルブロックS1〜S3において、第1の熱負荷要素である外壁に関するセルブロックEの数はともに3つであり、第2の熱負荷要素である内壁に関するセルブロックNの数はともに3つであり、第3の熱負荷要素である窓に関するセルブロックWの数はともに3つであり、第4の熱負荷要素であるすきま風に関するセルブロックKの数はともに2つであり、第5の熱負荷要素である内部発熱に関するセルブロックKの数はともに4つである。
【0015】
ただし、第1室では、外壁の部位数が2つであり、内壁の部位数が3つであり、窓の部位数が1つであり、すきま風の部位数が1つであり、内部発熱の部位数が3つである。第2室では、外壁の部位数が3つであり、内壁の部位数が1つであり、窓の部位数が3つであり、すきま風の部位数が1つであり、内部発熱の部位数が1つである。第3室では、外壁の部位数が2つであり、内壁の部位数が2つであり、窓の部位数が3つであり、すきま風の部位数が2つであり、内部発熱の部位数が4つである。したがって、
図1において矩形状のセルブロックにおいて対角線に対応する斜線を含むセルブロックは、入力すべきデータの無いセルブロックである。
【0016】
このように、本実施形態では、建物を構成する多数の室における各熱負荷要素の最大数に応じて熱負荷要素別のデータセルブロックの数を共通に設定し、ひいては各熱負荷要素のデータセルブロックの数および配置される行位置を全ての室について共通に設定している。換言すれば、建築CADシステムにより表計算ソフトにしたがって室毎にシート表示される熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成は、全ての室について共通に設定されている。
【0017】
一般に、表計算ソフトは、複数のシートのうちの任意のシートにおける任意の1つまたは複数のセルの内容を、他の全てのシートにおいて同じ行位置にある1つまたは複数のセルに一括的にコピーする機能、すなわちシート間における一括コピー機能を有する。本実施形態では、室毎にシート表示される熱負荷要素別のデータセルブロックの配列構成を全ての室について共通に設定しているので、一括コピーの対象となる共通部分は常に全ての室に亘って互いに同じ行位置にある。その結果、表計算ソフトのシート間における一括コピー機能を用いて、任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力することができる。
【0018】
具体的には、例えば第1室の熱負荷要素別のデータセルブロックS1における外壁用のセルブロックEaの内容の一部が全ての室について共通である場合、
図2に示すように、一括コピー機能を用いて、外壁用のセルブロックEaの共通部分(図中ハッチングを施したデータ部分)を他の全ての室における対応するセル(またはセル群)に一括的にコピー入力することができる。同様に、内壁用のセルブロックNaの共通部分、窓用のセルブロックWaの共通部分、すきま風用のセルブロックKaの共通部分、内部発熱用のセルブロックHaの共通部分についても、必要に応じて、一括コピー機能を用いて他の全ての室における対応するセル(またはセル群)に一括的にコピー入力することができる。
【0019】
以上のように、本実施形態では、表計算ソフトのシート間における一括コピー機能を用いて、任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力する。具体的には、任意の室に関する熱負荷要素のデータセルブロックの内容の一部を、他の全ての室に関する当該熱負荷要素のデータセルブロックに一括的にコピー入力する。
【0020】
その結果、本実施形態の熱負荷計算データ作成方法では、BIMを実現する建築CADシステムと連携して、比較的少ない手作業で迅速に且つ正確に熱負荷計算データを作成することができる。特に、設計における初期的な入力作業の効率が飛躍的に向上するだけでなく、例えば設計変更などにより熱負荷要素の仕様などに変更があった場合にも迅速に且つ正確に対応処理することができる。
【0021】
ちなみに、従来技術では、
図3に示すように、入力すべきデータの無いセルブロックは建築CADシステムにより自動作成されないため、コピーの対象となる共通部分の行位置は室毎に異なってしまう。その結果、ある熱負荷要素に関するデータセルブロックに入力すべきデータの内容の一部が全ての室について共通であったとしても、例えば2つのシート間でのコピーを繰り返すことにより、共通するデータ部分を室毎(すなわちシート毎)に手動でコピーする必要があり、特に室数が多い場合には膨大な手作業を要するという不都合があった。
【0022】
なお、上述の実施形態では、各室の熱負荷要素別のデータセルブロックが、3つの外壁用のセルブロックと、3つの内壁用のセルブロックと、3つの窓用のセルブロックと、2つのすきま風用のセルブロックと、4つの内部発熱用のセルブロックとを備えている。しかしながら、これに限定されることなく、熱負荷要素の種類および数、各熱負荷要素のセルブロックの最大数などについては様々な形態が可能である。
【符号の説明】
【0023】
S1〜S3 各室の熱負荷要素別のデータセルブロック
Ea〜Ec 外壁用のセルブロック
Na〜Nc 内壁用のセルブロック
Wa〜Wc 窓用のセルブロック
Ka,Kb すきま風用のセルブロック
Ha〜Hd 内部発熱用のセルブロック